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特開2024-91094モデル作成装置、モデル作成システム、体感品質推定システム、モデル作成方法およびモデル作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091094
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】モデル作成装置、モデル作成システム、体感品質推定システム、モデル作成方法およびモデル作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/062 20220101AFI20240627BHJP
【FI】
H04L43/062
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207541
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】猿橋 昌
(57)【要約】
【課題】ユーザの体感品質をより精度良く推定することを可能にする。
【解決手段】
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置が、前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定し、前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出し、前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置であって、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定部と、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出部と、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力部と
を備えるモデル作成装置。
【請求項2】
前記通信状態情報から、除外対象の情報である除外情報を除く除外部
を備え、
前記除外情報は、通信データが通信されていない時間の前記測定値であり、
前記特定部は、前記強相関項目の特定を、前記除外情報が除かれた前記通信状態情報を用いて行う、
請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項3】
前記モデルは、
前記強相関項目が複数存在する場合に、前記強相関項目の各々について、前記体感品質を推定し、
さらに、前記強相関項目の各々について推定された前記体感品質に基づいて、総合的な品質評価値である総合スコアを出力する、
請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記強相関項目と前記体感品質情報との間の前記相関の強さに応じて、前記総合スコアの算出のための重み係数を、前記強相関項目の各々に対して算出し、
前記総合スコアは、推定された前記体感品質と前記重み係数との乗算によって前記強相関項目の各々について算出された値を合算することによって算出される、
請求項3に記載のモデル作成装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記モデルを用いて前記体感品質を推定する体感品質推定装置に、前記モデルを出力し、
前記体感品質推定装置は、前記モデルを用いて前記体感品質を推定する、
請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項6】
前記抽出条件によって抽出される通信セッションは、当該抽出条件に対応付けられている前記測定項目の前記測定値の変化が体感品質の変化に影響しやすい通信セッションである、
請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項7】
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成システムであって、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定手段と、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出手段と、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力手段と
を備えるモデル作成システム。
【請求項8】
請求項5に記載のモデル作成装置と、
前記体感品質推定装置と
を備える体感品質推定システム。
【請求項9】
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置のモデル作成方法であって、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定し、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出し、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する、
モデル作成方法。
【請求項10】
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置のモデル作成プログラムであって、
コンピュータに、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定機能と、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出機能と、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力機能と
を実現させるモデル作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデル作成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク経由で提供されるサービスにおけるユーザの体感品質(Quality of Experience(QоE))の測定は、一般的には、通信端末をユーザが操作し、感じた品質評価値を記録することによって行われている。この方法では、すべてのユーザで体感品質の測定を行うことが現実的に難しい。そのため、一部のユーザによる測定結果からサービス全体としての体感品質が類推されている。そして、サービス全体の体感品質をより精度良く推定する方法が望まれている。
【0003】
また、ユーザが通信端末を操作する方法では、すべてのユーザで体感品質の測定を行うことが難しいので、ネットワーク全体の通信品質を調査する場合、一般的には、監視装置が通信を監視する方法が用いられる。監視装置を用いた調査方法には、たとえば、通信接続が確立された後に監視装置が可用帯域幅を測定する方法がある。しかし、可用帯域幅には、ユーザの体感品質を左右する要因が反映されていない。そのため、可用帯域幅からユーザの体感品質を推定することは難しい。
【0004】
また、監視装置を用いた調査方法には、他に、監視装置がトラフィックデータに対する測定項目(たとえば、再送データ量、スループット、遅延時間)についての測定を行う方法がある。トラフィックデータの測定値によって、通信品質のネットワーク全体での変化を大枠で把握することが可能になる。
【0005】
また、関連技術としては、特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2019-522422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、トラフィックデータの測定値は、ユーザの体感品質を直接示すものではない。そのため、トラフィックデータの測定値からユーザの体感品質を精度良く推定することが難しい。
【0008】
これに関して、たとえば、トラフィックデータの測定値の一例である再送データ量の測定値について、説明する。再送は、通信品質の劣化によって発生することが多く、また、通信品質が悪いほど、再送データ量が多くなる傾向がある。再送データ量が多い場合、通信品質が劣化している可能性があるので、ユーザ端末で提供されているサービスに影響する可能性がある。その結果、ユーザの体感品質が下がっている可能性がある。しかし、サービスの内容によって通信品質の劣化の体感品質への影響度が異なる等の理由により、再送の発生が必ずしもユーザの体感品質を下げるとは限らない。つまり、再送の発生がユーザの体感品質を下げるか否かや、品質が劣化したとユーザが感じる再送データ量は、サービス次第で異なる。このように、トラフィックデータの測定値の一例である再送データ量の測定値は、ユーザの体感品質を直接示すものではない。そのため、再送データ量からユーザの体感品質を精度良く推定することが難しい。
【0009】
また、サービスにより要求されるデータ量やデータ受信間隔の連続性等は、ユーザに提供されるサービスの種別によって異なる。このため、サービスにより要求されるスループットもサービスの種別によって異なる。このように、トラフィックデータの測定値の一例であるスループットの測定値は、ユーザの体感品質を直接示すものではない。したがって、スループットの測定値からユーザの体感品質を精度良く推定することも難しい。
【0010】
また、単位時間あたりの通信量が増加すると、ネットワーク上の機器群でのキューイング遅延等が増大することで遅延時間が増大する。そして、キューイング遅延等による遅延の遅延時間への影響が、通信品質の劣化による遅延の遅延時間への影響に対して増大する。その結果、サービスの種別によっては、遅延時間の測定値が大きくても、通信品質の劣化が小さく、体感品質が悪化していない場合がある。このように、トラフィックデータの測定値の一例である遅延時間の測定値は、ユーザの体感品質を直接示すものではない。そのため、遅延時間の測定値からユーザの体感品質を精度良く推定することも難しい。
【0011】
このように、トラフィックデータの測定値からユーザの体感品質を精度良く推定することは難しい。
【0012】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、ユーザの体感品質をより精度良く推定することを可能にするモデル作成装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様において、モデル作成装置は、複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置であって、前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定部と、前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出部と、前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力部とを備える。
【0014】
また、本発明の他の態様において、モデル作成システムは、複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成システムであって、前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定手段と、前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出手段と、前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力手段とを備える。
【0015】
また、本発明の他の態様において、モデル作成方法は、複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置のモデル作成方法であって、前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定し、前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出し、前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する。
【0016】
また、本発明の他の態様において、モデル作成プログラムは、複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置のモデル作成プログラムであって、コンピュータに、前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定機能と、前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出機能と、前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力機能とを実現させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記態様によれば、ユーザの体感品質をより精度良く推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態のモデル作成装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の第一の実施形態のモデル作成装置の動作フローの例を示す図である。
図3】本発明の第二の実施形態のモデル作成装置に関連する装置の例を示す図である。
図4】本発明の第二の実施形態の通信状態情報の例を示す図である。
図5】本発明の第二の実施形態の体感品質情報の例を示す図である。
図6】本発明の第二の実施形態のモデル作成装置の構成例を示す図である。
図7】本発明の第二の実施形態の抽出条件の例を示す図である。
図8】本発明の第二の実施形態の相関係数と重み係数との関係の例を示す図である。
図9】本発明の第二の実施形態の体感品質値と総合スコアとの関係の例を示す図である。
図10】本発明の第二の実施形態の総合スコアとサービス品質値との関係の例を示す図である。
図11】本発明の第二の実施形態のモデル作成装置の動作フローの例を示す図である。
図12】本発明の各実施形態のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態について説明する。第一の実施形態におけるモデル作成装置10の具体的な一例が、後述する第二の実施形態におけるモデル作成装置20である。
【0020】
図1に、本実施形態のモデル作成装置10の構成例を示す。モデル作成装置10は、特定部11、抽出部12および出力部13を含む。
【0021】
モデル作成装置10は、通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成する。なお、体感品質は、ネットワーク経由で提供されるサービスに対してユーザが感じる品質である。通信状態情報は、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である。通信状態情報は、複数の測定項目の各々に対して測定された測定値の情報を含む。
【0022】
特定部11は、通信状態情報と体感品質情報とを用いて、強相関項目を特定する。体感品質情報は、通信状態情報に含まれる測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である。強相関項目は、体感品質情報との相関が強い測定項目である。
【0023】
抽出部12は、強相関項目の測定値の情報を、通信状態情報から、抽出後情報として抽出する。ここで抽出される情報は、強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての情報である。
【0024】
出力部13は、体感品質情報と抽出後情報とを学習用データとして用いて、モデルを作成し、作成されたモデルを出力する。
【0025】
次に、図2に、本実施形態のモデル作成装置10の動作フローの例を示す。
【0026】
特定部11は、通信状態情報と体感品質情報とを用いて、強相関項目を特定する(ステップS101)。
【0027】
抽出部12は、強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての強相関項目の測定値の情報を、通信状態情報から、抽出後情報として抽出する(ステップS102)。
【0028】
出力部13は、体感品質情報と抽出後情報とを学習用データとして用いて、モデルを作成し、作成されたモデルを出力する(ステップS103)。
【0029】
以上で説明したように、本発明の第一の実施形態では、モデル作成装置10は、特定部11、抽出部12および出力部13を含む。モデル作成装置10は、通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成する。通信状態情報は、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である。通信状態情報は、複数の測定項目の各々に対して測定された測定値の情報を含む。特定部11は、通信状態情報と体感品質情報とを用いて、強相関項目を特定する。体感品質情報は、通信状態情報に含まれる測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である。強相関項目は、体感品質情報との相関が強い測定項目である。抽出部12は、強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての強相関項目の測定値の情報を、通信状態情報から、抽出後情報として抽出する。出力部13は、体感品質情報と抽出後情報とを学習用データとして用いて、モデルを作成し、作成されたモデルを出力する。
【0030】
これにより、体感品質情報との相関が強い測定項目の測定値に基づいてモデルが作成されるので、モデルの精度を向上することが可能になる。そのため、ユーザの体感品質をより精度良く推定することが可能になる。
【0031】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。第一の実施形態におけるモデル作成装置10の具体的な一例が、第二の実施形態におけるモデル作成装置20である。
【0032】
まず、図3に、本実施形態のモデル作成装置20に関連する装置の例を示す。
【0033】
モデル作成装置20と体感品質推定装置40は、互いに有線または無線で通信接続され得る。モデル作成装置20と情報収集装置50は、互いに有線または無線で通信接続され得る。体感品質推定装置40と情報収集装置60は、互いに有線または無線で通信接続され得る。
【0034】
モデル作成装置20は、ユーザの体感品質を推定するモデルを作成する。モデルは、通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルである。体感品質は、ネットワーク経由で提供されるサービスに対してユーザが感じる品質である。通信状態情報は、通信の状態に関する情報である。通信状態情報は、通信の状態に関する複数の測定項目の各々に対して測定された測定値の情報を含む。また、モデル作成装置20は、作成したモデルを、体感品質推定装置40へ出力する。なお、以降、ユーザの体感品質を略して、体感品質と呼ぶことがある。
【0035】
体感品質推定装置40は、通信状態情報からユーザの体感品質を推定する。体感品質推定装置40は、ユーザの体感品質の推定に、モデル作成装置20で作成されたモデルを使用する。
【0036】
モデル作成装置20には、情報収集装置50で収集された通信状態情報が入力される。体感品質推定装置40には、情報収集装置60で収集された通信状態情報が入力される。情報収集装置50は、モデル作成のための通信状態情報を収集する。情報収集装置60は、体感品質推定のための通信状態情報を収集する。
【0037】
また、モデル作成装置20には、通信状態情報の測定値が測定された通信セッションについての体感品質情報が、通信状態情報に対応付けられて、モデル作成装置20に入力される。体感品質情報は、ユーザの体感品質に関する情報である。情報収集装置50は、通信状態情報と体感品質情報の対応付けを行ってもよい。通信状態情報と体感品質情報との対応付けは、情報収集装置50に対する作業者の操作に応じて行われてもよい。なお、体感品質情報は、情報収集装置50とは異なる装置で収集されて、情報収集装置50に入力されてもよいし、情報収集装置50で収集されてもよい。
【0038】
図4に、通信セッションごとの通信状態情報の例を示す。通信状態情報に含まれる情報については、後述する。また、図5に、体感品質情報の例を示す。体感品質情報は、たとえば、MOS(Mean Opinion Score)値の情報を含む。体感品質情報は、ユーザがユーザ端末に対する操作を行うことによって収集される。ユーザ端末は、体感品質の推定の対象の通信を利用したサービスが提供される端末である。また、体感品質情報は体感品質が評価された時刻の情報を含む。
【0039】
情報収集装置50は、通信セッションごとに、通信セッションが属するサービスのサービス種別を識別する。通信状態情報は、通信セッションの識別情報(セッションID(identification))と、サービス種別の情報とを含む。そして、情報収集装置50は、モデル作成対象のサービス種別についての通信状態情報を、モデル作成装置20に入力する。モデル作成対象のサービス種別は、たとえば、ユーザ操作等に応じて、情報収集装置50に入力される。モデル作成装置20には、モデル作成対象のサービス種別について、一または複数の通信セッションの通信状態情報が入力される。なお、モデル作成対象のサービスについての通信状態情報の抽出は、情報収集装置50ではなく、モデル作成装置20によって行われてもよい。
【0040】
体感品質は、サービスの内容ごとに異なる。たとえば、文字ベースのサービスと動画サービスとにおいて、ユーザの操作が表示に反映されるまでの時間が同じであっても、ユーザの体感品質は異なる可能性がある。そのため、本実施形態では、モデルは、サービス種別ごとや、個々のサービスごとに作成される。また、モデルは、さらに、曜日や時間帯ごとに作成されてもよい。
【0041】
情報収集装置50は、たとえば、通信を中継する中継装置であってもよい。この場合、情報収集装置50は、情報収集装置50を通過するトラフィックデータについての通信状態情報を収集する。
【0042】
情報収集装置50は、通信セッションごとに、通信状態情報を収集する。通信状態情報は、通信の状態に関する複数の測定項目の各々に対して測定された測定値の情報を含む。測定項目は、たとえば、スループット、再送データ量、遅延時間などである。測定値は、測定項目についての測定結果の値である。本実施形態では、通信状態情報は、測定値の情報として、スループット、再送データ量および遅延時間の情報を含む。遅延時間は、たとえば、RTT(Round Trip Time)であってもよい。スループット、再送データ量および遅延時間は、一般的な方法で算出される。
【0043】
各々の測定値は、所定の頻度で測定される。測定の頻度は、たとえば、所定時間おきであってもよい。この場合、測定値は、所定時間おきに測定される。たとえば、再送データ量は、所定時間において再送された通信データの量である。また、測定の頻度は、たとえば、連続データ単位ごとであってもよい。連続データは、連続して通信される通信データである。たとえば、情報収集装置50が中継装置である場合、中継する通信データが途切れたときに、途切れる前までに通信された通信データについて測定値が測定される。測定の頻度は、測定項目ごとに異なっていてもよい。いずれの測定単位で測定値が測定される場合にも、通信状態情報は、測定値が測定された時刻の情報を含む。
【0044】
なお、スループットは、通信データ量を、通信データの通信に要した時間で割ることによって算出される。情報収集装置50が中継装置である場合、情報収集装置50は、中継したデータ量を、データの中継に要した時間で割ることによって、スループットを算出することができる。
【0045】
このとき、通信データの通信に要した時間に、通信データが通信されていなかった時間が含まれると、実際の瞬時的なスループットよりも小さなスループットが算出されてしまう。そのため、情報収集装置50は、通信に要した時間として、通信データが通信されていた時間を使用して、スループットを算出する。情報収集装置50が中継装置である場合、送信バッファに通信データが存在していた時間を、通信データが通信されていた時間とすることができる。
【0046】
また、通信状態情報は、通信セッションの開始時刻と終了時刻の情報を含む。また、通信状態情報は、通信セッションの開始から終了までに通信された通信データ量の情報を含む。また、通信状態情報は、通信データが通信されていた時間の情報(通信時間とよぶ)を含む。
【0047】
情報収集装置60も、情報収集装置50と同様にして、通信状態情報を収集する。情報収集装置60は、体感品質推定のための通信から、通信状態情報を収集する。
【0048】
次に、図6に、本実施形態のモデル作成装置20の構成例を示す。モデル作成装置20は、特定部21、抽出部22、出力部23および除外部24を含む。
【0049】
特定部21は、通信状態情報と体感品質情報とを用いて、強相関項目を特定する。強相関項目は、体感品質情報との相関が強い測定項目である。通信状態情報は、情報収集装置50から入力される。特定される強相関項目は、相関の強さに応じて、一つ特定されてもよいし、二以上の複数個特定されてもよい。
【0050】
特定部21は、たとえば、測定項目の各々について、測定値と体感品質値との間の相関係数を算出し、相関係数が所定の値以上である測定項目を、強相関項目としてもよい。なお、体感品質値は、体感品質を示す値であり、たとえばMOS値である。ここでの体感品質値は、体感品質情報に含まれる。
【0051】
モデル作成装置20に入力される通信状態情報は、モデル作成対象のサービスについての通信状態情報である。また、モデル作成装置20に入力される体感品質情報は、通信状態情報に含まれる測定値が測定された通信についての体感品質情報である。体感品質情報は、通信状態情報に対応付けられて、モデル作成装置20に入力される。通信状態情報は、情報収集装置50から入力されてもよいし、情報収集装置50とは異なる装置から入力されてもよい。
【0052】
除外部24は、モデル作成装置20に入力された通信状態情報から、除外情報を除く。除外情報は、除外対象の情報である。特定部21は、除外情報が除かれた通信状態情報を用いて、強相関項目の特定を行う。
【0053】
除外情報は、たとえば、通信データが通信されていない時間の測定値である。また、除外情報は、たとえば、サービスごとにあらかじめ定められた除外条件を満たす測定値であってもよい。除外条件は、たとえば、サービス成立性に直結しない通信セッションの情報であることであってもよい。サービス成立性に直結しない通信セッションとは、たとえば、接続時間が短い(たとえば100ms以下)通信セッションなどである。なお、接続時間は、通信セッションの開始時刻から終了時刻までの時間である。除外条件は、あらかじめ、知見などに基づいて定められた条件であってもよい。
【0054】
たとえば、動画配信サービスの中には、一定時間ごとに動画データを送信し、それ以外の時間にデータを送信しないものがある。このようなサービスの場合、通信データが通信されていない状態での測定値を用いてモデル作成を行うと、モデルによる体感品質推定精度が低下する。また、モデル作成のための通信状態情報の量が多くなると、モデル作成のための計算量が多くなり、また、モデル作成のための通信状態情報の記録に必要な記憶領域の容量が大きくなる。そのため、除外部24では、情報収集装置50からモデル作成装置20に入力された通信状態情報から、除外情報を除く。
【0055】
抽出部22は、強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての強相関項目の測定値の情報を、通信状態情報から、抽出後情報として抽出する。抽出条件は、抽出部22によって通信状態情報から測定値の情報が抽出される通信セッションの条件である。抽出条件は、測定項目ごとに異なる。また、抽出条件は、あらかじめ測定項目に対応付けられている。抽出条件は、さらに、サービス種別や個々のサービスごとに異なっていてもよい。このようにすると、体感品質との相関が強い測定項目の測定値が抽出され、この測定値に基づいてモデルが作成される。そのため、モデル作成が発散してモデルの精度が低下する可能性を低減することができる。また、モデル作成の演算量を低減することができる。
【0056】
また、抽出条件によって抽出される通信セッションは、当該抽出条件に対応付けられている測定項目の測定値の変化が体感品質の変化に影響しやすい通信セッションであってもよい。このようにすると、体感品質との相関が強い測定項目に影響しやすい通信セッションについて、当該測定項目の測定値が抽出される。そのため、当該測定値に基づいて作成されるモデルの精度を向上することができる。
【0057】
図7に、抽出条件の例を示す。たとえば、強相関項目がスループットである場合、抽出部22は、データ量が1MB以上である、接続時間が1秒以上である、および、プロトコルがUDPのみである、の条件を満たす通信セッションについてのスループットの測定値を抽出する。なお、抽出条件がこの条件である場合、通信状態情報は、プロトコルの情報も含む。スループットは、データのダウンロードの安定性に影響する測定項目である。そのため、スループットは、通信データ量が多く、また、接続時間が長い通信セッションの体感品質に影響しやすい。そのため、図7の例では、スループットについての抽出条件は、通信データ量が多く、接続時間が長い通信セッションを抽出する条件が設定されている。
【0058】
また、たとえば、強相関項目が遅延時間や再送データ量である場合、抽出部22は、データ量が3KB以上10KB未満である、および、接続時間が30ms以上1000ms未満である、の条件を満たす通信セッションについて、強相関項目の測定値を抽出する。遅延時間や再送データ量は、ユーザの操作感やレスポンスに影響する測定項目である。そのため、遅延時間や再送データ量は、ユーザ操作が多く行われるサービスの体感品質に影響しやすい。ユーザ操作が多く行われるサービスは、通信データ量が小さい傾向がある。そのため、図7の例では、遅延時間や再送データ量についての抽出条件は、通信データ量が小さく、接続時間が短い通信セッションを抽出する条件が設定されている。
【0059】
出力部23は、体感品質情報と抽出部22で抽出された抽出後情報とを学習用データとして用いて、モデルを作成する。出力部23は、体感品質情報と抽出後情報とを分析して、モデルを作成する。出力部23は、たとえば、通信時間におけるスループットの平均値、遅延時間の平均値、再送の割合などを算出して、算出された値と体感品質情報とからモデルを作成してもよい。出力部23は、機械学習によってモデルを作成してもよい。そして、出力部23は、作成されたモデルを、体感品質推定装置40へ出力する。
【0060】
出力部23によって作成されるモデルは、強相関項目が二以上の複数存在する場合、強相関項目の各々について、体感品質を推定し、推定された体感品質を出力してもよい。また、モデルは、強相関項目の各々について推定された体感品質に基づいて総合スコアを算出し、算出された総合スコアを算出してもよい。
【0061】
総合スコアは、強相関項目について推定された体感品質に基づいて算出される総合的な品質評価値である。総合スコアSは、たとえば、下記の式のように、強相関項目の各々(i=1~N)について、推定された体感品質Qiと重み係数Wiとの乗算によって算出された乗算値を、合算することによって算出される。
【0062】
【数1】
【0063】
この場合、特定部21は、強相関項目と体感品質情報との間の相関の強さに応じて、強相関項目の各々に対して、総合スコア算出のための重み係数を算出してもよい。図8に、相関係数と重み係数との関係の例を示す。この例の場合、重み係数の合計値は8である。特定部21は、重み係数の合計値が8になるよう、各々の測定項目についての重み係数を決定する。特定部21は、たとえば、相関係数の比に基づいて、重み係数を決定する。
【0064】
また、図9に、モデルから出力される体感品質値と総合スコアとの関係の例を示す。この例では、時刻ごとに強相関項目として、スループット、遅延時間および再送データ量が選択されている。また、それらの重み係数は、4、2、2である。この例では、総合スコアは上述の式によって算出されている。また、この例では、さらに、総合スコアから、サービス品質値が算出されている。
【0065】
図10に、総合スコアとサービス品質値との関係の例を示す。図9および図10に示すの例の場合、体感品質値は1から5の5段階である。重み係数の合計値は8であるため、総合スコアの最大値は40である。図10の例では、サービス品質値は、総合スコアに応じて3段階のいずれかに決定される。このように、モデルは、総合スコアをさらに何段階かに分類したサービス品質値を算出して出力してもよい。
【0066】
次に、体感品質推定装置40について説明する。体感品質推定装置40は、モデル作成装置20の出力部23から出力されたモデルを用いて、体感品質を推定する。体感品質推定装置40は、情報収集装置60で収集された通信状態情報から、体感品質を推定する。モデルに入力される通信状態情報は、モデル作成に使用された通信状態情報と同様に、情報収集装置60で収集された通信状態情報から、除外情報を除いたのもであってもよい。また、モデルに入力される通信状態情報は、強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションの測定値の情報であってもよい。体感品質推定装置40は、モデル作成の際に特定された強相関項目の情報を、モデル作成装置20から受信してもよい。この場合、モデル作成装置20は、特定部21によって特定された強相関項目の情報を、体感品質推定装置40に出力する。
【0067】
また、体感品質推定装置40に入力される通信状態情報は、全体のうちの一部の通信に関する通信状態情報であってもよい。たとえば、体感品質推定装置40に入力される通信状態情報は、特定のエリアに関する通信状態情報であってもよいし、特定の時間帯の通信状態情報であってもよい。このようにすると、一部の通信に関する体感品質を推定することができる。
【0068】
このように、体感品質推定装置40は、モデル作成装置20で作成されたモデルを用いて体感品質を推定する。そのため、一部のユーザの体感品質に基づいた全体品質の推測ではなく、情報収集装置60によって収集された通信状態情報に基づいた体感品質の推定が可能になる。これにより、ユーザの体感品質をより精度良く推定することが可能になる。また、ユーザ端末の操作によるユーザの体感品質の測定が不要になるので、体感品質の推定に係るコストが低減される。
【0069】
次に、図11に、本実施形態のモデル作成装置20の動作フローの例を示す。
【0070】
除外部24は、まず、モデル作成装置20に入力された通信状態情報から、除外情報を除く。除外情報は、除外対象の情報である。(ステップS201)。
【0071】
次に、特定部21は、通信状態情報と体感品質情報とを用いて、強相関項目を特定する(ステップS202)。
【0072】
抽出部22は、強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての強相関項目の測定値の情報を、通信状態情報から、抽出後情報として抽出する(ステップS203)。
【0073】
そして、出力部23は、体感品質情報と抽出部22で抽出された抽出後情報とを学習用データとして用いて、モデルを作成する。そして、出力部23は、作成されたモデルを、体感品質推定装置40へ出力する(ステップS204)。
【0074】
以上で説明したように、本発明の第二の実施形態では、モデル作成装置20は、特定部21、抽出部22および出力部23を含む。モデル作成装置20は、通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成する。通信状態情報は、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である。通信状態情報は、複数の測定項目の各々に対して測定された測定値の情報を含む。特定部21は、通信状態情報と体感品質情報とを用いて、強相関項目を特定する。体感品質情報は、通信状態情報に含まれる測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である。強相関項目は、体感品質情報との相関が強い測定項目である。抽出部22は、強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての強相関項目の測定値の情報を、通信状態情報から、抽出後情報として抽出する。出力部23は、体感品質情報と抽出後情報とを学習用データとして用いて、モデルを作成し、作成されたモデルを出力する。
【0075】
これにより、体感品質情報との相関が強い測定項目の測定値に基づいてモデルが作成されるので、モデルの精度を向上することが可能になる。そのため、ユーザの体感品質をより精度良く推定することが可能になる。
【0076】
また、モデル作成装置20は、通信状態情報から除外情報を除く除外部24を備えていてもよい。除外情報は、除外対象の情報である。除外情報は、通信データが通信されていない時間の測定値であってもよい。この場合、特定部21は、強相関項目の特定を、除外情報が除かれた通信状態情報を用いて行う。これにより、モデルによる体感品質の推定精度を低下させる要因となる情報を、モデル作成に使用される通信状態情報から除くことができるので、モデルによる体感品質の推定精度を向上することができる。
【0077】
また、除外情報は、サービスごとにあらかじめ定められた条件を満たす測定値であってもよい。この場合、通信状態情報は、特定のサービスに関する通信の測定値を含む。これにより、モデルによる体感品質の推定精度を低下させる要因となる情報を、モデル作成に使用される通信状態情報から除くことができるので、モデルによる体感品質の推定精度を向上することができる。
【0078】
また、モデルは、強相関項目が複数存在する場合に、強相関項目の各々について、体感品質を推定してもよい。また、モデルは、さらに、強相関項目の各々について推定された体感品質に基づいて、総合的な品質評価値である総合スコアを出力してもよい。また、この場合、特定部21は、強相関項目と体感品質情報との間の相関の強さに応じて、総合スコアの算出のための重み係数を、強相関項目の各々に対して算出してもよい。この場合、総合スコアは、推定された体感品質と重み係数との乗算によって強相関項目の各々について算出された値を合算することによって算出されてもよい。これにより、相関の強さに応じて総合スコアが算出されるので、体感品質により近い総合スコアを算出することが可能になる。
【0079】
また、出力部23は、モデルを用いて体感品質を推定する体感品質推定装置に、モデルを出力してもよい。この場合、体感品質推定装置は、モデルを用いて体感品質を推定する。これにより、体感品質の推定を実現することができる。
【0080】
また、抽出条件によって抽出される通信セッションは、当該抽出条件に対応付けられている測定項目の測定値の変化が体感品質の変化に影響しやすい通信セッションであってもよい。
【0081】
また、測定項目がスループットである場合、抽出条件は、通信されたデータ量が多く、接続時間が長いセッションの測定値であることであってもよい。
【0082】
また、測定項目が遅延時間である場合、抽出条件は、送受信されたデータ量が多いセッションの測定値であってもよい。
【0083】
また、測定項目が再送回数である場合、抽出条件は、送受信されたデータ量が小さいセッションの測定値であってもよい。
【0084】
これにより、モデル作成装置20は、体感品質の変化に影響しやすい通信セッションの通信状態情報に基づいてモデルを作成することができるので、モデルによる体感品質の推定精度を向上することができる。
【0085】
[ハードウェア構成例]
上述した本発明の各実施形態におけるモデル作成装置(10、20)を、一つの情報処理装置(コンピュータ)を用いて実現するハードウェア資源の構成例について説明する。なお、モデル作成装置は、物理的または機能的に少なくとも二つの情報処理装置を用いて実現してもよい。また、モデル作成装置は、専用の装置として実現してもよい。また、モデル作成装置の一部の機能のみを情報処理装置を用いて実現してもよい。
【0086】
図12は、本発明の各実施形態のモデル作成装置を実現可能な情報処理装置のハードウェア構成例を概略的に示す図である。情報処理装置90は、通信インタフェース91、入出力インタフェース92、演算装置93、記憶装置94、不揮発性記憶装置95およびドライブ装置96を含む。
【0087】
たとえば、図1の特定部11および出力部13は、通信インタフェース91および演算装置93で実現することが可能である。抽出部12は、演算装置93で実現することが可能である。
【0088】
通信インタフェース91は、各実施形態のモデル作成装置が、有線あるいは/および無線で外部装置と通信するための通信手段である。なお、モデル作成装置を、少なくとも二つの情報処理装置を用いて実現する場合、それらの装置の間を通信インタフェース91経由で相互に通信可能なように接続してもよい。
【0089】
入出力インタフェース92は、入力デバイスの一例であるキーボードや、出力デバイスとしてのディスプレイ等のマンマシンインタフェースである。
【0090】
演算装置93は、汎用のCPU(Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ等の演算処理装置や複数の電気回路によって実現される。演算装置93は、たとえば、不揮発性記憶装置95に記憶された各種プログラムを記憶装置94に読み出し、読み出したプログラムに従って処理を実行することが可能である。
【0091】
記憶装置94は、演算装置93から参照可能な、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置であり、プログラムや各種データ等を記憶する。記憶装置94は、揮発性のメモリ装置であってもよい。
【0092】
不揮発性記憶装置95は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、等の、不揮発性の記憶装置であり、各種プログラムやデータ等を記憶することが可能である。
【0093】
ドライブ装置96は、たとえば、後述する記録媒体97に対するデータの読み込みや書き込みを処理する装置である。
【0094】
記録媒体97は、たとえば、光ディスク、光磁気ディスク、半導体フラッシュメモリ等、データを記録可能な任意の記録媒体である。
【0095】
本発明の各実施形態は、たとえば、図12に例示した情報処理装置90によりモデル作成装置を構成し、このモデル作成装置に対して、上記各実施形態において説明した機能を実現可能なプログラムを供給することにより実現してもよい。
【0096】
この場合、モデル作成装置に対して供給したプログラムを、演算装置93が実行することによって、実施形態を実現することが可能である。また、モデル作成装置のすべてではなく、一部の機能を情報処理装置90で構成することも可能である。
【0097】
さらに、上記プログラムを記録媒体97に記録しておき、モデル作成装置の出荷段階、あるいは運用段階等において、適宜上記プログラムが不揮発性記憶装置95に格納されるようモデル作成装置を構成してもよい。なお、この場合、上記プログラムの供給方法は、出荷前の製造段階、あるいは運用段階等において、適当な治具を利用してモデル作成装置内にインストールする方法を採用してもよい。また、上記プログラムの供給方法は、インターネット等の通信回線を介して外部からダウンロードする方法等の一般的な手順を採用してもよい。
【0098】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0099】
(付記1)
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置であって、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定部と、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出部と、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力部と
を備えるモデル作成装置。
【0100】
(付記2)
前記通信状態情報から、除外対象の情報である除外情報を除く除外部
を備え、
前記除外情報は、通信データが通信されていない時間の前記測定値であり、
前記特定部は、前記強相関項目の特定を、前記除外情報が除かれた前記通信状態情報を用いて行う、
付記1に記載のモデル作成装置。
【0101】
(付記3)
前記通信状態情報から、除外対象の情報である除外情報を除く除外部
を備え、
前記通信状態情報は、特定のサービスに関する通信の前記測定値を含み、
前記除外情報は、前記サービスごとにあらかじめ定められた条件を満たす前記測定値であり、
前記特定部は、前記強相関項目の特定を、前記除外情報が除かれた前記通信状態情報を用いて行う、
付記1に記載のモデル作成装置。
【0102】
(付記4)
前記モデルは、
前記強相関項目が複数存在する場合に、前記強相関項目の各々について、前記体感品質を推定し、
さらに、前記強相関項目の各々について推定された前記体感品質に基づいて、総合的な品質評価値である総合スコアを出力する、
付記1から付記3のいずれかに記載のモデル作成装置。
【0103】
(付記5)
前記特定部は、前記強相関項目と前記体感品質情報との間の前記相関の強さに応じて、前記総合スコアの算出のための重み係数を、前記強相関項目の各々に対して算出し、
前記総合スコアは、推定された前記体感品質と前記重み係数との乗算によって前記強相関項目の各々について算出された値を合算することによって算出される、
付記4に記載のモデル作成装置。
【0104】
(付記6)
前記出力部は、前記モデルを用いて前記体感品質を推定する体感品質推定装置に、前記モデルを出力し、
前記体感品質推定装置は、前記モデルを用いて前記体感品質を推定する、
付記1から付記5のいずれかに記載のモデル作成装置。
【0105】
(付記7)
前記抽出条件によって抽出される通信セッションは、当該抽出条件に対応付けられている前記測定項目の前記測定値の変化が体感品質の変化に影響しやすい通信セッションである、
付記1から付記6のいずれかに記載のモデル作成装置。
【0106】
(付記8)
前記測定項目がスループットである場合、
前記抽出条件は、通信されたデータ量が多く、接続時間が長いセッションの前記測定値であることである、
付記7に記載のモデル作成装置。
【0107】
(付記9)
前記測定項目が遅延時間である場合、
前記抽出条件は、送受信されたデータ量が多いセッションの前記測定値であることである、
付記7に記載のモデル作成装置。
【0108】
(付記10)
前記測定項目が再送回数である場合、
前記抽出条件は、送受信されたデータ量が小さいセッションの前記測定値である、
付記7に記載のモデル作成装置。
【0109】
(付記11)
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成システムであって、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定手段と、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出手段と、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力手段と
を備えるモデル作成システム。
【0110】
(付記12)
付記6に記載のモデル作成装置と、
前記体感品質推定装置と
を備える体感品質推定システム。
【0111】
(付記13)
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置のモデル作成方法であって、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定し、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出し、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する、
モデル作成方法。
【0112】
(付記14)
複数の測定項目の各々に対して測定された複数の測定値の情報を含み、一または複数の通信セッションについての通信の状態に関する情報である通信状態情報からユーザの体感品質を推定するモデルを作成するモデル作成装置のモデル作成プログラムであって、
コンピュータに、
前記通信状態情報と、当該通信状態情報に含まれる前記測定値が測定された通信セッションについてのユーザの体感品質に関する情報である体感品質情報とを用いて、前記複数の測定項目のうちで前記体感品質情報との相関が強い測定項目である強相関項目を特定する特定機能と、
前記強相関項目にあらかじめ対応付けられている抽出条件に合致する通信セッションについての前記強相関項目の前記測定値の情報を、前記通信状態情報から、抽出後情報として抽出する抽出機能と、
前記体感品質情報と前記抽出後情報とを学習用データとして用いて、前記モデルを作成し、作成された前記モデルを出力する出力機能と
を実現させるモデル作成プログラム。
【0113】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0114】
10、20 モデル作成装置
11、21 特定部
12、22 抽出部
13、23 出力部
24 除外部
40 体感品質推定装置
50、60 情報収集装置
90 情報処理装置
91 通信インタフェース
92 入出力インタフェース
93 演算装置
94 記憶装置
95 不揮発性記憶装置
96 ドライブ装置
97 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12