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  • 特開-LED発光装置及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091031
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】LED発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20240627BHJP
【FI】
H01L33/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207296
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 慎
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA26
5F142AA42
5F142AA56
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA02
5F142CB01
5F142CD02
5F142CD13
5F142CD16
5F142CD18
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG45
5F142DA12
(57)【要約】
【課題】LEDチップを封止材で覆うLED発光装置において、発熱を抑え且つ色バラつきを抑えながら、発光面を小型化する。
【解決手段】基板と、前記基板上に搭載されたLEDチップと、前記LEDチップの周囲を取り囲むように設けられた複数の金属バンプと、前記複数の金属バンプの内側に充填された封止材とを備えるLED発光装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に搭載されたLEDチップと、
前記LEDチップの周囲を取り囲むように設けられた複数の金属バンプと、
前記複数の金属バンプの内側に充填された封止材とを備えるLED発光装置。
【請求項2】
前記複数の金属バンプが、互いに隣接するように設けられている請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記複数の金属バンプが前記LEDチップを囲んで互いに間を空けて設けられており、
隣り合う前記金属バンプ同士が金属ワイヤで繋がれている請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記LEDチップに通電するための金属ワイヤと、前記金属バンプとが同じ金属材料により構成されている請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項5】
前記LEDチップが前記基板上に設けられた金属配線層上にボンディングされており、
前記複数の金属バンプが当該金属配線層上に設けられている請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項6】
基板と、前記基板上に搭載されたLEDチップとを備えるLED発光装置の製造方法であって、
前記基板上において、前記LEDチップが搭載されるLEDチップ搭載領域の周囲を取り囲むように複数の金属バンプを設け、
前記複数の金属バンプの内側に封止材を充填するLED発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED発光装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、基板の表面にLEDチップを多数実装した所謂チップオンボード(COB)型のLED発光装置がある。このようなLED発光装置では、基板上には、例えば環状をなし、内側にLEDチップの実装領域を区成するシリコーン等の樹脂製のダムが設けられている。また、この樹脂製のダムの内側に多数のLEDチップが実装された後、この樹脂ダム内には透光性を有する封止材が充填される。この封止材は、蛍光体を含有させておくことで、LEDチップから出た光の波長を変換する波長変換部材としても機能し、これにより、例えば白色光等を発する発光面を有するLED発光装置を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-118285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば白色光等を発する発光面積が小さいLED発光装置を作製する場合、LEDチップの近くにダムを形成する必要がある。ここでシリコーン等の樹脂製のダム材を用いる場合、塗布したダム材が硬化する最中に発生する揮発性物質がLEDチップに付着してワイヤボンディングの強度が低下しないように、予めLEDチップのワイヤボンディングを行った後にダムを形成する必要があるが、LEDチップに接続される金属ワイヤが邪魔になる等して、LEDチップ近傍への狭い領域へのダム材の塗布は難しい。また樹脂製のダムをLEDチップに近づけすぎた場合、光吸収によりダム材が発熱し、損傷するといった懸念もある。さらに樹脂製のダム材ではニジミ等が生じてしまい、狭い領域に塗布した際にダム形状が安定せず、発光面に色バラつきが生じやすいという問題もある。
【0005】
ダムを用いない方法としては、蛍光体を含有する封止材をLEDチップの直上に塗布する方法がある。しかしこの場合には、ダムがないため封止材の形状が安定せず、LEDチップ上に樹脂が塗布されていない部分が生じる等して、発光面に色バラつきが生じやすいという問題がある。
【0006】
また別の方法としては、インクジェット方式により蛍光体を含有する封止材をLEDチップ上に塗布する方法がある。しかしこの場合でも、LEDチップへ接続される金属ワイヤが邪魔をして、封止材を均一に塗布することができず、発光面に色バラつきが生じやすいという問題がある。またこの方法では、LEDチップの上面には封止材を塗布できても、側面には封止材を塗布しづらく、LEDチップの上面と側面とで封止材の厚みに差が生じてしまい、色バラつきが生じやすいといった問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題を一挙に解決すべくなされたものであり、LEDチップを封止材で覆うLED発光装置において、発熱を抑え且つ色バラつきを抑えながら、発光面を小型化することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本願発明者が鋭意検討した結果、例えばLEDチップへのワイヤボンディングを行う際に用いるワイヤボンダー等を用いて形成した金属バンプをLEDチップを囲むように複数配置することで、この金属バンプをダムとして利用できることを見出し、本発明に至った。つまり従来では、充填した封止材が外側に漏れ出ないように基板との間に隙間が生じないようにダムを設けるようにするというのが常識であったが、本発明者が鋭意検討した結果、基板との間に多少の隙間が生じてしまうように複数の金属バンプを並べても、その表面張力により封止材を外側に漏れ出させず形状を保持することができ、ダムとしての機能を発揮できることを初めて見出し本発明に至ったのである。
【0009】
すなわち本発明にかかるLED発光装置は、基板と、前記基板上に搭載されたLEDチップと、前記LEDチップの周囲を取り囲むように設けられた複数の金属バンプと、前記複数の金属バンプの内側に充填された封止材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成した本発明によれば、LEDチップの周りを囲むように複数の金属バンプを設けることで、この複数の金属バンプをダムとして用いることができる。そして金属バンプをダムとして用いることで、ダム材が光を吸収して発熱しても、樹脂製のダム材のように損傷することはない。また金属バンプでLEDチップの周囲を取り囲み、その内側に封止材を充填することで、LEDチップの上面と側面に封止材を隙間なく塗布することができるとともに、充填した封止材の形状を保持することができるので、発光面である封止材の表面から発せられる光の色バラつきを抑えることができる。しかも、金属バンプであれば、樹脂製のダムのような揮発性物質によるワイヤボンディング強度の低下を気にする必要がないため、LEDチップへのワイヤボンディングを行う前にダム材を形成することができる。このため、LEDチップに接続された金属ワイヤ等を気にすることなく狭い領域にも設けることができるので、LEDチップを取り囲む面積を小さくすることができる。その結果、LEDチップを封止材で覆うLED発光装置において、発熱を抑え且つ色バラつきを抑えながら、発光面を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態におけるLED発光装置の模式的平面図。
図2】同実施形態におけるLED発光装置の模式的断面図。
図3】他の実施形態におけるLED発光装置の模式的平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係るLED発光装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態のLED発光装置100は、図1に示すように、基板1と、基板1の上面(表面)に搭載された平面視矩形状をなすLEDチップ2と、LEDチップ2の周囲に設けられたダム4と、ダム4の内側に充填されてLEDチップ2を覆う封止材5とを備えている。
【0014】
基板1は平面視において概略矩形状をなす平板状のものであり、例えばガラスエポキシ基板等のプリント基板である。なお基板1は、金属基板やセラミックス基板などであってもよい。
【0015】
図1及び図2に示すように、基板1の表面には、平面視矩形状をなすダイパッド等の金属配線層11aが設けられており、この金属配線層11aの上に設定された所定のLEDチップ搭載領域にLEDチップ2がボンディングされている。より具体的には、金属配線層11aの表面にはダイボンディング用ペースト(図示しない)が塗布されており、LEDチップ2はその下面に形成されているカソードがダイボンディング用ペーストに接触するように設けられている。そしてLEDチップ2の上面に形成されたアノード21は、LEDチップ2が搭載されている金属配線層11aの近傍に設けられた他の金属配線層11bとの間で、金属ワイヤwによりボンディングされている。
【0016】
ダム4は、製造工程においてLEDチップ2を覆うように充填される封止材5を堰き止めるためのものである。ダム4は、1つのLEDチップ2の周囲を取り囲むようにして設けられている。
【0017】
封止材5は、透光性のある樹脂からなるものであり、例えば、シリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂やフッ素系樹脂である。この封止材5はダム4の内側に充填されており、その上面がLED発光装置100の発光面として機能する。なお封止材5は樹脂に限らず、低融点ガラスなどであってもよい。この封止材5は、蛍光体等の波長変換部材を含有していることが好ましい。
【0018】
しかして本実施形態のLED発光装置100は、図1及び図2に示すように、ダム4は、LEDチップ2の周囲を取り囲んで環状に設けられた複数の金属バンプ41を用いて構成されている。
【0019】
具体的にこの金属バンプ41は、LEDチップ2のカソード21と金属配線層11bとの間をつなぐ金属ワイヤwと同じ材質からなるものであり、例えば金、アルミニウム、銅等の金属材料からなるものである。複数の金属バンプ41は、いずれも略球状をなしており、LEDチップ2を取り囲むようにして、かつ隣り合う金属バンプ41同士が互いに接触(すなわち隣接)するようにして設けられている。ここでは複数の金属バンプ41はいずれも、LEDチップ2が載せられる金属配線層11a上に設けられており、その上端はLEDチップ2の上面よりも高くされている。
【0020】
そして封止材5は、環状に配置された複数の金属バンプ41の内側に充填されている。つまり封止材5は、平面視において、LEDチップ2が載せられた金属配線層11a上にのみ充填されている。そして封止材5内に封止されたLEDチップ2のカソード21に一端が接続された金属ワイヤwは、封止材5の上面(すなわち発光面)から飛び出して、近傍の金属配線層11bに他端が接続されている。
【0021】
このように本実施形態のLED発光装置100によれば、LEDチップ2の周りを囲むように複数の金属バンプ41を設けることで、この複数の金属バンプ41をダム4として用いることができる。そして金属バンプ41をダム4として用いることで、樹脂製のダム材を用いる場合に比べて、ダム材によるLEDチップ2からの光の吸収を抑えることができ、ダム材の発熱を抑えることができる。また金属バンプ41でLEDチップ2の周囲を取り囲み、その内側に封止材5を充填することで、LEDチップ2の上面と側面に封止材5を隙間なく塗布することができるとともに、充填した封止材5の形状を保持することができるので、発光面である封止材5の表面から発せられる光の色バラつきを抑えることができる。しかも、金属バンプ41であれば、環状に繋がった樹脂製のダム材とは異なり、LEDチップ2に接続された金属ワイヤw等を気にすることなく狭い領域にも設けることができるので、LEDチップ2を取り囲む面積を小さくし、発光面を小さくすることが可能となる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0023】
例えば前記実施形態のLED発光装置100では、複数の金属バンプ41は、隣り合う金属バンプ41同士が互いに隣接するように設けられていたが、これに限らない。他の実施形態のLED発光装置100では、図3に示すように、複数の金属バンプ41は、LEDチップ2を囲んで間欠的に(すなわち互いに間を空けて)設けられており、取り合う金属バンプ41同士が金属ワイヤ42により繋げられていてもよい。すなわちこの実施形態では、ダム4は、複数の金属バンプ41と、金属バンプ41間を繋げる金属ワイヤ42とにより構成されてよい。この場合、金属ワイヤ42は、金属バンプ41と同種の金属材料により構成されているのが好ましい。
【0024】
また他の実施形態のLED発光装置100では、ダム4が複数の金属バンプ41のみにより構成されており、この複数の金属バンプ41同士が互いに間隙を空けて配置されていてもよい。このように隣り合う金属バンプ41同士が離れており、その間に金属ワイヤ42がなくても、封止材5を堰き止めるダムとして機能することができる。
【0025】
また他の実施形態では、金属バンプ41の上端は、LEDチップ2の上面よりも高くされてなくてもよく、LEDチップ2の上面よりも低くされていてもよい。
【0026】
前記実施形態では、複数の金属バンプ41はLEDチップ2が設けられた金属配線層11a上にのみ設けられていたが、これに限らない。その一部又は全部が金属配線層11aからはみ出していてもよい。
【0027】
前記実施形態のLEDチップ2が射出する光の波長は特に限定されず、紫外光や青色光等の任意の波長の光を発するものであってもよい。
【0028】
その他、本願発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、本明細書の開示は以下の態様1~6を含む。
【0029】
(態様1)基板と、前記基板上に搭載されたLEDチップと、前記LEDチップの周囲を取り囲むように設けられた複数の金属バンプと、前記複数の金属バンプの内側に充填された封止材とを備えるLED発光装置。
【0030】
このような態様であれば、LEDチップの周りを囲むように複数の金属バンプを設けることで、この複数の金属バンプをダムとして用いることができる。そして金属バンプをダムとして用いることで、樹脂製のダム材を用いる場合に比べて、ダム材によるLEDチップからの光の吸収を抑えることができ、ダム材の発熱を抑えることができる。また金属バンプでLEDチップの周囲を取り囲み、その内側に封止材を充填することで、LEDチップの上面と側面に封止材を隙間なく塗布することができるとともに、充填した封止材の形状を保持することができるので、発光面である封止材の表面から発せられる光の色バラつきを抑えることができる。しかも、金属バンプであれば、環状に繋がった樹脂製のダム材とは異なり、LEDチップに接続された金属ワイヤ等を気にすることなく狭い領域にも設けることができるので、LEDチップを取り囲む面積を小さくし、発光面を小さくすることができる。
【0031】
(態様2)前記複数の金属バンプが、互いに隣接するように設けられている態様1に記載のLED発光装置。
このような態様であれば、隣り合う金属バンプ同士が隣接するように金属バンプを設けることで、充填した封止材が漏れ出にくくし、その形状をより保持しやすくできる。
【0032】
(態様3)前記複数の金属バンプが前記LEDチップを囲んで互いに間を空けて設けられており、隣り合う前記金属バンプ同士が金属ワイヤで繋がれている態様1に記載のLED発光装置。
このような態様であれば、互いに間を空けて設けたLEDチップと、その間をつなぐ金属ワイヤとにより、充填した封止材が漏れでないようにできる。このようにすれば、形成する金属バンプの数を少なくできるので、使用する金属量を低減するとともに、ダム材を形成する時間を短縮することができる。
【0033】
(態様4)前記LEDチップに通電するための金属ワイヤと、前記金属バンプとが同じ金属材料により構成されている態様1~3のいずれかに記載のLED発光装置。
このような態様であれば、LEDチップに通電するための金属ワイヤと、金属バンプとを、同一のワイヤボンダーを用いて続けて形成することができるので、製造時間を短縮することができる。
【0034】
(態様5)前記LEDチップが前記基板上に設けられた金属配線層上にボンディングされており、前記複数の金属バンプが当該金属配線層上に設けられている態様1~4のいずれかに記載のLED発光装置。
このような態様であれば、金属バンプにより形成されるダムがLEDチップが設けられる金属配線上にのみ設けられるので、発光面を十分に小さくすることができる。
【0035】
(態様6)基板と、前記基板上に搭載されたLEDチップとを備えるLED発光装置の製造方法であって、前記基板上において、前記LEDチップを搭載されるLEDチップ搭載領域の周囲を取り囲むように複数の金属バンプを設け、前記複数の金属バンプの内側に封止材を充填するLED発光装置の製造方法。
このような製造方法であれば、前記した態様のLED発光装置と同様の作用効果を奏し得る。
【符号の説明】
【0036】
100・・・LED発光装置
1 ・・・基板
2 ・・・LEDチップ
41 ・・・金属バンプ
5 ・・・封止材

図1
図2
図3