(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091128
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ビタミン誘導体含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20240627BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240627BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240627BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20240627BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20240627BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240627BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240627BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240627BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/41
A61K8/44
A61Q11/00
A61K31/375
A61K31/4425
A61P1/02
A61P31/04
A61K47/18
A61P43/00 121
A23L33/15
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207602
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二木 美咲
(72)【発明者】
【氏名】水津 拓
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018MD19
4B018MD23
4B018ME14
4B035LC05
4B035LG04
4B035LG14
4B035LG16
4C076BB01
4C076BB22
4C076CC09
4C076DD51Q
4C076FF65
4C083AC621
4C083AC691
4C083AD641
4C083AD661
4C083CC41
4C083EE01
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA09
4C086BA18
4C086BC17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA57
4C086NA03
4C086ZA67
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】塩化セチルピリジニウム及びdl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩又はそのアルカリ金属塩を含有し、且つ、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩を安定に含有する、組成物の提供。
【解決手段】(A)dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、(B)塩化セチルピリジニウム、及び(C)トラネキサム酸を含有し、(A)と(B)を質量比((A):(B))1:0.25~5で含有する、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、
(B)塩化セチルピリジニウム、及び
(C)トラネキサム酸
を含有し、
(A)と(B)を質量比((A):(B))1:0.25~5で含有する、
ヒト用の口腔用組成物。
【請求項2】
(A)を0.01~0.5質量%含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)と(C)を質量比((A):(C))1:0.1~5で含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビタミン誘導体含有組成物等に関し、より詳細には、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、及びトラネキサム酸を含む組成物、並びにその用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル(本明細書において、「EPC」と表記することがある)は、ビタミンCとビタミンEがリン酸を介してエステル結合した化合物であり、抗酸化作用、抗炎症作用、保湿作用を有しており、化粧料等に使用されている。また、例えば口腔分野での応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/196852号
【特許文献2】特開平08-012568号公報
【特許文献3】特開平10-067639号公報
【特許文献4】特開2013-091617号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Periodontol 2000. 2015 Oct;69(1):7-17. Molecular aspects of the pathogenesis of periodontitis
【非特許文献2】J Periodontal Res. 2016 Dec;51(6):748-757. Influence of retinoic acid on human gingival epithelial barriers
【非特許文献3】Int J Dent. 2012; 2012: 821383.Published online 2012 Jul 26. Host-Bacteria Crosstalk at the Dentogingival Junction
【非特許文献4】Arch Oral Biol. 2016 Jun;66:30-7. The traditional Japanese medicine hangeshashinto alleviates oral ulcer-induced pain in a rat model.
【非特許文献5】Aust Dent J. 2009 Dec;54(4):347-54. Localization of matrix metalloproteinases (MMPs-2, 8, 9 and 20) in normal and carious dentine.
【非特許文献6】YAKUGAKU ZASSHI 114 (7) 514-522 (1994)
【非特許文献7】Biophys. Chem. 1999 Mar 29, 77(2-3), 153-160. Antioxidant properties of EPC-K1: a study on mechanisms
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルは、熱や光に対して不安定であり、分解が起こりやすく、経時安定性が悪い。このために、各種用途(例えば化粧品組成物、医薬品組成物、食品組成物、口腔用組成物等)に安定して配合することが難しかった。
【0006】
本発明者らは、EPCを殺菌剤と組み合わせて、各種用途(例えば化粧品組成物、医薬品組成物、食品組成物、口腔用組成物等)に用いることを検討している際に、頻用される殺菌剤である塩化セチルピリジニウム(本明細書において「CPC」と表記することがある)とEPCとを組み合わせて用いると、一層EPCが不安定になり、分解が促進されてしまう場合があることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、CPCとEPCとを組み合わせて用いたとしても、EPCを安定化させる方法(特にEPCを組成物中に安定に配合できる方法)について検討を進めた。そして、CPC及びEPC又はそのアルカリ金属塩に、さらにトラネキサム酸(本明細書において「TXA」と表記することがある)を組み合わせて用いることで、CPCとEPCとを組み合わせて用いたとしても、EPCの安定性を高め得ることを見いだし、さらに検討を重ねた。
【0008】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩、
(B)塩化セチルピリジニウム、及び
(C)トラネキサム酸
を含有し、
(A)と(B)を質量比((A):(B))1:0.25~5で含有する、
組成物。
項2.
(A)を0.01~0.5質量%含有する、項1に記載の組成物。
項3.
(A)と(C)を質量比((A):(C))1:0.1~5で含有する、項1又は2に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
CPC及びEPC又はそのアルカリ金属塩を含有し、且つEPC又はそのアルカリ金属塩を安定に含有する、組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本開示に包含される組成物は、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル(EPC)又はそのアルカリ金属塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、並びにトラネキサム酸(TXA)を含有する。本明細書において当該組成物を、「本開示の組成物」と表記することがある。本開示の組成物は、例えば化粧品組成物、医薬品組成物、食品組成物、口腔用組成物等として好適に用いることができる。また、本開示の組成物に含まれるdl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩を(A)成分、塩化セチルピリジニウムを(B)成分、トラネキサム酸を(C)成分、と表記することがある。
【0012】
dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル(EPC)は、アスコルビン酸(ビタミンC)とトコフェロール(ビタミンE)とがリン酸を介してエステル結合した化合物であり、(アスコルビル/トコフェリル)リン酸とも称される。化学式を以下に示す。
【0013】
【0014】
dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルのアルカリ金属塩としては、例えば、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルナトリウム、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルリチウム等が挙げられる。中でも、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム(EPC-K)が好ましい。
【0015】
また、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルアルカリ金属塩は、モノ塩であってもよく、ジ塩であってもよい。
【0016】
本開示の組成物には、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩(すなわち(A)成分)と、塩化セチルピリジニウム(すなわち(B)成分)とが、質量比((A):(B))で、1:0.25~5となるように含有される。当該範囲(0.25~5)の上限又は下限は、例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、又は4.9であってもよい。当該範囲は例えば0.25~5若しくは0.5~4程度がより好ましい。
【0017】
本開示の組成物に含まれる(A)成分の含有量は、上記質量比((A):(B)が1:0.25~5)を満たせば制限はされないが、例えば、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。また、(A)成分の含有量の上限は特に限定されないが、例えば0.5質量%程度が挙げられる。当該範囲(0.01~0.5質量%)の上限又は下限は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、又は0.45質量%程度であってもよい。より具体的には、例えば、0.02~0.4質量%若しくは0.03~0.3質量%程度であってもよい。
【0018】
本開示の組成物に含まれる(B)成分の含有量は、上記質量比((A):(B)が1:0.25~5)を満たせば制限はされないが、例えば、0.01~0.5質量%程度が挙げられる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、又は0.45質量%であってもよい。当該範囲は例えば0.02~0.45質量%であってもよい。
【0019】
また、本開示の組成物には、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル又はそのアルカリ金属塩(すなわち(A)成分)と、トラネキサム酸(すなわち(C)成分)とが、質量比((A):(C))で、1:0.1~5程度含有されることが好ましい。当該範囲(0.1~5)の上限又は下限は、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、又は4.5であってもよい。当該範囲は例えば0.2~4程度であってもよい。
【0020】
上記の通り、本開示の組成物は、例えば化粧品組成物、医薬品組成物、食品組成物、口腔用組成物等として好適に用いることができる。
【0021】
本開示の組成物の適用対象としては、ヒトを含む哺乳動物(例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ヒツジ、ウマ、ウシ、サル等)等が例示される。中でもヒトが好ましい。
【0022】
本開示の組成物は、例えば、固形組成物、液体組成物等で有り得る。また、本開示の組成物(特に口腔用組成物)は、常法に従って例えば軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、軟膏剤、ペースト剤、液剤、ジェル剤であることが好ましい。
【0023】
本開示の組成物は、(A)~(C)成分の他、効果を損なわない範囲で、例えば口腔用組成物に配合し得る任意成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
【0024】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液等のカルボキシベタイン型活性剤;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N-ラウロイル-N'-カルボキシメチル-N'-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム液、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N'-カルボキシエチル-N'-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム液等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
【0025】
なお、本開示の組成物は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含まなくてもよい。
【0026】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1~40であり、アルキル基の炭素数が7~30であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1~40であり、アルキル基の炭素数が1~18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1~40であり、アルキル基の炭素数が1~20であるポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0027】
また、香味剤として、例えば、メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.001~1.5質量%配合することができる。
【0028】
また、甘味剤として、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0029】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0030】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、キサンタンガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤が挙げられる。これら粘結剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%であってよい。
【0034】
なお、本開示の組成物には、さらに、薬効成分として酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等のビタミンC類、塩酸ピリドキシン、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン系殺菌剤、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0035】
また、基剤として、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を添加することも可能である。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
研磨剤の具体例としては、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
安定化剤の具体例としては、たとえば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本開示の組成物は、公知の方法または公知の方法から容易に想到する方法により調製することができる。例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び必要に応じてその他の成分等を適宜混合することによって調製することができる。
【0039】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0040】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0041】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。なお、検討に使用した機器の詳細について次に記載する。
【0042】
・光安定性試験機
EYELA 光安定性試験器 LST-2010型
設定値:温度25℃ 照度10000Lx
【0043】
・液体クロマトグラフィー(HPLC)
試料溶液:測定対象組成物約2gを精密に量りメタノールを加えて正確に50mLとし、試料溶液とする。
検出器:紫外可視吸光光度計(220nm付近)
カラム:液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリカゲルを充てんしたもの
【0044】
組成物の調製及び評価
dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム(EPC-K)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、トラネキサム酸(TXA)、及び精製水を混合して、組成物を調製した。
【0045】
具体的には、EPC-Kを0.05質量%、CPCを0.1質量%、TXAを0.05質量%含有する水溶液を調製した(検討例1)。また、EPC-Kを0.05質量%、CPCを0.1質量%含有する水溶液を調製した(検討例2)。
【0046】
そして、以下の光安定性試験の手順に従い、検討例1及び2におけるEPC-Kの光安定性を検討した。
【0047】
[光安定性試験]
各組成物を80mLずつプラスチック容器に充填し、これを、光安定性試験機(温度25℃、照度10000Lx)で2週間静置した。静置後の各組成物を測定対象組成物として、HPLCによりEPC-Kの残量を定量した。
【0048】
その結果、検討例2のEPC-K残量は(組成物調製時のEPC-K量を100質量%として)39.2質量%であったのに対し、検討例1のEPC-K残量は(組成物調製時のEPC-K量を100質量%として)80.1質量%であった(言い換えれば、TXAの有無によるEPC-K残量差は40.9質量%となった。)。このことから、EPCとCPCとを組み合わせて用いると、EPCが著しく不安定にある場合があること、並びに、さらにTXAを組み合わせて用いることで、EPCの安定性を向上させ得ること、が示唆された。
【0049】
そこで、次に、表1に記載の組成に従い、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム(EPC-K)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、トラネキサム酸(TXA)、及び精製水を混合して、各実施例及び比較例の組成物を調製した(検討用組成物)。なお、表1の各実施例及び比較例の組成において、TXAの代わりに精製水を混合した組成物もあわせて調製した(TXA抜き組成物)。上記と同様にして、これらの各組成物におけるEPC-Kの光安定性を検討した。そして、各実施例及び比較例における検討用組成物のEPC-Kの残量値(質量%)から各実施例及び比較例におけるTXA抜き組成物のEPC-Kの残量値(質量%)を引いて得られた値を、TXAによる安定性向上値(質量%)とした。
【0050】
例えば、表1の実施例3は上記検討例1に相当しているところ、実施例3の組成において、TXAの代わりに精製水を混合した組成物(TXA抜き組成物)が上記検討例2に相当する。そして、上記の通り、上記検討例1のEPC-K残量は80.1質量%であり、検討例2のEPC-K残量は39.2質量%であったので、実施例3のTXAによる安定性向上値は80.1-39.2=40.9(質量%)と算出される。
【0051】
各実施例及び比較例におけるTXAによる安定性向上値(質量%)を表1にあわせて示す。また、TXAによる安定性向上値が、小数第一位を四捨五入して10以上になる場合を○、そうではない場合を×、と評価し、これもあわせて示す。なお、表1においては、EPC-K、CPC、TXA、精製水、及び合計の値は組成物の質量%を示す。
【0052】