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特開2024-91110レジスト用樹脂組成物、レジスト膜の製造方法、パターン化されたレジスト膜、及びドライフィルム
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  • 特開-レジスト用樹脂組成物、レジスト膜の製造方法、パターン化されたレジスト膜、及びドライフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091110
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レジスト用樹脂組成物、レジスト膜の製造方法、パターン化されたレジスト膜、及びドライフィルム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20240627BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240627BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G03F7/023 501
G03F7/004 512
C08F20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207565
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 裕
【テーマコード(参考)】
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AF05P
2H225AM13P
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM25P
2H225AM32P
2H225AM39P
2H225AM66P
2H225AM80P
2H225AM86P
2H225AN39P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
4J100AB02P
4J100AB02S
4J100AB02T
4J100AJ02Q
4J100AJ02R
4J100AL03Q
4J100AL03R
4J100AL04P
4J100AL04Q
4J100AL04R
4J100AL05P
4J100AL05Q
4J100AL05R
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100BC43Q
4J100BC43R
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100DA29
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】塗膜において光が照射された部分の現像性、及び光が照射されていない部分の耐現像液性を向上でき、かつ塗膜が耐熱性及び柔軟性を有しうるレジスト用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】レジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)と、を含有する。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、ラジカル重合性化合物(a1)の重合体(A1)を含む。ラジカル重合性化合物(a1)は、芳香環を有する化合物(a11)を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)と、を含有し、
前記アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、ラジカル重合性化合物(a1)の重合体(A1)を含み、
前記ラジカル重合性化合物(a1)は、芳香環を有する化合物(a11)を含む、
レジスト用樹脂組成物。
【請求項2】
前記芳香環を有する化合物(a11)は、スチレン類、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸m-フェノキシベンジル、及び芳香族マレイミド類からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、
請求項1に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する前記芳香環を有する化合物(a11)の含有量は、10質量%以上である、
請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物(a1)は、炭素数6以上18以下の炭化水素基を有する化合物(a12)を更に含む、
請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する前記化合物(a12)の含有量は、10質量%以上である、
請求項4に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、8,000以上50,000以下である、
請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の酸価は、100mgKOH/g以上である、
請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂組成物。
【請求項8】
基材に、請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂組成物を塗布して樹脂層を作製する塗布工程と、
前記樹脂層を部分的に露光する露光工程と、
前記樹脂層の露光された部分を除去する現像工程と、
を含む、
レジスト膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂組成物を含有する、
パターン化されたレジスト膜。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂組成物を含有する、
ドライフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レジスト用樹脂組成物、レジスト膜の製造方法、パターン化されたレジスト膜、及びドライフィルムに関する。詳しくは、本開示は、ポジ型のレジスト用樹脂組成物、パターン化されたレジスト膜の製造方法、レジスト用樹脂組成物を含有するパターン化されたレジスト膜、及びレジスト用樹脂組成物を含有するドライフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路、液晶表示素子、回路形成用基板のパターニング等に利用される画像形成方法として、回路パターンを保護するレジスト(以下、「レジストパターン」という)をマスクとして用いて金属層のエッチングを行ったり、レジストパターンをメッキ用の鋳型として用いてめっきを行ったりする方法が知られている。
【0003】
レジスト及びレジストパターンを形成するための樹脂組成物には、ネガ型とポジ型とがある。ネガ型のレジスト用の樹脂組成物では、樹脂組成物から塗膜を作製し、塗膜を露光し、現像することで塗膜における未露光部が除去され、露光部が硬化し残存することでレジスト膜(レジスト層)として機能する。
【0004】
一方、ポジ型のレジスト用の樹脂組成物では、樹脂組成物から塗膜を作製し、塗膜を露光し、現像することで塗膜における露光部が除去され、未露光部が残存することでレジスト膜(レジスト層)として機能する。
【0005】
ポジ型の感光性樹脂組成物には、露光、現像処理後に基板にレジスト膜を作製した面とは反対側の面のデバイスホール部に裏止め剤をコーティングし、加熱する場合がある。この場合、レジストパターンが変形したり、レジストパターンのエッジ部分において丸みが生じたりすることがあるため、レジストパターン形状を維持するためには塗膜に高い耐熱性が求められる。
【0006】
例えば、特許文献1には、ポジ型のレジスト用の樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂及びキノンジアジド基を含む感光剤を含有する感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性樹脂がアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位と、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含むアクリル系樹脂であり、特定の構造を有する(下記式で表される)フェノール性化合物を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【0007】
【化1】
【0008】
また、例えば特許文献2には、特定の構造を有する(下記式で表される)化合物とフェノール類とを必須成分とするノボラック型フェノール樹脂、及びキノンジアジド感光剤を含有するポジ型の放射線感応性レジスト組成物が開示されている。
【0009】
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3848653号公報
【特許文献2】特開2009-86194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の目的は、塗膜において光が照射された部分の現像性、及び光が照射されていない部分の耐現像液性を向上でき、かつ塗膜が耐熱性及び柔軟性を有しうるレジスト用樹脂組成物、レジスト膜の製造方法、パターン化されたレジスト膜、及びドライフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係るレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)とを含有する。前記アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、ラジカル重合性化合物(a1)の重合体(A1)を含む。前記ラジカル重合性化合物(a1)は、芳香環を有する化合物(a11)を含む。
【0013】
本開示の一態様に係るレジスト膜の製造方法は、塗布工程と、露光工程と、現像工程と、を含む。前記塗布工程では、基材に、前記レジスト用樹脂組成物を塗布して樹脂層を作製する。前記露光工程では、前記樹脂層を部分的に露光する。前記現像工程では、前記樹脂層の露光された部分を除去する。
【0014】
本開示の一態様に係るパターン化されたレジスト膜は、前記レジスト用樹脂組成物を含有する。
【0015】
本開示の一態様に係るドライフィルムは、前記レジスト用樹脂組成物を含有する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、塗膜において光が照射された部分の現像性、及び光が照射されていない部分の耐現像液性を向上でき、かつ塗膜が耐熱性及び柔軟性を有しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の一形態に係るレジスト用樹脂組成物から、基材上に塗膜を形成した状態の例を示す概略の断面図である。
図2図2Aは、本開示の一形態に係るレジスト用樹脂組成物から作製した塗膜を用いた回路形成用基板における樹脂層を露光する工程の例を示す概略の断面図である。図2Bは、上記の回路形成用基板において露光した後の状態の例を示す概略の断面図である。図2Cは、上記の回路形成用基板において現像する工程の例を示す概略の断面図である。図2Dは、上記の回路形成用基板においてエッチングする工程の例を示す断面図である。
図3図3Aは、本開示の他の一形態に係るレジスト用樹脂組成物から作製した塗膜を用いた回路形成用基板の他の例を示す概略の断面図である。図3Bは、図3Aの回路形成用基板において保護膜を形成した回路形成用基板の概略の断面図である。図3Cは、図3Bの回路形成用基板をエッチングする工程の例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。以下の実施形態は、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
【0019】
1.概要
まず、本開示のレジスト用樹脂組成物に至った経緯について説明する。
【0020】
ポジ型のレジスト用樹脂組成物から塗膜を作製し、この塗膜をアルカリ溶液で現像、露光、解像するには、塗膜の耐熱性、塗膜の露光部における現像性、及び塗膜の未露光部における耐現像液性が求められる。
【0021】
発明者らは、アルカリ可溶性のアクリル樹脂を配合した感光性樹脂組成物から塗膜を形成し、この塗膜をポジ型のレジスト膜として利用する研究を重ねてきた。そこで、発明者らが研究開発を通じて独自に得た知見によると、上記の感光性樹脂組成物から作製した塗膜をパターン形成用のマスクを介して露光し、アルカリ溶液で現像すると、露光した部分(露光部分)の一部が残留したり、露光していない部分(未露光部分)の塗膜が薄くなる膜減りが生じうることがわかった。さらに、発明者らの独自の調査によれば、アルカリ可溶性のノボラック樹脂を用いると、樹脂組成物から作製される塗膜の柔軟性が損なわれる場合があることがわかった。また、塗膜の柔軟性が低いと、基材上に作製した塗膜において、ロール to ロール装置等で製造等するにあたり、塗膜に欠けやクラック等を生じるといった問題もあった。
【0022】
そして、従来のアルカリ可溶性のアクリル樹脂、又はアルカリ可溶性のノボラック樹脂を含有するポジ型のレジスト用樹脂組成物は、この樹脂組成物から塗膜を作製し、露光後にアルカリ性水溶液で現像すると、露光部には現像残渣が生じ、現像性が低下すること、未露光部の塗膜がアルカリ性水溶液により溶解し耐現像液性が低下すること、またこのようなポジ型のレジストは耐熱性が低く、現像後に加熱加工するにあたり、レジストパターンが熱で変形する不良が生じることなどといった問題があることもわかった。
【0023】
アルカリ可溶性のノボラック樹脂は、未露光部における耐現像液性を向上させうる。一方、アルカリ可溶性のアクリル樹脂は、露光部における現像性を向上させうる。しかし、ノボラック樹脂とアクリル樹脂との分子構造の違いや、その剛直性、極性等の違いにより、相溶性や溶解性に差異が生じることで、レジスト用樹脂組成物から作製した塗膜を露光してから、現像するにあたり、露光部の塗膜が残存することがあった。これにより、塗膜の未露光部における耐現像液性と露光部における現像性との向上の両立は難しいことがあった。
【0024】
そこで、発明者らは、上記問題を解決すべく、すなわち、耐熱性、塗膜の露光部の現像性、未露光部の耐現像液性と、塗膜の柔軟性とを両立させるべく、鋭意研究の結果、本開示のレジスト用樹脂組成物を完成した。
【0025】
本実施形態に係るレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)と、を含有する。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、ラジカル重合性化合物(a1)の重合体(A1)を含む。ラジカル重合性化合物(a1)は、芳香環を有する化合物(a11)を含む。本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、上記構成を備えるため、塗膜において光が照射された部分の現像性、及び光が照射されていない部分の耐現像液性を向上でき、かつ塗膜が耐熱性及び柔軟性を有する。本実施形態のレジスト用樹脂組成物が上記の特性を有する理由は、正確には明らかとされていないが、以下の理由によると推察される。なお、本開示において、「露光部」とは、塗膜をマスク等を介して選択的に光が照射され露光された部分をいい、「未露光部」とは、塗膜において光が照射されず露光されなかった部分をいう。露光部は、現像処理により溶解しうる部分でもある。
【0026】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)における重合体(A1)を得るためのモノマーとして、芳香環を有する化合物(a11)を含むことでレジスト用樹脂組成物の塗膜における未露光部の耐現像液性を高めることができる。これにより、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜、ドライフィルム、パターン化されたレジスト膜の信頼性を確保できる。また、本実施形態におけるレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)における重合体(A1)を得るためのモノマーとして、芳香環を有する化合物(a11)を含むことで、従来のアルカリ可溶性のノボラック樹脂を配合する場合に比べて、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の柔軟性を向上させうる。
【0027】
なお、キノンジアジド基含有化合物(B)は、レジスト用樹脂組成物の塗膜において露光部のアルカリ可溶性を高めることができる。このため、キノンジアジド基含有化合物(B)は、露光時の露光部の感光性を高め、かつ現像時の露光部の現像性の向上に寄与しうる。
【0028】
このように、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、特にポジ型のレジスト膜を作製するために好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、パターン化されたレジスト膜を作製しやすい。本開示において、「パターン化された」とは、露光後に現像されることで所定のレジストパターンが形成されていることをいう。なお、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、前記用途に限らず、適宜の感光性の材料、例えばエッチングレジスト、めっきレジスト等として利用可能である。詳細は後述する。
【0029】
2.詳細
レジスト用樹脂組成物に含まれうる成分ついて、更に詳しく説明する。なお、本開示において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」とのうち少なくとも一方を意味する。例えば(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方である。
【0030】
[レジスト用樹脂組成物]
レジスト用樹脂組成物は、上述のとおり、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)とを含有する。
【0031】
(アルカリ可溶性アクリル樹脂)
本実施形態のアルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、アルカリ可溶性を有するアクリル樹脂である。本開示において、「アルカリ可溶性」とは、アルカリ性の水溶液に溶解することをいう。そして、アルカリ可溶性であることは、濃度約1%、25℃の水酸化ナトリウム水溶液に厚み1μmの乾燥塗膜を浸漬し、揺動した後、目視で乾燥塗膜が残存していないことを観察することにより確認することができる。また、本開示において「アクリル樹脂」とは、分子構造中に(メタ)アクリロイル基由来の構造を少なくとも1つ有する重合体(樹脂)である。
【0032】
本実施形態のアルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、ラジカル重合性化合物(a1)の重合体(A1)を含む。さらに、本実施形態では、ラジカル重合性化合物(a1)は、芳香環を有する化合物(a11)を含む。すなわち、重合体(A1)は、芳香環を有する化合物(a11)由来の構造(骨格)を有しうる。これにより、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜に高い耐現像液性を付与しうる。さらに、この場合、従来のアルカリ可溶性のノボラック樹脂からレジスト用の樹脂組成物を調製し、かつそのレジスト用の樹脂組成物から作製する塗膜に比べて、塗膜の柔軟性が向上しうる。
【0033】
ラジカル重合性化合物(a1)は、適宜のラジカル反応性を有する化合物であってよく、例えばラジカル重合性化合物(a1)は、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物である。
【0034】
芳香環を有する化合物(a11)は、分子内に少なくとも1つの芳香環を有し、かつ分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物である。このため、重合体(A1)は、芳香環を有する化合物(a11)由来の部分構造を有しうる。
【0035】
芳香環を有する化合物(a11)は、スチレン類、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸m-フェノキシベンジル、及び芳香族マレイミド類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の耐現像液性をより向上させることができる。芳香環を有する化合物(a11)は、スチレン類を含むことがより好ましい。
【0036】
本開示におけるスチレン類は、スチレン骨格を少なくとも1つ有する化合物であり、例えばスチレンの芳香環上の5つの水素のうち1以上が水素以外の置換基で置換されていてもよいし、ビニル基のα位又はβ位の水素がメチル基等アルキル基等の置換基で置換されていてもよい。スチレン類は、例えばスチレン、p-メチルスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-4-ヒドロキシスチレン、及びβ-メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含む。
【0037】
本開示における芳香族マレイミド類は、分子内に少なくとも1つの芳香環を有し、かつ分子内に少なくとも1つのマレイミド基を有する化合物である。芳香族マレイミド類としては、例えばN,N’-(4,4’-メチレンジフェニレン)ジマレイミド、N-フェニルマレイミド、3-マレイミド安息香酸N-スクシンイミジル、N-ベンジルマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4,4-ビスマレイミドジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含む。
【0038】
なお、芳香環を有する化合物(a11)は、上述した化合物には限られない。
【0039】
ラジカル重合性化合物(a1)は、炭素数6以上18以下の炭化水素基を有する化合物(a12)(以下、「炭化水素基含有化合物(a12)」ともいう。)を含むことが好ましい。この場合、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の疎水性をより向上させうる。これにより、レジスト用樹脂組成物が感光された場合の未露光部分の耐現像液性をより高めることができる。また、この場合、アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)を低めうる。このため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の柔軟性をより高めやすい。これにより、レジスト用樹脂組成物をフレキシブル基板におけるレジスト膜として形成した回路形成用基板をロール加工しても、塗膜に欠けやクラック等をより生じにくくしやすい。
【0040】
炭化水素基含有化合物(a12)は、分子内に少なくとも1つの炭素数6以上18以下の炭化水素基を有し、かつ分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物である。ここでいう、「炭素数6以上18以下の炭化水素基」とは、直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基であり、芳香環は含まれない。例えば、炭化水素基含有化合物(a12)における炭化水素基には、直鎖又は分岐鎖アルキル基が含まれる。炭化水素基含有化合物(a12)は、例えば、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘプチルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。炭化水素基含有化合物(a12)における炭素数は、8以上であることが好ましく、炭素数は、10以上であることがより好ましい。なお、本開示では、分子内に少なくとも1つの芳香環を有し、かつ分子内に少なくとも1つの炭素数6以上18以下の炭化水素基を有する化合物は、芳香環を有する化合物(a1)に分類されるが、炭素数6以上18以下の炭化水素基を有するため、耐現像液性をより向上させながら、より高い柔軟性を確保しやすい。
【0041】
ラジカル重合性化合物(a1)は、上述の芳香環を有する化合物(a11)、及び炭化水素基含有化合物(a12)以外の化合物(以下、化合物(a13)ともいう。)を含んでもよい。
【0042】
化合物(a13)は、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体等のラジカル重合性化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの炭化水素基の炭素数が5以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸ジエステル類;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;(メタ)アクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含みうる。
【0043】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、末端にスチレン類に由来する構造を有していてもよい。この場合、レジスト用樹脂組成物に疎水性を付与しうるため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の未露光部の耐現像液性を更に高めうる。なお、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)が末端にスチレン類に由来する構造を有するには、例えば、連鎖移動剤であるα-メチルスチレンダイマー用いて重合する場合等が挙げられるが、これに限られない。
【0044】
ラジカル重合性化合物(a1)は、例えばプレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0045】
なお、ラジカル重合性化合物(a1)は、上記で示した化合物に限定されない。
【0046】
重合体(A1)は、ラジカル重合性化合物(a11)と化合物(a13)との共重合体、ラジカル重合性化合物(a12)と化合物(a13)との共重合体、ラジカル重合性化合物(a11)と炭化水素基含有化合物(a12)との共重合体、ラジカル重合性化合物(a11)と炭化水素基含有化合物(a12)と化合物(a13)の共重合体を含みうる。また、重合体(A1)は、ラジカル重合性化合物(a11)由来の構造を含む重合体と、炭化水素基含有化合物(a12)由来の構造を含む重合体との両方を含んでもよい。上述のとおり、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、分子構造中に(メタ)アクリロイル基由来の構造を有するが、もちろん重合体(A1)が(メタ)アクリロイル基由来の構造を少なくとも1つ有していてもよい。
【0047】
ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する芳香環を有する化合物(a11)の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の耐現像液性をより向上させることができる。前記の芳香環を有する化合物(a11)の含有量は、15質量%以上であればより好ましく、20質量%以上であれば更に好ましい。ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する芳香環を有する化合物(a11)の含有量の上限は、特に制限されないが、例えば80質量%以下である。本開示において、「ラジカル重合性化合物(a1)全量」とは、重合体(A)においてラジカル重合性化合物(a1)として含まれうる成分の合計量をいう。
【0048】
ラジカル重合性化合物(a1)が炭化水素基含有化合物(a12)を含む場合、ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する炭化水素基含有化合物(a12)の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の耐現像液性をより向上させることができ、塗膜に、より高い柔軟性を付与しうる。前記の炭化水素基含有化合物(a12)の含有量は、20質量%以上であればより好ましく、30質量%以上であれば更に好ましい。ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する炭化水素基含有化合物(a12)の含有量の上限は、特に制限されないが、例えば80質量%以下である。
【0049】
また、ラジカル重合性化合物(a1)が炭化水素基含有化合物(a12)を含む場合、ラジカル重合性化合物(a11)に対する炭化水素基含有化合物(a12)の割合は、10質量%以上300質量%以下であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の現像性及び耐現像液性をより向上させることができ、塗膜に更に高い柔軟性を付与しうる。前記の炭化水素基含有化合物(a12)の割合は20質量%以上200質量%以下であればより好ましく、30質量%以上150質量%以下であれば更に好ましい。
【0050】
ラジカル重合性化合物(a1)から重合体(A1)を得るにあたっては、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性化合物(a1)を重合してもよい。ラジカル重合開始剤は、熱又は光によりラジカルを生じうる化合物である。ラジカル重合開始剤の例は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビスイソブチレート等のアゾ重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等の有機過酸化物重合開始剤等が挙げられる。
【0051】
ラジカル重合性化合物(a1)から重合体(A1)を得るにあたっては、連鎖移動剤を用いてラジカル重合性化合物(a1)を重合しても良い。連鎖移動剤の例は、α-メチルスチレンダイマー、α-テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物;n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル等のメルカプタン化合物;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム等のハロゲン化合物等が挙げられる。なお、ラジカル重合性化合物(a1)には、連鎖移動剤は含まれない。
【0052】
重合体(A1)は、溶剤を含有してもよい。溶剤としては、例えば、エタノール、ジエチレングリコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0053】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の固形分全量に対する重合体(A1)の割合は、30質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の現像性及び耐現像液性を更に高めやすい。本開示における「アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の固形分全量」とは、揮発性の成分(例えば溶媒など)を除いた成分の合計量のことをいう。
【0054】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、110℃以下であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜に高い柔軟性を付与しうる。また、この場合、レジスト用樹脂組成物に主にアルカリ可溶性のノボラック樹脂を樹脂成分として配合する場合に比べて、良好な柔軟性と耐熱性とのバランスをとりやすい。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、100℃以下であればより好ましく、90℃以下であれば更に好ましい。なお、本開示におけるアルカリ可溶性アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、上記で説明した組成、組成割合、及び反応条件等を適宜調整することにより調整可能である。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)の下限は、特に制限されないが、例えば20℃以上である。
【0055】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、8,000以上50,000以下であることが好ましい。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が8,000以上であると、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜における未露光部により高い耐現像液性が付与されうる。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が50,000以下であると、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜を露光するにあたり、残渣をより生じにくくすることができ、より高い現像性が実現されうる。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000以上40,000以下であればより好ましく、15,000以上35,000以下であれば更に好ましい。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)測定装置により測定可能である。例えば、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、GPCによる分子量測定結果から算出される。GPCでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
GPC装置:SHIMAZU製 SIL-20ACHT
カラム:SHODEX GPC KF-801 KF-803 KF-805、
移動相:THF、
流量:1mL/分、
カラム温度:40℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0056】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwで表すときに、MwとMnの比(Mw/Mn)で表される分散度は、1.0以上4.0以下であることが好ましい。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の分散度が上記範囲内であると、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の未露光部の耐現像液性と露光部の現像性がより向上しうる。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の分散度は、2.5以下であればより好ましい。
【0057】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の酸価は、100mgKOH/g以上であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の露光部の現像性を更に向上させうる。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の酸価は、110mgKOH/g以上であればより好ましく、120mgKOH/g以上であれば更に好ましい。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の酸価の上限は特に制限されないが、例えば200mgKOH/g以下である。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の酸価は、例えば、カルボキシル基を有するラジカル重合性成分の量を適宜調整することで調整することができる。
【0058】
レジスト用樹脂組成物固形分全量に対するアルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の含有量は、70質量%以上98質量%以下であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A)の含有量が70質量%以上であれば、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の柔軟性を向上させやすく、98質量%以下であれば、塗膜の未露光部の耐現像液性を維持しつつ、露光部の現像性をより向上させやすい。前記のアルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の含有量は、75質量%以上96質量%以下であればより好ましく、80質量%以上94質量%以下であれば更に好ましい。本開示において「レジスト用樹脂組成物固形分全量」とは、揮発成分(例えば溶媒など)を除く成分の合計量をいう。
【0059】
(キノンジアジド基含有化合物)
本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、キノンジアジド基含有化合物(B)を含有する。このため、レジスト用樹脂組成物を露光した場合に、キノンジアジド基含有化合物(B)は光分解し、アルカリ可溶性を有する化合物に変化する。これにより、レジスト用樹脂組成物の塗膜の露光部の現像性を高めうる。また、キノンジアジド基含有化合物(B)は、レジスト用樹脂組成物の塗膜の未露光部の耐現像液性を高めうる。
【0060】
キノンジアジド基含有化合物(B)は、例えば2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ-2’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノン類;ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-{1-[4-〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール、3,3’-ジメチル-{1-[4-〔2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノールなどのビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類;トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタンなどのトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体;ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタンなどの、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類またはそのメチル置換体;フェノール、p-メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール-1,3-ジメチルエーテル、没食子酸、アニリン、p-アミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノンなどの水酸基またはアミノ基をもつ化合物;ノボラック、ピロガロール-アセトン樹脂、p-ヒドロキシスチレンのホモポリマー又はこれと共重合しうるモノマーとの共重合体などと、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸又はナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸などのキノンジアジド基含有スルホン酸と、の完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物または部分アミド化物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
【0061】
キノンジアジド基含有化合物(B)として使用される上記キノンジアジド基含有スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸、ナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸等のナフトキノンジアジドスルホン酸が好ましい。これらの化合物をキノンジアジド基含有化合物(B)として、ポジ型感光性樹脂組成物に配合すると、高感度のポジ型レジスト用樹脂組成物を得やすい。
【0062】
アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)100質量部に対するキノンジアジド基含有化合物(B)の含有量は、3質量部以上30質量部以下であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物の塗膜の露光部の現像性と未露光部の耐現像液性とをより向上させうる。アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)100質量部に対するキノンジアジド基含有化合物(B)の含有量は、4質量部以上25質量部以下であればより好ましく、5質量部以上20質量部以下であれば更に好ましい。
【0063】
(その他の成分)
レジスト用樹脂組成物は、本開示の効果を阻害しない範囲において、上記で説明した成分以外の成分を含有してもよい。例えば、レジスト用樹脂組成物は、上記のアルカリ可溶性アクリル樹脂(A)以外のアクリル可溶性の成分を含有してもよい。具体的には、レジスト用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、例えばノボラック樹脂を含有してもよい。
【0064】
レジスト用樹脂組成物は、ポリヒドロキシスチレンを含有してもよい。レジスト用樹脂組成物がポリヒドロキシスチレンを含有する場合、レジスト用樹脂組成物から塗膜を作製し、露光した場合の露光部における残渣が生じにくくなりうる。そのため、レジスト用樹脂組成物の塗膜の露光部の現像性をより向上させやすい。
【0065】
ポリヒドロキシスチレンは、例えばヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン誘導体の単量体を重合することにより得られる。具体的には、ポリヒドロキシスチレンは、2-ヒドロキシスチレン、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、及びヒドロキシスチレン誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物の重合体である。ポリヒドロキシスチレンは、例えばヒドロキシスチレンと、ヒドロキシスチレン誘導体との共重合体であってもよい。
【0066】
ヒドロキシスチレン誘導体は、ヒドロキシスチレンにおける芳香環の水素原子の少なくとも1つが置換基で置換された構造を有する。ヒドロキシスチレン誘導体は、例えば、α-メチル-4-ヒドロキシスチレン、α-メチル-3-ヒドロキシスチレン、α-メチル-2-ヒドロキシスチレン、α-エチル-4-ヒドロキシスチレン、α-エチル-3-ヒドロキシスチレン、及びα-エチル-2-ヒドロキシスチレンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
【0067】
ポリヒドロキシスチレンは、ヒドロキシスチレン単独重合体を含むことが好ましく、4-ヒドロキシスチレン単独重合体を含むことがより好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の現像性が更に高まりうる。ポリヒドロキシスチレンは、ヒドロキシスチレン単独重合体と4-ヒドロキシスチレン単独重合体とのうちいずれか一方であることが好ましい。
【0068】
ポリヒドロキシスチレンの重量平均分子量は、特に制限されないが例えば1,000以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、30,000以下であることも好ましい。
【0069】
レジスト用樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、レジスト用樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0070】
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。有機溶剤は、前記のうち単独で、又は2種以上を任意の割合で使用することができる。
【0071】
レジスト用樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、塗布方法などで異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。特に、レジスト用樹脂組成物に対して、有機溶剤の割合が、0質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、15質量%以上80質量%以下であればより好ましい。
【0072】
レジスト用樹脂組成物は、例えば塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としてはアクリル系・シリコン系・フッ素系の種々の界面活性剤を使用することが出来る。
【0073】
レジスト用樹脂組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばアセトグアナミン(2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン)、及びベンゾグアナミン(2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン)等のグアナミン誘導体、並びに2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体、シランカップリング剤、メラミン誘導体等が、挙げられる。
【0074】
レジスト用樹脂組成物は、レオロジーコントロール剤を含有してもよい。レオロジーコントロール剤により、レジスト用樹脂組成物の粘性が好適化しやすくなる。レオロジーコントロール剤としては、例えば、ウレア変性中極性ポリアマイド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-430、BYK-431)、ポリヒドロキシカルボン酸アミド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-405)、変性ウレア(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-410、BYK-411、BYK-420)、高分子ウレア誘導体(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-415)、ウレア変性ウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-425)、ポリウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-428)、ひまし油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、ベントナイト、カオリン、クレーが挙げられる。
【0075】
レジスト用樹脂組成物は、着色剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;酸化防止剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0076】
本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、適宜の方法で調製されうる。例えば上記で説明したレジスト用樹脂組成物に含まれうる成分(原料)を混合し、撹拌することによりレジスト用樹脂組成物を調製できる。また、例えばディゾルバー、ホモジナイザー等の分散装置を用いて分散してもよい。三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる適宜の混練方法によって混練することで、レジスト用樹脂組成物を調製してもよい。原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し混合物を調製してから、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、レジスト用樹脂組成物を調製してもよい。レジスト用樹脂組成物が溶剤を含む場合、まず原料のうち、溶剤の一部又は全部を混合してから、原料の残りと混合してもよい。また、上記の原料を混合した混合物を、メッシュ、メンブレンフィルター等を通過させろ過させることでレジスト用樹脂組成物を調製してもよい。
【0077】
[ドライフィルム、レジスト膜、プリント配線板]
レジスト用樹脂組成物の塗膜は、上記で調製したレジスト用樹脂組成物を、作製されうる塗膜を支持するための適宜の支持体(例えば基材)に塗布し、必要により乾燥させることで得られる。すなわち、レジスト用樹脂組成物から、ドライフィルムを作製することができる。さらに言い換えれば、ドライフィルムは、上記で説明したレジスト用樹脂組成物を含有する。
【0078】
発明者らの独自の調査によれば、上述のとおり、ポジ型のレジスト用の樹脂組成物において、アルカリ可溶性のノボラック樹脂を含有する場合、そのレジスト用の樹脂組成物から塗膜を作製すると、ノボラック樹脂の比較的剛直な構造により、塗膜に柔軟性を付与することが難しいことがわかった。
【0079】
これに対し、本実施形態では、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)が、ラジカル重合性化合物(a1)の重合体(A1)を含み、ラジカル重合性化合物(a1)として、芳香環を有する化合物(a11)を含むことで、レジスト用樹脂組成物の塗膜に柔軟性を良好に付与しやすい。このため、本実施形態のレジスト用樹脂組成物からは、柔軟性の高いドライフィルムを作製できる。さらに、ラジカル重合性化合物(a1)が芳香環を有する化合物(a11)と炭化水素基含有化合物(a12)とを含有する場合、ドライフィルムに特に高い柔軟性を付与しうる。
【0080】
本実施形態に係るドライフィルムについて、より具体的に説明する。
【0081】
ドライフィルムは、上述のとおり、上記のレジスト用樹脂組成物から作製される。ドライフィルムは、レジスト用樹脂組成物を含有する。本実施形態のドライフィルムは、例えばベースフィルム等の支持体上にレジスト用樹脂組成物を塗布等することにより形成される。ドライフィルムを形成するには、例えばドライフィルム法により皮膜を形成する方法が挙げられる。
【0082】
ドライフィルム法では、例えばまずポリエステル製等の適宜の支持体上に、レジスト用樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上にレジスト用樹脂組成物を含むドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える積層体(以下、「ドライフィルム積層体」ともいう。)が得られる。
【0083】
ドライフィルム積層体は、上述のとおり、支持体(ベースフィルム)と、支持体に重なるドライフィルムとを含む。ドライフィルム積層体は、ドライフィルムの支持体に重なる面とは反対側の面に重なるカバーフィルムを備えてもよい。
【0084】
支持体は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)から作製されるフィルムを含む。支持体は、透明性を有することが好ましい。本開示において、透明性を有するとは、波長350nm~800nmの範囲における光線透過率がいずれも80%以上であることを意味する。光線透過率は、例えば適宜の可視光線透過率測定器を用いて測定可能である。
【0085】
カバーフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンなどの樹脂からなるフィルムを含む。カバーフィルムがPETフィルムである場合、PETフィルムは離型処理が施されていてもよい。ドライフィルム積層体において、カバーフィルムを設けるには、上述の支持体上にドライフィルムを作製してから、ドライフィルム上をカバーフィルムで覆い、適宜の温度でロール装置のロールに通してカバーフィルム圧着させる。これにより、支持体、ドライフィルム、及びカバーフィルムをこの順に備えるドライフィルム積層体が得られる。
【0086】
ドライフィルム積層体において、支持体とカバーフィルムとの両方を備える場合、支持体のドライフィルムに対する密着性と、カバーフィルムのドライフィルムに対する密着性とでは、密着性に差があることが好ましい。この場合において、カバーフィルムのドライフィルムに対する密着性の方が支持体のドライフィルムに対する密着性よりも弱いことが好ましい。本開示におけるドライフィルムに対する密着性は、JIS K 6854-1に準じてピール強度を測定することで評価でき、ピール強度が大きいほど密着性が強いといえる。
【0087】
本実施形態のドライフィルム積層体は、例えば以下のように使用することができる。ただし、ドライフィルムの使用態様は、以下の使用態様に限られない。なお、以下では、支持体、ドライフィルム、及びカバーフィルムをこの順に備えるドライフィルム積層体を用いる場合について説明する。
【0088】
ドライフィルム積層体におけるドライフィルムをコア材等の基材に重ねてから、ドライフィルムと基材に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上から基材上へ転写する。続いて、ドライフィルムに、露光及び現像の処理を行うことにより、基材上にレジスト用樹脂組成物の硬化物を作製しうる。
【0089】
また、上記において、ドライフィルム積層体におけるドライフィルムをコア材等の基材に重ねてから、ドライフィルムと基材に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することなく、支持体を介して光を照射して露光してもよい。この場合、露光した後、露光後の皮膜を現像する前に支持体を剥離すればよい。支持体を介して光を照射して露光すると、ドライフィルム(レジスト用樹脂組成物)を硬化させるにあたり、酸素阻害の影響を受けにくくしうる。
【0090】
本実施形態のレジスト用樹脂組成物から作製される塗膜は、例えばプリント配線板等を作製するための回路形成用基板100(図1参照)等に用いることができる。図1では、回路形成用基板100は、基材1と、基材1を覆う樹脂層3と、を備える。レジスト用樹脂組成物は、例えば回路形成用基板100における基材1を覆う樹脂層3に用いられる。樹脂層3は、レジスト用樹脂組成物を含有する。例えば、樹脂層3は、レジスト用樹脂組成物の乾燥物を含む。そして、樹脂層3に、適宜の処理を施すことで、例えば基材1を部分的に覆うレジスト膜30が作製できる(図2C、D、図3A~C参照)。すなわち、基材1上に、パターン化されたレジスト膜30が作製される。
【0091】
このように、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、所望の回路パターンを保護するレジスト膜30を作製するために用いることができる。
【0092】
回路形成用基板100における基材1は、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、テフロン(登録商標)基板、シリコンウェハ、金属基板、セラミック基板などといったリジッドな基板のほか、プラスチック基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板などといったフレキシブルな基板であってよい。図1では、基材1上に金属箔等の導体層2を備えるコア材10上に、樹脂層3が作製されているが、回路形成用基板100において、樹脂層3は、コア材10を覆うものであってもよい。すなわち、コア材10は、基材1を含む。この場合、回路形成用基板100は、基材1、導体層2、及び樹脂層3をこの順に備え、樹脂層3は、コア材10を覆う。コア材10は、例えばポリイミド基板を基材1とする基材1上に、例えば金属箔を導体層2として貼り合わせることで基材1と導体層2を重ねたフレキシブル基材としてのコア材10とすることができる。
【0093】
導体層2は、特に制限されず、適宜の電気伝導性を有する材料から作製される。導体層2は、例えば金属箔であり、金属箔は、例えば銅箔を含む。
【0094】
樹脂層3は、例えばレジスト用樹脂組成物から作製される塗膜である。レジスト用樹脂組成物は、上記で説明したとおりである。樹脂層3の膜厚は、回路形成用基板100及び所望のプリント配線板の用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1μm以上30μm以下、好ましくは10μm以下とすることができる。樹脂層3は、上記のレジスト用樹脂組成物を含有することで、高い柔軟性を有し、かつ高い耐熱性を有する。このため、樹脂層3、及び樹脂層3から作製されるレジスト膜30に破損を生じにくい。また、加熱して加工する場合にも、回路形成用基板100に形成される回路パターンに不良を生じにくくしうる。
【0095】
以下、図2Aから図2D及び図3Aから図3Cを参照して、回路形成用基板100から、パターン化されたレジスト膜30を備えるレジスト回路形成用基板101(102,103)に形成されうる回路パターンを保護するレジスト膜30を作製するための方法を、説明する。回路形成用基板101は、基材1及び導体層2と、これらを覆うレジスト膜30とを備える基板であり(図2C参照)、回路形成用基板102は、基材1及び導体配線20と、これらを覆うレジスト膜30とを備える基板である(図2D参照)。また、回路形成用基板103は、基材1及び導体層2と、これらを覆うレジスト膜30とを備え、基材1には部分的に開口12が形成されている基板である(図3A参照)。なお、以下の説明においては、回路形成用基板100は、コア材10の導体層2上に樹脂層3が作製されているものを例に説明するが、基材1上に、基材1を覆う樹脂層3が作製されている場合にも適用できる。
【0096】
本実施形態のレジスト膜の製造方法は、コア材10上に、レジスト用樹脂組成物を塗布することで樹脂層3を作製する塗布工程と、樹脂層3を部分的に露光する露光工程と、露光された樹脂層3を現像する現像工程と、を含む。現像工程では、樹脂層3の露光された部分を除去することを含む。
【0097】
具体的には、まず、基材1上に導体層2を備えるコア材10を用意する。基材1、導体層2、及びコア材10は、上記で既に説明した構成を採用できる。
【0098】
続いて、コア材10上に、レジスト用樹脂組成物を塗布することで樹脂層3を作製する。レジスト用樹脂組成物を塗布する方法は、適宜の方法であってよく、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。
【0099】
塗布工程で樹脂層3を作製するにあたり、レジスト用樹脂組成物を塗布してから、必要により樹脂層3を乾燥塗膜とするために、乾燥工程を含んでもよい。乾燥工程における条件は、レジスト用樹脂組成物の組成、溶剤を配合する場合には溶剤の種類、配合量等により適宜調整すればよいが、例えば加熱温度80℃以上150℃以下で加熱時間180秒以上900秒以下、好ましくは加熱時間300秒以上600秒以下とすることができる。
【0100】
これにより、コア材10、及びコア材10を覆う樹脂層3を備え、樹脂層3がレジスト用樹脂組成物を含有する、回路形成用基板100が作製できる。このように作製された回路形成用基板100は、コア材10が例えばポリイミド基板などのフレキシブル基材であっても、コア材10上に作製された樹脂層3が高い柔軟性を有するため、回路形成用基板100をロール状に加工しても、樹脂層3にクラックが生じにくく、樹脂層3に欠けも生じにくい。
【0101】
続いて、樹脂層3を露光して露光工程を行う。露光工程では、図2Aに示すように、上記で作製した樹脂層3に、コア材10とは反対側である樹脂層3側に所定の回路パターンを有するマスクMを配置して、マスクMを介して活性エネルギー線を照射する。マスクMは、マスクフィルム、乾板等のフォトツールである。マスクMは、活性エネルギー線を透過する透過部Maと、活性エネルギー線を遮蔽する遮蔽部Mbとを有する。このため、露光工程では、樹脂層3は選択的に活性エネルギー線が照射される。本実施形態では、ポジ型のレジスト用樹脂組成物であるため、マスクMはポジ型のマスクである。
【0102】
露光工程において、マスクMを介して塗膜に活性エネルギー線を照射するにあたり、マスクMの透過部Maに対応する位置が樹脂層3における露光部31が形成され、マスクMの遮蔽部Mbに対応する位置が樹脂層3における未露光部32となる(図2A及び図2B参照)。このように、マスクMを介在させることで、樹脂層3を選択的に露光して露光部31と未露光部32とを作製できる。
【0103】
活性エネルギー線は、適宜の光源から発せられる光であればよいが、光源としては、波長365nm(i線)、405nm(h線)、435nm(g線)付近の光を発光する低圧水銀灯、高圧水銀灯、及び超高圧水銀灯等の光源であってもよいし、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線(EB)、X線、及び軟X線等の放射線等を発する光源であってもよい。
【0104】
露光工程では、特定の波長が樹脂層3における露光部31となる部分に照射されることを回避するために、波長カットフィルターをマスクと樹脂層との間、又はマスクの樹脂層3とは反対側に配置して特定の波長をカットしてもよい。
【0105】
なお、露光方法は、マスクを用いる以外の方法であってもよい。例えば光源から発せられる紫外線を塗膜上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で塗膜を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、YAGレーザー、LED、g線、h線、i線、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。また、露光するにあたり、樹脂層3上に、適宜の被覆層(不図示)を備えていてもよい。
【0106】
続いて、露光した樹脂層3を現像する現像工程を行う。露光後の樹脂層3に現像処理を施すことで、樹脂層3からレジスト膜30が作製できる。具体的には、本実施形態では、現像処理を施すことで、図2Bに示す樹脂層3の露光部31が除去され、樹脂層3の未露光部32が残存する。本実施形態では、未露光部32がレジスト膜30となる(図2C参照)。このように、パターン化されたレジスト膜30は、上記のレジスト用樹脂組成物から作製される。すなわち、レジスト膜30は、レジスト用樹脂組成物を含有する。
【0107】
現像処理では、レジスト用樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
【0108】
現像処理は、特に制限されないが、例えば1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、液温20℃以上30℃以下の温度の条件で、液浴に、コア材10と樹脂層3とを備える回路形成用基板100を浸漬、揺動させ、取り出した後、水などで洗浄(リンス)を行う。また、現像処理の後に、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベークの条件は、適宜調整すればよい。
【0109】
これにより、回路形成用基板100から、コア材10における導体層2を部分的に覆う、パターン化されたレジスト膜30を備える回路形成用基板101が作製できる(図2C参照)。レジスト膜30の厚みは、特に制限されないが、例えば1μm以上10μm以下とすることができる。
【0110】
なお、コア材10、及びコア材10を覆う樹脂層3を備え、樹脂層3がレジスト用樹脂組成物を含有する、回路形成用基板100を作製するにあたっては、上述のドライフィルム積層体を用いてもよい。例えば、ドライフィルム積層体におけるドライフィルムをコア材10に重ねてから、ドライフィルムとコア材10に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上からコア材10上へ転写することで、コア材10上に、レジスト用樹脂組成物を含有する樹脂層3を備える回路形成用基板100を作製しうる。続いて、このドライフィルム、すなわち樹脂層3に、露光及び現像の処理を行うことにより、コア材10上にレジスト用樹脂組成物の硬化物を作製しうる。また、ドライフィルム積層体におけるドライフィルムをコア材10に重ねてから、ドライフィルムと基材に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することなく、支持体を介してドライフィルム及びコア材10に光を照射して露光してもよい。このようにしても、コア材10、及びコア材10を覆う樹脂層3を備え、樹脂層3がレジスト用樹脂組成物を含有する、回路形成用基板100を作製できる。
【0111】
上記工程は、電子部品等を組み込むための穴(開口12)を設けた基材1を備える回路形成用基板103に対しても施すことができる(図3A参照)。具体的には、基材1に複数の穴を空け開口12を形成してから、基材1と複数の開口12を覆うように銅箔等の導体層2を貼り付けることで、コア材10を作製する。
【0112】
このコア材10上に、上記のレジスト用樹脂組成物を塗布することで、樹脂層3を作製する(塗布工程)。
【0113】
続いて、適宜のパターンを作製するためのマスクを介して、上記の開口12を含むコア材10を覆う樹脂層3を部分的に露光することで、露光部31と未露光部32を作製する(露光工程)。
【0114】
続いて、樹脂層3における露光部31を現像することで、樹脂層3からレジスト膜30を作製する(現像工程)。
【0115】
これにより、図3Aに示すような基材1及び導体層2と、これらを覆うレジスト膜30とを備え、基材1には部分的に開口12が形成されている回路形成用基板103が作製できる。回路形成用基板103は、図2Cにおける回路形成用基板101と同様に、樹脂層3における未露光部32が、パターン化されたレジスト膜30となり、レジスト膜30は、基材1及び導体層2を部分的に保護している。
【0116】
続いて、回路形成用基板100の導体層2における不要な部分を除去するエッチング工程を行う。エッチング工程では、コア材10における導体層2上に部分的にレジスト膜30が形成された回路形成用基板101を、エッチング液を入れた液浴に浸漬する。エッチング液は、適宜の組成を有するエッチング液を使用可能であるが、例えば塩化第二鉄水溶液といった組成のエッチング液を使用できる。回路形成用基板101を浸漬した後、液浴から取り出し、必要により水洗などにより残存するエッチング液を除去する。なお、エッチングの方法は、上記ではウエットエッチングによる方法を説明したが、これに限らず、気相を用いたドライエッチングによる方法であってもよい。
【0117】
基材1(コア材10)に部分的に複数の開口12を有する回路形成用基板103(図3A参照)をエッチングするにあたっては、例えば、予め、基材1のレジスト膜30とは反対側に裏止め剤を塗布して保護膜50が形成されている(図3B参照)。保護膜50は、エッチング液による、残存させたい導体層2の腐食を防ぎ、作製したい回路パターンに欠陥が生じるのを防ぐため等に設けられる。コア材10に保護膜50を設けるにあたっては、現像処理後にコア材10における基材1、基材1における開口12、及び導体層2を覆うようにレジスト膜30の形成されている側とは反対側から裏止め剤を塗布して、加熱される。この場合、レジスト膜30の耐熱性が低いと、レジスト膜30に破損が生じ、回路形成用基板100に形成される回路パターンに不良を生じることがある。しかし、本実施形態では、レジスト膜30が上記のレジスト用樹脂組成物から作製されうるため、高い耐熱性を有する。このため、回路形成用基板103において、裏止め剤による保護膜50を作製しても、レジスト膜30に破損を生じにくい。
【0118】
続いて、コア材10における導体層2が設けられている面を部分的に覆うレジスト膜30が残存した状態で、導体層2のレジスト膜30が覆っていない部分が除去されることで、導体層2から導体配線20が作製できる(図2D及び図3C参照)。すなわち、基材1と、導体配線20と、レジスト膜30とを備える回路形成用基板102(103)が作製できる。本実施形態のレジスト膜30は、上記のレジスト用樹脂組成物の乾燥物を含んで作製されるため、エッチング液に晒されてもレジスト膜30が高い耐薬品性を有しうる。このため、レジスト膜30は、膜減り(塗膜が薄くなること)しにくく、膜にも欠けが生じにくい。
【0119】
このように、回路形成用基板102(図2D)におけるレジスト膜30を適宜の剥離液により剥離することで、プリント配線板を作製できる。また、回路形成用基板103(図3C)の場合、レジスト膜30及び保護膜50を適宜の剥離液により剥離することで、プリント配線板を作製できる。
【実施例0120】
以下、本実施形態の具体的な実施例を提示する。ただし、本実施形態は下記の実施例のみに制限されない。
【0121】
(1)アクリル樹脂の合成
ポジ型レジスト用の樹脂組成物に配合するためのアクリル樹脂の合成例について説明する。なお、以下に示すように、アルカリ可溶性アクリル樹脂A-1~A-12及びB-1を合成する場合は、モノマー(又はこれらの混合物)を滴下して行う滴下重合により重合反応を行い、アルカリ可溶性アクリル樹脂B-2を合成する場合は、各モノマーと重合開始剤とを一括に混合して行う一括重合により重合反応を行った。
【0122】
(1-1)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂A-1
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、滴下漏斗及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を加え、窒素雰囲気中、80℃に昇温した。昇温後、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)9部を加え、メタクリル酸50部、メタクリル酸メチル70部、スチレン80部を配合した混合物を、反応容器内に滴下漏斗から2時間連続して滴下した。滴下終了後、3時間重合反応を進行させ、ポリスチレン換算重量平均分子量19,700、分散度2.0、ガラス転移温度110℃、酸価160mgKOH/g、固形分濃度が39重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液A-1を得た。
【0123】
(1-2)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B-1
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、滴下漏斗及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部を加え、窒素雰囲気中、80℃に昇温した。昇温後、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)3部を加え、メタクリル酸39部、メタクリル酸メチル16部、アクリル酸ブチル65部、メタクリル酸ブチル60部、メタクリル酸2-エチルヘキシル20部を配合した混合物を、反応容器内に滴下漏斗から2時間連続して滴下した。滴下終了後、3時間重合反応を進行させ、ポリスチレン換算重量平均分子量40,600、分散度2.4、ガラス転移温度34℃、酸価125mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B-1を得た。
【0124】
(1-3)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B-2
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400部、α-メチルスチレンダイマー0.4質量部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)2.2部、メタクリル酸57部、メタクリル酸メチル63部、メタクリル酸オクタデシル80部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で5時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量166,000、分散度3.3、ガラス転移温度30℃、酸価188mgKOH/g、固形分濃度が30重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B-2を得た。
【0125】
上記アルカリ可溶性アクリル樹脂A-1において原料の成分(モノマー)を表1及び表2に記載の成分及び配合量(質量部)に適宜変更して、上記(1-1)と同様の方法でアルカリ可溶性アクリル樹脂A-2~A-12を合成した。また、上記(1-1)と同様にアルカリ可溶性アクリル樹脂A-2~A-12についても、ガラス転移温度(Tg)、固形分酸価、固形分濃度、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、及び分散度(Mw/Mn)を評価し、表1及び表2にその結果を示した。アルカリ可溶性アクリル樹脂A-1~A-12における原料となる成分の詳細は下記のとおりである。
-ラジカル重合性化合物
・MAA:メタクリル酸(Methacrylic Acid)。
・MMA:メタクリル酸メチル(Methyl Methacrylate)。
・BA:アクリル酸ブチル(Butyl Acrytate)。
・2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート(2-Ethyl hexyl Methacrylate)。
・SLMA:メタクリル酸アルキル(アルキルはC12とC13との混合)。三菱ケミカル株式会社製 品名アクリエステルSL。
・BZMA:メタクリル酸ベンジル(Benzyl Methacrylate)。
・POB-A:単官能アクリルモノマー(フェノキシベンジルアクリレート(Phenoxybenzyl Acrylateを含む。)。共栄社化学株式会社製 品名 ライトアクリレートPOB-A。
・N-フェニルマレイミド:株式会社日本触媒製 品名 イミレックス(登録商標)
・ST:スチレン(Styrene)。
-連鎖移動剤
・MSD:α-メチルスチレンダイマー(α-Methylstyrene dimer)。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
(2)ポジ型レジスト用樹脂組成物の調製
<実施例1~15、比較例1~3>
表3及び表4中に示す成分を、室温下で表3及び表4中に示す質量で混合し、塗膜を作製するためのポジ型レジスト用樹脂組成物を得た。なお、表3及び表4に示される成分の詳細は以下のとおりである。
―キノンジアジド基含有化合物
・東洋合成株式会社製の品名TPPA-300A(4,4‘-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールの全フェノール性水酸基の水素原子の一部又は全てが1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換された化合物)。
―(その他の成分)
・BYK-307:添加剤(表面調整剤)。ビックケミー・ジャパン株式会社製のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン。
【0129】
なお、表3及び表4中の「ノボラック樹脂」とは、アルカリ可溶性アクリル樹脂に代えて用いたアクリル可溶性の成分であり、詳細は以下のとおりである。
・ノボラック樹脂:メタ/パラ-クレゾールノボラック樹脂(軟化点115℃、重量平均分子量Mw:20,000)。
【0130】
(3)テストピースの作製
まず、10cm×10cmの25μmポリイミド基材上に銅箔を貼り合わせた基材を用意し、基材上に、各実施例又は比較例のそれぞれのポジ型レジスト組成物を塗布した。基材に塗布した塗膜を、BOXオーブンにいれ、加熱温度110℃で、加熱時間420秒間乾燥して、塗膜の膜厚が5μmである樹脂層を得た。
【0131】
続いて、作製した樹脂層に、所定の遮光パターンが描かれたマスクを介し、340-440nmの光のみ透過できるように波長カットフィルターを使用して240mJ/cm2の条件で光を照射した。
【0132】
続いて、露光後の樹脂層に、1%水酸化ナトリウム水溶液を現像液として用い、60秒間浸漬し、揺動させた後、20秒間水洗した。これにより、樹脂層からパターン化されたレジスト膜を作製しテストピースを得た。
【0133】
(4)評価試験
(4-1)現像性
上記(3)のテストピースにおけるレジスト膜作製時に生じた残渣の様子を、目視により観察して、以下の基準で、現像性を評価した。
A:露光現像後の基材上に現像残渣が見られなかった。
B:露光現像後の基材上にわずかに現像残渣が見られた。
C:露光現像後の基材上に全体的に現像残渣が見られた。
【0134】
(4-2)耐現像液性(膜減り)
上記で作製したテストピースにおけるレジスト膜の膜厚を測定し、樹脂層の膜厚(5μm)とレジスト膜の膜厚との比を求め、この値に100を掛けた値を「未露光部残膜率(%)」とした。そして、以下の基準で、耐現像液性を評価した。
A:未露光部残膜率は95%以上であり、現像後の塗膜の表面にざらつきも見られなかった。
B:未露光部残膜率は95%以上であったが、現像後の塗膜の表面に一部ざらつきが見られた。
C:未露光部残膜率は90%以上95%未満であり、現像後の塗膜の表面にざらつきや、凹凸が見られた。
D:未露光部残膜率は90%未満であり、現像後の塗膜の表面にざらつきや、凹凸、又は基材の表面の一部において露出が見られた。
【0135】
(4-3)形状保持性(耐熱性)
上記(3)で作製したテストピースを、更に温度130℃に設定したIR乾燥炉に入れ、10分間ポストベークを行った。ポストベーク前後での、10μm幅のレジストラインが太り方向に寸法変化した形状を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察した。観察して得られた結果を、以下の基準で評価した。
A:10μm幅のレジスト膜のライン幅の寸法変化が3μm以下であった。
B:10μm幅のレジスト膜のライン幅の寸法変化が3μm超6μm以下であった。
C:10μm幅のレジスト膜のライン幅の寸法変化が6μm超であった。
【0136】
なお、比較例1、2は、現像処理後にレジスト膜が残らなかったため、評価はできなかった。
【0137】
(4-4)柔軟性
上記で作製したテストピースに対し、折曲試験機(東洋精機(株)製)により、JIS-K 5600に準拠して、1分間の曲げ試験を行った。1分経過後のテストピースの状態を確認し、以下の基準で評価した。
A:円筒型マンドレルの外径φ6mmで曲げ試験を行っても、レジスト膜にひび及び割れが生じなかった。
B:円筒型マンドレルの外径φ6mmで曲げ試験を行うと、レジスト膜にひび及びひび割れが生じるが、円筒型マンドレルの外径φ10mmで曲げ試験を行っても、レジスト膜にひび及び割れが生じなかった。
C:円筒型マンドレルの外径φ10mmで曲げ試験を行うと、レジスト膜にひび及び割れが生じた。
【0138】
各実施例及び比較例において、上記(4-1)から(4-4)で行った評価試験における円筒型マンドレルの外径及び評価結果を、下記表3及び表4に示した。
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
(まとめ)
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本発明は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧書きで付している。
【0142】
第1の態様のレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)と、を含有する。前記アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)は、ラジカル重合性化合物(a1)の重合体(A1)を含む。前記ラジカル重合性化合物(a1)は、芳香環を有する化合物(a11)を含む。
【0143】
この態様によれば、塗膜において光が照射された部分の現像性、及び光が照射されていない部分の耐現像液性を向上でき、かつ塗膜が耐熱性及び柔軟性を有しうるレジスト用樹脂組成物が得られる。
【0144】
第2の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1の態様において、前記芳香環を有する化合物(a11)は、スチレン類、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸m-フェノキシベンジル、及び芳香族マレイミド類からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0145】
この態様によれば、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜により高い耐現像液性を付与しうる。
【0146】
第3の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1又は第2の態様において、前記ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する前記芳香環を有する化合物(a11)の含有量は、10質量%以上である。
【0147】
この態様によれば、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の未露光部の耐現像液性をより高めうる。
【0148】
第4の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1から第3のいずれか一の態様において、炭素数6以上18以下の炭化水素基を有する化合物(a12)を含む。
【0149】
この態様によれば、塗膜における未露光部の耐現像液性をより高め、塗膜の柔軟性を更に高めうる。
【0150】
第5の態様のレジスト用樹脂組成物は、第4の態様において、ラジカル重合性化合物(a1)全量に対する前記化合物(a12)の含有量は、10質量%以上である。
【0151】
この態様によれば、レジスト用樹脂組成物が感光された場合の露光部の現像性と未露光部の耐現像液性を更に高め、塗膜の柔軟性を更に高めうる。
【0152】
第6の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、8,000以上50,000以下である。
【0153】
この態様によれば、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜における未露光部により高い耐現像液性が付与されうる。また、この場合、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜を露光するにあたり、残渣をより生じにくくすることができ、高い現像性が実現されうる。
【0154】
第7の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1から第6のいずれか一の態様において、前記アルカリ可溶性アクリル樹脂(A)の酸価は、100mgKOH/g以上である。
【0155】
この態様によれば、レジスト樹脂組成物から作製された塗膜の現像性がより高まりうる。
【0156】
第8の態様のレジスト膜(30)の製造方法は、塗布工程と、露光工程と、現像工程と、を含む。前記塗布工程では、基材(1)に、第1から第7のいずれか一の態様のレジスト用樹脂組成物を塗布して樹脂層(3)を作製する。前記露光工程では、前記樹脂層(3)を部分的に露光する。前記現像工程では、前記樹脂層(3)の露光された部分を除去する。
【0157】
この態様によれば、現像性及び耐現像液性に優れ、高い耐熱性及び高い柔軟性を有するレジスト膜が得られる。
【0158】
第9の態様のパターン化されたレジスト膜(30)は、第1から第7のいずれか一の態様のレジスト用樹脂組成物を含有する。
【0159】
この態様によれば、高い耐熱性及び高い柔軟性を有するレジスト膜が得られる。
【0160】
第10の態様のドライフィルムは、第1から第7の態様のレジスト用樹脂組成物を含有する。
【0161】
この態様によれば、高い耐熱性及び高い柔軟性を有するドライフィルムが得られる。
【符号の説明】
【0162】
1 基材
3 樹脂層
30 レジスト膜
図1
図2
図3