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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091024
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20240627BHJP
   F23R 3/14 20060101ALI20240627BHJP
   F23R 3/50 20060101ALI20240627BHJP
   F02C 7/232 20060101ALI20240627BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240627BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20240627BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240627BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20240627BHJP
   F23M 5/04 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
F23R3/28 D
F23R3/14
F23R3/50
F02C7/232 B
F02C7/00 C
F02C7/18 Z
F01D25/00 L
F23R3/42 E
F23M5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207280
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 竜佐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博愛
(57)【要約】
【課題】バルクヘッドをパネルで覆う場合において、パネルに応力集中を発生することを抑制し、パネルを好適に冷却する。
【解決手段】ガスタービンの燃焼器は、スワラの外周面に対してラジアルギャップをあけ且つバルクヘッドに対してアキシャルギャップをあけた状態で、前記バルクヘッドを前記燃焼室から覆うパネルと、前記アキシャルギャップにおいて前記スワラの前記外周面に嵌合し、前記軸線方向において前記パネルに接触するシールリングと、を備える。前記バルクヘッドは、前記アキシャルギャップに向けて開口した冷却空気孔を含む。前記パネルは、前記シールリングよりも前記径方向の外側において前記アキシャルギャップに開口して前記アキシャルギャップを前記燃焼室に連通させる冷却空気孔を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、
外周面と、前記燃焼室に向いた噴射口と、を含むスワラと、
前記スワラの前記外周面に嵌合したバルクヘッドと、
前記スワラの径方向にて前記スワラの前記外周面に対してラジアルギャップをあけ且つ前記スワラの軸線方向にて前記バルクヘッドに対してアキシャルギャップをあけた状態で、前記バルクヘッドを前記燃焼室から覆うように前記スワラの前記径方向の外側に配置され、前記スワラ及び前記バルクヘッドより熱膨張係数が小さいパネルと、
前記アキシャルギャップにおいて前記スワラの前記外周面に嵌合し、前記軸線方向において前記パネルに接触するシールリングと、を備え、
前記バルクヘッドは、前記アキシャルギャップに向けて開口した冷却空気孔を含み、
前記パネルは、前記シールリングよりも前記径方向の外側において前記アキシャルギャップに開口して前記アキシャルギャップを前記燃焼室に連通させる冷却空気孔を含む、ガスタービンの燃焼器。
【請求項2】
前記スワラ及び前記バルクヘッドは、金属製であり、
前記パネルは、CMC製である、請求項1に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項3】
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔の吐出口の延長軸線は、前記パネルに向けて前記軸線方向に延びる成分を有し、
前記シールリングは、前記延長軸線上に配置されている、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項4】
前記シールリングは、前記スワラの前記外周面に嵌合した筒部と、前記筒部のうち前記バルクヘッドよりも前記パネルに近い端部から前記径方向の外側に突出したフランジ部と、を含む、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項5】
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔の吐出口の延長軸線は、前記パネルに向けて前記軸線方向に延びる成分を有し、
前記シールリングの前記フランジ部は、前記延長軸線上に配置されている、請求項4に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項6】
前記スワラの前記外周面は、
前記バルクヘッドを基準として前記アキシャルギャップとは反対側に配置された第1外周面部と、
前記第1外周面部よりも前記径方向の内方に位置し、前記バルクヘッドが嵌合する第2外周面部と、
前記第1外周面部よりも前記径方向の内方に位置し、前記シールリングが嵌合する第3外周面部と、を含み、
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔は、前記アキシャルギャップに向かい且つ前記径方向の内側に向かうように前記軸線方向に対して斜めに延びている、請求項3に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項7】
前記バルクヘッドは、前記軸線方向において前記パネルから離れる向きに窪んだ内周部を有し、
前記アキシャルギャップは、前記バルクヘッドの前記内周部と前記パネルとの間に画定された冷却チャンバと、前記冷却チャンバから前記径方向の外側に延び且つ前記冷却チャンバよりも前記軸線方向の寸法が小さいクリアランス空間と、を含み、
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔及び前記パネルの前記冷却空気孔は、前記冷却チャンバに開口している、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項8】
前記パネルを前記バルクヘッドに弾性的に取り付ける取付具を更に備える、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【請求項9】
前記シールリング及び前記パネルの少なくとも一方には、その互いに接触する面に遮熱コーティングが設けられている、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンの燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼器では、燃焼室を上流側から画定するバルクヘッドの開口にスワラが配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6475688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃焼室での高温燃焼のために、パネルでバルクヘッドを燃焼室側から覆うことが考えられる。しかし、バルクヘッドとパネルとの間に熱膨張差が生じる場合、パネルには応力集中が発生する可能性がある。また、パネルは、適切に冷却されることが好ましい。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、バルクヘッドをパネルで覆う場合において、パネルに応力集中が発生することを抑制し、パネルを好適に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガスタービンの燃焼器は、燃焼室と、外周面と、前記燃焼室に向いた噴射口と、を含むスワラと、前記スワラの前記外周面に嵌合したバルクヘッドと、前記スワラの径方向にて前記スワラの前記外周面に対してラジアルギャップをあけ且つ前記スワラの軸線方向にて前記バルクヘッドに対してアキシャルギャップをあけた状態で、前記バルクヘッドを前記燃焼室から覆うように前記スワラの前記径方向の外側に配置され、前記スワラ及び前記バルクヘッドより熱膨張係数が小さいパネルと、前記アキシャルギャップにおいて前記スワラの前記外周面に嵌合し、前記軸線方向において前記パネルに接触するシールリングと、を備える。前記バルクヘッドは、前記アキシャルギャップに向けて開口した冷却空気孔を含む。前記パネルは、前記シールリングよりも前記径方向の外側において前記アキシャルギャップに開口して前記アキシャルギャップを前記燃焼室に連通させる冷却空気孔を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、パネルがスワラとの間にラジアルギャップをあけ且つバルクヘッドとの間にアキシャルギャップをあけているため、パネルとスワラとの間、及びパネルとバルクヘッドとの間に熱膨張差が生じても、パネルに応力集中が発生することを抑制できる。そして、アキシャルギャップにてスワラの外周面に嵌合したシールリングがパネルに接触するため、アキシャルギャップの冷却空気がラジアルギャップを介して燃焼室にリークすることが防がれる。よって、アキシャルギャップから燃焼領域に空気が余分に流出せず、アキシャルギャップを高圧に保つことができ、パネルの冷却空気孔からパネルの燃焼室側の表面に冷却空気を供給できる。それゆえ、バルクヘッドをパネルで覆う場合において、パネルに応力集中が発生することを抑制し、パネルを好適に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るガスタービンの概略断面図である。
図2図2は、図1のガスタービンの軸線方向の下流側から見た断面図である。
図3図3は、図2の燃焼器のIII-III線断面図である。
図4図4は、図3の燃料インジェクタの断面図である。
図5図5は、図4の燃料インジェクタの要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、ガスタービン1の軸線Yは、燃焼器3の軸線と同じである。軸線Yが延びる方向は、軸線方向Yと称する。燃焼器3の軸線Yに直交する方向は、燃焼器3の径方向Qと称する。軸線Y周りに延びる方向は、燃焼器3の周方向Cと称する。また、燃料インジェクタ17の軸線Xは、スワラ21の軸線と同じである。軸線Xが延びる方向は、軸線方向Xと称する。軸線方向Xは、燃料インジェクタ17から燃焼室16に向かう流れの方向と同じである。スワラ21の軸線Xに直交する方向は、径方向Rと称する。
【0010】
図1は、実施形態に係るガスタービン1の概略断面図である。図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2、燃焼器3、タービン4、回転軸5、ケーシング10及びファン7を備える。ガスタービン1では、外部からケーシング10内に導入された空気が圧縮機2で圧縮され、圧縮機2で圧縮された圧縮空気が燃焼器3に導かれ、燃焼器3で燃料を圧縮空気とともに燃焼して得られた高温高圧の燃焼ガスがもつエネルギーがタービン4において回転動力として取り出される。
【0011】
タービン4は、回転軸5を介して圧縮機2に連結されている。回転軸5の軸線は、ガスタービン1の軸線Yに一致する。回転軸5の前端部には、ファン7が接続されている。タービン4で発生する回転動力は、圧縮機2及びファン7を駆動する。ガスタービンには、様々な形式が存在する。ターボファンエンジンは、主にタービンで発生する回転動力でファンを駆動し、航空機用エンジンとして用いられる。図1では、ガスタービンの一形態であるターボファンエンジンを例示しているが、ガスタービンの形態はこれに限られない。
【0012】
図2は、図1のガスタービン1の軸線方向Yの下流側から見た断面図である。図2に示すように、燃焼器3は、筒形状を有する。燃焼器3は、例えば、ガスタービン1の軸線Yを囲む環状に形成されたアニュラ燃焼器である。なお、燃焼器3は、アニュラ型以外の形式のものでもよい。燃焼器3において、ケーシング10は、筒状のアウターケーシング11と、アウターケーシング11の内側に同心円状に配置された筒状のインナーケーシング12と、を有する。アウターケーシング11とインナーケーシング12との間には、環状の内部空間が画定されている。
【0013】
ケーシング10の環状の内部空間には、ケーシング10と同心円状に燃焼筒としてシェル13が配置されている。シェル13の径方向は燃焼器3の径方向Qに一致し、シェル13の軸線は燃焼器3の軸線Yに一致し、シェル13の周方向は燃焼器3の周方向Cに一致する。シェル13は、例えば、金属材料を含む金属製である。シェル13は、筒状のアウターシェル14と、アウターシェル14の内側に同心円状に配置された筒状のインナーシェル15と、を有する。アウターシェル14とインナーシェル15との間には、環状の燃焼室16が画定されている。
【0014】
燃焼室16の上流側には、燃焼室16に燃料を噴射する複数の燃料インジェクタ17が燃焼室16に沿ってシェル13の周方向Cに並んでいる。シェル13には、ガスタービン1の始動時に燃焼室16の混合気に着火するための火花を発生させる点火プラグ18が設けられている。燃焼室16には、シェル13の表面を覆うようにセラミックマトリックス複合材料製のライナー50が配置されている。具体的には、ライナー50は、アウターシェル14の内周面を覆うアウターライナー51と、インナーシェル15の外周面を覆うインナーライナー22と、を有する。
【0015】
図3は、図2の燃焼器3のIII-III線断面図である。なお、図3では、シェル13用のライナー50の図示を省略している。図3に示すように、ケーシング10の上流側部分には、圧縮機2で生成された圧縮空気をケーシング10に取り入れるディフューザ8が設けられている。燃料インジェクタ17は、ケーシング10に固定されたステム9により支持されている。ケーシング10内の空間19に取り入れられた圧縮空気の一部は、燃焼のために燃料インジェクタ17に供給される。ケーシング10内の空間19に取り入れられた圧縮空気の残部は、シェル13の外面を冷却するとともに、その一部がシェル13に形成された冷却孔からシェル13内に冷却空気として供給される。
【0016】
燃料インジェクタ17は、スワラ21、燃料ノズル22、バルクヘッド23及びパネル24を備える。スワラ21は、ケーシング10内の空間19から供給される圧縮空気に旋回流を発生させ、その圧縮空気を燃焼室16に吐出する。燃料ノズル22は、スワラ21の内部に配置されている。燃料ノズル22には、ステム9に形成された燃料流路Fを介して燃料が供給される。バルクヘッド23は、ケーシング10内の空間19と燃焼室16とを仕切る。パネル24は、バルクヘッド23を燃焼室16から覆っている。パネル24は、スワラ21及びバルクヘッド23よりも、熱膨張係数が小さい部材とすることができる。本実施形態では、パネル24は、セラミックス複合材料(CMC:Ceramic Matrix Composite)を含むCMCパネル24である。
【0017】
図4は、図3の燃料インジェクタ17の断面図である。図4に示すように、スワラ21は、実質的に筒形状であり、外周面30を有する。スワラ21は、例えば、金属材料を含む金属製である。スワラ21の軸線Xは、燃焼室16における燃焼ガスの流れ方向に延びている。軸線方向Xにおいて燃料インジェクタ17から燃焼室16に向かう側を下流側と称し、軸線方向Xにおいてその反対側を上流側と称する。スワラ21は、軸線方向Xの上流側に向いたアキシャル流入口31と、径方向Rの外方に向いたラジアル流入口32と、軸線方向の下流側に向いた噴射口33と、を含む。
【0018】
バルクヘッド23は、スワラ21が挿入される中央穴23aを有する。バルクヘッド23は、例えば、環状である。スワラ21の外周面30には、バルクヘッド23が嵌合している。バルクヘッド23は、例えば、金属材料を含む金属製である。バルクヘッド23は、スワラ21の軸線方向Xに直交する径方向Rに延び、その主面が軸線方向Xに向いている。バルクヘッド23は、燃焼室16を軸線方向Xの上流側から画定する。パネル24は、例えば、セラミックマトリックス複合材料を含む環状板である。なお、パネル24は、1つ又は複数のパネルで環状板を構成できる。CMCパネル24は、バルクヘッド23を軸線方向Xの下流側から覆うことで、燃焼室16の熱からバルクヘッド23を保護する。
【0019】
CMCパネル24は、スワラ21の径方向Rの外側に配置されている。CMCパネル24は、スワラ21が挿通される中央穴24aを有する。CMCパネル24は、軸線方向Xにてバルクヘッド23に対してアキシャルギャップG1をあけて配置されている。即ち、CMCパネル24は、バルクヘッド23から離間している。CMCパネル24は、径方向Rにおいてスワラ21の外周面30に対してラジアルギャップG2をあけて配置されている。即ち、CMCパネル24は、スワラ21から離間している。アキシャルギャップG1には、後で詳述するシールリング25が配置されている。
【0020】
CMCパネル24は、複数の取付具40によってバルクヘッド23に取り付けられている。バルクヘッド23は、取付具40のための貫通穴23bを有し、CMCパネル24は、取付具40のための支持穴24bを有する。複数の取付具40は、軸線X周りの周方向に間隔をあけて配置されている。取付具40の構造は、特に限定されない。一例として、取付具40は、サポート41、固定部材42及び弾性部材43を備えた組立体である。
【0021】
サポート41は、CMCパネル24の支持穴24b及びバルクヘッド23の貫通穴23bを軸線方向Xの下流側から挿通している。バルクヘッド23の貫通穴23bは、サポート41の軸部41aに対してマージンを持った大きさとなっている。サポート41は、軸部41a、頭部41b及び空気流路41cを有する。軸部41aは、軸線方向Xに延びてバルクヘッド23の貫通穴23bを挿通する。軸部41aの外周面のうちバルクヘッド23よりも軸線方向Xの上流側の部分にはネジ又は係合溝が形成されている。
【0022】
頭部41bは、軸部41aの軸線方向Xの下流側の端部に設けられている。頭部41bの外径は、軸部41aの外径よりも大きい。頭部41bの外周面は、軸線方向Xの上流側から下流側に向けて拡径するテーパー面を有する。頭部41bは、CMCパネル24の支持穴24bに配置されている。頭部41bの外周面のテーパー面は、支持穴24bの内周面のテーパー面に当接している。即ち、頭部41bは、軸線方向Xの下流側からCMCパネル24を支持する。なお、頭部41bの外周面及び支持穴24bの内周面にテーパー面を設けずに、CMCパネル24の軸線方向Xの下流側の面にサポート41の頭部41bが当接してもよい。
【0023】
空気流路41cは、サポート41の内部において軸部41aから頭部41bにわたってサポート41の長手方向に延びている。空気流路41cは、ケーシング10内の空間19を燃焼室16に連通させている。空気流路41cのうち軸線方向Xの下流側の部分は、燃焼室16に向けて拡大する円錐台形状を有する。ケーシング10内の空間19の圧縮空気は、空気流路41cを流れ、CMCパネル24の軸線方向Xの下流側の面に沿って燃焼室16に冷却空気として吐出される。なお、空気流路41cは、無くてもよい。
【0024】
固定部材42は、バルクヘッド23の軸線方向Xの上流側においてサポート41の軸部41aに固定されている。固定部材42の外形は、バルクヘッド23の貫通穴23bよりも大きい。固定部材42は、例えば、軸部41aの外周面のネジに螺合されるナットであるが、軸部41aの外周面の係合溝に係合されるC形状のクリップであってもよい。弾性部材43は、バルクヘッド23とCMCパネル24との間に挟まされている。弾性部材43は、例えば、コイルバネであるが、皿バネであってもよい。
【0025】
図5は、図4の燃料インジェクタ17の要部の拡大断面図である。図5に示すように、スワラ21の外周面30は、第1外周面部35、第2外周面部36及び第3外周面部37を有する。第1外周面部35は、バルクヘッド23を基準としてアキシャルギャップG1とは反対側に配置されている。
【0026】
第2外周面部36は、第1外周面部35の軸線方向Xの下流側にある。更に、第2外周面部36は、第1外周面部35よりも径方向Rの内方に位置し、第1外周面部35よりも小径としてもよい。第1外周面部35を第2外周面部36に接続する第1フランジ面38は、軸線方向Xの下流側に向いている。第2外周面部36には、バルクヘッド23が嵌合している。バルクヘッド23は、スワラ21の第2外周面部36及び第1フランジ面38に当接している。
【0027】
第3外周面部37は、第2外周面部36の軸線方向Xの下流側になる。更に、第3外周面部37は、第2外周面部36よりも径方向Rの内方に位置し、第2外周面部36よりも小径としてもよい。第2外周面部36を第3外周面部37に接続する第2フランジ面39は、軸線方向Xの下流側に向いている。第3外周面部37には、シールリング25が嵌合している。なお、第3外周面部37は、第2外周面部36と同一径であってもよい。
【0028】
シールリング25は、スワラ21の第2フランジ面39に軸線方向Xに対向して且つ第2フランジ面39からギャップG3をあけて軸線方向Xの下流側に離間している。シールリング25は、スワラ21の第3外周面部37上を軸線方向Xに沿って摺動可能に配置されている。例えば、第3外周面部37は、軸線方向Xに沿って一定の外径を有する。
【0029】
なお、第2外周面部36と第3外周面部37とが互いに連続して同一径である構成とする場合には、シールリング25は、軸線方向Xにおいてバルクヘッド23に対向することになる。その場合、シールリング25は、バルクヘッド23からギャップG3をあけて軸線方向Xの下流側に離間してもよい。
【0030】
バルクヘッド23は、軸線方向XにおいてCMCパネル24から離れる向きに窪んだ内周部23eを有する。即ち、バルクヘッド23の内周部23eは、軸線方向Xの上流側に向けて窪んでいる。アキシャルギャップG1は、バルクヘッド23の内周部23eとCMCパネル24との間に画定された冷却チャンバS1と、冷却チャンバS1から径方向Rの外側に延びたクリアランス空間S2と、を含む。クリアランス空間S2は、冷却チャンバS1よりも軸線方向Xの寸法が小さい。
【0031】
バルクヘッド23は、ケーシング10内の空間19をアキシャルギャップG1に連通させる冷却空気孔23c,23dを有する。バルクヘッド23の冷却空気孔23cは、冷却チャンバS1に向けて開口している。バルクヘッド23の冷却空気孔23dは、クリアランス空間S2に向けて開口している。CMCパネル24は、冷却チャンバS1を燃焼室16に連通させる冷却空気孔24cを有する。CMCパネル24の冷却空気孔24cは、シールリング25よりも径方向Rの外側において冷却チャンバS1から燃焼室16に向けて開口している。例えば、CMCパネル24の冷却空気孔24cは、軸線方向Xの下流側かつ径方向の内側に向けて斜めに延びている。
【0032】
ケーシング10内の空間19の圧縮空気は、バルクヘッド23の冷却空気孔23cを通過して冷却チャンバS1に流入する。クリアランス空間S2は冷却チャンバS1よりも軸線方向Xの寸法が小さいため、冷却チャンバS1の空気圧は高く保たれる。冷却チャンバS1の圧縮空気は、CMCパネル24の冷却空気孔24cを通過して燃焼室16に吐出され、CMCパネル24のうち燃焼室16に向いた表面を冷却する。ケーシング10内の空間19の圧縮空気は、バルクヘッド23の冷却空気孔23dを通過してクリアランス空間S2に吐出される。バルクヘッド23の冷却空気孔23dがクリアランス空間S2に吐出する圧縮空気は、CMCパネル24に衝突してCMCパネル24を冷却する。
【0033】
シールリング25は、アキシャルギャップG1に配置され、スワラ21の第3外周面部37に嵌合している。シールリング25は、例えば、金属材料を含む金属製であるが、金属以外の材料で形成されてもよい。シールリング25は、筒部25a及びフランジ部25bを有する。筒部25aは、スワラ21の第3外周面部37に嵌合している。フランジ部25bは、筒部25aのうちバルクヘッド23よりもCMCパネル24に近い端部から径方向Rの外側に突出している。即ち、シールリング25は、軸線X周りの周方向から見た断面視において、L字形状を有する。なお、フランジ部25bは、筒部25aから径方向Rの外側に突出していればよく、軸線X周りの周方向から見た断面視において、L字形状以外の形状を有することもある。
【0034】
シールリング25のフランジ部25bは、軸線方向XにおいてCMCパネル24に接触している。シールリング25は、CMCパネル24に対して固定されておらず、CMCパネル24から離間可能である。シールリング25のうちCMCパネル24に接触する面には、遮熱コーティング26(TBC)が設けられてもよい。遮熱コーティング26は、例えば、シールリング25の基材に多孔質セラミックを溶射してなる皮膜である。これにより、燃焼室16からCMCパネル24を介してシールリング25に伝達される熱が低減される。なお、遮熱コーティング26は、シールリング25に設ける代わりに、CMCパネル24のうちシールリング25に接触する面に設けられてもよい。
【0035】
バルクヘッド23の冷却空気孔23cの吐出口の延長軸線Lは、軸線方向Xの下流側に延びている。更に、バルクヘッド23の冷却空気孔23cの吐出口の延長軸線Lは、径方向Rの内側に向かうように斜めに延び、延長軸線L上にシールリング25を配置してもよい。本実施形態では、延長軸線L上にシールリング25のフランジ部25bが配置されている。バルクヘッド23の冷却空気孔23cから冷却チャンバS1に吐出された圧縮空気は、シールリング25のフランジ部25bに衝突してシールリング25を冷却する。また、延長軸線LはCMCパネル24に向けて軸線方向Xに延びる成分を有するため、冷却空気孔23cからの圧縮空気がシールリング25をCMCパネル24に押し付けることになる。よって、シールリング25は、CMCパネル24に対して安定的に接触する。
【0036】
バルクヘッド23の冷却空気孔23cは、冷却チャンバS1に向かい且つ径方向Rの内側に向かうように軸線方向Xに対して斜めに延びている場合、バルクヘッド23の冷却空気孔23cの出口(吐出口)が入口(流入口)に対して径方向内方に位置する。これにより、スワラ21の軸線方向Xの下流側の先端部分を小径化すること及びシールリング25を小径化することが可能となり、燃料インジェクタ17の重量増加が抑えられる。
【0037】
以上に説明した構成によれば、CMCパネル24が金属製のスワラ21との間にラジアルギャップG2をあけ且つ金属製のバルクヘッド23との間にアキシャルギャップG1をあけているため、金属とCMCとの間の熱膨張差が生じても、CMCパネル24に応力集中が発生することを抑制できる。
【0038】
そして、アキシャルギャップG1にてスワラ21の外周面30に嵌合したシールリング25がCMCパネル24に接触するため、アキシャルギャップG1の冷却空気がラジアルギャップG2を介して燃焼室16にリークすることが防がれる。よって、アキシャルギャップG1から燃焼領域に空気が余分に流出せず、冷却チャンバS1を高圧に保つことができ、CMCパネル24の冷却空気孔24cからCMCパネル24の燃焼室16側の表面に冷却空気を供給できる。それゆえ、バルクヘッド23をCMCパネル24で覆う場合において、CMCパネル24に応力集中が発生することを抑制し、CMCパネル24を好適に冷却することができる。
【0039】
また、シールリング25は、軸線方向Xにおいてスワラ21の第2フランジ面39からギャップG3をあけて離間している。そのため、シールリング25、CMCパネル24、又はその双方が熱膨張した場合に、CMCパネル24に応力集中が発生することを好適に抑制できる。更に、シールリング25は、スワラ21に対して軸線方向Xに摺動可能である。そのため、シールリング25に起因してCMCパネル24に応力集中が発生することを更に好適に抑制できる。
【0040】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、CMCパネル24は、バルクヘッド23の少なくとも一部を燃焼室16から覆えばよい。CMCパネルは、ワンピースのパネルに限られず、軸線X周りの周方向に分割された複数のCMCパネルメンバの組合せでもよい。シールリング25は、バネでCMCパネル24に向けて押し付けられてもよい。シールリング25は、軸線方向XにおいてCMCパネル24に面接触した状態でスワラ21の第2フランジ面39又はバルクヘッド23から離間していなくてもよい。シールリング25は、L字断面を有するものに限られず、例えば、平坦な環状板状であってもよい。遮熱コーティング26は、省略されてもよい。
【0041】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0042】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0043】
[項目1]
燃焼室と、
外周面と、前記燃焼室に向いた噴射口と、を含むスワラと、
前記スワラの前記外周面に嵌合したバルクヘッドと、
前記スワラの径方向にて前記スワラの前記外周面に対してラジアルギャップをあけ且つ前記スワラの軸線方向にて前記バルクヘッドに対してアキシャルギャップをあけた状態で、前記バルクヘッドを前記燃焼室から覆うように前記スワラの前記径方向の外側に配置され、前記スワラ及び前記バルクヘッドより熱膨張係数が小さいパネルと、
前記アキシャルギャップにおいて前記スワラの前記外周面に嵌合し、前記軸線方向において前記パネルに接触するシールリングと、を備え、
前記バルクヘッドは、前記アキシャルギャップに向けて開口した冷却空気孔を含み、
前記パネルは、前記シールリングよりも前記径方向の外側において前記アキシャルギャップに開口して前記アキシャルギャップを前記燃焼室に連通させる冷却空気孔を含む、ガスタービンの燃焼器。
【0044】
この構成によれば、パネルがスワラとの間にラジアルギャップをあけ且つバルクヘッドとの間にアキシャルギャップをあけているため、パネルとスワラとの間、及びパネルとバルクヘッドとの間の熱膨張差が生じても、パネルに応力集中が発生することを抑制できる。そして、アキシャルギャップにてスワラの外周面に嵌合したシールリングがパネルに接触するため、アキシャルギャップの冷却空気がラジアルギャップを介して燃焼室にリークすることが防がれる。よって、アキシャルギャップから燃焼領域に空気が余分に流出せず、アキシャルギャップを高圧に保つことができ、パネルの冷却空気孔からパネルの燃焼室側の表面に冷却空気を供給できる。それゆえ、バルクヘッドをパネルで覆う場合において、パネルに応力集中を発生することを抑制し、パネルを好適に冷却することができる。
【0045】
[項目2]
前記スワラ及び前記バルクヘッドは、金属製であり、
前記パネルは、CMC製である、項目1に記載のガスタービンの燃焼器。
【0046】
この構成によれば、CMCパネルは、金属製のスワラ及びバルクヘッドよりも熱膨張率が小さくなり、パネルが、スワラとの間のラジアルギャップ及びバルクヘッドとの間のアキシャルギャップを維持しやすくなるので、パネルへの応力集中を更に抑制できる。
【0047】
[項目3]
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔の吐出口の延長軸線は、前記パネルに向けて前記軸線方向に延びる成分を有し、
前記シールリングは、前記延長軸線上に配置されている、項目1又は2に記載のガスタービンの燃焼器。
【0048】
この構成によれば、バルクヘッドの冷却空気孔からの空気圧でシールリングをパネルに押し付けることができる。よって、シールリングとパネルとの間の接触を安定させることができる。また、シールリングを冷却空気孔からの冷却空気でインピンジ冷却できる。
【0049】
[項目4]
前記シールリングは、前記スワラの前記外周面に嵌合した筒部と、前記筒部のうち前記バルクヘッドよりも前記パネルに近い端部から前記径方向の外側に突出したフランジ部と、を含む、項目1乃至3のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0050】
この構成によれば、シールリングの占有領域を減らしてシールリングを軽量化できる。
【0051】
[項目5]
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔の吐出口の延長軸線は、前記パネルに向けて前記軸線方向に延びる成分を有し、
前記シールリングの前記フランジ部は、前記延長軸線上に配置されている、項目4に記載のガスタービンの燃焼器。
【0052】
この構成によれば、シールリングの占有領域を減らしてシールリングを軽量化しながらも、バルクヘッドの冷却空気孔からの空気圧をシールリングに的確に付与できる。
【0053】
[項目6]
前記スワラの前記外周面は、
前記バルクヘッドを基準として前記アキシャルギャップとは反対側に配置された第1外周面部と、
前記第1外周面部よりも前記径方向の内方に位置し、前記バルクヘッドが嵌合する第2外周面部と、
前記第1外周面部よりも前記径方向の内方に位置し、前記シールリングが嵌合する第3外周面部と、を含み、
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔は、前記アキシャルギャップに向かい且つ前記径方向内側に向かうように前記軸線方向に対して斜めに延びている、項目1乃至5のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0054】
この構成によれば、バルクヘッドの冷却空気孔の出口が入口に対して径方向内方に位置することになる。よって、スワラの先端部分を小径化するとともにシールリングを小径化し、燃焼器の重量増加を抑えることができる。
【0055】
[項目7]
前記バルクヘッドは、前記軸線方向において前記パネルから離れる向きに窪んだ内周部を有し、
前記アキシャルギャップは、前記バルクヘッドの前記内周部と前記パネルとの間に画定された冷却チャンバと、前記冷却チャンバから前記径方向の外側に延び且つ前記冷却チャンバよりも前記軸線方向の寸法が小さいクリアランス空間と、を含み、
前記バルクヘッドの前記冷却空気孔及び前記パネルの前記冷却空気孔は、前記冷却チャンバに開口している、項目1乃至6のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0056】
この構成によれば、パネルとバルクヘッドとの間にアキシャルギャップを形成しながらも、冷却空気孔が開口する冷却チャンバの空気圧を高めることができる。
【0057】
[項目8]
前記パネルを前記バルクヘッドに弾性的に取り付ける取付具を更に備える、項目1乃至7のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0058】
この構成によれば、パネルでの応力発生を抑制しながらパネルをバルクヘッドに取り付けることができる。
【0059】
[項目9]
前記シールリング及び前記パネルの少なくとも一方には、その互いに接触する面に遮熱コーティングが設けられている、項目1乃至8のいずれか1項に記載のガスタービンの燃焼器。
【0060】
この構成によれば、パネルからシールリングへの熱伝達を低減できる。
【符号の説明】
【0061】
1 ガスタービン
3 燃焼器
16 燃焼室
17 燃料インジェクタ
19 空間
21 スワラ
23 バルクヘッド
23c 冷却空気孔
23e 内周部
24 CMCパネル
24c 冷却空気孔
25a 筒部
25b フランジ部
25 シールリング
26 遮熱コーティング
30 外周面
35 第1外周面部
36 第2外周面部
37 第3外周面部
40 取付具
G1 アキシャルギャップ
G2 ラジアルギャップ
G3 ギャップ
S1 冷却チャンバ
S2 クリアランス空間
R 径方向
X 軸線方向
図1
図2
図3
図4
図5