(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091135
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】照明制御システム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/115 20200101AFI20240627BHJP
【FI】
H05B47/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207613
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 知昭
(72)【発明者】
【氏名】山口 優哉
(72)【発明者】
【氏名】中井 若菜
(72)【発明者】
【氏名】須藤 大貴
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA05
3K273PA09
3K273QA07
3K273QA30
3K273RA04
3K273SA11
3K273SA39
3K273SA57
3K273SA58
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA28
3K273TA37
3K273TA52
3K273TA54
3K273TA62
3K273UA22
3K273UA27
3K273UA29
(57)【要約】
【課題】良好な照明環境を形成可能である。
【解決手段】照明装置100と、電磁波を利用して、照明装置100に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する測定装置300と、位置情報及び自律神経情報に基づいて、照明装置100に対する調光制御を行う制御装置200と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置と、
電磁波を利用して、前記照明装置に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と前記人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する測定装置と、
前記位置情報及び前記自律神経情報に基づいて、前記照明装置に対する調光制御を行う制御装置と、を備える
照明制御システム。
【請求項2】
前記位置情報は、
前記照明装置に対する前記人物の位置を示す情報と、
前記照明装置に対する前記人物の向きを示す情報と、を含む
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記測定装置は、前記人物の心拍間隔を示す生体情報を測定することにより前記自律神経情報を取得する
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記調光制御として、前記照明装置の明るさ及び色味を制御する
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記自律神経情報に基づく前記調光制御における制御量を前記位置情報に応じて異ならせる
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記自律神経情報と理想的な自律神経の状態を示す理想情報とのギャップに基づいて、前記ギャップを減少させるように前記制御量を調整し、
前記制御装置は、前記ギャップに応じた前記制御量を、前記位置情報に基づいて決定する
請求項5に記載の照明制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ギャップにより前記人物の副交感神経が優位となっていると判定される場合、前記制御量としての調光パラメーターを現在値よりも高い値に設定し、前記ギャップにより前記人物の交感神経が優位となっていると判定される場合、前記調光パラメーターを前記現在値よりも低い値に設定する
請求項6に記載の照明制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記調光制御としてN回目(Nは2以上の自然数)の前記調光制御を行う前の前記自律神経情報と、前記N回目の前記調光制御を行った後の前記自律神経情報と、に基づいて、N+1回目の前記調光制御における制御量を調整する
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記自律神経情報と理想的な自律神経の状態を示す理想情報とのギャップと、前記制御量とを対応付ける対応情報に応じて、前記N+1回目の前記調光制御における前記制御量を調整する
請求項8に記載の照明制御システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記N回目の前記調光制御による前記自律神経情報の変化量に応じて前記対応情報を更新する
請求項9に記載の照明制御システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記N回目の前記調光制御を行う前の前記自律神経情報と、前記N回目の前記調光制御を行った後の前記自律神経情報と、に応じて前記変化量を特定する
請求項10に記載の照明制御システム。
【請求項12】
照明装置を制御する制御装置であって、
電磁波を利用する測定装置を用いて、前記照明装置に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と前記人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する制御部を備え、
前記制御部は、前記位置情報及び前記自律神経情報に基づいて、前記照明装置に対する調光制御を行う
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明制御システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人物の心拍間隔に基づいて人物の体調を推定し、部屋の照明装置を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、人物の体調を推定した結果に応じて、朝と夜とで部屋の照明装置の照度の強さを変更する制御が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、良好な照明環境を形成するという点で改善の余地がある。例えば、照明装置からの光が、人物に直接視認される場合と、人物に直接視認されない場合とで、光が人物の自律神経に与える影響が異なり得る。したがって、人物の心拍間隔に基づいて人物の体調を推定し、部屋の照明装置を制御するだけでは、良好な照明環境が形成されない虞がある。
【0006】
そこで、本開示は、良好な照明環境を形成可能な照明制御システム及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る照明制御システムは、照明装置と、電磁波を利用して、前記照明装置に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と前記人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する測定装置と、前記位置情報及び前記自律神経情報に基づいて、前記照明装置に対する調光制御を行う制御装置と、を備える。
【0008】
第2の態様に係る制御装置は、照明装置を制御する制御装置であって、電磁波を利用する測定装置を用いて、前記照明装置に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と前記人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する制御部を備え、前記制御部は、前記位置情報及び前記自律神経情報に基づいて、前記照明装置に対する調光制御を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、良好な照明環境を形成可能な照明制御システム及び制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る照明制御システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る照明装置及び測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態1に係る照明装置の設定に応じて変動する自律神経の状態例を示す図である。
【
図5】実施形態1に係る照明装置に対する人物の位置の一例を示す図である。
【
図6】
図5の位置A且つ右向きに人物がいる場合に自律神経を活発にさせるときの位置a及びbにおける照明設定例を示す図である。
【
図7】
図5の位置A且つ右向きに人物がいる場合に自律神経を沈静化させるときの位置a及びbにおける照明設定例を示す図である。
【
図8】実施形態1に係る調光用テーブルの一例を示す図である。
【
図9】実施形態1に係る位置Aの判定例を示す図である。
【
図10】実施形態1に係る人物の向きの把握に利用する身体部位の一例を示す図である。
【
図11】実施形態1に係る制御装置により実施される照明制御処理を説明するフローチャートである。
【
図12】実施形態1に係る測定装置により実行される心拍間隔取得処理を説明するフローチャートである。
【
図13】実施形態1に係る心音波形における心拍間隔の一例を示す図である。
【
図14】実施形態1に係る調光用テーブルを利用して選択された明るさ及び色味の設定例を示す図である。
【
図15】実施形態1に係る調光用テーブルの最適化処理を説明するフローチャートである。
【
図16】
図8の調光用テーブルから人物の位置及び向きを除き、時刻、自律神経の理想状態、現在の自律神経の状態、理想状態と現在の自律神経の状態とのギャップ及び自律神経の変化量を追加した更新用テーブルの一例を示す図である。
【
図17】実施形態1に係る制御装置により実行される更新処理を説明するフローチャートである。
【
図18】実施形態1に係る更新用テーブルの更新項目の一例を示す図である。
【
図19】実施形態1に係る更新用テーブルの更新項目の抜粋例を示す図である。
【
図20】実施形態1に係る更新前の調光用テーブルの一例を示す図である。
【
図21】実施形態1に係る更新後の調光用テーブルの一例を示す図である。
【
図22】実施形態1に係るゼロ点を通る直線で更新する前の調光用テーブルと実測結果との対応例を示す図である。
【
図23】実施形態1に係るゼロ点を通る直線で更新した後の調光用テーブルの一例を示す図である。
【
図24】実施形態1に係る回帰直線で更新する前の調光用テーブルと実測結果との対応例を示す図である。
【
図25】実施形態1に係る回帰直線で更新した後の調光用テーブルの一例を示す図である。
【
図26】実施形態2に係る照明制御システムの構成例を示す図である。
【
図27】実施形態2に係る照明装置の構成を示すブロック図である。
【
図28】実施形態3に係る照明制御システムの構成例を示す図である。
【
図29】実施形態3に係る照明装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、実施形態に係る照明制御システム1について説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る照明制御システム1の構成例を示す図である。
図1に示されるように、照明制御システム1は、照明装置100-1と、照明装置100-2と、測定装置300-1と、測定装置300-2と、制御装置200と、を備える。
【0013】
照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、例えば、オフィス、店舗等の屋内に設置される。
【0014】
図1の一例では、照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、一定の間隔を空けて人物の上方に設置される。
【0015】
なお、照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、床下に設置されてもよい。照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれが床下に設置される場合、床面の材質は照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれからの照射光を透過可能な材質であればよい。あるいは、照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、壁面に設置されてもよい。照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれが壁面に設置される場合、壁面の材質は照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれからの照射光を透過可能な材質であればよい。
【0016】
照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、例えば、点灯制御、消灯制御、調光制御等が可能である。照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、点灯制御又は調光制御されている場合、照射光を人物に対して照射可能である。
図1の一例では、照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、人物に対して点灯制御が行われている。また、照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、点滅制御が可能であってもよい。
【0017】
なお、照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、例えば、公園、広場等の屋外に設けられた野外ステージに設置されてもよい。野外ステージの骨組みが、地面に建てられた複数の支柱と、複数の支柱の頂部を繋ぐ梁とで構成されている場合には、照明装置100-1及び照明装置100-2のそれぞれは、野外ステージの骨組みを構成する梁に設置されればよい。
【0018】
なお、照明装置100-1及び照明装置100-2の何れかが特に区別されない場合、照明装置100と称される。
図1の一例では、照明制御システム1は2つの照明装置100を備えるが、照明制御システム1が備える照明装置100の数は2つに限定されるものではなく、少なくとも1つあればよい。また、照明装置100の数は3つ以上であってもよい。照明装置100の数が3つ以上である場合、例えば、各照明装置100は等間隔に並べて設置される。
【0019】
照明装置100の機能の詳細は
図2を用いて後述される。
【0020】
測定装置300-1は、照明装置100-1に対応して設置される。
図1においては、測定装置300-1は、照明装置100-1の外部に設置される一例が示される。
【0021】
測定装置300-1は、人物の位置を測定する機能を有する。測定装置300-1で測定された人物の位置を示す情報は、照明装置100-1に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報として利用される。
【0022】
測定装置300-1は、人物の自律神経の状態を測定する機能を有する。測定装置300-1で測定された人物の自律神経の状態を示す情報は、人物の自律神経の状態を示す自律神経情報として利用される。
【0023】
測定装置300-2は、照明装置100-2に対応して設置される。
図1においては、測定装置300-2は、照明装置100-2の外部に設置される一例が示される。
【0024】
測定装置300-2は、人物の位置を測定する機能を有する。測定装置300-2で測定された人物の位置を示す情報は、照明装置100-2に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報として利用される。
【0025】
測定装置300-2は、人物の自律神経の状態を測定する機能を有する。測定装置300-2で測定された人物の自律神経の状態を示す情報は、人物の自律神経の状態を示す自律神経情報として利用される。
【0026】
なお、測定装置300-1及び測定装置300-2の何れかが特に区別されない場合、測定装置300と称される。
【0027】
図1の一例では、照明制御システム1は2つの測定装置300を備えるが、照明制御システム1が備える測定装置300の数は、2つに限定されるものではなく、少なくとも1台あればよい。
【0028】
また、測定装置300と照明装置100との対応関係は、
図1のような一対一となる関係に限定されない。例えば、複数ある照明装置100のうち、特定の1つの照明装置100に対しては対応する測定装置300が複数設置されてもよい。これにより、複数の測定装置300によりビームフォーミングが行われてもよい。測定装置300で測定された人物の位置を示す情報と、照明装置100との対応付けがされていればよい。
【0029】
測定装置300の機能の詳細は、
図2を用いて後述される。
【0030】
測定装置300の測定機能が照明装置100の内部に含まれる一例は後述する実施形態2で説明される。
【0031】
制御装置200は、各種サービスを提供するサーバー装置としての機能を有する。制御装置200は、照明装置100と通信媒体を介して通信することにより、照明装置100と各種信号を送受信する。また、制御装置200は、測定装置300と通信媒体を介して通信することにより、測定装置300と各種信号を送受信する。
図1の一例では、制御装置200は、測定装置300から受信した各種信号に基づいて、照明装置100の点灯制御又は調光制御を行う。
【0032】
制御装置200の機能の詳細は
図3を用いて後述される。
【0033】
なお、通信媒体は、有線通信媒体及び無線通信媒体の何れであってもよい。
図1の一例では、通信媒体として無線通信媒体が使用される。また、無線通信媒体を介した通信における通信方式は、特に限定されるものではなく、例えば、IEEE802.11規格に準拠した無線LAN通信方式が採用される。
【0034】
また、測定装置300の測定機能だけでなく制御装置200の制御機能も照明装置100の内部に含まれる一例については後述する実施形態3で説明される。
【0035】
次に、照明装置100、制御装置200、及び測定装置300の機能の詳細が
図2及び
図3を用いて説明される。
【0036】
図2は、実施形態1に係る照明装置100及び測定装置300の構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、照明装置100は、照明部110と、制御部120と、を有する。
【0037】
照明部110は、発光部111と、PWM調光回路112と、電源113と、を有する。
【0038】
発光部111は、照明装置100から照射される照射光の光源として機能する。発光部111は、複数の半導体発光素子を含む。半導体発光素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等が使用される。複数の半導体発光素子のそれぞれの発光色は、互いに異なる色となっていてもよい。これにより、複数の半導体発光素子の点灯の組み合わせが変更されれば、照明装置100から照射される照射光の色味は変更可能となる。
【0039】
PWM調光回路112は、発光部111の各半導体発光素子に流れる電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御する回路である。PWM調光回路112により、照明装置100は、発光部111から照射される照射光の発光量を調整可能である。照射光の発光量の調整により、照射光の明るさは変更可能となる。また、PWM調光回路112は、複数の半導体発光素子のうち、電流を流す半導体発光素子を特定することにより、点灯させる半導体発光素子の組み合わせを変更可能である。
【0040】
PWM調光回路112は、制御部120に電力を供給する回路である。制御部120の機能の詳細は後述される。
【0041】
電源113は、PWM調光回路112に電力を供給する機能を有する。電源113は、例えば、商用電源から供給される交流電圧を整流して平滑化した電圧をPWM調光回路112に供給する。
【0042】
電源113は、一次電池又は二次電池から構成されてもよい。
【0043】
制御部120は、CPU121と、メモリー122と、通信モジュール123と、を有する。
【0044】
CPU121は、照明装置100を制御する機能を有する。
【0045】
メモリー122は、CPU121が読み取り可能な非一時的な記録媒体である。メモリー122は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成される。メモリー122は、照明装置100を制御するための各種プログラム、データ等を保持する。
【0046】
通信モジュール123は、通信媒体を介して、外部機器と通信可能な機能を有する。例えば、通信モジュール123は、無線通信媒体を介して、制御装置200と各種信号を送受信する。なお、通信モジュール123は、有線通信媒体を介して、制御装置200と各種信号を送受信してもよい。また、通信モジュール123により、測定装置300と照明装置100との間でピアツーピア通信が行われてもよい。
【0047】
また、
図2に示されるように、測定装置300は、センサー部310と、制御部320と、を有する。
【0048】
センサー部310は、シンセサイザ311と、送信アンテナ312と、受信アンテナ313と、ミキサ314と、ADC315と、DSP316と、を有する。シンセサイザ311、送信アンテナ312、受信アンテナ313、及びミキサ314は、RF(Radio Frequency)部として機能する。
【0049】
シンセサイザ311は、周波数変調された送信信号を出力する。送信信号は、例えば、時間の経過とともに周期的に周波数が増加する信号である。送信信号は、例えば、時間の経過とともに周期的に周波数が減少する信号であってもよい。
【0050】
なお、測定装置300は、時間の経過とともに周期的に周波数が増加する信号と、時間の経過とともに周期的に周波数が減少する信号とのそれぞれにつき、後述するビート信号を生成し、ドップラーシフトを利用して人物の距離、人物の角度、人物の速度を演算する。ここで、人物の速度とは、呼吸及び心拍による人物の体表面振動に相当する。
【0051】
送信信号の周波数は、例えば、ミリ波として用いられる周波数である。よって、送信信号の周波数は、電磁波の中で、周波数が30GHz~300GHzの電磁波である。シンセサイザ311は、送信信号の周波数をミリ波の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ311は、周波数が上昇した送信信号を送信アンテナ312及びミキサ314に供給する。
【0052】
なお、送信信号の周波数は、ミリ波の周波数帯に限定されない。
【0053】
送信アンテナ312は、シンセサイザ311から供給された送信信号を送信波として送信する。送信アンテナ312から送信された送信波は人物へ送信される。送信波は、人物によって反射され、反射波として測定装置300へ向かう。
【0054】
受信アンテナ313は、反射波を受信する。受信アンテナ313は、例えば、複数のアンテナを含んで構成される。受信アンテナ313は、受信した反射波を受信信号としてミキサ314に供給する。
【0055】
ミキサ314は、受信アンテナ313から供給された受信信号を、シンセサイザ311から供給された受信信号に混合して掛け合わせることにより、ビート信号を生成する。よって、ビート信号は、送信信号と受信信号とにより生成される。ミキサ314は、ビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数まで低下させる。ミキサ314は、中間周波数まで低下させたビート信号をADC315に供給する。
【0056】
ADC315は、ミキサ314から供給されたアナログのビート信号をデジタルのビート信号に変換する。ADC315は、デジタルのビート信号をDSP316に供給する。
【0057】
DSP316は、ADC315から供給されたデジタルのビート信号に基づいて、人物の位置、人物の向き、及び人物の心拍間隔を演算する。
【0058】
具体的には、DSP316は、デジタルのビート信号からIQデータである同相直交信号としてのI/Q信号を生成する。DSP316は、I/Q信号から同相信号としてのI信号と、直交信号としてのQ信号と、を導出する。DSP316は、I信号とQ信号とに基づいて、人物の位置、人物の向き、及び人物の速度を演算する。DSP316は、人物の速度に基づいて、人物の心拍間隔を演算する。人物の位置、人物の向き、及び人物の心拍間隔の演算の一例は、
図9~
図13を用いて後述される。
【0059】
概略的に説明すると、DSP316は、受信信号のレベルが最大値をとる場合における位相成分の角度を測定ターゲットの到来角度、すなわち、測定装置300に対する人物の角度として推定することができる。
【0060】
また、DSP316は、ドップラーシフトの時間差に基づいて、測定ターゲットの距離、すなわち、測定装置300に対する人物の距離を推定することができる。
【0061】
測定ターゲットとなる人物の位置及び人物の速度を演算する方法はFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式で得ることができる。人物の位置は、人物の距離と人物の角度とから得られるため、人物の距離及び人物の角度が得られればよい。
【0062】
例えば、人物の距離は、送信信号に対する受信信号の周波数の変化量から得られる。人物の速度は、送信信号の位相と受信信号の位相との位相差から得られる。人物の角度は、複数のアンテナで受信した受信信号の位相差から得られる。
【0063】
なお、距離分解能は帯域幅によって決定される。速度分解能は波長とフレーム時間によって決定される。角度分解能は受信に用いるアンテナの本数によって決定される。
【0064】
なお、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式は一般的な方法であるため、その具体的な説明は省略される。
【0065】
また、DSP316においてデジタルのビート信号からI/Q信号が生成される一例について説明したが、これに限定されない。例えば、DSP316の前工程のADC315において、デジタルのビート信号からI/Q信号が生成され、生成されたアナログのI/Q信号がDSP316に提供されてもよい。
【0066】
制御部320は、CPU321と、メモリー322と、通信モジュール323と、を有する。
【0067】
CPU321は、測定装置300を制御する機能を有する。
【0068】
メモリー322は、CPU321が読み取り可能な非一時的な記録媒体である。メモリー322は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成される。メモリー322は、測定装置300を制御するための各種プログラム、データ等を保持する。
【0069】
通信モジュール323は、通信媒体を介して、外部機器と通信可能な機能を有する。例えば、通信モジュール323は、無線通信媒体を介して、制御装置200と各種信号を送受信する。なお、通信モジュール323は、有線通信媒体を介して、制御装置200と各種信号を送受信してもよい。また、通信モジュール323により、測定装置300と照明装置100との間でピアツーピア通信が行われてもよい。
【0070】
図3は、実施形態1に係る制御装置200の構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、制御装置200は、CPU201と、メモリー202と、通信モジュール203と、を有する。
【0071】
CPU201は、制御装置200を制御する機能を有する。
【0072】
メモリー202は、CPU201が読み取り可能な非一時的な記録媒体である。メモリー202は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成される。メモリー202は、制御装置200を制御するための各種プログラム、データ等を保持する。
【0073】
通信モジュール203は、通信媒体を介して、外部機器と通信可能な機能を有する。例えば、通信モジュール203は、無線通信媒体を介して、照明装置100及び測定装置300のそれぞれと各種信号を送受信する。なお、通信モジュール203は、有線通信媒体を介して、照明装置100及び測定装置300のそれぞれと各種信号を送受信してもよい。
【0074】
制御装置200の処理の詳細は、
図14~
図25を用いて後述される。
【0075】
図4は、実施形態1に係る照明装置100の設定に応じて変動する自律神経の状態例を示す図である。
図4においては、横軸が時間の経過を示し、上側の縦軸が照明設定401の指標を示し、下側の縦軸が自律神経の理想状態曲線402及び自律神経の測定曲線403の各指標を示す。
【0076】
図4に示されるように、照明設定401では、明るさ及び色味の少なくとも一方が照明装置100の調光制御における制御量として設定される。
図4の一例では、明るさを表すルーメンと、色味を表すケルビンと、を統合した指標として、時間経過とともに変動する照明設定401の指標が設定される。
【0077】
また、
図4に示されるように、理想状態曲線402の指標は、時間の経過とともに変動する。理想状態曲線402は、例えば、臨床実験データに基づいて求められた一般的な数値から導出された指標を時系列で示した曲線である。理想状態曲線402では、朝及び夜の時間帯であれば副交感神経が優位であることが理想であることが示される。また、理想状態曲線402では、昼の時間帯であれば交感神経が優位であることが理想であることが示される。
【0078】
また、
図4に示されるように、測定曲線403は、朝及び夜の時間帯には理想状態曲線402を下回り、昼の時間帯には理想状態曲線402を上回っている。よって、朝及び夜の時間帯には、交感神経優位、すなわち、活発側に自律神経を誘導するように、照明設定401が設定されるのが好ましい。一方、昼の時間帯には、副交感神経優位、すなわち、沈静側に自律神経を誘導するように、照明設定401が設定されるのが好ましい。
【0079】
換言すれば、測定曲線403と理想状態曲線402とのギャップを減少させるように、照明設定401が設定されるのが好ましい。
【0080】
図5は、実施形態1に係る照明装置100に対する人物の位置の一例を示す図である。
【0081】
図5の一例では、位置a、位置b、位置A、及び位置Bの位置関係が制御装置200に設定される。位置a及び位置bは、不図示の天井の一部の区画として設定される。位置aの区画は、位置bの区画に隣接した位置関係として設定される。位置A及び位置Bは、不図示の床の一部の区画として設定される。不図示の天井と、不図示の床とは正対した位置関係となる。位置Aの区画は、位置Bの区画に隣接し、且つ位置aの下方の区画として設定される。位置Bの区画は、位置Aの区画に隣接し、且つ位置bの下方の区画として設定される。
【0082】
位置aの区画には、照明装置100-1及び測定装置300-1が設置される。位置bの区画には、照明装置100-2及び測定装置300-2が設置される。
【0083】
また、人物は、位置Aの区画及び位置Bの区画の何れか一方にいることが想定される。
【0084】
ここでは、人物が位置Aの区画におり、人物の正面の向きは右向きであるケースを想定する。ここで、右向きとは、位置Aにいる人物の正面の向きが位置B側を向いていることを示す。
【0085】
また、ここでは、人物が位置Bの区画におり、人物の正面の向きは左向きであるケースを想定する。ここで、左向きとは、位置Bにいる人物の正面の向きが位置A側を向いていることを示す。
【0086】
図6は、
図5の位置A且つ右向きに人物がいる場合に自律神経を活発にさせるときの位置a及びbにおける照明設定例を示す図である。
図6に示されるように、色味の設定は、位置a及び位置bの何れにおいても白色設定となる。一方、明るさの設定は、位置aと、位置bとで異なる設定となる。
【0087】
位置bにおいては、明るさの設定は、位置aと比較して、明るい設定となることが好ましい。すなわち、位置Aに存在し、正面の向きが右向きである人物の自律神経を活発にさせるには、以下の設定が好ましい。つまり、照明装置100-1の明るさは照明装置100-2の明るさと比較して、暗い設定となり、照明装置100-1の色味が白色の設定となる。また、照明装置100-2の明るさは照明装置100-1の明るさと比較して、明るい設定となり、照明装置100-2の色味が白色の設定となる。このような設定とすることで、位置Aに存在し、正面の向きが右向きである人物の自律神経を効率的に活発化できると想定される。
【0088】
換言すれば、人物の頭上側から照射光をより照射可能な照明装置100-1よりも人物の正面側から照射光をより照射可能な照明装置100-2の方が、人物の自律神経により強い影響を与えることが可能である。これは、人体の器官のうち、目には光を感知する視神経が多くあり、自律神経により多くの影響を与えるためである。よって、複数の照明装置100が設置されている場合には、複数の照明装置100のうち、人物の顔面により多くの照射光を照射可能な照明装置100の調光制御における制御量に対し、より多くの変化をつけるのが好ましい。
【0089】
図7は、
図5の位置A且つ右向きに人物がいる場合に自律神経を沈静化させるときの位置a及びbにおける照明設定例を示す図である。
図7に示されるように、色味の設定は、位置a及び位置bの何れにおいても暖色設定となる。一方、明るさの設定は、位置aと、位置bとで異なる設定となる。
【0090】
位置aにおいては、明るさの設定は、位置bと比較して、明るい設定となることが好ましい。すなわち、位置Aに存在し、正面の向きが右向きである人物の自律神経を沈静化させるには、以下の設定が好ましい。つまり、照明装置100-1の明るさは照明装置100-2の明るさと比較して、明るい設定となり、照明装置100-1の色味が暖色の設定となる。また、照明装置100-2の明るさは照明装置100-1の明るさと比較して、暗い設定となり、照明装置100-2の色味が暖色の設定となる。このような設定とすることで、位置Aに存在し、正面の向きが右向きである人物の自律神経を効率的に沈静化できると想定される。
【0091】
図8は、実施形態1に係る調光用テーブルの一例を示す図である。
図8に示されるように、調光用テーブルには、人物の位置、人物の向き、及び自律神経のギャップと、照明装置100の調光制御における制御量と、が対応付けられている。また、
図8の一例では、照明装置100の調光制御における制御量として、明るさを示す値及び色味を示す値のうちの少なくとも一方の値を含む調光パラメーターが設定されている。
【0092】
図8の位置A及び位置Bは、
図5の位置A及び位置Bに対応し、人物の位置として設定されている。また、
図8の「右向き」は、
図5の「右向き」に対応し、人物の向きとして設定されている。また、
図8の「左向き」は、
図5の「左向き」に対応し、人物の向きとして設定されている。
【0093】
図8の自律神経のギャップは、
図4における測定曲線403と理想状態曲線402とのギャップに対応する。
図8の一例では、理想状態曲線402に対する測定曲線403が自律神経のギャップとなる。つまり、自律神経のギャップは、理想状態曲線402から測定曲線403を減じた値として設定されている。
【0094】
よって、自律神経のギャップが正である場合、理想状態曲線402よりも測定曲線403が下回ることを意味している。すなわち、人物の自律神経の状態は理想状態よりも沈静化している。このため、人物の副交感神経が優位となっている。したがって、自律神経のギャップが正である場合、人物の自律神経の状態を活性化させるように照明装置100の調光制御における制御量としての調光パラメーターを調整させる設定となっている。
【0095】
一方、自律神経のギャップが負である場合、理想状態曲線402よりも測定曲線403が上回ることを意味している。すなわち、人物の自律神経の状態は理想状態よりも活性化している。このため、人物の交感神経が優位となっている。したがって、自律神経のギャップが負である場合、人物の自律神経の状態を沈静化させるように照明装置100の調光制御における制御量としての調光パラメーターを調整させる設定となっている。
【0096】
図8の位置a及び位置bは、
図5の位置a及び位置bに対応し、照明装置100の設置場所として設定されている。
図8の位置aにおける明るさ及び色味のそれぞれの制御量と、
図8の位置bにおける明るさ及び色味のそれぞれの制御量とは、人物の位置、人物の向き、及び自律神経ギャップに応じて異なる設定となっている。
【0097】
例えば、人物が位置Aにいて、且つ人物が右向きであって、自律神経のギャップが正である場合、以下の通りである。すなわち、人物の頭上側から照射光をより照射可能な位置a側の照明装置100の明るさの制御量よりも、人物の正面側から照射光をより照射可能な位置b側の照明装置100の明るさの制御量の方がより大きな値が設定されている。これにより、人物の自律神経の状態を活性化させることが可能となる。また、人物の頭上側から照射光をより照射可能な位置a側の照明装置100の色味の制御量よりも、人物の正面側から照射光をより照射可能な位置b側の照明装置100の色味の制御量の方がより大きな値が設定されてもよい。
【0098】
また、自律神経の正のギャップが大きいほど、人物の自律神経の状態をより活性化させるために、位置a及び位置bの何れの調光制御における制御量もより大きな値が設定されている。
【0099】
また、人物が位置Aにいて、且つ人物が右向きであって、自律神経のギャップが負である場合、人物の頭上側から照射光をより照射可能な位置a側の照明装置100の明るさの制御量よりも、人物の正面側から照射光をより照射可能な位置b側の照明装置100の明るさの制御量の方がより小さな値が設定されている。これにより、人物の自律神経の状態を沈静化させることが可能となる。また、人物の頭上側から照射光をより照射可能な位置a側の照明装置100の色味の制御量よりも、人物の正面側から照射光をより照射可能な位置b側の照明装置100の色味の制御量の方がより小さな値が設定されてもよい。
【0100】
また、自律神経の負のギャップが大きいほど、人物の自律神経の状態をより沈静化させるために、位置a及び位置bの何れの調光制御における制御量もより小さな値が設定されている。
【0101】
換言すれば、自律神経のギャップが正である場合、人物の正面側に照射光をより照射可能な照明装置100の明るさ及び色味の制御量には、他の照明装置100に比べ、より大きな値が設定されることで、効率的に人物の自律神経の状態を活性化できる。
【0102】
また、自律神経のギャップが負である場合、人物の正面側に照射光をより照射可能な照明装置100の明るさ及び色味の制御量には、他の照明装置100に比べ、より小さな値が設定されることで、効率的に人物の自律神経の状態を沈静化できる。
【0103】
よって、人物の正面側に対する照射光の角度により、照明装置100が人物の自律神経の状態に与える影響が決まることになる。したがって、複数の照明装置100のうち、人物の正面側に対して照射する照射光の角度がより小さい方の照明装置100の調光制御における制御量には、他の照明装置100の調光制御における制御量に比べ、より重みづけをするのが好ましい。
【0104】
図9は、実施形態1に係る位置Aの判定例を示す図である。
図9に示されるように、測定装置300は、送信波を送信し、反射波を受信し、受信した反射波を受信信号として各種演算をすることにより、測定装置300に対する人物の距離情報及び人物の角度情報を取得する。ここで、測定装置300により取得された人物の距離情報及び人物の角度情報は、照明装置100に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報として利用される。例えば、測定装置300は、位置情報を制御装置200に送信する。これにより、制御装置200は、人物の位置を判定することが可能となる。
【0105】
図10は、実施形態1に係る人物の向きの把握に利用する身体部位の一例を示す図である。測定装置300は、点群データとして、人物の頭の位置、人物の肩の位置、及び人物の腕の位置を取得する。測定装置300は、点群データを制御装置200に送信する。これにより、制御装置200は、人物の体の高低差、人物の腕の曲がり方等の機械学習により人物の向きを判定することが可能となる。
【0106】
なお、人物の姿勢推定は、人工知能により一般的に行われる方法であるため、その具体的な説明は省略される。
【0107】
図11は、実施形態1に係る制御装置200により実施される照明制御処理を説明するフローチャートである。
【0108】
ステップS11において、制御装置200は、測定装置300を制御し、ミリ波で人物の位置を判定した結果を取得する。
【0109】
ステップS12において、制御装置200は、測定装置300を制御し、ミリ波で人物の向きを判定した結果を取得する。
【0110】
ステップS13において、制御装置200は、測定装置300を制御し、心拍間隔取得処理を実行させた結果を取得する。心拍間隔取得処理の詳細は、
図12及び
図13を用いて後述される。
【0111】
ステップS14において、制御装置200は、心拍間隔から自律神経の状態を分析する。例えば、制御装置200は、心拍間隔の経時的な変動から、呼吸変動に対応する高周波変動成分(HF成分)と、血圧変動であるメイヤー波に対応する低周波成分(LF成分)とを抽出する。呼吸変動に対応するHF成分は、副交感神経が活性化している場合にのみ心拍間隔の経時的な変動に出現することが知られている。一方、血圧変動であるメイヤー波に対応するLF成分は、交感神経が活性化しているときだけでなく、副交感神経が活性化しているときにも心拍間隔の経時的な変動に出現することが知られている。
【0112】
よって、LFとHFとの比として、LF/HFを交感神経の活性度とすれば、交感神経及び副交感神経の何れが優位となっているかを判定することができる。例えば、交感神経が優位にある場合、心拍間隔の経時的な変動にはLF成分が出現するが、HF成分は減少するため、LF/HFの値は大きくなる。一方、副交感神経が優位にある場合、相対的にHF成分がLF成分よりも大きくなるため、LF/HFの値は小さくなる。よって、LF/HFによる交感神経の活性度は、人物の自律神経の状態を示す自律神経情報として利用することができる。
【0113】
ステップS15において、制御装置200は、分析した自律神経の状態と理想的な自律神経の状態との自律神経のギャップを推定する。すなわち、
図4の理想状態曲線402から測定曲線403を減算する処理が実行される。
【0114】
ステップS16において、制御装置200は、推定結果に応じて調光する。すなわち、
図8の調光用テーブルの中から該当する明るさ及び色味が選択される処理が実行される。
【0115】
なお、
図8の調光用テーブルの自律神経のギャップのそれぞれに対し、内挿又は外挿が実行されることにより直接的に該当する自律神経のギャップがない場合にも対応可能となる。
【0116】
以上、ステップS11~ステップS16の処理が照明制御処理である。
【0117】
なお、ステップS11~ステップS16の処理には並列性が内在されている。ステップS11の処理と、ステップS12の処理と、ステップS13~ステップS15の処理とは、互いに独立して処理可能である。すなわち、ステップS11の処理、ステップS12の処理、及びステップS13~ステップS15の処理のそれぞれは並列実行可能である。
【0118】
なお、理想的な自律神経の状態を示す理想情報もLF/HFによる交感神経の活性度により特定されればよい。
【0119】
また、周波数解析を用いたLF/HFによる方法は自律神経の状態を示す指標の一例であり、特にこれに限定されない。自律神経の状態を示す指標は、時系列解析、非線形解析等のような他の方法に基づく指標であってもよい。時系列解析であれば、例えば、心拍間隔の標準偏差であるSDNN(Standard deviation of all R-R interval)、心拍間隔の差の二乗平均平方根であるRMSSD(Root Mean Square of Successice Difference)等が利用されてもよい。また、非線形解析であれば、例えば、ポアンカレプロットが利用されてもよい。
【0120】
図12は、実施形態1に係る測定装置300により実行される心拍間隔取得処理を説明するフローチャートである。
【0121】
ステップS131において、測定装置300は、ミリ波でIQデータを取得する。
【0122】
ステップS132において、測定装置300は、信号処理により速度情報を取得する。
【0123】
ステップS133において、測定装置300は、心音に該当する周波数で速度情報にフィルタをかける。心音に該当する周波数は、例えば、20~200Hzの範囲の周波数である。
【0124】
ステップS134において、測定装置300は、心音波形を取得する。
【0125】
ステップS135において、測定装置300は、心拍間隔を取得する。
【0126】
図13は、実施形態1に係る心音波形における心拍間隔の一例を示す図である。
図13に示されるように、心音波形のピークの位置に基づいて心拍間隔は算出可能である。
【0127】
以上、ステップS131~ステップS135の処理が心拍間隔取得処理である。ステップS131~ステップS135の処理には並列性が内在されていない。ステップS131~ステップS135の処理は逐次実行される処理となる。
【0128】
上述の通り、照明制御処理として、ステップS11~ステップS16の処理が実行された結果、人物の位置が位置Aであり、人物の向きが右向きであり、自律神経のギャップが+40であると判定された場合、以下の通りである。すなわち、調光用テーブルが利用されて調光制御における制御量が選択される。
【0129】
図14は、実施形態1に係る調光用テーブルを利用して選択された明るさ及び色味の設定例を示す図である。
図14に示されるように、選択例411においては、位置aにある照明装置100-1と比べ、位置bにある照明装置100-2の方が、明るさを示す制御量と、色味を示す制御量と、が大きい。これは、人物の自律神経を活性化させるために、人物に影響をより与えることができる照明装置100-2の調光制御における制御量が大きな値に設定された一例である。
【0130】
ただし、人物によって照射光に対する感度は異なるため、
図8及び
図14の調光用テーブルでは個人に対して最適であるとは限らない。また、人物の姿勢によっても照射光の当たり方は異なる。しかし、制御装置200が人物の位置についてcm単位で詳細な調光用テーブルを保持するにはデータ量が多くなり、事前の評価データの検証も膨大になる。
【0131】
そこで、実際に測定して得られたデータを利用し、調光用テーブルを最適化処理する詳細例が
図15~
図25を用いて説明される。
【0132】
図15は、実施形態1に係る調光用テーブルの最適化処理を説明するフローチャートである。
【0133】
最適化処理は、ステップS21~ステップS32の処理を含む。ステップS21~ステップS32の処理には並列性は内在されていない。ステップS21~ステップS32の処理は逐次実行される処理となる。
【0134】
ステップS21において、制御装置200は、照明制御処理を実行する。上述で説明したように、照明制御処理は、ステップS11~ステップS16の処理である。ここでは、その詳細な説明は省略される。
【0135】
ステップS22において、制御装置200は、予め設定された時間が経過したか否かを判定する。予め設定された時間とは、調光制御の影響が得られると想定される時間であればよい。例えば、予め設定された時間として5分が設定されてもよい。
【0136】
制御装置200により予め設定された時間が経過したと判定された場合、ステップS22の処理はステップS23の処理に移行する。一方、制御装置200により予め設定された時間が経過していないと判定された場合、ステップS22の処理は継続する。
【0137】
ステップS23において、制御装置200は、測定装置300を制御し、心拍間隔取得処理を実行させた結果を取得する。上述で説明したように、心拍間隔取得処理は、ステップS131~ステップS135の処理である。ここでは、その詳細な説明は省略される。
【0138】
ステップS24において、制御装置200は、心拍間隔から自律神経の状態を分析する。ステップS24の処理は、ステップS14の処理と同様である。
【0139】
ステップS25において、制御装置200は、過去の自律神経の状態に対する現在の自律神経の状態の変化量を算出する。
【0140】
ステップS26において、制御装置200は、算出結果を自律神経の変化量として保管する。
図16は、
図8の調光用テーブルから人物の位置及び向きを除き、時刻、自律神経の理想状態、現在の自律神経の状態、理想状態と現在の自律神経の状態とのギャップ及び自律神経の変化量を追加した更新用テーブルの一例を示す図である。
図16に示されるように、自律神経の変化量が更新用テーブルに記憶されることにより、制御装置200は、自律神経の変化量をメモリー202に保管する。
【0141】
ステップS27において、制御装置200は、現在の自律神経の状態と理想的な自律神経の状態との自律神経のギャップを算出する。
【0142】
ステップS28において、制御装置200は、自律神経のギャップの算出結果に応じて調光する。
【0143】
ステップS29において、制御装置200は、繰り返し処理を終了するか否かを判定する。制御装置200により繰り返し処理を終了すると判定された場合、ステップS29の処理はステップS30の処理に移行する。一方、制御装置200により繰り返し処理を終了しないと判定された場合、ステップS29の処理はステップS22の処理に戻る。
【0144】
ステップS30において、制御装置200は、自律神経のギャップと自律神経の変化量とが異なるか否かを判定する。制御装置200により自律神経のギャップと自律神経の変化量とが異なると判定された場合、ステップS30の処理はステップS31に移行する。一方、制御装置200により自律神経のギャップと自律神経の変化量とが異ならないと判定された場合、ステップS30の処理は最適化処理としての処理を終了する。
【0145】
ステップS31において、制御装置200は、調光時の明るさ及び色味と自律神経の変化量とを記憶する。
【0146】
ステップS32において、制御装置200は、更新処理を実行し、最適化処理としての処理を終了する。更新処理の詳細は、
図17を用いて後述される。
【0147】
図17は、実施形態1に係る制御装置200により実行される更新処理を説明するフローチャートである。
【0148】
ステップS51において、制御装置200は、自律神経の変化量と同値の自律神経のギャップに対応する明るさ及び色味を自律神経の変化量の算出時の明るさ及び色味に更新する。
【0149】
図18は、実施形態1に係る更新用テーブルの更新項目の一例を示す図である。
図18に示されるように、選択例412において、自律神経の変化量の値が+30のとき、自律神経のギャップは+50と設定されている。よって、本来、調光制御における制御量として、位置aにおける明るさが4000ルーメンであって、且つ色味が6000ケルビンであり、位置bにおける明るさが5000ルーメンであって、且つ色味が6000ケルビンであれば、以下の通りである。すなわち、自律神経のギャップが+50のものを0に下げることができる。
【0150】
しかし、
図18には、調光制御の結果として、自律神経の変化量の値は+30であった一例が示されている。よって、位置aにおける明るさが4000ルーメン且つ色味が6000ケルビンであり、位置bにおける明るさが5000ルーメン且つ色味が6000ケルビンである場合の調光制御における制御量は、自律神経のギャップが+30の場合に対応することになる。
【0151】
図19は、実施形態1に係る更新用テーブルの更新項目の抜粋例を示す図である。
図19に示されるように、選択例413における制御量では自律神経のギャップが+50の場合ではなく+30の場合に対応していると推定される。
【0152】
そこで、制御装置200は、更新用テーブルを更新する。
【0153】
図20は、実施形態1に係る更新前の調光用テーブルの一例を示す図である。
図20には、選択例414において、更新予定の制御量が選択されている一例が示されている。
【0154】
図21は、実施形態1に係る更新後の調光用テーブルの一例を示す図である。
図21には、選択例415において、自律神経のギャップが+30である場合に対応する制御量が更新された一例が示されている。
【0155】
ステップS52において、制御装置200は、全体的に更新するか否かを判定する。制御装置200により全体的に更新すると判定される場合、ステップS52の処理はステップS53の処理に移行する。一方、制御装置200により全体的に更新しないと判定される場合、ステップS52の処理は更新処理としての処理を終了する。
【0156】
ステップS53において、制御装置200は、自律神経のギャップと自律神経の変化量とが異なる記録が他にあるか否かを判定する。制御装置200により自律神経のギャップと自律神経の変化量とが異なる記録が他にあると判定される場合、ステップS53の処理はステップS57の処理に移行する。一方、制御装置200により自律神経のギャップと自律神経の変化量とが異なる記録が他にないと判定される場合、ステップS53の処理はステップS54の処理に移行する。
【0157】
ステップS54において、制御装置200は、ゼロ点を通る直線で近似したデータに基づいて自律神経のギャップ毎に明るさを更新する。
【0158】
図22は、実施形態1に係るゼロ点を通る直線で更新する前の調光用テーブルと実測結果との対応例を示す図である。
図22に示されるように、選択例416における明るさの制御量は3000ルーメンであるが、実測結果では同一の自律神経のギャップに対応する明るさの制御量は4000ルーメンとなる。
【0159】
図23は、実施形態1に係るゼロ点を通る直線で更新した後の調光用テーブルの一例を示す図である。
図23に示されるように、選択例417において、ゼロ点を通る直線で近似したデータに基づいて自律神経のギャップ毎に明るさの制御量が更新されている。
【0160】
ステップS55において、制御装置200は、色味を更新するか否かを判定する。制御装置200により色味を更新すると判定される場合、ステップS55の処理はステップS56の処理に移行する。一方、制御装置200により色味を更新しないと判定される場合、ステップS55の処理は更新処理としての処理を終了する。
【0161】
ステップS56において、制御装置200は、ゼロ点を通る直線で近似したデータに基づいて自律神経のギャップ毎に色味を更新し、更新処理としての処理を終了する。
【0162】
ステップS57において、制御装置200は、複数の記録から回帰直線に基づいて自律神経のギャップ毎に明るさを更新する。
【0163】
図24は、実施形態1に係る回帰直線で更新する前の調光用テーブルと実測結果との対応例を示す図である。
図24に示されるように、調光用テーブルの制御量と、実測結果の制御量とは異なっている。
【0164】
図25は、実施形態1に係る回帰直線で更新した後の調光用テーブルの一例を示す図である。
図25に示されるように、選択例418において、複数の記録から回帰直線に基づいて自律神経のギャップ毎に明るさの制御量が更新されている。
【0165】
ステップS58において、制御装置200は、色味を更新するか否かを判定する。制御装置200により色味を更新すると判定される場合、ステップS58の処理はステップS59の処理に移行する。一方、制御装置200により色味を更新しないと判定される場合、ステップS58の処理は更新処理としての処理を終了する。
【0166】
ステップS59において、制御装置200は、複数の記憶から回帰直線に基づいて自律神経のギャップ毎に色味を更新し、更新処理としての処理を終了する。
【0167】
以上の説明から、実施形態1において、照明制御システム1は、照明装置100と、測定装置300と、制御装置200と、を備える。測定装置300は、電磁波を利用して、照明装置100に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する。制御装置200は、位置情報及び前記自律神経情報に基づいて、照明装置100に対する調光制御を行う。
【0168】
これにより、人物の心拍間隔に基づいて人物の体調を推定し、部屋の照明装置100を制御するだけではなく、照明装置100に対する人物の相対的な位置を考慮した調光制御が可能となる。
【0169】
よって、照明装置100からの光が、人物に直接視認される場合と、人物に直接視認されない場合とで、光が人物の自律神経に与える影響が異なり得る場合が考慮される調光制御となる。したがって、良好な照明環境を形成することが可能である。
【0170】
また、実施形態1において、位置情報は、照明装置100に対する人物の位置を示す情報と、照明装置100に対する人物の向きを示す情報と、を含んでもよい。これにより、人物に照射される照射光の影響度合いを考慮した調光制御が可能となる。したがって、人物の自律神経の状態をより調整可能な調光制御を行うことができる。
【0171】
また、実施形態1において、測定装置300は、人物の心拍間隔を示す生体情報を測定することにより自律神経情報を取得してもよい。これにより、非接触で人物の自律神経の状態を取得できるので、人物が移動しても対応可能となる。したがって、現在の人物の位置を反映させた調光制御を行うことができる。
【0172】
また、実施形態1において、制御装置200は、調光制御として、照明装置100の明るさ及び色味を制御してもよい。これにより、照射光の明るさ及び色味の両方が制御可能となる。したがって、人物の自律神経の状態に対し、より的確に影響を与えることができる。
【0173】
また、実施形態1において、制御装置200は、自律神経情報に基づく調光制御における制御量を位置情報に応じて異ならせてもよい。これにより、照明装置100に対する人物の相対的な位置関係と制御量とを対応付けた調光制御が行われる。したがって、制御量をより的確な量に制御することが可能となる。
【0174】
また、実施形態1において、制御装置200は、自律神経情報と理想的な自律神経の状態を示す理想情報とのギャップに基づいて、ギャップを減少させるように制御量を調整してもよい。さらに、制御装置200は、ギャップに応じた制御量を、位置情報に基づいて決定してもよい。これらにより、自律神経の状態によって制御量をフィードバック制御することができる。したがって、自律神経の状態をより早く理想的な自律神経の状態にさせることが可能となる。
【0175】
また、実施形態1において、制御装置200は、ギャップにより人物の副交感神経が優位となっていると判定される場合、制御量としての調光パラメーターを現在値よりも高い値に設定してもよい。また、制御装置200は、ギャップにより人物の交感神経が優位となっていると判定される場合、制御量としての調光パラメーターを現在値よりも低い値に設定してもよい。これらにより、副交感神経が優位のときには人物の自律神経を活性化させるために調光パラメーターを現在値よりも高い値にすることで、照明装置100の照射光の明るさを上げ、照明装置100の照射光の色味を上げる。また、交感神経が優位のときには人物の自律神経を沈静化させるために調光パラメーターを現在値よりも低い値にすることで、照明装置100の照射光の明るさを下げ、照明装置100の照射光の色味を下げる。よって、副交感神経が優位となっている場合及び交感神経が優位となっている場合の何れの場合であっても、的確な制御量に設定することができる。したがって、自律神経の状態を理想的な自律神経の状態にさせるのに適した制御を行うことが可能となる。
【0176】
また、実施形態1において、制御装置200は、調光制御としてN回目(Nは2以上の自然数)の調光制御を行う前の自律神経情報と、N回目の調光制御を行った後の自律神経情報と、に基づいて、N+1回目の前記調光制御における制御量を調整してもよい。これにより、N回目の調光制御の結果を考慮してN+1回目の調光制御を行うことができる。したがって、現在の自律神経の状態をより目的とする状態にさせることができる。
【0177】
また、実施形態1において、制御装置200は、自律神経情報と理想的な自律神経の状態を示す理想情報とのギャップと、制御量とを対応付ける対応情報に応じて、N+1回目の調光制御における制御量を調整してもよい。これにより、自律神経情報と理想的な自律神経の状態を示す理想情報とのギャップと、制御量とを対応付ける対応状態に応じた制御量によりN+1回目の調光制御が行われる。したがって、制御量を得る際の演算コストを低減させることができる。
【0178】
また、実施形態1において、制御装置200は、対応情報は、N回目の調光制御による自律神経情報の変化量に応じて対応情報を更新する。これにより、調光制御に応じた自律神経の状態の変化を対応情報に反映させることが可能となる。したがって、各個人に適した制御量に設定することができる。
【0179】
また、実施形態1において、制御装置200は、N回目の調光制御を行う前の自律神経情報と、N回目の調光制御を行った後の自律神経情報と、に応じて変化量を特定してもよい。これにより、調光制御により自律神経の状態が受けた影響度合いを明確にすることができる。したがって、対応情報の更新処理を的確に行うことができる。
【0180】
(実施形態2)
実施形態2における実施形態1との違いは、
図26及び
図27の照明装置500に測定機能が含まれる点にある。以下、実施形態2の構成の詳細例が後述される。
【0181】
図26は、実施形態2に係る照明制御システム2の構成例を示す図である。
図26に示されるように、照明制御システム2は、照明装置500-1と、照明装置500-2と、制御装置200と、を備える。制御装置200の機能は、実施形態1の制御装置200の機能と同様であるため、その説明については省略される。
【0182】
照明装置500-1及び照明装置500-2の何れかが特に区別されない場合、照明装置500と称される。
【0183】
図27は、実施形態2に係る照明装置500の構成を示すブロック図である。
図27に示されるように、照明装置500は、照明部510と、制御部520と、センサー部530と、を有する。
【0184】
照明部510は、発光部511と、PWM調光回路512と、電源513と、を有する。発光部511、PWM調光回路512、及び電源513の各機能は、実施形態1の発光部111、PWM調光回路112、及び電源113の各機能と同様であるため、それらの説明については省略される。
【0185】
制御部520は、CPU521と、メモリー522と、通信モジュール523と、を有する。CPU521、メモリー522、及び通信モジュール523の各機能は、実施形態1における、CPU121、メモリー122、及び通信モジュール123の機能と、CPU321、メモリー322、及び通信モジュール323の機能と、を統合した機能である。ここでは、それらの説明は省略される。
【0186】
センサー部530は、シンセサイザ531と、送信アンテナ532と、受信アンテナ533と、ミキサ534と、ADC535と、DSP536と、を有する。シンセサイザ531、送信アンテナ532、受信アンテナ533、ミキサ534、ADC535、及びDSP536の各機能は、シンセサイザ311、送信アンテナ312、受信アンテナ313、ミキサ314、ADC315、及びDSP316の各機能と同様である。よって、それらの説明については省略される。
【0187】
以上、実施形態2においては、照明装置500の中にセンサー部530が含まれる。よって、照明装置500に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報をより正確に取得することが可能となる。したがって、より的確な調光制御を行うことができる。
【0188】
(実施形態3)
実施形態3における実施形態1及び2との違いは、
図28及び
図29の照明装置600に測定機能と制御機能とが含まれる点にある。以下、実施形態3の構成の詳細例が後述される。
【0189】
図28は、実施形態3に係る照明制御システム3の構成例を示す図である。
図28に示されるように、照明制御システム3は、照明装置600-1と、照明装置600-2と、を備える。
【0190】
照明装置600-1及び照明装置600-2の何れかが特に区別されない場合、照明装置600と称される。
【0191】
図29は、実施形態3に係る照明装置600の構成を示すブロック図である。
図29に示されるように、照明装置600は、照明部610と、制御部620と、センサー部630と、を有する。
【0192】
照明部610は、発光部611と、PWM調光回路612と、電源613と、を有する。発光部611、PWM調光回路612、及び電源613の各機能は、実施形態1の発光部111、PWM調光回路112、及び電源113の各機能と同様であるため、それらの説明については省略される。
【0193】
制御部620は、CPU621と、メモリー622と、を有する。CPU621及びメモリー622の各機能は、実施形態1における、CPU121及びメモリー122の機能と、CPU321及びメモリー322の機能と、CPU201及びメモリー202の機能と、を統合した機能である。ここでは、それらの説明は省略される。なお、実施形態3においては制御部620に外部機器との通信機能が含まれていない。これは、外部機器と通信する必要がないためである。
【0194】
センサー部630は、シンセサイザ631と、送信アンテナ632と、受信アンテナ633と、ミキサ634と、ADC635と、DSP636と、を有する。シンセサイザ631、送信アンテナ632、受信アンテナ633、ミキサ634、ADC635、及びDSP636の各機能は、シンセサイザ311、送信アンテナ312、受信アンテナ313、ミキサ314、ADC315、及びDSP316の各機能と同様である。よって、それらの説明については省略される。
【0195】
以上、実施形態3においては、照明装置600の中にセンサー部630が含まれるだけでなく、調光制御の機能も含まれている。よって、調光制御における制御量を外部機器から得る必要がない。よって、照明装置600単独で人物の自律神経の状態を理想的な状態にさせる調光制御を行うことができる。したがって、通信環境に関係なく、独立して良好な照明環境を形成することが可能である。
【0196】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ミリ波による送信波と反射波とを利用して人物の位置を特定する一例について説明したが、人物の位置を特定する構成は、特にこれに限定されない。例えば、可視光カメラが設置されてもよい。可視光カメラであれば、可視光カメラにより撮像された画像データを解析することにより、人物の位置を特定することが可能である。
【0197】
また、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)のような測域センサーが照明装置100の設置場所のそばに設置されてもよい。測域センサーは、平面上をレーザーにてスキャニングし、検出した物体の大きさに基づいて人物の位置を測定可能である。
【0198】
また、上述の実施形態では、ミリ波による送信波と反射波とを利用して人物の心拍間隔を演算する一例について説明したが、人物の心拍間隔を演算する構成は、特にこれに限定されない。例えば、近赤外線カメラが設置されてもよい。近赤外線カメラであれば、可視光カメラよりも透過深度の深い近赤外光を用いて人物が撮像される。よって、細動脈等の人物の深部の血管を測定できる。したがって、近赤外カメラを用いて人物の心拍間隔が測定可能となる。
【0199】
また、上述の実施形態では、調光用テーブル及び更新用テーブルがメモリー202に保管される一例について説明したが、特にこれに限定されない。調光用テーブル及び更新用テーブルは外部記憶媒体又は不図示の商用サーバーで構成されるクラウド上に保管されてもよい。
【0200】
また、上述の実施形態では、照明装置100に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報、人物の自律神経の状態を示す自律神経情報、照明装置100に対する調光制御における制御量が関連付けられている一例について説明した。しかし、特にこれに限定されるものではない。例えば、照明装置100に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報、及び人物の自律神経の状態を示す自律神経情報を入力とし、照明装置100に対する調光制御における制御量を出力とする写像関係が関数として設定されてもよい。
【0201】
上述の各動作フローは、別個独立に実施する場合に限らず、2以上の動作フローを組み合わせて実施可能である。例えば、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローに追加してもよいし、1つの動作フローの一部のステップを他の動作フローの一部のステップと置換してもよい。各フローにおいて、必ずしも全てのステップを実行する必要は無く、一部のステップのみを実行してもよい。
【0202】
また、上述の実施形態において、照明制御システム1~3としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述の実施形態において、照明制御システム1~3のようなシステムの制御方法として実施されてもよい。さらに、例えば、上述の実施形態において、照明制御システム1~3のようなシステムが実行するプログラムとして実施されてもよい。
【0203】
上述の実施形態に係る動作をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。また、上述の実施形態に係る各装置が行う各処理を実行する回路を集積化し、当該装置の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0204】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on/in response to)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。さらに、本開示で使用されている「第1」、「第2」等の呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0205】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0206】
(付記)
上述の実施形態に関する特徴について付記する。
【0207】
(付記1)
照明装置(100)と、
電磁波を利用して、前記照明装置(100)に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と前記人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する測定装置(300)と、
前記位置情報及び前記自律神経情報に基づいて、前記照明装置(100)に対する調光制御を行う制御装置(200)と、を備える
照明制御システム(1)。
【0208】
(付記2)
前記位置情報は、
前記照明装置(100)に対する前記人物の位置を示す情報と、
前記照明装置(100)に対する前記人物の向きを示す情報と、を含む
付記1に記載の照明制御システム(1)。
【0209】
(付記3)
前記測定装置(300)は、前記人物の心拍間隔を示す生体情報を測定することにより前記自律神経情報を取得する
付記1又は付記2に記載の照明制御システム(1)。
【0210】
(付記4)
前記制御装置(200)は、前記調光制御として、前記照明装置(100)の明るさ及び色味を制御する
付記1乃至付記3の何れか1項に記載の照明制御システム(1)。
【0211】
(付記5)
前記制御装置(200)は、前記自律神経情報に基づく前記調光制御における制御量を前記位置情報に応じて異ならせる
付記1乃至付記4の何れか1項に記載の照明制御システム(1)。
【0212】
(付記6)
前記制御装置(200)は、前記自律神経情報と理想的な自律神経の状態を示す理想情報とのギャップに基づいて、前記ギャップを減少させるように前記制御量を調整し、
前記制御装置(200)は、前記ギャップに応じた前記制御量を、前記位置情報に基づいて決定する
付記5に記載の照明制御システム(1)。
【0213】
(付記7)
前記制御装置(200)は、前記ギャップにより前記人物の副交感神経が優位となっていると判定される場合、前記制御量としての調光パラメーターを現在値よりも高い値に設定し、前記ギャップにより前記人物の交感神経が優位となっていると判定される場合、前記調光パラメーターを前記現在値よりも低い値に設定する
付記6に記載の照明制御システム(1)。
【0214】
(付記8)
前記制御装置(200)は、前記調光制御としてN回目(Nは2以上の自然数)の前記調光制御を行う前の前記自律神経情報と、前記N回目の前記調光制御を行った後の前記自律神経情報と、に基づいて、N+1回目の前記調光制御における制御量を調整する
付記1乃至付記7の何れか1項に記載の照明制御システム(1)。
【0215】
(付記9)
前記制御装置(200)は、前記自律神経情報と理想的な自律神経の状態を示す理想情報とのギャップと、前記制御量とを対応付ける対応情報に応じて、前記N+1回目の前記調光制御における前記制御量を調整する
付記8に記載の照明制御システム(1)。
【0216】
(付記10)
前記制御装置(200)は、前記N回目の前記調光制御による前記自律神経情報の変化量に応じて前記対応情報を更新する
付記9に記載の照明制御システム(1)。
【0217】
(付記11)
前記制御装置(200)は、前記N回目の前記調光制御を行う前の前記自律神経情報と、前記N回目の前記調光制御を行った後の前記自律神経情報と、に応じて前記変化量を特定する
付記10に記載の照明制御システム(1)。
【0218】
(付記12)
照明装置(100)を制御する制御装置(200)であって、
電磁波を利用する測定装置(300)を用いて、前記照明装置(100)に対する人物の相対的な位置関係を示す位置情報と前記人物の自律神経の状態を示す自律神経情報とを取得する制御部(201)を備え、
前記制御部(201)は、前記位置情報及び前記自律神経情報に基づいて、前記照明装置(100)に対する調光制御を行う
制御装置(200)。
【符号の説明】
【0219】
1,2,3 照明制御システム、100,100-1,100-2 照明装置、110 照明部、111 発光部、112 PWM調光回路、113 電源、120 制御部、121 CPU、122 メモリー、123 通信モジュール、200 制御装置、201 CPU、202 メモリー、203 通信モジュール、300,300-1,300-2 測定装置、310 センサー部、311 シンセサイザ、312 送信アンテナ、313 受信アンテナ、314 ミキサ、315 ADC、316 DSP、320 制御部、321 CPU、322 メモリー、323 通信モジュール、401 照明設定、402 理想状態曲線、403 測定曲線、411,412、413,414,415、416,417,418 選択例、500,500-1,500-2 照明装置、510 照明部、511 発光部、512 PWM調光回路、513 電源、520 制御部、521 CPU、522 メモリー、530 センサー部、531 シンセサイザ、532 送信アンテナ、533 受信アンテナ、534 ミキサ、535 ADC、536 DSP、600,600-1,600-2 照明装置、610 照明部、611 発光部、612 PWM調光回路、613 電源、620 制御部、621 CPU、622 メモリー、630 センサー部、631 シンセサイザ、632 送信アンテナ、633 受信アンテナ、634 ミキサ、635 ADC、636 DSP。