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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091022
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240627BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207275
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 秀和
(72)【発明者】
【氏名】藤井 定
(72)【発明者】
【氏名】土橋 裕也
(72)【発明者】
【氏名】テン ポーリン
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB64
5F157AB72
5F157AB90
5F157BB39
5F157CC01
5F157CF30
5F157CF70
5F157CF74
(57)【要約】
【課題】多量の結晶が待機ポットまたはその付近に発生することを防止できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、水平な基板の上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズル31と、平面視で薬液ノズル31が基板に重なる処理位置と、平面視で薬液ノズル31が基板に重ならない待機位置と、の間で薬液ノズル31を移動させる少なくとも1つのアクチュエーターと、待機位置に位置する薬液ノズル31から下方に吐出された薬液を凹部57で受け止める待機ポット56と、待機ポット56に向けて待機ポット56の外から洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する少なくとも1つの洗浄水ノズル64~65とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な基板の上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズルと、
平面視で前記薬液ノズルが前記基板に重なる処理位置と、平面視で前記薬液ノズルが前記基板に重ならない待機位置と、の間で前記薬液ノズルを移動させる少なくとも1つのアクチュエーターと、
下方に凹んだ凹部を含み、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルから下方に吐出された前記薬液を前記凹部で受け止める待機ポットと、
前記待機ポットに向けて前記待機ポットの外から洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する少なくとも1つの洗浄水ノズルと、を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記待機ポットの前記凹部によって前記待機ポットの外面内に形成された開口よりも上方に配置された内側用吐出口を含み、前記内側用吐出口から前記待機ポットの前記開口に向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記待機ポットの前記凹部内から気体を排出する排気配管をさらに備える、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記薬液ノズルが前記処理位置に位置しているときに、前記内側用吐出口から前記待機ポットの前記開口に向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板処理装置は、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルと水平に直接向かい合っており、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルが前記待機ポットに向けて前記薬液を下方に吐出したときに発生した前記薬液の飛沫を受け止める飛沫ブロッカーをさらに備え、
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記内側用吐出口から前記飛沫ブロッカーと前記待機ポットの前記開口とに向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記待機ポットおよび飛沫ブロッカーを上から見ると、前記待機ポットの前記開口が視認可能である、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルの前記内側用吐出口よりも上方に配置された吐出口から気体を吐出することにより、平面視で前記待機ポットに重なる気流を前記待機ポットの上方に形成するガスカーテンノズルをさらに備える、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記待機ポットの前記凹部によって前記待機ポットの外面内に形成された開口よりも下方に配置された外側用吐出口を含み、前記外側用吐出口から前記待機ポットの前記外面に向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
水平な基板の上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズルが、平面視で前記基板に重ならない待機位置に配置されているときに、前記薬液ノズルから下方に吐出された前記薬液を、下方に凹んだ待機ポットの凹部で受け止める工程と、
前記待機位置に位置する前記薬液ノズルが前記待機ポットに向けて前記薬液を下方に吐出し始めた後に、前記待機ポットに向けて前記待機ポットの外から洗浄水を霧状またはシャワー状に少なくとも1つの洗浄水ノズルに吐出させる工程と、を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体ウエハなどの基板の処理では、BHFやTMAHなどの濃度が変化し易い薬液を用いる場合があることと、BHF中のHFの濃度の上昇によりHFを主成分とする結晶が液中に析出する場合があることを開示している。特許文献1は、さらに、薬液ノズル内に残留しているBHFなどの薬液を洗い流すために、純水を薬液ノズルに供給し待機ポットの開口部に向けて薬液ノズルに吐出させることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-121088公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬液ノズルから基板に薬液を供給する前に、待機ポットまたは待機ポッドなどと呼ばれる容器に向けて薬液ノズルに薬液を吐出させるプリディスペンスを行う場合がある。このような薬液の吐出は、ダミーディスペンスなどとも呼ばれる。プリディスペンスを行うと、薬液の飛沫が発生し、待機ポットから漏れ出る。発生する飛沫を減らしたり、待機ポットから漏れる飛沫を減らしたりすることはできるものの、待機ポットから漏れる飛沫を零にすることは難しい。薬液の飛沫が待機ポットの外面に付着すると、この飛沫から結晶が析出する場合がある。このような結晶が浮遊すると、基板に接触する場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、多量の結晶が待機ポットまたはその付近に発生することを防止できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、水平な基板の上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズルと、平面視で前記薬液ノズルが前記基板に重なる処理位置と、平面視で前記薬液ノズルが前記基板に重ならない待機位置と、の間で前記薬液ノズルを移動させる少なくとも1つのアクチュエーターと、下方に凹んだ凹部を含み、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルから下方に吐出された前記薬液を前記凹部で受け止める待機ポットと、前記待機ポットに向けて前記待機ポットの外から洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する少なくとも1つの洗浄水ノズルと、を備える、基板処理装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、薬液ノズルから薬液を下方に吐出し、水平な基板の上面に供給する。少なくとも1つのアクチュエーターは、平面視で薬液ノズルが基板に重なる処理位置から、平面視で薬液ノズルが基板に重ならない待機位置に、薬液ノズルを移動させる。待機位置に位置する薬液ノズルから下方に吐出された薬液は、待機ポットの凹部によって受け止められる。洗浄水ノズルから吐出された霧状またはシャワー状の洗浄水は、待機ポットおよび待機ポットのまわりの部材に供給される。
【0008】
薬液ノズルから下方に吐出された薬液が待機ポットに受け止められると、薬液の飛沫が発生する。薬液が蒸発すると薬液の飛沫から結晶が析出することがある。洗浄水ノズルから待機ポットに向けて洗浄水を吐出することにより、薬液の飛沫に水を与えることができ、この飛沫から結晶が析出することを防止または遅延させることができる。薬液の飛沫が結晶化している場合は、洗浄水に結晶を溶解させることにより、当該結晶を液体に戻すことができる。結晶の全体が液体に戻らなかったとしても、洗浄水を結晶に付着させることにより当該結晶を空気中に浮遊させ難くすることができる。
【0009】
待機ポットから漏れた薬液の飛沫が広がる範囲を特定することは難しい。薬液の飛沫が極めて広い範囲に拡散することもある。薬液の飛沫が拡散し得る全ての範囲に洗浄水を自動で供給して、漏れ出た薬液を洗浄水で洗い流すことが考えられる。しかしながら、この方法では、多量の洗浄水が必要になる上に、不必要な範囲にまで多量の洗浄水が供給される。洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する場合は、ノズルと同程度の直径の液柱(洗浄水の柱)を形成しながら洗浄水をノズルから供給する場合に比べて少量の洗浄水を広い範囲に供給することができる。
【0010】
洗浄水を待機ポットに向けて霧状またはシャワー状に吐出する場合、待機ポットから漏れ出た薬液が待機ポットまたはその付近に残るかもしれない。例えば自動または手動で定期的に基板処理装置を洗浄する際に、このような薬液を洗い流せば、結晶の発生源を除去することができる。洗浄水を待機ポットに向けて霧状またはシャワー状に吐出すれば、結晶の析出を防止または遅延させることができるので、定期的な洗浄の頻度を増やす必要もない。これにより、不必要な範囲にまで多量の洗浄水が供給されるなどの洗浄水の供給に伴う新たな問題の発生を防止しながら、多量の結晶が待機ポットまたはその付近に発生することを防止できる。
【0011】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理装置に加えてもよい。
【0012】
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記待機ポットの前記凹部によって前記待機ポットの外面内に形成された開口よりも上方に配置された内側用吐出口を含み、前記内側用吐出口から前記待機ポットの前記開口に向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。
【0013】
この場合、待機ポットの開口よりも上方に配置された洗浄水ノズルの内側用吐出口から待機ポットの開口に向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。霧状またはシャワー状の洗浄水は、待機ポットの開口を通じて待機ポットの中に入る。一部の洗浄水は、待機ポットの外面や待機ポットのまわりの部材に供給される。薬液の飛沫は、待機ポットの開口やその付近に残り易い。したがって、薬液の飛沫に洗浄水を効率的に供給することができる。
【0014】
前記基板処理装置は、前記待機ポットの前記凹部内から気体を排出する排気配管をさらに備える。
【0015】
この場合、空中に浮遊する液体または固体の微粒子を含む気体や、このような微粒子を含まない気体を、待機ポットの凹部から排気配管に排出する。洗浄水ノズルから吐出された霧状またはシャワー状の洗浄水は、待機ポットの開口を通じて待機ポットの中に入る。凹部内の洗浄水のミストは、排気配管に排出される。これにより、凹部内に残留する洗浄水を減らすことができる。
【0016】
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記薬液ノズルが前記処理位置に位置しているときに、前記内側用吐出口から前記待機ポットの前記開口に向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。
【0017】
この場合、薬液ノズルが平面視で基板に重なる処理位置に配置されているときに、待機ポットの開口よりも上方に配置された洗浄水ノズルの内側用吐出口から待機ポットの開口に向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。薬液ノズルが待機位置に配置されているときに、洗浄水ノズルに洗浄水を吐出させると、霧状またはシャワー状の洗浄水が薬液ノズルに付着する。したがって、薬液ノズルが処理位置に配置されているときに洗浄水ノズルに洗浄水を吐出させれば、薬液ノズルに付着する洗浄水を減らすことができる。
【0018】
前記基板処理装置は、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルと水平に直接向かい合っており、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルが前記待機ポットに向けて前記薬液を下方に吐出したときに発生した前記薬液の飛沫を受け止める飛沫ブロッカーをさらに備え、前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記内側用吐出口から前記飛沫ブロッカーと前記待機ポットの前記開口とに向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。
【0019】
この場合、薬液ノズルと飛沫ブロッカーとを水平に直接向かい合わせる。待機位置に位置する薬液ノズルが待機ポットに向けて薬液を下方に吐出したときに発生した薬液の飛沫の一部は、飛沫ブロッカーに受け止められる。洗浄水ノズルの内側用吐出口は、待機ポットの開口だけでなく、飛沫ブロッカーにも霧状またはシャワー状の洗浄水を供給する。これにより、薬液の飛沫が拡散する範囲を飛沫ブロッカーによって狭めることができ、飛沫ブロッカーに付着している薬液の飛沫から結晶が析出することを防止または遅延させることができる。
【0020】
前記待機ポットおよび飛沫ブロッカーを上から見ると、前記待機ポットの前記開口が視認可能である。
【0021】
この場合、待機ポットおよび飛沫ブロッカーの上から待機ポットの開口が見える。待機ポットおよび飛沫ブロッカーの上から洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出すると、洗浄水が飛沫ブロッカーに供給されると共に、待機ポットの開口を通じて待機ポットの中に入る。待機ポットの開口の上方に配置されたシーリングプレートを飛沫ブロッカーに設ければ、薬液の飛沫が上方に拡散する範囲を狭めることができるものの、シーリングプレートの下の空間に薬液の飛沫が残る場合がある。この場合、シーリングプレートがあるので、シーリングプレートの下の空間を洗浄し難い。待機ポットおよび飛沫ブロッカーの上から待機ポットの開口が見える構造では、このような問題の発生を防止できる。
【0022】
前記飛沫ブロッカーは、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルの吐出口に対して平面視で前記少なくとも1つのアクチュエーターとは反対側に配置された第1サイドプレートと、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルの前記吐出口に対して平面視で前記処理位置とは反対側に配置された第2サイドプレートと、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルの前記吐出口に対して平面視で前記少なくとも1つのアクチュエーター側に配置された第3サイドプレートと、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルと前記待機ポットの前記開口とに平面視で重なるように前記薬液ノズルおよび待機ポットの上方に配置されたシーリングプレートと、のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。
【0023】
前記基板処理装置は、前記少なくとも1つの洗浄水ノズルの前記内側用吐出口よりも上方に配置された吐出口から気体を吐出することにより、平面視で前記待機ポットに重なる気流を前記待機ポットの上方に形成するガスカーテンノズルをさらに備える。
【0024】
この場合、洗浄水ノズルの内側用吐出口よりも上方に配置されたガスカーテンノズルの吐出口から気体を吐出する。ガスカーテンノズルの吐出口から吐出された気体は、待機ポットの上方の空間を浮遊する洗浄水のミストの上方に気流を形成する。上方に流れる洗浄水のミストは、ガスカーテンノズルから流れる気流によって遮断される。これにより、不要な範囲にまで拡散する洗浄水のミストを減らすことができる。
【0025】
前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記待機ポットの前記凹部によって前記待機ポットの外面内に形成された開口よりも下方に配置された外側用吐出口を含み、前記外側用吐出口から前記待機ポットの前記外面に向けて前記洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。
【0026】
この場合、待機ポットの開口よりも下方に配置された洗浄水ノズルの外側用吐出口から待機ポットの外面に向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。洗浄水ノズルの外側用吐出口が待機ポットの開口よりも下方に配置されているので、洗浄水のミストが待機ポットの開口を通じて待機ポットの中に入り難い。これにより、凹部内に残留する洗浄水を減らしながら、薬液の飛沫が付着し易い待機ポットの外面に効率的に洗浄水を供給することができる。
【0027】
本発明の他の実施形態は、水平な基板の上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズルが、平面視で前記基板に重ならない待機位置に配置されているときに、前記薬液ノズルから下方に吐出された前記薬液を、下方に凹んだ待機ポットの凹部で受け止める工程と、前記待機位置に位置する前記薬液ノズルが前記待機ポットに向けて前記薬液を下方に吐出し始めた後に、前記待機ポットに向けて前記待機ポットの外から洗浄水を霧状またはシャワー状に少なくとも1つの洗浄水ノズルに吐出させる工程と、を含む、基板処理方法を提供する。この方法によれば、前述の基板処理装置と同様の効果を奏することができる。基板処理装置に関する前述の特徴の少なくとも1つを前記基板処理方法に加えてもよい。前記待機位置に位置する前記薬液ノズルが前記待機ポットに向けて前記薬液を下方に吐出し始めた後であれば、前記少なくとも1つの洗浄水ノズルは、前記薬液ノズルが前記待機位置以外の位置に配置されているときに洗浄水を吐出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す概略平面図である。
図1B】基板処理装置の概略側面図である。
図2A】処理ユニットの内部を水平に見た概略図である。
図2B】処理ユニットの内部を示す概略平面図である。
図3】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例について説明するための工程図である。
図5】薬液ノズルおよび待機ポットを水平に見た概略図である。
図6】薬液ノズルが移動する経路について説明するための概略図である。
図7】基板側から薬液ノズルおよび待機ポットを水平に見た概略図である。
図8】薬液ノズルおよび待機ポットを上から見た概略図である。
図9図7における紙面の左側から薬液ノズルおよび待機ポットを水平に見た概略図である。
図10】薬液ノズルが待機位置でプリディスペンスを行い、処理位置で基板に薬液を供給し、待機位置に戻るまでの期間に行われるミストの吐出について説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す概略平面図である。図1Bは、基板処理装置1の概略側面図である。
【0031】
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCAを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送システム5と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0032】
複数の処理ユニット2は、複数のタワーTWを形成している。図1Aは、4つのタワーTWが形成された例を示している。図1Bに示すように、1つのタワーTWに含まれる複数の処理ユニット2は、上下に積層されている。図1Aに示すように、複数のタワーTWは、平面視で基板処理装置1の奥行方向に並んだ2つの列を形成している。平面視において2つの列は搬送路4を介して互いに向かい合っている。
【0033】
搬送システム5は、ロードポートLP上のキャリアCAと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、インデクサロボットIRと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送するセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、平面視でロードポートLPとセンターロボットCRとの間に配置されている。センターロボットCRは、搬送路4に配置されている。
【0034】
インデクサロボットIRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHiを含む。ハンドHiは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHiは、鉛直な直線まわりに回転可能である。ハンドHiは、いずれのロードポートLP上のキャリアCAに対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができ、センターロボットCRと基板Wの受け渡しをすることができる。
【0035】
センターロボットCRは、基板Wを水平に支持する1つ以上のハンドHcを含む。ハンドHcは、水平方向および鉛直方向のいずれにも平行に移動可能である。ハンドHcは、鉛直な直線まわりに回転可能である。ハンドHcは、インデクサロボットIRと基板Wの受け渡しをすることができ、いずれの処理ユニット2に対しても基板Wの搬入および搬出を行うことができる。
【0036】
次に、処理ユニット2について説明する。
【0037】
図2Aは、処理ユニット2の内部を水平に見た概略図である。図2Bは、処理ユニット2の内部を示す概略平面図である。図2A中のDIWは、純水を表している。これは他の図でも同様である。
【0038】
図2Aに示すように、処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー12と、チャンバー12内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック21と、スピンチャック21に保持されている基板Wに処理液や処理ガスなどの処理流体を供給する複数のノズルとを含む。
【0039】
図2Bに示すように、チャンバー12は、センターロボットCR(図1A参照)によって搬送された基板Wが通過する搬入搬出口13bが設けられた箱型の隔壁13と、搬入搬出口13bを開閉するシャッター17とを含む。図2Aに示すように、チャンバー12は、さらに、隔壁13の天井面で開口する送風口13aの下方に配置された整流板18を含む。クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送るFFU11(ファン・フィルター・ユニット11)は、送風口13aの上に配置されている。送風口13aは、チャンバー12の上端部に設けられており、排気ダクト49は、チャンバー12の下端部に配置されている。排気ダクト49の上流端49uは、チャンバー12の中に配置されており、排気ダクト49の下流端は、チャンバー12の外に配置されている。
【0040】
整流板18は、チャンバー12の内部空間を整流板18の上方の上空間Suと整流板18の下方の下空間SLとに仕切っている。隔壁13の天井面と整流板18の上面との間の上空間Suは、クリーンエアーが拡散する拡散空間である。整流板18の下面と隔壁13の床面との間の下空間SLは、基板Wの処理が行われる処理空間である。スピンチャック21は、下空間SLに配置されている。隔壁13の床面から整流板18の下面までの鉛直方向への距離は、整流板18の上面から隔壁13の天井面までの鉛直方向への距離よりも長い。
【0041】
FFU11は、送風口13aを介して上空間Suにクリーンエアーを送る。上空間Suに供給されたクリーンエアーは、整流板18に当たり、上空間Suで拡散する。上空間Su内のクリーンエアーは、整流板18を上下に貫通する複数の貫通孔を通過し、整流板18の全域から下方に流れる。下空間SLに供給されたクリーンエアーは、排気ダクト49内に吸い込まれ、チャンバー12から排出される。これにより、整流板18から下方に流れる均一なクリーンエアーの下降流(ダウンフロー)が、下空間SLに形成される。基板Wの処理は、クリーンエアーの下降流が形成されている状態で行われる。
【0042】
スピンチャック21は、基板Wを水平に挟む複数のチャックピン22と、複数のチャックピン22を支持する円板状のスピンベース23とを含む。スピンチャック21は、さらに、スピンベース23の中央部から下方に延びるスピン軸24と、スピン軸24を回転させることにより複数のチャックピン22およびスピンベース23を回転させる電動モーター25と、電動モーター25を取り囲むチャックハウジング26とを含む。
【0043】
スピンベース23は、基板Wの下方に配置される円形の上面と、スピンベース23の上面の外周から下方に延びる円筒状の外周面とを含む。スピンベース23の上面は、基板Wの下面と平行である。スピンベース23の上面は、基板Wの下面から離れている。スピンベース23の上面は、基板Wと同心である。スピンベース23の上面の外径は、基板Wの外径よりも大きい。チャックピン22は、スピンベース23の上面の外周部から上方に突出している。
【0044】
図2Aに示すように、複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル31と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル34と、基板Wの上面に向けて有機溶剤の液体を吐出する溶剤ノズル37とを含む。図2Aは、BHF(Buffered Hydrogen Fluoride)が薬液ノズル31から吐出され、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))がリンス液ノズル34から吐出され、IPA(イソプロピルアルコール)が溶剤ノズル37から吐出される例を示している。
【0045】
BHFは、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとを含む液体である。BHFは、酸化シリコン膜などの酸化膜の除去などに用いられる。水やアンモニアなどがBHFから蒸発すると、フッ化アンモニウムとフッ化水素アンモニウム(別名:一水素二フッ化アンモニウム)とを含む結晶が析出する。BHFは、結晶が析出し易い薬液の一例である。薬液ノズル31から吐出されるBHFは、室温(例えば、20~30℃)であってもよいし、室温よりも高温または低温であってもよい。
【0046】
薬液は、BHF以外の水溶液であってもよい。具体的には、薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液体であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。薬液は、カルボン酸を含む水溶液またはクエン酸およびキレート剤を含む水溶液であってもよい。
【0047】
リンス液は、純水以外の液体であってもよい。有機溶剤の液体は、IPA以外の液体であってもよい。具体的には、リンス液は、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)のアンモニア水のうちの少なくとも1つを含む液体であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。有機溶剤の液体は、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液体であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。
【0048】
薬液ノズル31は、基板Wに対する処理液の衝突位置を基板Wの上面内で移動させるスキャンノズルであってもよいし、基板Wに対する処理液の衝突位置を移動させることができない固定ノズルであってもよい。他のノズルについても同様である。図2Aは、薬液ノズル31、リンス液ノズル34、および溶剤ノズル37がスキャンノズルである例を示している。
【0049】
処理ユニット2は、1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させるノズル移動ユニットを含む。2つ以上のスキャンノズルに連結された1つのノズル移動ユニットを設けてもよいし、1つのスキャンノズルごとに1つのノズル移動ユニットを設けてもよい。図2Bは、薬液ノズル31が第1ノズル移動ユニット33に連結され、リンス液ノズル34が第2ノズル移動ユニット36に連結され、溶剤ノズル37が第3ノズル移動ユニット39に連結された例を示している。
【0050】
図2Bは、第1ノズル移動ユニット33、第2ノズル移動ユニット36、および第3ノズル移動ユニット39のそれぞれが、平面視で円弧状の経路に沿って1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させる旋回ユニットである例を示している。円弧状の経路の半径が大きいので、旋回ユニットは、平面視で直線と見なせる経路に沿って1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させる。第1ノズル移動ユニット33、第2ノズル移動ユニット36、および第3ノズル移動ユニット39の少なくとも1つは、平面視で直線状の経路に沿って1つ以上のスキャンノズルを水平に移動させるスライドユニットであってもよい。
【0051】
薬液ノズル31は、薬液ノズル31に向けて薬液を案内する薬液配管32pに接続されている。薬液配管32pに介装された薬液バルブ32vが開かれると、薬液が、薬液配管32pから薬液ノズル31に供給され、薬液ノズル31から下方に連続的に吐出される。第1ノズル移動ユニット33は、平面視で薬液ノズル31が基板Wに重なる処理位置と、平面視で薬液ノズル31が基板Wに重ならない待機位置と、の間で薬液ノズル31を水平に移動させる。
【0052】
図示はしないが、薬液バルブ32vは、処理液が通過する環状の弁座が設けられたバルブボディーと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエーターとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエーターは、空圧アクチュエーターまたは電動アクチュエーターであってもよいし、これら以外のアクチュエーターであってもよい。制御装置3は、アクチュエーターを制御することにより、薬液バルブ32vを開閉させる。
【0053】
リンス液ノズル34は、リンス液ノズル34に向けてリンス液を案内するリンス液配管35pに接続されている。リンス液配管35pに介装されたリンス液バルブ35vが開かれると、リンス液が、リンス液配管35pからリンス液ノズル34に供給され、リンス液ノズル34から下方に連続的に吐出される。第2ノズル移動ユニット36は、平面視でリンス液ノズル34が基板Wに重なる処理位置と、平面視でリンス液ノズル34が基板Wに重ならない待機位置と、の間でリンス液ノズル34を水平に移動させる。
【0054】
溶剤ノズル37は、溶剤ノズル37に向けて有機溶剤の液体を案内する溶剤配管38pに接続されている。溶剤配管38pに介装された溶剤バルブ38vが開かれると、有機溶剤の液体が、溶剤配管38pから溶剤ノズル37に供給され、溶剤ノズル37から下方に連続的に吐出される。第3ノズル移動ユニット39は、溶剤ノズル37から吐出された処理液が基板Wの上面に供給される処理位置と、溶剤ノズル37が平面視でスピンチャック21のまわりに位置する待機位置と、の間で溶剤ノズル37を水平に移動させる。
【0055】
処理ユニット2は、スピンチャック21および基板Wから外方に飛散した処理液を受け止める筒状の処理カップ41を含む。処理カップ41は、チャンバー12内で基板Wの回転軸線A1まわりにスピンチャック21を取り囲んでいる。処理カップ41は、スピンチャック21および基板Wから外方に飛散した処理液を受け止める複数のガード44と、複数のガード44によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ43とを含む。図2Aは、2つのガード44と2つのカップ43とが設けられており、最も外側のカップ43が上から2番目のガード44と一体である例を示している。
【0056】
ガード44は、スピンチャック21を取り囲む円筒部45と、円筒部45の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部46とを含む。複数の天井部46は、上下に重なっており、複数の円筒部45は、同心円状に配置されている。天井部46の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース23を取り囲むガード44の上端44uに相当する。複数のカップ43は、それぞれ、複数の円筒部45の下方に配置されている。カップ43は、ガード44によって下方に案内された処理液を受け止める環状の溝を形成している。
【0057】
処理カップ41は、複数のガード44および複数のカップ43に加えて、複数のガード44および複数のカップ43を取り囲む円筒状の筒状外壁42を含む。筒状外壁42は、全てのガード44のうちで最も外側に位置するガード44を径方向に間隔を空けて取り囲んでいる。筒状外壁42は、チャンバー12の床面から上方に延びている。後述するように、ガード44は、上位置と下位置との間で昇降可能である。筒状外壁42の上端は、上位置に位置するガード44の上端44uよりも下方に配置されている。
【0058】
処理ユニット2は、複数のガード44を個別に昇降させるガード昇降ユニット47を含む。ガード昇降ユニット47は、上位置から下位置までの範囲内の任意の位置にガード44を位置させる。図2Aは、2つのガード44が下位置に配置されている状態を示している。上位置は、スピンチャック21に保持されている基板Wが配置される保持位置よりもガード44の上端44uが上方に配置される位置である。下位置は、ガード44の上端44uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0059】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも1つのガード44が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液は、基板Wから外方に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード44の内面に衝突し、このガード44に対応するカップ43に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液がカップ43に集められる。
【0060】
処理ユニット2は、上位置に位置する複数のガード44のまわりの空間内で水平面に沿って配置された仕切板48を含む。仕切板48は、複数のガード44を取り囲んでいる。仕切板48の内縁は、複数のガード44から水平に離れている。仕切板48の外縁は、チャンバー12の内周面(基板Wを取り囲む隔壁13の内周面)から水平に離れている。仕切板48は、筒状外壁42の上方に配置されている。仕切板48は、筒状外壁42の上に置かれている。仕切板48は、上位置に位置するガード44の上端44uよりも下方に配置されている。
【0061】
図2Bに示すように、処理ユニット2は、待機位置に位置する薬液ノズル31から下方に吐出された薬液を受け止める待機ポット56を含む。待機ポット56は、待機位置に位置する薬液ノズル31よりも下方に配置されている。待機位置は、平面視で薬液ノズル31が待機ポット56に重なる位置である。待機ポット56は、処理カップ41の外側に配置されている。待機ポット56は、チャンバー12内に配置されている。待機ポット56の開口56oは、仕切板48よりも上方に配置されている。待機ポット56の開口56oが仕切板48よりも上方に配置されるのであれば、待機ポット56の下端は、仕切板48よりも上方または下方に配置されてもよいし、仕切板48上に配置されてもよい。
【0062】
次に、基板処理装置1の電気的構成について説明する。
【0063】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。制御装置3は、コンピューター本体3aと、コンピューター本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピューターである。コンピューター本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶するメモリー3cとを含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶するストレージ3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取るリーダー3fと、ホストコンピューター等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0064】
制御装置3は、入力装置および表示装置に接続されている。入力装置は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置の画面に表示される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置および表示装置を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられてもよい。
【0065】
CPU3bは、ストレージ3eに記憶されたプログラムPを実行する。ストレージ3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、リーダー3fを通じてリムーバブルメディアRMからストレージ3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピューターなどの外部装置から通信装置3gを通じてストレージ3eに送られたものであってもよい。
【0066】
ストレージ3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。ストレージ3eは、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、例えば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録されたコンピューター読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体(non-transitory tangible media)である。
【0067】
ストレージ3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも1つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピューターによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。制御装置3は、後述する各工程を実行するようにプログラムされている。
【0068】
次に、基板Wの処理の一例について説明する。
【0069】
図4は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。以下では、図2A図2B、および図4を参照する。
【0070】
基板処理装置1によって基板Wを処理するときは、チャンバー12内に基板Wを搬入する搬入工程(図4のステップS1)を行う。
【0071】
具体的には、全てのガード44が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、センターロボットCR(図1A参照)が、基板WをハンドHcで水平に支持しながら、ハンドHcをチャンバー12内に進入させる。その後、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドHc上の基板Wを複数のチャックピン22の上に置く。その後、センターロボットCRは、ハンドHcをチャンバー12の内部から退避させる。
【0072】
基板Wが複数のチャックピン22の上に置かれた後は、複数のチャックピン22が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。その後、電動モーター25が駆動され、基板Wの回転が開始される。これにより、基板Wが薬液供給速度で回転する。ガード昇降ユニット47は、基板Wの回転が開始される前または後に、少なくとも1つのガード44を下位置から上位置に上昇させる。
【0073】
次に、薬液の一例であるBHFを基板Wの上面に供給して、基板Wの上面の全域を覆うBHFの液膜を形成する薬液供給工程(図4のステップS2)を行う。
【0074】
具体的には、少なくとも1つのガード44が上位置に位置している状態で、第1ノズル移動ユニット33が薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。その後、薬液バルブ32vが開かれ、薬液ノズル31がBHFの吐出を開始する。薬液バルブ32vが開かれてから所定時間が経過すると、薬液バルブ32vが閉じられ、BHFの吐出が停止される。その後、第1ノズル移動ユニット33が、薬液ノズル31を待機位置に移動させる。
【0075】
薬液ノズル31から吐出されたBHFは、薬液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、BHFが基板Wの上面の全域に供給され、基板Wの上面の全域を覆うBHFの液膜が形成される。薬液ノズル31がBHFを吐出しているとき、第1ノズル移動ユニット33は、基板Wの上面に対するBHFの衝突位置が中央部と外周部とを通るように衝突位置を移動させてもよいし、中央部で衝突位置を静止させてもよい。衝突位置を移動させるか否かは、BHFの後に基板Wの上面に供給される処理液についても同様である。
【0076】
薬液ノズル31から基板WへのBHFの吐出を停止した後、薬液ノズル31に残留しているBHFを逆流させることにより薬液ノズル31から除去するサックバックを行ってもよい。サックバックは、薬液ノズル31を待機位置の方に移動させる前に行ってもよいし、薬液ノズル31を待機位置の方に移動させながら行ってもよい。サックバックは、薬液ノズル31と薬液バルブ32vとの間で薬液配管32pに接続されたサックバック配管にBHFを流入させることにより行ってもよいし、薬液配管32pに取り付けられたサックバックバルブまでBHFを逆流させることにより行ってもよい。後者の場合、薬液バルブ32vがサックバックバルブであってもよい。
【0077】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、基板W上のBHFを洗い流すリンス液供給工程(図4のステップS3)を行う。
【0078】
具体的には、少なくとも1つのガード44が上位置に位置している状態で、第2ノズル移動ユニット36がリンス液ノズル34を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ35vが開かれ、リンス液ノズル34が純水の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット47は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード44を切り替えるために、少なくとも1つのガード44を鉛直に移動させてもよい。
【0079】
リンス液ノズル34から吐出された純水は、リンス液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のBHFは、リンス液ノズル34から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面の全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液バルブ35vが開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ35vが閉じられ、純水の吐出が停止される。その後、第2ノズル移動ユニット36が、リンス液ノズル34を待機位置に移動させる。
【0080】
次に、有機溶剤の一例であるIPAを基板Wの上面に供給して、基板W上の純水をIPAに置換する有機溶剤供給工程(図4のステップS4)を行う。
【0081】
具体的には、少なくとも1つのガード44が上位置に位置している状態で、第3ノズル移動ユニット39が溶剤ノズル37を待機位置から処理位置に移動させる。その後、溶剤バルブ38vが開かれ、溶剤ノズル37がIPAの吐出を開始する。IPAの吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット47は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード44を切り替えるために、少なくとも1つのガード44を鉛直に移動させてもよい。
【0082】
溶剤ノズル37から吐出されたIPAは、有機溶剤供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、溶剤ノズル37から吐出されたIPAに置換される。これにより、基板Wの上面の全域を覆うIPAの液膜が形成される。溶剤バルブ38vが開かれてから所定時間が経過すると、溶剤バルブ38vが閉じられ、IPAの吐出が停止される。その後、第3ノズル移動ユニット39が、溶剤ノズル37を待機位置に移動させる。
【0083】
次に、IPAを基板Wの上面から除去して、基板Wを乾燥させる乾燥工程(図4のステップS5)を行う。
【0084】
具体的には、電動モーター25が基板Wを回転方向に加速させ、薬液供給工程から有機溶剤供給工程までの基板Wの回転速度よりも大きい高回転速度(例えば数千rpm)で基板Wを回転させる。電動モーター25が基板Wの高速回転を開始すると、IPAが基板Wから外方に飛散し、基板Wの上面から除去される。これにより、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、電動モーター25が回転を停止する。これにより、基板Wの回転が停止される。
【0085】
次に、基板Wをチャンバー12から搬出する搬出工程(図4のステップS6)を行う。
【0086】
具体的には、ガード昇降ユニット47が全てのガード44を下位置まで下降させる。その後、センターロボットCRが、ハンドHcをチャンバー12内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン22が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック21上の基板WをハンドHcで支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドHcで水平に支持しながら、ハンドHcをチャンバー12の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー12から搬出される。
【0087】
次に、待機ポット56およびこれに関連する構成について説明する。最初に、薬液ノズル31について説明する。
【0088】
図5は、薬液ノズル31および待機ポット56を水平に見た概略図である。図6は、薬液ノズル31が移動する経路について説明するための概略図である。図5は、薬液ノズル31が中間位置に配置された状態を示している。
【0089】
図5に示すように、薬液ノズル31は、薬液などの処理液を吐出する吐出口31pが設けられたノズル部51と、ノズル部51を支持するアーム部52とを含む。ノズル部51は、アーム部52を介して第1ノズル移動ユニット33に支持されている。アーム部52は、ノズル部51から第1ノズル移動ユニット33に延びている。アーム部52は、ノズル部51と一体である。アーム部52を薬液ノズル31に設ける代わりに、薬液ノズル31に相当するノズル部51を取り付け可能なノズルアームを介してノズル部51を第1ノズル移動ユニット33に接続してもよい。
【0090】
ノズル部51は、鉛直な直線に沿ってアーム部52から下方に延びている。ノズル部51の中心線は、鉛直である。ノズル部51は、アーム部52から斜め下に延びていてもよい。アーム部52は、ノズル部51から水平に延びている。ノズル部51の下端は、アーム部52の下端よりも下方に配置されている。ノズル部51の中心線に沿う方向へのノズル部51の長さは、アーム部52の中心線に沿う方向へのアーム部52の長さよりも短い。
【0091】
ノズル部51は、上下に延びる円柱状である。ノズル部51は、上下に延びる大径部51aと、大径部51aから下方に離れるにしたがって細くなったテーパー部51bと、テーパー部51bから下方に延びており、大径部51aよりも細い小径部51cとを含む。大径部51a、テーパー部51b、および小径部51cは、同軸である。大径部51aの上端は、薬液ノズル31の上端に相当する。小径部51cの下端は、薬液ノズル31の下端に相当する。薬液ノズル31の吐出口31pは、小径部51cの下端で開口している。ノズル部51の形状は、これに限られない。
【0092】
第1ノズル移動ユニット33は、薬液ノズル31を水平に移動させる水平駆動アクチュエーター55hと、薬液ノズル31を鉛直に移動させる鉛直駆動アクチュエーター55vとを含む。アクチュエーターは、電気、流体、磁気、熱、または化学的エネルギーを機械的な仕事に変換する装置である。アクチュエーターには、電動モーター、エアシリンダー、およびその他の装置が含まれる。水平駆動アクチュエーター55hは、電動モーターまたはエアシリンダーであってもよいし、これら以外であってもよい。鉛直駆動アクチュエーター55vについても同様である。
【0093】
水平駆動アクチュエーター55hおよび鉛直駆動アクチュエーター55vの動力は、第1ノズル移動ユニット33の可動ボディー54を介して薬液ノズル31に伝達される。薬液ノズル31は、可動ボディー54に支持されている。可動ボディー54は、処理カップ41(図2B参照)の外側に配置されている。可動ボディー54は、鉛直な回転軸線A2に沿って上下に延びている。水平駆動アクチュエーター55hは、可動ボディー54を回転軸線A2まわりに回転させることにより薬液ノズル31を水平に移動させる。鉛直駆動アクチュエーター55vは、可動ボディー54を鉛直に移動させることにより、薬液ノズル31を鉛直に移動させる。
【0094】
図5は、アーム部52に接した状態でアーム部52を保持するアームホルダー53が第1ノズル移動ユニット33に設けられた例を示している。アームホルダー53は、可動ボディー54から水平に突出した状態で可動ボディー54に支持されている。水平駆動アクチュエーター55hおよび鉛直駆動アクチュエーター55vの動力は、可動ボディー54およびアームホルダー53を介して薬液ノズル31に伝達される。アームホルダー53に保持されるノズルの本数は2本以上であってもよい。例えば、複数のアーム部52が互いに平行になるように複数のアーム部52を水平な姿勢でアームホルダー53に取り付けてもよい。
【0095】
図6に示すように、第1ノズル移動ユニット33は、処理位置と中間位置との間で薬液ノズル31を水平に移動させ、中間位置と待機位置との間で薬液ノズル31を鉛直に移動させる。図6において、基板Wの上方に配置された薬液ノズル31の位置は処理位置を、待機ポット56内に挿入された薬液ノズル31の位置は待機位置を、これら以外の薬液ノズル31の位置は中間位置を、それぞれ表している。図6では、中間位置に配置された薬液ノズル31の上端部だけを示している。
【0096】
中間位置は、平面視で薬液ノズル31が基板Wに重ならない位置である。中間位置は、待機位置の真上の位置である。したがって、中間位置および待機位置は、鉛直方向への位置が互いに異なり、水平方向への位置が互いに等しい位置である。中間位置および処理位置は、鉛直方向への位置が互いに等しく、水平方向への位置が互いに異なる位置である。中間位置および待機位置に位置する薬液ノズル31が薬液を吐出すると、薬液は、基板Wではなく待機ポット56に供給される。
【0097】
中間位置および待機位置は、平面視で薬液ノズル31が待機ポット56に重なる位置である。薬液ノズル31が中間位置に配置されると、薬液ノズル31の吐出口31pが待機ポット56の開口56oから上方に離れた状態で、薬液ノズル31が平面視で待機ポット56の開口56oに重なる。薬液ノズル31が中間位置から待機位置に下降すると、薬液ノズル31が待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入り、薬液ノズル31の吐出口31pが待機ポット56の中に配置される。薬液ノズル31を使用しないとき、薬液ノズル31は待機位置に配置される。薬液ノズル31から基板Wに薬液を供給する前に待機ポット56に向けて薬液ノズル31に薬液を吐出させるプリディスペンスを行うときも、薬液ノズル31は待機位置に配置される。
【0098】
次に、待機ポット56および飛沫ブロッカー60について説明する。
【0099】
図7は、基板W側から薬液ノズル31および待機ポット56を水平に見た概略図である。図8は、薬液ノズル31および待機ポット56を上から見た概略図である。図9は、図7における紙面の左側から薬液ノズル31および待機ポット56を水平に見た概略図である。図7図9は、薬液ノズル31が待機位置に配置された状態を示している。以下では、薬液ノズル31のノズル部51を単に薬液ノズル31ということがある。
【0100】
前述のように、処理ユニット2は、待機位置に位置する薬液ノズル31から下方に吐出された薬液を受け止める待機ポット56を含む。図7に示すように、待機ポット56は、下方に凹んだ凹部57を含む。凹部57は、待機ポット56の上面で開口している。凹部57は、待機ポット56の上面から下方に凹んでいる。凹部57の内面58は、液体を溜める空間を形成している。凹部57の内面58によって形成された空間は、待機ポット56の内部空間に相当する。
【0101】
薬液ノズル31から下方に吐出された薬液は、凹部57の内面58に衝突し、凹部57内に溜まる。凹部57の内面58は、待機ポット56の内面58に相当する。凹部57の内面58は、上下に延びる筒状の内周面と、待機ポット56の内周面の底を閉じる底面とを含む。待機ポット56の外面59は、待機ポット56の内周面を取り囲む筒状の外周面と、待機ポット56の外周面の上縁から内側に延びる上面と、待機ポット56の外周面の下縁から内側に延びる下面とを含む。
【0102】
凹部57の内面58は、待機ポット56の外面59内に位置する開口56oを形成している。凹部57内の空間は、待機ポット56の開口56oから下方に延びている。待機ポット56の開口56oは、凹部57内の空間の入口に相当する。待機ポット56の開口56oは、平面視で長方形、正方形、円、および楕円のいずれかであってもよいし、これら以外の形状であってもよい。図8は、待機ポット56の開口56oが平面視で長方形である例を示している。
【0103】
図7に示すように、待機ポット56は、凹部57内の液体を排出する排液口58Lと、凹部57内の気体を排出する排気口58gとを含む。排液口58Lおよび排気口58gは、凹部57内に配置されている。排気口58gは、排液口58Lよりも上方に配置されている。排液口58Lは、排液口58Lに流入した液体を案内する排液配管59Lに接続されている。排気口58gは、排気口58gに流入した気体を案内する排気配管59gに接続されている。図示しない吸引装置の吸引力は、排気配管59gを介して排気口58gに伝達される。排気配管59gは、凹部57内の気体を常時吸引してもよいし、指定された期間だけまたは指定された条件が満たされたときだけ凹部57内の気体を吸引してもよい。
【0104】
プリディスペンスの際に薬液ノズル31から吐出された薬液は、待機ポット56の内面58に衝突し、待機ポット56内に溜まる。待機ポット56内の薬液は、排液口58Lを通じて排液配管59Lに排出される。排液口58Lに排出された薬液は、再利用するために、すなわち、再び薬液ノズル31に供給するために回収されてもよいし、回収されなくてもよい。プリディスペンスを行うと、薬液の飛沫や蒸気などが発生する。待機ポット56の中や待機ポット56の開口56o付近を漂う薬液の飛沫や蒸気などの気体は、排気口58gを通じて排気配管59gに排出される。
【0105】
処理ユニット2は、待機位置に位置する薬液ノズル31が薬液を下方に吐出したときに発生した薬液の飛沫を待機ポット56の外で受け止める飛沫ブロッカー60を含む。図7は、飛沫ブロッカー60が第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63を含む例を示している。
【0106】
第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の上端は、待機ポット56の開口56oよりも上方に配置されている。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、待機位置に位置する薬液ノズル31と水平に直接向かい合う。
【0107】
第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、鉛直な姿勢に保持された長方形または正方形のプレートである。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、長方形および正方形以外の形状のプレートであってもよい。第1サイドプレート61の形状は、第2サイドプレート62および第3サイドプレート63のうちの少なくとも1つの形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1サイドプレート61の大きさおよび厚みについても同様である。
【0108】
第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、鉛直な姿勢で待機ポット56から上方に延びている。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、待機ポット56の開口56oの縁に沿って配置されている。図8は、第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63が、平面視で長方形状の開口56oの3つの辺に沿って配置された例を示している。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、平面視でU字状に配置されている。待機ポット56および飛沫ブロッカー60を上から見ると、待機ポット56の開口56oが視認可能である。
【0109】
第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の上端は、互いに等しい高さに配置されている。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の下端は、互いに等しい高さに配置されている。第1サイドプレート61の上端を、第2サイドプレート62および第3サイドプレート63のうちの少なくとも1つの上端とは異なる高さに配置してもよい。第1サイドプレート61の下端についても同様である。
【0110】
第1サイドプレート61および第3サイドプレート63は、第2サイドプレート62に接している。第1サイドプレート61および第3サイドプレート63の少なくとも1つは、第2サイドプレート62から離れていてもよい。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、待機ポット56に接している。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の少なくとも1つは、待機ポット56から離れていてもよい。
【0111】
第1サイドプレート61は、待機位置に位置する薬液ノズル31の吐出口31pに対して平面視で第1ノズル移動ユニット33とは反対側に配置されている。第2サイドプレート62は、待機位置に位置する薬液ノズル31の吐出口31pに対して平面視で処理位置とは反対側に配置されている。第3サイドプレート63は、待機位置に位置する薬液ノズル31の吐出口31pに対して平面視で第1ノズル移動ユニット33側に配置されている。中間位置および待機位置に位置する薬液ノズル31は、第1サイドプレート61と第3サイドプレート63の間に配置される。
【0112】
第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63は、薬液ノズル31がいずれの位置に配置されているときでも、薬液ノズル31に接触しない位置に配置されている。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の上端は、ノズルアームに相当する薬液ノズル31のアーム部52の下端よりも下方に配置されている。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63が薬液ノズル31に接触しないのであれば、第1サイドプレート61および第2サイドプレート62のうちの少なくとも1つの上端を、薬液ノズル31のアーム部52の下端よりも上方に配置してもよい。
【0113】
薬液ノズル31を中間位置に配置すると、薬液ノズル31は、平面視で第1サイドプレート61および第3サイドプレート63の間に配置される。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の少なくとも1つの上端は、中間位置に位置する薬液ノズル31の吐出口31pよりも上方または下方に配置されてもよいし、中間位置に位置する薬液ノズル31の吐出口31pと等しい高さに配置されてもよい。
【0114】
次に、洗浄水ノズル64~65およびガスカーテンノズル67について説明する。
【0115】
図7に示すように、処理ユニット2は、待機ポット56の外から待機ポット56に向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する1つ以上の洗浄水ノズルを含む。図7は、2本の洗浄水ノズル64~65が設けられた例を示している。
【0116】
2本の洗浄水ノズル64~65の一方は、待機ポット56の中に向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する内側用洗浄水ノズル64である。2本の洗浄水ノズル64~65の他方は、待機ポット56の外面59に向けて洗浄水の霧状またはシャワー状に吐出する外側用洗浄水ノズル65である。内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pは、内側用吐出口の一例である。外側用洗浄水ノズル65の吐出口65pは、外側用吐出口の一例である。以下では、内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65のそれぞれを、洗浄水ノズル64~65という場合がある。
【0117】
洗浄水ノズル64~65は、洗浄水を霧状に吐出するミストノズルである。洗浄水ノズル64~65は、洗浄水をシャワー状に吐出するシャワーノズルであってもよい。図9は、外側用洗浄水ノズル65がシャワーノズルである例を示している。内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の一方がミストノズルであり、内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の他方がシャワーノズルであってもよい。ミストノズルは、液体および気体を衝突させることによりミストを発生する外部混合型または内部混合型の二流体ノズルであってもよいし、圧縮された液体をオリフィスから吐出することによりまたはベンチュリ効果(Venturi effect)を利用することによりミストを発生するスプレーノズルであってもよい。
【0118】
ミストノズルは、ミストノズルの吐出口から洗浄水のミストを吐出することにより、ミストノズルの吐出口から円錐状に広がる空間内に洗浄水のミストを拡散させる。洗浄水のミストの広がり方は、これに限られない。ミストノズルは、ミストノズルの吐出口から扇状に広がる平坦な空間内に洗浄水のミストが分散するように、洗浄水のミストをミストノズルの吐出口から吐出してもよいし、ミストノズルの吐出口から直線状に延びる柱状の空間内に洗浄水のミストが分散するように、洗浄水のミストをミストノズルの吐出口から吐出してもよい。
【0119】
洗浄水ノズル64~65は、洗浄水バルブ66vが取り付けられた洗浄水配管66pに接続されている。洗浄水バルブ66vが開かれると、洗浄水配管66pから洗浄水ノズル64~65に洗浄水が供給され、洗浄水ノズル64~65が洗浄水のミストの吐出を開始する。洗浄水バルブ66vが閉じられると、洗浄水配管66pから洗浄水ノズル64~65への洗浄水の供給が停止され、洗浄水ノズル64~65が洗浄水のミストの吐出を停止する。洗浄水は、純水である。洗浄水は、純水以外の液体であってもよい。洗浄水は、前述のリンス液の具体例のいずれかであってもよい。以下では、内側用洗浄水ノズル64に対応する洗浄水バルブ66vを内側用洗浄水バルブ66vと、外側用洗浄水ノズル65に対応する洗浄水バルブ66vを外側用洗浄水バルブ66vと、いうことがある。
【0120】
内側用洗浄水ノズル64は、待機ポット56の開口56oに向けて洗浄水のミストを円錐状に下方に吐出する。内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pは、待機ポット56の開口56oよりも上方に配置されている。図7は、内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pから円錐状に広がる空間の中心線が斜め下に延びるように、内側用洗浄水ノズル64が洗浄水のミストを斜め下に吐出する例を示している。内側用洗浄水ノズル64は、内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pから円錐状に広がる空間の中心線が鉛直に延びるように、洗浄水のミストを真下に吐出してもよい。
【0121】
内側用洗浄水ノズル64から吐出された洗浄水のミストは、待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入る。図7は、内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pが飛沫ブロッカー60の上端よりも上方に配置された例を示している。この例では、内側用洗浄水ノズル64から吐出された洗浄水のミストの少なくとも一部が、飛沫ブロッカー60の内側の空間を下方に通過し、待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入る。洗浄水のミストが待機ポット56の中に入るのであれば、内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pは、飛沫ブロッカー60の上端よりも下方に配置されていてもよい。
【0122】
外側用洗浄水ノズル65は、待機ポット56の外面59に向けて洗浄水のミストを円錐状に吐出する。外側用洗浄水ノズル65の吐出口65pは、待機ポット56の開口56oよりも下方に配置されている。図7は、外側用洗浄水ノズル65の吐出口65pから円錐状に広がる空間の中心線が水平に延びるように、外側用洗浄水ノズル65が洗浄水のミストを吐出する例を示している。外側用洗浄水ノズル65は、外側用洗浄水ノズル65の吐出口65pから円錐状に広がる空間の中心線が斜め上または斜め下に延びるように、洗浄水のミストを吐出してもよい。図7は、柱状の外側用洗浄水ノズル65の中心線を含む直線が待機ポット56の開口56oを通過することなく待機ポット56の外面59を通過する例を示している。
【0123】
外側用洗浄水ノズル65から吐出された洗浄水のミストは、待機ポット56の外面59に吹き付けられる。外側用洗浄水ノズル65から吐出された洗浄水のミストは、飛沫ブロッカー60の外面に吹き付けられてもよいし、吹き付けられなくてもよい。外側用洗浄水ノズル65の位置および姿勢は、外側用洗浄水ノズル65から吐出された全てまたは殆ど全ての洗浄水のミストが待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入らないように設定されていてもよい。洗浄水のミストが待機ポット56の中に入ったとしても、微量であれば、排気口58gを通じて待機ポット56から排出される。
【0124】
図7に示すように、処理ユニット2は、待機ポット56に近づくまたは待機ポット56から遠ざかる気流を遮断するガスカーテンノズル67を含む。ガスカーテンノズル67は、ガスカーテンノズル67の吐出口67pから気体を吐出することにより、シート状の気流を形成する。ガスカーテンノズル67の吐出口67pは、スリット状の穴または1列に並んだ複数の穴であってもよいし、スリット状の穴と1列に並んだ複数の穴とを含んでいてもよい。
【0125】
ガスカーテンノズル67は、ガスバルブ68vが取り付けられたガス配管68pに接続されている。ガスバルブ68vが開かれると、ガス配管68pからガスカーテンノズル67に気体が供給され、ガスカーテンノズル67が気体の吐出を開始する。ガスバルブ68vが閉じられると、ガス配管68pからガスカーテンノズル67への気体の供給が停止され、ガスカーテンノズル67が気体の吐出を停止する。ガスカーテンノズル67から吐出される気体は、不活性ガス、清浄空気、および乾燥空気のいずれかであってもよいし、これら以外であってもよい。図7中のCDAは、清浄な乾燥した空気(clean dry air)を表している。これは他の図でも同様である。
【0126】
ガスカーテンノズル67の吐出口67pは、内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pよりも上方に配置されている。したがって、ガスカーテンノズル67の吐出口67pは、待機ポット56の開口56oよりも上方に配置されている。ガスカーテンノズル67は、待機ポット56の上方でガスカーテンノズル67の吐出口67pから気体を吐出することにより、平面視で待機ポット56の開口56oに重なるシート状の気流を待機ポット56の上方に形成する。ガスカーテンノズル67は、さらに、内側用洗浄水ノズル64によって吐出された洗浄水のミストの上方でガスカーテンノズル67の吐出口67pから気体を吐出することにより、平面視で当該ミストに重なるシート状の気流を当該ミストの上方に形成する。
【0127】
内側用洗浄水ノズル64が洗浄水のミストを吐出すると、一部のミストが上方に流れ得る。ガスカーテンノズル67に気体を吐出させながら、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させれば、ガスカーテンノズル67によって形成された気流の層によってこのようなミストの流れを遮断することができ、不要な範囲にまで拡散する洗浄水のミストを減らすことができる。さらに、ガスカーテンノズル67に気体を吐出させると、FFU11(図2A参照)から下方に流れる清浄空気のダウンフローが気流の層によって遮断される。これにより、洗浄水のミストが空気中を浮遊する時間を延ばすことができ、洗浄水のミストが水平に広がる範囲を広げることができる。
【0128】
ガスカーテンノズル67の吐出口67pは、水平に気体を吐出してもよいし、斜め上または斜め下に気体を吐出してもよい。図7は、ガスカーテンノズル67の吐出口67pが水平に気体を吐出する例を示している。ガスカーテンノズル67の吐出口67pは、基板Wに向かう方向に気体を吐出してもよいし、基板Wの上方を通らずにチャンバー12の内周面に向かう方向に気体を吐出してもよい。後者の場合、洗浄水のミストなどの空気中に漂う液体または固体の微粒子を、ガスカーテンノズル67の吐出口67pから吐出された気体によってチャンバー12の内周面の方に流すことができ、基板Wまたはその周辺に配置された部材に付着する微粒子を減らすことができる。
【0129】
内側用洗浄水ノズル64から吐出された洗浄水のミストは、待機ポット56の中に入るだけでなく、待機ポット56の外面59や待機ポット56のまわりの部材に付着する。外側用洗浄水ノズル65から吐出された洗浄水のミストも、待機ポット56の外面59や待機ポット56のまわりの部材に付着する。これにより、待機ポット56の外面59や待機ポット56のまわりの部材に付着している薬液の飛沫に水を与えることができ、この飛沫から析出する結晶を減らすことができる。薬液の飛沫が結晶化している場合は、洗浄水のミストに結晶を溶解させることにより、当該結晶を液体に戻すことができる。結晶の全体が液体に戻らなかったとしても、洗浄水のミストを結晶に付着させることにより当該結晶を空気中に浮遊させ難くすることができる。
【0130】
薬液ノズル31が待機位置でプリディスペンスを行っているときに、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させると、待機ポット56から上方に流れる薬液の飛沫に洗浄水のミストが接触する一方で、洗浄水のミストが薬液ノズル31に付着する。薬液ノズル31に付着した洗浄水の大半は蒸発して薬液ノズル31からなくなるものの、このような洗浄水の付着が好ましくなければ、処理位置などの薬液ノズル31が平面視で待機ポット56に重ならない位置に配置されているときに、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させればよい。もしくは、薬液ノズル31が平面視で待機ポット56に重なる位置に配置されているときに薬液ノズル31に向けて気体を吐出する乾燥用ノズル70(図9参照)を設けてもよい。
【0131】
図9に示すように、乾燥用ノズル70は、乾燥用ノズル70に向けて気体を案内する乾燥用配管71pに接続されている。乾燥用配管71pに介装された乾燥用バルブ71vが開かれると、気体が、乾燥用配管71pから乾燥用ノズル70に供給され、乾燥用ノズル70から連続的に吐出される。乾燥用ノズル70は、薬液ノズル31が中間位置または待機位置で静止しているときに薬液ノズル31に向けて気体を吐出してもよいし、薬液ノズル31が中間位置から待機位置または待機位置から中間位置に移動しているときに薬液ノズル31に向けて気体を吐出してもよい。乾燥用ノズル70から吐出される気体は、不活性ガス、清浄空気、および乾燥空気のいずれかであってもよいし、これら以外であってもよい。
【0132】
薬液ノズル31が待機位置でプリディスペンスを行っているときに、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させると、洗浄水のミストが待機ポット56の中に入る。大半のミストは、排気口58gを通じて待機ポット56から排出されるものの、微量の洗浄水が薬液に混じり、薬液と共に排液口58Lを通じて待機ポット56から排出される場合がある。待機ポット56から排出された薬液を再利用するために回収する場合は、濃度が変化した薬液が回収されることになる。
【0133】
このような洗浄水の混入が好ましくなければ、プリディスペンスを行っていない期間に内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させてもよい。もしくは、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させずにプリディスペンスを開始し、その後、プリディスペンスを行いながら内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させてもよい。このようにすれば、プリディスペンスを行う期間の初めでは、洗浄水が混じっていないまたは殆ど混じっていない薬液を排液口58Lに排出することができる。さらに、薬液の飛沫が待機ポット56から広がり始めると、内側用洗浄水ノズル64が洗浄水のミストの吐出を開始するので、薬液の飛沫が拡散する範囲を狭めることができる。
【0134】
内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の少なくとも一方が洗浄水を吐出すると、チャンバー12の内部全体ではなく、待機ポット56付近の湿度だけが高まり、待機ポット56付近が高湿度に維持される。制御装置3は、洗浄水ノズル64~65に洗浄水のミストを常時吐出させてもよいし、指定された期間だけまたは指定された条件が満たされたときだけ洗浄水ノズル64~65に洗浄水のミストを吐出させてもよい。制御装置3は、内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の一方に洗浄水のミストを常時吐出させながら、指定された期間だけまたは指定された条件が満たされたときだけ内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の他方に洗浄水のミストを吐出させてもよい。
【0135】
指定された期間だけまたは指定された条件が満たされたときだけ内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の少なくとも一方に洗浄水のミストを吐出させる場合、制御装置3は、レシピで指定された期間だけ洗浄水ノズル64~65に洗浄水のミストを吐出させてもよいし、待機ポット56に接する雰囲気の湿度を検出する湿度計72(図7参照)によって検出された湿度が下限値を下回っている期間だけ洗浄水ノズル64~65に洗浄水のミストを吐出させてもよい。
【0136】
薬液ノズル31から吐出される薬液が室温のBHFである場合、薬液に接する雰囲気の湿度が例えば60%以上であれば、薬液から結晶が析出しないまたは殆ど析出しないと考えられる。この場合、制御装置3は、湿度の下限値を60%に設定し、待機ポット56を含む空間内の湿度を下限値以上に維持してもよい。具体的には、湿度計72によって検出された湿度が下限値を下回った場合、制御装置3は、湿度計72によって検出された湿度が下限値を超える中間値(例えば70%)に到達するまで洗浄水ノズル64~65に洗浄水のミストを吐出させてもよい。
【0137】
制御装置3は、ガスカーテンノズル67に気体を常時吐出させてもよいし、指定された期間だけまたは指定された条件が満たされたときだけガスカーテンノズル67に気体を吐出させてもよい。制御装置3は、内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の少なくとも一方が洗浄水のミストを吐出しているときに、ガスカーテンノズル67に気体を吐出させてもよいし、内側用洗浄水ノズル64および外側用洗浄水ノズル65の両方が洗浄水のミストを吐出していないときに、ガスカーテンノズル67に気体を吐出させてもよい。
【0138】
次に、洗浄水ノズル64~65に洗浄水を吐出させるときの動作の一例について説明する。
【0139】
図10は、薬液ノズル31が待機位置でプリディスペンスを行い、処理位置で基板Wに薬液を供給し、待機位置に戻るまでの期間に行われるミストの吐出について説明するためのタイムチャートである。
【0140】
図10中の「BHF吐出」の右側のONは、薬液バルブ32vが開かれており、薬液ノズル31が薬液を吐出していることを表している。図10中の「BHF吐出」の右側のOFFは、薬液バルブ32vが閉じられており、薬液ノズル31が薬液を吐出していないことを表している。図10中の「ノズルの位置」は、薬液ノズル31の位置を表している。
【0141】
図10中の「内側へのミスト吐出」の右側のONおよびOFFは、薬液、薬液バルブ32v、および薬液ノズル31が、洗浄水のミスト、内側用洗浄水バルブ66v、および内側用洗浄水ノズル64に変わることを除き、BHF吐出と同様である。図10中の「外側へのミスト吐出」の右側のONおよびOFFは、薬液、薬液バルブ32v、および薬液ノズル31が、洗浄水のミスト、外側用洗浄水バルブ66v、および外側用洗浄水ノズル65に変わることを除き、BHF吐出と同様である。図10中の「CDA吐出」の右側のONおよびOFFは、薬液、薬液バルブ32v、および薬液ノズル31が、気体、ガスバルブ68v、およびガスカーテンノズル67に変わることを除き、BHF吐出と同様である。
【0142】
図10は、薬液ノズル31が待機位置でプリディスペンスを行う前の時刻から、処理位置から待機位置に戻った後の時刻までの全期間にわたって「外側へのミスト吐出」がONであり、外側用洗浄水ノズル65が洗浄水のミストを吐出し続ける例を示している。制御装置3は、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストを吐出させておらず、ガスカーテンノズル67に気体を吐出させていない状態で、待機位置に位置する薬液ノズル31に薬液を吐出させる。
【0143】
具体的には、制御装置3は、時刻T1で薬液ノズル31に薬液の吐出を開始させ、時刻T2で薬液ノズル31に薬液の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、第1ノズル移動ユニット33を制御することにより、薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。薬液ノズル31が処理位置に到着すると、制御装置3は、薬液ノズル31に薬液の吐出を開始させる。これにより、前述の薬液供給工程(図4のステップS2)が行われる。図10は、時刻T3で薬液ノズル31が処理位置に到着すると共に薬液の吐出が開始される例を示している。薬液の吐出は、薬液ノズル31が処理位置に到着するのと同時ではなく、到着した後に開始されてもよい。
【0144】
制御装置3は、薬液ノズル31がプリディスペンスを行い待機ポット56から離れた後に、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストの吐出を開始させる。図10は、時刻T2で薬液ノズル31が待機ポット56から離れ、時刻T4で内側用洗浄水ノズル64が洗浄水の吐出を開始する例を示している。この例では、薬液ノズル31が処理位置に到着した後であって薬液を吐出しているときに、内側用洗浄水ノズル64が洗浄水の吐出を開始する。さらに、この例では、内側用洗浄水ノズル64が洗浄水の吐出を開始するのと同時に、ガスカーテンノズル67が気体の吐出を開始する。制御装置3は、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水の吐出を開始させる前または後に、ガスカーテンノズル67に気体の吐出を開始させてもよい。
【0145】
制御装置3は、時刻T5に内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストの吐出を停止させ、ガスカーテンノズル67に気体の吐出を停止させる。制御装置3は、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水の吐出を停止させる前または後に、ガスカーテンノズル67に気体の吐出を停止させてもよい。その後、制御装置3は、時刻T6に薬液ノズル31に薬液の吐出を停止させ、薬液ノズル31を処理位置から待機位置に移動させる。薬液ノズル31は、時刻T7に待機位置に戻る。制御装置3は、薬液ノズル31が薬液の吐出を停止するのと同時ではなく、薬液ノズル31が薬液の吐出を停止した後に、薬液ノズル31を処理位置から待機位置に移動させてもよい。
【0146】
図10に示す例では、薬液ノズル31が待機位置から離れてから直ぐに、内側用洗浄水ノズル64に洗浄水のミストの吐出を開始させるのではなく、薬液ノズル31が待機位置から離れてからある程度の時間が経過した時刻T4に、内側用洗浄水ノズル64が洗浄水のミストの吐出を開始する。したがって、薬液ノズル31の移動に伴って待機ポット56付近に形成された気流がなくなったまたは弱まった状態で、内側用洗浄水ノズル64が洗浄水の吐出を開始する。これにより、意図しない範囲にまで拡散する洗浄水のミストを減らすことができる。
【0147】
さらに、図10に示す例では、薬液ノズル31が待機位置に向かって移動する前の時刻T5に、内側用洗浄水ノズル64が洗浄水のミストの吐出を停止する。薬液ノズル31が待機位置に近づくと、薬液ノズル31の移動に伴う気流が待機ポット56付近に形成される。内側用洗浄水ノズル64は、このような気流がないまたは弱い状態で洗浄水の吐出を停止する。これにより、意図しない範囲にまで拡散する洗浄水のミストを減らすことができる。
【0148】
次に、本実施形態に係る効果について説明する。
【0149】
本実施形態では、薬液ノズル31から薬液を下方に吐出し、水平な基板Wの上面に供給する。水平駆動アクチュエーター55hおよび鉛直駆動アクチュエーター55vは、平面視で薬液ノズル31が基板Wに重なる処理位置から、平面視で薬液ノズル31が基板Wに重ならない待機位置に、薬液ノズル31を移動させる。待機位置に位置する薬液ノズル31から下方に吐出された薬液は、待機ポット56の凹部57によって受け止められる。洗浄水ノズル64~65から吐出された霧状またはシャワー状の洗浄水は、待機ポット56および待機ポット56のまわりの部材に供給される。
【0150】
薬液ノズル31から下方に吐出された薬液が待機ポット56に受け止められると、薬液の飛沫が発生する。薬液が蒸発すると薬液の飛沫から結晶が析出することがある。洗浄水ノズル64~65から待機ポット56に向けて洗浄水を吐出することにより、薬液の飛沫に水を与えることができ、この飛沫から析出する結晶を減らすことができる。薬液の飛沫が結晶化している場合は、洗浄水に結晶を溶解させることにより、当該結晶を液体に戻すことができる。結晶の全体が液体に戻らなかったとしても、洗浄水を結晶に付着させることにより当該結晶を空気中に浮遊させ難くすることができる。
【0151】
待機ポット56から漏れた薬液の飛沫が広がる範囲を特定することは難しい。薬液の飛沫が極めて広い範囲に拡散することもある。薬液の飛沫が拡散し得る全ての範囲に洗浄水を自動で供給して、漏れ出た薬液を洗浄水で洗い流すことが考えられる。しかしながら、この方法では、多量の洗浄水が必要になる上に、不必要な範囲にまで多量の洗浄水が供給される。洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する場合は、ノズルと同程度の直径の液柱(洗浄水の柱)を形成しながら洗浄水をノズルから供給する場合に比べて少量の洗浄水を広い範囲に供給することができる。
【0152】
洗浄水を待機ポット56に向けて霧状またはシャワー状に吐出する場合、待機ポット56から漏れ出た薬液が待機ポット56またはその付近に残るかもしれない。例えば自動または手動で定期的に基板処理装置1を洗浄する際に、このような薬液を洗い流せば、結晶の発生源を除去することができる。洗浄水を待機ポット56に向けて霧状またはシャワー状に吐出すれば、結晶の析出を防止または遅延させることができるので、定期的な洗浄の頻度を増やす必要もない。これにより、不必要な範囲にまで多量の洗浄水が供給されるなどの洗浄水の供給に伴う新たな問題の発生を防止しながら、多量の結晶が待機ポット56またはその付近に発生することを防止できる。
【0153】
本実施形態では、待機ポット56の開口56oよりも上方に配置された内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pから待機ポット56の開口56oに向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。霧状またはシャワー状の洗浄水は、待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入る。一部の洗浄水は、待機ポット56の外面59や待機ポット56のまわりの部材に供給される。薬液の飛沫は、待機ポット56の開口56oやその付近に残り易い。したがって、薬液の飛沫に洗浄水を効率的に供給することができる。
【0154】
本実施形態では、空中に浮遊する液体または固体の微粒子を含む気体や、このような微粒子を含まない気体を、待機ポット56の凹部57から排気配管59gに排出する。洗浄水ノズル64~65から吐出された霧状またはシャワー状の洗浄水は、待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入る。凹部57内の洗浄水のミストは、排気配管59gに排出される。これにより、凹部57内に残留する洗浄水を減らすことができる。
【0155】
本実施形態では、薬液ノズル31が平面視で基板Wに重なる処理位置に配置されているときに、待機ポット56の開口56oよりも上方に配置された内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pから待機ポット56の開口56oに向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。薬液ノズル31が待機位置に配置されているときに、洗浄水ノズル64~65に洗浄水を吐出させると、霧状またはシャワー状の洗浄水が薬液ノズル31に付着する。したがって、薬液ノズル31が処理位置に配置されているときに洗浄水ノズル64~65に洗浄水を吐出させれば、薬液ノズル31に付着する洗浄水を減らすことができる。
【0156】
本実施形態では、薬液ノズル31と飛沫ブロッカー60とを水平に直接向かい合わせる。待機位置に位置する薬液ノズル31が待機ポット56に向けて薬液を下方に吐出したときに発生した薬液の飛沫の一部は、飛沫ブロッカー60に受け止められる。内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pは、待機ポット56の開口56oだけでなく、飛沫ブロッカー60にも霧状またはシャワー状の洗浄水を供給する。これにより、薬液の飛沫が拡散する範囲を飛沫ブロッカー60によって狭めることができ、飛沫ブロッカー60に付着している薬液の飛沫から結晶が析出することを防止または遅延させることができる。
【0157】
本実施形態では、待機ポット56および飛沫ブロッカー60の上から待機ポット56の開口56oが見える。待機ポット56および飛沫ブロッカー60の上から洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出すると、洗浄水が飛沫ブロッカー60に供給されると共に、待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入る。待機ポット56の開口56oの上方に配置されたシーリングプレートを飛沫ブロッカー60に設ければ、薬液の飛沫が上方に拡散する範囲を狭めることができるものの、シーリングプレートの下の空間に薬液の飛沫が残る場合がある。この場合、シーリングプレートがあるので、シーリングプレートの下の空間を洗浄し難い。待機ポット56および飛沫ブロッカー60の上から待機ポット56の開口56oが見える構造では、このような問題の発生を防止できる。
【0158】
本実施形態では、内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pよりも上方に配置されたガスカーテンノズル67の吐出口67pから気体を吐出する。ガスカーテンノズル67の吐出口67pから吐出された気体は、待機ポット56の上方の空間を浮遊する洗浄水のミストの上方に気流を形成する。上方に流れる洗浄水のミストは、ガスカーテンノズル67から流れる気流によって遮断される。これにより、不要な範囲にまで拡散する洗浄水のミストを減らすことができる。
【0159】
本実施形態では、待機ポット56の開口56oよりも下方に配置された外側用洗浄水ノズル65の吐出口65pから待機ポット56の外面59に向けて洗浄水を霧状またはシャワー状に吐出する。外側用洗浄水ノズル65の吐出口65pが待機ポット56の開口56oよりも下方に配置されているので、洗浄水のミストが待機ポット56の開口56oを通じて待機ポット56の中に入り難い。これにより、凹部57内に残留する洗浄水を減らしながら、薬液の飛沫が付着し易い待機ポット56の外面59に効率的に洗浄水を供給することができる。
【0160】
次に、他の実施形態について説明する。
【0161】
内側用洗浄水ノズル64の吐出口64pを、第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の上方ではなく、第1サイドプレート61および第3サイドプレート63の間に配置してもよい。
【0162】
待機ポット56の開口56oよりも上方に配置された吐出口64pを内側用洗浄水ノズル64に設け、待機ポット56の開口56oよりも下方に配置された吐出口65pを外側用洗浄水ノズル65に設けるのではなく、吐出口64pおよび吐出口65pを1つの洗浄水ノズルに設けてもよい。
【0163】
制御装置3は、プリディスペンスを1回ではなく複数回行った後に洗浄水ノズル64~65に洗浄水を吐出させてもよい。制御装置3は、一定時間が経過するたびにまたは任意の時期に洗浄水ノズル64~65に洗浄水を吐出させてもよい。制御装置3は、待機ポット56を含む範囲を撮影するカメラによって撮影された画像に基づいて洗浄水ノズル64~65に洗浄水を吐出させるか否かを判断してもよい。
【0164】
制御装置3は、待機ポット56付近の湿度に加えてまたは代えて、待機ポット56付近の気温と待機ポット56付近の気圧とのうちの少なくとも1つを考慮して、洗浄水ノズル64~65に洗浄水を吐出させるか否かを判断してもよい。つまり、待機ポット56およびその付近に付着している薬液の濃度が飽和濃度未満に維持されるように、待機ポット56およびその付近に洗浄水を供給してもよい。気温を考慮する場合、待機ポット56付近の気温を測定する温度計を制御装置3に接続すればよい。気圧を考慮する場合、待機ポット56付近の気圧を測定する気圧計を制御装置3に接続すればよい。
【0165】
飛沫ブロッカー60、排気配管59g、およびガスカーテンノズル67のうちの少なくとも1つを省略してもよい。第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63の全てを省略するのではなく、第1サイドプレート61、第2サイドプレート62、および第3サイドプレート63のうちの1つまたは2つを省略してもよい。
【0166】
スピンチャック21は、複数のチャックピン22を基板Wの端面に押し付けるメカニカルチャックに限らず、基板Wの下面をスピンベース23の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキュームチャックであってもよい。スピンチャック21がメカニカルチャックである場合、チャックピン22は、基板Wを水平に保持する基板ホルダーに相当する。スピンチャック21がバキュームチャックである場合、スピンベース23は、基板Wを水平に保持する基板ホルダーに相当する。
【0167】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0168】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0169】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0170】
1:基板処理装置、2:処理ユニット、3:制御装置、3a:コンピューター本体、3b:CPU、3c:メモリー、3d:周辺装置、3e:ストレージ、3f:リーダー、3g:通信装置、4:搬送路、5:搬送システム、11:FFU、12:チャンバー、13:隔壁、13a:送風口、13b:搬入搬出口、17:シャッター、18:整流板、21:スピンチャック、22:チャックピン、23:スピンベース、24:スピン軸、25:電動モーター、26:チャックハウジング、31:薬液ノズル、31p:吐出口、32p:薬液配管、32v:薬液バルブ、33:第1ノズル移動ユニット、34:リンス液ノズル、35p:リンス液配管、35v:リンス液バルブ、36:第2ノズル移動ユニット、37:溶剤ノズル、38p:溶剤配管、38v:溶剤バルブ、39:第3ノズル移動ユニット、41:処理カップ、42:筒状外壁、43:カップ、44:ガード、44u:ガードの上端、45:ガードの円筒部、46:ガードの天井部、47:ガード昇降ユニット、48:仕切板、49:排気ダクト、49u:排気ダクトの上流端、51:ノズル部、51a:大径部、51b:テーパー部、51c:小径部、52:アーム部、53:アームホルダー、54:可動ボディー、55h:水平駆動アクチュエーター、55v:鉛直駆動アクチュエーター、56:待機ポット、56o:開口、57:凹部、58:内面、58L:排液口、58g:排気口、59:外面、59L:排液配管、59g:排気配管、60:飛沫ブロッカー、61:第1サイドプレート、62:第2サイドプレート、63:第3サイドプレート、64:内側用洗浄水ノズル(洗浄水ノズル)、64p:吐出口(内側用吐出口)、65:外側用洗浄水ノズルル(洗浄水ノズル)、65p:吐出口(外側用吐出口)、66p:洗浄水配管、66v:洗浄水バルブ、67:ガスカーテンノズル、67p:吐出口、68p:ガス配管、68v:ガスバルブ、70:乾燥用ノズル、71p:乾燥用配管、71v:乾燥用バルブ、72:湿度計、A1:回転軸線、A2:回転軸線、CA:キャリア、CR:センターロボット、Hc:ハンド、Hi:ハンド、IR:インデクサロボット、LP:ロードポート、P:プログラム、RM:リムーバブルメディア、S1~S6:ステップ、SL:下空間、Su:上空間、TW:タワー、W:基板
図1A
図1B
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図2B
図3
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図6
図7
図8
図9
図10