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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091044
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H01G4/30 517
H01G4/30 311D
H01G4/30 311Z
H01G4/30 311F
H01G4/30 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207322
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】酒井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】三上 和宏
(72)【発明者】
【氏名】入江 常雅
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E082AA01
5E082AB03
5E082MM22
5E082MM26
(57)【要約】
【課題】不良の発生原因を突き止めやすい、積層電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の積層電子部品1の製造方法は、セラミックグリーンシート30に複数の内部電極15を印刷する印刷工程と、内部電極15が印刷されたセラミックグリーンシート30を積層して、マザーブロック40を形成する積層工程と、マザーブロック40をプレスするプレス工程と、を備えた積層電子部品1の製造方法であって、セラミックグリーンシート30に印刷された内部電極15の印刷状態を検査して、検査結果を記録する印刷状態検査記録工程と、マザーブロック40におけるセラミックグリーンシート30の積層状態を検査して、検査結果を記録する積層状態検査記録工程と、マザーブロック40における内部電極15の重畳状態を検査して、検査結果を記録する重畳状態検査記録工程と、のうちの少なくとも一つの状態検査記録工程を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートに複数の内部電極を印刷する印刷工程と、
前記内部電極が印刷されたセラミックグリーンシートを積層して、マザーブロックを形成する積層工程と、
前記マザーブロックをプレスするプレス工程と、を備えた積層電子部品の製造方法であって、
前記セラミックグリーンシートに印刷された前記内部電極の印刷状態を検査して、検査結果を記録する印刷状態検査記録工程と、
前記マザーブロックにおける前記セラミックグリーンシートの積層状態を検査して、検査結果を記録する積層状態検査記録工程と、
前記マザーブロックにおける前記内部電極の重畳状態を検査して、検査結果を記録する重畳状態検査記録工程と、
のうちの少なくとも一つの状態検査記録工程を備える、
積層電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記状態検査記録工程において記録された状態の情報をもとに、前記マザーブロックの所定箇所にマーキングを行うマーキング工程を含む、
請求項1に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記マザーブロックを複数の積層チップに小片化する小片化工程と、
前記マーキング工程での前記マーキングに基づき、特定の前記積層チップを除去する除去工程と、を含む、
請求項2に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記マザーブロックには、それぞれIDコードが付され、
前記IDコードに前記状態検査記録工程で記録された検査結果が結び付けられ、
前記マザーブロックを複数の積層チップに小片化する小片化工程と、
前記IDコードに結びつけられた前記検査結果に基づき、小片化された特定の前記積層チップを除去する除去工程と、を含む、
請求項1に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記積層工程において、前記セラミックグリーンシートが、前記IDコードが付されたベース板に積層されることにより、前記マザーブロックに前記IDコードが付される、
請求項4に記載の積層電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層電子部品として、例えば積層セラミックコンデンサの製造方法は、従来、誘電体層となるグリーンシート上に内部電極を印刷する工程と、それらを複数枚積層してマザーブロックを作成する工程と、マザーブロックを小片化する工程と、を含んでいる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-175990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小片化後に生じる積層セラミックコンデンサの不良として、内部電極における、印刷不良や積層時やプレス時のズレ等に起因するものがある。しかし、従来、個々の積層セラミックコンデンサは、内部電極が印刷版のどの部分で印刷されたものであるのか、積層状態やプレス状態はどうだったのか、といった製造工程との関係性が絶たれてしまっているので、不良の発生原因を突き止めることができず、その後の不良の発生を防止することができない。
【0005】
本発明は、不良の発生原因を突き止めやすい、積層電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、セラミックグリーンシートに複数の内部電極を印刷する印刷工程と、前記内部電極が印刷されたセラミックグリーンシートを積層して、マザーブロックを形成する積層工程と、前記マザーブロックをプレスするプレス工程と、を備えた積層電子部品の製造方法であって、前記セラミックグリーンシートに印刷された前記内部電極の印刷状態を検査して、検査結果を記録する印刷状態検査記録工程と、前記マザーブロックにおける前記セラミックグリーンシートの積層状態を検査して、検査結果を記録する積層状態検査記録工程と、前記マザーブロックにおける前記内部電極の重畳状態を検査して、検査結果を記録する重畳状態検査記録工程と、のうちの少なくとも一つの状態検査記録工程を備える、積層電子部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不良の発生原因を突き止めやすい、積層電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の積層セラミックコンデンサ1の概略斜視図である。
図2図1の積層セラミックコンデンサ1のII-II線に沿った断面図である。
図3】積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明するフローチャートである。
図4】セラミックグリーンシート30に内部電極15が印刷された状態の概略図である。
図5】内部電極検査記録装置100のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の製造方法における積層電子部品としては、サーミスタ、コイル、積層セラミックコンデンサ1などが考えられるが、実施形態では積層セラミックコンデンサ1を例にとって説明する。図1は、実施形態の積層セラミックコンデンサ1の概略斜視図である。図2は、図1の積層セラミックコンデンサ1のII-II線に沿った断面図である。
【0010】
(積層セラミックコンデンサ1)
積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状で、積層体2と、積層体2の両端に設けられた一対の外部電極3とを備える。積層体2は、複数の誘電体層14と複数の内部電極15とが積層された内層部11を含む。
【0011】
以下の説明において、積層セラミックコンデンサ1の向きを表わす用語として、積層セラミックコンデンサ1において、一対の外部電極3が設けられている方向を長さ方向Lとする。誘電体層14と内部電極15とが積層されている方向を積層方向Tとする。長さ方向L及び積層方向Tのいずれにも交差する方向を幅方向Wとする。また、積層体2の6つの外表面のうち、積層方向Tに相対する一対の外表面を主面Aとし、幅方向Wに相対する一対の外表面を側面Bとし、長さ方向Lに相対する一対の外表面を端面Cとする。
【0012】
(積層体2)
積層体2は、積層チップ10と、サイドギャップ部20とを備える。
【0013】
(積層チップ10)
積層チップ10は、内層部11と、内層部11の両方の主面A側に配置される外層部12を備える。
【0014】
(内層部11)
内層部11は、複数の誘電体層14と内部電極15とが積層されている。
【0015】
(誘電体層14)
誘電体層14は、セラミック材料で製造されている。セラミック材料としては、例えば、BaTiOを主成分とする誘電体セラミックが用いられる。
【0016】
(内部電極15)
内部電極15は、例えばNi、Cu、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等に代表される金属材料により形成されている。内部電極15は、複数の第1内部電極15Aと、複数の第2内部電極15Bとを備える。第1内部電極15Aと第2内部電極15Bとは、交互に配置されている。なお、第1内部電極15Aと第2内部電極15Bとを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて内部電極15として説明する。
【0017】
内部電極15は、第1内部電極15Aと第2内部電極15Bとの間で互いに対向する対向部152と、第1内部電極15Aと第2内部電極15Bとの間で互いに対向せず、対向部152から一方の端面C側に引き出された引出部151とを備える。引出部151の端部は、端面Cに露出し、外部電極3に電気的に接続されている。引出部151が延びる方向は、第1内部電極15Aと第2内部電極15Bとで異なり、一方の端面C側と他方の端面C側とに交互に引き出される。そして、積層方向Tに隣り合う第1内部電極15Aと第2内部電極15Bとのセラミック材料からなる対向部152間に電荷が蓄積され、コンデンサとして機能する。
【0018】
(外層部12)
外層部12は、内層部11の誘電体層14と同じ誘電体セラミック材料で製造されていてもよい。
【0019】
(外部電極3)
外部電極3は、積層体2の一方の端面Cに設けられた外部電極3Aと、積層体2の他方の端面Cに設けられた外部電極3Bとを備える。なお、外部電極3Aと外部電極3Bとを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて外部電極3として説明する。外部電極3は、端面Cだけでなく、主面A及び側面Bの端面C側の一部も覆っている。
【0020】
(積層セラミックコンデンサ1の製造方法)
図3は、積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明するフローチャートである。積層セラミックコンデンサ1の製造方法は、セラミックグリーンシート作製工程S1と、印刷工程S2と、印刷状態検査記録工程S3と、積層工程S4と、積層状態検査記録工程S5と、プレス工程S6と、重畳状態検査記録工程S7と、マーキング工程S8と、小片化工程S9と、除去工程S10と、外部電極形成工程S11と、焼成工程S12とを含む。
【0021】
(セラミックグリーンシート作製工程S1)
セラミックグリーンシート作製工程S1は、ペットフィルム上に、例えばBaTiOを含む粒子、バインダ、分散剤、有機溶剤などを混合し、スラリー状にしたセラミックペーストを製造する。このセラミックペーストをキャリアフィルム上においてダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ等を用いてシート状に成形して、セラミックグリーンシート30(図4に図示)を作製する。セラミックグリーンシート30は実施形態では長尺状であってロール状に巻き回されているものを用いるが、これに限定されず、枚葉状であってもいい。
【0022】
(印刷工程S2)
印刷工程S2は、セラミックグリーンシート30に、例えばNi等の金属材料を含む導電性粒子、バインダ、溶剤などと混ぜてスラリー状にした内部電極ペーストを、種々の方法で印刷して内部電極15を印刷する。内部電極15の印刷は、例えばグラビア印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷などの方法で行われる。
【0023】
図4は、セラミックグリーンシート30に内部電極15が印刷された状態の概略図である。内部電極15は、セラミックグリーンシート30上に、複数行且つ複数列で整列して印刷される。図中、点線で囲む領域は、セラミックグリーンシート30から切り出される、後述するマザーブロック40(図5に図示)を製造する際の単位となる領域で、以後、単位シート31という。単位シート31には、複数行且つ複数列で整列して配置された複数の内部電極15が印刷されている。なお、単位シート31内の内部電極15は、一回の印刷により形成されてもよく、複数回の印刷により形成されてもよい。
【0024】
(カスレ・位置ずれ)
内部電極15は、複数行と複数列とに整列配置された所定位置に、カスレ等生じずに均一の厚さで印刷されていることが好ましい。しかし、グラビア版やスクリーンの特定エリアの損傷等や印刷時のセラミックグリーンシート30の状態により、内部電極15にカスレや位置ずれ生じる場合がある。図4において斜線で示す15a、15bの部分は、カスレが生じている内部電極15の例であり、15cで示す部分は、位置ずれ生じている内部電極15の例である。
【0025】
内部電極15にカスレや位置ずれ等の不良部分が存在すると、最終製品である積層セラミックコンデンサ1が不良となる場合がある。内部電極15の不良は、印刷工程S2だけでなく、積層工程S4やプレス工程S6においても発生する可能性がある。最終製品である積層セラミックコンデンサ1において不良が検出された場合、その不良がどの工程でどのように発生したものであるかといった発生原因を特定することができないと、その後の不良の発生を止めることができない。
【0026】
そこで、実施形態においては、内部電極15の状態を検査するための、印刷状態検査記録工程S3と、積層状態検査記録工程S5と、重畳状態検査記録工程S7とを含み、さらに内部電極15が不良である場合にマーキングを行うマーキング工程S8と、不良の積層チップを除去する除去工程S10と、を含む。
【0027】
図5は、印刷状態検査記録工程S3、積層状態検査記録工程S5、重畳状態検査記録工程S7及びマーキング工程S8を実施する、内部電極検査記録装置100のブロック図である。内部電極検査記録装置100は、印刷状態検査部110、積層状態検査部120、重畳状態検査部130、記録部140、制御部150、及びマーキング部160を含む。印刷状態検査部110、積層状態検査部120、及び重畳状態検査部130は、それぞれ、画像取得部111,121,131及び画像処理部112,122,132を含む。
【0028】
(印刷状態検査記録工程S3)
印刷状態検査記録工程S3は、印刷工程S2で印刷された、セラミックグリーンシート30上の内部電極15の印刷状態を検査して、その印刷状態を記録する工程である。
【0029】
印刷状態検査記録工程S3で用いられる印刷状態検査部110の画像取得部111は、撮影機能を有した光学顕微鏡や電子顕微鏡である。画像取得部111は、図5に示すように内部電極15が印刷されたセラミックグリーンシート30を、例えば単位シート31ごとに、上面から撮影する。なお、撮影は、内部電極15が乾燥した後が好ましい。
【0030】
画像処理部112は、画像取得部111において撮影された単位シート31の画像を、基準となる画像と比較し、基準となる画像との差が一定以上となった内部電極15を、例えば不良の内部電極15として検出する。また、単位シート31内の内部電極15に関する画像を平均化し、平均から大きく外れた画像を不良としてもよい。
【0031】
記録部140は、それぞれの単位シート31の状態を記録する。記録される内容は、例えば、その単位シート31が、セラミックグリーンシート30の先頭から何番目の単位シート31であるか、画像処理部112において単位シート31内で不良の内部電極15が検出された場合、その内部電極15の位置(行列番号)、不良の原因(カスレか位置ずれか)等である。なお、記録部140は、不良が検出された内部電極15が含まれる単位シート31の情報だけを記録してもよく、また、不良の有無に限らず、全ての単位シート31の情報を記録してもよく、単位シート31全体の情報ではなく不良が検出された内部電極15の情報だけを記録してもよい。
【0032】
(積層工程S4)
印刷状態検査記録工程S3に次いで、内部電極15が印刷されたセラミックグリーンシート30が単位シート31ごとに切り抜かれて、それぞれの単位シート31が積層される。単位シート31は、ベース板50上に複数枚積層される。なお、ベース板50に積層される際、積層初めの複数枚と、積層終わりの複数枚は、内部電極15が印刷されていない外層部用の単位シート32が配置される。
【0033】
内部電極15を有する単位シート31は、ベース板50上に、内部電極15が同一の方向を向き且つ内部電極15が隣り合う単位シート31間において半ピッチずつずれた状態になるようにして、複数枚積層され、圧着前のマザーブロック40Aが形成される。なお、単位シート31を切り取る際に、内部電極15が互いに半ピッチずれた、異なる2種類の単位シート31を切り取って、その2種類の単位シート31を複数枚積層して、圧着前のマザーブロック40Aを形成してもよい。
【0034】
(IDコード)
ベース板50は、例えば金属板で、固有のIDコードが付されている。ベース板50に単位シート31を積層してマザーブロック40を製造する際、そのIDコードは、マザーブロック40Aにおける、例えば周縁の余白部分に転写される。なお、マザーブロック40は複数に面内方向に分割されていてもよく、その場合、分割されたそれぞれのマザーブロック40に別のIDコードが付与されてもよい。
【0035】
それぞれのIDコードは、そのIDコードが付されたベース板50に、セラミックグリーンシート30の何番目から何番目までの単位シート31が積層されたか、といった情報等と紐付けられている。
【0036】
(積層ずれ)
図5中、マザーブロック40Aにおける、符号m1、m3、m5が付された単位シート31は、内部電極15が、第1内部電極15Aとなる単位シート31で、図示するように両端が、同じ位置になるように積層される。
【0037】
図中、符号m2、m4、m6が付された単位シート31は、内部電極15が、第2内部電極15Bとなる単位シート31で、図示するように両端が、同じ位置になるように積層される。しかし、例えば、斜線で示す符号m4の単位シート31が、積層工程S4において長さ方向の両端が、m2、m6と同じ位置でなく、図中m2、m6よりも少し右にずれたとする。そうすると、m4の単位シート31の内部電極15の位置も、所定の位置からずれるので、最終製品としての積層セラミックコンデンサ1が不良となる場合がある。
【0038】
(積層状態検査記録工程S5)
そこで、実施形態の積層セラミックコンデンサ1の製造方法は、積層状態検査記録工程S5を含む。積層状態検査記録工程S5は、単位シート31の積層状態を検査して、単位シート31の積層ずれを検出して記録する工程である。
【0039】
積層状態検査記録工程S5で用いられる積層状態検査部120の画像取得部121は、例えば撮影機能を有した光学顕微鏡や電子顕微鏡である。画像取得部121は、これに限定されないが、実施形態では印刷状態検査記録工程S3の画像取得部111と異なり、積層された複数の単位シート31の長さ方向及び/又は幅方向の一端を撮影する。そして、単位シート31の端部のずれ状態を撮影する。また、画像取得部121は、積層工程S4でマザーブロック40Aに付されたIDコードも取得する。
【0040】
画像処理部122は、画像取得部121により撮影された、積層された複数の単位シート31の長さ方向及び/又は幅方向の一端の画像を、例えば基準となる画像と比較する。そして、単位シート31の端部が所定の位置からずれて、基準となる画像との差が一定の閾値以上となったものを、例えば不良として検出する。図示する実施例では、符号m4の単位シート31が不良として検出されるので、この単位シート31を含むマザーブロック40Aが、不良として検出される。
【0041】
記録部140は、マザーブロック40Aに付されたIDごとに、積層不良があったかどうか、あった場合、積層不良は何層目に積層された単位シート31か、といった積層状態を記録する。なお、記録部140は、積層不良が検出されたマザーブロック40Aの情報だけを記録してもよく、また、積層不良の有無に限らず、全てのマザーブロック40Aの情報を記録してもよい。
【0042】
(プレス工程S6)
積層後、マザーブロック40Aはプレスされる。プレスは、剛体プレスであってもよく、静水圧プレスであってもよい。プレスは、マザーブロック40Aをベース板50から分離した状態で行うことが好ましいがベース板50に保持した状態で行ってもよい。
【0043】
(重畳状態検査記録工程S7)
(プレスずれ)
マザーブロック40Aをプレスした後のマザーブロック40Bにおいて、内部電極15に重畳ずれが生じている可能性がある。そこで、実施形態は重畳状態検査記録工程S7を含む。重畳状態検査記録工程S7は、マザーブロック40Bにおける内部電極15の重畳状態を検査して、重畳ずれを検出して記録する。
【0044】
重畳状態検査記録工程S7で用いられる重畳状態検査部130の画像取得部131は、例えばX線をマザーブロック40Bに照射して、マザーブロック40Bを透過した透過X線画像を下面側から受けて透過X線画像を取得する。内部電極15と、誘電体層14とでX線の透過率が異なるので、内部電極15の重畳状態を検出できる。なお、画像取得部131は、X線を用いたものに限定されず、例えばマザーブロック40の側面に内部電極15の一部を露出させて、その積層状態を検査するものであってもよい。
【0045】
画像処理部132は、画像取得部131により撮影された画像を、例えば基準となる画像と比較する。そして、内部電極15の重畳状態が基準となる画像と比較してその差が一定の閾値以上となったものを、例えば重畳不良として検出する。
【0046】
記録部140は、マザーブロック40Bに付されたIDに対応させて、重畳不良があったかどうかといった重畳状態を記録する。なお、記録部140は、重畳不良が検出されたマザーブロック40Bの情報だけを記録してもよく、また、重畳不良の有無に限らず、全てのマザーブロック40Bの情報を記録してもよい。
【0047】
制御部150は、印刷状態検査記録工程S3で記録部140に記録された情報と、積層状態検査記録工程S5で記録部140に記録された情報とを、重畳状態検査記録工程S7で記録部140に記録された情報とを、IDコードにリンクさせる。
【0048】
(マーキング工程S8)
マーキング工程S8において、制御部150は個々のマザーブロック40ごとに、付されているIDコードを読み取る。そうすると、そのIDに対応するマザーブロック40に含まれる単位シート31のそれぞれの内部電極15の印刷状態と、単位シート31の積層状態と、内部電極15の重畳状態とが判明する。
マーキング部160は、内部電極15の印刷状態と、単位シート31の積層状態と、内部電極15の重畳状態とから判断し、マザーブロック40における、積層セラミックコンデンサ1となったときに不良となる確率の高い積層チップ10となる部分をマーキングする。実施形態では、図5の右上に斜線で示す部分が、マザーブロック40においてマーキングされた部分である。
【0049】
マーキングする部分は、印刷状態検査記録工程S3、積層状態検査記録工程S5、重畳状態検査記録工程S7の全てにおいて不良と判断された部分であってもよい。
また、印刷状態検査記録工程S3、積層状態検査記録工程S5、重畳状態検査記録工程S7のいずれか2工程において不良と判断された部分であってもよい。
さらに、印刷状態検査記録工程S3、積層状態検査記録工程S5、重畳状態検査記録工程S7のいずれか1工程において不良と判断された部分であってもよい。
【0050】
なお、実施形態でマーキングは、プレス後、マザーブロック40がベース板50から分離された状態で行うが、これに限らず、プレス前、マザーブロック40がベース板50に保持された状態で行ってもよい。
【0051】
マーキングは、ペン等を用いた人の作業やロボットによるマーキングでもよく、インクジェットなどを用いた印刷であってもよく、レーザなどの加工機を用いた切削によるマーキングであってもよい。マーキングはスポットでもよく、特定領域にスポットが集中する場合は、領域全体を塗りつぶすものであってもよい。
【0052】
(小片化工程S9)
小片化工程S9は、マザーブロック40を所定の大きさに切断して複数の積層チップ10を得る工程である。小片化は、押切によるものであってもいいし、切削によるものであってもいいし、ブレイクによるものであってもいい。
【0053】
小片化は、マザーブロック40を粘着性の保持シートに保持した状態で行うことが好ましい。小片化後もIDコード情報を保存することが可能であるからである。粘着性の保持シートは、温度により粘着性を発現/消失させるものが好ましい。この場合、例えばスポットヒータやクーラ、ペルチェ素子などを用いて、保持シートにおけるマーキングされた部分の温度を他の部分に対して異ならせ、マーキングされた部分の積層チップ10のみ粘着性を消失させる。これにより、マーキングされた積層チップ10のみ保持シートから剥離して除去することが可能でとなる。なお、マーキングされた積層チップ10が保持シートに残るようにしてもよい。
【0054】
(除去工程S10)
マーキングされた積層チップ10の除去は、吸引ノズルや、電磁石、磁石などが用いることができる。マーキングされた積層チップ10の選別は、イメージセンシングカメラを備えたロボットにより行ってもよく、人手により行われてもよい。
【0055】
(外部電極形成工程S11)
続いて積層チップ10の端面Cに、外部電極3を形成する導電性ペーストを塗布する。
【0056】
(焼成工程S12)
そして、設定された焼成温度で、窒素雰囲気中で所定時間加熱する。これにより、外部電極3が積層体2に焼き付けられて積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0057】
(効果)
以上、本実施形態によると、印刷工程S2と積層工程S4との間に印刷状態検査記録工程S3、積層工程S4とプレス工程S6との間に積層状態検査記録工程S5、プレス工程S6と小片化工程S9との間に重畳状態検査記録工程S7を含む。ゆえに、どの工程で不良が発生しているかといった不良の発生原因の特定しやすくなり、不良の発生防止対策を行うことが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態では、印刷状態検査記録工程S3と、積層状態検査記録工程S5と、重畳状態検査記録工程S7との3つの検査記録工程を含んでいたが、これに限定されない。例えばこれらの3つのうちの1つの検査記録工程を含むものであってもよく、2つの検査記録工程を含むものであってもよい。1つの検査記録工程を含んでいれば、少なくともその検査記録工程で発生した不良を特定することができ、不良の発生防止対策を行うことが可能となる。
【0059】
また、実施形態によると、不良が検出された積層チップ10を除去工程S10において除去することにより、その後の工程に不良の積層チップ10が流出することを阻止することができる。
【0060】
さらに、実施形態によると、プレス前のマザーブロック40AにIDコードが直接付されているので、例えばマザーブロック40Aがベース板50から分離された下流の工程においても、マザーブロック40BをIDに関連付けて管理できる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は以下の組み合わせを含む。
<1>セラミックグリーンシートに複数の内部電極を印刷する印刷工程と、前記内部電極が印刷されたセラミックグリーンシートを積層して、マザーブロックを形成する積層工程と、前記マザーブロックをプレスするプレス工程と、を備えた積層電子部品の製造方法であって、前記セラミックグリーンシートに印刷された前記内部電極の印刷状態を検査して、検査結果を記録する印刷状態検査記録工程と、前記マザーブロックにおける前記セラミックグリーンシートの積層状態を検査して、検査結果を記録する積層状態検査記録工程と、前記マザーブロックにおける前記内部電極の重畳状態を検査して、検査結果を記録する重畳状態検査記録工程と、のうちの少なくとも一つの状態検査記録工程を備える、積層電子部品の製造方法。
【0062】
<2>前記状態検査記録工程において記録された状態の情報をもとに、前記マザーブロックの所定箇所にマーキングを行うマーキング工程を含む、<1>に記載の積層電子部品の製造方法。
【0063】
<3>前記マザーブロックを複数の積層チップに小片化する小片化工程と、前記マーキング工程での前記マーキングに基づき、特定の前記積層チップを除去する除去工程と、を含む<1>または<2>に記載の積層電子部品の製造方法。
【0064】
<4>前記マザーブロックには、それぞれIDコードが付され、前記IDコードに前記状態検査記録工程で記録された検査結果が結び付けられ、前記マザーブロックを複数の積層チップに小片化する小片化工程と、前記IDコードに結びつけられた前記検査結果に基づき、小片化された特定の前記積層チップを除去する除去工程と、を含む、<1>から<3>のいずれかに記載の積層電子部品の製造方法。
【0065】
<5>前記積層工程において、前記セラミックグリーンシートが、前記IDコードが付されたベース板に積層されることにより、前記マザーブロックに前記IDコードが付される、<4>に記載の積層電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0066】
1 積層セラミックコンデンサ
3 外部電極
10 積層チップ
14 誘電体層
15 内部電極
30 セラミックグリーンシート
31 単位シート
40,40A,40B マザーブロック
50 ベース板
100 内部電極検査記録装置
110 印刷状態検査部
111,121,131 画像取得部
112,122,132 画像処理部
120 積層状態検査部
130 重畳状態検査部
140 記録部
150 制御部
160 マーキング部
図1
図2
図3
図4
図5