(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091090
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20240627BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20240627BHJP
【FI】
G01F1/84
G01F1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207533
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 篤史
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
【Fターム(参考)】
2F030CC06
2F030CE04
2F035HA03
2F035JA02
(57)【要約】
【課題】流体のパラメータが経時的に変化する中で混入物が流体に混入した場合であってもパラメータをより正確に測定可能な測定装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る測定装置1は、流体の状態を示す少なくとも1種類のパラメータを測定する測定装置1であって、パラメータの算出に必要な少なくとも1種類のセンサ値をデータとして取得するための検出部10と、検出部10を用いて取得されたデータに基づいてパラメータを算出する演算部30と、を備え、演算部30は、流体に混入物が混入したときのデータに基づき予め構築された学習モデルと取得されたデータとを用いて実行された、パラメータに関連する回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の状態を示す少なくとも1種類のパラメータを測定する測定装置であって、
前記パラメータの算出に必要な少なくとも1種類のセンサ値をデータとして取得するための検出部と、
前記検出部を用いて取得された前記データに基づいて前記パラメータを算出する演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記流体に混入物が混入したときの前記データに基づき予め構築された学習モデルと取得された前記データとを用いて実行された、前記パラメータに関連する回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を取得する、
測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記回帰処理及び前記判別処理の少なくとも一方を実行することで前記結果を取得する、
測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記測定装置の外部で実行された前記回帰処理及び前記判別処理の少なくとも一方の結果を通信により取得する、
測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記流体に混入物が混入したときの前記データ及びラベルを用いて、教師あり学習により前記学習モデルを予め構築するか、又は教師なし学習により前記学習モデルを予め構築する、
測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記回帰処理及び前記判別処理が互いに異なる前記学習モデルを用いて実行されたときの前記結果を取得する、
測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記判別処理は、前記流体への混入物の混入の有無を判別する処理を含み、
前記演算部は、前記パラメータ及び前記センサ値のうちの少なくとも1種類に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値と比較される第1閾値であって混入物の混入の有無を判別するための前記第1閾値を、前記学習モデルを用いて決定する、
測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記流体への混入物の混入有りと判別すると、前記学習モデルを用いて前記回帰処理を実行し、前記パラメータを出力する、
測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の測定装置であって、
前記演算部は、出力された前記パラメータと前記流体への混入物の混入が無いときの前記パラメータとの差分に基づいて、出力された前記パラメータを補正する、
測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記判別処理は、前記測定装置の運転が停止したか否かを判別する処理を含み、
前記演算部は、前記パラメータのうちの少なくとも1種類に対して設定された第2閾値であって、運転中又は停止中のフラグを立てるための前記第2閾値を、前記学習モデルを用いて決定する、
測定装置。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記パラメータは、前記流体の密度、体積流量、質量流量、及び気泡体積分率の少なくとも1種類を含む、
測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流量及び密度などを含む流体の状態を示すパラメータを測定する測定装置に関連する技術が知られている。例えば、特許文献1には、流体の状態量を測定するフィールド機器であって、スラグ流が発生した場合でも、より正確な測定値を取得可能なフィールド機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、流体に気泡などの混入物が混入すると、パラメータを正確に測定することが困難となり、パラメータの測定値に誤差が生じ得る。特許文献1に記載のフィールド機器は、このような課題を解決するためのものである。しかしながら、当該フィールド機器は、混入物の非混入時にパラメータが略一定値をとるような流体へ応用可能であるが、例えば蒸留プロセスのようにパラメータが運転により経時的に変化する流体への応用が困難であった。
【0005】
本開示は、流体のパラメータが経時的に変化する中で混入物が流体に混入した場合であってもパラメータをより正確に測定可能な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、流体の状態を示す少なくとも1種類のパラメータを測定する測定装置であって、前記パラメータの算出に必要な少なくとも1種類のセンサ値をデータとして取得するための検出部と、前記検出部を用いて取得された前記データに基づいて前記パラメータを算出する演算部と、を備え、前記演算部は、前記流体に混入物が混入したときの前記データに基づき予め構築された学習モデルと取得された前記データとを用いて実行された、前記パラメータに関連する回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を取得する。
【0007】
これにより、測定装置は、流体のパラメータが経時的に変化する中で混入物が流体に混入した場合であってもパラメータをより正確に測定可能である。測定装置は、流体に混入物が混入したときのデータに基づき予め構築された学習モデルと取得されたデータとを用いて実行された、パラメータに関連する回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を取得する。これにより、測定装置は、蒸留プロセスなどのようにパラメータが経時的に変化する流体への応用も容易である。測定装置は、このような流体に対して気泡などの混入物が混入したときであっても、パラメータの正確な測定値を回帰処理により出力可能である。
【0008】
一実施形態における測定装置では、前記演算部は、前記回帰処理及び前記判別処理の少なくとも一方を実行することで前記結果を取得してもよい。測定装置は、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方をそれ自体で実行してもよい。これにより、測定装置は、学習モデルを構築するための学習フェーズから学習済みの学習モデルを用いる推定フェーズに至るまでの各種処理をその内部で完結させることができる。
【0009】
一実施形態における測定装置では、前記演算部は、前記測定装置の外部で実行された前記回帰処理及び前記判別処理の少なくとも一方の結果を通信により取得してもよい。これにより、測定装置は、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方に関する演算を実行する必要がない。したがって、測定装置は、その動作に関連する演算負荷を軽減可能である。
【0010】
一実施形態における測定装置では、前記演算部は、前記流体に混入物が混入したときの前記データ及びラベルを用いて、教師あり学習により前記学習モデルを予め構築するか、又は教師なし学習により前記学習モデルを予め構築してもよい。これにより、ラベルに基づくより精度の高い学習処理を実行することが可能となる。測定装置は、このような学習処理により構築された学習モデルを用いて、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方をより精度良く実行することができる。
【0011】
一実施形態における測定装置では、前記演算部は、前記回帰処理及び前記判別処理が互いに異なる前記学習モデルを用いて実行されたときの前記結果を取得してもよい。測定装置は、回帰処理及び判別処理についてそれぞれ独立した学習モデルを利用する。測定装置は、このように複数の学習モデルを利用することで、回帰処理及び判別処理においてより精度の高い出力を実現可能である。
【0012】
一実施形態における測定装置では、前記判別処理は、前記流体への混入物の混入の有無を判別する処理を含み、前記演算部は、前記パラメータ及び前記センサ値のうちの少なくとも1種類に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値と比較される第1閾値であって混入物の混入の有無を判別するための前記第1閾値を、前記学習モデルを用いて決定してもよい。
【0013】
これにより、測定装置は、第1閾値をより適切に決定することができる。測定装置は、従来であればユーザの経験などに基づいてユーザにより任意に設定されていた第1閾値を客観的かつ正確に決定することができる。これにより、測定装置は、第1閾値を用いた、混入物の混入の有無の判別処理をより精度良く実行することができる。
【0014】
一実施形態における測定装置では、前記演算部は、前記流体への混入物の混入有りと判別すると、前記学習モデルを用いて前記回帰処理を実行し、前記パラメータを出力してもよい。これにより、測定装置は、流体へ混入した混入物の影響で通常処理ではパラメータに異常値が生じるような場合であっても、パラメータを回帰してより正確な測定値を出力することができる。
【0015】
一実施形態における測定装置では、前記演算部は、出力された前記パラメータと前記流体への混入物の混入が無いときの前記パラメータとの差分に基づいて、出力された前記パラメータを補正してもよい。これにより、プロセス開始時の運転方法及びパラメータなどに運転ごとのばらつきがあったとしても、測定装置は、そのようなばらつきに基づいて生じる回帰処理後のパラメータの誤差を取得して補正可能である。測定装置は、マイクロバブルのような小さな気泡の種類及び量、並びに気泡が長く入り続けるときの時間などを含む条件が運転ごとにばらついたとしても、回帰処理後のパラメータを正確に補正することが可能となる。
【0016】
一実施形態における測定装置では、前記判別処理は、前記測定装置の運転が停止したか否かを判別する処理を含み、前記演算部は、前記パラメータのうちの少なくとも1種類に対して設定された第2閾値であって、運転中又は停止中のフラグを立てるための前記第2閾値を、前記学習モデルを用いて決定してもよい。
【0017】
これにより、測定装置は、第2閾値をより適切に決定することができる。測定装置は、従来であればユーザの経験などに基づいてユーザにより任意に設定されていた第2閾値を客観的かつ正確に決定することができる。これにより、測定装置は、第2閾値を用いた、運転停止の誤検知を低減するための停止判別の判別処理をより精度良く実行することができる。
【0018】
一実施形態における測定装置では、前記パラメータは、前記流体の密度、体積流量、質量流量、及び気泡体積分率の少なくとも1種類を含んでもよい。これにより、測定装置は、例えばコリオリ流量計として機能するために必要となるパラメータの測定及び回帰処理を実行可能である。測定装置は、コリオリ流量計として機能することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、流体のパラメータが経時的に変化する中で混入物が流体に混入した場合であってもパラメータをより正確に測定可能な測定装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の演算部による回帰処理及び判別処理の概要を説明するための模式図である。
【
図3】学習済みの第1学習モデルを用いて実行される回帰処理の一例を説明するための模式図である。
【
図4】学習済みの第2学習モデルを用いて実行される判別処理の一例を説明するための模式図である。
【
図5】
図1の測定装置の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1の測定装置の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1の測定装置の動作の第3例を説明するための模式図である。
【
図8】
図1の測定装置の動作の第4例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0022】
フィールド機器などの測定装置では、測定対象となる流体に気泡などの混入物が混入すると、流量及び密度などを含む流体の状態を示すパラメータを正確に測定することが困難となる。例えば、パラメータの測定値に誤差が生じ得る。
【0023】
例えば、特許文献1には、フィールド機器としてコリオリ流量計が例示されている。コリオリ流量計では、例えば、混入物としての気泡が流体に混入すると、流体の密度などを含むパラメータの測定値が気泡の混入により影響を受ける。このとき、特許文献1の
図4に示されるように、パラメータの測定値について、気泡が混入していないときの実際の値よりも低い値が得られてしまう。これにより、測定値と実際の値との間の誤差が大きくなることが想定される。
【0024】
特許文献1に記載のフィールド機器では、このような課題を解決するために、Drive Currentと呼ばれる、コリオリ流量計の駆動電流値が、スラグ流などの発生の有無を判別するための閾値として用いられている。このときの閾値には、ヒステリシスが設けられることが一般的である。以上により、流体への気泡の混入の有無を判別し、気泡が混入していないときの正常な出力値に基づいて気泡混入時の測定値を補正する方法が用いられている。
【0025】
しかしながら、特許文献1に記載のフィールド機器は、混入物の非混入時にパラメータが略一定値をとるような流体へ応用可能であるが、例えば蒸留プロセスのようにパラメータが運転により経時的に変化する流体への応用が困難であった。また、マイクロバブルのような小さな気泡の種類及び量、並びに気泡が長く入り続けるときの時間などを含む条件によっては、正確な補正が困難であった。
【0026】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、流体のパラメータが経時的に変化する中で混入物が流体に混入した場合であってもパラメータをより正確に測定可能な測定装置を提供することを目的とする。
【0027】
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1を参照しながら、第1実施形態に係る測定装置1の構成及び機能について主に説明する。
【0029】
測定装置1は、例えば、フィールド機器の1つとして構成される。本開示において、「フィールド機器」は、被測定対象となる物理量に対する測定処理を実行して測定値を取得する任意の機器を含む。本開示において、「物理量」は、例えばフィールド機器が配置されているプラント設備において発生した気体及び液体などを含む流体の温度、圧力、流量、及びPH、並びにプラント設備の腐食度及び振動量などを含む。これに限定されず、物理量は、バルブ、モータ、及びリレーなどを含むアクチュエータに関連する、温度及び圧力などを含む状態パラメータを含む。
【0030】
本開示において、「プラント設備」は、例えば、化学などの工業プラントの他、ガス田及び油田などを含む井戸元、並びにその周辺を管理制御するプラントを含む。その他にも、プラント設備は、水力、火力、及び原子力などの発電を管理制御するプラント、太陽光及び風力などの環境発電を管理制御するプラント、並びに上下水及びダムなどを管理制御するプラントなどを含んでもよい。
【0031】
例えば、測定装置1は、流体の状態を示す少なくとも1種類のパラメータを測定する任意の装置を含む。本開示において、「流体」は、例えば液体を含む。「パラメータ」は、例えば、流体の密度、体積流量、質量流量、及び気泡体積分率の少なくとも1種類を含む。「気泡体積分率」は、例えば、流体中に含有されるガス成分の割合を意味する。ガス成分の割合は、重量基準又は体積基準に基づく。測定装置1は、例えば、配管内を流れる流体の流量を測定するものである。測定装置1は、例えば、コリオリ流量計を含む。コリオリ流量計は、フィールド機器の一例である。測定装置1は、検出部10と、処理部20と、処理部20に含まれる演算部30と、を有する。
【0032】
検出部10は、測定対象としての流体が流れる測定管11を振動させてその上下流における振動及び測定管11の温度を検出する。検出部10は、測定管11に加えて、加振器12、上流側センサ13、下流側センサ14、及び温度センサ15を有する。
【0033】
測定管11は、例えば、両端が支持部材によって固定支持された直管型のものを含む。測定管11は、これに限定されず、例えば、U字管型などの他の形状のものを含んでもよい。
【0034】
加振器12は、測定管11を上下に機械振動をさせる任意の振動モジュールを含む。加振器12は、流体が流れる測定管11の周囲に設けられている。例えば、加振器12は、測定管11の中央部近傍に設置されている。加振器12は、処理部20に電気的に接続されている。
【0035】
上流側センサ13は、加振器12によって生じる測定管11の振動を検出可能な任意のセンサを含む。上流側センサ13は、測定管11に流体が流入する側、すなわち測定管11において加振器12が設置されている中央部近傍よりも上流側に固定されている。
【0036】
下流側センサ14は、加振器12によって生じる測定管11の振動を検出可能な任意のセンサを含む。下流側センサ14は、測定管11から流体が流出する側、すなわち測定管11において加振器12が設置されている中央部近傍よりも下流側に固定されている。
【0037】
上流側センサ13及び下流側センサ14の各々は、処理部20の演算部30に電気的に接続されている。
【0038】
温度センサ15は、測定管11の表面温度を測定可能な任意のセンサを含む。温度センサ15は、例えば、測定管11において加振器12が設置されている中央部近傍よりも下流側で測定管11の表面上に固定されている。温度センサ15は、下流側センサ14の近傍に固定されている。温度センサ15は、処理部20の演算部30に電気的に接続されている。温度センサ15は、温度変動によるパラメータの測定誤差を軽減するために用いられる。
【0039】
上記のように構成された検出部10の動作について主に説明する。
【0040】
加振器12は、処理部20から出力される駆動電流IRに応じて、測定管11を所定の振動モードで振動させる。例えば、加振器12は、支持部材によって固定支持された測定管11の両端にのみ振動の節が現れる1次振動モードで測定管11を振動させる。
【0041】
加振器12により測定管11に対して1次振動モードで振動が与えられている状態で、測定管11に測定対象となる流体が流れると、測定管11は、支持部材によって固定支持された測定管11の両端とその中間の位置とに振動の節が現れる2次振動モードで振動する。実際には、測定管11は、1次振動モードと2次振動モードとの2種類の振動モードが重畳された振動モードで振動してもよい。
【0042】
上流側センサ13は、上記の振動モードで振動している測定管11の上流側の変位量を測定する。上流側センサ13は、測定した変位量を変位信号SAとして処理部20の演算部30に出力する。下流側センサ14は、上記の振動モードで振動している測定管11の下流側の変位量を測定する。下流側センサ14は、測定した変位量を変位信号SBとして処理部20の演算部30に出力する。
【0043】
温度センサ15は、測定管11の表面温度を、測定管11において下流側に位置する表面で測定する。温度センサ15は、測定された測定管11の表面温度を温度信号STとして処理部20の演算部30に出力する。
【0044】
処理部20は、演算部30に加えて、励振回路21と、出力部22と、記憶部23と、を有する。演算部30は、密度演算部31と、質量流量演算部32と、体積流量演算部33と、学習ユニット34と、を有する。学習ユニット34は、さらに、判別ユニット35と回帰ユニット36とを有する。判別ユニット35は、気泡判別部351、停止判別部352、及び相状態判別部353を有する。回帰ユニット36は、密度演算部361と、質量流量演算部362と、体積流量演算部363と、気泡体積分率演算部364と、を有する。
【0045】
励振回路21は、加振器12に接続されている。励振回路21は、変位信号SAに応じた駆動電流IRを加振器12に出力することで、その加振器12を例えば正弦波状に駆動する。励振回路21は、変位信号SAに代えて、変位信号SBに応じた駆動電流IRを加振器12に出力することで、その加振器12を例えば正弦波状に駆動してもよい。
【0046】
出力部22は、情報を出力して測定装置1のユーザに通知する任意の出力インタフェースを含む。出力インタフェースは、例えば、情報を映像で出力するディスプレイ、及び情報を音声で出力するスピーカなどを含む。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ及び有機EL(Electro Luminescent)ディスプレイなどを含む。
【0047】
記憶部23は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部23は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部23は、測定装置1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続されている外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。記憶部23は、測定装置1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。
【0048】
演算部30は、1つ以上のプロセッサを含む。本開示において、「プロセッサ」は、例えば、汎用のプロセッサ又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。演算部30は、測定装置1の動作に必要となる各種の演算処理を実行する。
【0049】
演算部30は、検出部10から出力される変位信号SA及びSBの少なくとも一方に基づいて、測定管11の振動周波数を測定する。演算部30の密度演算部31は、測定された振動周波数に基づいて、測定対象となる流体の質量、すなわち密度を算出する。演算部30の質量流量演算部32は、検出部10から出力される変位信号SA及びSBの位相差に基づいて、測定管11を流れる流体の質量流量を算出する。演算部30の体積流量演算部33は、質量流量演算部32により算出された質量流量を、密度演算部31により算出された密度で除算することで、測定管11を流れる流体の体積流量を算出する。
【0050】
検出部10は、演算部30による上記のようなパラメータの算出に必要な少なくとも1種類のセンサ値をデータとして取得するために用いられる。演算部30は、検出部10を用いて取得されたデータに基づいてパラメータを算出する。本開示において、「データ」は、例えば、位相差データ、振動周波数データ、流体温度データ、駆動電流データ、流体圧力データ、及び運転中総体積データの少なくとも1種類を含む。
【0051】
位相差データは、検出部10の上流側センサ13及び下流側センサ14からそれぞれ出力される変位信号SA及びSBの位相差をセンサ値としたデータである。振動周波数データは、検出部10の上流側センサ13及び下流側センサ14からそれぞれ出力される変位信号SA及びSBの少なくとも一方に基づいて測定された、測定管11の振動周波数をセンサ値としたデータである。
【0052】
流体温度データは、検出部10の温度センサ15から出力される温度信号STに基づいて測定された、測定管11の温度をセンサ値としたデータである。駆動電流データは、検出部10の加振器12を動作させるために励振回路21から出力される駆動電流IRをセンサ値としたデータである。
【0053】
流体圧力データは、測定装置1とは別に取り付けられた圧力計などの測定値を入力することで得られる、又は演算部30内で固定値によって設定される圧力をセンサ値としたデータである。運転中総体積データは、検出部10の上流側センサ13及び下流側センサ14からそれぞれ出力される変位信号SA及びSBに基づいて測定された、測定装置1の運転中に測定管11を流れた流体の総体積をセンサ値としたデータである。
【0054】
演算部30の学習ユニット34は、流体に混入物が混入したときのデータに基づき予め構築された学習モデルと、検出部10を用いて取得されたデータとを用いて実行された、パラメータに関連する回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を取得する。演算部30は、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方を実行することで当該結果を取得する。学習ユニット34は、予め構築された学習済みの学習モデルに基づいて、流体に混入物が混入したことを検知したときに、パラメータの測定値として必要な値を回帰しパラメータを出力する。
【0055】
本開示において、「混入物」は、例えば気泡を含む。以下では、混入物は、気泡であるとして説明するが、これに限定されない。混入物は、例えば、測定装置1によって得られるパラメータの測定値に影響を及ぼす任意の異物を含んでもよい。異物に対しても、以下と同様の説明が当てはまる。
【0056】
本開示において、パラメータに関する「回帰処理」は、例えば、流体に気泡が混入してパラメータの測定値が異常を示すような場合に、予め構築された学習済みの学習モデルに基づきパラメータの測定値として必要な値を回帰する処理を含む。パラメータに関する「判別処理」は、例えば、流体への気泡の混入の有無を判別する処理、測定装置1の運転が停止したか否かを判別する処理、及び測定対象となる流体の相状態を判別する処理などを含む。
【0057】
本開示において、「相状態」は、例えば、ガス及び液体を含む、2種類以上の混合成分の流体において、混相流中の気相及び液相の総数を意味する。例えば、混相流中に液相で分離された2成分の流体に気泡が混入したときには、相状態は、3となる。
【0058】
図2は、
図1の演算部30による回帰処理及び判別処理の概要を説明するための模式図である。
図2は、学習済みの学習モデルを用いて実行される処理の概要を示す。
【0059】
上記の学習モデルは、回帰処理においては、重回帰分析、ニューラルネットワーク、サポートベクトル回帰、ガウス過程回帰、回帰木、ロジスティク回帰、及び自己回帰モデルなどの回帰結果を出力するモデルを用いて構築される。上記の学習モデルは、判別処理においては、ロジスティク回帰、ニューラルネットワーク、サポートベクトルマシン、分類木、変化点検知、k近傍法、及びk平均法などの分類結果を出力するモデルを用いて構築される。本開示において、「ニューラルネットワーク」は、例えば、自己組織化マップ、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、及び長短記憶型ニューラルネットワークなどを含む。
【0060】
入力層は、コリオリ流量計としての測定装置1の内部で得られるセンサ値の少なくとも1種類を用いる。例えば、入力層に用いられるセンサ値は、上記のデータに含まれるものである。より具体的には、センサ値は、位相差データ、振動周波数データ、流体温度データ、駆動電流データ、流体圧力データ、及び運転中総体積データに含まれるものである。
【0061】
出力層は、コリオリ流量計としての測定装置1から出力されるパラメータに関する推定データ及び判別処理に関する推定データの少なくとも1種類を用いる。例えば、出力層に用いられる推定データは、体積流量、流体の密度、質量流量、及び気泡体積分率に関するものである。例えば、出力層に用いられる推定データは、流体への気泡の混入の有無の判別、測定対象となる流体の相状態の判別、及び測定装置1の運転が停止したか否かの判別に関するものである。
【0062】
演算部30の学習ユニット34は、流体に混入物としての気泡が混入したときのデータ及びラベルを用いて、教師あり学習により学習モデルを予め構築する。学習モデルの構築に用いられるラベルとしての教師データは、例えば、流体に気泡が混入したときの少なくとも1種類のパラメータに対して得られた時系列データを含む。時系列データは、気泡が混入したときの時間も含む連続的なものである。教師データは、例えば、カメラなどの撮像装置を用いて流体の様子を写真又は動画として記録し、気泡の混入が確認された時間のラベルが連続している時系列データとする。学習ユニット34は、測定装置1の検出部10を用いて取得されたデータ及びその特徴量から得られる経時的累積量を特徴量にし、学習モデルを構築する。
【0063】
このような教師データは、例えば、レベル計、重量計、及び密度計などの計測機器、並びに目視による手法などを用いて得られる。一般的に、体積流量=質量流量/密度の関係式が成り立つ。したがって、体積流量、質量流量、及び密度のうち少なくとも2種類について教師データが用意されれば、残りの1種類についても教師データを間接的に得ることが可能である。学習ユニット34は、得られた教師データに基づいて、各種センサ値に関するデータからの回帰の評価を実行する。
【0064】
図3は、学習済みの第1学習モデルL1を用いて実行される回帰処理の一例を説明するための模式図である。
図3は、一例として、回帰処理時のニューラルネットワークの第1学習モデルL1を示す。
図4は、学習済みの第2学習モデルL2を用いて実行される判別処理の一例を説明するための模式図である。
図4は、一例として、クラス数2である判別処理時のニューラルネットワークの第2学習モデルL2を示す。
【0065】
演算部30の学習ユニット34は、回帰処理及び判別処理が互いに異なる学習モデルを用いて実行されたときの結果を取得する。すなわち、学習ユニット34は、回帰処理及び判別処理についてそれぞれ独立した学習モデルを利用する。学習ユニット34は、一例として、回帰処理の中で異なる種類のパラメータに対し互いに同一の第1学習モデルL1を利用する。学習ユニット34は、一例として、判別処理の中で異なる種類の判別に対し互いに同一の第2学習モデルL2を利用する。
【0066】
学習ユニット34は、中間層に対して、任意の層数及びニューロン数を設定可能である。学習ユニット34は、活性化関数として、ランプ関数、シグモイド関数、及び双曲線正接関数などの一般的な非線形関数を設定する。学習ユニット34は、誤差逆伝播法の観点に基づいて、多値分類時には出力層にソフトマックス関数を設定する。
【0067】
学習ユニット34の回帰ユニット36は、第1学習モデルL1に基づいて、流体の密度、質量流量、体積流量、及び気泡体積分率などの回帰処理を得られたセンサ値から実行する。
図3では、一例として、体積流量演算部363による体積流量の回帰処理について示されている。
【0068】
密度演算部361は、流体の密度の回帰処理を実行する。例えば、密度演算部361は、流体の密度の回帰処理において、センサ値のうち、運転中総体積及び流体温度を用いたロジスティク回帰モデルを用いる。
【0069】
質量流量演算部362は、質量流量の回帰処理を実行する。例えば、質量流量演算部362は、質量流量の回帰処理において、センサ値のうち、位相差、流体温度、駆動電流、回帰処理前の流体の密度、及び運転中総体積を用いた線形回帰モデルを用いる。
【0070】
体積流量演算部363は、体積流量の回帰処理を実行する。例えば、体積流量演算部363は、体積流量の回帰処理において、センサ値のうち、位相差、流体温度、駆動電流、及び回帰処理前の流体の密度を用いた線形回帰モデルを用いる。
【0071】
気泡体積分率演算部364は、気泡体積分率の回帰処理を実行する。例えば、気泡体積分率演算部364は、気泡体積分率の回帰処理において、センサ値のうち、位相差、流体温度、駆動電流、回帰処理前の流体の密度、及び運転中総体積を用いた線形回帰モデルを用いる。
【0072】
学習ユニット34の判別ユニット35は、第2学習モデルL2に基づいて、気泡の混入の有無の判別、運転停止の判別、及び相状態の判別などの判別処理を得られたセンサ値から実行する。
図4では、一例として、気泡判別部351による気泡の混入の有無の判別処理について示されている。
【0073】
気泡判別部351は、気泡の混入の有無の判別処理を実行する。例えば、気泡判別部351は、気泡の混入の有無の判別処理において、センサ値のうち位相差を用いた変化点検知を用いる。
【0074】
停止判別部352は、運転停止の判別処理を実行する。例えば、停止判別部352は、運転停止の判別処理において、センサ値のうち位相差、流体温度、駆動電流、回帰処理前の流体の密度、及び運転中総体積を用いる。
【0075】
相状態判別部353は、相状態の判別処理を実行する。例えば、相状態判別部353は、相状態の判別処理において、センサ値のうち位相差、流体温度、駆動電流、回帰処理前の流体の密度、及び運転中総体積を用いる。
【0076】
図5は、
図1の測定装置1の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
図5は、測定装置1によって実現される主な動作の概要をまとめたものである。
【0077】
ステップS100では、演算部30は、検出部10を用いて取得された、パラメータの算出に必要な少なくとも1種類のセンサ値をデータとして記憶部23に格納する。
【0078】
ステップS101では、演算部30は、ステップS100において格納されたセンサ値に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値を算出できるだけのサンプリング数が得られたか否かを判定する。演算部30は、サンプリング数が得られたと判定すると、ステップS102の処理を実行する。演算部30は、サンプリング数が得られていないと判定すると、ステップS105の処理を実行する。
【0079】
ステップS102では、演算部30は、ステップS101においてサンプリング数が得られたと判定すると、ステップS100において格納されたセンサ値に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値を算出する。
【0080】
ステップS103では、演算部30は、ステップS102において算出された平均値に基づいて、流体への気泡の混入を検知したか否かを判定する。演算部30は、気泡の混入を検知したと判定すると、ステップS104の処理を実行する。演算部30は、気泡の混入を検知していないと判定すると、ステップS105の処理を実行する。
【0081】
演算部30は、パラメータ及びセンサ値のうちの少なくとも1種類、
図5のフローチャートでは一例としてセンサ値に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値と第1閾値とを比較することで、気泡の混入を検知したか否かを判定する。演算部30は、平均値が第1閾値を超えると、気泡の混入を検知したと判定する。演算部30は、平均値と比較される第1閾値であって気泡の混入の有無を判別するための第1閾値を、上記の第2学習モデルL2を用いて決定する。
【0082】
ステップS104では、演算部30は、ステップS103において気泡の混入を検知したと判定すると、測定装置1の運転の停止を検知したか否かを判定する。演算部30は、測定装置1の運転の停止を検知したと判定すると、ステップS105の処理を実行する。演算部30は、測定装置1の運転の停止を検知していないと判定すると、ステップS106の処理を実行する。
【0083】
ステップS105では、演算部30は、ステップS104において運転の停止を検知したと判定すると、測定装置1の運転が停止しているときの通常処理を実行する。演算部30は、ステップS101においてサンプリング数が得られていないと判定すると、測定装置1のパラメータ測定に関する通常処理を実行する。演算部30は、ステップS103において気泡の混入を検知していないと判定すると、測定装置1のパラメータ測定に関する通常処理を実行する。
【0084】
ステップS106では、演算部30は、ステップS104において運転の停止を検知していないと判定すると、ステップS103において気泡の混入を検知していることから、予め構築された学習モデルとステップS100において取得されたデータとを用いて、パラメータに関連する回帰処理を実行する。このように、演算部30は、流体への気泡の混入有りと判別すると、第1学習モデルL1を用いて回帰処理を実行し、パラメータを出力する。
【0085】
以上のように、演算部30は、任意の時間区間の移動窓の平均値を利用した変化点検知を利用する。演算部30は、気泡の混入を検知したい場合、例えば、回帰処理及び判別処理に用いられる少なくとも1種類のセンサ値を常時監視する。演算部30は、監視しているセンサ値が、設定された第1閾値を超えた場合に、気泡の混入を検知したと判定する。演算部30は、気泡の混入とは異なる、ノイズなどの別要因による誤検知を軽減するために、所定の時間区間の移動窓の平均値を算出して、第1閾値と比較する。第1閾値は、教師データを用いて教師あり学習により予め構築された第2学習モデルL2に基づき決定される。
【0086】
図6は、
図1の測定装置1の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
図6は、
図5のステップS104において実行される停止判別の判別処理をより具体的に示したものである。
【0087】
ステップS200では、演算部30は、算出された少なくとも1種類のパラメータの値を記憶部23に格納する。
【0088】
ステップS201では、演算部30は、ステップS200において格納されたパラメータの値に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値を算出できるだけのサンプリング数が得られたか否かを判定する。演算部30は、サンプリング数が得られたと判定すると、ステップS202の処理を実行する。演算部30は、サンプリング数が得られていないと判定すると、ステップS209の処理を実行する。
【0089】
ステップS202では、演算部30は、ステップS201においてサンプリング数が得られたと判定すると、ステップS200において格納されたパラメータの値に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値を算出する。
【0090】
ステップS203では、演算部30は、ステップS202において算出された平均値が第2閾値以下であるか否かを判定する。演算部30は、第2閾値以下であると判定すると、ステップS204の処理を実行する。演算部30は、第2閾値よりも大きいと判定すると、ステップS205の処理を実行する。演算部30は、パラメータのうちの少なくとも1種類に対して設定された第2閾値であって、運転中又は停止中のフラグを立てるための第2閾値を、上記の第2学習モデルL2を用いて決定する。
【0091】
ステップS204では、演算部30は、ステップS203において第2閾値以下であると判定すると、フラグ1を立てて記憶部23に情報として格納する。
【0092】
ステップS205では、演算部30は、ステップS203において第2閾値よりも大きいと判定すると、フラグ0を立てて記憶部23に情報として格納する。
【0093】
ステップS206では、演算部30は、ステップS204及びステップS205において格納されたフラグの値に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値を算出できるだけのサンプリング数が得られたか否かを判定する。演算部30は、サンプリング数が得られたと判定すると、ステップS207の処理を実行する。演算部30は、サンプリング数が得られていないと判定すると、ステップS209の処理を実行する。
【0094】
ステップS207では、演算部30は、ステップS206においてサンプリング数が得られたと判定すると、フラグの値の平均値を算出する。平均値は、例えば、ステップS204及びステップS205において格納されたフラグの値に対して、所定の時間区間の移動窓を設定して算出される。演算部30は、算出された平均値が0.5以上であるか否かを判定する。演算部30は、平均値が0.5以上であると判定すると、ステップS208の処理を実行する。演算部30は、平均値が0.5未満であると判定すると、ステップS209の処理を実行する。
【0095】
ステップS208では、演算部30は、ステップS207において平均値が0.5以上であると判定すると、測定装置1の運転が停止中であると判別する。
【0096】
ステップS209では、演算部30は、ステップS207において平均値が0.5未満であると判定すると、測定装置1が運転中であると判別し、測定装置1のパラメータ測定に関する通常処理を実行する。演算部30は、ステップS201においてサンプリング数が得られていないと判定すると、測定装置1のパラメータ測定に関する通常処理を実行する。演算部30は、ステップS206においてサンプリング数が得られていないと判定すると、測定装置1のパラメータ測定に関する通常処理を実行する。
【0097】
図6に示されるような停止判別は、例えば、蒸留アプリケーションが1日に2回、3回と行われる場合に、1回目と2回目との間、2回目と3回目との間を判別するために用いられる。一般的に、フィールド機器は、消費電力及びコスト制限のために十分なハードウェアのメモリ構成を有していない場合もある。
【0098】
パラメータに対する平均値の範囲を大きく設定することで、運転停止に関する誤検知を軽減することは容易であるが、平均化演算に使用するための配列のメモリに限界がある。フィールド機器では、パラメータの測定値の演算周期がミリ秒であることが多い。例えば、10msのサンプリング周期で1s分の平均値を算出するためには、100個の数値の配列が必要となる。実際には、1s分では、ノイズなどの影響でセンサ値及びパラメータ値が急激に変化した場合の誤検知のリスクが非常に大きい。したがって、60s分ほどの配列が必要になる。
【0099】
そこで、10msの100周期ごとの値を代表値として、60s分の配列を用意した。これにより、本来は60sの平均値を算出するにあたり、6000個分の数値の配列を用意する必要があったが、1s分の代表値を60個分含む配列を用意するのみで足りる。
【0100】
演算部30は、停止判別において、60sのパラメータの平均値が第2閾値以下になった場合に直ちに停止中と判別するのでなく、第2閾値以下になった時点を1としてフラグを立てて、それを60s分の配列に格納する。演算部30は、運転中を0としてフラグを同様に立てておき、これらのフラグに対する平均値を算出することで、任意の閾値、例えば0.5以上の場合、停止中と判別する。以上のような停止判別により、測定装置1の運転中に運転停止の誤検知が生じるリスクが大きく低減する。
【0101】
平均値の取り方並びに停止判別の処理及び運転判別の処理などは、測定装置1の能力及びアプリケーションに応じて異なり、測定装置1の仕様及びアプリケーションに合わせて適宜変更されてもよい。
【0102】
図7は、
図1の測定装置1の動作の第3例を説明するための模式図である。
図7において左側半分に含まれる、体積流量及び密度の時間変化を示した一の組のグラフは、
図6を用いて説明した停止判別の判別処理が実行されないときの様子を示す。
図7において右側半分に含まれる、体積流量及び密度の時間変化を示した他の組のグラフは、
図6を用いて説明した停止判別の判別処理が実行されたときの様子を示す。
図7において、実線は、測定装置1のパラメータ測定に関する通常処理によって出力されるパラメータの値を示す。破線は、測定装置1の回帰処理によって出力されるパラメータの値を示す。
【0103】
例えば、
図7の左上のグラフでは、
図6を用いて説明した停止判別の判別処理が実行されず、体積流量の値が第2閾値を超えて斜線がかかっている領域に一時的に低下したことをもって測定装置1が停止したと判別されている。学習モデルは、測定装置1が運転している状態でのみ学習が行われて構築される。したがって、測定装置1は、運転が停止しているときには、回帰処理によって正確なパラメータを出力することが困難となる。
【0104】
図7の左上のグラフのようにパラメータが瞬間的に低下して測定装置1が停止中であると誤検知すると、密度の回帰処理において用いられる運転中総体積がゼロにリセットされる。これにより、
図7の左下のグラフのように、回帰処理による密度の出力値も初期値に戻ってしまう。
【0105】
このような不正確な出力を低減するために、
図6を用いて説明した停止判別の判別処理が実行される。当該判別処理によれば、演算部30は、瞬間的なノイズによってパラメータが低下したときであっても、ノイズであることを判別して、ノイズの影響を受けにくい処理を実行する。演算部30は、体積流量の値が第2閾値を超えて斜線がかかっている領域に一時的に低下したことをもって測定装置1が停止したと判別せず、体積流量の値が第2閾値を継続的に超えていることをもって測定装置1が停止中であると判別する。
【0106】
図8は、
図1の測定装置1の動作の第4例を説明するためのフローチャートである。
図8は、測定装置1の回帰処理によって出力されるパラメータの値の補正処理の概要を示したものである。
【0107】
流体の密度などのパラメータは、蒸留プロセスのように、運転により経時的に変化することも想定される。このような流体に対して回帰処理を実行するときには、その出力値は、プロセスの初期の流体のパラメータに大きく依存する。したがって、ユーザによる運転方法の差異などによりプロセス開始時のパラメータが運転ごとに異なると、回帰処理によって出力されるパラメータの値がずれることもある。
【0108】
演算部30は、回帰処理によって出力されたパラメータと流体への気泡の混入が無いときのパラメータとの差分に基づいて、出力されたパラメータを補正する。より具体的には、演算部30は、流体への気泡の混入が無い通常時のパラメータと気泡を検知したときの回帰処理に基づくパラメータとの差分を記憶部23に格納する。演算部30は、気泡を検知したときのパラメータに補正値を加えることで当該パラメータの補正処理を実行する。演算部30は、補正処理に用いる差分を記憶部23の配列に格納し、外れ値を除外した後、差分の平均値を算出し、補正値とする。
【0109】
ステップS300では、演算部30は、例えば、
図5のステップS103と同様の方法で、流体への気泡の混入を検知したか否かを判定する。演算部30は、気泡の混入を検知したと判定すると、ステップS301の処理を実行する。演算部30は、気泡の混入を検知していないと判定すると、ステップS307の処理を実行する。
【0110】
ステップS301では、演算部30は、ステップS300において気泡の混入を検知したと判定すると、流体への気泡の混入が無い通常時のパラメータと気泡を検知したときの回帰処理に基づくパラメータとの差分を記憶部23に格納する。
【0111】
ステップS302では、演算部30は、ステップS301において格納された差分の平均値を算出できるだけのサンプリング数が得られたか否かを判定する。演算部30は、サンプリング数が得られたと判定すると、ステップS303の処理を実行する。演算部30は、サンプリング数が得られていないと判定すると、ステップS306の処理を実行する。
【0112】
ステップS303では、演算部30は、ステップS302においてサンプリング数が得られたと判定すると、ステップS301において格納された差分のうち、外れ値となるものを除外する。
【0113】
ステップS304では、演算部30は、ステップS303において外れ値を除外した後、ステップS301において格納された差分の平均値を補正値として算出する。
【0114】
ステップS305では、演算部30は、気泡を検知したときの、回帰処理により得られたパラメータの値に、ステップS304において算出された補正値を加えて得られたパラメータを補正した値を例えば出力部22に出力する。
【0115】
ステップS306では、演算部30は、ステップS302においてサンプリング数が得られていないと判定すると、回帰処理により得られたパラメータの値を例えば出力部22に出力する。
【0116】
ステップS307では、演算部30は、ステップS300において気泡の混入を検知していないと判定すると、回帰処理及び補正処理のいずれも行っていない、通常処理時のパラメータの値を例えば出力部22に出力する。
【0117】
以下に、測定装置1において用いられるアルゴリズムの詳細を一例として説明する。
【0118】
測定装置1の運転開始と同時に、測定装置1の内部のタイマカウントが進む。測定装置1の演算部30は、タイマカウントが100周期となるごとに、運転停止判別に使用する、通常処理により出力されるパラメータ及びセンサ値のうちの少なくとも1種類を記憶部23に格納する。
【0119】
演算部30は、気泡の混入の有無を判別するために、最低でも用意している配列以上のサンプル値を取得する必要がある。例えば、演算部30は、60s分の配列を用意している場合、60sを経過してから平均値を算出する。したがって、平均値が算出されない間は、流体に気泡が混入していたとしても、気泡の混入の有無に関する判別処理は機能しないことになる。したがって、誤検知を低減するための策である配列の大きさと気泡の混入の有無に関する判別のローディング時間とはトレードオフの関係にある。しかしながら、タイマカウントは、測定装置1の電源がオンとなってから開始するため、1度のみ実行される。したがって、以上のことは、通常大きな問題とならない。
【0120】
演算部30は、タイマカウントが用意した配列以上になった場合、気泡の混入の有無に関する判別処理と運転停止に関する判別処理とを常に同時に実行する。上述した第2学習モデルL2による機械学習により得られた第1閾値及び第2閾値を測定装置1に実装した。
【0121】
気泡の混入の有無に関する判別処理では、上述したように、演算部30は、少なくとも1種類のセンサ値の平均値と第1閾値とを比較する。運転停止に関する判別処理では、上述したように、演算部30は、アプリケーションの用途であるパラメータの値と第2閾値とを比較する。
【0122】
演算部30は、流体に気泡が混入していると判別した場合、予め構築された学習済みの第1学習モデルL1により回帰処理を実行し、パラメータの値を出力する。演算部30は、測定装置1が停止中であると判別した場合、蒸留などのアプリケーションの運転が停止したと判断し、タイマカウント並びにパラメータの補正値及び対応する差分の配列を0にする。
【0123】
以上により、タイマカウントがリセットされ,蒸留などのアプリケーションプロセスが再度運転される場合に、パラメータが改めて配列に格納されていく。これにより、演算部30は、気泡の混入の有無に関する判別処理と運転停止に関する判別処理とを繰り返し実行する。
【0124】
以上のような第1実施形態に係る測定装置1によれば、流体のパラメータが経時的に変化する中で混入物が流体に混入した場合であってもパラメータをより正確に測定可能である。測定装置1は、流体に混入物が混入したときのデータに基づき予め構築された学習モデルと取得されたデータとを用いて実行された、パラメータに関連する回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を取得する。これにより、測定装置1は、蒸留プロセスなどのようにパラメータが経時的に変化する流体への応用も容易である。測定装置1は、このような流体に対して気泡などの混入物が混入したときであっても、パラメータの正確な測定値を回帰処理により出力可能である。
【0125】
測定装置1は、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方を実行することで結果を取得する。測定装置1は、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方をそれ自体で実行する。これにより、測定装置1は、学習モデルを構築するための学習フェーズから学習済みの学習モデルを用いる推定フェーズに至るまでの各種処理をその内部で完結させることができる。
【0126】
測定装置1は、流体に混入物が混入したときのデータ及びラベルを用いて、教師あり学習により学習モデルを予め構築することで、ラベルに基づくより精度の高い学習処理を実行することが可能となる。測定装置1は、このような学習処理により構築された学習モデルを用いて、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方をより精度良く実行することができる。
【0127】
測定装置1は、回帰処理及び判別処理が互いに異なる学習モデルを用いて実行されたときの結果を取得する。測定装置1は、回帰処理及び判別処理についてそれぞれ独立した学習モデルを利用する。測定装置1は、このように複数の学習モデルを利用することで、回帰処理及び判別処理においてより精度の高い出力を実現可能である。
【0128】
測定装置1は、混入物の混入の有無を判別するための第1閾値を、学習モデルを用いて決定することで、第1閾値をより適切に決定することができる。測定装置1は、従来であればユーザの経験などに基づいてユーザにより任意に設定されていた第1閾値を客観的かつ正確に決定することができる。これにより、測定装置1は、第1閾値を用いた、混入物の混入の有無の判別処理をより精度良く実行することができる。
【0129】
測定装置1は、流体への混入物の混入有りと判別すると、学習モデルを用いて回帰処理を実行し、パラメータを出力する。これにより、測定装置1は、流体へ混入した混入物の影響で通常処理ではパラメータに異常値が生じるような場合であっても、パラメータを回帰してより正確な測定値を出力することができる。
【0130】
測定装置1は、回帰処理により出力されたパラメータと流体への混入物の混入が無いときのパラメータとの差分に基づいて、出力されたパラメータを補正する。これにより、プロセス開始時の運転方法及びパラメータなどに運転ごとのばらつきがあったとしても、測定装置1は、そのようなばらつきに基づいて生じる回帰処理後のパラメータの誤差を取得して補正可能である。測定装置1は、マイクロバブルのような小さな気泡の種類及び量、並びに気泡が長く入り続けるときの時間などを含む条件が運転ごとにばらついたとしても、回帰処理後のパラメータを正確に補正することが可能となる。
【0131】
測定装置1は、運転中又は停止中のフラグを立てるための第2閾値を、学習モデルを用いて決定することで、第2閾値をより適切に決定することができる。測定装置1は、従来であればユーザの経験などに基づいてユーザにより任意に設定されていた第2閾値を客観的かつ正確に決定することができる。これにより、測定装置1は、第2閾値を用いた、運転停止の誤検知を低減するための停止判別の判別処理をより精度良く実行することができる。
【0132】
パラメータが、流体の密度、体積流量、質量流量、及び気泡体積分率の少なくとも1種類を含むことで、測定装置1は、例えばコリオリ流量計として機能するために必要となるパラメータの測定及び回帰処理を実行可能である。測定装置1は、コリオリ流量計として機能することが可能になる。
【0133】
上記第1実施形態では、測定装置1は、流体に混入物が混入したときのデータ及びラベルを用いて、教師あり学習により学習モデルを予め構築すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、回帰処理に用いられる学習モデルを、教師なし学習又は半教師あり学習により予め構築してもよい。測定装置1は、判別処理に用いられる学習モデルを、教師なし学習又は半教師あり学習により予め構築してもよい。
【0134】
上記第1実施形態では、測定装置1は、回帰処理及び判別処理が互いに異なる学習モデルを用いて実行されたときの結果を取得すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、回帰処理及び判別処理についてそれぞれ独立した学習モデルを利用せずに、互いに共通した同一の学習モデルを利用してもよい。逆に、測定装置1は、回帰処理の中で異なる種類のパラメータに対し互いに異なる第1学習モデルL1をさらに利用してもよい。
例えば、体積流量及び密度に関して、第1学習モデルL1は、必ずしも互いに一致している必要はない。測定装置1は、判別処理の中で異なる種類の判別に対し互いに異なる第2学習モデルL2をさらに利用してもよい。
【0135】
上記第1実施形態では、測定装置1は、混入物の混入の有無を判別するための第1閾値を、学習モデルを用いて決定すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、学習モデルを用いたこのような決定処理を実行しなくてもよい。測定装置1は、ユーザによって適宜設定された値に第1閾値を決定してもよい。
【0136】
上記第1実施形態では、測定装置1は、流体への混入物の混入有りと判別すると、学習モデルを用いて回帰処理を実行し、パラメータを出力すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、このような回帰処理を実行しなくてもよい。
【0137】
上記第1実施形態では、測定装置1は、回帰処理により出力されたパラメータを補正すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、このような補正処理を実行しなくてもよい。
【0138】
上記第1実施形態では、測定装置1は、運転中又は停止中のフラグを立てるための第2閾値を、学習モデルを用いて決定すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、学習モデルを用いたこのような決定処理を実行しなくてもよい。測定装置1は、ユーザによって適宜設定された値に第2閾値を決定してもよい。
【0139】
上記第1実施形態では、パラメータは、流体の密度、体積流量、質量流量、及び気泡体積分率の少なくとも1種類を含むと説明したが、これに限定されない。パラメータは、フィールド機器によって測定可能な任意の他の物理量を含んでもよい。これに伴い、測定装置1は、コリオリ流量計に限定されない。測定装置1は、他のフィールド機器を含んでもよい。
【0140】
上記第1実施形態では、流体は、液体を含むと説明したが、これに限定されない。流体は、気体を含んでもよい。
【0141】
(第2実施形態)
図9は、本開示の第2実施形態に係る測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
図9を参照しながら、第2実施形態に係る測定装置1の構成及び機能について主に説明する。第2実施形態に係る測定装置1は、それ自体で学習ユニット34を有していない点で第1実施形態と相違する。
【0142】
その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第2実施形態に係る測定装置1にも当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0143】
第1実施形態では、演算部30は、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方を実行することで結果を取得すると説明したが、これに限定されない。演算部30は、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方をそれ自体で実行しなくてもよい。演算部30は、測定装置1の外部で実行された回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を通信により取得してもよい。例えば、演算部30は、外部装置によって実行された回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を外部装置から通信により取得してもよい。すなわち、判別ユニット35及び回帰ユニット36の両方を含む学習ユニット34は、測定装置1の外部に設けられていてもよい。
【0144】
学習ユニット34を有する外部装置は、例えば、エッジコンピューティング及びクラウドシステムなどに用いられる、1つ又は互いに通信可能な複数のサーバ装置を含む。外部装置は、これらに限定されず、携帯電話機、スマートフォン、及びタブレットなどのモバイル機器、並びにPC(Personal Computer)などの任意の汎用の電子機器を含んでもよいし、測定装置1に対して専用の他の電子機器を含んでもよい。
【0145】
測定装置1の演算部30は、データ通信部37をさらに有する。データ通信部37は、任意の無線通信又は有線通信に基づく通信規格に適合する通信モジュールを含む。通信規格は、無線LAN(Local Area Network)規格、近距離無線通信規格、4G(4th Generation)及び5G(5th Generation)などの移動体通信規格、並びにインターネット規格などを含む。測定装置1は、データ通信部37を介して上記の外部装置と通信可能に接続されている。
【0146】
測定装置1は、測定装置1の外部で実行された回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を通信により取得することで、回帰処理及び判別処理の少なくとも一方に関する演算を実行する必要がない。したがって、測定装置1は、その動作に関連する演算負荷を軽減可能である。
【0147】
上記第2実施形態では、判別ユニット35及び回帰ユニット36の両方が、測定装置1の外部に設けられていると説明したが、これに限定されない。判別ユニット35及び回帰ユニット36のうちのいずれか一方が測定装置1の内部に設けられ、他方が測定装置1の外部に設けられていてもよい。
【0148】
上記第2実施形態では、学習モデルを構築するための学習フェーズから学習済みの学習モデルを用いる推定フェーズに至るまでの各種処理は、測定装置1の外部で実行されることになるが、これに限定されない。学習フェーズにおける各種処理及び推定フェーズにおける各種処理のいずれか一方が測定装置1により実行され、他方が外部装置により実行されてもよい。
【0149】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0150】
例えば、本開示は、上述した測定装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0151】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
流体の状態を示す少なくとも1種類のパラメータを測定する測定装置であって、
前記パラメータの算出に必要な少なくとも1種類のセンサ値をデータとして取得するための検出部と、
前記検出部を用いて取得された前記データに基づいて前記パラメータを算出する演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記流体に混入物が混入したときの前記データに基づき予め構築された学習モデルと取得された前記データとを用いて実行された、前記パラメータに関連する回帰処理及び判別処理の少なくとも一方の結果を取得する、
測定装置。
[付記2]
付記1に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記回帰処理及び前記判別処理の少なくとも一方を実行することで前記結果を取得する、
測定装置。
[付記3]
付記1に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記測定装置の外部で実行された前記回帰処理及び前記判別処理の少なくとも一方の結果を通信により取得する、
測定装置。
[付記4]
付記1乃至3のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記流体に混入物が混入したときの前記データ及びラベルを用いて、教師あり学習により前記学習モデルを予め構築するか、又は教師なし学習により前記学習モデルを予め構築する、
測定装置。
[付記5]
付記1乃至4のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記回帰処理及び前記判別処理が互いに異なる前記学習モデルを用いて実行されたときの前記結果を取得する、
測定装置。
[付記6]
付記1乃至5のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記判別処理は、前記流体への混入物の混入の有無を判別する処理を含み、
前記演算部は、前記パラメータ及び前記センサ値のうちの少なくとも1種類に対して設定された所定の時間区間の移動窓の平均値と比較される第1閾値であって混入物の混入の有無を判別するための前記第1閾値を、前記学習モデルを用いて決定する、
測定装置。
[付記7]
付記6に記載の測定装置であって、
前記演算部は、前記流体への混入物の混入有りと判別すると、前記学習モデルを用いて前記回帰処理を実行し、前記パラメータを出力する、
測定装置。
[付記8]
付記7に記載の測定装置であって、
前記演算部は、出力された前記パラメータと前記流体への混入物の混入が無いときの前記パラメータとの差分に基づいて、出力された前記パラメータを補正する、
測定装置。
[付記9]
付記1乃至8のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記判別処理は、前記測定装置の運転が停止したか否かを判別する処理を含み、
前記演算部は、前記パラメータのうちの少なくとも1種類に対して設定された第2閾値であって、運転中又は停止中のフラグを立てるための前記第2閾値を、前記学習モデルを用いて決定する、
測定装置。
[付記10]
付記1乃至9のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記パラメータは、前記流体の密度、体積流量、質量流量、及び気泡体積分率の少なくとも1種類を含む、
測定装置。
【符号の説明】
【0152】
1 測定装置
10 検出部
11 測定管
12 加振器
13 上流側センサ
14 下流側センサ
15 温度センサ
20 処理部
21 励振回路
22 出力部
23 記憶部
30 演算部
31 密度演算部
32 質量流量演算部
33 体積流量演算部
34 学習ユニット
35 判別ユニット
351 気泡判別部
352 停止判別部
353 相状態判別部
36 回帰ユニット
361 密度演算部
362 質量流量演算部
363 体積流量演算部
364 気泡体積分率演算部
37 データ通信部
IR 駆動電流
L1 第1学習モデル
L2 第2学習モデル
SA 変位信号
SB 変位信号
ST 温度信号