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特開2024-91114推定装置、推定方法、および推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091114
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、および推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61B5/11 320
A61B5/11 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207571
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】金田 健
(72)【発明者】
【氏名】渡部 沙希
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB05
4C038VB08
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】咀嚼能率を簡易に推定する。
【解決手段】推定装置(1)は、対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データ、および、対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から算出される、咀嚼運動に伴う前記対象者の口の動きに関する動き指標データを取得する取得部(102)と、ODK指標データおよび動き指標データから、対象者の咀嚼能率を推定する推定部(103)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データ、および、前記対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から算出される、咀嚼運動に伴う前記対象者の口の動きに関する動き指標データを取得する取得部と、
前記ODK指標データおよび前記動き指標データから、前記対象者の咀嚼能率を推定する推定部と、を備える推定装置。
【請求項2】
前記ODK指標データは、前記対象者が所定期間にタ音又はパ音を発音できた回数を含む、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記動き指標データは、少なくとも、縦方向の最大開口量の変動係数を含む、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記動き指標データは、少なくとも、咀嚼運動経路における最上点と最下点との直線距離の変動係数を含む、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項5】
前記動き指標データは、
咀嚼運動経路における最上点と最下点との直線距離の最小値、
前記直線距離の変動係数、
横方向の最小開口量、および、
縦方向の最大開口量の変動係数であり、
前記ODK指標データは、前記対象者が所定期間にタ音を発音できた回数である、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項6】
前記撮影の対象期間は、前記咀嚼の初期の期間であり、
前記動き指標データは、少なくとも、横方向の最大開口量の変動係数を含む、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、複数の被験者のそれぞれの前記ODK指標データおよび前記動き指標データを説明変数とし咀嚼能率を目的変数とする推定モデルと、前記取得部が取得する前記ODK指標データおよび前記動き指標データとに基づいて、前記対象者の咀嚼能率を推定する、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項8】
前記推定部が推定した咀嚼能率に応じた情報を出力装置に出力させる出力制御部をさらに備える、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項9】
1または複数の情報処理装置により実行される推定方法であって、
対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データを取得するステップと、
前記対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から算出される、咀嚼運動に伴う前記対象者の口の動きに関する動き指標データを取得するステップと、
前記ODK指標データおよび前記動き指標データから、前記対象者の咀嚼能率を推定するステップと、を含む推定方法。
【請求項10】
請求項1に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるための推定プログラムであって、前記取得部および前記推定部としてコンピュータを機能させるための推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼能率を推定する推定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、咀嚼により細分化が可能な食材を用いて咀嚼能率を推定する手法が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、対象者にグミゼリー等の測定用食品を咀嚼させ、口腔内から回収した咀嚼後の測定用食品を用いて咀嚼能率を測定する咀嚼能率測定装置が開示されている。これにおいては、咀嚼後の測定用食品を撹拌液中で一定時間攪拌し、攪拌液中に溶出した測定用食品の含有成分の濃度を測定し、測定された濃度から咀嚼能率評価値を導出する。
【0003】
また、攪拌装置や濃度測定装置を用いずに、評価者が目視によって、咀嚼後の測定用食品がどれくらい細分化されているかを判断してスコア化する手法(スコア法)も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/046377号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
口腔内から回収した咀嚼後の測定用食品を用いる手法では、咀嚼後の測定用食品のすべてを口腔内から回収する必要がある。しかしながら、対象者が咀嚼後の測定用食品のすべてを口腔内から出せている保証はない。また、対象者が咀嚼の途中で測定用食品を飲み込んでいる可能性も否定できない。特に、対象者が、認知機能の低下の恐れがある高齢者や幼児などの場合、咀嚼後の測定用食品のすべてを回収することは容易ではない。さらに、咀嚼後の測定用食品は、回収してから時間が経過すると色も変化するため、評価者が目視にて判断する手法では、回収してから判断するまでの時間も問題となる。
【0006】
本発明の一態様は、上述の事項に鑑みてなされたものであり、より簡易に咀嚼能率を推定することができる推定装置等を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定装置は、対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データ、および、前記対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から算出される、咀嚼運動に伴う前記対象者の口の動きに関する動き指標データを取得する取得部と、前記ODK指標データおよび前記動き指標データから、前記対象者の咀嚼能率を推定する推定部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る推定方法は、上記の課題を解決するために、1または複数の情報処理装置により実行される推定方法であって、対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データを取得するステップと、前記対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から算出される、咀嚼運動に伴う前記対象者の口の動きに関する動き指標データを取得するステップと、前記ODK指標データおよび前記動き指標データから、前記対象者の咀嚼能率を推定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、より簡易に咀嚼能率を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る推定装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】上記推定装置の概要を示す図である。
図3】特徴点検出部が検出する特徴点の例を示す図である。
図4】動き解析部が特徴点の検出結果に基づいて口の動きを解析する例を示す図である。
図5】上記推定装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る咀嚼能率の推定装置1および推定方法について図1から図5に基づいて以下詳細に説明する。咀嚼能率とは、一定回数の咀嚼をどれだけ効率よくできるか(細かく砕いたか)を示す指標である。
【0012】
咀嚼能率と咀嚼時の口の動きが関連していることが従来から知られている。理想的な咀嚼では、口が大きく動き、1回の咀嚼運動経路(チューイングサイクル)を安定して描け、また、咀嚼のリズムがよい。したがって、咀嚼運動における口の動きを指標として、咀嚼能率を推定することができる。
【0013】
さらに、本願発明者らは、実験により、咀嚼時の口の動きに、オーラルディアドコキネシスに関するODK指標データを加味することで、咀嚼能率の推定精度を向上させ得ることを見出した。オーラルディアドコキネシスとは、口腔機能(特に口唇、舌)の巧緻性および速度を評価する方法である。被験者にパ、タ、カの単音節をそれぞれ所定時間(例えば5秒間)ずつできるだけ早く繰り返し発音させて、1秒あたりの発音回数であるODK値を測定する。
【0014】
このような知見に鑑み、推定装置1では、対象者のODK指標データと、対象者の咀嚼の様子を撮影した画像から算出される、対象者の咀嚼時の口の動きを示す動き指標データをと、を取得し、取得したこれらのデータから、対象者の咀嚼能率を推定する。
【0015】
(推定装置の概要)
本発明の一実施形態に係る推定装置1の概要を図2に基づいて説明する。図2は、推定装置1の概要を説明する図である。推定装置1は、対象者の咀嚼能率を推定することが可能な装置である。
【0016】
図2に示すように、推定装置1は、画像を撮影する撮影装置である撮影部12と、画像を表示する表示装置である表示部16とを備えている。なお、図2の符号201~203では、表示部16に表示されている画像を拡大して示している。
【0017】
図2の符号201に示すように、推定装置1は、対象者に、食品を口に入れて咀嚼を促す第1ガイド情報A1を表示部16に表示し、咀嚼を行う対象者を撮影部12により撮影する。咀嚼能率の推定を受ける対象者は、任意の咀嚼対象物を口に含み、これを咀嚼する。咀嚼対象物は、咀嚼能率測定するための測定用食品(例えば、グミゼリー等)であってもよいし、一般的な食品であってもよい。推定装置1は、対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から、咀嚼運動に伴う対象者の口の動きに関する動き指標データを取得する。
【0018】
続いて、図2の符号202に示すように、推定装置1は、対象者に、対象者自身のODK指標データであるODK値の入力を促す第2ガイド情報A2を表示部16に表示し、ODK指標データの入力を受け付ける。
【0019】
図2の符号203に示すように、推定装置1は、対象者のODK指標データ、および対象者の動き指標データを取得すると、これら2つのデータから対象者の咀嚼能率を推定し、推定した咀嚼能率に応じた情報A3を表示部16に表示させる。図2の符号203に示す咀嚼能率に応じた情報A3は、咀嚼能率を示す咀嚼スコアと、咀嚼能率に応じた対象者へのコメントと、が表示されている。
【0020】
なお、図2には、推定装置1がタブレット型の端末装置である例を示している。例えば、所定の推定プログラム(アプリケーションと呼ぶこともできる)を端末装置にインストールすることにより当該端末装置を推定装置1として機能させることもできる。また、推定装置1はタブレット型の端末装置に限られない。例えば、推定装置1としてパーソナルコンピュータ等を適用することもできるし、ゲーム機等の他の機能を主とする装置に推定装置1としての機能を持たせることもできる。
【0021】
(推定装置の構成)
推定装置1のより詳細な構成について図1に基づいて説明する。図1は、推定装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、推定装置1は、上述の撮影部12および表示部16に加えて、推定装置1の各部を統括して制御する制御部10と、推定装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11を備えている。記憶部11には、咀嚼能率に用いる後述する推定モデル111が記憶されている。
【0022】
さらに、推定装置1は、推定装置1が他の装置と通信するための通信部13、推定装置1に対する各種データの入力を受け付ける入力部14、および音声を取得するマイク15等を備えている。なお、入力部14は例えばタッチパネルであってもよく、この場合、当該タッチパネルが入力部14と表示部16を兼ねることになる。また、推定装置1は、音声出力部を備えていてもよい。
【0023】
制御部10には、画像取得部101、取得部102、推定部103、および出力制御部104が含まれている。また、取得部102には、動き指標データ取得部105とODK指標データ取得部106が含まれている。さらに、動き指標データ取得部105には、特徴点検出部1051と動き解析部1052が含まれている。
【0024】
画像取得部101は、対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像を取得する。本実施形態では、画像取得部101が、撮影部12が撮影した画像を取得する例を説明するが、画像取得部101は、他の装置が撮影した画像を通信部13または入力部14を介して取得してもよい。あるいは、画像取得部101は、推定装置1において着脱可能な外付けメモリ等に記憶されている画像を、不図示の端子を介して取得してもよい。取得する画像は、動画像であってもよいし、時系列を構成する複数の静止画像であってもよい。
【0025】
動き指標データ取得部105は、対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像に基づき、対象者の口の動きに関する動き指標データを取得する。動き指標データ取得部105の機能は、特徴点検出部1051および動き解析部1052により実現される。また、動き指標データ取得部105は、対象者に、食品を口に入れて咀嚼を促す前述した第1ガイド情報(図2の符号201のA1参照)を表示部16に表示させる機能も有している。
【0026】
特徴点検出部1051は、対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から対象者の顔における所定の特徴点を検出し、特徴点毎の位置情報を取得する。動き解析部1052は、時系列の上記位置情報を用いて咀嚼時の口の動きを解析し、その動きを示す動き指標データを算出する。算出された動き指標データは、推定部103に送られる。なお、動き指標データ取得部105によるこれらの処理の詳細については、図3図4に基づいて後述する。
【0027】
ODK指標データ取得部106は、対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データを取得する。また、ODK指標データ取得部106は、対象者にODK値の入力を促す前述した第2ガイド情報(図2の符号202のA2参照)を表示部16に表示させる機能も有している。取得されたODK指標標データは、推定部103に送られる。
【0028】
本実施形態では、ODK指標データ取得部106は、入力部14からODK指標データとして入力されることでODK指標データを取得する例を説明するが、通信部13を介してODK指標データを取得してもよい。あるいは、表示部16にODK指標データを測定するための画面を表示させて、ODK指標データを測定することで取得してもよい。
【0029】
ODK指標データを測定にて取得する場合、前述したODK指標データの入力を促すガイド情報に代えて、ODK指標データを測定するためのガイド情報、例えば、対象者に「タ音(あるいはパ音)を○○秒間連続して発音してください」というような情報を表示させる。そして、推定装置1は、対象者が発生した音声をマイク15で取得し、ODK指標データを測定する。このとき、ODK指標データを測定するための動作を行う対象者を撮影し、取得した音声と画像の両方を用いてODK指標データを測定してもよい。
【0030】
推定部103は、動き指標データ取得部105にて取得された動き指標データ、およびODK指標データ取得部106にて取得されたODK指標データから、対象者の咀嚼能率を推定する。推定部103は、取得された動き指標データおよびODK指標データから、記憶部11に記憶されている咀嚼能率を推定するための推定モデル111を用いて、対象者の咀嚼能率を推定する。推定部103が推定した咀嚼能率は、出力制御部104に送られる。
【0031】
推定モデル111は、複数の被験者のそれぞれのODK指標データおよび動き指標データを説明変数とし咀嚼能率を目的変数とするモデルである。推定モデル111は機械学習により生成されたものである。このように、推定部103は、推定モデル111を用いて推定を行うから、複数の被験者におけるODK指標データおよび動き指標データと咀嚼能率の関係に基づいた妥当な推定結果を得ることができる。
【0032】
なお、上記機械学習のアルゴリズムは特に限定されない。例えば、推定モデル111は、重回帰分析、ニューラルネットワーク、または決定木等により生成されたものであってもよい。また、推定モデル111に出力させる値は、咀嚼能率を示すものであればよい。例えば、咀嚼能率を示す咀嚼スコア等の数値、すなわち咀嚼スコアの推定値を出力するように学習した推定モデル111を用いてもよいし、咀嚼能率を例えば、高い、普通、低い等に分類した分類結果を出力するように学習した推定モデル111を用いてもよい。
【0033】
本実施の形態においてODK指標データは、対象者が所定期間にタ音又はパ音を発音できた回数を含む。タ音は舌の前方部分を挙上させる能力に関係し、この能力が低下すると回数も低くなる。また、パ音は口唇を閉じたり開けたりする能力に関係し、これにおいてもこの能力が低下すると回数も低くなる。舌の前方部分を挙上させる能力、および口唇を閉じたり開けたりする能力は、咀嚼運動に伴い口を動かす能力に関係する。したがって、ODK指標データにおけるタ音又はパ音を発音できた回数を、咀嚼能率を推定する際の指標として用いることにより、咀嚼能率の推定精度が向上し、妥当な咀嚼能率を指定することが可能となる。
【0034】
出力制御部104は、推定部103が推定した咀嚼能率に応じた情報(図2の符号203のA3参照)を出力装置に出力させる。これにより、推定した咀嚼能率に応じた情報を対象者に認識させることができる。出力される咀嚼能率に応じた情報は、推定した咀嚼能率に応じたものであればその内容は任意である。
【0035】
例えば、出力制御部104は、咀嚼能率に応じた情報として、咀嚼能率を示す咀嚼スコアの情報を出力して出力装置であり表示部16に表示させてもよい。咀嚼スコアは、「10点満点中の7点です」というように、直感的に能率を認識できるように表示されてもよい。また、出力制御部104は、咀嚼スコアに換えて、推定した咀嚼能率を基に、良い、普通、悪い等の段階的に評価し、各段階に応じた表情を呈する顔画像を表示させるなどしてもよい。例えば、出力制御部104は、咀嚼スコアが10点満点中3点以下であるような咀嚼能率が低い場合は、困惑している、あるいは泣いているような顔画像等を表示させ、咀嚼スコアが7以上であるような咀嚼能率が高い場合は、微笑んでいるような顔画像等を表示させてもよい。
【0036】
また、出力制御部104は、推定した咀嚼能率に応じた情報として、推定した咀嚼能率に応じて、咀嚼能率を維持しよう、咀嚼能率が低下しないように気をつけよう、あるいは咀嚼能率を改善しようとする動機付けとなるようなコメントを表示させてもよい。
【0037】
例えば、出力制御部104は、推定された咀嚼能率が高い(良好)である場合、「とても良く咀嚼できています。このまま維持できるようにしましょう。」等のコメントを表示させてもよい。また、出力制御部104は、推定された咀嚼能率が平均的である場合、「普通に咀嚼できているようです。咀嚼しにくくなる前に、対策しましょう。」等のコメントを表示させてもよい。また、出力制御部104は、推定された咀嚼能率が低い(悪い)場合、「普通しにくいと感じていませんか?咀嚼の能率を改善しましょう。」等のコメントを表示させてもよい。コメントを表示させることで、対象者に、自身の現時点での咀嚼能率に対し、維持、低下の抑制、あるいは改善といった意識付けることができ、咀嚼能率を高める上で有効である。
【0038】
また、出力制御部104は、咀嚼能率に応じた情報として、推定した咀嚼能率に応じて、対策や対策商品を勧めるソリューションを提供するようにしてもよい。例えば、推定した咀嚼能率が低い場合は、「普段から硬さのあるものを1品取り入れるようにしましょう。」、「口を大きく動かして食べることを意識しましょう。」等の対策を表示させてもよい。その他、出力制御部104は、例えば、「○○を使って、咀嚼するトレーニングをしましょう。」等の、咀嚼能率を上げるための商品や、咀嚼能率を上げるための訓練用動画の導入を促すなどを勧めるメッセージを表示させてもよい。
【0039】
なお、ここで例示した、推定した咀嚼能率に応じた情報は一例であり、対象者が推定された咀嚼能率を認識し得るものであればよい。また、推定した咀嚼能率に応じた情報を出力させる出力装置として、表示部16を例示したが、推定装置1が音出力部を備えている場合は咀嚼能率に応じた情報を音声出力してもよい。また、推定装置1と有線または無線接続された外部の出力装置に咀嚼能率に応じた情報を出力させてもよい。この他にも、例えば印字出力により推定した咀嚼能率に応じた情報を出力する出力装置を適用することもできる。以下では、出力制御部104が表示部16に画像を表示させることにより、推定した咀嚼能率に応じた情報を出力する例を説明するが、以下の説明における「表示部16」は任意の「出力装置」に読み替えることができ、「表示」は「出力」に読み替えることができる。
【0040】
(特徴点の検出)
特徴点検出部1051による特徴点の検出方法について、図3に基づいて説明する。図3は、特徴点検出部1051が検出する特徴点の例を示す図である。図3には対象者の顔の正面の模式図31を示しており、311~319が検出する特徴点の例を示している。
【0041】
特徴点検出部1051が検出する特徴点は、咀嚼時の口の動きの解析に用いられるものであるから、咀嚼時にその咀嚼態様が反映された動きをする部位とすればよい。例えば、特徴点検出部1051は、模式図31における点314(上唇の頂点)、点315(下唇の頂点)、点316(下顎の中心位置)または点319(下顎の先端)等のような、顔の中心線L上の口の周囲の部位を特徴点として検出してもよい。中心線L上の部位を特徴点として検出することにより、咀嚼時における口の横方向の動きの大きさを特定しやすい。
【0042】
また、特徴点検出部1051は、模式図31における点317および点318(口角)を特徴点として検出してもよい。この場合、動き解析部1052は、点317(右側の口角)と点318(左側の口角)の中間点の動きを口の動きとみなして口の動きを解析すればよい。
【0043】
また、特徴点検出部1051は、咀嚼に起因した動きのない部位を検出してもよい。例えば、特徴点検出部1051は、点313(鼻頭)を検出してもよい。この場合、動き解析部1052は、点313(鼻頭)の位置を基準として、画像上の特徴点の位置を表すことができる。これにより、時系列の画像間で対象者が写る位置がずれた場合でも、各特徴点の時系列の動きを正確に特定することができる。
【0044】
さらに、特徴点検出部1051は、口の動きの大きさを特定する際の基準となる画像上の距離を求めるために、咀嚼に起因した動きのない複数の部位を検出してもよい。例えば、特徴点検出部1051は、点311および点312(目頭)を検出してもよい。これにより、動き解析部1052は、点311(右側の目頭)と点312(左側の目頭)の間の距離を基準として、口の動きの大きさを特定することができる。特徴点検出部1051は、点311、点312、点313、点317、点318および点319等を、顔の中心線Lを求めるために利用してもよい。
【0045】
このように、動き指標データ取得部105は、画像から検出された、対象者の顔における咀嚼により位置が変化することがない所定の特徴点間の距離に基づいて対象者の咀嚼時における口の縦方向および横方向の動きの大きさを特定してもよい。これにより、画像に対象者が大きく写る場合でも小さく写る場合でも、口の動きの大きさを的確に特定することができる。
【0046】
なお、口の動きの大きさを特定するための基準となる距離は対象者等に入力させてもよい。また、被写体までの距離が分かる場合(例えば距離情報を出力する3次元カメラで撮影した場合等)にはその距離に応じて口の動きの大きさを評価できるため基準の距離を算出するための部位検出は不要である。
【0047】
上述のような特徴点の検出方法は特に限定されず、例えば、画像解析の手法を適用してもよいし、機械学習の手法を適用してもよく、それらを組み合わせて適用してもよい。また、複数の特徴点を検出する場合、検出対象の特徴点毎に特徴点検出部1051を設けてもよい。また、対象者の顔の検出対象部位に検出用のマーカや2次元コードや3次元コードを貼り付けて、画像中からそれらを検出してもよい。
【0048】
(口の動きの解析)
動き解析部1052による口の動きを解析する解析方法について、図4に基づいて説明する。図4は、動き解析部1052が特徴点の検出結果に基づいて口の動きを解析する例を示す図である。
【0049】
動き解析部1052は、上述のようにして検出された特徴点の時系列の位置変化から、咀嚼時の口の動きを解析し、その動きを示す指標データを算出する。図4に示すグラフ41は、画像上における特徴点の時系列の位置変化を示すグラフであり、1回の咀嚼運動経路を示す。グラフ41は、時系列の複数の画像のそれぞれから検出した当該画像に写る特徴点の位置情報から生成することができる。
【0050】
グラフ41は、咀嚼において、口腔内が閉口状態から開口状態に移行し、再び閉口状態に移行した1回の咀嚼運動経路における特徴点の位置の遷移を示している。ここで、口腔内が閉口状態にあるとは、上顎に対して下顎を閉じている食品を噛んでいる状態である。また、口腔内は開口状態にあるとは、上顎に対して下顎を開いている食品を噛んでいない状態である。つまり、咀嚼時における閉口状態および開口状態は、口腔内における上下の顎の開閉状態を示しており、口唇の開閉状態を示すものではない。
【0051】
例えば、下顎(模式図31における点316あるいは点319)の位置は、咀嚼時にグラフ41に示されるような変化をする。グラフ41においは、初期位置411が、咀嚼開始時(下顎を下げ始める直前)の特徴点の位置(スタート地点)を示している。初期位置411が、咀嚼運動経路における最上点に相当する。グラフ41に示される例では、咀嚼開始後に特徴点は左下方向に移動して最下位置(最下点)412に達し、それ以降、上移動に転じて右上方向に移動して、咀嚼開始時の初期位置411に戻っている。なお、ここで説明された左右とは、対象者を撮影(観察)する側から見た左右であり、対象者から見れば左右は逆であることを付言しておく。
【0052】
このように、グラフ41には、咀嚼開始時の初期位置411から特徴点が移動し、最下位置412を経て再び初期位置411の付近に戻ってくるという特徴がある。よって、動き解析部1052は、この特徴を利用してグラフ41から1回の咀嚼動作を特定することができる。また、これにより、咀嚼対象物を噛み始めてから嚥下するまでの咀嚼回数を示す指標値なども算出することもできる。
【0053】
以下に、時系列の複数の画像のそれぞれから検出した特徴点の位置情報であるグラフ41より取得できる口の動きに関する動きの指標を例示する。
【0054】
<動きの指標X、V、Dx、Dy>
グラフ41から、咀嚼運動経路における、上述した初期位置411および最下位置412の他、特徴点が最も左側に移動したときの最左位置413、および特徴点が最も右側に移動したときの最右位置414、を特定することができる。
【0055】
以上のようにして特定した特徴点の位置情報に基づいて、動き解析部1052は、咀嚼ごとに咀嚼運動経路における、横方向の最大幅を表す動き指標X(最左位置413と最右位置414との横方向の距離)、特徴点の移動距離を表す動き指標V(初期位置411と最下位置412までの直線距離)、初期位置411から最下位置412までの横方向の距離を表す動き指標Dx、初期位置411から最下位置412までの縦方向の距離を表す、縦方向の動き指標Dy、を特定することができる。このようにして得られたか咀嚼ごとの指標を基に、所定の期間(複数の咀嚼回数)における、最小値、最大値、変動係数等を算出する。例えば、指標Xから、横方向の最大開口量Xおよび横方向の最小開口量X_Minを算出し、指標Dyから縦方向の最大開口量Dyを算出する。
【0056】
具体的には、動き解析部1052は、時系列の複数の画像のそれぞれから検出した特徴点の位置情報から、1回の咀嚼動作に包含される位置情報を抽出する。そして、動き解析部1052は、1回の咀嚼動作における口の動きに関する動き指標データとして、動き指標X、V、Dy、Dx等を算出する。また、動き指標Dyを動き指標Dxで割ることで、咀嚼サイクル縦横比を求めることができる。
【0057】
この際、動き解析部1052は、画像から検出された対象者の顔における、咀嚼により位置が変化することがない所定の特徴点間の距離に基づき、動き指標データを算出してもよい。例えば、動き解析部1052は、模式図31における点311(右側の目頭)と点312(左側の目頭)の間の距離Exを算出し、動き指標DyとしてDy/Exの値を算出し、動き指標VとしてV/Exの値を算出し、動き指標XとしてX/Exの値を算出してもよい。これにより、Dy、VおよびXの値を無次元化して、画像に写る対象者の大きさの違いをキャンセルすることができる。
【0058】
また、このようにして算出した動き指標X、V、Dy、Dx等における、合計値、最大値、最小値、平均値、中央値、標準偏差値、標準誤差値、変動係数等を代表値として用いてもよい。
【0059】
また、全咀嚼(例えば30回)の全てを用いて動き指標データを算出してもよいし、全咀嚼期間を例えば、前期、中期、後期の3つに区別し、一部の期間について動きの指標データを算出してもよい。期間は時間に基づいて区分してもよいし、咀嚼回数に基づいて区分してもよい。後者の場合、全咀嚼のうちの、咀嚼が安定している期間、例えば全咀嚼が30回とすると、5回目から14回目までの10回分の咀嚼を用いて動き指標データを算出してもよい。
【0060】
また、動き解析部1052は、口の動きの大きさを示す指標値以外の動きの指標データを算出してもよい。例えば、動き解析部1052は、例えば30回等の所定の咀嚼回数の咀嚼を行う様子を撮影した複数の画像から算出した咀嚼運動経路のピッチPPを咀嚼回数で割って算出した、1咀嚼当たりの平均速度(Hz)を動きの指標データとして算出してもよい。咀嚼運動経路のピッチPPは、咀嚼間の時間、つまり、咀嚼の開始点から次の咀嚼の開始点までの時間である。閉口状態の一点を開始点としても良いし、最大開口点を開始点としてもよい。
【0061】
この他にも、動き解析部1052は、例えば、口角の動き等に基づいて左右どちら側で咀嚼しているかを判定し、左右のどちらか咀嚼回数の多いほうを主咀嚼側とし、主咀嚼側の動きのみを用いて動き指標データを算出してもよい。もちろん、左右どちら側で咀嚼してもよいとし、左右の偏りを考慮しなくてもよい。
【0062】
<その他の動きの指標S、oVel、cVel、Loss、Dx、Dz>
また、グラフ41から、1回の咀嚼動作における、動きの指標S、oVel、cVel、Loss、Dx、Dz等も取得できる。Sは1回の咀嚼動作において、グラフ41で囲まれる部分の面積である。oVelは閉口状態から開口状態に遷移する際の特徴点の移動速度(開口速度)である。cVelは開口状態から閉口状態に遷移する際の特徴点の移動速度(閉口速度)である。Lossは、咀嚼サイクルにおける閉口時間(閉口状態を維持している時間)である。Dzは初期位置411から最下位置412までの奥行(前後方向の距離)である。
【0063】
以上のように、推定装置1は、対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データ、および対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から算出される、咀嚼運動に伴う前記対象者の口の動きに関する動き指標データを取得する取得部102と、ODK指標データおよび動き指標データから、対象者の咀嚼能率を推定する推定部103と、を備える。上述のとおり、本願発明者らの実験により、オーラルディアドコキネシスに関するODK指標データが咀嚼能率の推定精度を向上させることが見出されており、咀嚼能率を推定するにあたり動き指標データに加えてODK指標データを用いる上記の構成によれば、妥当な咀嚼能率を推定することが可能になる。
【0064】
また、推定装置1において、動き指標データは、少なくとも、縦方向の最大開口量Dyの変動係数Dy_Covを含むようにしてもよい。理想的な咀嚼では、咀嚼ごとの口の縦方向の移動量が揃っている。変動係数の大きさから、咀嚼時の口の動きの安定性を見ることができる。咀嚼時の口の動きが安定しているということは、上手に噛めていることであるため、変動係数は咀嚼能率に関連性が高い。したがって、咀嚼時の口の縦方向の動きを示す縦方向の最大開口量Dyの変動係数を指標として動きの安定性を加味することは、妥当な咀嚼能率の推定に適している。
【0065】
また、推定装置1において、動き指標データは、少なくとも、咀嚼運動経路における最上点(初期位置411)と最下点(最下位置412)との直線距離(移動距離V)の変動係数V_Covを含むようにしてもよい。上述したように、咀嚼時の口の動きが安定しているということは、上手に噛めていることであるため、変動係数は咀嚼能率に関連性が高い。したがって、咀嚼時の口の縦方向の動きを示す移動距離Vの変動係数を指標として動きの安定性を加味することは、妥当な咀嚼能率の推定に適している。
【0066】
また、推定装置1において、動き指標データは、咀嚼運動経路における最上点(初期位置411)と最下点(最下位置412)との直線距離(移動距離V)の最小値V_Min、該直線距離(移動距離V)の変動係数V_Cov、横方向の最小開口量X_Min、および、縦方向の最大開口量Dyの変動係数Dy_Covであり、ODK指標データは、対象者が所定期間にタ音を発音できた回数ODKTaであってもよい。口を大きく動かすことは、最小値が一定以上であることと同じであり、移動距離Vの最小値V_Min、横方向の最小開口量X_Minから、口を大きく動かしているかどうかがわかる。これにより、咀嚼動作における口の動きの指標、およびODK値の指標が最良の組み合わせとなり、精度よく妥当な咀嚼能率の推定することができる。
【0067】
また、推定装置1において、撮影の対象期間は、咀嚼の初期の期間であり、動き指標データは、少なくとも、横方向の最大開口量の変動係数X_Covを含むようにしてもよい。咀嚼初期の塊となっている状態の食品は咀嚼しにくい。そのため、咀嚼能力が低い場合、横方向の最大開口量Xが咀嚼ごとに変動し不安定となる。咀嚼が進むにつれて、咀嚼しやすくなり、横方向の最大開口量Xも安定する。一方、咀嚼能率の高い上手に噛める人は、対象物が塊や硬い状態である咀嚼の初期期間から安定して噛めるので、変動係数が小さくなる。したがって、咀嚼の前記の期間の口の横方向の動きのばらつきを示す横方向の最大開口量の変動係数を見ることで、推定精度を向上させることができる。つまり、咀嚼し難い咀嚼初期の期間における、横方向の最大開口量の変動係数を指標として動きの安定性を加味することは、妥当な咀嚼能率の推定に適している。
【0068】
〔処理の流れ(推定方法)〕
推定装置1が実行する処理(推定方法)の流れを図5に基づいて説明する。図5は、推定装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。S1では、動き指標データ取得部105が、表示部16に咀嚼能率を推定するために対象者に咀嚼動作を行うことを促すための第1ガイド情報A1(図2の符号201参照)を表示させる。
【0069】
S2では、画像取得部101が、対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像を取得する。例えば、画像取得部101は、S1で表示されたガイド情報に従って咀嚼動作を行う対象者を撮影部12に撮影させて、撮影部12が撮影する画像を取得してもよい。
【0070】
S3では、特徴点検出部1051が、S2で取得された各画像から特徴点を検出する。S4では、動き解析部1052が口の動きを解析して動き指標データを取得する。S5では、動き指標データ取得部105は、動き指標データを取得できたか否かを判定し、動き指標データを取得できていないと判断すると(S5にてNO)、S2に処理を戻す。一方、S5で、動き指標データ取得部105は、動き指標データを取得できたと判定すると(S5にてYES)、S6に処理を進める。
【0071】
S6では、ODK指標データ取得部106が、表示部16にODK値の入力を促すための第2ガイド情報A2(図2の符号202参照)を表示させる。S7では、ODK指標データ取得部106が、入力されたODK指標データを取得する。S8では、ODK指標データ取得部106は、ODK指標データできたか否かを判定し、ODK指標データを取得できていないと判断すると(S8にてNO)、S7に処理を戻す。一方、S6で、ODK指標データ取得部106は、ODK指標データを取得できたと判断すると(S8にてYES)、S9に処理を進める。なお、S1~S5の処理よりも先にS6~S8の処理を実行するようにしてもよい。
【0072】
S9では、推定部103が、S4で取得した動き指標データとS7で取得したODK指標データから、記憶部11の推定モデル111を用いて、咀嚼能率の推定を行う。S10では、出力制御部104が、S9の推定結果である推定した咀嚼能率に応じた情報A3(図2の符号203参照)を表示部16に出力させる。続いて、S11では、制御部10が、処理を終了するか否かを判定する。S11で終了しないと判定された場合にはS1に戻り、終了すると判定された場合には図5の処理は終了する。なお、S11の終了条件は特に限定されず、例えば、入力部14を介して処理を終了する操作が行われたときに処理を終了すると判定してもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態の推定方法は、対象者のオーラルディアドコキネシスに関するODK指標データを取得するステップ(S7)と、対象者の咀嚼の様子を時系列で撮影した画像から算出される、咀嚼運動に伴う前記対象者の口の動きに関する動き指標データを取得するステップ(S3、S4)と、取得したODK指標データおよび動き指標データから、対象者の咀嚼能率を推定するステップ(S9)と、を含む。よって、妥当な咀嚼能率を適切に推定することが可能になる。
【0074】
上記実施形態で説明した各処理の実行主体は任意であり、上述の例に限られない。例えば、推定装置1の機能は、複数の情報処理装置で構成されるシステムにより実現することも可能である。また、図5に示した各ステップの実行主体も任意である。つまり、図5に示される推定方法は、1つの情報処理装置に実行させることもできるし、複数の情報処理装置に各ステップの処理を分担させることにより実行することもできる。
【0075】
〔ソフトウェアによる実現例〕
推定装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(推定プログラム)により実現することができる。
【0076】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0077】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0078】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 推定装置
10 制御部
11 記憶部
12 撮影部
13 通信部
14 入力部
15 マイク
16 表示部
101 画像取得部
102 取得部
103 推定部
104 出力制御部
105 指標データ取得部
106 ODK指標データ取得部
111 推定モデル
411 初期位置(最上点)
412 最下位置(最下点)
413 最左位置
414 最右位置
1051 特徴点検出部
1052 動き解析部
図1
図2
図3
図4
図5