(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091103
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】スクリュヘッド、逆流防止リング、スクリュおよび射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/52 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B29C45/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207555
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JD01
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN15
4F206JQ26
4F206JQ27
(57)【要約】
【課題】成形材料の劣化を抑制する技術を提供する。
【解決手段】スクリュは、軸部、スクリュヘッド、逆流防止リングを有する。スクリュヘッドは、逆流防止リングよりも先端側で当該逆流防止リングに対向する基端面を有する。逆流防止リングは、基端面に対向する先端面を有する。基端面または先端面は、成形材料の流入に伴ってスクリュヘッドと逆流防止リングとの間に圧力を発生させる圧力発生部を有し、かつ圧力発生部で発生した圧力で基端面が先端面を基端側に押す力をかけるように、基端面と先端面とが平行に対向する部分を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部、スクリュヘッド、前記軸部に組み付けられる逆流防止リング、を有するスクリュであって、
前記スクリュヘッドは、前記逆流防止リングよりも先端側で当該逆流防止リングに対向する基端面を有し、
前記逆流防止リングは、前記基端面に対向する先端面を有し、
前記基端面または前記先端面は、
成形材料の流入に伴って前記スクリュヘッドと前記逆流防止リングとの間に圧力を発生させる圧力発生部を有し、
かつ前記圧力発生部で発生した圧力で前記基端面が前記先端面を基端側に押す力をかけるように、前記基端面と前記先端面とが平行に対向する部分を有する、
スクリュ。
【請求項2】
軸部と、前記軸部の軸方向と直交する方向に突出する突出部と、を有するスクリュヘッドであって、
前記突出部は、前記軸部に組み付けられる逆流防止リングよりも先端側に位置して、前記逆流防止リングの先端面に対向する基端面を有し、
前記基端面は、
成形材料の流入に伴って前記逆流防止リングとの間に圧力を発生させる圧力発生部と、
前記圧力発生部で発生した圧力で当該基端面が前記先端面を基端側に押す力をかけるように、前記先端面に平行に対向する部分と、を有する、
スクリュヘッド。
【請求項3】
前記圧力発生部は、前記逆流防止リングとの間に隙間空間を形成する壁面であり、
前記隙間空間は、前記スクリュヘッドの回転方向に向かって開口している、
請求項2に記載のスクリュヘッド。
【請求項4】
前記壁面は、前記平行に対向する部分から前記開口に向かって、前記隙間空間の幅を徐々に広げる方向に傾斜している、
請求項3に記載のスクリュヘッド。
【請求項5】
前記平行に対向する部分に対する前記壁面の傾斜角は、1.5°~7°の範囲内に設定されている、
請求項4に記載のスクリュヘッド。
【請求項6】
前記突出部は、前記軸部から放射状に突出する複数のフィン部を有し、
前記圧力発生部および前記平行に対向する部分は、前記複数のフィン部の各々に設けられている、
請求項2に記載のスクリュヘッド。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載のスクリュヘッドを有するスクリュ。
【請求項8】
請求項7に記載のスクリュを備える射出成形機。
【請求項9】
スクリュヘッドの軸部に組み付けられ、前記スクリュヘッドの前記軸部の軸方向と直交する方向に突出する突出部よりも基端側に位置する逆流防止リングであって、
前記突出部の基端面に対向する先端面を有し、
前記先端面は、
成形材料の流入に伴って前記基端面との間に圧力を発生させる圧力発生部と、
前記圧力発生部で発生した圧力で前記基端面が当該先端面を基端側に押す力をかけるように、前記基端面に平行に対向する部分と、を有する、
逆流防止リング。
【請求項10】
前記先端面は、前記逆流防止リングの周方向に沿って、前記圧力発生部と前記平行に対向する部分を交互に備える、
請求項9に記載の逆流防止リング。
【請求項11】
請求項9または10に記載の逆流防止リングを有するスクリュ。
【請求項12】
請求項11に記載のスクリュを備える射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクリュヘッド、逆流防止リング、スクリュおよび射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機に設けられるスクリュの先端に、スクリュヘッド、逆流防止リング(チェックリング)およびシールリング(弁座)を備えた構造が開示されている。この種のスクリュは、通常、スクリュの回転に連れてスクリュヘッドおよびシールリングが回転する一方で、逆流防止リングが回転しないように構成される。
【0003】
そのため、スクリュの回転時には、スクリュヘッドと逆流防止リングとの間に摺動が生じる。スクリュヘッドと逆流防止リングとの間の隙間が小さいほど、この摺動に伴って成形材料の発熱量(せん断発熱量)が増大することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、成形材料に大きな発熱量が生じると、成形材料が劣化して成形不良が生じる可能性がある。特に、成形材料として粘度が高い樹脂を適用した場合には、逆流防止リングをスクリュヘッドに押しつける方向の力が増大して、スクリュヘッドおよび逆流防止リングの接触により摩耗が生じることがある。この場合、スクリュヘッドや逆流防止リングの摩耗に伴う摩耗金属粉が、異物として成形品に混入するおそれもある。
【0006】
本開示は、成形材料の劣化を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、軸部、スクリュヘッド、前記軸部に組み付けられる逆流防止リング、を有するスクリュであって、前記スクリュヘッドは、前記逆流防止リングよりも先端側で当該逆流防止リングに対向する基端面を有し、前記逆流防止リングは、前記基端面に対向する先端面を有し、前記基端面または前記先端面は、成形材料の流入に伴って前記スクリュヘッドと前記逆流防止リングとの間に圧力を発生させる圧力発生部を有し、かつ前記圧力発生部で発生した圧力で前記基端面が前記先端面を基端側に押す力をかけるように、前記基端面と前記先端面とが平行に対向する部分を有する、スクリュが提供される。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、成形材料の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】スクリュの先端の構成を示す側面断面図である。
【
図4】
図4(A)は、
図3のIVA-IVA線の断面図である。
図4(B)は、
図3の矢印IVB方向から突出部を見た平面図である。
図4(C)は、別構成例に係るフィン部を見た平面図である。
【
図5】フィン部と逆流防止リングとの関係を概略的に示す平面図である。
【
図6】スクリュの回転時に逆流防止リングにかかる力を示す図である。
【
図7】第1変形例に係るスクリュの先端の構成を示す側面断面図である。
【
図8】第2変形例に係るスクリュの突出部と逆流防止リングとの関係を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸負方向側を操作側と呼び、Y軸正方向側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0015】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0016】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0017】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0018】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0019】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0020】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0021】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0022】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0023】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0024】
なお、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0025】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0026】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0027】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0028】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0029】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0030】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0031】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0032】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0033】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0034】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0035】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0036】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0037】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0038】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0039】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0040】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0041】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0042】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0043】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0046】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0047】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動部として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0048】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0049】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0050】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120と相対移動可能に配置される。エジェクタロッド210の先端部は、可動金型820の進退構造部825と接触する。
【0051】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0052】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で後退位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の後退位置まで後退させる。
【0053】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0054】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0055】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0056】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。
【0057】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに第1加熱器313と第1温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、第1温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第1加熱器313を制御する。
【0058】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、第2加熱器323と第2温度検出器324とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が第2加熱器323を制御する。
【0059】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0060】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0062】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0064】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0065】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0066】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0067】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0068】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0069】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0070】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0071】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0072】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0073】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0074】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0075】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0076】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0077】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0078】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0079】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0080】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0081】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0082】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0083】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0084】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0085】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0086】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0087】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0088】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0089】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0090】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0091】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0092】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0093】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0094】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0095】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0096】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0097】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0098】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0099】
(スクリュの詳細)
次に、スクリュ330の先端部分の構成について、
図3および
図4を参照しながら説明する。
図3は、スクリュ330の先端部分の縦断面図である。
図4(A)は、
図3のIVA-IVA線の断面図である。
図4(B)は、
図3の矢印IVB方向から突出部335を見た平面図である。
図4(C)は、変形例に係るフィン部336Aを見た平面図である。
【0100】
スクリュ330は、逆流防止リング331、シールリング332およびスクリュヘッド333を先端部分に備える。逆流防止リング331は、スクリュヘッド333の外側において自由状態で(相対移動可能および相対回転可能に)配置されている。その一方で、シールリング332は、スクリュヘッド333の外周面に固定されている。スクリュヘッド333は、スクリュ330において螺旋状のフライトを有するフライトスクリュ(不図示)に連結されている。
【0101】
このため、シールリング332およびスクリュヘッド333は、フライトスクリュと一体に回転し、またフライトスクリュと一体に進退する。その一方で、逆流防止リング331は、フライトスクリュ、シールリング332およびスクリュヘッド333と共に回転しない非共回りタイプに構成されている。
【0102】
逆流防止リング331は、円環状に形成され、スクリュヘッド333が挿通される貫通孔331hを内側に有する。貫通孔331hは、逆流防止リング331の内壁によって先端方向に向かって段階的に窄まっている。例えば、逆流防止リング331の内壁は、基端側から先端側に向かって、第1テーパ壁331a、第2テーパ壁331bおよび平行壁331cを、この順に備える。逆流防止リング331は、スクリュ330の回転時に、スクリュヘッド333と内壁との間で所定の隙間を保つように構成される。ここで、テーパとはスクリュ330の軸方向に沿ってスクリュの径方向に壁が広がる、または、狭まる部位のことを言う。
【0103】
逆流防止リング331は、スクリュヘッド333との組付け状態で、基端側のシールリング332と、後述するスクリュヘッド333の突出部335の間に配置される。また、逆流防止リング331は、シールリング332に接触する閉塞位置と、突出部335の基端面に近接する開放位置との間において、移動自在となっている。
【0104】
また、本実施形態に係る逆流防止リング331は、スクリュヘッド333の軸方向に沿った長さLrを可及的に短く設定している。具体的には、逆流防止リング331の長さLrは、当該逆流防止リング331の直径(半径方向の外径)に対して1/2以下にするとよく、より好ましくは強度を勘案して逆流防止リング331の直径1/5~1/2以下に設定するとよい。
【0105】
シールリング332は、射出工程(スクリュ330の前進)時に、逆流防止リング331と接触することで、シールリング332よりも先端側を閉塞する。シールリング332の外形は、計量工程(スクリュ330の回転)時に成形材料を先端側に流通させる一方で、スクリュ330の前進時に逆流防止リング331とシールし合う適宜の形状に形成されている。
【0106】
例えば、シールリング332の先端面332aは、逆流防止リング331の第1テーパ壁331aと平行な先細り形状(錐形状)に形成されている。これにより、スクリュ330の前進時に、シールリング332の先端面332aは、逆流防止リング331の第1テーパ壁331aと面接触して、シール形態を良好に構築することができる。
【0107】
スクリュヘッド333は、スクリュ330の軸方向に沿って延在する軸部334と、軸部334の外周面に設けられて軸方向と直交する方向に突出する突出部335と、を有する。
【0108】
軸部334は、基端側において適宜の連結手段によって、スクリュフライトに連結されている。軸部334は、軸方向の部位に応じて外形および太さを任意に設計してよい。例えば、軸部334は、シールリング332が装着される被装着部334aよりも先端側にフランジ部334fを有する。軸部334においてフランジ部334fの外側、およびフランジ部334fの先端側に連なるネック部334nの外側に、逆流防止リング331が組み付けられる。突出部335は、このネック部334nよりも先端側に設けられている。
【0109】
フランジ部334fおよびネック部334nの間には、テーパ部334tが設けられている。フランジ部334f、テーパ部334t、ネック部334nは、計量工程時に逆流防止リング331の貫通孔331hと協働して、成形材料が流通する流路を形成する。すなわち、計量工程では、逆流防止リング331の第1テーパ壁331aとシールリング332の先端面332aとの間の流路、逆流防止リング331の第2テーパ面332bと軸部334のフランジ部334fおよび湾曲面との間の流路、逆流防止リング331の平行壁331cと軸部334のネック部334nとの間の流路によって、スクリュヘッド333の先端側に成形材料をスムーズに流通させることができる。
【0110】
本実施形態に係るスクリュヘッド333の突出部335は、軸部334から放射状に突出する複数(3つ)のフィン部336によって構成されている。なお、フィン部336の数は、特に限定されないことは勿論である。
【0111】
各フィン部336は、軸部334に対して所定の高さで起立しており、軸方向に沿って一定の幅で延在している。各フィン部336の幅は、軸部334の直径よりも小さい一方で、軸部334の半径よりも大きい(
図4(A)も参照)。例えば、各フィン部336の幅は、軸部334の直径に対して30%~95%程度の範囲に設定されているとよい。例えば、フィン部336の数が多い(4つ~6つ)場合は、各フィン部336の幅は、軸部334の直径よりも小さくなる。
【0112】
各フィン部336の先端側は、先端方向かつ中心に向かって傾斜している。軸部334の先端の外面は、各フィン部336の傾斜にそのまま連続する錐形状となっている。また、スクリュヘッド333の最先端は、R状に湾曲形成されている。
【0113】
図4(A)に示すように、各フィン部336は、軸部334の周方向(回転方向)に沿って等間隔(120°間隔)で設けられる。スクリュヘッド333は、隣り合うフィン部336同士の間および軸部334の外周面によって、成形材料を流通させる複数(3つ)の流通空間338を形成している。
【0114】
突出部335を構成する各フィン部336は、軸部334に組み付けられる逆流防止リング331よりも先端側に位置していることで、逆流防止リング331に対向する基端面337を有する。
【0115】
基端面337は、逆流防止リング331に対向する平坦面337aと、この平坦面337aの隣接位置で逆流防止リング331に対して傾いた面を構成している傾斜面337bと、を備える。また、基端面337において軸部334に連結する根元部分は、各フィン部336からネック部334nの間を滑らかに連続させた湾曲面337cに形成されている。
【0116】
平坦面337aと傾斜面337bは、フィン部336の突出方向(軸部334の法線方向)に対して直交する方向(フィン部336の幅方向)に並ぶように設けられている。言い換えれば、平坦面337aと傾斜面337bは、スクリュヘッド333の回転方向に沿って相互に隣接するように配置されている。平坦面337aと傾斜面337bは、複数(3つ)のフィン部336の各々に設けられている。
【0117】
平坦面337aは、軸部334の軸方向と直交する方向に対して平行な面に形成されており、突出部335の基端面337と逆流防止リング331の先端面331sとが平行に対向する部分を構成している。つまり、平坦面337aは、逆流防止リング331の平坦状の先端面331sに対して、相互に平行に対向している。平坦面337aは、
図4(A)に示すように突出部335を基端方向から見た場合に、フィン部336の突出方向に長辺を有する略長方形状に形成されている。この平坦面337aは、フィン部336の突出端面および隣接する側面の各々に直角に連なっている。
【0118】
傾斜面337bは、平坦面337aに対して傾斜していることで、逆流防止リング331との間に隙間空間339を形成する壁面である。傾斜面337bは、平坦面337aとの境界から幅方向外側に向かって、先端側に傾いている。また、傾斜面337bは、
図4(A)に示すように突出部335を基端方向から見た場合に、平坦面337aと同様に、フィン部336の突出方向に長辺を有する略長方形状に形成されている。この傾斜面337bは、フィン部336の突出端面に対して直角に連なると共に、フィン部336の隣接する側面に対して鈍角に連なる(
図4(B)も参照)。
【0119】
傾斜面337bの傾斜に応じて、隙間空間339は、スクリュヘッド333の回転方向に向かって開口している。傾斜面337bは、スクリュヘッド333の回転時における成形材料の隙間空間339への流入に伴って、逆流防止リング331を基端方向に押す力を発生させる圧力発生部として機能する。この圧力発生部の機能については、後に詳述する。
【0120】
傾斜面337bは、平坦面337aとの境界(基端面337の幅方向中心)からフィン部336の側面に向かって、隙間空間339の幅を徐々に広げるように傾斜している。すなわち、フィン部336の平面視(
図4(B)参照)で、隙間空間339は、逆流防止リング331の先端面331s(
図5も参照)および傾斜面337bにより、直角三角形のくさび形状に形成される。隙間空間339は、スクリュヘッド333の回転方向の先端に、平坦面337aと逆流防止リング331の先端面331sとの隙間の幅よりも大きな幅の開口339aを有する。
【0121】
平坦面337aに対する傾斜面337bの傾斜角θtは、例えば、1.5°~7°の範囲内に設定されることが好ましい。傾斜角θtが7°よりも大きい場合は、隙間空間339に入り込んだ成形材料が、隙間空間339の頂角側(平坦面337a側)に進行し難くなり、充分な押圧力が得られない可能性がある。逆に傾斜角θtが1.5°よりも小さい場合には、隙間空間339自体に成形材料が入り難くなる可能性がある。
【0122】
また、平坦面337aと傾斜面337bの位置は、スクリュヘッド333の回転方向に応じて設定される。例えば、
図4(A)に示すように突出部335を基端方向から見た際に、スクリュヘッド333の回転方向が反時計回りである場合には、平坦面337aが右側に配置され、傾斜面337bが左側に配置される。逆に、
図4(A)に示すように突出部335を基端方向から見た際に、スクリュヘッド333の回転方向が時計回りである場合には、平坦面337aが左側に配置され、傾斜面337bが右側に配置される。
【0123】
本実施形態おける平坦面337aと傾斜面337bの境界は、フィン部336の幅方向中心線に設定されている。すなわち、フィン部336の幅方向における平坦面337aと傾斜面337bの割合は、5:5となっている。ただし、フィン部336の幅方向における平坦面337aと傾斜面337bの割合は、これに限定されず、2:8~8:2の範囲(基端面337の幅における傾斜面337bの比率が20%~80%の範囲)に設定されてもよい。
【0124】
傾斜面337bの比率が20%よりも小さい場合には、隙間空間339に入り込む成形材料が少なくなり、充分な押圧力が生じないおそれがある。一方、傾斜面337bの比率が80%よりも大きい場合には、平坦面337aが少なくなって、フィン部336が摩耗した場合に、圧力発生部としての効果が得られなくなる可能性が高まる。
【0125】
本実施形態に係る射出成形機10のスクリュ330(スクリュヘッド333)は、基本的には以上のように構成され、以下その作用効果について説明する。
【0126】
図5は、フィン部336と逆流防止リング331との関係を概略的に示す平面図である。計量工程において、スクリュヘッド333のフィン部336は、軸部334(
図4参照)の軸周りを回転することで、例えば、
図5中の下側に向かって移動する。その一方で、逆流防止リング331は、スクリュヘッド333に対して供回りせずに停止している。ただし、逆流防止リング331は、スクリュヘッド333に対して自由状態になっているので、成形材料の流動等の影響によって多少回転することが可能である。
【0127】
スクリュヘッド333の回転において、フィン部336の基端面337は、傾斜面337b側から成形材料が入り込むようになる。傾斜面337bは、フィン部336の側面から径方向内側(平坦面337a側)に向かって基端方向に傾斜しており、フィン部336の移動に伴って、隙間空間339の開口339aから隙間空間339内に多量の成形材料を導くことができる。
【0128】
隙間空間339に流入した成形材料は、傾斜面337bの傾斜に応じてフィン部336の幅方向中心側に移動していく。フィン部336の幅方向中心側に向かって傾斜面337bと逆流防止リング331との間隔が狭くなることで、隙間空間339は成形材料により圧力が上昇する。そして、成形材料は、隙間空間339の頂角から平坦面337aと逆流防止リング331の先端面331sとの隙間に流入する。隙間空間339の間隔が狭まるに連れて増大した成形増量の圧力により、基端面337は、逆流防止リング331を基端方向に押す力をかけることができる。この逆流防止リング331を基端方向に押す力は、レイノルズの潤滑理論によって算出できる。
【0129】
以上の基端面337における成形材料の流動に伴って生じる力は、
図6に示すように、逆流防止リング331を先端方向に押す押圧力Fに対向する反発力Pとして働く。すなわち、計量工程においてスクリュ330を回転した際には、成形材料がスクリュ330の周囲を通って先端方向に移動する。この成形材料は、シールリング332の外側を移動して、逆流防止リング331の基端面に接触しながら、逆流防止リング331の貫通孔331hに流入する。これにより、逆流防止リング331には先端方向に押す押圧力Fがかかる。
【0130】
貫通孔331hに流入した成形材料は、逆流防止リング331内を通過して、逆流防止リング331よりも先端側において各フィン部336の間の流通空間338に流出する。そして、この成形材料が、スクリュヘッド333の回転に伴って、フィン部336の基端面337に形成された隙間空間339(
図5参照)に流入することで、逆流防止リング331を基端方向に押す反発力Pを生じさせる。
【0131】
逆流防止リング331の先端面331sと突出部335の基端面337とが近い第1間隔において、反発力Pは押圧力Fよりも充分に大きい。逆に、逆流防止リング331の先端面331sと突出部335の基端面337とが第1間隔よりも離れた第2間隔において、反発力Pは押圧力Fよりも小さくなる。この第2間隔は、逆流防止リング331の基端面がシールリング332の先端面332aに接触しない位置である。
【0132】
すなわち、傾斜面337bを有する基端面337は、スクリュ330の回転時に、反発力Pにより、逆流防止リング331との隙間を増大させる。逆流防止リング331は、押圧力Fと反発力Pとが均衡する位置で保持される。このため、スクリュ330は、突出部335(各フィン部336)と、シールリング332との両方に逆流防止リング331を接触させない状態で、計量工程におけるスクリュ330の回転を継続することができる。
【0133】
以上のように、スクリュ330は、突出部335の基端面337に平坦面337aおよび傾斜面337bを有することで、逆流防止リング331との隙間を増大させることが可能となる。隙間量が大きくなることにより、スクリュ330の先端部分での樹脂材料の発熱量(せん断発熱量)が低下する。その結果、成形材料の劣化を抑制することができると共に、摩耗に伴う摩耗金属粉の混入を低減でき、成形不良を大幅に抑制することが可能となる。
【0134】
また、スクリュヘッド333は、基端面337において、傾斜面337bと共に平坦面337aを有することで、成形材料が流通空間338に少ない等の状況下で逆流防止リング331が各フィン部336に接触したとしても、フィン部336の破損を抑制できる。これにより、基端面337に形成した傾斜面337bが早期に削れる等の不都合を抑制でき、傾斜面337bを有する構成でもスクリュヘッド333の耐久性を高めることができる。
【0135】
なお、本開示の射出成形機10、スクリュ330およびスクリュヘッド333は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、基端面337は、圧力発生部を傾斜面337bによって形成する構成に限定されない。一例として、圧力発生部は、逆流防止リング331の先端面331sの平坦面または突出部335の基端面337の平坦面に対して低い段差からなる段差面により構成されてもよい。この段差面によって形成された隙間空間339に成形材料が流入しても圧力を高めて、逆流防止リング331を押す反発力Pを得ることができる。
【0136】
また、
図4(C)に示す別構成例に係るフィン部336Aのように、基端面337は、一方の角部に丸角337rを備え、この丸角337rによって隙間空間339を構成してもよい。例えば、丸角337rは、基端面337の他方の角部(丸角)よりも大きな曲率半径を有するように形成されるとよい。この場合でも、丸角337rは、流入した成形材料の圧力を増大させることができる。
【0137】
また例えば、突出部335は、複数のフィン部336を有する構成に限らない。一例として、突出部335は、先端方向に向かって先細りとなる円錐形状を呈し、かつ螺旋状の溝部を表面に有する構成でもよい。この場合でも、円錐形状の突出部335の基端面337に、平坦面337aおよび傾斜面337bを適用することで、上記と同様の効果が得られる。
【0138】
図7は、第1変形例に係るスクリュ330Aを示す側面断面図である。
図7に示す断面視で、スクリュ330Aは、突出部335Aの各フィン部336において傾斜した傾斜基端面337iを備える一方で、逆流防止リング331Aに先端面331sに傾斜先端面331iを備える。例えば、傾斜基端面337iおよび傾斜先端面331iは、成形材料の射出時に、相互に平行となるように形成される。すなわち、上記のスクリュ330は、基端面337と軸部に直交する平坦面337aが逆流防止リング331に当たる場合がある。これに対し、スクリュ330Aは、軸方向に直交していない傾斜基端面337i、傾斜先端面331iを備えることで、突出部335と逆流防止リング331との接触する機会を大幅に低減できる。そして、スクリュ330Aは、傾斜基端面337iを有する構成でも、上記の実施形態と同様に、平坦面337aと傾斜面337bを採用することができる。したがって、スクリュ330Aも、上記のスクリュ330と同様の効果を得ることができる。
【0139】
図8は、第2変形例に係るスクリュ330Bの突出部335Bと逆流防止リング331Bとの関係を概略的に示す平面図である。
図7に示すように、スクリュ330Bは、逆流防止リング331Bの先端面370に、平坦面371と凹部372とを備える。これに対し、スクリュ330Aにおいて突出部335Bの各フィン部336の基端面337は、平坦状(平坦面)に形成されている。
【0140】
逆流防止リング331Bの凹部372は、逆流防止リング331Bの外周面を径方向から見た平面視で、直角三角形のくさび形状に形成されている。凹部372は、平坦面371に連なると共に平坦面371から傾斜角θtだけ傾斜した傾斜面(圧力発生部)373と、平坦面371に直交する直交面374とを有する。このように形成された凹部372は、上記の実施形態における隙間空間339と同様の作用効果を得ることができる。
【0141】
また、逆流防止リング331Bは、先端面370の周方向に沿って複数の凹部372を等間隔に配置している。つまり、逆流防止リング331Bの先端面370は、平坦面371と、傾斜面373とを交互に繰り返した形状を呈している。すなわち、平坦面371は、基端面337と平行に対向する部分を構成している。これにより、逆流防止リング331Bは、スクリュヘッド333の回転に伴って、先端面370の全体において均等的に反発力Pを受けることが可能になる。
【0142】
すなわち、スクリュ330Bの各フィン部336が回転すると、逆流防止リング331Bよりも先端側に移動した成形材料が、凹部372に入り込む。そして凹部372内において成形材料は、傾斜面373の傾斜に応じて凹部372内の頂角側に移動していく。フィン部336の基端面337と逆流防止リング331Bの傾斜面373との間隔が狭くなることで、凹部372内は成形材料により圧力が上昇する。そして、圧力が高められた成形材料により、逆流防止リング331Bには、基端方向に押される反発力Pがかかるようになる。
【0143】
この結果、逆流防止リング331Bは、スクリュヘッド333Bの回転時に、突出部335Bに対して隙間が増大することになり、成形材料に生じる発熱量を抑制できる。これにより、射出成形機10は、成形材料の劣化や劣化による成形不良を抑制することができる。
【0144】
今回開示された実施形態に係る射出成形機10、スクリュ330、スクリュヘッド333は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0145】
10 射出成形機
330、330A スクリュ
331、331A 逆流防止リング
333、333A スクリュヘッド
334 軸部
335、335A 突出部
337 基端面
337a 平坦面(平坦部)
337b 傾斜面(圧力発生部)