(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091099
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】シート着座検出装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240627BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20240627BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240627BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/56
A47C7/74 B
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207549
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一戸 哲
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】白尾 真人
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JC01
3B084JF02
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】部品費、組立加工費等のコストダウンを図りつつ、シートの着座を精度良く検出する。
【解決手段】シート着座検出装置10は、シート11に内蔵された導電性発熱体12Aで構成された第1電極E1と、第1電極E1との間でキャパシタC1を構成する第2電極E2であって、第1電極E1が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、第1電極E1との間に人体Pの一部が入るように配置された第2電極E2と、キャパシタC1の静電容量の変化から、シート11の着座を検出する制御を行う制御部23と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに内蔵された導電体で構成された第1電極と、
前記第1電極との間でキャパシタを構成する第2電極であって、前記第1電極が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、前記第1電極との間に人体の一部が入るように配置された前記第2電極と、
前記キャパシタの静電容量の変化から、前記シートの着座を検出する制御を行う制御部と、
を備えたシート着座検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記キャパシタの静電容量の変化量が閾値以上である場合に、前記シートに人体が着座していると判定し、前記キャパシタの静電容量の変化量が前記閾値未満である場合に、前記シートに人体以外の物体が載置されている、又は、前記シートに何も載置されていないと判定する
請求項1に記載のシート着座検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記キャパシタの静電容量の変化量が第1閾値以上である場合に、前記シートに人体が着座していると判定し、前記キャパシタの静電容量の変化量が前記第1閾値未満でかつ第2閾値以上である場合に、前記シートに人体以外の物体が載置されていると判定し、前記キャパシタの静電容量の変化量が前記第2閾値未満である場合に、前記シートに何も載置されていないと判定する
請求項1に記載のシート着座検出装置。
【請求項4】
前記導電体を前記第1電極として使用するか否かを切り替える切替部を更に備えた
請求項1に記載のシート着座検出装置。
【請求項5】
前記シートは、着座部及び背もたれ部を有し、
前記導電体は、前記着座部及び前記背もたれ部の各々に内蔵された導電性発熱体であり、
前記第1電極は、前記着座部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、
前記第2電極は、前記シートの周囲に設けられ、電気的に接地電位を有する既存の導電体で構成される
請求項1に記載のシート着座検出装置。
【請求項6】
前記シートは、車体の内部に設けられ、
前記既存の導電体は、前記車体の金属部分である
請求項5に記載のシート着座検出装置。
【請求項7】
前記第1電極との間でキャパシタを構成する第3電極を更に備え、
前記第3電極は、前記背もたれ部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、
前記制御部は、前記第1電極と前記第2電極との間で構成されるキャパシタの静電容量、及び、前記第1電極と前記第3電極との間で構成されるキャパシタの静電容量の各々の変化から、前記シートの着座を検出する制御を行う
請求項5に記載のシート着座検出装置。
【請求項8】
前記シートの前方に設けられ、前記第1電極との間でキャパシタを構成する専用の第4電極を更に備え、
前記制御部は、前記第1電極と前記第2電極との間で構成されるキャパシタの静電容量、前記第1電極と前記第3電極との間で構成されるキャパシタの静電容量、及び、前記第1電極と前記第4電極との間で構成されるキャパシタの静電容量の各々の変化から、前記シートの着座を検出する制御を行う
請求項7に記載のシート着座検出装置。
【請求項9】
前記シートは、着座部及び背もたれ部を有し、
前記導電体は、前記着座部及び前記背もたれ部の各々に内蔵された導電性発熱体であり、
前記第1電極は、前記着座部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、
前記第2電極は、前記背もたれ部に内蔵された前記導電性発熱体で構成される
請求項1に記載のシート着座検出装置。
【請求項10】
前記シートは、着座部及び背もたれ部を有し、
前記導電体は、前記着座部及び前記背もたれ部の各々に内蔵された導電性発熱体であり、
前記第1電極は、前記着座部又は前記背もたれ部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、
前記第2電極は、前記シートの前方に設けられた専用の電極で構成される
請求項1に記載のシート着座検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート着座検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに着座しているか否かを判断するため、座面の下部にメンブレンスイッチのような接点機構をもつ検出手段を内蔵し、着座した人の重量で接点が閉じることにより、電気的に着座の有無を検出している。しかし、メンブレンスイッチのような専用部品を用いるため、部品費、組立加工費等のコストアップの要因となる。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、車両シートの着座部に内蔵された2つの電極でキャパシタを構成し、キャパシタの静電容量の変化からシートの着座を検出する車両シート制御装置において、キャパシタを構成する少なくとも1つの電極を車両シートに内蔵された導電性発熱体と兼用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術によれば、上記メンブレンスイッチのような専用部品を用いることなく、部品費、組立加工費等のコストダウンを図ることが可能となる。しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、着座した人の重量で変化するキャパシタの間隔を静電容量の変化として検出するため、人の体圧分布に近い寸法と重量をもった荷物を座面に載置した場合には、着座と誤検出してしまう。
【0006】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、部品費、組立加工費等のコストダウンを図りつつ、シートの着座を精度良く検出することができるシート着座検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係るシート着座検出装置は、シートに内蔵された導電体で構成された第1電極と、前記第1電極との間でキャパシタを構成する第2電極であって、前記第1電極が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、前記第1電極との間に人体の一部が入るように配置された前記第2電極と、前記キャパシタの静電容量の変化から、前記シートの着座を検出する制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
第1態様によれば、部品費、組立加工費等のコストダウンを図りつつ、シートの着座を精度良く検出することができる。
【0009】
第2態様に係るシート着座検出装置は、第1態様に係るシート着座検出装置において、前記制御部が、前記キャパシタの静電容量の変化量が閾値以上である場合に、前記シートに人体が着座していると判定し、前記キャパシタの静電容量の変化量が前記閾値未満である場合に、前記シートに人体以外の物体が載置されている、又は、前記シートに何も載置されていないと判定する。
【0010】
第2態様によれば、人体と、人体以外の物体又は何も載置されていない状態(空席)とを精度良く判定することができる。
【0011】
第3態様に係るシート着座検出装置は、第1態様又は第2態様に係るシート着座検出装置において、前記制御部が、前記キャパシタの静電容量の変化量が第1閾値以上である場合に、前記シートに人体が着座していると判定し、前記キャパシタの静電容量の変化量が前記第1閾値未満でかつ第2閾値以上である場合に、前記シートに人体以外の物体が載置されていると判定し、前記キャパシタの静電容量の変化量が前記第2閾値未満である場合に、前記シートに何も載置されていないと判定する。
【0012】
第3態様によれば、人体、人体以外の物体、及び何も載置されていない状態(空席)を精度良く判定することができる。
【0013】
第4態様に係るシート着座検出装置は、第1態様~第3態様の何れか1態様に係るシート着座検出装置において、前記導電体を前記第1電極として使用するか否かを切り替える切替部を更に備える。
【0014】
第4態様によれば、導電体を第1電極と切り替えて兼用することができる。
【0015】
第5態様に係るシート着座検出装置は、第1態様~第4態様の何れか1態様に係るシート着座検出装置において、前記シートが、着座部及び背もたれ部を有し、前記導電体が、前記着座部及び前記背もたれ部の各々に内蔵された導電性発熱体であり、前記第1電極が、前記着座部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、前記第2電極が、前記シートの周囲に設けられ、電気的に接地電位を有する既存の導電体で構成される。
【0016】
第5態様によれば、導電性発熱体を第1電極、既存の導電体を第2電極として使用することにより、部品費、組立加工費等のコストダウンを図ることができる。
【0017】
第6態様に係るシート着座検出装置は、第5態様に係るシート着座検出装置において、前記シートが、車体の内部に設けられ、前記既存の導電体が、前記車体の金属部分である。
【0018】
第6態様によれば、車体の金属部分を電極として使用することができる。
【0019】
第7態様に係るシート着座検出装置は、第5態様に係るシート着座検出装置において、前記第1電極との間でキャパシタを構成する第3電極を更に備え、前記第3電極が、前記背もたれ部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、前記制御部が、前記第1電極と前記第2電極との間で構成されるキャパシタの静電容量、及び、前記第1電極と前記第3電極との間で構成されるキャパシタの静電容量の各々の変化から、前記シートの着座を検出する制御を行う。
【0020】
第7態様によれば、3つの電極を用いて2つのキャパシタを構成することにより、シートの着座をより高い精度で検出することができる。
【0021】
第8態様に係るシート着座検出装置は、第7態様に係るシート着座検出装置において、前記シートの前方に設けられ、前記第1電極との間でキャパシタを構成する専用の第4電極を更に備え、前記制御部が、前記第1電極と前記第2電極との間で構成されるキャパシタの静電容量、前記第1電極と前記第3電極との間で構成されるキャパシタの静電容量、及び、前記第1電極と前記第4電極との間で構成されるキャパシタの静電容量の各々の変化から、前記シートの着座を検出する制御を行う。
【0022】
第8態様によれば、4つの電極を用いて3つのキャパシタを構成することにより、シートの着座をより高い精度で検出することができる。
【0023】
第9態様に係るシート着座検出装置は、第1態様~第4態様の何れか1態様に係るシート着座検出装置において、前記シートが、着座部及び背もたれ部を有し、前記導電体が、前記着座部及び前記背もたれ部の各々に内蔵された導電性発熱体であり、前記第1電極が、前記着座部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、前記第2電極が、前記背もたれ部に内蔵された前記導電性発熱体で構成される。
【0024】
第9態様によれば、着座部の導電性発熱体を第1電極、背もたれ部の導電性発熱体を第2電極として使用することにより、部品費、組立加工費等のコストダウンを図ることができる。
【0025】
第10態様に係るシート着座検出装置は、第1態様~第4態様の何れか1態様に係るシート着座検出装置において、前記シートが、着座部及び背もたれ部を有し、前記導電体が、前記着座部及び前記背もたれ部の各々に内蔵された導電性発熱体であり、前記第1電極が、前記着座部又は前記背もたれ部に内蔵された前記導電性発熱体で構成され、前記第2電極が、前記シートの前方に設けられた専用の電極で構成される。
【0026】
第10態様によれば、着座部又は背もたれ部の導電性発熱体を第1電極として使用することにより、部品費、組立加工費等のコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、部品費、組立加工費等のコストダウンを図りつつ、シートの着座を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の実施形態に係るシート着座検出装置を含む車両の一例を示す図である。
【
図2】空席時のキャパシタと着座時のキャパシタとの比較例を示す模式図である。
【
図3】第1の実施形態に係るECUの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る制御プログラムによる着座検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係るシート着座検出装置を含む車両の一例を示す図である。
【
図6】第2の実施形態に係る選択部の構成の一例を示す図である。
【
図7】第3の実施形態に係るシート着座検出装置を含む車両の一例を示す図である。
【
図8】第4の実施形態に係るシート着座検出装置を含む車両の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0030】
本実施形態においては、一例として、自動車に搭載されたシートの着座検出を行う場合について説明するが、自動車のシートに限定されるものではない。例えば、鉄道、航空機、映画館、劇場等のシートの着座検出にも適用可能とされ、マッサージチェア、便座の着座検出にも適用可能とされる。
【0031】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るシート着座検出装置10を含む車両100の一例を示す図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る車両100は、シート11と、車体13と、シート着座検出装置10と、を備えている。
【0033】
シート11は、車体13の内部に設けられ、着座部11A及び背もたれ部11Bを有している。着座部11Aは導電性発熱体12Aを内蔵し、背もたれ部11Bは導電性発熱体12Bを内蔵する。導電性発熱体12A、12Bは、導電体の一例である。導電性発熱体12A、12Bは、ヒータとして用いられ、乗員の体を温める機能を有している。導電性発熱体12A、12Bは、例えば、各種の発熱素子、あるいは、導電性微細炭素構造体等を含んで構成されている。具体的に、導電性発熱体12A、12Bは、例えば、ニクロム線、カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube)、又は、カーボンファイバ(Carbon Fiber)を含んで構成されている面状の発熱体である。なお、導電性発熱体12A、12Bは、これらの例に限らず、カーボンピコチューブ(Carbon Pico Tube)、カーボンブラック、グラフェンを含んで構成されてもよい。
【0034】
着座部11Aに内蔵された導電性発熱体12Aは、シート着座検出用の第1電極E1としても使用可能とされる。つまり、導電性発熱体12Aは、ヒータとして使用されると共に、シート着座検出用の電極としても使用される。
【0035】
車体13は、車両100において人や荷物を積載する部分であり、ボディともいう。車体13は、金属部分を含み、電気的に接地電位を有している。この車体13の接地電位のことを、ボディアースとも称する。車体13は、シート11の周囲に設けられ、シート着座検出用の第2電極E2としても使用される。
【0036】
本実施形態に係るシート着座検出装置10は、第1電極E1と、第2電極E2と、電源部20と、切替部21と、検出部22と、制御部23と、を備えている。
【0037】
第1電極E1は、シート11の着座部11Aに内蔵された導電性発熱体12Aで構成される。第1電極E1は、導電性発熱体12Aの電流経路となる複数の端子(図示省略)のうち1つを使用してもよいし、複数を使用してもよい。複数の端子を使用する場合、複数の端子を同時に使用してもよいし、1つずつ順次使用(スキャン)してもよい。
【0038】
第2電極E2は、第1電極E1との間でキャパシタC1を構成する。なお、
図1の例では、説明の便宜上、3ヶ所に構成されたキャパシタとして示しているが、任意の位置にキャパシタが構成される。第2電極E2は、第1電極E1が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、第1電極E1との間に人体P(ここでは乗員)の一部が入るように配置される。
図1の例では、第1電極E1がシート11の着座部11Aに設けられ、第2電極E2がシート11の周囲(ここでは車体13)に設けられている。第2電極E2は、電気的に接地電位を有する既存の導電体で構成される。具体的に、既存の導電体は、例えば、車体13の金属部分である。また、既存の導電体は、シートフレームとしてもよい。
【0039】
制御部23は、電源部20、切替部21、及び検出部22と接続され、これら電源部20、切替部21、及び検出部22の各々を制御するコントローラとして構成される。制御部23は、例えば、車両100に搭載されたECU(Electronic Control Unit)30の一機能として実現される。
【0040】
切替部21は、制御部23からの指示に従って、導電性発熱体12Aを第1電極E1として使用するか否かを切り替える。切替部21は、例えば、乗車時に導電性発熱体12Aを第1電極E1として使用し、着座検出後に導電性発熱体12Aをヒータとして使用するように切り替え可能なスイッチとして構成される。
【0041】
電源部20は、切替部21によりヒータに切り替えられた場合に、制御部23からの指示に従って、導電性発熱体12A及び導電性発熱体12Bの少なくとも一方に電力を供給して発熱させる。
【0042】
検出部22は、切替部21により第1電極E1に切り替えられた場合に、制御部23からの指示に従って、第1電極E1と第2電極E2との間で構成されるキャパシタC1の静電容量の変化を検出する。検出部22は、例えば、キャパシタC1の静電容量の変化を検出可能なセンサとして構成される。
【0043】
制御部23は、検出部22により検出されたキャパシタC1の静電容量の変化から、シート11の着座を検出する制御を行う。具体的に、制御部23は、キャパシタC1の静電容量の変化量が閾値以上である場合に、シート11に人体Pが着座していると判定し、キャパシタC1の静電容量の変化量が閾値未満である場合に、シート11に人体P以外の物体(例えば荷物)が載置されている、又は、シート11に何も載置されていない、つまり、空席と判定する。なお、閾値未満の場合に、人体P以外の物体(例えば荷物)と判定するか、空席と判定するかは予め設定しておけばよい。また、制御部23は、キャパシタC1の静電容量の変化量が第1閾値以上である場合に、シート11に人体Pが着座していると判定し、キャパシタC1の静電容量の変化量が第1閾値未満でかつ第2閾値(<第1閾値)以上である場合に、シート11に人体P以外の物体(例えば荷物)が載置されていると判定し、キャパシタC1の静電容量の変化量が第2閾値未満である場合に、シート11に何も載置されていない、つまり、空席と判定してもよい。閾値、第1閾値、及び第2閾値としては、例えば、実験あるいは過去の知見に基づいて適切な値が設定される。但し、閾値と第1閾値とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
図2は、空席時のキャパシタC1と着座時のキャパシタC1との比較例を示す模式図である。
【0045】
図2に示すように、シート11の着座によって第1電極E1と第2電極E2との間に人体Pの一部が入ることで、物理的にキャパシタC1の間隔は変化しないが、人体Pを誘電体とみなすことができるため、電気的にはキャパシタC1の電極間隔が狭くなることに相当する。このため、着座によってキャパシタC1の静電容量が増加する。
【0046】
また、人体Pでも荷物でも静電容量は変化するが、一般的な荷物の場合、人体Pと比較して比誘電率が小さいため、人体Pと比較して静電容量の変化量が少ないという特性がある。この特性を利用して、上述した第1閾値、第2閾値を用いて人体Pであるか、荷物であるかを精度良く判定することが可能となる。
【0047】
次に、
図3を参照して、制御部23として機能するECU30の具体的な構成について説明する。
【0048】
図3は、第1の実施形態に係るECU30の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
図3に示すように、本実施形態に係るECU30は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、入出力部(I/O)34と、入出力インタフェース(入出力I/F)35と、を備えている。
【0050】
CPU31、ROM32、RAM33、及びI/O34は、バスを介して各々接続されている。I/O34には、入出力I/F35と接続されている。入出力I/F35は、I/O34を介して、CPU31と相互に通信可能とされる。
【0051】
CPU31、ROM32、RAM33、及びI/O34によって制御回路が構成される。制御回路は、ECU30の一部の動作を制御するサブ制御回路として構成されてもよいし、ECU30の全体の動作を制御するメイン制御回路の一部として構成されてもよい。制御回路の各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はIC(Integrated Circuit)チップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御回路の集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0052】
ROM32には、本実施形態に係る制御部23としての機能を実行するための制御プログラム32Aが記憶される。制御プログラム32Aは、例えば、ECU30に予めインストールされていてもよい。制御プログラム32Aは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、ECU30に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0053】
入出力I/F35は、電源部20、切替部21、及び検出部22の各々と接続するためのインタフェースである。
【0054】
本実施形態に係るECU30は、CPU31がROM32に記憶されている制御プログラム32Aを実行することで、制御部23として機能する。
【0055】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係るシート着座検出装置10の作用について説明する。
【0056】
図4は、第1の実施形態に係る制御プログラム32Aによる着座検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御プログラム32Aによる着座検出処理は、ECU30のCPU31が、ROM32に記憶されている制御プログラム32AをRAM33に書き込んで実行することにより、実現される。なお、初期設定において導電性発熱体12Aは第1電極E1としての使用に設定されているものとする。
【0057】
図4のステップS101では、CPU31が、検出部22から、第1電極E1と第2電極E2との間に構成されたキャパシタC1の静電容量の変化量を取得する。
【0058】
ステップS102では、CPU31が、ステップS101で取得された静電容量の変化量が第1閾値以上であるか否かを判定する。静電容量の変化量が第1閾値以上であると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップS103に移行し、静電容量の変化量が第1閾値未満であると判定した場合(否定判定の場合)、ステップS106に移行する。
【0059】
ステップS103では、CPU31が、キャパシタC1に人体Pが挿入された、つまり、シート11に人体Pが着座したと判定する。
【0060】
ステップS104では、CPU31が、切替部21を制御して、導電性発熱体12Aをヒータでの使用に切り替える。ここでは、ヒータの発熱度合いを「強」、「弱」とした場合、ヒータ「強」に切り替える。
【0061】
ステップS105では、CPU31が、例えば、シートベルトリマインダの警告表示、又は警告音の出力等を実行し、本制御プログラム32Aによる着座検出処理を終了する。
【0062】
一方、ステップS106では、CPU31が、ステップS101で取得された静電容量の変化量が第2閾値(<第1閾値)以上であるか否かを判定する。静電容量の変化量が第2閾値以上であると判定した場合(肯定判定の場合)、ステップS107に移行し、静電容量の変化量が第2閾値未満であると判定した場合(否定判定の場合)、ステップS108に移行する。
【0063】
ステップS107では、CPU31が、シート11に荷物等の人体P以外の物体が載置されたと判定し、ステップS104に移行する。ステップS104では、CPU31が、切替部21を制御して、導電性発熱体12Aをヒータでの使用に切り替える。ここでは、ヒータの発熱度合いを「強」、「弱」とした場合、ヒータ「弱」に切り替える。
【0064】
一方、ステップS108では、CPU31が、シート11に何も載置されていない(空席)と判定し、本制御プログラム32Aによる着座検出処理を終了する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、着座検出処理を行うための第1電極及び第2電極として既存の導電性発熱体及び車体の金属部分が使用される。このため、専用の電極を用いる必要がなく、部品費、組立加工費等のコストダウンを図ることができる。
【0066】
また、第1電極と第2電極との間に人体が入ることで変化する静電容量の変化量を検出するため、人体の体圧分布に近い寸法と重量をもった荷物が座面に載置された場合であっても着座と誤検出することがなく、着座を精度良く検出することができる。
【0067】
また、シート内に電極を追加する必要がないため、シート内の部品数を削減することができ、着座時の異物感を抑制することができる。
【0068】
また、シート内に電極を追加する必要がないため、ヒータ使用時における温度調整の効果を向上させることができる。
【0069】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、3以上の電極によって複数のキャパシタを構成し、複数のキャパシタの静電容量の変化からシートの着座を検出する形態について説明する。
【0070】
図5は、第2の実施形態に係るシート着座検出装置10Aを含む車両100の一例を示す図である。
【0071】
図5に示すように、本実施形態に係るシート着座検出装置10Aは、第1電極E1と、第2電極E2と、第3電極E3と、第4電極E4と、電源部20と、切替部21と、検出部22と、制御部23と、選択部24と、を備えている。なお、上記第1の実施形態で説明したシート着座検出装置10が備える構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する。
【0072】
第3電極E3は、第1電極E1が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、第1電極E1との間に人体Pの一部が入るように配置される。第3電極E3は、第1電極E1との間でキャパシタC2を構成する。第3電極E3は、背もたれ部11Bに内蔵された導電性発熱体12Bで構成されている。なお、切替部21は、制御部23からの指示に従って、導電性発熱体12Bを第3電極E3として使用するか否かを切り替える。
【0073】
第4電極E4は、第3電極E3と同様に、第1電極E1が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、第1電極E1との間に人体Pの一部が入るように配置される。第4電極E4は、第1電極E1との間でキャパシタC3を構成する。第4電極E4は、シート11の前方に設けられた専用の電極で構成されている。
図5の例の場合、第4電極E4は、シート11の前方に配置されたダッシュボードの下部に沿って設けられている。
【0074】
選択部24は、制御部23と接続され、制御部23により制御される。選択部24は、第1電極E1、第2電極E2、第3電極E3、及び第4電極E4を切り替えて、2つの電極のペアを選択する。
【0075】
図6は、第2の実施形態に係る選択部24の構成の一例を示す図である。
【0076】
図6に示すように、選択部24は、複数の端子S1~S4、S11、S12を含む。端子S1は第2電極E2と接続され、端子S2は第4電極E4と接続される。端子S3は第1電極E1と接続され、端子S4は第3電極E3と接続される。端子S11は、検出部22と接続され、端子S1~S4の各々と選択的に接続される。端子S12は、検出部22と接続され、端子S1~S4の各々と選択的に接続される。
【0077】
端子S11と端子S3とが接続され、端子S12と端子S1とが接続された場合、第1電極E1と第2電極E2のペアが選択される。この場合、検出部22によりキャパシタC1の静電容量の変化が検出される。同様に、2つの電極のペアを選択することによって、検出部22によりキャパシタC2あるいはキャパシタC2、C3の静電容量の変化が検出される。
【0078】
制御部23は、検出部22から取得した、キャパシタC1の静電容量及びキャパシタC2の静電容量の各々の変化から、シートの着座を検出する制御を行う。また、制御部23は、検出部22から取得した、キャパシタC1の静電容量、キャパシタC2の静電容量、及び、キャパシタC3の静電容量の各々の変化から、シートの着座を検出するようにしてもよい。このときの判定基準は、必要な検出精度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、全てのキャパシタの静電容量の変化量が閾値以上である場合に、シートの着座と判定してもよい。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、3以上の電極によって複数のキャパシタを構成し、複数のキャパシタの静電容量の変化からシートの着座を検出するため、着座の検出精度をより向上させることができる。
【0080】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、キャパシタを構成する2つの電極のペアを導電性発熱体で構成する形態について説明する。
【0081】
図7は、第3の実施形態に係るシート着座検出装置10Bを含む車両100の一例を示す図である。
【0082】
図7に示すように、本実施形態に係るシート着座検出装置10Bは、第1電極E1と、第2電極E2と、電源部20と、切替部21と、検出部22と、制御部23と、を備えている。なお、上記第1の実施形態で説明したシート着座検出装置10が備える構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する。
【0083】
第1電極E1は、シート11の着座部11Aに内蔵された導電性発熱体12Aで構成される。なお、切替部21は、制御部23からの指示に従って、導電性発熱体12Aを第1電極E1として使用するか否かを切り替える。
【0084】
第2電極E2は、第1電極E1が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、第1電極E1との間に人体Pの一部が入るように配置される。第2電極E2は、第1電極E1との間でキャパシタC2を構成する。第2電極E2は、シート11の背もたれ部11Bに内蔵された導電性発熱体12Bで構成されている。なお、切替部21は、制御部23からの指示に従って、導電性発熱体12Bを第2電極E2として使用するか否かを切り替える。
【0085】
検出部22は、第1電極E1と第2電極E2との間で構成されるキャパシタC2の静電容量の変化を検出する。
【0086】
制御部23は、検出部22により検出されたキャパシタC2の静電容量の変化から、シート11の着座を検出する制御を行う。
【0087】
以上説明したように、本実施形態によれば、着座検出処理を行うための第1電極及び第2電極として既存の導電性発熱体が使用される。このため、専用の電極を用いる必要がなく、部品費、組立加工費等のコストダウンを図ることができる。
【0088】
また、第1電極と第2電極との間に人体が入ることで変化する静電容量の変化量を検出するため、人体の体圧分布に近い寸法と重量をもった荷物が座面に載置された場合であっても着座と誤検出することがなく、着座を精度良く検出することができる。
【0089】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、キャパシタを構成する2つの電極のペアのうち、一方を導電性発熱体で構成し、他方を専用の電極で構成する形態について説明する。
【0090】
図8は、第4の実施形態に係るシート着座検出装置10Cを含む車両100の一例を示す図である。
【0091】
図8に示すように、本実施形態に係るシート着座検出装置10Cは、第1電極E1と、第2電極E2と、電源部20と、切替部21と、検出部22と、制御部23と、を備えている。なお、上記第1の実施形態で説明したシート着座検出装置10が備える構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する。
【0092】
第1電極E1は、シート11の着座部11Aに内蔵された導電性発熱体12Aで構成される。なお、第1電極E1は、シート11の背もたれ部11Bに内蔵された導電性発熱体12Bで構成されてもよい。なお、切替部21は、制御部23からの指示に従って、導電性発熱体12A又は導電性発熱体12Bを第1電極E1として使用するか否かを切り替える。
【0093】
第2電極E2は、第1電極E1が設けられた部位とは異なる部位に設けられ、第1電極E1との間に人体Pの一部が入るように配置される。第2電極E2は、第1電極E1との間でキャパシタC3を構成する。第2電極E2は、シート11の前方に設けられた専用の電極で構成されている。
図8の例の場合、第2電極E2は、シート11の前方に配置されたダッシュボードの下部に沿って設けられている。
【0094】
検出部22は、第1電極E1と第2電極E2との間で構成されるキャパシタC3の静電容量の変化を検出する。
【0095】
制御部23は、検出部22により検出されたキャパシタC3の静電容量の変化から、シート11の着座を検出する制御を行う。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、着座検出処理を行うための第1電極として既存の導電性発熱体が使用される。このため、部品費、組立加工費等のコストダウンを図ることができる。
【0097】
また、第1電極と第2電極との間に人体が入ることで変化する静電容量の変化量を検出するため、人体の体圧分布に近い寸法と重量をもった荷物が座面に載置された場合であっても着座と誤検出することがなく、着座を精度良く検出することができる。
【0098】
その他、上記実施形態で説明したシート着座検出装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0099】
また、上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10、10A、10B、10C シート着座検出装置
11 シート
11A 着座部
11B 背もたれ部
12A、12B 導電性発熱体
13 車体
20 電源部
21 切替部
22 検出部
23 制御部
24 選択部
30 ECU
100 車両