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特開2024-91100設計支援装置、設計支援方法、及び設計支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091100
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法、及び設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240627BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240627BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
E04H9/02 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207551
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 弘誓
(72)【発明者】
【氏名】田中 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】犬山 隆博
(72)【発明者】
【氏名】天野 結
(72)【発明者】
【氏名】増田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕司
(72)【発明者】
【氏名】二木 秀也
(72)【発明者】
【氏名】渡井 一樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 沢馬
(72)【発明者】
【氏名】飯野 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】前田 周作
(72)【発明者】
【氏名】石山 達士
(72)【発明者】
【氏名】小島 一高
(72)【発明者】
【氏名】高山 一斗
(72)【発明者】
【氏名】黒川 雄太
【テーマコード(参考)】
2E139
5B146
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB01
2E139BA02
2E139BA14
5B146AA04
5B146DC05
5B146DE16
5B146DG02
5B146DG07
5B146DJ14
5B146EA01
5B146EC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ダンパーの配置可能性とコストを考慮して、各柱及び各梁の剛性と、ダンパーの配置の設計を支援する設計支援方法、装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】設計支援方法は、柱梁架構を含む設計対象の建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性及び建物のダンパー配置可能量を受け付け、外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出し、ダンパー配置可能量と必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定し、各柱及び各梁の剛性と、必要なダンパー量とに基づいて、柱梁架構及びダンパーに関するコストを算出し、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、ダンパー量算出、ダンパー配置可能性判定及びコスト算出を繰り返す。そして、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての算出結果を可視化する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付ける入力部と、
外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する前記建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出するダンパー量算出部と、
前記ダンパー配置可能量と前記必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定するダンパー配置可能性判定部と、
各柱及び各梁の剛性と、前記必要なダンパー量とに基づいて、前記柱梁架構及び前記ダンパーに関するコストを算出するコスト算出部と、
各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させる反復部と、
各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、前記ダンパー配置可能性判定部による判定結果、及び前記コスト算出部による算出結果を可視化する可視化部と、
を含む設計支援装置。
【請求項2】
前記反復部は、
剛性倍率毎に、前記剛性倍率で各柱及び各梁の剛性を変更して、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させる請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記剛性倍率は、予め定められた階層のグループ毎に設定される前記剛性倍率である請求項2記載の設計支援装置。
【請求項4】
入力部が、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付け、
ダンパー量算出部が、外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する前記建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出し、
ダンパー配置可能性判定部が、前記ダンパー配置可能量と前記必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定し、
コスト算出部が、各柱及び各梁の剛性と、前記必要なダンパー量とに基づいて、前記柱梁架構及び前記ダンパーに関するコストを算出し、
反復部が、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させ、
可視化部が、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、前記ダンパー配置可能性判定部による判定結果、及び前記コスト算出部による算出結果を可視化する
設計支援方法。
【請求項5】
コンピュータを、
設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付ける入力部、
外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する前記建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出するダンパー量算出部、
前記ダンパー配置可能量と前記必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定するダンパー配置可能性判定部、
各柱及び各梁の剛性と、前記必要なダンパー量とに基づいて、前記柱梁架構及び前記ダンパーに関するコストを算出するコスト算出部、
各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させる反復部、及び
各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、前記ダンパー配置可能性判定部による判定結果、及び前記コスト算出部による算出結果を可視化する可視化部
として機能させるための設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置、設計支援方法、及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物への制振ダンパーの配置量を決定する配置量決定支援システムが知られている(例えば、特許文献1)。この配置量決定支援システムでは、最適化システムが、応答近似モデルを使用することで、多層の建造物への制振ダンパーの各層への配置量についての最適解を得ることが可能である。時刻歴応答解析システムは、上記最適解を受け取り、当該最適解について動的応答解析を行い、応答解析モデルを生成する。制御システムは、時刻歴応答解析システムと最適化システムとの間の上記のデータの受け渡しを制御し、且つ、近似モデルと応答解析モデルとの間の誤差を計算して誤差が許容範囲内のものか否か判定し、当該誤差が許容外のものであった場合、最適化システムに再計算を行わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-108618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1には、ダンパーの配置可能性とコストを考慮して、各柱及び各梁の剛性と、ダンパーの配置の設計を支援することについては記載されていない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、ダンパーの配置可能性とコストを考慮して、各柱及び各梁の剛性と、ダンパーの配置の設計を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る設計支援装置は、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付ける入力部と、外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する前記建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出するダンパー量算出部と、前記ダンパー配置可能量と前記必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定するダンパー配置可能性判定部と、各柱及び各梁の剛性と、前記必要なダンパー量とに基づいて、前記柱梁架構及び前記ダンパーに関するコストを算出するコスト算出部と、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させる反復部と、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、前記ダンパー配置可能性判定部による判定結果、及び前記コスト算出部による算出結果を可視化する可視化部と、を含んで構成されている。
【0007】
本発明に係る設計支援装置によれば、入力部が、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付ける。ダンパー量算出部が、外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する前記建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出する。
【0008】
そして、ダンパー配置可能性判定部が、前記ダンパー配置可能量と前記必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定する。コスト算出部が、各柱及び各梁の剛性と、前記必要なダンパー量とに基づいて、前記柱梁架構及び前記ダンパーに関するコストを算出する。
【0009】
そして、反復部が、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させる。可視化部が、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、前記ダンパー配置可能性判定部による判定結果、及び前記コスト算出部による算出結果を可視化する。
【0010】
このように、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、必要なダンパー量の算出、ダンパーの配置可能性の判定、及びコストの算出を繰り返し、結果を可視化することにより、ダンパーの配置可能性とコストを考慮して、各柱及び各梁の剛性と、ダンパーの配置の設計を支援することができる。
【0011】
上記の発明に係る設計支援装置において、前記反復部は、剛性倍率毎に、前記剛性倍率で各柱及び各梁の剛性を変更して、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させることができる。
【0012】
上記の発明に係る設計支援装置において、前記剛性倍率は、予め定められた階層のグループ毎に設定される前記剛性倍率である、とすることができる。
【0013】
本発明に係る設計支援方法は、入力部が、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付け、ダンパー量算出部が、外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する前記建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出し、ダンパー配置可能性判定部が、前記ダンパー配置可能量と前記必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定し、コスト算出部が、各柱及び各梁の剛性と、前記必要なダンパー量とに基づいて、前記柱梁架構及び前記ダンパーに関するコストを算出し、反復部が、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させ、可視化部が、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、前記ダンパー配置可能性判定部による判定結果、及び前記コスト算出部による算出結果を可視化する。
【0014】
本発明に係る設計支援プログラムは、コンピュータを、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付ける入力部、外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する前記建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出するダンパー量算出部、前記ダンパー配置可能量と前記必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定するダンパー配置可能性判定部、各柱及び各梁の剛性と、前記必要なダンパー量とに基づいて、前記柱梁架構及び前記ダンパーに関するコストを算出するコスト算出部、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、前記ダンパー量算出部による算出、前記ダンパー配置可能性判定部による判定、及び前記コスト算出部による算出を繰り返させる反復部、及び各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、前記ダンパー配置可能性判定部による判定結果、及び前記コスト算出部による算出結果を可視化する可視化部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の設計支援装置、設計支援方法、及び設計支援プログラムによれば、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、必要なダンパー量の算出、ダンパーの配置可能性の判定、及びコストの算出を繰り返し、結果を可視化することにより、ダンパーの配置可能性とコストを考慮して、各柱及び各梁の剛性と、ダンパーの配置の設計を支援することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る設計支援装置を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る設計支援装置を示す機能ブロック図である。
図3】グループ毎に剛性倍率を変更する例を示す図である。
図4】コストとダンパー配置可能性をプロットした結果の例を示す図である。
図5】選択したプロットにおける階層毎の剛性及びダンパー量を表示する例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る設計支援装置の設計支援処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
<本発明の実施の形態の設計支援装置の構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る設計支援装置100は、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。CPU12は、コンピュータの一例である。
【0019】
CPU12、GPU14は、各種プログラムを実行する。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する設計支援処理ルーチンを実行するための設計支援プログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。設計支援プログラムは、コンピュータを各機能部として機能させるための設計支援プログラムの一例である。
【0020】
本実施の形態における設計支援装置100を、設計支援処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、図2に示すようになる。設計支援装置100は、入力部10、演算部20、及び出力部50を備えている。
【0021】
入力部10は、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び前記建物のダンパー配置可能量を受け付ける。
【0022】
具体的には、設計担当者の操作により、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデル、各柱及び各梁の剛性、及び建物のダンパー配置可能量を受け付ける。
【0023】
例えば、設計担当者の操作により、長期荷重に対して建物モデルの柱梁架構を配置させて、主架構情報(階層、重量、剛性、階高、数量)を設計する。そして、設計担当者の操作により、建築計画からダンパー配置可能な位置及び数を設定し、ダンパー配置可能な位置及び数から算出されるダンパー配置可能量を受け付ける。
【0024】
一例として、建築図より各層でダンパー配置可能構面を設定し、ダンパー配置可能構面毎に、履歴系ダンパーの容量(ブレース軸耐力)及び粘性系ダンパーの容量(最大減衰力)を設定する。そして、配置可能構面数×ダンパー容量より求められる、各層のダンパー配置可能量を受け付ける。
【0025】
また、設計担当者の操作により、剛性パラメータ(剛性倍率、階層のグルーピング)、許容できる変形量であるクライテリア(目標層間変位角)、及び地震波を受け付ける。
【0026】
演算部20は、ダンパー量算出部22、ダンパー配置可能性判定部24、コスト算出部26、反復部28、及び可視化部30を備えている。
【0027】
ダンパー量算出部22は、外力に対して、各柱及び各梁の剛性を有する建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、必要なダンパー量を算出する。
【0028】
具体的には、地震波に対して、各柱及び各梁の剛性を有する建物モデルの応答を解析した結果に基づいて、クライテリアを満たすのに必要なダンパー量を算出する。
【0029】
より具体的には、設定された各柱及び各梁の剛性、仮定されたダンパー量及び配置の建物モデルで応答解析を行い、応答結果から設計者自身で過去の経験や類似物件を参考に試行錯誤的に必要なダンパー量や配置を決定することを、クライテリアを満たすまで繰り返す方法や、ダンパー量に応じた応答低減効果の予想式を用いた方法がある。これにより、クライテリアを満たすのに必要なダンパー量を算出する。
【0030】
ダンパー配置可能性判定部24は、ダンパー配置可能量と、算出された必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定する。
【0031】
具体的には、以下の式により、ダンパーの配置可能性を判定する。
【0032】
ダンパーの配置可能性=必要なダンパー量/ダンパー配置可能量
【0033】
ダンパーの配置可能性が1.0以下であれば、現実的に配置可能なダンパー量であることを示す。
【0034】
コスト算出部26は、各柱及び各梁の剛性と、必要なダンパー量とに基づいて、柱梁架構及びダンパーに関するコストを算出する。
【0035】
一例として、柱梁架構に関するコストを、以下のように算出する。
【0036】
まず、受け付けた主架構躯体数量を入力とする。そして、主架構の剛性倍率(α倍)に応じて、以下の式で算出されるβの値を算出し、梁数量をβ倍する。ここで、層剛性を上げるとき、柱断面ではなく、梁断面を上げると仮定する。
【0037】
β={(1+(α-1)/2)1/3+(1+(α-1)/2)}/2
【0038】
例えば、剛性を1.5倍する場合には、以下のようにβの値が算出される。
【0039】
β={(1+(1.5-1)/2)1/3+(1+(1.5-1)/2)}/2
={(1.25)1/3+1.25)}/2=1.16
【0040】
そして、梁数量/2×β倍×鉄骨単価より、各層の主架構コスト増分を算出する。
【0041】
また、必要なダンパー量(構面数)×ダンパー単体コストより、ダンパーに関するコストを算出する。
【0042】
そして、柱梁架構に関するコストと、ダンパーに関するコストとの和を算出する。
【0043】
反復部28は、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、ダンパー量算出部22による算出、ダンパー配置可能性判定部24による判定、及びコスト算出部26による算出を繰り返させる。
【0044】
具体的には、反復部28は、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの変更では、剛性倍率を変更することにより行う。すわなち、剛性倍率毎に、当該剛性倍率で各柱及び各梁の剛性を変更して、ダンパー量算出部22による算出、ダンパー配置可能性判定部24による判定、及びコスト算出部26による算出を繰り返させる。
【0045】
剛性倍率は、予め定められた階層のグループ毎に設定される剛性倍率である(図3)。図3では、1階、2階、最上階層の剛性は固定とし、それ以外の階層を、3つのグループa,b,cに分け、3つのグループa,b,cの各々に対して剛性倍率を設定する例を示している。
【0046】
より具体的には、長期荷重に対して設計した主架構(トリムモデル)の剛性を受け付けているものとする。また、剛性を変化させる階のグループを設定する。トリムモデルの剛性を基本として、グループごとの剛性倍率を設定する。
【0047】
例えば、以下の表1に示すように、階の3つのグループa,b,cに対し、剛性倍率の組み合わせを設定する。
【0048】
【表1】
【0049】
可視化部30は、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、ダンパー配置可能性判定部24による判定結果、及びコスト算出部26による算出結果を可視化する画面を生成し、出力部50により表示する(図4)。図4では、縦軸を、トータルコスト増分とし、横軸を、ダンパー配置可能性としたグラフにおいて、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、ダンパー配置可能性判定部24による判定結果、及びコスト算出部26による算出結果をプロットした画像を表示する例を示している。
【0050】
ユーザが、可視化した画面のプロットを選択すると、階層ごとの剛性及びダンパー量を参照することができる(図5)。図5では、選択したプロットにおける階層毎の剛性及びダンパー量を表示する例を示している。
【0051】
これにより、設計者による優良解(図4の点線の丸)の選定を支援することができる。すなわち、コストが安く、すわなち、最適な主架構剛性バランスであって、配置可能で現実的な数のダンパー量を、多数のプロットの中から選択することが可能である。
【0052】
<設計支援装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る設計支援装置100の動作について説明する。
【0053】
まず、入力部10によって、設計対象の建物であって、柱梁架構を含む建物をモデル化した建物モデルの主架構情報(階層、重量、剛性、階高、数量)、各柱及び各梁の剛性、建物のダンパー配置可能量、剛性パラメータ(剛性倍率、階層のグルーピング)、許容できる変形量であるクライテリア(目標層間変位角)、地震波を入力として受け付けると、設計支援装置100によって、図6に示す設計支援処理ルーチンが実行される。なお、設計支援処理は、設計支援方法の一例である。
【0054】
まず、ステップS100において、設計支援装置100は、主架構情報(階層、重量、剛性、階高、数量)、各柱及び各梁の剛性、建物のダンパー配置可能量、剛性パラメータ(剛性倍率、階層のグルーピング)、許容できる変形量であるクライテリア(目標層間変位角)、地震波を取得する。
【0055】
ステップS102では、ダンパー量算出部22は、地震波に対して、各柱及び各梁の剛性を有する建物モデルの応答を解析した結果を取得する。
【0056】
具体的には、設定された各柱及び各梁の剛性、仮定されたダンパー量・配置の建物モデルで応答解析を行い、応答結果から設計者自身で過去の経験や、類似物件を参考に試行錯誤的に必要なダンパー量や配置を決定することを、クライテリアを満たすまで繰り返す方法や、ダンパー量に応じた応答低減効果の予想式を用いた方法がある。
【0057】
ステップS104では、ダンパー量算出部22は、クライテリアを満たすのに必要なダンパー量を算出する。
【0058】
ステップS106では、ダンパー配置可能性判定部24は、ダンパー配置可能量と、算出された必要なダンパー量とに基づいて、ダンパーの配置可能性を判定する。
【0059】
ステップS108では、コスト算出部26は、各柱及び各梁の剛性と、必要なダンパー量とに基づいて、柱梁架構及びダンパーに関するコストを算出する。
【0060】
ステップS110では、反復部28は、各柱及び各梁の剛性の全ての組み合わせについて、上記ステップS102~S108の処理を実行したか否かを判定する。上記ステップS102~S108の処理を実行していない、各柱及び各梁の剛性の組み合わせが存在する場合には、上記ステップS102へ戻り、各柱及び各梁の剛性の当該組み合わせについて、上記ステップS102~S108の処理を実行する。一方、各柱及び各梁の剛性の全ての組み合わせについて、上記ステップS102~S108の処理を実行した場合には、ステップS112へ移行する。
【0061】
ステップS112では、可視化部30は、各柱及び各梁の剛性の組み合わせの各々についての、ダンパー配置可能性判定部24による判定結果、及びコスト算出部26による算出結果を可視化する画面を生成し、出力部50により表示する。そして、設計者は、表示された画面を参照し、コストが安く、配置可能で現実的な数のダンパー量である優良解を選定する。そして、設計者は、選定した最適解の各階層のダンパー量を再現するダンパー配置を設定した上で、応答解析による検証を行い、クライテリアを満足するか否かを確認する。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る設計支援装置によれば、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更しながら、必要なダンパー量の算出、ダンパーの配置可能性の判定、及びコストの算出を繰り返し、結果を可視化することにより、ダンパーの配置可能性とコストを考慮して、各柱及び各梁の剛性と、ダンパーの配置の設計を支援することができる。
【0063】
また、自動的に、各柱及び各梁の剛性の組み合わせを変更して、ダンパーの配置を検討することができ、また、クライテリアを満足するように算出された必要なダンパー量の配置可能性を検証することができる。また、主架構とダンパーコストを含めたトータルコストで、ダンパーの配置を比較することができる。
【0064】
また、ダンパーが設置可能で、安価な架構剛性とダンパー量を提示することができ、設計初期段階で進むべき方向を示唆することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0066】
例えば、上述した実施形態では、地震に対する建物の応答を解析する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、地震以外の外力に対する建物の応答を解析するようにしてもよい。
【0067】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 入力部
20 演算部
22 ダンパー量算出部
24 ダンパー配置可能性判定部
26 コスト算出部
28 反復部
30 可視化部
50 出力部
100 設計支援装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6