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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091023
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/42 20060101AFI20240627BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240627BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F23R3/42 B
F02C7/00 C
F01D25/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207279
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 竜佐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博愛
(57)【要約】
【課題】シェルとライナーとの間の隙間の空気の漏れを抑制する。
【解決手段】ガスタービンの燃焼器は、シェルとライナーとの間の隙間を封止するシールを備える。前記シールは、前記シェルの内周面に接触し、前記シェルの軸線方向及び周方向に延びたアキシャル部と、前記アキシャル部から前記ライナーの外周面よりも前記シェルの径方向の内方に突出し、前記軸線方向における前記ライナーの端面に接触し、前記径方向及び前記周方向に延びたラジアル部と、前記シェルの前記内周面及び前記ライナーの前記端面に接触するように、前記シールを前記シェル及び前記ライナーに対して位置決めする位置決め部と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を囲むシェルと、
前記シェルの径方向の内側に位置し、前記燃焼室に面するライナーと、
前記シェルと前記ライナーの間に隙間がある状態で前記シェルに前記ライナーを取り付ける取付具と、
前記シェルの軸線方向において前記シェルよりも短く、前記シェルの周方向に延び、前記シェルと前記ライナーとの間の隙間を封止するシールと、を備え、
前記シールは、
前記シェルの内周面に接触し、前記軸線方向及び前記周方向に延びたアキシャル部と、
前記アキシャル部から前記ライナーの外周面よりも前記径方向の内方に突出し、前記軸線方向における前記ライナーの端面に接触し、前記径方向及び前記周方向に延びたラジアル部と、
前記シェルの前記内周面及び前記ライナーの前記端面に接触するように、前記シールを前記シェル及び前記ライナーに対して位置決めする位置決め部と、を含む、ガスタービンの燃焼器。
【請求項2】
前記シェルは、金属製のシェルであり、
前記ライナーは、セラミックス複合材料製のCMCライナーである、請求項1に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記取付具に取り付けられることで、前記シールを前記シェル及び前記ライナーに対して位置決めしている、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記取付具が挿通される取付穴を有する、請求項3に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記アキシャル部から前記取付具に向けて前記軸線方向に突出しており、
前記軸線方向における前記アキシャル部の長さは、前記軸線方向における前記ライナーの前記端面から前記取付具の中心までの距離よりも短い、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項6】
前記シールは、前記周方向の一部に配置されたスリットを有する、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項7】
前記シールは、前記周方向に延びたリング形状を有する、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンの燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費向上を目的としてガスタービンにおける燃焼温度の高温化が進んでいる。特許文献1に開示されたガスタービンの燃焼器では、燃焼室を囲むシェルの内側にライナーを配置し、ライナーをシェルに締結した燃焼器が提案されている。シェル及びライナーには冷却孔が設けられている。シェルの冷却孔からシェルとライナーとの間の隙間に入った空気は、ライナーの冷却孔から燃焼室に吐出し、ライナーの内周面を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9534783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライナーの冷却孔から燃焼室に空気を十分に吐出させるには、シェルとライナーとの間の隙間に入った空気の圧力が高く保たれる必要がある。しかし、燃焼室の燃焼ガスの流れ方向における当該隙間の上流側又は下流側から圧縮空気が漏れると、ライナーの冷却孔から燃焼室に空気が十分に吐出されなくなる。そのため、当該隙間の上流側及び下流側をシールで塞ぐことが考えられる。
【0005】
しかし、ライナーの熱膨張量とシェルの熱膨張量とが異なる場合、シェルとライナーとの間の隙間をシールで塞ぐことが難しい。
【0006】
そこで、本開示の一態様は、シェルとライナーとの間の隙間の空気の漏れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るガスタービンの燃焼器は、燃焼室を囲むシェルと、前記シェルの径方向の内側に位置し、前記燃焼室に面するライナーと、前記シェルと前記ライナーの間に隙間がある状態で前記シェルに前記ライナーを取り付ける取付具と、前記シェルの軸線方向において前記シェルよりも短く、前記シェルの周方向に延び、前記シェルと前記ライナーとの間の隙間を封止するシールと、を備える。前記シールは、前記シェルの内周面に接触し、前記軸線方向及び前記周方向に延びたアキシャル部と、前記アキシャル部から前記ライナーの外周面よりも前記径方向の内方に突出し、前記軸線方向における前記ライナーの端面に接触し、前記径方向及び前記周方向に延びたラジアル部と、前記シェルの前記内周面及び前記ライナーの前記端面に接触するように、前記シェル及び前記ライナーに対して前記シールを位置決めする位置決め部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、シールはシェルよりも軸線方向に短いため、軸線方向においてシールの熱膨張量はシェルの熱膨張量よりも小さくなる。そのため、シェルとライナーとの間に熱膨張差が生じたときでも、シールとライナーとの間の軸線方向の熱膨張差は小さくなる。その結果、シールのラジアル部とライナーの端面との間に生じる隙間を抑制できる。よって、シェルとライナーとの間の隙間の圧縮空気の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るガスタービンの概略断面図である。
図2図2は、図1のガスタービンの燃焼器の圧縮空気の流れ方向の下流側から見た断面図である。
図3図3は、図2の燃焼器のIII-III線断面図である。
図4図4は、図3の燃焼器の要部の部分断面斜視図である。
図5図5は、図4のV-V線断面図である。
図6図6は、図4のVI-VI線断面図である。
図7図7は、図4のシールのスリットを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、ガスタービン1の軸線Xは、燃焼器3の軸線と同じである。燃焼器3の軸線Xに直交する方向を燃焼器3の径方向Rと称し、軸線X周りに延びる方向を燃焼器3の周方向Cと称する。燃焼室16の圧縮空気の流れ方向Fにおいて、燃料インジェクタ17に向かう側を上流側と称し、排出口16aに向かう側を下流側と称する。
【0011】
図1は、実施形態に係るガスタービン1の概略断面図である。図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2、燃焼器3、タービン4、回転軸5、ケーシング10及びファン7を備える。ガスタービン1では、外部からケーシング10内に導入された空気が圧縮機2で圧縮され、圧縮機2で圧縮された圧縮空気が燃焼器3に導かれ、燃焼器3で燃料を圧縮空気とともに燃焼して得られた高温高圧の燃焼ガスがもつエネルギーがタービン4において回転動力として取り出される。
【0012】
タービン4は、回転軸5を介して圧縮機2に連結されている。回転軸5の軸線は、ガスタービン1の軸線Xに一致する。回転軸5の前端部には、ファン7が接続されている。タービン4で発生する回転動力は、圧縮機2及びファン7を駆動する。ガスタービンには、様々な形式が存在する。ターボファンエンジンは、主にタービンで発生する回転動力でファンを駆動し、航空機用エンジンとして用いられる。図1では、ガスタービンの一形態であるターボファンエンジンを例示しているが、ガスタービンの形態はこれに限られない。
【0013】
図2は、図1のガスタービン1の燃焼器3の圧縮空気の流れ方向の下流側から見た断面図である。図2に示すように、燃焼器3は、筒形状を有し、例えば、ガスタービン1の軸線Xを囲む環状に形成されたアニュラ燃焼器である。なお、燃焼器3は、アニュラ型以外の形式のものでもよい。シェル14及びライナー20は、材料は特に限定されず、熱膨張差が生じる部品であればよい。本実施形態では、シェル14は、金属製のシェルであり、ライナー20は、セラミックマトリックス複合材料製のCMCライナーである。
【0014】
燃焼器3において、ケーシング10は、筒状のアウターケーシング11と、アウターケーシング11の内側に同心円状に配置された筒状のインナーケーシング12と、を有する。アウターケーシング11及びインナーケーシング12は、環状の内部空間を画定している。なお、燃焼器3の内側は、アウターケーシング11の径方向Rの内側で且つインナーケーシング12の径方向Rの外側を意味する。
【0015】
ケーシング10の環状の内部空間には、ケーシング10と同心円状に燃焼筒としてシェル13が配置されている。シェル13の径方向は燃焼器3の径方向Rに一致し、シェル13の軸線方向は燃焼器3の軸線方向Xに一致し、シェル13の周方向は燃焼器3の周方向Cに一致する。シェル13は、燃焼室16を囲む。シェル13は、金属製である。シェル13は、筒状のアウターシェル14と、アウターシェル14の内側に同心円状に配置された筒状のインナーシェル15と、を有する。なお、シェル13の内側は、アウターシェル14の径方向Rの内側で且つインナーシェル15の径方向Rの外側を意味する。
【0016】
燃焼室16の上流側には、燃焼室16に燃料を噴射する複数の燃料インジェクタ17が燃焼室16に沿って環状に並んでいる。複数の燃料インジェクタ17は、シェル13と同心の仮想円上において周方向Cに並んでいる。シェル13には、ガスタービン1の始動時に燃焼室16の混合気に着火するための火花を発生させる点火プラグ18が設けられている。シェル13の環状の内部空間には、ケーシング10及びシェル13と同心円状にCMCライナー20が配置されている。
【0017】
CMCライナー20は、セラミックマトリックス複合材料製である。CMCライナー20の熱膨張率は、シェル13の熱膨張率よりも小さい。CMCライナー20は、筒状のアウターライナー21と、アウターライナー21の内側に同心円状に配置された筒状のインナーライナー22と、を有する。アウターライナー21は、アウターシェル14の内周面を覆っている。インナーライナー22は、インナーシェル15の外周面を覆っている。
【0018】
アウターライナー21は、筒状をなすように互いに周方向に隣り合って並べられた複数のライナーパネルの集合体とし得る。インナーライナー22も、筒状をなすように互いに周方向に隣り合って並べられた複数のライナーパネルの集合体とし得る。なお、アウターライナー21及びインナーライナー22の一方又は両方は、周方向に並ぶ複数のライナーパネルに分割されずに筒状に一体成形された筒体であってもよい。また、個々のライナーパネルは、円弧板に限られず平板であってもよく、複数のライナーパネルで構成されるライナーは円筒状に限られず多角形筒状であってもよい。
【0019】
図3は、図2の燃焼器3のIII-III線断面図である。図3に示すように、ケーシング10の上流側部分には、圧縮機2で生成された圧縮空気をケーシング10に取り入れるディフューザー8が設けられている。燃料インジェクタ17は、ケーシング10に固定されたステム9により支持されている。ケーシング10内の空間S1に取り入れられた圧縮空気の一部は、燃焼のために燃料インジェクタ17に供給される。ケーシング10内の空間S1に取り入れられた圧縮空気の残部は、シェル13の外面を冷却するとともに、その一部がシェル13に形成された冷却孔14b(図4参照)からシェル13内に冷却空気として供給される。
【0020】
アウターライナー21は、アウターシェル14から径方向Rの内側に距離をあけて配置されている。インナーライナー22は、インナーシェル15から径方向Rの外側に距離をあけて配置されている。アウターライナー21及びインナーライナー22は、複数の取付具30(図4参照)によってシェル13から離間した状態でシェル13に取り付けられている。アウターライナー21及びインナーライナー22は、燃焼室16を画定している。燃焼室16の燃焼ガスは、燃焼室16の圧縮空気の流れ方向Fの下流側におけるアウターライナー21及びインナーライナー22の端によって画定された排出口16aからタービン4(図1参照)に向けて排出される。
【0021】
アウターシェル14とアウターライナー21との間の隙間G1は、その軸線方向Xの両側から金属製のアウターシール41,42によって封止されている。即ち、アウターシール41は隙間G1を流れ方向Fの上流側から封止し、アウターシール42は隙間G1を流れ方向Fの下流側から封止する。インナーシェル15とインナーライナー22との間の隙間G2は、その軸線方向Xの両側から金属製のインナーシール43,44によって封止されている。即ち、インナーシール43は隙間G2を流れ方向Fの上流側から封止し、インナーシール44は隙間G2を流れ方向Fの下流側から封止する。
【0022】
アウターシェル14に対するアウターライナー21の取付構造と、インナーシェル15に対するインナーライナー22の取付構造とは、互いに同様である。また、アウターシール41,42及びインナーシール43,44の構造も、互いに同様である。そのため、以下ではアウターシェル14に対するアウターライナー21の取付構造と、隙間G1を上流側から封止するアウターシール41と、について代表的に説明する。なお、以下の説明では、アウターシェル14をシェルと称し、アウターライナー21をCMCライナーと称する。アウターシール41をシールと称する。
【0023】
図4は、図3の燃焼器3の要部の部分断面斜視図である。図5は、図4のV-V線断面図である。図6は、図4のVI-VI線断面図である。図4乃至6に示すように、シェル14は、貫通穴14a及び冷却孔14bを有する。CMCライナー21は、支持穴21a及び冷却孔21bを有する。取付具30は、シェル14とCMCライナー21との間に隙間G1がある状態でCMCライナー21をシェル14に取り付ける。取付具30は、例えば金属製であるが、金属以外の材料で形成されてもよい。なお、取付具30の構成は特に限定されず、以下に説明する取付具30の構成は例示に過ぎない。
【0024】
取付具30は、サポート31、固定部材32及び付勢部材33を備えた組立体である。サポート31は、CMCライナー21の支持穴21a及びシェル14の貫通穴14aを径方向Rの内側から挿通している。シェル14の貫通穴14aは、サポート31の軸部31aに対して遊びをもっている。サポート31は、軸部31a、頭部31b、及び、燃焼室16に接続する空気流路31cを有する。軸部31aは、径方向Rに延びてシェル14の貫通穴14aを挿通する。軸部31aの外周面のうちシェル14よりも径方向Rの外側の部分にはネジ又は係合溝が形成されている。
【0025】
頭部31bは、軸部31aの径方向Rの内側の端部に設けられている。頭部31bの外径は、軸部31aの外径よりも大きい。頭部31bの外周面は、径方向Rの外側から内側に向けて拡径するテーパー面を有する。頭部31bは、CMCライナー21の支持穴21aに配置されている。頭部31bの外周面のテーパー面は、支持穴21aの内周面のテーパー面に径方向Rの内側から当接している。即ち、頭部31bは、径方向Rの内側からCMCライナー21を支持する。なお、頭部31bの外周面及び支持穴21aの内周面にテーパー面を設けずに、CMCライナー21の内周面にサポート31の頭部31bが当接してもよい。
【0026】
空気流路31cは、サポート31の内部において軸部31aから頭部31bにわたってサポート31の径方向Rに延びている。空気流路31cは、シェル14の径方向Rの外側の空間S1に開口し、かつ、燃焼室16に開口している。空気流路31cのうち径方向Rの内側の部分は、燃焼室16に向けて拡大する円錐台形状を有する。空間S1の圧縮空気は、空気流路31cを流れ、CMCライナー21の内周面に沿って燃焼室16に冷却空気として吐出される。なお、空気流路31cは、無くてもよい。
【0027】
固定部材32は、シェル14の径方向Rの外側においてサポート31の軸部31aに固定されている。固定部材32の外形は、シェル14の貫通穴14aよりも大きい。固定部材32は、例えば、軸部31aの外周面のネジに螺合されるナットであるが、軸部31aの外周面の係合溝に係合されるC形状のクリップであってもよい。付勢部材33は、シェル14と固定部材32との間に挟まれている。付勢部材33は、例えば、コイルバネであるが、皿バネであってもよい。
【0028】
圧縮機2(図1参照)からディフューザー8(図3参照)を介して空間S1に流入した圧縮空気は、シェル14の冷却孔14bを介して、シェル14とCMCライナー21との間の隙間G1に冷却空気として流入する。隙間G1の圧縮空気がCMCライナー21を径方向Rの内方に押圧する力に付勢部材33の弾性力が抗することで、CMCライナー21が保持される。隙間G1の圧縮空気は、CMCライナー21の冷却孔21bからCMCライナー21の内周面に沿って燃焼室16に冷却空気として吐出される。
【0029】
シール41は、シェル14とCMCライナー21との間の隙間G1を軸線方向Xから封止する。シール41は、例えば、金属製である。シール41の金属材料は、シェル14の金属材料と同じとし得る。シール41は、隙間G1に沿って周方向Cに延びたリング形状を有する。リング形状のシール41は、周方向Cに並んだ複数の部材に分割されていてもよい。シール41は、シェル14に内嵌されている。シール41は、軸線方向Xにおいてシェル14よりも短い。また、シール41は、軸線方向XにおいてCMCライナー21よりも短い。
【0030】
シール41は、アキシャル部41a、ラジアル部41b及び複数の位置決め部41cを備える。アキシャル部41aは、軸線方向X及び周方向Cに延びた板状部である。即ち、板状のアキシャル部41aの厚み方向は、径方向Rと一致している。アキシャル部41aは、シェル14の内周面14cに接触している。アキシャル部41aは、軸線方向XにおいてCMCライナー21よりも短い。例えば、軸線方向Xにおいて、アキシャル部41aの長さL1は、CMCライナー21の端面21cから取付具30の中心までの距離L2よりも短い。言い換えると、軸線方向Xにおいて、CMCライナー21の端面21cからアキシャル部41aのうち取付具30に近位側の端までの距離L1は、CMCライナー21の端面21cから取付具30の中心までの距離L2よりも短い。L1は、L2の半分未満とし得る。
【0031】
ラジアル部41bは、シール41において径方向Rの内方に突出している。例えば、ラジアル部41bは、アキシャル部41aから径方向Rの内方に突出している。言い換えると、ラジアル部41bは、軸線方向Xにおけるアキシャル部41aのうち取付具30から遠位側の端から径方向Rの内方に突出している。アキシャル部41a及びラジアル部41bの全体は、周方向Cから見た断面においてL字形状を有する。ただし、アキシャル部41a及びラジアル部41bの全体の形状は特に限定されない。ラジアル部41bは、径方向R及び周方向Cに延びた板状部である。即ち、板状のラジアル部41bの厚み方向は、軸線方向Xと一致している。ラジアル部41bは、CMCライナー21の外周面21dよりも径方向Rの内方にまで延びている。ラジアル部41bは、軸線方向XにおけるCMCライナー21の端面21cに接触している。
【0032】
位置決め部41cは、シェル14の内周面14cに及びCMCライナー21の端面21cに接触するように、シール41をシェル14及びCMCライナー21に対して位置決めする。本実施形態では、複数の位置決め部41cは、アキシャル部41aから取付具30に向けて突出している。複数の位置決め部41cは、互いに周方向Cに間隔をあけて配置されている。位置決め部41cは、取付具30に取り付けられている。位置決め部41cは、取付具30のうち隙間G1に存在する部分に取り付けられている。なお、取付具30の構成は特に限定されない。また、位置決め部41cの数は、1つ以上あればよい。また、位置決め部41cの形状及び取り付けられる位置は特に限定されない。
【0033】
本実施形態では、位置決め部41cは、軸線方向Xに延びた板状部である。即ち、板状の位置決め部41cの厚み方向は、径方向Rと一致している。位置決め部41cは、シェル14の内周面14cに接触している。取付具30は、CMCライナー21に取り付けられているため、位置決め部41cは、取付具30に取り付けられることで、シール41をシェル14及びCMCライナー21に対して位置決めすることになる。位置決め部41cは、取付具30が挿通される取付穴Hを有する。具体的には、取付具30のサポート31の軸部31aが位置決め部41cの取付穴Hに嵌合している。位置決め部41cを含むシール41の全体は、周方向Cから見た断面においてL字形状を有する。
【0034】
以上に説明した構成によれば、シール41のアキシャル部41aがシェル14の内周面14cに接触し、かつ、シール41のラジアル部41bがCMCライナー21の端面21cに接触しているため、シェル14とCMCライナー21との間の隙間G1の圧縮空気が隙間G1の軸線方向Xの端から漏れることが防がれる。そして、シール41はシェル14よりも軸線方向Xに短いため、軸線方向Xにおいてシール41の熱膨張量はシェル14の熱膨張量よりも小さくなる。そのため、シェル14とCMCライナー21との間に熱膨張差が生じたときでも、シール41とCMCライナー21との間の軸線方向Xの熱膨張差は小さくなる。その結果、シール41のラジアル部41bとCMCライナー21の端面21cとの間に生じる隙間を抑制できる。よって、シェル14とCMCライナー21との間の隙間G1の圧縮空気の漏れを抑制できる。
【0035】
図7は、図4のシール41のスリットSLを示す図面である。図7に示すように、シール41は、その周方向Cの一部に配置されたスリットSLを有してもよい。例えば、スリットSLは、径方向Rに延びるようにシール41のラジアル部41bに設けられてもよい。これにより、シール41が熱膨張したときの応力集中の発生を防止することができる。
【0036】
シール41には、1つのスリットSLが設けられてもよい、互いに周方向Cに間隔をあけた複数のスリットSLが設けられてもよい。スリットSLは、軸線方向Xに延びるようにアキシャル部41aに設けられてもよい。スリットSLは、アキシャル部41aだけに設けられてもよいし、ラジアル部41bだけに設けられてもよいし、アキシャル部41a及びラジアル部41bの両方に設けられてもよい。
【0037】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、シール41は、リング状のワンピースでなくてもよく、分割されてもよい。即ち、複数のピースを集合させてリング状のシール41を構成してもよい。シール41の位置決め部41cは、CMCライナー21に対して直接的に取り付けられてもよい。例えば、CMCライナー21に突起を設け、その突起にシール41の位置決め部41cを取り付けてもよい。また、シール41の位置決め部は、アキシャル部41aに設けた取付穴でもよい。即ち、アキシャル部41aから軸線方向Xに突出する位置決め部を無くすとともに、アキシャル部41aの軸線方向Xのサイズを大きくし、そのアキシャル部41aに設けた取付穴を取付具30に取り付けてもよい。
【0038】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0039】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0040】
[項目1]
燃焼室を囲むシェルと、
前記シェルの径方向内側に位置し、前記燃焼室に面するライナーと、
前記シェルと前記ライナーの間に隙間がある状態で前記シェルに前記ライナーを取り付ける取付具と、
前記シェルの軸線方向において前記シェルよりも短く、前記シェルの周方向に延び、前記シェルと前記ライナーとの間の隙間を封止する金属製のシールと、を備え、
前記シールは、
前記シェルの内周面に接触し、前記軸線方向及び前記周方向に延びたアキシャル部と、
前記アキシャル部から前記ライナーの外周面よりも前記径方向の内方に突出し、前記軸線方向における前記ライナーの端面に接触し、前記径方向及び前記周方向に延びたラジアル部と、
前記シェルの前記内周面及び前記ライナーの前記端面に接触するように、前記シールを前記シェル及び前記ライナーに対して位置決めする位置決め部と、を含む、ガスタービンの燃焼器。
【0041】
この構成によれば、シールはシェルよりも軸線方向に短いため、軸線方向においてシールの熱膨張量はシェルの熱膨張量よりも小さくなる。そのため、シェルとライナーとの間に熱膨張差が生じたときでも、シールとライナーとの間の軸線方向の熱膨張差は小さくなる。その結果、シールのラジアル部とライナーの端面との間に生じる隙間は小さくなる。よって、シェルとライナーとの間の隙間の圧縮空気の漏れを抑制できる。
【0042】
[項目2]
前記シェルは、金属製のシェルであり、
前記ライナーは、セラミックス複合材料製のCMCライナーである、項目1に記載のガスタービンの燃焼器。
【0043】
この構成によれば、ライナーが耐熱性の高いCMCライナーとなるので、燃焼器において更なる高温燃焼が可能となる。
【0044】
[項目3]
前記位置決め部は、前記取付具に取り付けられることで、前記シールを前記シェル及び前記ライナーに対して位置決めしている、項目1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【0045】
この構成によれば、シェル及びライナーに特別な形状を設けずとも、取付具を介してシールをシェル及びライナーに位置決めできる。
【0046】
[項目4]
前記位置決め部は、前記取付具が挿通される取付穴を有する、項目3に記載のガスタービンの燃焼器。
【0047】
この構成によれば、特別な部品を用いずともシールを簡単に取付具に取り付けることができる。
【0048】
[項目5]
前記位置決め部は、前記アキシャル部から前記取付具に向けて前記軸線方向に突出しており、
前記軸線方向における前記アキシャル部の長さは、前記軸線方向における前記ライナーの前記端面から前記取付具の中心までの距離よりも短い、項目1乃至4のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0049】
この構成によれば、シールが大きくなることが抑えられ、燃焼器の重量増加を抑制することができる。
【0050】
[項目6]
前記シールは、前記周方向の一部に配置されたスリットを有する、項目1乃至5のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0051】
この構成によれば、シールがスリットを有することで、シールが熱膨張したときに応力集中の発生を防止できる。
【0052】
[項目7]
前記シールは、前記周方向に延びたリング形状を有する、項目1乃至6のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0053】
この構成によれば、シェルとライナーとの間の隙間を周方向全体にわたって安定的にシールできるとともに、燃焼器へのシールの組付けを容易にすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ガスタービン
14 シェル(アウターシェル)
14b 冷却孔
14c 内周面
16 燃焼室
21 CMCライナー(アウターライナー)
21b 冷却孔
21c 端面
21d 外周面
30 取付具
41 シール(アウターシール)
41a アキシャル部
41b ラジアル部
41c 位置決め部
H 取付穴
SL スリット
C 周方向
R 径方向
X 軸線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7