(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091064
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】角栓除去用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20240627BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207349
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】ファレンティナ ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】三村 優
(72)【発明者】
【氏名】目野 高嗣
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB102
4C083AB282
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD112
4C083BB01
4C083CC23
4C083CC24
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】角栓除去効果および使用感に優れた角栓除去要用組成物の提供。
【解決手段】 (A)式(a):
R1-NH-R2-SO3M (a)
(式中、
R1は、H、または炭素数1~3のアルキル基であり、
R2は、炭素数1~5のアルキレン基であり、
Mは、H、Na、またはKである)
で表される含硫アミノ酸化合物、および
(B)水
を含んでなり、25℃におけるpHが6~12である、角栓除去用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(a):
R1-NH-R2-SO3M (a)
(式中、
R1は、H、または炭素数1~3のアルキル基であり、
R2は、炭素数1~5のアルキレン基であり、
Mは、H、Na、またはKである)
で表される含硫アミノ酸化合物、および
(B)水
を含んでなり、25℃におけるpHが6~12である、角栓除去用組成物。
【請求項2】
(A)成分が、またはN-メチルタウリン酸カリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)成分の含有率が、前記組成物の総質量を基準として0.1~30質量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
25℃におけるpHが6.5~11である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
(C)多価アルコールをさらに含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
(C)成分の含有率が、前記組成物の総質量を基準として0.1~30質量%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
(D)界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
非発泡性である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
液状組成物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
皮膚洗浄料である、請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄料、特に毛穴に形成される角栓除去の効果が高い角栓除去用組成物に関するものである。さらに詳しくは、角栓に作用して崩壊させ、毛穴内から除去することで皮膚を清浄にする組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗顔等に用いられる洗浄料には、各種の界面活性剤等が配合されており、それを皮膚に適用することで皮膚表面の汚れや油脂を皮膚から除去する作用を有している。このとき、皮膚表面の汚れや油脂は、洗浄料によって溶解されたり、あるいは物理的なスクラブなどによって剥離されたりすることで除去される。
【0003】
しかしながら、皮膚表面ではなく毛穴中に内包された角栓は、皮膚表面に露出している部分が少なく、また脂質とタンパク質がバームクーヘン様の層状構造を有しているために、一般的な洗浄料を用いて洗浄しただけでは完全に除去することが困難である。角栓除去を目的とした油性洗浄料も開発されているが、油性洗浄剤でも毛穴内の角栓を完全に溶解することは難しく、また使用後の後肌感も改良の余地があった。
【0004】
このため、角栓を物理的に吸引などによって除去することも行われているが、皮膚に対する刺激が強く、また手間がかかるという問題もある。また角栓除去用の毛穴パックも市販されているが、皮膚に対するダメージが少なくない上、パック除去後の肌が乾燥しやすいという課題もあった。
【0005】
このような観点から、角栓除去能力が高く、皮膚に対するダメージも小さく、また使用感にも優れた洗浄料が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-177778号公報
【特許文献2】特開2018-177781号公報
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、高い角栓除去効果を有し、使用感にも優れた角栓除去用組成物を提供するものである。
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]
(A)式(a):
R1-NH-R2-SO3M (a)
(式中、
R1は、H、または炭素数1~3のアルキル基であり、
R2は、炭素数1~5のアルキレン基であり、
Mは、H、Na、またはKである)
で表される含硫アミノ酸化合物、および
(B)水
を含んでなり、25℃におけるpHが6~12である、角栓除去用組成物。
[2]
(A)成分が、N-メチルタウリン酸ナトリウムまたはN-メチルタウリン酸カリウムである、[1]に記載の組成物。
[3]
(A)成分の含有率が、前記組成物の総質量を基準として0.1~30質量%である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
25℃におけるpHが6.5~11である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]
(C)多価アルコールをさらに含んでなる、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
(C)成分の含有率が、前記組成物の総質量を基準として0.1~30質量%である、[5]に記載の組成物。
[7]
(D)界面活性剤をさらに含んでなる、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]
非発泡性である、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
液状組成物である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]
皮膚洗浄料である、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
【0009】
本発明によれば、角栓除去能力が高く、また洗いあがりの後肌のなめらか感を与えることができる角栓除去用組成物が提供される。
【発明の具体的説明】
【0010】
[角栓除去用組成物]
本発明による角栓除去用組成物は、
(A)特定の含硫アミノ酸化合物、および
(B)水
を必須成分として含んでなるものである。以下、これらの各成分について説明する。
【0011】
[(A)含硫アミノ酸化合物]
本発明による角栓除去用組成物(以下、簡単に「組成物」ということがある)は、特定の含硫アミノ酸化合物(以下、(A)成分ということがある)を含んでなる。(A)成分は、式(a)で表されるものである。
R1-NH-R2-SO3M (a)
(式中、
R1は、H、または炭素数1~3のアルキル基であり、
R2は、炭素数1~5のアルキレン基であり、
Mは、H、Na、またはKである)
【0012】
本発明者らの検討によれば、このような含硫アミノ酸化合物は、毛穴中に浸透し、角栓のタンパク質部分に作用して、角栓を崩壊させる作用を有する。すなわち、本発明による組成物は、まず、角栓に作用して崩壊させ、さらに角栓の内部まで浸透する。このため、一般的な洗浄料のように表面から徐々に溶解除去していくものに比べて、本発明による組成物は角栓除去能力が非常に高くなっている。崩壊した角栓は、スクラブなどによる除去も容易である。
【0013】
このような含硫アミノ酸化合物のうち、N-メチルタウリン酸ナトリウムまたはN-メチルタウリン酸カリウムが特に角栓除去効果が大きいので好ましい。
【0014】
本発明による組成物の(A)成分の含有率は、特に限定されないが、組成物の総質量を基準として0.1~30質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量をこのような範囲内とすることで、高い角栓除去効果を実現できる。
【0015】
また、これらの含硫アミノ酸化合物による角栓除去効果は、特定のpH範囲で顕著に表れる。このため、本発明による組成物は、25℃におけるpHが6~12であることが必要であり、6.5~11であることが好ましい。本発明による組成物は、比較的低いpH領域においても、高い角栓除去効果と優れた使用感とを実現できる。
【0016】
なお、本発明による組成物が実現する角栓除去効果は、(A)成分の構造中に含まれる極性基、すなわちアミノ基やスルホ基によりもたらされており、その効果が特定のpH領域において強く発現するものと考えられる。このためアミノ基に対して、強い結合をする化合物が共存することは好ましくない。具体的には、カルボン酸などの有機酸はアミノ基に吸着して、その極性を大きく変化させてしまうので、本発明による組成物は有機酸を含まないことが好ましい。したがって、本発明において(A)成分は遊離した含硫アミノ酸化合物であって、(A)成分と有機酸などが結合した複合化合物は、本発明においては(A)成分には包含されないものとする。
【0017】
[(B)水]
本発明による組成物は、上記の成分に加えて、さらに水(以下、(B)成分ということがある)を含んでなる。水としては、化粧品、医薬部外品等に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
【0018】
[(C)多価アルコール]
本発明による組成物は、上記の(A)および(B)成分を必須成分とするものであるが、多価アルコール(以下、(C)成分ということがある)をさらに含むことができる。(C)成分は、一般に、洗浄料等に保湿効果などを付与することができるものである。
【0019】
多価アルコールとしては、一般的に洗浄料に用いることができるものから任意に選択して用いることができる。具体的には、
2価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);
3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);
4価アルコール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);
5価アルコール(例えば、キシリトール等);
6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);および
多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等)
などが挙げられる。そのほか、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールエーテルエステル、糖アルコールなどを用いることもできる。これらのうち、グリセリンまたはジプロピレングリコールが好ましい。また、これらの多価アルコールは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明による組成物の(C)成分の含有率は、特に限定されないが、(C)成分を含有する場合には、組成物の総質量を基準として0.1~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。多価アルコールをこのような範囲内とすることで、高い保湿効果も実現できる。
【0021】
[その他の成分]
本発明の組成物は、上記成分に加えて、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意成分を含むことができる。そのような任意成分としては、安定化剤、例えば防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、およびpH調整剤など、界面活性剤、薬剤、ラスター剤、ゲル化剤、紫外線吸収剤、色素、香料、またはタンパク質誘導体など、洗浄料に一般に配合される成分が挙げられる。
【0022】
界面活性剤としては、一般に化粧品に配合されるものならいずれも用いることができ、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。ただし、本発明による組成物は、皮膚表面の洗浄よりも毛穴に浸透することによって効果が発現することから、非発泡性であることが好ましい。したがって、一般的な界面活性剤の含有量は低いことが好ましい。
【0023】
薬剤としては、ビタミンC類、ビタミンE類、アミノ酸類、生薬、抗炎症剤、殺菌剤等の化粧品に汎用される薬剤を配合することができる。
【0024】
本発明による組成物の使用形態は特に限定されないが、ヒトの角栓除去効果に優れているため、特にヒトの皮膚を洗浄するための洗浄料として好適である。また、剤型も限定されるものではないが、液状の剤型が好ましい。ただし、本発明による組成物はこのような剤型や使用形態に限定されず、その他の、ジェル状、溶液状、乳剤状などの任意の剤型を採用してもよい。
【実施例0025】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、総量に対する質量%で示す。
【0026】
[実施例1~4および比較例1~7]
表1に示される配合で、実施例1~4および比較例1~7の組成物を調製した。
た。
【0027】
[評価]
実施例および比較例の組成物について、以下の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0028】
角栓崩壊性
ピンセットを用い、鼻部より角栓を採取した。
採取した角栓をスライドガラス上に配置し、カバーガラスを被せた後、試料をカバーガラスの縁に0.05mL滴下し、角栓と試料を接触させた。角栓と試料が接触する様子をデジタルマイクロスコープ(HIROX RH-2000(商品名)、倍率100倍)で観察および記録し、角栓が試料と接触後1分経過後の角栓の崩壊状況について評価を行った。なお、測定は25℃で行った。
角栓の崩壊性評価の判定基準は以下の通りである。
A:角栓の外観は初期の形態より大分変化した
B:角栓の外観は初期の形態より変化した
C:角栓の外観は初期の形態よりやや変化した
D:角栓の外観変化が殆どない
【0029】
使用感(後肌のなめらかさ)
1mLの試料をコットンにしみこませ、肌に塗布した。液が肌上から乾いた後の肌の感触を、N=2の専門パネルにより評価した。
A:肌のなめらかさを感じる
B:肌のなめらかさをやや感じる
C:肌のなめらかさを感じない
【0030】
【0031】
以下に本発明の化粧料として好適な処方例を示す。配合量はすべて質量%である。
【0032】
【0033】
【0034】