(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091045
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】複合板材の製造方法、複合板材群、及び複合板材梱包体
(51)【国際特許分類】
B32B 1/00 20240101AFI20240627BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240627BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20240627BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B32B1/00 A
B32B7/12
B32B37/14 Z
C03C27/12 H
C03C27/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207323
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】田中 義雄
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AG00E
4F100AK01
4F100AK01C
4F100AK21
4F100AK25
4F100AK45
4F100AK51
4F100AK53
4F100AK68
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AS00A
4F100AS00C
4F100AS00E
4F100BA05
4F100BA08
4F100CB00
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100DD11D
4F100EJ24
4F100EJ24A
4F100EJ24B
4F100EJ24C
4F100EJ24D
4F100EJ24E
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ42B
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4F100EJ42D
4F100EJ42E
4F100EJ58
4F100EJ58A
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4F100EJ58E
4F100EJ59
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4F100EJ59B
4F100EJ59C
4F100EJ59D
4F100EJ59E
4F100JB13
4F100JB16
4F100JL02
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL11D
4F100JN01
4G061AA13
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD18
4G061DA68
(57)【要約】
【課題】積層体を負圧下で加熱することで得られる複合板材の反りの方向性を一様にする。
【解決手段】ガラス板5cを含む複数の板材5a、5cをそれら相互間に接着層5bとなる中間層を介在させて積層した積層体5を、負圧下で加熱することで、複数の板材5a、5cを相互に接着させた複合板材10を製造する際に、上面2aが湾曲した載置部材2の上に、積層体5を、該積層体5の積層方向下端の主表面5xが載置部材2の上面2aと対向する状態で載置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材をそれら相互間に接着層となる中間層を介在させて積層した積層体を、負圧下で加熱することで、前記複数の板材を相互に接着させた複合板材を製造する方法であって、
上面が湾曲した載置部材の上に、前記積層体を、該積層体の積層方向下端の主表面が前記載置部材の上面と対向する状態で載置することを特徴とする複合板材の製造方法。
【請求項2】
前記載置部材と前記積層体と有する積層集合体を、複数段に積み重ねた後、複数段の前記積層体を負圧下で加熱することを特徴とする請求項1に記載の複合板材の製造方法。
【請求項3】
上段の載置部材と、下段の載置部材との間に、前記積層体の外周側を取り囲むように配置された複数の支柱を介設することで、前記積層集合体を複数段に積み重ねると共に、少なくとも一部の前記支柱を、スペーサを用いて長さ調整可能にしたことを特徴とする請求項2に記載の複合板材の製造方法。
【請求項4】
前記載置部材の上面が下方に凸となるように湾曲していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の複合板材の製造方法。
【請求項5】
前記積層体と前記載置部材との間に、形状修正部材を配置したことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の複合板材の製造方法。
【請求項6】
前記積層体は、上側の当て板と下側の当て板とで挟まれ、前記下側の当て板と前記載置部材との間に、前記形状修正部材を配置したことを特徴とする請求項5に記載の複合板材の製造方法。
【請求項7】
前記載置部材の上面が下方に凸となるように湾曲しており、その湾曲面の中央部に前記形状修正部材を配置したことを特徴とする請求項6に記載の複合板材の製造方法。
【請求項8】
前記形状修正部材、前記上側の当て板、及び前記下側の当て板は、前記積層体と共に負圧下で加熱されることを特徴とする請求項7に記載の複合板材の製造方法。
【請求項9】
前記積層体は、ガラス板と樹脂板とが、前記中間層を介して積層されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の複合板材の製造方法。
【請求項10】
複数の板材をそれら相互間に接着層となる中間層を介在させて積層した積層体を、負圧下で加熱することで、前記複数の板材を相互に接着させた複合板材を製造する方法であって、
載置部材の上に、前記積層体を、該積層体の積層方向下端の主表面が前記載置部材の上面と対向する状態で載置し、
前記積層体と前記載置部材との間に、形状修正部材を配置したことを特徴とする複合板材の製造方法。
【請求項11】
請求項1~3、10のいずれかに記載の製造方法を複数回行うことで得られる複合板材群であって、
全ての複合板材が同じ方向に凸となるように湾曲していることを特徴とする複合板材群。
【請求項12】
複数の板材が接着層により相互に接着した複合板材を複数枚配列させて梱包した複合板材梱包体であって、
前記複数枚の全ての複合板材が、同じ方向に凸となるように湾曲していることを特徴とする複合板材梱包体。
【請求項13】
複数の板材が接着層により相互に接着した複合板材を複数枚配列させて梱包した複合板材梱包体であって、
前記複数枚のうちの一部の複合板材が、同じ方向に凸となるように湾曲し、それ以外の全ての複合板材が、平板状であることを特徴とする複合板材梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を含む複数の板材を積層一体化した複合板材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板を含む複数の板材を積層一体化した複合板材及びその製造方法は、種々のものが提案され或いは実用化されている。
【0003】
その一例として、特許文献1には、樹脂板の表裏両側に薄板ガラスを接着させて形成した複合板材が開示されている。この複合板材の製造方法は、樹脂板とその表裏両側の薄板ガラスとのそれぞれの相互間に中間層を介在させて積層した積層体を、負圧下で加熱する工程を備えている。中間層は、加熱によって接着層となる。この製造方法では、積層体が平面状をなす載置面の上に載置されている。
【0004】
また、他の例として、特許文献2には、複数の板ガラスを接着させて形成した複合板材が開示されている。この複合板材の製造方法も、複数の板ガラスのそれぞれの相互間に上記と同様の中間層を介在させて積層した積層体を、負圧下で加熱する工程を備えている。この製造方法では、積層体が載置台の上に載置されている。載置台の上面は平面状をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-104845号公報
【特許文献2】特開2019-99452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示の製造方法は、何れも、積層体を負圧下で加熱する工程を備えているため、得られた複合板材に反りが発生し易い。
【0007】
複合板材を使用する作業現場等では、複合板材が一方(例えば手前側)に凸となるように湾曲するか或いは他方(例えば奥側)に凸となるよう湾曲するかについての反りの方向性を一様にしたいという要請がある。
【0008】
このような要請が出現した理由は、複合板材の反りの方向性が一様でないと、複合板材の設置作業等を行う際に作業ミスや作業性の悪化等の問題が生じ得るからである。
【0009】
然るに、特許文献1、2に開示の何れの製造方法によっても、このような要請に応じることが困難である。
【0010】
以上の観点から、本発明の課題は、積層体を負圧下で加熱することで得られる複合板材の反りの方向性を一様にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、複数の板材をそれら相互間に接着層となる中間層を介在させて積層した積層体を、負圧下で加熱することで、前記複数の板材を相互に接着させた複合板材を製造する方法であって、上面が湾曲した載置部材の上に、前記積層体を、該積層体の積層方向下端の主表面が前記載置部材の上面と対向する状態で載置することに特徴づけられる。
【0012】
このような構成によれば、積層体を負圧下で加熱する際に、積層体が載置部材の上面の湾曲形状に対応して湾曲する。したがって、得られる複合板材は、常に一方に凸となるように湾曲する。これにより、複合板材の反りの方向性を一様にすることができる。
【0013】
(2)上記(1)の構成において、前記載置部材と前記積層体と有する積層集合体を、複数段に積み重ねた後、複数段の前記積層体を負圧下で加熱するようにしてもよい。
【0014】
このようにすれば、複数段の積層体から複数の複合板材を一挙に製造できるため、生産性を高めることが可能となる。
【0015】
(3)上記(2)の構成において、上段の載置部材と、下段の載置部材との間に、前記積層体の外周側を取り囲むように配置された複数の支柱を介設することで、前記積層集合体を複数段に積み重ねると共に、少なくとも一部の前記支柱を、スペーサを用いて長さ調整可能にしてもよい。
【0016】
このようにすれば、支柱を介して相対的に上段に位置する積層集合体の重量が載置部材に作用することによる問題が回避され得る。詳しくは、載置部材に上記の重量が作用した場合には、載置部材に形状変化が生じ得るが、この形状変化に応じてスペーサを用いることで、載置部材の形状の安定性を確保できる。
【0017】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの構成において、前記載置部材の上面が下方に凸となるように湾曲していてもよい。
【0018】
このようにすれば、例えば既述のように積層集合体を複数段に積み重ねる場合に、載置部材の形状の安定性をより適切に確保できる。
【0019】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの構成において、前記積層体と前記載置部材との間に、形状修正部材を配置してもよい。
【0020】
このようにすれば、載置部材の上面が下方に凸となるように湾曲している場合に、形状修正部材の存在によって、得られる複合板材の反りが過度に大きくなることを抑制でき、或いは、その反りの向きを上方に凸となるように変更できる。
【0021】
(6)上記(5)の構成において、前記積層体は、上側の当て板と下側の当て板とで挟まれ、前記下側の当て板と前記載置部材との間に、前記形状修正部材を配置してもよい。
【0022】
このようにすれば、二つの当て板の存在によって、得られる複合板材の反りの形状を滑らかに湾曲した形状にすることができる。
【0023】
(7)上記(5)または(6)の構成において、前記載置部材の上面が下方に凸となるように湾曲しており、その湾曲面の中央部に前記形状修正部材を配置してもよい。
【0024】
このようにすれば、積層体の積層方向下端の主表面の中央部に形状修正部材を当てることができるため、得られる複合板材の反りの大きさや向きを適正化できる。
【0025】
(8)上記(6)または(7)の構成において、前記形状修正部材、前記上側の当て板、及び前記下側の当て板は、前記積層体と共に負圧下で加熱されるようにしてもよい。
【0026】
このようにすれば、負圧下で加熱をする際には、形状修正部材から積層体に対して負圧による押し付け力が作用するため、得られる複合板材の反りの大きさや向きをより確実に適正化できる。
【0027】
(9) 上記(1)~(8)のいずれかの構成において、前記積層体は、ガラス板と樹脂板とが、前記中間層を介して積層されるようにしてもよい。
【0028】
このようにすれば、樹脂板が反りの発生に大きく影響を及ぼすという事態に的確に対処可能となる。
【0029】
(10)上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、複数の板材をそれら相互間に接着層となる中間層を介在させて積層した積層体を、負圧下で加熱することで、前記複数の板材を相互に接着させた複合板材を製造する方法であって、載置部材の上に、前記積層体を、該積層体の積層方向下端の主表面が前記載置部材の上面と対向する状態で載置し、前記積層体と前記載置部材との間に、形状修正部材を配置したことに特徴づけられる。
【0030】
このような構成によれば、載置部材の上面が、下方に凸となるように湾曲する場合や上方に凸となるように湾曲する場合だけでなく、平面状である場合にも、形状修正部材の存在によって、得られる複合板材の反りの方向性を一様にすることができる。
【0031】
(11)上記課題を解決するために創案された本発明の第三の側面は、上記(1)~(10)のいずれかに記載の製造方法を複数回行うことで得られる複合板材群であって、全ての複合板材が同じ方向に凸となるように湾曲していることに特徴づけられる。
【0032】
このような構成によれば、複合板材群を構成する全ての複合板材について反りの方向性を一様にすることができる。
【0033】
(12)上記課題を解決するために創案された本発明の第四の側面は、複数の板材が接着層により相互に接着した複合板材を複数枚配列させて梱包した複合板材梱包体であって、前記複数枚の全ての複合板材が、同じ方向に凸となるように湾曲していることに特徴づけられる。
【0034】
このような構成によれば、反りの方向性が異なる複合板材を混在させて梱包することにより生じ得る梱包体の大型化さらには複合板材の破損や損傷等を抑止できる。
【0035】
(13)上記課題を解決するために創案された本発明の第五の側面は、複数の板材が接着層により相互に接着した複合板材を複数枚配列させて梱包した複合板材梱包体であって、前記複数枚のうちの一部の複合板材が、同じ方向に凸となるように湾曲し、それ以外の全ての複合板材が、平板状であることに特徴づけられる。
【0036】
このような構成とした場合も、反りの方向性が異なる複合板材を混在させて梱包することにより生じ得る梱包体の大型化さらには複合板材の破損や損傷等を抑止できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、積層体を負圧下で加熱することで得られる複合板材の反りの方向性を一様にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施形態に係る複合板材の製造方法の実施対象となる主たる構成要素である積層集合体を示す部品分解配列斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る複合板材の製造方法の実施対象となる主たる構成要素である積層集合体を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る複合板材の製造方法の実施対象となる主たる構成要素である積層集合体及びその周辺の装置構成を示す縦断正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る複合板材の製造方法の実施対象となる主たる構成要素である積層集合体及びその周辺の装置構成を示す縦断正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る製造方法を実行するための製造装置を示す一部破断正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る複合板材梱包体の構成を示す一部省略縦断側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る複合板材梱包体の構成の他の例を示す一部省略縦断側面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る複合板材の製造方法の実施対象となる主たる構成要素である積層集合体及びその周辺の装置構成の他の例を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態に係る複合板材の製造方法、複合板材群、及び複合板材梱包体について添付図面を参照しつつ説明する。
【0040】
<複合板材の製造方法>
図1は、本実施形態に係る複合板材の製造方法の実施対象となる主たる構成要素である積層集合体1を示す部品分解配列斜視図である。同図に示すように、積層集合体1は、下方から順に、載置部材2と、形状修正部材3と、下側の当て板4と、積層体5と、上側の当て板6と、を備える。なお、以下の説明では、同図に示す矢印X方向を縦方向とし、矢印Y方向を横方向とし、矢印Z方向を上下方向とする。
図2は、積層集合体1の平面図である。まず、
図1及び
図2に基づいて、積層集合体1の構造を説明する。
【0041】
載置部材2は、矩形の板状体であって、縦方向長さ及び横方向長さは、いずれも、下側の当て板4の縦方向長さ及び横方向長さよりも長い。さらに、載置部材2は、下方に凸となるように湾曲している。本実施形態では、載置部材2は、縦方向と横方向とのいずれについても下方に凸となるように湾曲している。これに伴って、載置部材2の上面2aも、縦方向と横方向とのいずれについても下方に凸となるように湾曲している。載置部材2は、ステンレスなどの金属で形成されている。
【0042】
形状修正部材3は、長手方向と直交する断面が矩形の棒状体であって、縦方向長さが400~700mm、横方向長さが8~20mm、厚みが6~10mmである。形状修正部材3は、金属、木材などで形成されていてもよいが、本実施形態では、ポリカーボネートなどの樹脂で形成されている。形状修正部材3は、載置部材2の上面2aの中央部に載置されている。
【0043】
下側の当て板4は、矩形の板状体であって、縦方向長さが1000~1800mm、横方向長さが500~1200mm、厚みが6~10mmである。下側の当て板4は、金属などで形成されていてもよいが、本実施形態では、ガラス(例えばソーダガラス)で形成されている。なお、上側の当て板6のサイズや材質は、既述の下側の当て板4と同一である。
【0044】
積層体5は、樹脂板5aの表裏両側に、中間層としての接着シート5bを介してガラス板5cを積層したものである。積層体5は、全体として矩形の板状体である。また、積層体5を構成する樹脂板5a、接着シート5b、ガラス板5cの縦方向長さ、横方向長さ、厚みはそれぞれ異なっている。積層体5の平均の縦方向長さが1000~3000mm、横方向長さが500~1500mm、厚みが4~9mmである。
【0045】
積層体5の縦方向長さは、形状修正部材3の縦方向長さの1倍~5倍であり、積層体5の横方向長さは、形状修正部材3の横方向長さの10倍~100倍である。したがって、平面視で、積層体5(積層方向両端の主表面)は、形状修正部材3の周囲から大きく食み出している。
【0046】
積層体5の縦方向長さ及び横方向長さは、両当て板4、6の縦方向長さ及び横方向長さと同程度であってもよいが、本実施形態では、積層体5のそれらは、両当て板4、6のそれらよりも僅かに短い。したがって、平面視で、両当て板4、6は、形状修正部材3の周囲から大きく食み出し、且つ、積層体5の周囲から僅かに食み出している。
【0047】
積層体5の厚みは、両当て板4、6のそれぞれの厚みと同程度であってもよいが、本実施形態では、積層体5の厚みよりも両当て板4、6のそれぞれの厚みの方が大きい(
図1には、便宜上、逆の関係として図示している。後述する
図3~
図5等も同様)。
【0048】
樹脂板5aは、厚みが0.5~8.0mmであり、ポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で形成される。ガラス板5cは、厚みが0.1~2.0mmであり、オーバーフローダウンドロー法やフロート法などによって成形される。なお、ガラス板5cは透明である。
【0049】
接着シート5bは、加熱により接着層となるものであり、熱架橋性接着剤(EVA,エポキシ系)、熱可塑性接着剤(EVA,PVB,TPU,COP)などで形成される。接着シート5bの厚みは、例えば、0.1mm~1.0mmである。なお、接着シート5bの代わりに、液体状の接着剤を膜状に塗布してもよい。
【0050】
本実施形態に係る製造方法は、負圧下で加熱する工程を備えている。
図3は、この工程を実行する前の積層集合体1及びその周辺の装置構成を例示するものであり、
図2のA-A線断面図に対応する図である。
【0051】
図3に示すように、載置部材2の上に載置されている形状修正部材3、両当て板4、6、及び積層体5は、袋体(真空バッグ)7の内部に収容されている。袋体7は、ゴム、ナイロン等の樹脂フィルム、などの伸縮性を有する弾性材質で形成されており、その開口部に、ポンプPに接続された管8が挿入されている。袋体7の開口部は、ゴムなどの固定具9により管8に固定され、袋体7の内部の気密性が保たれている。
【0052】
同図から明らかなように、積層体5の積層方向下端の主表面5xは、載置部材2の上面2aと対向する状態にある。また、積層体5には、積層方向下端の主表面5x側と、積層方向上端の主表面5y側とが目視で判別できるように、目印が付されている。具体的には、樹脂板5aの上面、下面または側面のいずれかに、目印としての模様やマークが付されている。
【0053】
このような状態の下で、負圧下で加熱する工程が行われる。詳述すると、ポンプPを稼働させることで、袋体7の内部の気体を排出し、袋体7の内部の気圧を負圧にする。その結果、
図4に示すように、袋体7が収縮することで、袋体7の内面が、形状修正部材3及び両当て板4、6に密着する。これにより、積層体5は、形状修正部材3と下側の当て板4とによって下側から押圧されると同時に、上側の当て板6によって上側から押圧される。なお、袋体7の内部の気圧は、例えば、0~500Paに設定される。
【0054】
一方、上記のように袋体7の内部の気圧を負圧にした時点では、袋体7の周辺が外部から加熱されることで、積層体5に含まれる接着シート5bが溶融する。この場合、加熱温度は、100~250℃程度とされる。これにより、積層体5の樹脂板5aと両ガラス板5cとがそれぞれ接着シート5bによって強固に接着する。
【0055】
上記の過程で、両当て板4,6及び積層体5は、負圧による力と、自重や上方からの重量と、熱との相乗作用により変形しながら、形状修正部材3を押し下げる。形状修正部材3も、オートクレーブによる加圧に起因する負圧による力と、上方からの重量と、熱との相乗作用により変形する。そして、これら各構成要素3~6が相互に密接して変形することで、積層体5は、下方に凸となるように湾曲する。この場合、積層体5は、図示のように縦方向についてだけでなく、横方向についても下方に凸となるように湾曲する。
【0056】
この後、ポンプPの稼動と共に加熱を停止することで、下方に凸となるように湾曲した複合板材10が得られる。この複合板材10は、樹脂板5aの表裏両側に接着層5bを介してガラス板5cが積層一体化されたものである。
【0057】
ここで、本実施形態では、複合板材10に要求される湾曲度合いよりも、載置部材2の湾曲度合いの方が大きい場合の対策を例示している。複合板材10に要求される湾曲度合いとは、複合板材10の設置作業等に支障が生じないことを目安として要求される湾曲度合いである。
【0058】
上記の製造方法では、形状修正部材3を使用したことで、得られる複合板材10の湾曲度合いが、載置部材2の湾曲度合いよりも小さくなっている。これに対して、形状修正部材3を使用せずに、上記と同様に負圧下で加熱する工程を行えば、複合板材10の湾曲度合いが載置部材2の湾曲度合いと同程度になる。これは、負圧下で加熱する時に、両当て板4、6及び積層体5が、載置部材2の上面2aの湾曲形状に倣って湾曲するからである。
【0059】
したがって、上記の製造方法によれば、複合板材10の湾曲度合いが、要求される湾曲度合いよりも過度に大きくなることを抑制できる。なお、複合板材10に要求される湾曲度合いが変更された場合には、形状修正部材3の厚みを変えることで、変更後に要求される湾曲度合いに対応できる、また、載置部材2の湾曲度合いが、複合板材10に要求される湾曲度合いと同等である場合は、形状修正部材3を使用せずに、両当て板4、6及び積層体5を袋体7の内部に収容して、上記と同様に負圧下で加熱する工程を行えばよい。
【0060】
図5は、本実施形態に係る製造方法を実行するための好ましい製造装置11を例示している。また、
図6は、
図5のB―B線断面図である。これら各図に示すように、この製造装置11は、既述の積層集合体1を複数段に積み重ねる構造とされている。段数は、5段~30段が好ましく、10段~15段がより好ましい。
【0061】
詳述すると、この製造装置11は、上段の載置部材2と、これに直近の下段の載置部材2との間に、複数本(図例では6本)の支柱12を介設したものである。6本の支柱12は、形状修正部材3、積層体5、及び両当て板4、6の外周側を取り囲んでいる。
【0062】
6本の支柱12のうち、縦方向の中央部に位置する2本の支柱12は、スペーサ12aを用いて長さ調整が可能とされている。ここでは、当該2本の支柱12は、スペーサ12aを用いることで他の支柱12よりも長さが長くされている。これにより、当該2本の支柱12に相対的に大きな重量が作用することによる載置部材2の不当な変形が抑止される。なお、本実施形態では、最下段の載置部材2は、上記と同様の6本の支柱12を介して支持面13に支持されている。
【0063】
この製造装置11においても、それぞれの載置部材2に載置されている形状修正部材3、積層体5、及び両当て板4、6は、内部が負圧とされる袋体7に収容されている。したがって、複数段の全てにおいて、既述の製造方法と同様に負圧下で加熱する工程が行われる。この場合、負圧下で加熱する工程は、複数段の全てにおいて同時に行われる。これにより、下方に凸となるように湾曲した複合板材10を、複数段で一挙同時に製造することができる。したがって、生産性が大幅に向上する。
【0064】
<複合板材群>
本実施形態に係る複合板材群は、以上のような製造方法を複数回行う(上述のように複数段で同時に行う場合を含む)ことで得られるものである。この得られた全ての複合板材10は、同じ方向に凸となるように湾曲しており、反りの方向性が一様になる。そして、既述のように積層体5に付されていた目印は、負圧下で加熱を行っても消えるものではないため、複合板材10の反りの方向性を目視により確認できる。
【0065】
<複合板材梱包体>
図7は、本実施形態に係る複合板材梱包体14の第一例を示している。この第一例は、既述の製造方法を実施して得られた複数枚の複合板材10を縦姿勢で配列して梱包したものである。本実施形態では、複数枚の複合板材10は、梱包箱15の内部空間に収納されているが、梱包形態はこれに限定されない。また、複合板材10には、既述の目印が付されている。
【0066】
この第一例では、複数枚の全ての複合板材10が同じ方向(図例では左方向)に凸となるように湾曲しており、反りの方向性が一様になっている。したがって、反りの方向性が異なる複合板材が混在している場合と対比して、複合板材梱包体14のコンパクト化が図られると共に搬送時や輸送時に破損や損傷等が生じ難くなる。
【0067】
図8は、本実施形態に係る複合板材梱包体14の第二例を示している。この第二例も、既述の第一例と同様に、梱包箱15の内部空間に、複数枚の複合板材10を縦姿勢で収納して梱包したものである。この場合も、複合板材10には、既述の目印が付されている。
【0068】
この第二例では、複数枚のうちの一部の複合板材10が同じ方向(図例では左方向)に凸となるように湾曲し、それ以外の全ての複合板材10が平板状である。この場合であっても、反りの方向性が異なる複合板材が混在している場合と対比して、複合板材梱包体14の適度なコンパクト化が図られると共に搬送時や輸送時に破損や損傷等が生じ難くなる。
【0069】
以上、本発明の実施形態に係る複合板材の製造方法、複合板材群、及び複合板材梱包体について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0070】
上記実施形態に係る製造方法では、厚みが比較的小さい形状修正部材3を用いたが、形状修正部材3の厚みを既述の場合よりも大きくすれば、
図9に示すように、上方に凸となるように湾曲した複合板材10を得ることができる。この場合の製造方法は、既述の場合と同一である。
【0071】
上記実施形態に係る製造方法では、上面2aが下方に凸となるように湾曲した載置部材2を使用したが、上面2aが上方に凸となるように湾曲した載置部材2を使用してもよい。この場合は、形状修正部材3を使用してもよく或いは使用しなくてもよい。
【0072】
上記実施形態に係る製造方法では、上面2aが下方に凸となるように湾曲した載置部材2を使用したが、上面2aが平面状をなす載置部材2を使用してもよい。この場合は、形状修正部材3が必要である。
【0073】
上記実施形態に係る製造方法では、縦方向及び横方向のいずれについても湾曲した載置部材2を使用したが、縦方向または横方向のいずれか一方にのみ湾曲した載置部材2を使用してもよい。
【0074】
上記実施形態に係る製造方法では、形状修正部材3として長手方向と直交する断面が矩形の棒状体を使用したが、形状修正部材3の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、丸棒状や板状などであってもよい。
【0075】
上記実施形態に係る製造方法では、積層体5を、樹脂板5aとその表裏側のガラス板5cとのそれぞれの相互間に中間層5bを介在させて構成したが、樹脂板5aとガラス板5cとの枚数はこれ以上であってもよく、また、樹脂板5aを使用せずに、複数のガラス板5cのそれぞれの相互間に中間層5bを介在させて構成してもよい。
【0076】
上記実施形態に係る複合板材梱包体14は、複数枚の複合板材10を縦姿勢で配列したが、傾斜姿勢や平置き姿勢で配列してもよい。
【0077】
上記実施形態では、上下方向を鉛直線に沿う方向としたが、上下方向を鉛直線に対して30°以内で傾斜する方向としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 積層集合体
2 載置部材
2a 載置部材の上面
3 形状修正部材
4 下側の当て板
5 積層体
5a 樹脂板
5b 接着層(中間層)
5c ガラス板
5x 積層体の積層方向下端の主表面
6 上側の当て板
7 接着シート
10 複合板材
12 支柱
12a スペーサ
13 支持面
14 複合板材梱包体