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  • 特開-フゾバクテリウム殺菌用組成物 図1
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  • 特開-フゾバクテリウム殺菌用組成物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091118
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】フゾバクテリウム殺菌用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20240627BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240627BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/44
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207577
(22)【出願日】2022-12-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 順也
(72)【発明者】
【氏名】池ノ上 久美子
(72)【発明者】
【氏名】阪本 広志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC852
4C083CC41
4C083DD23
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】フゾバクテリウムを効率よく殺菌可能な手法の提供。
【解決手段】(A)ラウリル硫酸塩、及び
(B)ラウロイルグルタミン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を含有する、フゾバクテリウム殺菌用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラウリル硫酸塩、及び
(B)ラウロイルグルタミン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を含有する、フゾバクテリウム殺菌用組成物。
【請求項2】
さらにイソプロピルメチルフェノールを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらにニコチン酸又はその塩を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)成分1質量部に対して、ニコチン酸又はその塩を10質量部以下含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、ラウロイルサルコシン塩及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
口腔用組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
口臭予防又は改善用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
洗口液である、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フゾバクテリウム殺菌用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
プラーク(歯垢)は、口腔内微生物が凝集したバイオフィルムであり、う蝕や歯周病の原因となり得ると考えられている。このため、プラークコントロール、特にプラーク形成の抑制は重要である。
【0003】
大まかに言えば、次のようにしてプラークは形成される。すなわち、まず歯の表面に「ペリクル」という唾液や生理的歯肉溝浸出液由来のタンパクの薄い膜が形成され、当該ペリクルを介して連鎖球菌などの通性嫌気性菌(初期付着菌)が歯面に付着する。この初期付着菌に様々な口腔細菌と共凝集するフゾバクテリウム等の媒介細菌が付着し、さらに当該媒介細菌を介して嫌気性菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスやトレポネーマ・デンティコーラ等の後期付着菌が付着・凝集し、プラークは成熟する。特に、後期付着菌は歯周病の原因となり、歯周組織の破壊に直接的、間接的に関係することが知られている(例えば非特許文献1)。
【0004】
またさらに、フゾバクテリウムは、口臭の主要な原因物質である硫化水素を生産することも報告されている(例えば非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-097295号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Dent Res 90(11):1271-1278, 2011
【非特許文献2】mBio Volume 13, Issue 5 (September/October 2022 Volume 13 Issue 5 e01936-22)「Genetic Determinants of Hydrogen Sulfide Biosynthesis in Fusobacterium nucleatum Are Required for Bacterial Fitness, Antibiotic Sensitivity, and Virulence」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のことからフゾバクテリウムを効率よく殺菌することは、歯周病や口臭を予防及び/又は改善する上で重要であるといえる。そこで、本発明者らは、フゾバクテリウムを効率よく殺菌可能な手法について検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ラウリル硫酸塩が優れたフゾバクテリウム殺菌効果を奏することを見出し、さらに当該殺菌効果を高めるための検討を進めた。その結果、ラウリル硫酸塩にラウロイルグルタミン酸又はその塩を組み合わせることによって、フゾバクテリウム殺菌効果がさらに高まることを見いだした。そして、さらに検討を進め、ラウリル硫酸塩とラウロイルグルタミン酸又はその塩に、イソプロピルメチルフェノール及び/又はニコチン酸若しくはその塩を、さらに組み合わせると、当該フゾバクテリウム殺菌効果がより一層高まることを見いだした。
【0009】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)ラウリル硫酸塩、及び
(B)ラウロイルグルタミン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種
を含有する、フゾバクテリウム殺菌用組成物。
項2.
さらにイソプロピルメチルフェノールを含有する、項1に記載の組成物。
項3.
さらにニコチン酸又はその塩を含有する、項1又は2に記載の組成物。
項4.
(B)成分1質量部に対して、ニコチン酸又はその塩を10質量部以下含有する、項3に記載の組成物。
項5.
さらに、ラウロイルサルコシン塩及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する、項1~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
口腔用組成物である、項1~5のいずれかに記載の組成物。
項7.
口臭予防又は改善用である、項1~5のいずれかに記載の組成物。
項8.
洗口液である、項6又は7に記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
フゾバクテリウムを効率よく殺菌可能な組成物が提供される。当該組成物によれば、例えば歯周病や口臭を効率的に予防及び/又は改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】各濃度のラウリル硫酸ナトリウム水溶液を殺菌剤として用いたときの、フゾバクテリウムの生菌数を示す。
図2】異なる組成を有する各殺菌剤(表1)を用いたときの、フゾバクテリウムの生菌数を示す。
図3A】各濃度のイソプロピルメチルフェノール溶液を殺菌剤として用いたときの、フゾバクテリウムの生菌数を示す。
図3B】異なる組成を有する各殺菌剤(表3)を用いたときの、フゾバクテリウムの生菌数を示す。
図4】異なる組成を有する各殺菌剤(表4)を用いたときの、フゾバクテリウムの生菌数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、(A)ラウリル硫酸塩と(B)ラウロイルグルタミン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と含有する組成物、並びにその用途等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。(A)ラウリル硫酸塩と(B)ラウロイルグルタミン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と含有する組成物を本開示の組成物ということがある。本開示の組成物は、特にフゾバクテリウム殺菌用として有用である。なお、ラウリル硫酸塩を(A)成分と、ラウロイルグルタミン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を(B)成分と、それぞれ呼ぶことがある。
【0013】
なお、ここでのフゾバクテリウムとは、プラーク形成において初期付着菌と後期付着菌との媒介細菌であるフゾバクテリウム属の菌であれば特に限定はされないが、Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム ヌクレアタム)が好ましく例示される。
【0014】
ラウリル硫酸塩としては、例えばラウリル硫酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はトリエタノールアミン塩が好ましく、ラウリル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸カリウムがより好ましく、ラウリル硫酸ナトリウムがさらに好ましい。ラウリル硫酸塩は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本開示の組成物は、ラウリル硫酸塩を、例えば0.01~0.5質量%含有することが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、又は0.4質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.02~0.4質量%であってもよい。
【0016】
ラウロイルグルタミン酸の塩としては、例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はトリエタノールアミン塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。ラウロイルグルタミン酸及びその塩としては、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本開示の組成物は、(B)成分を、例えば0.01~5質量%含有することが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.02~4質量%であってもよい。
【0018】
また、本開示の組成物は、(B)成分と(A)成分とを質量比(B:A)1:0.1~5で含有することが好ましい。当該範囲(0.1~5)の上限又は下限は例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5であってもよい。当該範囲は例えば0.2~4であってもよく、0.3~2であってもよい。
【0019】
本開示の組成物は、さらにイソプロピルメチルフェノール(IPMP)を含有することが好ましい。イソプロピルメチルフェノールは、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて用いることにより得られるフゾバクテリウム殺菌効果を、さらに高めることができ、好ましい。
【0020】
本開示の組成物がイソプロピルメチルフェノールを含有する場合は、(B)成分1質量部に対して、0.001~2質量部含有することが好ましい。当該範囲(0.001~2)の上限又は下限は例えば0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8又は1.9であってもよい。例えば当該範囲は0.002~1.5であってもよく、0.005~1であってもよい。
【0021】
また、本開示の組成物がイソプロピルメチルフェノールを含有する場合は、0.005~0.2質量%含有することが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、又は0.19質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.01~0.15質量%であってもよい。
【0022】
本開示の組成物は、さらにニコチン酸又はその塩を含有することが好ましい。ニコチン酸又はその塩は、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて用いることにより得られるフゾバクテリウム殺菌効果を、さらに高めることができ、好ましい。
【0023】
ニコチン酸の塩としては、例えばアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。ニコチン酸又はその塩としては、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでもニコチン酸が好ましい。
【0024】
本開示の組成物がニコチン酸又はその塩を含有する場合は、(B)成分1質量部に対して、10質量部以下含有することが好ましく、0.002~10質量部含有することがより好ましい。当該範囲(0.002~10)の上限又は下限は例えば0.005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5であってもよい。例えば当該範囲は0.2~8であってもよく、0.3~5であってもよい。
【0025】
また、本開示の組成物がニコチン酸又はその塩を含有する場合は、0.01~2質量%含有することが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0,08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、又は1.9質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.1~1.5質量%であってもよい。
【0026】
本開示の組成物は、フゾバクテリウム殺菌用として有用な(A)成分を含有し、さらに、ラウリル硫酸塩のフゾバクテリウム殺菌力を向上させることができる(B)成分を含有することから、フゾバクテリウム殺菌用として好ましく用いることができる。さらには、(A)成分及び(B)成分の組み合わせにより奏されるフゾバクテリウム殺菌を、イソプロピルメチルフェノール及び/又はニコチン酸若しくはその塩がより一層高めることができ、これらをさらに組み合わせた組成物は、フゾバクテリウム殺菌用としてより好ましく用いることができる。
【0027】
また、上記の通り、フゾバクテリウムを殺菌することにより歯表面におけるプラークの形成を抑制することができるといえることから、本開示の組成物は、プラーク形成抑制用組成物としても好ましく用いることができる。またさらに、上記の通り、フゾバクテリウムは口臭の主要な原因物質である硫化水素を生産し、口臭の原因菌の1種であることが報告されていることから、フゾバクテリウムを殺菌することにより口臭を予防又は改善できるといえるから、本開示の組成物は口臭予防及び/又は改善用組成物としても好ましく用いることができる。そして、このような事情から、本開示の組成物は、口腔用組成物としても好ましく用いることができる。当該口腔用組成物は、プラーク形成抑制用、フゾバクテリウム殺菌用、口臭予防及び/又は改善用、等として、好ましく用いることができる。
【0028】
本開示の組成物は、固形組成物、液体組成物でありえる。当該組成物は、例えば医薬品、医薬部外品として用いることができる。また、本開示の組成物の形態は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、軟膏剤、ペースト剤、液剤、ジェル剤であることが好ましい。
【0029】
本開示の組成物は、効果を損なわない範囲で、例えば口腔用組成物に配合し得る任意成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
【0030】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。なお、特に制限されないが、本開示の組成物には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が含有されることが好ましい。そのポリオキシエチレン付加係数は、20~80程度が好ましく、30~60程度がより好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、例えば0.05~2質量%含有されることが好ましい。
【0031】
また、香味剤として、例えば、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.001~1.5質量%配合することができる。
【0032】
また、甘味剤として、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等を用いることができる。これらは、組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0033】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0034】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。
【0035】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。
【0036】
pH調整剤として、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%であってよい。
【0037】
本開示の組成物には、塩化ドデシルピリジニウムのみならず、さらに、薬効成分として酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、ヒノキチオール等の非イオン性殺菌剤、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン系殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、ヒノキチオール、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0038】
なお、特に制限されないが、本開示の組成物には、ラウロイルサルコシン塩(好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩)が含有されることが好ましい。ラウロイルサルコシン塩は、例えば0.01~2質量%含有されることが好ましい。
【0039】
また、基剤として、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を添加することも可能である。
【0040】
また、本開示の組成物は、公知の方法または公知の方法から容易に想到する方法により調製することができる。例えば、塩化ドデシルピリジニウム及びグリチルリチン酸又はその塩並びに必要に応じてその他の成分等を適宜混合することによって調製することができる。
【0041】
本開示の組成物を適用する対象は、特に限定はされず、ヒト及び非ヒト哺乳類が好ましく挙げられる。非ヒト哺乳類としては、家畜やペットなどが好ましく、より具体的には例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、サル等が挙げられる。また、本開示の組成物は、特に限定はされないが、上記の通り、塩化ドデシルピリジニウムが媒介細菌たるフゾバクテリウムを効率よく殺菌できることから、特にプラークが形成されていないか、形成途中(後期付着菌が付着していない)の対象の口腔に適用するために、特に適しているということができる。
【0042】
なお、上述した本開示の組成物に関する記載は、例えば口腔用組成物として用いられないプラーク形成抑制用組成物や上記フゾバクテリウム殺菌剤含有組成物(例えば義歯洗浄用として使用される場合が挙げられる)についても、そのまま当てはまり得る。
【0043】
本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0044】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0045】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。なお、以下の図表においては、ラウリル硫酸ナトリウムをSLSと、ラウロイルサルコシンナトリウムをLSと、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムをLGと、ニコチン酸をNAと、それぞれ表記する場合がある。また、表における各成分の値は、特に断らない限り、質量%を示す。
【0046】
ラウリル硫酸ナトリウムの0.05質量%、0.1質量%、0.5質量%、又は1.0質量%の水溶液を調製し、殺菌剤液とした。
【0047】
また、表1に記載の組成に従い、各比較例及び実施例の殺菌剤液を調製した。なお、表1に記載の各実施例及び比較例の組成物には、表1に記載した成分以外に、サッカリンナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリオキシエチレンアルキル(12~14)スルホコハク酸2ナトリウム液を適量加え、これに水を加えて全体を100質量%とした。これらの成分は、いずれの例にも、同量ずつ加えた。
【0048】
【表1】
【0049】
また、供試菌として、以下のフゾバクテリウムの2つの亜種を用いた。
菌1:Fusobacterium nucleatum subsp. nucleatum ATCC23726
菌2:Fusobacterium nucleatum subsp. nucleatum ATCC25586
【0050】
検討1
供試菌をGAMブイヨン培地(日水製薬株式会社)10mlにそれぞれ植菌し、37℃で2日間嫌気培養した。当該培養液を供試菌液として用いた。
【0051】
濃度の異なるラウリル硫酸ナトリウム水溶液(殺菌剤液)200μlに供試菌液200μlを混合した。混合から30秒後に当該混合液100μlを採取し、薬剤不活化PBS900μlを加え(混合液を10倍希釈)、殺菌剤の殺菌作用を不活化した。なお、薬剤不活化PBSは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に大豆レシチン、Tween 80をそれぞれ終濃度0.07%、0.5%になるように添加して調製したものである。また、薬剤不活化PBSにより混合液を段階希釈し、前記混合液を10~10倍まで希釈した(段階混合液希釈液)。
【0052】
CDC嫌気性菌用ヒツジ血液寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に、調製した段階混合液希釈液をそれぞれ100μlずつ塗抹し、37℃で3日間嫌気培養し、生菌数をカウントした。得られた結果から、Log(生菌数)CFU/mlを算出した。なお、当該Logは常用対数である。
【0053】
結果を図1に示す。ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の代わりに水を用いた場合の結果もあわせて示す。ラウリル硫酸塩は、フゾバクテリウムの殺菌効果を奏することが分かった。
【0054】
検討2
供試菌をGAMブイヨン培地(日水製薬株式会社)10mlにそれぞれのフゾバクテリウム(菌1又は菌2)を植菌し、37℃で2日間嫌気培養した。培養後、約10~10CFU/mlの菌密度が得られた。当該培養液を遠心(3,000rpm, 10min, 4℃)し、上清を捨て、菌体(約10~1010CFU)を回収した。
【0055】
健康成人1名から安静時唾液10mlを採取し、その唾液の中に当該菌体(約10~1010CFU)を混合した。混合後、均一に分散させ、Fn高含有唾液(約10~10CFU/唾液1ml)を調製した。なお、Fnは「フゾバクテリウム」を示す。
【0056】
濃度の異なる各殺菌剤液(表1に記載の各例の殺菌剤)にFn高含有唾液を混合した。混合比率は、殺菌剤液:Fn高含有唾液=1:1(200μL:200μL)あるいは1:9(100μL:900μL)とした。混合から30秒後に当該混合液100μlを採取し、薬剤不活化PBS900μlを加え(混合液を10倍希釈)、殺菌剤の殺菌作用を不活化した。なお、薬剤不活化PBSは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に大豆レシチン、Tween 80をそれぞれ終濃度0.07%、0.5%になるように添加して調製したものである。
【0057】
CDC嫌気性菌用ヒツジ血液寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に、
調製した各混合液をそれぞれ100μlずつ塗抹し、37℃で3日間嫌気培養し、生菌数をカウントした。得られた結果から、Log(生菌数)CFU/mlを算出した。なお、当該Logは常用対数である。
【0058】
結果を表2及び図2に示す。なお、当該結果は、菌2を用い、殺菌剤液及びFn高含有唾液の混合比率は1:9として検討した結果である。殺菌剤液として0.2質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合、及び殺菌剤液の代わりに水を用いた場合、の結果もあわせて示す。
【0059】
【表2】
【0060】
実施例1a及び2aのみ、フゾバクテリウムの殺菌力が向上したことから、ラウリル硫酸塩によるフゾバクテリウムの殺菌効果は、ラウロイルグルタミン酸又はその塩を併用することで、増強されることが分かった。
【0061】
また、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)の0.025質量%又は0.05質量%溶液を調製し、これを殺菌剤液として用い、上記検討1の方法を用いてフゾバクテリウムに対する殺菌力を検討した。なお、イソプロピルメチルフェノール溶液は、終濃度10質量%エタノール水溶液とした。
【0062】
さらに、表3に記載の組成に従い、各比較例及び実施例の殺菌剤液を調製し、上記と同様にしてFn高含有唾液を用いてフゾバクテリウムに対する殺菌力を検討した。なお、表3に記載の各実施例及び比較例の組成物には、表3に記載した成分以外に、サッカリンナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリオキシエチレンアルキル(12~14)スルホコハク酸2ナトリウム液を適量加え、これに水を加えて全体を100質量%とした。これらの成分は、いずれの例にも、同量ずつ加えた。
【0063】
【表3】
【0064】
イソプロピルメチルフェノール溶液を殺菌剤として用いたときの結果を図3Aに示す。なお、当該結果は、菌1を用い、殺菌剤液及び試験菌液の混合比率は1:1として検討した結果である。また、イソプロピルメチルフェノール溶液の代わりに10質量%エタノール水溶液を用いた場合の結果もあわせて示す。
【0065】
また、表3に記載の各例の殺菌剤を用いた時の結果を図3Bに示す。なお、当該結果は、菌1を用い、殺菌剤液及びFn高含有唾液の混合比率は1:9として検討した結果である。殺菌剤液の代わりに水を用いた場合の結果もあわせて示す。
【0066】
これらの結果から、イソプロピルメチルフェノールはフゾバクテリウムの殺菌効果を奏さない一方で、ラウリル硫酸塩及びラウロイルグルタミン酸又はその塩に、さらにイソプロピルメチルフェノールを併用することによって、フゾバクテリウムの殺菌効果を更に増強することが分かった。
【0067】
さらに、表4に記載の組成に従い、各比較例及び実施例の殺菌剤液を調製し、上記と同様にしてFn高含有唾液 を用いてフゾバクテリウムに対する殺菌力を検討した。なお、表4に記載の各実施例及び比較例の組成物には、表4に記載した成分以外に、サッカリンナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリオキシエチレンアルキル(12~14)スルホコハク酸2ナトリウム液を適量加え、これに水を加えて全体を100質量%とした。これらの成分は、いずれの例にも、同量ずつ加えた。
【0068】
【表4】
【0069】
結果を図4に示す。なお、当該結果は、菌1を用い、殺菌剤液及びFn高含有唾液の混合比率は1:9として検討した結果である。殺菌剤液の代わりに水を用いた場合の結果もあわせて示す。
【0070】
当該結果から、ラウリル硫酸塩及びラウロイルグルタミン酸又はその塩に、さらにニコチン酸を併用することによって、フゾバクテリウムの殺菌効果を更に増強し得ることが分かった。また、意外なことに、当該殺菌効果の増強効果は、ニコチン酸量が比較的少ない方が高い可能性があることが分かった。
図1
図2
図3A
図3B
図4