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特開2024-91111減速装置、減速装置ユニットの組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091111
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】減速装置、減速装置ユニットの組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240627BHJP
【FI】
F16H57/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207566
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】金 鐘剛
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA25
3J063AA27
3J063AB15
3J063AC01
3J063BA15
3J063BB11
3J063CD41
3J063XA01
3J063XC05
3J063XC08
(57)【要約】
【課題】本発明の目的のひとつは、放熱性を向上することが可能な減速装置を提供することにある。
【解決手段】ある態様の減速装置10は、内歯歯車41が設けられたケーシング6を有する減速装置であって、ケーシング6の外周部60の径方向外側に、空気よりも熱伝導性が高く、ケーシング6よりも変形しやすい第1熱伝導部材81が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車が設けられたケーシングを有する減速装置であって、
前記ケーシングの外周部の径方向外側に、空気よりも熱伝導性が高く、前記ケーシングよりも変形しやすい第1熱伝導部材が設けられる減速装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、相手部材と嵌合するための嵌合部と、前記嵌合部とは別の外周部とを有し、前記第1熱伝導部材は、前記別の外周部に設けられる、請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記外周部の前記第1熱伝導部材が設けられる領域の少なくとも一部には、フィンが配置される、請求項1に記載の減速装置。
【請求項4】
前記第1熱伝導部材と前記外周部との間には、空気より熱伝導性が高く、前記第1熱伝導部材よりも変形しにくい第2熱伝導部材が配置される、請求項1に記載の減速装置。
【請求項5】
前記第2熱伝導部材は、第1熱伝導部材よりも熱伝導性が高い、請求項4に記載の減速装置。
【請求項6】
内歯歯車が設けられたケーシングを有する減速装置と、当該減速装置の相手部材と、を備えた減速装置ユニットの組立方法であって、
前記相手部材が取り付けられる前の状態において、前記ケーシングの外周部に空気よりも熱伝導性が高く前記ケーシングよりも変形しやすい第1熱伝導部材を配置し、前記相手部材を、前記第1熱伝導部材と径方向に重なるように前記減速装置に取り付ける相手部材取付工程を有する減速装置ユニットの組立方法。
【請求項7】
前記相手部材取付工程の後、前記減速装置の軸方向外側から前記ケーシングと前記相手部材との間に、空気より熱伝導性が高く前記第1熱伝導部材よりも剛性の高い第2熱伝導部材を挿入する、請求項6に記載の減速装置ユニットの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置および減速装置ユニットの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力軸に入力された回転を減速して出力する減速装置が知られている。本出願人は、特許文献1において、ロボットや工作機械などの他部材に覆われたハウジングを有する減速装置を開示している。この減速装置は、モータの出力軸に接続された入力軸と、アーム部材に固定された出力軸と、モータアダプタに取り付けられたハウジングとを備える。この減速装置のハウジングのモータ側はモータアダプタやモータなどの他部材によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-38809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、ケーシングを備える減速装置について、次の新たな認識を得た。減速装置は内部発熱による温度上昇を抑制するためケーシングが適切に放熱されることが望ましい。しかし、減速装置のケーシングは、ロボットや工作機械などの他部材に覆われることがあり、ケーシングと他部材との間を隙間とすると放熱性が悪い問題がある。特許文献1に記載の減速装置には、減速装置の放熱性を向上するという観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、放熱性を向上することが可能な減速装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の減速装置は、内歯歯車が設けられたケーシングを有する減速装置であって、ケーシングの外周部の径方向外側に、空気よりも熱伝導性が高く、ケーシングよりも変形しやすい第1熱伝導部材が設けられる。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放熱性を向上することが可能な減速装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る減速装置の第1の例を概略的に示す断面図である。
図2】実施形態に係る減速装置の第2の例を概略的に示す断面図である。
図3】実施形態に係る減速装置の第3の例を概略的に示す断面図である。
図4】実施形態に係る減速装置ユニットの組立方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
図1を参照して、実施形態に係る減速装置10の第1の例を説明する。図1は、減速装置10の第1の例を示す側面視の断面図であり、減速装置ユニット100に組み込まれた状態を示している。減速装置ユニット100は、減速装置10と、相手部材7と、モータ11と、を含む。この例の相手部材7は、減速装置10が取り付けられるモータアダプタとして機能する。減速装置10は、熱伝導部材8を備える。
【0013】
モータ11は、減速装置10の駆動源であり、実施形態ではブラシレスDCモータ(ACサーボモータと称されることもある)である。モータ11としては、減速装置10に回転を出力可能なものであれば制限はなく、様々な原理に基づくモータを用いうる。モータ11は、減速装置10に向かって延びるモータ軸12を有する。モータ軸12は、減速装置10のクランク軸20に設けられた挿入孔27に挿入され、例えばキー連結される。以下、クランク軸20の中心軸線Laに沿った方向を「軸方向」といい、軸方向でクランク軸20のモータ軸12が連結される側(図中右側)を入力側といい、他方側(図中左側)を反入力側という。つまり、クランク軸20は、軸方向で入力側から反入力側に延びる。また、中心軸線Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。
【0014】
減速装置10は、モータ11から入力された回転を減速して、後述するキャリヤ35またはケーシング6から出力可能であるが、この例ではキャリヤ35から出力する。減速装置10としては、入力回転を減速して出力可能なものであれば制限はなく、様々な減速装置を用いることができる。実施形態の減速装置10は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車および外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた自転成分を出力部材から被駆動部材に出力する偏心揺動型減速装置である。実施形態の減速装置10は、クランク軸20の中心軸線Laが内歯歯車の中心軸線と同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。
【0015】
相手部材7は、減速装置10とモータ11との間に配置され、減速装置10及びモータ11を支持する。相手部材7は、入力側および反入力側が開口した略筒状に形成されている。相手部材7の入力側の端部には、開口を閉塞するようにモータ11が締結部材(不図示)を用いて締結される。相手部材7の反入力側には、減速装置10が締結部材(不図示)を用いて締結される。相手部材7は、減速装置10の一部または全部を環囲する形状を有する。
【0016】
相手部材7の反入力側には、内径の異なる複数の内周部70が形成されている。図1の例では、相手部材7は、減速装置10のケーシング6と嵌合するための内周部71と、内周部71とは別の内周部72とが形成されている。図1の例では、内周部72の内径は、内周部71の内径よりも大きいが、これに限定されない。
【0017】
熱伝導部材8を説明する前に、減速装置10の放熱を説明する。減速装置10は、内部部材が高速回転するために内部発熱し、内部温度が上昇する。内部温度が上昇すると潤滑剤の潤滑性が低下して潤滑不足になるおそれがあり、温度上昇を抑制するためケーシング6から適切に放熱されることが望ましい。しかし、減速装置10のケーシング6は、相手部材7に環囲されており、ケーシング6と相手部材7との間を隙間とすると放熱性がよいとはいえない。そこで、実施形態では、ケーシング6の外周部60の径方向外側に、空気よりも熱伝導性が高い熱伝導部材8が設けられる。熱伝導性が高いとは、熱伝導による熱の移動のしやすさを規定する物理量である熱伝導率が高いことを意味する。ケーシング6と相手部材7の間に熱伝導部材8が介在することにより、相手部材7への放熱が促進され、減速装置10の温度上昇が抑制される。
【0018】
熱伝導部材8は、外周部60に設けられる第1熱伝導部材81を含む。第1熱伝導部材81がケーシング6よりも硬い場合、ケーシング6の外周部60に取り付けることが容易でない。このため、第1熱伝導部材81は、ケーシング6よりも柔らかく変形しやすいことが望ましい。例えば、第1熱伝導部材81は、ケーシング6を第1熱伝導部材81に押し付けたとき、第1熱伝導部材81が容易に変形(塑性変形であってもよい)し、ケーシング6は殆ど変形しない程度の柔らかさを備えてもよい。第1熱伝導部材81の素材としては、熱伝導性が高く、硬化後は一定形状を維持可能な粘土状または液状の樹脂を採用できる。第1熱伝導部材81は、外周部60にパテ状に塗布した後に硬化させてもよいし、リング状に成型した成型体を外周部60に装着してもよい。第1熱伝導部材81は、柔らかい部分だけでなく、一部に硬い部分があってもよい。第1熱伝導部材81は、ケーシング6よりも熱伝導性が低い素材で形成されてもよい。
【0019】
実施形態のケーシング6の外周部60は、入力側から反入力側に向かって順に、嵌合部61と、外周部62と、外周部63とが設けられる。嵌合部61は、相手部材7の内周部71と嵌合するための外周部として機能し、外周部62と外周部63は、嵌合部61とは別の外周部である。外周部62は、嵌合部61および外周部63よりも大径である。外周部63は、外周部62よりも小径である。外周部63は、相手部材7に環囲されていない。実施形態の相手部材7の内周部70は、入力側から反入力側に向かって順に、内周部71と、内周部72とが設けられる。
【0020】
外周部62は、隙間を介して内周部72に環囲される。つまり、外周部62の外径は、嵌合部61の外径よりも大きく、内周部72の内径よりも小さく、外周部62と内周部72との間には隙間が介在する。仮に、外周部62と内周部72とがインロー嵌合する程度の隙間しかない場合、加工誤差の影響により、嵌合部61が内周部71に上手く嵌まらない可能性がある。このため、外周部62と内周部72の間に嵌合部よりも大きな隙間を設けている。第1熱伝導部材81は、外周部62に設けられ、外周部62と内周部72の間の隙間を埋めている。
【0021】
[第2の例]
図2を参照して、実施形態に係る減速装置10の第2の例を説明する。図2は、減速装置10の第2の例を示す正面視の断面図であり、減速装置ユニット100に組み込まれた状態を示している。図2は、外周部62を通り、クランク軸20の中心軸線Laに直交する面で切断された断面を示す。第2の例は、フィン64を有する点で第1の例と相違し、他の構成は同様である。よって相違点を重点的に説明し、重複する説明を省く。
【0022】
外周部60の放熱性はより高いことが望ましい。そこで、第2の例では、外周部60の第1熱伝導部材81が設けられる領域(例えば、外周部62)の少なくとも一部には、フィン64が配置される。この場合、外周部60から第1熱伝導部材81への放熱性が向上することが期待できる。フィン64は、外周部62から延びる1以上の部分を有する限り、その形状は限定されない。フィン64は、外周部62の法線に沿ってまたは法線に対して傾斜する方向に沿って延びてもよい。フィン64は、途中で複数に分岐する形状(例えば、二股形状、三股形状)を有してもよい。実施形態のフィン64は、それぞれ外周部62から外向きに法線に沿って延びる複数(例えば、49個)の突出部で構成される。フィン64の突出部は、軸方向に延びる板状を呈する。フィン64の突出部は、棒状など板状とは異なる形状を有してもよい。フィン64は、外周部62と一体に形成されてもよい。
【0023】
[第3の例]
図3を参照して、実施形態に係る減速装置10の第3の例を説明する。図3は、減速装置10の第3の例を示す側面視の断面図であり、減速装置ユニット100に組み込まれた状態を示している。第3の例は、主に第2熱伝導部材82を有する点で第1の例と相違し、他の構成は同様である。よって相違点を重点的に説明し重複する説明を省く。
【0024】
第3の例は、外周部63は、相手部材7に環囲されており、相手部材7のうち、外周部63を環囲する部分を内周部73と表記する。つまり、実施形態の相手部材7の内周部70は、入力側から反入力側に向かって順に、内周部71と、内周部72と、内周部73とが設けられる。内周部72および内周部73は、内周部71よりも大径である。内周部73は、内周部72の内径が異なっていてもよいが、この例では同径である。外周部62と内周部72の間は隙間になっている。
【0025】
熱伝導部材8は、第1熱伝導部材81と第2熱伝導部材82を含む。第1熱伝導部材81は、外周部63に設けられ、外周部63と内周部73の間の隙間を埋めている。第1熱伝導部材81の反入力側の端面は、相手部材7の反入力側の端面とほぼ同面である。第2熱伝導部材82は、第1熱伝導部材81と外周部60との間に配置される部材である。第2熱伝導部材82は、空気より熱伝導性が高く、第1熱伝導部材81よりも剛性の高い素材で構成される。このような素材として、アルミニウム、チタン、黄銅、ステンレス等が挙げられるが、本実施形態の第2熱伝導部材82は、アルミニウムで構成される。第2熱伝導部材82の反入力側の端面は、相手部材7の反入力側の端面とほぼ同面である。第2熱伝導部材82の入力側の端面は、第1熱伝導部材81の入力側の端面よりも反入力側に位置する。なお、ケーシング6は、鉄、アルミニウム、チタン、黄銅、ステンレス等の様々な素材で構成可能であるが、本実施形態のケーシング6は、鉄系金属で構成される。
【0026】
第2熱伝導部材82は、第1熱伝導部材81と外周部60との間に配置できる限り、その形状は限定されない。実施形態の第2熱伝導部材82は、正面視がリング形状のアルミニウム製部材である。第2熱伝導部材82は、周方向に複数に分割されてもよい。第2熱伝導部材82の軸方向寸法は、相手部材7の軸方向寸法以上であってもよいが、この例では相手部材7よりも短い。第2熱伝導部材82の軸方向寸法は、第1熱伝導部材81の軸方向寸法以上であってもよいが、この例では第1熱伝導部材81よりも短い。第2熱伝導部材82の内径は、外周部62の外径以上で、第2熱伝導部材82の外径は、内周部72以下であってもよい。第2熱伝導部材82の内径と外径は、第2熱伝導部材82が外周部62と内周部72の間の径方向の中間に位置するように設定されてもよい。
【0027】
図4を参照して、減速装置10の第3の例を備えた減速装置ユニット100の組立方法を説明する。減速装置ユニット100は、以下の組立手順により組立できる。
(1)相手部材7が取り付けられる前の状態の減速装置10について、塗布等によって外周部63に第1熱伝導部材81を配置する。
(2)次に、相手部材7を、内周部73が第1熱伝導部材81と径方向に重なるように減速装置10に取り付ける(相手部材取付工程)。このとき、第1熱伝導部材81と内周部73との間には隙間がある。
(3)相手部材取付工程の後、軸方向外側からケーシング6と相手部材7との間(外周部63と内周部73との間)に、第2熱伝導部材82を挿入する。つまり、矢印Xで示す方向に、リング状の第2熱伝導部材82を第1熱伝導部材81に押込み、粘土状の第1熱伝導部材81を外周側と内周側とに押し拡げる。このとき、第1熱伝導部材81は、外周部62と内周部72の間の隙間に進入してもよい。
【0028】
第2熱伝導部材82を挿入したとき、第1熱伝導部材81の外周側は、内周部73に接触し、さらに押し付けられる。また、このとき第1熱伝導部材81の内周側は、外周部63に押し付けられる。このように押し付けられることによって、第1熱伝導部材81は、内周部73および外周部63に密着する。第1熱伝導部材81が相手部材7の端部からはみ出した場合は、はみ出した第1熱伝導部材81を入力側に向かって押し込んでもよい。
(4)次に、クランク軸20にモータ軸12を連結した状態で、モータ11を相手部材7に装着する。
【0029】
この組立手順は例示であり各種の変形が可能である。
【0030】
次に、図1を参照して、減速装置10のその他の構成を説明する。減速装置10は、クランク軸20と、外歯歯車13、14、15と、内歯歯車41と、キャリヤ35、36と、内ピン48と、偏心軸受16、17、18と、主軸受37、38と、クランク軸軸受39、40と、ケーシング6とを主に含む。ケーシング6は、減速装置10を包囲する筒状を有し、内周面に内歯歯車41が設けられる。
【0031】
クランク軸20は、モータ軸12から入力される回転動力によって回転中心線La周りに回転させられる。クランク軸20の外周には、反入力側から入力側に向かって順に、第1軸部22、第1偏心部23、第2偏心部24、第3偏心部25および第2軸部26が設けられる。第1軸部22および第2軸部26は、クランク軸軸受39、40の内輪を支持する。第1偏心部23、第2偏心部24および第3偏心部25は、第1軸部22よりも大径の円筒部分で、後述するように偏心している。第2軸部26は、第1軸部22と同径の円筒部分である。
【0032】
クランク軸20は、外歯歯車13、14、15を揺動させるための複数の偏心部23、24、25を有する偏心体軸であり、入力軸と称されることがある。偏心部23、24、25の軸芯は、クランク軸20の回転中心線Laに対して偏心している。実施形態では3個の偏心部23、24、25が設けられ、隣り合う偏心部23、24、25の偏心位相は120°ずれている。
【0033】
クランク軸20の反入力側の第1軸部22は、クランク軸軸受39を介して第1キャリヤ35に支持される。クランク軸20の入力側の第2軸部26は、第2クランク軸軸受40を介して第2キャリヤ36に支持される。つまり、クランク軸20は、第1キャリヤ35および第2キャリヤ36に対して回転自在に支持されている。
【0034】
クランク軸軸受39、40は、キャリヤ35、36とクランク軸20の軸部22、26の間に配置される。クランク軸軸受39、40は、公知の種々の軸受機構を採用できる。この例では、クランク軸軸受39、40は、球状の転動体を有する玉軸受である。
【0035】
外歯歯車13、14、15は、複数の偏心部23、24、25のそれぞれに対応して個別に設けられる。外歯歯車13、14、15は、偏心軸受16、17、18を介して偏心部23、24、25の外周に揺動可能に組み込まれている。この例の偏心軸受16、17、18は、ころ軸受である。外歯歯車13、14、15は、それぞれ揺動しながら内歯歯車41に内接噛合する。外歯歯車13、14、15の外周には波形の歯が形成されており、この歯が内歯歯車41と接触しつつ移動することで、中心軸を法線とする面内で外歯歯車13、14、15が揺動できるようになっている。
【0036】
内歯歯車41は、外歯歯車13、14、15と噛み合う。実施形態の内歯歯車41は、ケーシング6の内周側に一体的に設けられた内歯歯車本体42と、内歯歯車本体42の内周面に周方向に所定の間隔で形成されたピン溝に配置された複数の外ピン43を有する。外ピン43は、内歯歯車本体42のピン溝に回転自在に支持される円柱状のピン部材である。外ピン43は、内歯歯車41の内歯を構成している。内歯歯車41の外ピン43の数(内歯の数)は、外歯歯車13、14、15の外歯数よりもわずかだけ(この例では1だけ)多い。
【0037】
外歯歯車13、14、15には、その軸心からオフセットされた位置に複数の内ピン孔45、46、47が形成される。内ピン孔45、46、47には内ピン48が貫通する。内ピン48の外周には、円筒状のスリーブ49が配置されている。スリーブ49は、内ピン孔45、46、47との摺動を円滑にするための摺動促進体として機能する。スリーブ49の外径は、内ピン孔45、46、47の内径よりも偏心量の2倍相当分小さくなっている。スリーブ49と内ピン48の間には外歯歯車13、14、15の揺動成分を吸収するための遊びとなる隙間が設けられるとともに、内ピン48は、スリーブ49を介して内ピン孔45、46、47の一部と常に接触している。内ピン48は、外歯歯車13、14、15の自転成分と同期してクランク軸20の軸心周りを公転し、キャリヤ35、36をクランク軸20の軸心周りに回転させる。内ピン48は、キャリヤ35、36と外歯歯車13、14、15との間の動力の伝達に寄与する。
【0038】
キャリヤ35、36は、中空リング形状を有する。第1キャリヤ35は、外歯歯車13、14、15の反入力側の側部に配置され、第2キャリヤ36は、外歯歯車13、14、15の入力側の側部に配置される。第1キャリヤ35は、第1主軸受37を介してケーシング6に回転自在に支持される。第2キャリヤ36は、第2主軸受38を介してケーシング6に回転自在に支持される。第1キャリヤ35は、第1クランク軸軸受39を介してクランク軸20の反入力側を回転自在に支持する。第2キャリヤ36は、第2クランク軸軸受40を介してクランク軸20の入力側を回転自在に支持する。
【0039】
主軸受37、38は、ケーシング6とキャリヤ35、36の間に配置される。主軸受37、38は、公知の種々の軸受機構を採用可能であり、この例の主軸受37、38は、アンギュラ玉軸受である。主軸受37、38の内側の転動面はキャリヤ35、36に形成されている。
【0040】
内ピン48は、第1キャリヤ35と一体的に形成され、第1キャリヤ35の入力側から第2キャリヤ36に向かって軸方向に延在する。ボルトB1が、第2キャリヤ36に設けられた貫通孔を通じて内ピン48の端部に設けられたタップ孔にねじ込まれることにより、キャリヤ35、36が互いに連結される。
【0041】
減速装置の構造上、キャリヤとケーシングの一方は、被駆動部材に回転動力を出力する出力部材となりうる。この例では、ケーシング6は、相手部材7に固定される被固定部材として機能し、第1キャリヤ35は、被駆動部材(不図示)に回転動力を出力する出力部材として機能する。
【0042】
減速装置10の動作を説明する。モータ軸12からクランク軸20に回転動力が伝達されると、クランク軸20の偏心部23、24、25がクランク軸20を通る回転中心線周りに回転し、その偏心部23、24、25により外歯歯車13、14、15が揺動する。このとき、外歯歯車13、14、15は、自らの軸芯がクランク軸20の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車13、14、15が揺動すると、外歯歯車13、14、15と内歯歯車41の外ピン43の噛合位置が順次ずれる。この結果、クランク軸20が一回転する毎に、外歯歯車13、14、15の歯数と内歯歯車41の外ピン43の数との差に相当する分、外歯歯車13、14、15および内歯歯車41の一方の自転が発生する。実施形態では、外歯歯車13、14、15が自転し、第1キャリヤ35から減速回転が出力される。第1キャリヤ35が回転することによって、第1キャリヤ35に連結される被駆動部材が回転駆動される。
【0043】
上記のように構成された減速装置10の特徴を説明する。実施形態の減速装置10は、内歯歯車41が設けられたケーシング6を有する減速装置であって、ケーシング6の外周部60の径方向外側に、空気よりも熱伝導性が高く、ケーシング6よりも変形しやすい第1熱伝導部材81が設けられる。
【0044】
この構成によれば、ケーシング6から第1熱伝導部材81を介して相手部材に放熱できるので、減速装置10の放熱性を向上できる。
【0045】
放熱性を改善するため、ケーシングと他部材の接触箇所を増やすことも考えられる。しかし、ケーシングは、その嵌合部以外の部分に関しては、加工精度の関係で外部の他部材と接触させることは難しい。また、仮に外部の他部材と接触させると、その部分で位置が規制され、嵌合部にうまく嵌らない可能性が生じる。そこで、実施形態では、一例として、ケーシング6は、相手部材7と嵌合するための嵌合部61と、嵌合部61とは別の外周部62とを有し、第1熱伝導部材81は、別の外周部62に設けられる。この場合、嵌合部61から相手部材7からしか放熱できない構成に比べ、さらに、別の外周部62から第1熱伝導部材81を介して放熱できる。
【0046】
一例として、外周部60の第1熱伝導部材81が設けられる領域の少なくとも一部には、フィン64が配置される。この場合、フィン64から第1熱伝導部材81を介して放熱できる。フィン64を用いることにより、ケーシング6と第1熱伝導部材81との接触面積が増加することが期待できる。よって、ケーシング6から第1熱伝導部材81への放熱性を向上できる。また、第1熱伝導部材81がケーシング6に対して移動しにくくなり、ケーシングに対して位置を保持しやすい。
【0047】
一例として、第1熱伝導部材81と外周部60との間には、空気より熱伝導性が高く、第1熱伝導部材81よりも変形しにくい第2熱伝導部材82が配置される。この場合、剛性の高い第2熱伝導部材82が配置されることにより、第1熱伝導部材81が外周部60や相手部材7に密着することがさらに期待できる。また、第1熱伝導部材81の体積を節約できる。第2熱伝導部材82は、第1熱伝導部材81よりも剛性が高くてもよい。
【0048】
一例として、第2熱伝導部材82は、第1熱伝導部材81よりも熱伝導性が高い。この場合、ケーシング6の放熱性がさらに向上することが期待できる。
【0049】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0050】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0051】
実施形態の説明では、減速装置10が取り付けられる相手部材7が、モータアダプタである例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、相手部材は、産業用ロボットのアーム、工作機械の構成部材、車両の構成部材等であってもよい。
【0052】
実施形態の説明では、嵌合部61、外周部62、外周部63が平坦な周面である例を示したが、本発明はこれに限定されない。嵌合部61、外周部62、外周部63には、凹部や段部が設けられてもよい。同様に、内周部71、72、73には、凹部や段部が設けられてもよい。
【0053】
実施形態の説明では、クランク軸20の挿入孔27に挿入される入力軸がモータ軸12である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、クランク軸の挿入孔に挿入される入力軸は、モータ軸のモータピニオンと噛み合う歯車の軸であってもよい。
【0054】
実施形態の説明では、クランク軸20が、キーを使用してモータ軸12に連結される例を示したが、本発明はこれに限定されない。クランク軸とモータ軸は公知の種々の連結方式によって連結されてもよい。
【0055】
実施形態の説明では、減速装置がいわゆるセンタークランクタイプの偏心揺動型減速装置である例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種の減速機構を採用できる。例えば、減速装置は、内歯歯車の軸心からオフセットした位置に複数のクランク軸が配置されるいわゆる振り分けタイプの偏心揺動型減速装置であってもよいし、単純遊星歯車型の減速装置であってもよい。
【0056】
また、例えば、減速装置は、筒型の外歯歯車を有する撓み噛み合い式減速装置(波動減速装置と称されることがある)であってもよい。減速装置は、カップ型やシルクハット型の撓み噛み合い式減速装置であってもよい。
【0057】
実施形態の説明では、減速装置10が、外歯歯車13、14、15を3枚備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。減速装置は、2枚以下または4枚以上の外歯歯車を備えてもよい。
【0058】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0059】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0060】
6 ケーシング、 7 相手部材、 8 熱伝導部材、 10 減速装置、 41 内歯歯車、 60 外周部、 61 嵌合部、 62,63 外周部、 64 フィン、 81 第1熱伝導部材、 82 第2熱伝導部材、 100 減速装置ユニット。
図1
図2
図3
図4