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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091116
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】飲料容器とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20240627BHJP
   B65D 8/04 20060101ALI20240627BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240627BHJP
   B41M 1/40 20060101ALN20240627BHJP
   B41M 1/28 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
B65D25/20 Q
B65D8/04 G
B65D8/04 M
B41J2/01 129
B41J2/01 109
B41M1/40 Z
B41M1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207574
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】川村 康晴
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
3E061
3E062
【Fターム(参考)】
2C056FB04
2C056FB09
2C056HA44
2H113AA04
2H113BB10
2H113BB24
2H113CA25
2H113CA46
2H113FA43
3E061AA16
3E061AA24
3E061AB13
3E061AC02
3E061BA01
3E061BB06
3E061BB18
3E062AA04
3E062AA10
3E062AB02
3E062AC09
3E062DA01
3E062DA02
3E062DA09
(57)【要約】
【課題】インクジェットプリンタによる印刷を少ない工程数で立体形状を付すことができる、飲料容器を提供する。
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金からなるカップ10と、カップ10の外周面10Aに形成されて浮き上がった盛上げ部20と、を備え、盛上げ部20は、外周面10Aに形成された下地層210Bと、この下地層210Bの一部に積層された着色層220と、着色層220と着色層220の周りにある下地層210Bとを覆う透明層230と、を備え、着色層220と透明層230とは硬化した紫外線硬化塗料で構成されていて、透明層230が着色層220よりも厚く形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる有底筒状部と、
有底筒状部の外面に形成されて浮き上がった盛上げ部と、を備え、
盛上げ部は、外面に形成された下地層と、この下地層の一部に積層された着色層と、この着色層と前記着色層の周りにある下地層とを覆う透明層と、を備え、
前記着色層と前記透明層とは硬化した紫外線硬化塗料で構成されていて、前記透明層が前記着色層よりも厚く形成されていることを特徴とする、飲料容器。
【請求項2】
有底筒状部がカップ状に形成されていて、前記盛上げ部を設けた外面が外周面であることを特徴とする、請求項1に記載の飲料容器。
【請求項3】
前記有底筒状部が、缶軸を中心とするリング状に形成された着地用のリム部と、このリム部から拡径して上方へ延びた立ち上がり部と、この立ち上がり部に連続して形成された下部円筒部と、この下部円筒に連続して形成された下部段部と、この下部段部に連続して形成されていて漸次拡径して上方へ延びたテーパ筒部と、このテーパ筒部に連続して形成された上部段部と、この上部段部に連続して形成された上部円筒部と、この上部円筒部に連続して形成されたカール部と、を備え、
前記下部段部と前記上部段部とがそれぞれ漸次拡径して上方へ延びていて、
複数の飲料容器をスタックした状態で、内側の前記飲料容器が前記立ち上がり部と前記下部円筒部とをつなぐ部分を外側の前記飲料容器の前記下部段部に当てて外側の前記飲料容器の内側に保持されることで、又は内側の前記飲料容器が前記上部段部を外側の前記飲料容器の前記上部円筒部と前記カール部とをつなぐ部分に当てて外側の前記飲料容器の内側に保持されることで、内側の前記飲料容器の外周面と外側の前記飲料容器の内周面との間にクリアランスが構成され、さらに内側の前記飲料容器の前記盛上げ部が外側の前記飲料容器の内周面に非接触に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の飲料容器。
【請求項4】
下地層を外面に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる有底筒状部へ向けて、インクジェットプリンタの第一印刷ヘッドから着色用の第一紫外線硬化塗料を噴出させて、前記第一紫外線硬化塗料を前記下地層の一部に塗布する第一印刷工程と、
紫外線照射装置から紫外線を前記有底筒状部前記の第一紫外線硬化塗料に照射して、前記第一紫外線硬化塗料を硬化させて着色層を形成する第一紫外線照射工程と、
前記着色層を覆って前記下地層より盛り上がる透明層を形成する透明層形成工程と、を備え、
前記透明層形成工程は、
液滴量が第一印刷ヘッドから噴出される液滴量よりも多く設定された前記インクジェットプリンタの第二印刷ヘッドから前記有底筒状部の前記着色層へ向けて、透明層形成用の第二紫外線硬化塗料を噴出させて、前記第二紫外線硬化塗料を前記着色層の上に塗布する第二印刷工程と、
紫外線照射装置から紫外線を前記有底筒状部の前記第二紫外線硬化塗料に照射して、前記第二紫外線硬化塗料を硬化させて前記着色層よりも厚い透明の硬化層を形成する第二紫外線照射工程と、を備えていることを特徴とする、飲料容器の製造方法。
【請求項5】
前記透明層形成工程では、前記第二印刷工程と前記第二紫外線照射工程とを複数回繰り返して複数の前記硬化層を積層することで、前記透明層を形成することを特徴とする、請求項4に記載の飲料容器の製造方法。
【請求項6】
複数回行う前記硬化層の形成の内、最も外側に配置される前記硬化層を形成する際には、前記第二印刷工程の後に、塗布したレベリング剤を含む前記第二紫外線硬化塗料のレベリングを行うことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の飲料容器の製造方法。
【請求項7】
前記第一印刷工程では、色毎に設けられた複数の前記第一印刷ヘッドの内、一つの前記第一印刷ヘッドを用いて前記第一紫外線硬化塗料を前記下地層に塗布し、他の色の前記第一印刷ヘッドを用いた前記第一紫外線硬化塗料の前記下地層への塗布を行わないことを特徴とする、請求項6に記載の飲料容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金等からなる有底筒状部を備えた飲料容器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用の容器として、外周面に立体的な模様を付したものが知られている。特許文献1に開示の容器は、ステンレス合金等の金属の表面に形成したプライマ層と、このプライマ層に積層した複数の意匠構築層と、最上層を構成する保護層と、を備えており、意匠構築層が着色されていて幾何学的模様や花の絵柄を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-68361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の容器では、インクジェット印刷によって模様を容器の外周面に形成しており、意匠構築層は重ね刷りした複数の層で構成されているため、印刷工程の数が多くなり、一つの容器の印刷に時間を要する。このため、短時間の印刷で立体な形状を外周面に付すことが望ましい。これは印刷によってアルミニウム缶に立体的な形状を付す場合も同様である。
【0005】
そこで、本発明は、インクジェットプリンタによる印刷を少ない工程数で立体形状を付すことができる、飲料容器とその製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の飲料容器は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる有底筒状部と、前記有底筒状部の外面に形成されて浮き上がった盛上げ部と、を備え、前記盛上げ部は、前記外面に形成された下地層と、この下地層の一部に積層された着色層と、この着色層と前記着色層の周りにある下地層とを覆う透明層と、を備え、前記着色層と前記透明層とは硬化した紫外線硬化塗料で構成されていて、前記透明層が前記着色層よりも厚く形成されている。
【0007】
着色層を厚くして盛上げる場合には、単一色以外は異なる色間の滲みなどが生じ易くなるため、インクジェップリンタによる一度の印刷工程(パス)で印刷ヘッドから噴出する塗布する量(液滴量)に限界があり、少量のインキを用いた印刷工程(パス)を繰り返すことになる。このように印刷を繰り返して着色層を厚くするのでは印刷時間が長くなってしまう。一方、本発明では、透明層で盛り上がることとしているので、透明層を形成する際には印刷ヘッドから噴出する紫外線硬化塗料の量(液滴量)を多くすることができる。これにより、透明層を多層にする場合も少ない層で済み、また印刷時間も短くすることができる。厚く形成された透明層が着色層を覆うことで、着色層の箇所が浮き上がる外観を呈することができる。
【0008】
本発明の飲料容器では、前記有底筒状部がカップ状に形成されていてもよい。前記盛上げ部を設けた前記外面が外周面であることで、顧客に対して見映えの良い外観を呈することができる。
【0009】
本発明の飲料容器は、好ましくは、前記有底筒状部が、缶軸を中心とするリング状に形成された接地用のリム部と、このリム部から拡径して上方へ延びた立ち上がり部と、この立ち上がり部に連続して形成された下部円筒部と、この下部円筒に連続して形成された下部段部と、この下部段部に連続して形成されていて漸次拡径して上方へ延びたテーパ筒部と、このテーパ筒部に連続して形成された上部段部と、この上部段部に連続して形成された上部円筒部と、この上部円筒部に連続して形成されたカール部と、を備え、前記下部段部と前記上部段部とがそれぞれ漸次拡径して上方へ延びていて、複数の飲料容器をスタックした状態で、内側の前記飲料容器が前記立ち上がり部と前記下部円筒部とをつなぐ部分を外側の前記飲料容器の前記下部段部に当てて外側の前記飲料容器の内側に保持されることで、又は内側の前記飲料容器が前記上部段部を外側の前記飲料容器の前記上部円筒部と前記カール部とをつなぐ部分に当てて外側の前記飲料容器の内側に保持されることで、内側の前記飲料容器の外周面と外側の前記飲料容器の内周面との間にクリアランスが構成され、さらに内側の前記飲料容器の前記盛上げ部が外側の前記飲料容器の内周面に非接触に配置される。
スタックした状態でクリアランスに盛上げ部を配置することで、盛上げ部が外側の飲料容器の内周面に密着した状態から取り外す際に擦れる等して損傷することを防止できる。
【0010】
本発明の飲料容器の製造方法は、下地層を外面に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる有底筒状部へ向けて、インクジェットプリンタの第一印刷ヘッドから着色用の第一紫外線硬化塗料を噴出させて、前記第一紫外線硬化塗料を前記下地層の一部に塗布する第一印刷工程と、紫外線照射装置から紫外線を前記有底筒状部の前記第一紫外線硬化塗料に照射して着色層を形成する第一紫外線照射工程と、前記着色層を覆って前記下地層より盛り上がる透明層を形成する透明層形成工程と、を備えている。前記透明層形成工程は、液滴量が前記第一印刷ヘッドから噴出される液滴量よりも多く設定された前記インクジェットプリンタの第二印刷ヘッドから前記着色層が形成された前記有底筒状部へ向けて、透明層形成用の第二紫外線硬化塗料を噴出させて、前記第二紫外線硬化塗料を前記着色層の上に塗布する第二印刷工程と、前記紫外線照射装置から紫外線を前記有底筒状部の前記第二紫外線硬化塗料に照射して、前記第二紫外線硬化塗料を硬化させて前記着色層よりも厚い透明の硬化層を形成する第二紫外線照射工程と、を備えている。
【0011】
液滴量の多い第二印刷ヘッドを用いて第二紫外線硬化塗料を有底筒状部の外面に塗布し、これを紫外線で硬化させて透明な硬化層を形成することで、印刷時間を短縮することができる。
本発明の飲料容器の製造方法の前記透明層形成工程では、前記第二印刷工程と前記第二紫外線照射工程とを複数回繰り返して複数の前記硬化層を積層することで、前記透明層を形成してもよい。
液滴量の多い第二印刷ヘッドを用いた透明層の形成を繰り返すことで、厚い透明層を短い時間で形成することができる。
【0012】
本発明の飲料容器の製造方法は、好ましくは、複数回行う前記硬化層の形成の内、最も外側に配置される前記硬化層を形成する際には、前記第二印刷工程の後に、塗布したレベリング剤を含む前記第二紫外線硬化塗料のレベリングを行う。
【0013】
第二紫外線硬化塗料のレベリングは、先に形成した硬化層を覆っている前記第二紫外線硬化塗料をならすことであり、透明層の高い箇所を形成するための前記第二紫外線硬化塗料を下地層と平行に面を平にすることに限らず、前記第二紫外線硬化塗料を高い箇所から下地層がある低い箇所へわたって凹凸のない曲面を形成することも含む。第二紫外線硬化塗料のレベリングとして、硬化させる前に、例えば第二紫外線硬化塗料を塗布した状態を所定時間保持することで、又は照射する紫外線のエネルギーの強度を弱めて硬化速度を遅くすることなどで、第二紫外線硬化塗料を自然に変形させる。これにより最も外側に配置される前記硬化層では外側の面が滑らかになる。この保持時間は、内側の前記硬化層を形成する際の照射までの時間と比べて長く設定されている。
【0014】
本発明の飲料容器の製造方法は、好ましくは、前記第一印刷工程では、色毎に設けられた複数の前記第一印刷ヘッドの内、一つの前記第一印刷ヘッドを用いて前記第一紫外線硬化塗料を前記下地層に塗布し、他の色の前記第一印刷ヘッドを用いた前記第一紫外線硬化塗料の前記下地層への塗布を行わないこととする。
【0015】
インキの色を一色にすることで、第一印刷工程の時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、盛上げ部が外面から浮き上がる立体的な形状を呈して、外観の見映えを一層向上させることができる。また、外面から盛上る透明層が、その内側の着色層の形成に用いた液滴量よりも多い液滴量で印刷することで、印刷時間を短くして製造することがでる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明の実施形態に係るカップを示す正面図であり、(b)は(a)のA1-A1線に沿ったカップの断面図である。
図2図1のA2-A2線に沿ったカップの部分断面の拡大図である。
図3】(a)は本発明の実施形態に係るカップの製造工程を示す図であり、(b)は筒体を示す正面図であり、(c)は中間筒体を示す正面図であり、(d)はカップ本体を示す正面図である。
図4】(a)と(b)は本発明の実施形態に係るカップの製造に用いるインクジェットプリンタを示す図である。
図5】(a)は本発明の実施形態に係るカップの透明層を形成する透明層形成工程を示す図であり、(b)から(d)は透明の硬化層を積層する過程を示す概略図である。
図6】本発明の実施形態に係るカップを三つ積み重ねた(スタック)状態を示す断面図であり、(b)は(a)の円で囲った部分の拡大図であり、(c)は変形例のカップを積み重ねた(スタック)状態を示す部分断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るボトル缶を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1(a)及び(b)に示すカップ1は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板をプレス成形により有底筒状に形成したカップ本体10と、カップ本体10の外周面10Aに形成された盛上げ部20と、を備える。
【0019】
カップ本体10は、略筒状の胴部11と、胴部11の一端を閉じる底部12と、胴部11の他端に形成されたカール部13と、を備える。
このカップ本体10において、胴部11のカール部13側で開口を形成する縁部11Aの直径が底部12の直径より大きく設定されていて、胴部11は底部12から縁部11Aに向けて漸次拡径するテーパ状に形成されている。なお、図1(b)でカップ本体10の中心軸(本発明の缶軸に相当)Cを一点鎖線で表している。
【0020】
底部12は、図1(b)に示すように、凹状に湾曲したドーム部121と、ドーム部121の外周縁に連続していて中心軸方向下方に向かうにしたがって漸次拡径する内側テーパ壁部122と、内側テーパ壁部122の外周縁に連続していてカップ本体10をテーブル等に置いたときに接地する中心軸Cを中心とするリング状に形成されたリム部123と、リム部123の外周端から拡径して上方へ延びていて胴部11の最下端(後述の下部円筒部11B)につながるテーパ状の立ち上がり部124と、を備えている。
【0021】
ドーム部121は、リム部123先端からの距離が中心軸C上の位置において、最も大きい凹状である。リム部123は、中心軸C周りにリング状に、下方に向けて凸となる屈曲面に設けられており、その最も突出位置が接地する。リム部123の屈曲面の最外周端は胴部11の最も径の小さい最下端(後述の下部円筒部11B)よりも小径であり、このリム部123の最外周端と胴部11の最下端との間が、立ち上がり部124により連結されている。
【0022】
胴部11は、底部12の立ち上がり部124に連続して形成されていて中心軸Cに沿うストレート状の下部円筒部11Bと、この下部円筒11Bに連続して形成された下部段部11Cと、この下部段部11Cに連続して形成されていて漸次拡径して上方へ延びたテーパ筒部11Dと、このテーパ筒部11Dに連続して形成された上部段部11Eと、この上部段部11Eに連続して形成されていて中心軸Cに沿うストレート状の上部円筒部11Fと、を備えている。テーパ筒部11Dが胴部11を構成する他の下部円筒部11Bなどよりも中心軸Cに沿った寸法が最も大きく設定されている。
なお、下部段部11Cと上部段部11Eもテーパ状に形成されて、下方から上方に向けて漸次直径が大きくなっている。
また、カール部13は胴部11の上部円筒部11Fに連続して形成されている。
【0023】
盛上げ部20は、図2の断面図に示すように、カップ本体10の外周面10Aに形成された基材表面層210(本発明の下地層に相当)と、この基材表面層210に積層された着色層220と、この着色層220及び着色層220に隣接する基材表面層210の一部の領域を覆う透明な透明層230と、を備えている。
【0024】
基材表面層210は、プライマとして着色層220や透明層230をカップ本体10の外周面10Aに形成するための下地である。また、盛上げ部20を設けていないカップ本体10の外周面10Aの箇所では、基材表面層210は最も外側の層(最外層)を構成していて、カップ本体10の外周面10Aを保護する。なお、図2では、基材表面層210のうち、最外層を形成する箇所に符号210Aを付し、下地を形成する箇所に符号210Bを付している。
【0025】
基材表面層210は熱硬化性樹脂からなり、例えば不飽和ポリエステル樹脂にアミノ樹脂を加えたものを用いることができる。また、これらにエポキシ樹脂やイソシアネート樹脂を加えてもよい。潤滑剤(ワックス)や添加剤を熱硬化性樹脂に加えて、基材表面層210を形成してもよい。潤滑剤(ワックス)としては、例えばカルナバワックスやマイクロクリスタリン等を用いることができ、これにより、滑性を付与し、搬送性の向上や表面の傷付きを一層抑えることができる。添加剤として、鱗片状の粒子や、発泡性の粒子、光を乱反射させる粒子等を用いることができる。例えば平滑なフレーク表面を金属酸化物やシリカで被覆することで虹彩色やカラープロップ性(見る角度により光輝度や色相が変化する性質)を示すパール顔料や、発泡剤を添加した発泡塗料、シリカを混合した艶消し塗料、チタン顔料を混合したベースコート塗料、アルミ粉末を混合したアルミペースト塗料等の添加剤を含有させた塗料を好適に用いることができる。基材表面層210は、ワニスを用いて、透明に構成することができる。
このような基材表面層210の厚さt1は例えば2μm以上10μm以下である。なお、基材表面層210は、好ましくは表面張力が36dynを超えるものを用いる。
また、基材表面層210は、好ましくは、その一部にポリエステルアクリレートなどの紫外線硬化塗料を構成するモノマーやオリゴマーもしくは紫外線塗料と重合反応を行う官能基を持つモノマーやオリゴマーを含んでいる。
【0026】
着色層220は、基材表面層210の上に形成されており、単色或いは複数の色を用いて、文字、記号、模様及び図形の何れか或いはそれらの任意の組み合わせを表している。図1(a)では、着色層220が欧文字(CUP)を表している。
着色層220は、紫外線硬化法で硬化した第一紫外線硬化塗料(紫外線硬化樹脂インキ)で構成されており、厚さt2は例えば1μm以上10μm以下である。第一紫外線硬化塗料(紫外線硬化樹脂インキ)は、モノマー又は/及びオリゴマー、光重合開始剤、顔料などの添加剤を含んでいる。
第一紫外線硬化塗料のモノマー、オリゴマーとして、例えばアクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む。)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂を含む。)、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂のうち、少なくともいずれか一つのモノマー又は/及びオリゴマーを用いることができる。
光重合開始剤は、例えば250nm以上400nm以下の紫外線吸収を持つものを用いることができる。この光重合開始剤が、紫外線のエネルギーでラジカルを発生させて、このラジカルによってモノマー,オリゴマーに橋かけ反応を生じさせて重合(硬化)して、着色層220が形成されている。ラジカル重合に代えて、紫外線によってカチオンを発生させる光重合開始剤を用いることもできる。第一紫外線硬化塗料は、レベリング剤、反応を増幅させる希釈剤などの添加剤を含んでもよい。
【0027】
透明層230は、紫外線硬化法で硬化した第二紫外線硬化塗料で構成され、さらに平面状に形成された着色層220と着色層220の周りにある基材表面層210の一部の箇所との上に形成されている。第二紫外線硬化塗料は、モノマー又は/及びオリゴマー、光重合開始剤を含んでいる。
第二紫外線硬化塗料のモノマー、オリゴマーとして、例えばアクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む。)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂を含む。)、ポリエステル樹脂、ポリエステルアミノ樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂のうち、少なくともいずれか一つのモノマー又は/及びオリゴマーを用いることができる。
光重合開始剤は、例えばチオキサントン系などを用いることができる。この光重合開始剤が、紫外線のエネルギーでラジカルを発生させて、このラジカルによってモノマー、オリゴマーに橋かけ反応を生じさせて重合(硬化)して、透明層230が形成されている。ラジカル重合に代えて、紫外線によってカチオンを発生させる光重合開始剤を用いることもできる。第二紫外線硬化塗料は、レベリング剤、反応を増幅させる希釈剤などの添加剤を含んでもよい。
【0028】
図1(a)では、着色層220の各欧文字(CUP)をかたどる破線が透明層230の周縁を表していて、透明層230は、着色層220だけでなく、この着色層220のまわりにある基材表面層210を覆っている。なお、図2に示すように、一つの文字等を表す着色層220の一部の箇所と他の箇所とが離れていると、それらの間にある基材表面層210の箇所は透明層230で覆われず、最外層として外に現れる。図1(a)の符号230Aを付す透明層230の境界線の内側の箇所も、透明層230で覆われていない。また、図示例では、各欧文字(C,U,P)をそれぞれ形成するための着色層220が離れて外周面10Aに配置されていて、それらの間にある基材表面層210の箇所が透明層230で覆われずに、最外層を形成する。
このような透明層230が透明に構成されていて、内側にある着色層220を透明層230を通して外部から視認することができる。
【0029】
図2に示す構成例では、透明層230の頂部231が平坦に形成されていて、この頂部231は基材表面層210からの厚みが最大になる箇所を形成している。さらに透明層230の側面232では、厚みが頂部231から基材表面層210まで漸次薄く形成されている。
透明層230は、その最大の厚さt3が例えば20μm以上1mm以下である。
なお、盛上げ部20の断面形状は図2の構成に限らず、頂部は外方へ突き出る形に形成したり、頂部を複数設けたり、凹凸状の面に形成する等、着色層220で表す模様や図形等の形に依って、様々である。
透明層230で最大厚さt3として形成される箇所は、着色層220を覆う箇所全てである場合に限らず、着色層220の一部を覆う箇所でもよい。また、透明層230で着色層220のまわりにある基材表面層210を覆う箇所も一部の厚さが20μm以上1mm以下として形成されてもよい。
【0030】
また、透明層230は、図2に示す、着色層220の縁220Aからはみ出る寸法Δが、1mm未満であってもよい。なお、着色層220同士の間隔Wが寸法Δを2倍した値以上であると、着色層220同士の間にある基材表面層210の一部の箇所を透明層230で覆わずに最外層として形成してもよい。
【0031】
このように透明層230が厚く構成されることで、着色層220の箇所とそのまわりにある基材表面層210の一部の箇所とが透明層230(塗料)で盛り上げられて、この透明層230と隣接する最外層210Aよりも浮き上がる外観を呈する。
【0032】
次に、このカップ1の製造方法について説明する。
図3(a)に示すように、カップ1の製造方法は、有底で円筒状の筒体を形成する第一形成工程S1と、基材表面用の表面塗料を筒体に塗布する表面塗料塗布工程S2と、表面塗料を乾燥させて基材表面層を形成する表面塗料乾燥工程S3と、筒体をカップ本体10に形成する第二形成工程S4と、基材表面層の一部に第一紫外線硬化塗料(紫外線硬化樹脂インキ)をインクジェットプリンタで塗布する第一印刷工程S5と、紫外線を第一紫外線硬化塗料に照射して着色層を形成する第一紫外線照射工程S6と、着色層を覆って基材表面層より盛り上がる透明層を形成する透明層形成工程S7と、を備えている。
【0033】
第一形成工程S1では、金属板を絞りしごき加工することにより、図3(b)に示す有底円筒状の筒体10′を形成する。
【0034】
表面塗料塗布工程S2では、基材表面用の表面塗料(熱硬化性樹脂)をロールコーターによって筒体10′の外周面の全体に塗布する。表面塗料乾燥工程S3では、表面塗料を塗布した筒体10′を160℃以上240℃以下の温度で加熱して、表面塗料(熱硬化性樹脂)に含まれる溶媒を揮発させて硬化させる。これにより、筒体10′の外側の面に基材表面層210が形成される。
【0035】
第二形成工程S4では、外径の異なる複数のパンチを外径の小さい順に用いながら筒体10′に開放部側からパンチを押し込んで、筒体10′の胴部11を、底部12側より開放部側に向けて徐々に拡径して図3(c)に示すテーパ状の中間筒体10″を形成する。さらに、第二形成工程S4では、中間筒体10″の開放部にカール部13を形成する。これにより、図3(d)に示すカップ本体10が形成される。
【0036】
第一印刷工程S5では、インクジェットプリンタ500を用いて、第一紫外線硬化塗料としての顔料を含む紫外線硬化塗料をカップ本体10の基材表面層210の一部に塗布して、文字や図形などを印刷する。
【0037】
図3(a)に示すインクジェットプリンタ500は、紫外線硬化塗料を噴出する複数の第一印刷ヘッド511及び第二印刷ヘッド512を搭載したキャリッジ510と、キャリッジ510を矢印B1方向へ変位させて、複数の第一印刷ヘッド511及び第二印刷ヘッド512の内、液滴(塗料)を噴出する第一印刷ヘッド511又は第二印刷ヘッド512をカップ本体10と対向する噴出位置に移動する図示省略の移動機構と、カップ本体10(有底筒状部)を回転可能に保持すると共に筒状部材の軸方向へ移動自在に構成されていてカップ本体10(有底筒状部)で印刷を行う箇所を第一印刷ヘッド511又は第二印刷ヘッド512に対向させるマンドレル520と、カップ本体10へ向けて紫外線を照射する紫外線照射装置530と、第一印刷ヘッド511と第二印刷ヘッド512と移動機構と紫外線照射装置530とを制御する図示省略の制御部と、を備えている。
【0038】
第一印刷ヘッド511は、図3(a)に示すように、インキ(塗料)として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック毎に4つ搭載されており、図面ではイエローの第一印刷ヘッド511にYを付し、マゼンタの第一印刷ヘッド511にMを付し、シアンの第一印刷ヘッド511にCを付し、ブラックの第一印刷ヘッド511にKを付している。各色の第一印刷ヘッド511は、液滴を噴出する口が1024箇所設けられ、駆動周波数が12.8KHzである。第一印刷ヘッド511は、制御部に制御されて印刷を行い、その印刷の解像度は例えば360dpiである。これら第一印刷ヘッド511から噴出される第一紫外線硬化塗料の液滴の量は限定されるものではないが、例えば14ピコリットルである。
【0039】
第一印刷工程S5で、複数のインキ(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を用いる場合には、インキ(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)別にカップ本体10への塗布を順番に行う。また、第一印刷工程S5では、全ての色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を用いる印刷方法に代えて、例えばマゼンタ用の第一印刷ヘッドだけを用いてマゼンタ用のインキ(第一紫外線硬化塗料)を基材表面層210に塗布し、他の色(イエロー、シアン、ブラック)用の第一印刷ヘッド511を用いた印刷を行わないようにしてもよい。キャリッジ510に支持される複数の第一印刷ヘッド511の内、特定の色用の一つの第一印刷ヘッドだけを用いて、一色で印刷することで、印刷時間を短くすることができる。一色のインキで印刷を行う場合には、インキ用の第一印刷ヘッド511を一つだけ搭載できるインクジェットプリンタを用いることができる。
【0040】
第一紫外線照射工程S6では、制御部によって紫外線照射装置530からカップ本体10の第一紫外線硬化塗料へ向けて照射して、第一紫外線硬化塗料を硬化させる。これにより、カップ本体10の外側の面に着色層220が形成される。
【0041】
透明層形成工程S7では、図5(a)に示すように、インクジェットプリンタ500を用いてカップ本体10に透明な第二紫外線硬化塗料を塗布する印刷工程S71と、制御部によって紫外線照射装置530から紫外線を第二紫外線硬化塗料に照射して第二紫外線硬化塗料を硬化させる硬化工程S72と、を備えている。
【0042】
第二紫外線硬化塗料として、透明層形成用の紫外線硬化塗料を用い、この透明な紫外線硬化塗料はインクジェットプリンタ500の第二印刷ヘッド512から噴出する。透明な紫外線硬化塗料用の第二印刷ヘッド512は、液滴を噴出する口が1024箇所設けられており、駆動周波数が7.8KHzである。第二印刷ヘッド512は、制御部に制御されて印刷を行い、その印刷の解像度は例えば360dpiである。この第二印刷ヘッド512から噴出される第二紫外線硬化塗料の液滴の量は、第一印刷ヘッド511(第一紫外線硬化塗料を塗布する工程での印刷ヘッド)からの液滴の量(14ピコリットル)よりも多く設定されており、限定されるものではないが、例えば40ピコリットルである。
【0043】
さらに透明層形成工程S7では、図5(a)に示すように、印刷工程S71と硬化工程S72とを四回繰り返して、第二紫外線硬化塗料を硬化した透明な硬化層230″を積層させる。図5(b)~(e)は複数の硬化層230″が積層される過程を示す概略図であり、図5(b)は、1回目の印刷工程S71と硬化工程S72とを行った後の状態を示していて、透明な硬化層230″が着色層220を覆っている。この硬化層230″は着色層220よりも厚く形成される。また、図5(c)は2回目の印刷工程S71と硬化工程S72とを行った後の状態を示しており、2回目の工程で形成した硬化層230″が1回目の工程で形成した硬化層230″を覆っている。なお、1回目の硬化層230″と2回目の硬化層230″の境界を破線で表している。また、図5(d)は3回目の印刷工程S71と硬化工程S72とを行った後の状態を示しており、図5(e)は4回目の印刷工程S71と硬化工程S72とを行った後の状態を示している。
【0044】
また、透明層形成工程S7では、好ましくは、繰り返して行う印刷工程S71と硬化工程S72の内、4回目の最外層(硬化層230″)を形成する際に、レベリング剤を含む第二紫外線硬化塗料が硬化層230″を覆った状態を保持して、レベリングを行うと良い。これにより、既成の硬化層230″の上にある第二紫外線硬化塗料が広がり、塗布したときよも表面が滑らかな曲面状に変わる。図5(e)では、レベリング前の塗布した時点における第二紫外線硬化塗料の表面を一点鎖線で概略的に表している。
なお、最外層(硬化層230″)を形成する際に、印刷工程S71を行った後から硬化工程S72の紫外線を照射するまでの時間Tが、内側の硬化層(230″)を形成する際に印刷工程S71を行った後から硬化工程S72の紫外線を照射するまでの時間T″よりも長く設定(T>T″)されていて、この塗布状態を時間T保持することで、レベリングとして、第二紫外線硬化塗料を自然に変形させる。塗布状態から時間Tが経過すると、例えば第二紫外線硬化塗料の外側の面が滑らか形状になり、第二紫外線硬化塗料が滑らかな表面形状で、制御部によって紫外線照射装置530から紫外線を第二紫外線硬化塗料に照射して硬化させる。これにより、外側の面が滑らかな透明層230を形成することができる。なお、紫外線照射装置530からの紫外線を照射する条件を変えてレベリングを行うようにしてもよい。例えば、最外層を形成する際の紫外線照射装置530から照射される紫外線のエネルギーの強度を、先に形成した硬化層230″を硬化させたときの紫外線のエネルギーの強度よりも小さくして、第二紫外線硬化塗料が硬化する速度を遅くすることで、レベリングを行うようにしてもよい。レベリングでは、塗布した第二紫外線硬化塗料のうち、高い箇所にある凹凸を無くことに限らず、側面側の垂れた箇所も滑らかにする。
【0045】
このように製造されたカップ1では、盛上げ部20のCUPの欧文字を表す着色層220が、厚さが100μm以上1mm以下に形成された透明層230で覆われることで、CUPの欧文字(着色層220)が浮き上がる外観を呈して、カップ1の見映えを一層向上させることができる。また、盛上げ部20によってカップ1の外周面10Aが凹凸状に形成されるため、把持した状態でグリップ性も良好になる。なお、厚さが100μm未満であると、浮き上がり感が表れ難く、また厚さが1mmを超えると印刷時間が長くなり得て、好ましくない。
【0046】
カップ1の製造方法では、透明層230を形成する工程S7(S71,S72)が、液滴量が多い第二印刷ヘッド512を用いて、透明の硬化層230″を着色層220上に積層させることで、短い時間で透明層230を厚く盛られた形態に形成することができる。透明層230の形成を、液滴量が少ない第一印刷ヘッド511を用いて行うと、厚さt3の透明層230を形成するためには、第一印刷ヘッド511を用いて第二紫外線硬化塗料を塗布する工程とこの第二紫外線硬化塗料に紫外線を照射して硬化させ硬化層を形成する工程とを繰り返す回数が多くなり、これにより透明層230の形成に長時間を要することになり好ましくはない。
また、本実施形態では、下地としての基材表面層210は、その表面張力が36dynを超えることで、紫外線硬化塗料の基材表面層210上で良好に形成することができる。下地の表面張力が36dyn以下であると、紫外線硬化塗料の濡れ性や付着性が劣り、紫外線硬化塗料を硬化しても、下地からの剥離が生じ易く成り得る。
【0047】
また本実施形態の複数のカップ1は胴部11と底部12とを重ねる相手のカップ1の内側に入れて積み重ねるスタックを行うことができ、図6(a)は三つのカップ1をスタックした状態を示していて、下から二番目のカップ1を実線で表し、他のカップ1を破線で表している。下から二番目のカップ1は、立ち上がり部124と下部円筒部11Bとのつながり部分11Gを、その外側に配置される最下のカップ1の下部段部11Cの内周面に当てて、底部12及びテーパ筒部11Dが最下のカップ1の内側に保持されている。なお、このようにスタックした状態では、内側のカップ1が上部段部11Eを外側のカップ1の上部円筒部11Fとカール部13とをつなぐ部分(縁11A)に近接して非接触に配置されている。
また図6(b)は図6(a)の円で囲った箇所の拡大図であり、複数のカップ1がスタックした状態では、内側のカップ1のテーパ筒部11D(外周面10A)と、外側のカップ1のテーパ筒部11D(その内周面10B)との間にはクリアランスCLが構成され、盛上げ部20はこのクリアランスCLの寸法(軸Cから径方向へ沿った寸法g)よりも薄く形成されていて、外側にあるカップ1の内周面10Bと非接触に配置されている。これにより、スタック状態で盛上げ部20が外側にあるカップ1の内周面10Bに密着して、取り外す際に盛上げ部20に傷が付くことを防止することができる。
なお、複数のカップ1をスタックしたときに、カップ1の底部12近傍で、内側のカップ1の部分11Gが外側のカップ1の下部段部11Cの内面に接触し、縁部11Aの近傍(口側)で、内側のカップ1の上部段部11Eが外側のカップ1の上部円筒部11Fとカール部13とをつなぐ部分(縁11A)に非接触に近接して配置されたが、これとは逆に、図6(c)に示すように、内側のカップ1の上部段部11Eが外側のカップ1の上部円筒部11Fとカール部13とをつなぐ部分(縁11A)に当てて、内側のカップ1は底部12及びテーパ筒部11Dを外側のカップ1の内側に入れて保持されてもよい。これにより、複数のカップ1がスタックした状態では、内側のカップ1のテーパ筒部11D(外周面10A)と、外側のカップ1のテーパ筒部11D(その内周面10B)との間にはクリアランスCLが同様に構成される。この場合、図示することを省略するが、カップ1の底部12近傍では、内側のカップ1の部分11Gが外側のカップ1の下部段部11Cの内面に非接触で近接して配置される。
【0048】
本発明は、の実施形態に限らず、有底筒状部の寸法や形状、盛上げ部のデザインやその位置を変えて実施をすることができる。
【0049】
(有底筒状部)
の実施形態では有底筒状部として、カップ本体10を挙げたが、このようなカップ形状に限らず、本発明はボトル缶やツーピース缶などにも適用することができる。図7に示すボトル缶2は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるボトル状缶ボディ30(有底筒状部に相当)と、ボトル状缶ボディ30の口部に着脱自在に取り付けられるキャップ40と、を備えている。このボトル缶2では、ボトル状缶ボディ30の外周面30Aに盛上げ部20を設けている。キャップ40もアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されてもよい。有底筒状部としてのキャップ40の平坦な天面41(外面)に盛上げ部20を設けてもよい。また、盛上げ部20を設ける有底筒状部の外面としては、外周面に限らず底部を形成する下面を利用することができ、また有底筒状部としてのキャップ40の平坦な天面41も利用することができる。平面状の箇所に盛上げ部20を設ける場合には、マンドレルに代えて、印刷する箇所を印刷ヘッドに対向するように有底筒状部を変位させる可動ステージなどの調整装置を利用することができる。
【0050】
(透明層)
実施形態透明層形成工程S7では、複数の硬化層230″を積層させて透明層を形成する過程中で、最外層用の第二紫外線硬化塗料を塗布した状態でレベリングを行って、透明層230の外側の面を滑らかに形成したが、このレベリングを省略して、最外層用の第二紫外線硬化塗料を網点状に塗布した後に、直ちに前の塗装終了後、例えば2秒以内に紫外線の照射することで、透明層230の外側の面をマット感のあるざらざらとした面に形成することができる。
【0051】
(着色層の他の被覆例)
また、の実施形態では、離れて設けられる複数の着色層の各箇所が全て透明層で覆われて立体的に形状される構成例を示したが、本発明の飲料容器では、着色層が外面に複数離して形成されている場合、それらの着色層の内、一部の着色層を透明層で覆って盛り上がる形態にし、これらと離れて設けられる他の着色層の上を厚さが100μm未満の薄い透明な最外層で覆ってもよい。
【0052】
(基材表面層)
基材表面層は、清浄で油分、ほこりなどの付着が無い状態で紫外線塗料が塗装される必要がある。
基材表面層にワックスを含む場合、経時により表面に浮いてくるため表面を形成後3か月以内に紫外線硬化塗料を塗装する必要がある。
紫外線塗料の濡れ広がり性を上げるため、フレーム処理、コロナ処理、イトロ処理を行ってもよい。
【0053】
(製造方法)
前記の実施形態では有底筒状部を形成する前の筒体に表面塗料を塗布する製造工程を挙げたが、表面塗料は有底筒状部が形成された後にその外面に塗布してもよい。
着色層の形成は、インクジェットプリンタによる印刷に限らず、オフセット印刷機などを用いてもよい。
透明層を形成する明層形成工程S7では、印刷工程S71と硬化工程S72とを繰り返し行っており、繰り返す回数は4回に限定されるものではない。印刷工程S71と硬化工程S72とを繰り返し行うことに代えて、一回の印刷工程S71と硬化工程S72とによって、透明層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 カップ
2 ボトル缶
10 カップ本体
10A、30A 外周面
10B 内周面
11 胴部
20 盛上げ部
210 基材表面層
210A 最外層
210B 下地層
220 着色層
230 透明層
230″ 硬化層
30 ボトル状缶ボディ
40 キャップ
41 天面
500 インクジェットプリンタ
510 キャリッジ
511 第一印刷ヘッド
512 第二印刷ヘッド
520 マンドレル
530 紫外線照射装置
CL クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7