IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子制御装置 図1
  • 特開-電子制御装置 図2
  • 特開-電子制御装置 図3
  • 特開-電子制御装置 図4
  • 特開-電子制御装置 図5
  • 特開-電子制御装置 図6
  • 特開-電子制御装置 図7
  • 特開-電子制御装置 図8
  • 特開-電子制御装置 図9
  • 特開-電子制御装置 図10
  • 特開-電子制御装置 図11
  • 特開-電子制御装置 図12
  • 特開-電子制御装置 図13
  • 特開-電子制御装置 図14
  • 特開-電子制御装置 図15
  • 特開-電子制御装置 図16
  • 特開-電子制御装置 図17
  • 特開-電子制御装置 図18
  • 特開-電子制御装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091130
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/467 20060101AFI20240627BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L23/46 C
H05K7/20 D
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207604
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】寺西 美波
(72)【発明者】
【氏名】福田 友宏
(72)【発明者】
【氏名】市川 英司
(72)【発明者】
【氏名】元田 晴晃
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB01
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA04
5E322BB03
5E322BC01
5E322DB12
5E322EA10
5E322EA11
5E322FA04
5F136BA04
5F136BA22
5F136BC01
5F136CA01
5F136CA11
5F136FA02
5F136GA14
(57)【要約】
【課題】冷却性能が高くかつ電子部品で発生した電磁ノイズの外部への放射を抑制可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置は、電子部品が実装される基板と、基板を収容する筐体と、電子部品と熱伝導材を介して熱的に接続され、電子部品から伝わった熱を筐体の外部に放出する放熱部材と、放熱部材を冷却する冷却風の流れを生成するファンとを備える。基板は、高発熱部品が実装される高温領域と、高発熱部品が実装されない低温領域とを有している。筐体には、高温領域と対向する開口部が設けられる。放熱部材は、高発熱部品からの熱を拡散する熱拡散部と、熱拡散部から開口部を介して筐体の外部に突出する放熱フィンとを有している。熱拡散部は、高発熱部品が接続され放熱フィンが設けられるフィン基部と、フィン基部から基板に沿って延伸し、筐体のうち低温領域と対向する低温領域対向部に中間部材を介して熱的に接続される延伸部とを有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装される基板と、前記基板を収容する筐体と、前記筐体とは別体で構成され、前記電子部品と熱伝導材を介して熱的に接続され、前記電子部品から伝わった熱を前記筐体の外部に放出する放熱部材と、前記放熱部材を冷却する冷却風の流れを生成するファンと、を備える電子制御装置であって、
前記基板は、所定の発熱量を超える前記電子部品である高発熱部品が実装される高温領域と、前記高発熱部品が実装されない低温領域と、を有し、
前記筐体には、前記高温領域と対向する開口部が設けられ、
前記放熱部材は、前記高発熱部品からの熱を拡散する熱拡散部と、前記熱拡散部から前記開口部を介して前記筐体の外部に突出する放熱フィンと、を有し、
前記熱拡散部は、前記高発熱部品が熱的に接続され前記放熱フィンが設けられるフィン基部と、前記フィン基部から前記基板に沿って延伸し、前記筐体のうち前記低温領域と対向する低温領域対向部に中間部材を介して熱的に接続される延伸部と、を有している
電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置において、
前記ファンは、前記低温領域側に配置され、
前記ファンによって生成される冷却風は、前記低温領域対向部から前記放熱フィンに向かって流れる
電子制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子制御装置において、
前記ファンは、軸流ファンであり、
前記ファンの回転中心軸上で、前記筐体の前記低温領域対向部、前記中間部材及び前記放熱部材の前記延伸部が積層されている
電子制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子制御装置において、
前記筐体には、前記低温領域対向部から前記基板側とは反対側に向かって突出する筐体フィンが設けられ、
前記ファンによって生成される冷却風は、前記筐体フィンから前記放熱フィンに向かって流れる
電子制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子制御装置において、
前記筐体には、複数の前記筐体フィンが設けられ、
前記複数の筐体フィンは、それぞれ板状であり、前記ファンから前記放熱フィンに向かって流れる冷却風を整流する
電子制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子制御装置において、
前記複数の筐体フィンは、冷却風を前記放熱フィンに向けて案内するように配列されている
電子制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電子制御装置において、
前記複数の筐体フィン間に形成される冷却風の流路の断面積は、冷却風の下流側に向かうほど小さい
電子制御装置。
【請求項8】
請求項4に記載の電子制御装置において、
前記基板の前記低温領域には、前記所定の発熱量を超えない前記電子部品である低発熱部品が実装され、
前記低発熱部品は、熱伝導材を介して前記熱拡散部の前記延伸部に熱的に接続され、
前記中間部材は、前記筐体の前記低温領域対向部と前記低発熱部品との間に設けられている
電子制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電子制御装置において、
前記中間部材は、導電性を有する導電性部材である
電子制御装置。
【請求項10】
請求項5に記載の電子制御装置において、
前記筐体には、第1のピッチで配列される前記複数の筐体フィンが設けられ、
前記放熱部材には、前記第1のピッチよりも狭い第2のピッチで配列される複数の前記放熱フィンが設けられている
電子制御装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電子制御装置において、
前記放熱フィンは、前記熱拡散部とは別体で構成され、ロウ付け部により前記熱拡散部に接続されている
電子制御装置。
【請求項12】
請求項4に記載の電子制御装置において、
前記筐体には、複数の前記筐体フィンが設けられ、
前記複数の筐体フィンは、それぞれ円柱状である
電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用等に用いられる電子制御装置においては、小型化、高性能化が図られており、発熱量及び電磁ノイズ(高周波ノイズ)が増大する傾向にある。近年では、動作周波数がMHz帯からGHz帯に増大しており、これに伴い、電子制御装置と外部機器との通信も高速になっている。動作周波数の増大により、電子制御装置はより大きな冷却性能を有することが要求される。また、通信速度の高速化は、外部への電磁ノイズの放射及び外部からの電磁ノイズの侵入に対する一層の抑制が要求される。
【0003】
従来、冷却風によって電子制御装置を冷却する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1には、発熱体となる電子部品が一方の面に設けられる基板と、基板の他方の面に設けられるフィンとにより構成され、フィンに冷却風を送ることにより電子部品を冷却する冷却体が開示されている。特許文献1には、基板の長さと略等しい長さのフィンと、その半分の長さのフィンが交互に所定の間隔で並設された冷却体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-208116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷却体を電子制御装置の筐体に組み込む場合、電子部品を筐体内に収容し、フィンのみを筐体外に露出させることが想定される。しかしながら、特許文献1に記載の冷却体は、基板の長さと略等しい長さのフィンが設けられているため、筐体にフィンを支持する基板の大きさと同程度の大きな開口部を形成する必要が生じる。開口部は大きい程、筐体内の電子部品で発生した電磁ノイズの筐体外への放射の抑制が困難になる。
【0006】
本発明は、冷却性能が高く、かつ電子部品で発生した電磁ノイズの外部への放射を抑制可能な電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による電子制御装置は、電子部品が実装される基板と、前記基板を収容する筐体と、前記筐体とは別体で構成され、前記電子部品と熱伝導材を介して熱的に接続され、前記電子部品から伝わった熱を前記筐体の外部に放出する放熱部材と、前記放熱部材を冷却する冷却風の流れを生成するファンと、を備える。前記基板は、所定の発熱量を超える前記電子部品である高発熱部品が実装される高温領域と、前記高発熱部品が実装されない低温領域と、を有し、前記筐体には、前記高温領域と対向する開口部が設けられ、前記放熱部材は、前記高発熱部品からの熱を拡散する熱拡散部と、前記熱拡散部から前記開口部を介して前記筐体の外部に突出する放熱フィンと、を有し、前記熱拡散部は、前記高発熱部品が熱的に接続され前記放熱フィンが設けられるフィン基部と、前記フィン基部から前記基板に沿って延伸し、前記筐体のうち前記低温領域と対向する低温領域対向部に中間部材を介して熱的に接続される延伸部と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却性能が高く、かつ電子部品で発生した電磁ノイズの外部への放射を抑制可能な電子制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る電子制御装置の外観斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電子制御装置の平面図である。
図3図3は、カバーの図示を省略した第1実施形態に係る電子制御装置の斜視図である。
図4図4は、カバーの図示を省略した第1実施形態に係る電子制御装置の平面図である。
図5図5は、図4のV-V線断面模式図である。
図6図6は、空冷ファンにより生成される冷却風の流れと、高発熱部品で発生した熱の流れを説明する図である。
図7図7は、カバーの図示を省略した第2実施形態に係る電子制御装置の平面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線断面模式図である。
図9図9は、カバーの図示を省略した第3実施形態に係る電子制御装置の平面図の部分拡大図である。
図10図10は、カバーの図示を省略した第4実施形態に係る電子制御装置の平面図である。
図11図11は、カバーの図示を省略した第5実施形態に係る電子制御装置の平面図である。
図12図12は、図11のXII-XII線断面模式図である。
図13図13は、カバーの図示を省略した第6実施形態に係る電子制御装置の平面図である。
図14図14は、図13のXIV-XIV線断面模式図である。
図15図15は、変形例1に係る電子制御装置の外観斜視図である。
図16図16は、図15のXVI方向から見た電子制御装置の側面図である。
図17図17は、カバーの図示を省略した変形例2に係る電子制御装置の平面図である。
図18図18は、変形例2に係る電子制御装置の中央の空冷ファンが停止したときの冷却風の流れを説明する図である。
図19図19は、放熱ベースと放熱フィンとが別体である場合の例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0011】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。なお、以下に説明する電子制御装置は、好ましくは自動車に搭載される電子制御装置であるが、これ以外の電子制御装置に適用してもよい。
【0012】
<第1実施形態>
図1図6を参照して、本発明の実施形態に係る電子制御装置100について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る電子制御装置100の外観斜視図であり、図2は電子制御装置100の平面図である。なお、本実施形態では、説明の便宜上、図示するように上下、左右、及び前後方向を規定する。図示する方向は、説明のために定義するものであり、電子制御装置100の取付方向や使用方向を規定するものではない。図1及び図2に示すように、電子制御装置100は、後述する回路基板140(図5参照)を収容する筐体110と、筐体110の上部を覆うように配置されるカバー120と、筐体110とカバー120との間の空間に空気を送出する複数の空冷ファン130と、を備えている。
【0013】
筐体110は、下側の筐体部材を構成する下部筐体112と、上側の筐体部材を構成する上部筐体111と、を有している。上部筐体111は、下面が開口された矩形箱状に形成されている。上部筐体111は、矩形状の天板116と、天板116の前端辺に設けられる側壁である前側板117aと、天板116の後端辺に設けられる後側板117bと、天板116の左短辺に設けられる左側板117cと、天板116の右端辺に設けられる右側板117dと、を有している。前側板117aと後側板117bとは互いに対向して配置される。左側板117cと右側板117dとは互いに対向して配置されている。
【0014】
下部筐体112は、矩形平板状に形成され、上部筐体111の下面の開口を覆う。上部筐体111と下部筐体112とは、図示しないネジ等の締結部材により接続されている。互いに接続された上部筐体111と下部筐体112は、回路基板140(図5参照)を収容する内部空間を形成する。
【0015】
上部筐体111は、アルミニウム(例えば、アルミダイカスト)、鉄等の熱伝導性に優れた金属材料により形成されている。なお、上部筐体111は、樹脂材料等の非金属材料により形成されたものであってもよい。なお、樹脂材料には、熱放射等による放熱が可能な材料を採用することが好ましい。下部筐体112及びカバー120は、上部筐体111と同様、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属材料、あるいは樹脂材料等の非金属材料により形成される。
【0016】
筐体110の左側板117c及び右側板117dには、回路基板140(図5参照)に設けられるコネクタ149を挿通するための孔、切欠きなどの開口部113が形成されている。コネクタ149は、回路基板140に形成された配線パターン(不図示)に接続されている。コネクタ149を介して、外部機器と電子制御装置100との間で、電力供給、及び制御信号の送受信が行われる。
【0017】
カバー120は、箱状に形成され、下面の開口が上部筐体111の天板116によって塞がれている。カバー120は、ファン取付部121と、ダクト122とを有している。ファン取付部121は、平面視で、筐体110の前側板117aの近傍に設けられている。ファン取付部121には、3つの空冷ファン130のそれぞれが装着される3つの装着開口部123が設けられている。ダクト122は、筐体110の前側板117aから後側板117bに向かって延在している。ダクト122の後端部には、空気を排出する排気口122aが設けられている。
【0018】
図3はカバー120の図示を省略した電子制御装置100の斜視図であり、図4はカバー120の図示を省略した電子制御装置100の平面図である。図3及び図4に示すように、上部筐体111には、矩形状の開口部114が2つ設けられている。開口部114からは、後述する放熱部材160の放熱フィン162が突出している。
【0019】
図5は、図4のV-V線断面模式図である。図5に示すように、筐体110の内部には回路基板140が配置されている。上部筐体111の外周部には取付ボス115が複数設けられている。取付ボス115は、上部筐体111の天板116から下方に突出するように設けられる。回路基板140は、図示しないネジにより取付ボス115に取り付けられている。
【0020】
回路基板140は、例えば、エポキシ樹脂等の有機材料により形成されている。なお、回路基板140は、メタルコア基板等の金属材料であってもよい。また、回路基板140は、単層基板であってもよいし、多層基板であってもよい。
【0021】
回路基板140には、複数の電子部品が実装されている。また、回路基板140には、複数の電子部品同士あるいは電子部品とコネクタ149とを接続する配線パターンが形成されている。電子部品には、CPU(Central Processing Unit),GPU(Graphics Processing Unit),SoC(System on a Chip),SiP(System in a Package)などの演算装置、DDR SDRAM等の記憶装置、電源IC、コイル、コンデンサ等がある。また、電子部品は、FCBGA(Flip Chip Ball GridArray)型の発熱を伴う半導体素子であってもよい。以下、複数の電子部品のうち、予め定められた所定の発熱量W0[W]を超える電子部品を高発熱部品141と定義する。
【0022】
回路基板140は、少なくとも高発熱部品141が実装される領域である高温領域Raと、高発熱部品141が実装されない領域である低温領域Rbと、を有する。本第1実施形態では、低温領域Rbには電子部品が実装されていない。本第1実施形態では、高発熱部品141の回路基板140における内側端部(前端部)から外側端部までの図示右側の領域を高温領域Raと定義し、その他の図示左側の領域を低温領域Rbと定義する。また、本第1実施形態では、低温領域Rbは高温領域Raよりも面積が大きい。
【0023】
電子制御装置100は、筐体110の天板116に取り付けられる放熱部材160と、放熱部材160と天板116との間に設けられる中間部材170と、放熱部材160と高発熱部品141との間に設けられる熱伝導材151と、を備えている。なお、本実施形態では、回路基板140に2つの高発熱部品141が実装されている。このため、2つの高発熱部品141のそれぞれを2つの放熱部材160で冷却する。図4に示す左側の放熱部材160Aと右側の放熱部材160Bは同様の構成であるため、両者を総称して放熱部材160として説明する。
【0024】
図5に示すように、放熱部材160は、筐体110とは別体で構成され、天板116にネジ等の締結部材により接続されている。放熱部材160は、高発熱部品141と熱伝導材151を介して熱的に接続され、高発熱部品141から伝わった熱を筐体110の外部に放出する。
【0025】
熱伝導材151には、グリース状、ジェル状、シート状等、さまざまな種類がある。一般的に使用されている熱伝導材151は、放熱グリスなどと呼ばれるグリース状の材料であり、例えば、接着性を有する熱硬化樹脂、あるいは低弾性を有する半硬化樹脂等がある。熱伝導材151には、金属、カーボン、セラミック等の熱伝導性の高い材料により形成されたフィラーが含有されている。熱伝導材151は、回路基板140の熱による変形、振動、及び製造時の公差に対して変形可能な柔軟性を有することが好ましい。例えば、熱伝導材151は、セラミックフィラーが含有されたシリコン系樹脂を用いた半硬化樹脂であることが好ましい。
【0026】
放熱部材160は、矩形平板状の放熱ベース161と、放熱ベース161から上部筐体111の天板116の開口部114を介して筐体110の外部に突出する複数の放熱フィン162と、を有している。放熱ベース161は、アルミニウム、銅などの熱伝導性に優れた金属材料により形成された板状部材である。放熱フィン162は、放熱ベース161と同様、アルミニウム、銅などの熱伝導性に優れた金属材料により形成された板状部材である。放熱フィン162は、放熱ベース161に対して垂直に設けられている。
【0027】
複数の放熱フィン162は、図5における左右方向に帯状に延在している。放熱フィン162の長手方向(延在方向)の長さは、放熱フィン162の突出高さよりも長い。複数の放熱フィン162は、所定のピッチで互いに平行となるように配列されている。複数の放熱フィン162は、それぞれ同様の形状である。
【0028】
放熱ベース161は、高発熱部品141が熱伝導材151を介して熱的に接続されるとともに放熱フィン162が設けられるフィン基部161aと、フィン基部161aから回路基板140に沿って延伸する延伸部161bと、を有している。延伸部161bは、上部筐体111の天板116のうち、回路基板140の低温領域Rbと対向する低温領域対向部116bに中間部材170を介して熱的に接続される。
【0029】
中間部材170は、少なくとも、天板116の開口部114の周縁部と放熱ベース161との間の隙間を封止するように配置される。中間部材170は、例えば、液状ガスケット(FIPG)、ゴム材料等のシール部材である。天板116の開口部114の周縁と放熱ベース161との間の隙間に中間部材170が設けられることにより、開口部114から筐体110の内部への異物(粉塵、液体等)の侵入が防止される。
【0030】
なお、中間部材170は、シール性能だけでなく、その下面に接触される延伸部161bからその上面に接触される低温領域対向部116bに熱を効率よく伝えるために、熱伝導性の高い材料を選択することが好ましい。したがって、中間部材170の熱伝導率は、熱伝導材151と同等以上とすることが好ましい。中間部材170の熱伝導率が筐体110よりも低い場合には、中間部材170の厚みを薄くすることにより、放熱ベース161から天板116に効果的に熱を伝えることができる。中間部材170の厚みは、放熱ベース161、天板116、及び熱伝導材151のそれぞれの厚みよりも小さくすることが好ましい。
【0031】
また、中間部材170は、導電性材料が配合されている。つまり、中間部材170は、導電性を有する導電性部材である。なお、中間部材170は、柔軟性があるものを採用することが好ましいが、金属により形成される板部材であってもよい。中間部材170を導電性部材とすることにより、筐体110と放熱部材160との間の隙間から、電磁ノイズが筐体110内に侵入することを効果的に防止できる。また、回路基板140に実装される電子部品で発生した電磁ノイズが、筐体110と放熱部材160との間の隙間から筐体110の外部に放出されることを効果的に防止できる。
【0032】
空冷ファン130は、筐体110の天板116及び放熱部材160を冷却する冷却風の流れを生成する。空冷ファン130は、回路基板140の低温領域Rb側に配置されている。空冷ファン130は、軸流ファンである。空冷ファン130は、その回転中心軸CLが上下方向に平行とされている。空冷ファン130は、その回転中心軸CLが板状の低温領域対向部116bと直交するように配置されている。空冷ファン130の吐出口は下方向を向いている。本実施形態では、空冷ファン130の回転中心軸CL上で、筐体110の低温領域対向部116b、中間部材170及び放熱部材160の延伸部161bが積層された構造となっている。
【0033】
なお、本実施形態では、左側の空冷ファン130(図2参照)の回転中心軸CL上に左側の放熱部材160A(図4参照)の延伸部161bが配置され、右側の空冷ファン130(図2参照)の回転中心軸CL上に右側の放熱部材160B(図4参照)の延伸部161bが配置される。中央の空冷ファン130(図2参照)の回転中心軸CLは、左側の放熱部材160A(図4参照)の延伸部161bと、右側の放熱部材160B(図4参照)の延伸部161bとの間に配置される。
【0034】
また、本実施形態では、回路基板140の高温領域Ra、高発熱部品141、熱伝導材151、フィン基部161a、及び放熱フィン162が、上下方向に積層された構造となっている。つまり、筐体110には回路基板140の高温領域Raと対向するように開口部114が設けられ、この開口部114内に放熱フィン162が配置されている。
【0035】
開口部114は、放熱フィン162が挿通可能な大きさであって、できる限り小さい開口面積となるように形成される。本実施形態では、放熱フィン162は、放熱ベース161の全域に亘って形成されてはいない。放熱フィン162は、放熱ベース161における高発熱部品141が接触する部分と、その部分の周囲に限って形成されている。本実施形態では、フィン基部161aの前後方向の長さは、延伸部161bの前後方向の長さよりも短い。放熱フィン162の前後方向の長さ(全長)は、放熱ベース161の前後方向の長さ(全長)の半分の長さよりも短い。
【0036】
開口部114は、放熱ベース161によって塞がれている。なお、開口部114の周縁部と放熱ベース161との間の隙間は、中間部材170によって封止される。これにより、放熱フィン162を筐体110の外部に露出させるための開口部114を介して、筐体110の外部から内部への液体、塵芥等の異物の侵入を効果的に防止することができる。また、放熱ベース161及び筐体110は、導電性の材料で形成されている。このため、筐体110の内部に収容されている高発熱部品141等の電子部品で発生した電磁ノイズが筐体110の外部に放射されることが抑制される。また、高発熱部品141等の電子部品に影響を与え得る電磁ノイズが筐体110の外部から内部に侵入することが抑制される。
【0037】
仮に、放熱ベース161の全域に放熱フィン162を設ける場合、開口部114が大きくなってしまう。この構成では、電磁ノイズの放射及び侵入のリスク、並びに異物の侵入リスクが大きくなる。これに対して、本実施形態では、放熱ベース161における高発熱部品141との熱接続部及びその周囲にのみ放熱フィン162を設けているため、開口部114を小さくすることができる。その結果、電磁ノイズの放射及び侵入のリスク、並びに異物の侵入リスクを小さくすることができる。
【0038】
図6は、空冷ファン130により生成される冷却風の流れと、高発熱部品141で発生した熱の流れを説明する図である。図6では、冷却風の流れFc1,Fc2が白抜きの矢印で模式的に示され、熱の流れFh1,Fh2,Fh3が黒の太文字の矢印で模式的に示されている。
【0039】
図6に示すように、空冷ファン130は、上方から空気を吸い込み、下方に空気を吐出する。空冷ファン130から吐出された空気は、冷却風として天板116とダクト122によって画成される空間を流れる。空冷ファン130から下方に吐出された冷却風は、筐体110の天板116の低温領域対向部116bに当たって90°向きを変える。ここで、空冷ファン130は、電子制御装置100の前端部に設けられ、電子制御装置100の後端部に排気口122aが設けられている。このため、空冷ファン130から下方に吐出された冷却風は、図中、矢印Fc1で示されるように、主に電子制御装置100の後側に向きを変え、放熱フィン162に向かって流れる。
【0040】
冷却風は、図中、矢印Fc2で示されるように、複数の放熱フィン162間を通過し、排気口122aから電子制御装置100の外部に排出される。ダクト122の下流側に複数の放熱フィン162が配置されているため、冷却風の流路の断面積は、上流側に比べて下流側の方が小さい。このため、冷却風の流速は、ダクト122の下流側で大きくなる。
【0041】
高発熱部品141で発生した熱は、図中、矢印Fh1で示されるように、熱伝導材151を介して放熱ベース161のフィン基部161aに伝わる。フィン基部161aに伝わった熱は、放熱フィン162に伝わり、放熱フィン162から冷却風に伝わる。上述したように、放熱フィン162間を流れる冷却風の流速は、放熱フィン162間に導入される前の冷却風の流速に比べて大きい。このため、高発熱部品141で発生した熱の多くは、放熱フィン162から冷却風に吸収され、冷却風とともに排気口122aから電子制御装置100の外部に排出される。
【0042】
さらに、高発熱部品141から放熱ベース161に伝わった熱は、放熱ベース161の部材内で拡散される。つまり、フィン基部161aに伝わった熱は、図中、矢印Fh2で示されるように、延伸部161bにも伝わる。延伸部161bに伝わった熱は、図中、矢印Fh3で示されるように、中間部材170を介して筐体110の天板116に伝わる。天板116に伝わった熱は、天板116の上方を流れる冷却風に吸収され、冷却風とともに排気口122aから電子制御装置100の外部に排出される。
【0043】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0044】
(1)図5に示すように、電子制御装置100は、高発熱部品141などの電子部品が実装される回路基板(基板)140と、回路基板140を収容する筐体110と、筐体110とは別体で構成され、高発熱部品141と熱伝導材151を介して熱的に接続され、高発熱部品141から伝わった熱を筐体110の外部に放出する放熱部材160と、放熱部材160を冷却する冷却風の流れFc1,Fc2(図6参照)を生成する空冷ファン(ファン)130と、を備える。回路基板140は、所定の発熱量を超える電子部品である高発熱部品141が実装される高温領域Raと、高発熱部品141が実装されない低温領域Rbと、を有している。筐体110には、高温領域Raと対向する開口部114が設けられている。放熱部材160は、高発熱部品141からの熱を拡散する熱拡散部としての放熱ベース161と、放熱ベース161から開口部114を介して筐体110の外部に突出する放熱フィン162と、を有している。放熱ベース161は、高発熱部品141が熱的に接続され放熱フィン162が設けられるフィン基部161aと、フィン基部161aから回路基板140に沿って延伸し、筐体110のうち低温領域Rbと対向する低温領域対向部116bに中間部材170を介して熱的に接続される延伸部161bと、を有している。
【0045】
この構成によれば、冷却性能が高く、かつ外部からの電磁ノイズの侵入及び電子部品で発生した電磁ノイズの外部への放射を抑制可能な電子制御装置100を提供することができる。
【0046】
(2)空冷ファン130は、回路基板140の低温領域Rb側に配置される。つまり、空冷ファン130は、回路基板140の高温領域Raよりも低温領域Rbに近い位置に配置される。また、空冷ファン130は、プッシュ型の軸流ファンであり、空冷ファン130によって生成される冷却風は、天板116の低温領域対向部116bから放熱フィン162に向かって流れる。
【0047】
空冷ファン130が軸流ファンである場合、回転中心軸CLの周囲の領域では、冷却風の流量が少ない。本実施形態では、空冷ファン130と放熱フィン162とを、前後方向にずらして配置している。このため、空冷ファン130の直下に放熱フィン162を設けた場合に比べて、放熱フィン162を通過する冷却風の流速を高くすることができ、効果的に高発熱部品141を冷却することができる。また、放熱部材160の低温領域から高温領域に向かって冷却風が流れる構成とすることで、高温領域の熱を吸収した冷却風が低温領域に影響を与えることもない。これにより、放熱ベース161における高発熱部品141との熱接続部(高温部)と、放熱ベース161における延伸部(低温部)161bとの間の温度差を大きくすることができる。その結果、放熱ベース161において、高発熱部品141との熱接続部から延伸部161bへ、効率的な熱輸送がなされることとなり、電子制御装置100の冷却性能を向上することができる。
【0048】
(3)本実施形態では、空冷ファン130の回転中心軸CL上で、筐体110の低温領域対向部116b、中間部材170及び放熱部材160の延伸部161bが積層されている。延伸部161bの長さが十分に確保されるため、延伸部161bと中間部材170の接触面積及び中間部材170と低温領域対向部116bとの接触面積を十分に広くとることができる。これにより、低温領域対向部116bから冷却風への熱伝達を効率よく行うことができる。その結果、放熱ベース161における高発熱部品141との熱接続部(高温部)と、放熱ベース161における延伸部(低温部)161bとの間の温度差を十分に大きくすることができる。
【0049】
(4)本実施形態では、高い冷却性能を発揮できるため、電子制御装置100の小型化が可能である。また、放熱部材160が筐体110の天板116にネジにより固定されている。このため、バックプレートを用いた従来の構成に比べて省資源化が可能である。従来、放熱部材160とバックプレートとで回路基板140を挟むように各部品を固定する構成が知られている。この従来の構成では、回路基板140の下面に設置されるバックプレートと、放熱部材160、回路基板140及びバックプレートを貫通するばねネジと、が必要である。これに対して本実施形態では、放熱部材160を筐体110の天板116にネジ止めする簡素な構成である。これにより、本実施形態では、バックプレートやばねを省略することができ、固定用のネジの長さを従来よりも短いものとすることができる。したがって、本実施形態によれば、省資源化により環境に配慮した電子制御装置100の提供が可能となる。
【0050】
<第2実施形態>
図7及び図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る電子制御装置200について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。第2実施形態において、第1実施形態と異なる構成については、200番台の参照記号を付す。また、第2実施形態において、第1実施形態で説明した構成に相当する構成には、一の位と十の位に同一の数字を付し、百の位のみ異なる数字「2」を付すこともある。
【0051】
図7は第2実施形態に係る電子制御装置200の平面図であり、図8図7のVIII-VIII線断面模式図である。図7及び図8に示すように、本第2実施形態に係る電子制御装置200は、筐体210の構成が第1実施形態と異なっている。具体的には、筐体210には、複数の筐体フィン218が設けられている点が第1実施形態との相違点である。
【0052】
複数の筐体フィン218は、それぞれ電子制御装置200の前後方向を長手方向とする板状に形成されている。筐体フィン218は、低温領域対向部116bから上方に向かって突出している。複数の筐体フィン218は、電子制御装置200の左右方向に所定の間隔(第1のピッチとも記す)p1で配列されている。放熱部材160には、第1実施形態と同様、電子制御装置200の左右方向に所定の間隔(第2のピッチとも記す)p2で配列された複数の放熱フィン162が設けられている。
【0053】
隣り合う放熱フィン162間の寸法である第2のピッチp2は、隣り合う筐体フィン218間の寸法である第1のピッチp1よりも狭い(p2<p1)。複数の筐体フィン218及び複数の放熱フィン162は、全て一方向(電子制御装置200の前後方向)に平行となるように形成されている。
【0054】
なお、本実施形態に係る電子制御装置200は、第1実施形態と同様、空冷ファン130によって、強制的に空気をダクト122内に導入する強制空冷式の構成とされている。これにより、筐体フィン218間の流路及び放熱フィン162間の流路内に、高い流速で空気を流すことができる。ここで、空冷ファン130を設けない自然空冷式の構成では、フィンピッチが小さいとフィン間の流路で空気が流れにくくなる。これに対して、本実施形態では、強制空冷式の構成であるので、フィンピッチp1,p2を小さくしてもフィン間の流路に空気を高流速で流すことができる。つまり、本実施形態によれば、自然空冷式の構成に比べて、筐体フィン218のピッチp1、及び放熱フィン162のピッチp2を小さくすることができ、放熱面積(冷却面積)を拡大することができる。
【0055】
本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
【0056】
(1)図7及び図8に示すように、筐体210には、低温領域対向部116bから回路基板140側とは反対側(電子制御装置200の上側)に向かって突出する筐体フィン218が複数設けられている。なお、第1実施形態と同様、空冷ファン130によって生成される冷却風は、低温領域対向部116bから放熱フィン162に向かって流れる。つまり、空冷ファン130によって生成される冷却風は、筐体フィン218から放熱フィン162に向かって流れる。
【0057】
本第2実施形態では、筐体フィン218が低温領域対向部116bに設けられることにより、筐体210から空気への熱伝達が促進される。これにより、放熱ベース161における高発熱部品141との熱接続部と、放熱ベース161における延伸部161bとの間の温度差を第1実施形態よりも大きくすることができる。その結果、放熱ベース161において、高発熱部品141との熱接続部から延伸部161bへ、より効率的な熱輸送がなされることとなり、電子制御装置200の冷却性能を向上することができる。
【0058】
(2)筐体210には、複数の筐体フィン218が設けられる。したがって、筐体210に単一の筐体フィン218を設ける場合に比べて、容易に放熱面積(冷却面積)を増加させることができ、冷却性能の向上を図ることができる。
【0059】
(3)空冷ファン130は、軸流ファンであり、その回転中心軸CLが低温領域対向部116bと交差するように配置されている。複数の筐体フィン218は、それぞれ板状であり、放熱フィン162に向かって流れる冷却風を整流する。この構成によれば、空冷ファン130から低温領域対向部116bに向かって吐出された冷却風の乱れが、板状の筐体フィン218によって整流されて放熱フィン162に流れる。その結果、第2の実施形態では、第1実施形態よりも放熱フィン162での放熱性能が向上する。
【0060】
(4)筐体210には、第1のピッチp1で配列される複数の筐体フィン218が設けられ、放熱部材160には、第1のピッチp1よりも狭い第2のピッチp2で配列される複数の放熱フィン162が設けられている。熱伝導材151を介して高発熱部品141に接続されるフィン基部161aに、狭いピッチで放熱フィン162を配列することにより、広い放熱面積(冷却面積)を確保することができる。なお、本実施形態では、複数の放熱フィン162の総放熱面積は、低温領域対向部116bに設けられる複数の筐体フィン218の総放熱面積よりも大きい。放熱フィン162の放熱面積を十分に確保することにより、高発熱部品141で発生した熱を放熱フィン162から冷却風に効果的に伝えることができる。
【0061】
<第3実施形態>
図9を参照して、本発明の第3実施形態に係る電子制御装置300について説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。第3実施形態において、第2実施形態と異なる構成については、300番台の参照記号を付す。また、第3実施形態において、第2実施形態の構成に相当する構成には、一の位と十の位に同一の数字を付し、百の位のみ異なる数字「3」を付すこともある。
【0062】
図9は、第3実施形態に係る電子制御装置300の平面図の部分拡大図である。図9に示すように、本第3実施形態に係る電子制御装置300は、筐体310に設けられる複数の筐体フィン318の配置が第2実施形態と異なっている。第2実施形態では、複数の筐体フィン218が互いに平行となるように設けられていた(図7参照)。これに対して、第3実施形態では、放熱フィン162に近づくほど複数の筐体フィン318間の寸法が小さくなっている点が、第2実施形態との相違点である。
【0063】
左側の放熱部材160Aに対応して設けられる複数の筐体フィン318と、右側の放熱部材160Bに対応して設けられる複数の筐体フィン318とは、同一の配置構成である。このため、以下では、左側の放熱部材160Aに対応して設けられる複数の筐体フィン318について説明し、右側の放熱部材160Bに対応して設けられる複数の筐体フィン318についての説明は省略する。
【0064】
放熱部材160Aに対応して設けられる複数の筐体フィン318は、放熱部材160Aの左右方向中心軸に対して線対称となるように配設されている。放熱部材160Aの左右方向中心近傍に設けられる一対の筐体フィン318aの前端部間の寸法はp10aであり、後端部間の寸法はp10bである。p10aとp10bは等しい(p10a=p10b)。
【0065】
一対の筐体フィン318aの左右外側に配列される筐体フィン318b,318c,318dは、前端部から後端部に向かうほど、放熱部材160Aの左右方向中心軸に近づくように傾斜している。つまり、放熱部材160Aに対応して設けられる複数の筐体フィン318は、冷却風を放熱部材160Aの放熱フィン群に集めるように配列されている。
【0066】
一対の筐体フィン318aのうち右側の筐体フィン318aとその右隣の筐体フィン318bの前端部間の寸法はp11aであり、後端部間の寸法はp11aよりも短いp11bである(p11a>p11b)。筐体フィン318bとその右隣の筐体フィン318cの前端部間の寸法はp12aであり、後端部間の寸法はp12aよりも短いp12bである(p12a>p12b)。筐体フィン318cとその右隣の筐体フィン318dの前端部間の寸法はp13aであり、後端部間の寸法はp13aよりも短いp13bである(p13a>p13b)。
【0067】
このように、本第3実施形態に係る電子制御装置300では、複数の筐体フィン318の一部において、隣り合う筐体フィン318間の寸法が前端部から後端部にかけて小さくなるように配置される。一方、複数の筐体フィン318において、隣り合う筐体フィン318間の寸法が前端部から後端部にかけて大きくなるように配置されているものは存在しない。図示する例では、左右方向中央の一対の筐体フィン318aが互いに平行に配置されているが、前端部から後端部にかけて一対の筐体フィン318a間の寸法が小さくなるように配置してもよい。
【0068】
本第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
【0069】
以上のとおり、本第3実施形態では、複数の筐体フィン318が、冷却風を放熱フィン162に向けて案内するように配列されている。これにより、空冷ファン130から吐出された冷却風が無駄なく放熱フィン162に到達し、放熱フィン162での放熱性を向上できる。
【0070】
また、本第3実施形態では、複数の筐体フィン318間に形成される冷却風の流路の断面積は、冷却風の下流側に向かうほど小さい。このため、冷却風が整流されるとともに、流速の高い冷却風が放熱フィン162間の流路に導入される。この点からも放熱フィン162での放熱性能が向上する。
【0071】
<第4実施形態>
図10を参照して、本発明の第4実施形態に係る電子制御装置400について説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。第4実施形態において、第2実施形態と異なる構成については、400番台の参照記号を付す。また、第4実施形態において、第2実施形態の構成に相当する構成には、一の位と十の位に同一の数字を付し、百の位のみ異なる数字「4」を付すこともある。
【0072】
第2実施形態では、2つの高発熱部品141のそれぞれに放熱部材160が設けられる例について説明した。しかしながら、放熱部材は、電子制御装置に1つのみ設けられていてもよい。図10は、第4実施形態に係る電子制御装置400の平面図である。図10に示すように、本第4実施形態に係る電子制御装置400には単一の放熱部材460が設けられている。放熱部材460には、複数の高発熱部品141(図示する例では2つの高発熱部品141)が熱的に接続されている。このような構成であっても、上記第2実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、第4実施形態では、第2実施形態よりも放熱フィン162の放熱面積(冷却面積)及び筐体210に対する放熱部材460の接触面積を増加させることができるので、冷却性能がさらに向上している。
【0073】
<第5実施形態>
図11及び図12を参照して、本発明の第5実施形態に係る電子制御装置500について説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。第5実施形態において、第2実施形態と異なる構成については、500番台の参照記号を付す。また、第5実施形態において、第2実施形態の構成に相当する構成には、一の位と十の位に同一の数字を付し、百の位のみ異なる数字「5」を付すこともある。
【0074】
第2実施形態では、回路基板140の低温領域Rbには、電子部品が実装されていない。しかしながら、低温領域Rbに電子部品が実装されていてもよい。図11は第5実施形態に係る電子制御装置500の平面図であり、図12図11のXII-XII線断面模式図である。
【0075】
回路基板540の低温領域Rbには、所定の発熱量W0[W]を超えない電子部品である低発熱部品542が実装されている。低発熱部品542は、熱伝導材552を介して放熱ベース(熱拡散部)161の延伸部161bに熱的に接続されている。中間部材170は、筐体110の低温領域対向部116bと低発熱部品542との間に設けられている。
【0076】
別の言い方をすれば、上下方向に延びる仮想的な軸上に低発熱部品542、熱伝導材552、放熱ベース161の延伸部161b、中間部材170及び筐体110の天板116の低温領域対向部116bが積層配置されている。この構成によれば、低発熱部品542で発生した熱が、熱伝導材552を介して放熱ベース(熱拡散部)161に伝わり、放熱ベース161から中間部材170を介して筐体110に伝わる。筐体110に伝わった熱は、筐体フィン218を介して冷却風に伝わる。開口部114の周縁だけでなく、低発熱部品542の直上にまで中間部材170が充填されることにより、放熱ベース161と筐体110の低温領域対向部116bとの間の熱抵抗が低減するため、放熱性が向上する。
【0077】
<第6実施形態>
図13及び図14を参照して、本発明の第6実施形態に係る電子制御装置600について説明する。なお、第2実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。第6実施形態において、第2実施形態と異なる構成については、600番台の参照記号を付す。また、第6実施形態において、第2実施形態の構成に相当する構成には、一の位と十の位に同一の数字を付し、百の位のみ異なる数字「6」を付すこともある。
【0078】
第2実施形態では、複数の筐体フィン218がそれぞれ板状に形成されていた(図7図8参照)。しかしながら、筐体フィンの形状は、種々の形状を採用することができる。図13は第6実施形態に係る電子制御装置600の平面図であり、図14図13のXIV-XIV線断面模式図である。
【0079】
図13及び図14に示すように、第6実施形態に係る電子制御装置600の筐体610には、ピンフィンと呼ばれる円柱状の筐体フィン618が複数設けられている。複数の筐体フィン618は、碁盤目状に配列されている。なお、ピンフィンは、碁盤目状ではなく、千鳥状に配列されていてもよい。
【0080】
このように、本第6実施形態では、複数の筐体フィン618がそれぞれ円柱状である。このため、筐体フィン618の放熱面積(冷却面積)を第2実施形態に比べて大きくすることができる。その結果、筐体フィン618の放熱性能を向上することができる。
【0081】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0082】
<変形例1>
電子制御装置100,200,300,400,500,600の構成は、上記実施形態で説明した例に限定されない。例えば、第1実施形態の電子制御装置100において、筐体110とカバー120との間の流路空間内に、冷却風の流れを規制する部材を配置してもよい。図15及び図16を参照して、第1実施形態の電子制御装置100に規制部材124を設けた例について説明する。図15は、変形例1に係る電子制御装置100の外観斜視図であり、図16は、図15の矢印XVI方向から見た電子制御装置100の側面図である。
【0083】
図15及び図16に示すように、本変形例では、カバー120の天板に、下方に突出する凸部124が規制部材として設けられている。凸部124は、左側の放熱部材160Aの放熱フィン162と、右側の放熱部材160Bの放熱フィン162との間に配置されている。また、凸部124は、電子制御装置100の前後方向に所定の長さで延在している。凸部124の前端は放熱フィン162の前端よりも前方に位置し、凸部124の後端は放熱フィン162の後端よりも後方に位置している。このように、左右一対の放熱フィン群の間に凸部124を設けることで、放熱フィン群に流れる冷却風の流量を増加させることができ、冷却性能を向上させることができる。なお、図15及び図16に示す例では、カバー120に凸部124を設ける例について説明したが、上部筐体111の天板116に上方に突出する凸部を設けてもよい。
【0084】
<変形例2>
上記実施形態では、空冷ファン130が外気を吸い込んで、筐体110とカバー120との間の空間に吐出するプッシュ型のファンである例について説明した(図6参照)。しかしながら、空冷ファンは、筐体とカバーとの間の空間から空気を吸い込み、外部に排出するプル型のファンであってもよい。
【0085】
図17は、変形例2に係る電子制御装置700の平面図である。変形例2に係る電子制御装置700は、空冷ファン730がプル型である点を除き、変形例1に係る電子制御装置100(図15参照)と同様の構成である。なお、図17では、カバー120の装着開口部123に取り付けられた空冷ファン730及びカバー120に設けられた凸部124が二点鎖線で示されている。本変形例2では、図17に示すように、筐体110の後端部の開口部が、空気を筐体110とカバー120との間の空間に取り入れる吸気口722aとして機能する。吸気口722aから取り入れられた空気は、図中、矢印Fmで示されるように、電子制御装置700の前側に向かって流れ、空冷ファン730から電子制御装置700の外部に排出される。
【0086】
なお、プル型の空冷ファン730を適用した電子制御装置700では、以下の課題が生じる。複数の空冷ファン730のうちの一つが故障等により停止した場合、停止している空冷ファン730の装着開口部123が正常な空冷ファン730への吸気口として機能してしまうことになる。例えば、図18に示すように、3つの空冷ファン730のうち、中央の空冷ファン730が停止した場合、図中、矢印Fsで示すように、停止している空冷ファン730の装着開口部123から正常な空冷ファン730に向かう空気のショートカット流れが生じてしまう。ショートカット流れが生じてしまうと、吸気口722aから取り入れられ、放熱部材160に沿って流れる空気(矢印Fm参照)の流量が低下する。その結果、電子制御装置700の冷却性能が大きく低下してしまう。
【0087】
これに対して、プッシュ型の空冷ファン130を適用した電子制御装置100(図1図6図15等参照)では、複数の空冷ファン130のうちの一つが故障等により停止したとしても、空冷ファン130から吐出された冷却風の多くは排気口122aに向かって流れることになる。なお、第2実施形態で説明したような板状の筐体フィン218(図7図8参照)を空冷ファン130の直下に配置することにより、効果的に、正常な空冷ファン130から停止している空冷ファン130の装着開口部123に向かう空気のショートカット流れの発生を抑制できる。また、第6実施形態で説明したような筐体フィン(ピンフィン)618(図13図14参照)を設けることにより、複数の空冷ファン130のうちの一つが故障等により停止したとしても、筐体フィン618間には万遍なく(四方八方に)冷却風が流れる。このため、故障した空冷ファン130の近くにある放熱フィン162の方にも冷却風を送ることができる。したがって、プッシュ型の空冷ファン130を採用することにより、複数の空冷ファン130のうちの一つが故障等により停止したとしても電子制御装置100,200,300,400,500,600の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0088】
<変形例3>
高温領域Raと低温領域Rbの境界線は、上記実施形態で説明した例に限定されない。例えば、高発熱部品141の熱が低発熱部品542に伝わることを抑制するために、回路基板540において、断熱機能部としての凹部が高発熱部品141と低発熱部品542との間に設けられることがある。この場合、断熱機能部を境界として、高発熱部品141が実装される側の領域を高温領域Raと定義し、低発熱部品542が実装される側の領域を低温領域Rbと定義してもよい。
【0089】
<変形例4>
放熱ベース(熱拡散部)161は、ベーパーチャンバーであってもよい。べーパーチャンバーは、銅、アルミニウム等の金属によって形成される中空構造体である。ベーパーチャンバーの内部空間には、冷却用の作動液が封入される。高発熱部品141で発生した熱がベーパーチャンバーに伝わると、内部の作動液が気化した蒸気となり、内部空間を低温部に向けて高速で移動する。気化した作動液は、低温部の外壁に触れて冷却されて液化する。液化した作動液は、毛細管現象により高温部に戻る。この繰り返しによりべーパーチャンバーは、高温部から低温部に向けて熱輸送を行う。
【0090】
<変形例5>
放熱フィン162は、放熱ベース161とともに一体成形により形成されていてもよいし、放熱ベース161とは別体で構成してもよい。図19に示すように、放熱ベース161と放熱フィン162とが別体で構成される場合、放熱フィン162は、ロウ付けあるいは接着により放熱ベース161に接続される。例えば、板状の放熱ベース161に対してプレス加工等により矩形状の凹部を形成し、この凹部に放熱フィン162が立設されたフィン基部862aを嵌着する。フィン基部862aと凹部とは、ロウ材が固化したロウ付け部または接着剤が固化した接着部などの接続部863によって接続される。この構成によれば、放熱ベース161と放熱フィン162とを別の材料で形成することができる。なお、接続部863がロウ付け部である場合、熱抵抗を小さくできるので、放熱ベース161から放熱フィン162に効果的に熱を伝えることができる。なお、ロウ材には、アルミニウム、銅などの熱伝導性の高い材料を用いることが好ましい。
【0091】
<変形例6>
中間部材170は、絶縁性を有する放熱グリスなどであってもよい。中間部材170としての放熱グリスを筐体110の天板116と放熱部材160の放熱ベース161との間に介在させることにより、シール性を確保しつつ、放熱ベース161の熱を天板116に効果的に伝えることができる。なお、放熱ベース161と天板116の隙間を小さくすることにより、電磁ノイズの侵入及び放出を効果的に抑制することができる。
【0092】
<変形例7>
第1実施形態では、空冷ファン130の直下に筐体フィン218が設けられていない。このため、空冷ファン130の位置を筐体110の天板116に近づけて配置することにより、電子制御装置100の高さ(上下方向の寸法)の短縮化を図ることができる。
【0093】
<変形例8>
上記実施形態では、空冷ファン130が電子制御装置の前部に設けられる例について説明した。しかしながら、空冷ファン130は、電子制御装置の後端部に設けられていてもよい。例えば、第1実施形態における排気口122aとしての開口部にプッシュ型の空冷ファン130またはプル型の空冷ファン730を配置し、第1実施形態における装着開口部123としての開口部を排気口または吸気口として機能させてもよい。
【0094】
<変形例9>
上記実施形態では、空冷ファン130が軸流ファンである例について説明した。しかしながら、空冷ファン130には種々の形式のファンを採用できる。例えば、空冷ファン130は遠心ファンであってもよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0096】
100,200,300,400,500,600,700…電子制御装置、110,210,310,610…筐体、111…上部筐体、112…下部筐体、114…開口部、116…天板、116b…低温領域対向部、120…カバー、121…ファン取付部、122…ダクト、122a…排気口、123…装着開口部、130,730…空冷ファン(ファン)、140,540…回路基板(基板)、140A…第1回路基板、140B…第2回路基板、141…高発熱部品(電子部品)、151…熱伝導材、160,460…放熱部材、161…放熱ベース(熱拡散部)、161a…フィン基部、161b…延伸部、162…放熱フィン、170…中間部材、218,318,618…筐体フィン、542…低発熱部品(電子部品)、552…熱伝導材、722a…吸気口、863…接続部、CL…空冷ファンの回転中心軸、p1…第1のピッチ、p2…第2のピッチ、Ra…高温領域、Rb…低温領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19