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特開2024-91143前兆検出システム、ブレーカ、分電盤、前兆検出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091143
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】前兆検出システム、ブレーカ、分電盤、前兆検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/08 20060101AFI20240627BHJP
   H02B 1/42 20060101ALI20240627BHJP
   H02H 5/00 20060101ALI20240627BHJP
   H01H 83/20 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H02H3/08 D
H02B1/42
H02H5/00
H01H83/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207633
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 史迅
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】永野 友一朗
(72)【発明者】
【氏名】北川 重雄
(72)【発明者】
【氏名】館石 美紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬文
【テーマコード(参考)】
5G004
5G030
5G211
【Fターム(参考)】
5G004AA01
5G004AB02
5G004BA01
5G004BA04
5G004CA02
5G030FC01
5G030XX17
5G030YY12
5G211AA05
5G211DD01
5G211DD04
5G211DD14
5G211DD18
5G211DD21
(57)【要約】
【課題】課題は、電路での異常の前兆の検出、ひいては検出した前兆への的確な対処、の可能化を図ることである。
【解決手段】前兆検出システム1は、記憶部と検出部とを備える。記憶部は、履歴記憶処理を実行する。履歴記憶処理は、計測ユニット15からの計測結果を時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。計測ユニット15は、ブレーカ(10,50)に付随して用いられる。ブレーカ(10,50)は、電力系統201と顧客の宅内の負荷202との間の電路(203a~203c)に介在する。計測履歴情報は、計測結果と時刻情報との対の集合である。検出部は、前兆検出処理を実行する。前兆検出処理は、計測履歴情報を用いて、電路(203a~203c)での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する処理である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と顧客の宅内の負荷との間の電路に介在するブレーカに付随して用いられる計測ユニット、からの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、前記計測結果と前記時刻情報との対の集合である計測履歴情報を蓄積していく履歴記憶処理、を実行する記憶部と、
前記計測履歴情報を用いて、前記電路での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する前兆検出処理を実行する検出部と、を備える、
前兆検出システム。
【請求項2】
前記計測ユニットは、過電流、漏電、及び地震のうち1つ以上の遮断原因を検知するための1つ以上の計測器を含み、
前記計測結果は、前記1つ以上の計測器に対応する1つ以上の計測値を含み、
前記ブレーカは、前記1つ以上の計測値を基に前記1つ以上の遮断原因のいずれかを検知した場合に、前記電路の電流を遮断する遮断動作を行い、
前記前兆検出処理は、前記遮断動作の原因となり得る遮断原因の前兆を検出する、
請求項1に記載の前兆検出システム。
【請求項3】
前記履歴記憶処理は、前記ブレーカが前記遮断動作を行った時、前記遮断動作が行われた旨の実行情報を含む遮断情報を、当該遮断動作の実行時点での前記時刻情報に対応付けて更に記憶する、
請求項2に記載の前兆検出システム。
【請求項4】
前記ブレーカを含む分電盤を更に備え、
前記ブレーカは、主幹ブレーカであり、
前記分電盤は、1つ以上の分岐ブレーカを更に含み、
前記電路は、前記電力系統と前記主幹ブレーカとの間の第1電路、前記主幹ブレーカと前記1つ以上の分岐ブレーカとの間の第2電路、及び前記1つ以上の分岐ブレーカの各々と前記負荷との間の第3電路を含み、
前記1つ以上の計測器は、前記第2電路に設けられる第1電流計、及び1つ以上の前記第3電路にそれぞれ設けられる1つ以上の第2電流計、を含み、
前記1つ以上の計測値は、前記第1電流計の第1電流値、及び前記1つ以上の第2電流計の1つ以上の第2電流値を含み、
前記前兆検出処理は、
前記第1電流値を基に、前記第2電路及び1つ以上の前記第3電路のどこかでの過電流及び漏電の少なくとも一方を検出する第1検出処理、及び
1つ以上の前記第2電流値を基に、1つ以上の前記第3電路の各々での過電流及び漏電の少なくとも一方を検出する第2検出処理、を含む、
請求項3に記載の前兆検出システム。
【請求項5】
前記前兆への対処を支援する対処情報を取得する対処処理、を実行する対処部と、
前記前兆情報及び前記対処情報の少なくとも一方を出力する出力部と、を更に備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の前兆検出システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記前兆情報及び前記対処情報の少なくとも一方を、前記顧客及び前記顧客による前記前兆への対処を支援する支援者、の少なくとも一方の端末に送信する、
請求項5に記載の前兆検出システム。
【請求項7】
前記ブレーカを含む分電盤を更に備え、
前記ブレーカは、主幹ブレーカであり、
前記分電盤は、1つ以上の分岐ブレーカを更に含み、
1つ以上の前記分電盤と、
1つ以上の前記分電盤の各々と通信可能なサーバと、を更に備え、
前記計測ユニットは、1つ以上の前記分電盤の各々に内蔵され、
前記記憶部及び前記検出部は、前記サーバに備えられ、
前記サーバが備える前記記憶部は、1つ以上の前記分電盤の各々の前記計測ユニットからの前記計測結果について前記履歴記憶処理を実行し、
前記サーバが備える前記検出部は、1つ以上の前記分電盤の各々の前記計測ユニットからの前記計測結果について前記前兆検出処理を実行する、
請求項1に記載の前兆検出システム。
【請求項8】
前記サーバが備える前記記憶部は、第1記憶部であり、
1つ以上の前記分電盤の各々は、第2記憶部を備え、
1つ以上の前記分電盤の各々が備える前記第2記憶部は、前記分電盤自身の前記計測ユニットからの前記計測結果について、前記履歴記憶処理を書き換え不能に実行する、
請求項7に記載の前兆検出システム。
【請求項9】
電力系統と顧客の宅内の負荷との間の電路に介在するブレーカであって、
前記ブレーカに付随して用いられる計測ユニット、からの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、前記計測結果と前記時刻情報との対の集合である計測履歴情報を蓄積していく履歴記憶処理、を実行する記憶部と、
前記計測履歴情報を用いて、前記電路での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する前兆検出処理を実行する検出部と、を備える、
ブレーカ。
【請求項10】
請求項9に記載のブレーカを備える、
分電盤。
【請求項11】
電力系統と顧客の宅内の負荷との間の電路に介在するブレーカに付随して用いられる計測ユニット、からの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、前記計測結果と前記時刻情報との対の集合である計測履歴情報を蓄積していく履歴記憶処理、を実行する記憶ステップと、
前記計測履歴情報を用いて、前記電路での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する前兆検出処理を実行する検出ステップと、を備える、
前兆検出方法。
【請求項12】
請求項11に記載の前兆検出方法を1以上のコンピュータに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、前兆検出システム、ブレーカ、分電盤、前兆検出方法及びプログラムに関し、より詳細には、電路での異常の前兆を検出する前兆検出システム、ブレーカ、分電盤、前兆検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、顧客端末に対し、発生した停電に関する停電情報をサーバ装置により通知する停電情報通知システムが記載されている。通知される停電情報には、停電時間及び停電原因が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-336692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
停電には、電力系統に起因する広範囲の停電(以下、系統停電)と、個々の顧客宅のブレーカの動作(電路で過電流や漏電等の異常が発生した場合に、電路の電流を遮断する遮断動作)に起因する宅内の停電(以下、宅内停電)とがある。特許文献1の停電原因通知システムは、系統停電について、停電原因等の情報(系統停情報)を通知するものであり、宅内停電の原因(ブレーカの遮断動作の原因となるような電路での異常:遮断原因)については、何ら情報を通知するものではない。仮に、特許文献1の停電原因通知システムに、遮断原因についての情報(遮断原因情報)を通知する機能を付加したとしても、実際に停電して初めて、遮断原因情報が通知され、電路での異常が認識されるので、的確な対処を行えない場合があった。
【0005】
本開示の目的は、電路での異常の前兆の検出、ひいては検出した前兆への的確な対処、の可能化を図る前兆検出システム、ブレーカ、分電盤、前兆検出方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る前兆検出システムは、記憶部と、検出部と、を備える。前記記憶部は、履歴記憶処理を実行する。前記履歴記憶処理は、計測ユニットからの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。前記計測ユニットは、ブレーカに付随して用いられる。前記計測履歴情報は、前記計測結果と前記時刻情報との対の集合である。前記ブレーカは、電力系統と顧客の宅内の負荷との間の電路に介在する。前記検出部は、前兆検出処理を実行する。前記前兆検出処理は、前記計測履歴情報を用いて、前記電路での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する処理である。
【0007】
本開示の一態様に係るブレーカは、電力系統と顧客の宅内の負荷との間の電路に介在する。前記ブレーカは、記憶部と、検出部と、を備える。前記記憶部は、履歴記憶処理を実行する。前記履歴記憶処理は、計測ユニットからの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。前記計測ユニットは、前記ブレーカに付随して用いられる。前記計測履歴情報は、前記計測結果と前記時刻情報との対の集合である。前記検出部は、前兆検出処理を実行する。前記前兆検出処理は、前記計測履歴情報を用いて、前記電路での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する処理である。
【0008】
本開示の一態様に係る分電盤は、前記ブレーカを備える。
【0009】
本開示の一態様に係る前兆検出方法は、記憶ステップと、検出ステップと、を備える。前記記憶ステップは、履歴記憶処理を実行する。前記履歴記憶処理は、計測ユニットからの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。前記計測ユニットは、ブレーカに付随して用いられる。前記計測履歴情報は、前記計測結果と前記時刻情報との対の集合である。前記ブレーカは、電力系統と顧客の宅内の負荷との間の電路に介在する。前記検出ステップは、前兆検出処理を実行する。前記前兆検出処理は、前記計測履歴情報を用いて、前記電路での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する処理である。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記前兆検出方法を1以上のコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の前兆検出システム、ブレーカ、分電盤、前兆検出方法及びプログラムは、電路での異常の前兆の検出、ひいては検出した前兆への的確な対処、の可能化を図るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態1に係る前兆検出システムを含む電力供給システムのブロック図である。
図2図2は、同上の前兆検出システムを構成する主幹ブレーカのブロック図である。
図3図3は、同上の前兆検出システムの動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、同上の前兆検出システムによる前兆情報等の出力例を示す図である。
図5図5は、同上の前兆検出システムによる対処情報等の出力例を示す図である。
図6図6は、本開示の実施形態2に係る前兆検出システムを含む電力供給システムのブロック図である。
図7図7は、同上の前兆検出システムを構成するサーバのブロック図である。
図8図8は、同上の前兆検出システムを構成する主幹ブレーカのブロック図である。
図9図9は、同上の前兆検出システムによる対処情報等の出力例を示す図である。
図10図10は、同上の主幹ブレーカを含む分電盤の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0014】
本開示では、前兆検出システムが、電路での異常の前兆を検出し、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方を取得する。
【0015】
本開示の実施形態1では、前兆検出システムは、一のブレーカで構成され、一のブレーカが、電路での異常の前兆の検出、及び前兆情報等の取得を行う。実施形態2では、前兆検出システムは、1つ以上のブレーカ及びサーバで構成され、サーバが、1つ以上のブレーカの各々と協働して、1つ以上のブレーカに対応する1つ以上の電路の各々について、異常の前兆の検出、及び前兆情報等の取得を行う。
【0016】
(1)前提事項
(1-1)実施形態1,2に共通の前提事項
最初に、図1図10を適宜参照して、本開示の実施形態1,2に係る前兆検出システム1に共通の前提事項を説明する。
【0017】
図1図6に示すように、本開示の実施形態1,2に係る前兆検出システム1は、電力系統201と顧客の宅内の負荷202との間の電路(203a~203c)に介在するブレーカ(10,50)、に付随して用いられる計測ユニット15の計測履歴を基に、電路(203a~203c)での異常の前兆を検出する。
【0018】
(1-1-1)ブレーカ
ブレーカ(10,50)は、例えば、図10に示すような分電盤100を構成する主幹ブレーカ10である。なお、分電盤100については後述する。
【0019】
主幹ブレーカ10は、過電流、漏電及び地震を検知する検知機能、過電流等を検知した場合に電路(203a~203c)の電流を遮断する(トリップ状態となる)遮断機能、及び、少なくとも端末40と通信する通信機能、を有する。
【0020】
主幹ブレーカ10は、第2電路203b又は第3電路203cで過電流又は漏電が発生した場合、又は地震が発生した場合に、トリップ状態となる。主幹ブレーカ10がトリップ状態となることで、負荷202へ電力の供給は停止される。
【0021】
主幹ブレーカ10は、例えば、異常の前兆の検出時、及び停電の発生時に、上記顧客の端末40と通信可能に接続される。すなわち、主幹ブレーカ10は、前兆検知時及び停電発生時に、端末40との間で近距離無線通信による接続を自動的に試みる。また、主幹ブレーカ10は、例えば、停電の発生時に顧客が行う接続操作(スイッチ10Aの操作)に応じて、端末40と近距離無線で通信可能になる。
【0022】
または、主幹ブレーカ10は、ネットワーク等(例えば、計測ユニット15、第2ネットワーク302、ゲートウェイ(GW)303及び第1ネットワーク301:図6参照)を介して、端末40と常時通信可能に接続されていてもよい。
【0023】
主幹ブレーカ10は、プロセッサ(CPU,MPU等)及びメモリ(半導体メモリ、SSD等)と、通信モジュールと(いずれも図示しない)を有する。メモリには、各種のデータ及びプログラムが格納され、プロセッサが当該各種のデータを用いて当該プログラムを実行することにより、上記検知機能及び上記遮断機能が実現される。なお、以下では、各種の機能を実現するプロセッサ及びメモリを「コンピュータ」と称する場合がある。
【0024】
主幹ブレーカ10の通信モジュールは、上記通信機能を実現する。主幹ブレーカ10と端末40との間の通信は、通常、近距離無線通信であり、通信モジュールは、近距離無線の通信機能を少なくとも実現する。
【0025】
主幹ブレーカ10は、例えば、タッチパネルやキーボード等の入力デバイスを有していてもよい。また、主幹ブレーカ10は、ディスプレイやスピーカ等の出力デバイスを有していてもよい。
【0026】
分電盤100は、例えば、図10に示すように、主幹ブレーカ10に加えて、1つ以上の分岐ブレーカ50、及び計測ユニット15を有する。主幹ブレーカ10には、接点(後述)を開閉するスイッチ(ハンドルともいう)10Aが設けられ、分岐ブレーカ50にも同様のスイッチが設けられている。計測ユニット15は、接続操作(後述)を受け付ける接続キー15Aを有する。また、計測ユニット15は、計測結果等の情報を表示するディスプレイ15Bを有していてもよい。
【0027】
ただし、ブレーカは、例えば、分電盤100を構成する分岐ブレーカ50でもよい。又は、ブレーカは、例えば、分電盤100を構成するリミッタ(図示しない)でもよいし、分電盤100の構成要素でなくてもよい。つまり、ブレーカは、電力系統201と負荷202との間の電路(203a~203c)に介在し、過電流等の発生に応じて電路(203a~203c)の電流を遮断するものであれば、そのタイプは問わない。
【0028】
(1-1-2)負荷
負荷202は、電力系統201からの電力で動作する家庭用の電気機器である。負荷202は、例えば、情報家電等のIoT機器が好適である。このような負荷202は、第2ネットワーク302(後述)に接続可能である(実施形態2:図6参照)。ただし、負荷202は、第2ネットワーク302への接続機能を有さない電気機器でもよい(実施形態1:図1参照)。
【0029】
(1-1-3)電路
電路(203a~203c)は、第1電路203a、第2電路203b及び第3電路203cを含む。第1電路203aは、ブレーカ(主幹ブレーカ10)に対して電力系統201側(主幹ブレーカ10の一次側)の電路である。第2電路203bは、ブレーカ(主幹ブレーカ10)に対して負荷202側(主幹ブレーカ10の二次側)の電路である。第3電路203cは、分岐ブレーカ50に対して負荷202側(分岐ブレーカ50の二次側)の電路である。
【0030】
(1-1-4)端末
上記顧客は、端末40を利用可能である。利用とは、例えば、ディスプレイに表示又はスピーカから音声出力される情報の視聴、タッチパネル等の入力デバイスを介した情報の入力、等を行うことである。端末40は、主幹ブレーカ10との間で近距離無線通信が可能である。
【0031】
端末40は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末であるが、デスクトップPC(Personal Computer)等の据え置き型端末でもよい。携帯端末は、上記顧客によって携帯される。据え置き型端末は、上記顧客の宅内に設置される。
【0032】
端末40は、プロセッサ及びメモリ(コンピュータ)と、少なくとも近距離無線を実現する通信モジュールと、タッチパネル等の入力デバイスと、ディスプレイ等の出力デバイスと、を有する。
【0033】
(1-2)実施形態2の前提事項
次に、図6を参照して実施形態2に係る前兆検出システム1に特有の前提事項を説明する。
【0034】
実施形態2では、1つ以上の分電盤100の各々が、第1ネットワーク301、GW303及び第2ネットワーク302(いずれも後述)を介してサーバ30と通信可能に接続される。
【0035】
(1-2-1)サーバ
サーバ30は、1つ以上の分電盤100と協働して、前兆検出システム1を実現する。サーバ30は、1つ以上の分電盤100の各々について、計測ユニット15の計測結果を受け、電路(203a~203c)での異常の前兆(後述)を検出し、前兆情報及び対処情報(いずれも後述)の少なくとも一方を取得する。そして、サーバ30は、1つ以上の分電盤100に対応する1つ以上の端末40の各々に、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方を提供する。
【0036】
サーバ30は、プロセッサ及びメモリ(コンピュータ)と、第1ネットワーク301を介した通信を実現する通信モジュールとを有する。
【0037】
(1-2-2)ネットワーク
サーバ30は、第1ネットワーク301を介して顧客及び支援者の少なくとも一方の端末40(後述)と通信可能に接続される。第1ネットワーク301は、例えば、インターネットや通信回線網等の広域ネットワークである。
【0038】
一方、負荷202が接続されるネットワークは、第2ネットワーク302である。第2ネットワークは、例えば、宅内の電路を介して通信を行うPLC(Power Line Communications)ネットワークである。第2ネットワーク302は、GW303を介して第1ネットワーク301と通信可能に接続される(実施形態2)。
【0039】
詳しくは、実施形態2では、サーバ30が接続された第1ネットワーク(インターネット)の通信プロトコルと、主幹ブレーカ10が接続された第2ネットワーク(PLCネットワーク)の通信プロトコルとが異なるため、第1ネットワーク・第2ネットワーク間に、当該2つのプロトコルの間のプロトコルを変換するGW303が介在する。
【0040】
なお、GW303は、このようなプロトコル変換に加えて、第2ネットワーク302に接続された各種のIoT機器に関連する処理も行ってもよい。関連する処理とは、例えば、各種のIoT機器に関する機器情報を収集してサーバ30に提供する処理などである。
【0041】
なお、実施形態2では、計測ユニット15(後述)の通信モジュールが、近距離無線による通信、及び第2ネットワーク302を介した通信、の2種類の通信機能を有している。主幹ブレーカ10の通信モジュールは、計測ユニット15の通信モジュールと近距離無線通信を行うことにより、第2ネットワーク302を介した通信機能を更に実現する。
【0042】
ただし、主幹ブレーカ10の通信モジュールは、第2ネットワーク302を介した通信機能を、計測ユニット15の通信モジュールを介すことなく単独で実現してもよい。また、主幹ブレーカ10の通信モジュールは、第1ネットワーク301(後述)を介した通信機能を、端末40の通信モジュールを介すことなく単独で実現してもよい。
【0043】
(1-2-3)顧客の端末
顧客の端末40は、主幹ブレーカ10との間の近距離無線通信に加えて、サーバ30との間で第1ネットワーク301を介した通信を行うこともできる。端末40の通信モジュールは、近距離無線通信に加えて、このような第1ネットワーク301を介した通信機能を更に実現する。
【0044】
(1-2-4)支援者の端末
顧客は、前兆検出システム1によって検出された前兆への対処を図る際に、支援者(例えば業者:後述)から支援を受けることができる。支援者もまた、端末40を利用する。支援者の端末40は、通常、第1ネットワーク301を介してサーバ30と通信可能に接続される。ただし、支援者の端末40もまた、主幹ブレーカ10との間で近距離無線通信を行ってもよい。
【0045】
支援者の端末40は、プロセッサ及びメモリ(コンピュータ)と、少なくとも第1ネットワーク301を介した通信を実現する通信モジュールと、キーボード等の入力デバイスと、ディスプレイ等の出力デバイスと、を有する。
【0046】
(2)要部
次に、実施形態1,2の前兆検出システム1の要部について説明する。
【0047】
本開示の実施形態1,2に係る前兆検出システム1は、図1図6に示すように、記憶部121と、検出部122と、を備える。
【0048】
(2-1)記憶部及び履歴記憶処理
記憶部121は、履歴記憶処理を実行する。履歴記憶処理とは、計測ユニット15の計測履歴を記憶する処理である。履歴記憶処理は、計測ユニット15からの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。
【0049】
好ましい履歴記憶処理では、計測履歴情報を構成する複数の時刻情報のうち、遮断時点の時刻情報に対応付けて、遮断情報(後述)が更に記憶される。
【0050】
計測ユニット15は、ブレーカに付随して用いられる。ブレーカは、通常、主幹ブレーカ10であるが、1つ以上の分岐ブレーカ50の各々でもよい(以下、単に「ブレーカ(10,50)」と記す。ブレーカ(10,50)は、電力系統201と顧客の宅内の負荷202との間の電路に介在する。電路は、第1電路203a,第2電路203b及び第3電路203cを含む(以下、単に「電路(203a~203c)」と記す)。
【0051】
時刻情報は、例えば、プロセッサの内蔵時計やNTP(Network Time Protocol)サーバ等から定期的(例えば10秒毎)又は不定期に取得される。計測ユニット15からの計測結果は、時刻情報時刻情報の取得と同期して取得される。なお、計測結果が定期的に取得される場合、計測結果を時刻情報に対応付けて記憶することは、計測結果を時系列に記憶することでもよい。
【0052】
(2-1-1)履歴記憶処理の変形例
なお、前兆検出システム1は、災害関連情報を取得する取得部(不図示)を更に備え、履歴記憶処理では、時刻情報に対応付けて、災害関連情報が更に記憶されてもよい。つまり、時刻情報に対応付けて、計測結果と災害関連情報との組(以下、「組情報」と記す)が記憶されてもよい。
【0053】
災害関連情報とは、自然災害に関連する情報である。災害関連情報は、例えば、自然災害の発生に関する災害発生情報、気象に関する気象情報などを含む。この場合の計測履歴情報は、時刻情報と組情報との対の集合となる。
【0054】
このような計測履歴情報を用いることで、予兆の検出精度の向上を図ることができる。また、宅内のブレーカ(分電盤100の主幹ブレーカ10)がトリップ状態となったことに起因する宅内停電に加えて、電力系統(201)に起因する系統停電(自然災害によるブレーカ(10,50)の二次側の電路203aの異常)も含めた検出も可能となる。
【0055】
(2-1-2)計測履歴情報
計測履歴情報とは、計測ユニット15の計測履歴に関する情報である。計測履歴情報は、時刻情報と計測結果との対の集合である。なお、計測履歴情報は、時刻情報と組情報(計測結果と災害関連情報との組)との対の集合でもよい。
【0056】
(2-2)検出部及び前兆検出処理
検出部122は、前兆検出処理を実行する。前兆検出処理とは、計測履歴情報を用いて、電路(203a~203c)での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報(後述)を取得する処理である。
【0057】
(2-2-1)異常
検出対象である電路での異常は、通常、電路(203a~203c)のうち、主幹ブレーカ10の二次側(第2電路203b,第3電路203c:宅内)での異常である。ただし、異常は、電路(203a~203c)のうち、主幹ブレーカ10の一次側(第1電路203a:宅外)での異常でもよい。
【0058】
(2-2-1a)遮断原因
異常は、例えば、遮断原因である。遮断原因とは、電路を流れる電流がブレーカによって遮断される原因である。遮断原因は、例えば、過電流(過負荷によるもの、短絡によるもの、雷サージによるもの)、漏電、及び地震などである。
【0059】
(2-2-1b)異常の変形例
ただし、異常は、ブレーカの一次側(第1電路203a:電力系統201側)での異常も含んでもよい。この種の異常は、例えば、自然災害による送電線の破損などである。
【0060】
(2-2-2)前兆
前兆は、例えば、電流値が定格値に近い状態の継続(過負荷による過電流遮断の前兆)、漏電電流の継続的な増加(漏電遮断の前兆)、雷サージ(落雷遮断の前兆)、閾値を超える加速度の検知(地震遮断の前兆)などである。
【0061】
(2-2-3)判断
判断は、例えば、有無の判断である。検出部122は、計測結果の時間変化(及び災害関連情報)が前兆条件を満たす場合に、前兆ありと判断する。
【0062】
(2-2-4)前兆条件
前兆条件とは、異常の前兆と判断される条件である。前兆条件は、例えば、前兆条件1~4である。
【0063】
前兆条件1は、過負荷による過電流遮断の前兆と判断される条件である。前兆条件1は具体的には、例えば、電流値が定格値のx%(例えば、90%)を超える状態がy時間(例えば、1時間)以上継続すること、であってもよい。
【0064】
前兆条件2は、漏電遮断の前兆と判断される条件である。前兆条件2は、例えば、漏電電流の増加が所定期間(例えば、1日)以上継続すること、であってもよい。
【0065】
前兆条件3は、地震遮断の前兆と判断される条件である。前兆条件3は、例えば、加速度が閾値を超えること、であってもよい。
【0066】
前兆条件4は、落雷遮断の前兆と判断される条件である。前兆条件4は、例えば、電流値が瞬間的に閾値(>定格値)を超えること、であってもよい。
【0067】
なお、検出部122は、判断の際に、災害関連情報を考慮してもよい。災害関連情報を考慮した判断は、例えば、閾値を超える加速度が検知されても、災害関連情報が地震発生を示す情報を含まない場合は、地震遮断の前兆とは判断しないこと、でもよい。
【0068】
(2-2-5)判断の変形例
または、判断は、例えば、上記のような有無の判断を人為的に行うこと(有無の人為的な判断)を支援するための前兆情報(計測結果)、を送信するか否かの判断でもよい。
【0069】
(2-2-6)前兆情報
前兆情報とは、検出した前兆に関する情報である。実施形態1,2での前兆情報は、前兆を検出した旨の情報であるが、前兆の有無を判断した判断結果を示す情報であってもよい。
【0070】
または、前兆情報は、前兆の有無の人為的判断を支援するための計測結果でもよい。前兆情報は、例えば、蓄積されている計測履歴情報のうち、人為的判断を要するとの判断に対応する部分でもよい。
【0071】
(2-3)実施形態1,2の主要な利点
以上のように、本実施形態1,2では、記憶部121が履歴記憶処理を実行することで、ブレーカ(10,50)に付随する計測ユニット(15)からの計測結果が時刻情報に対応付けて記憶され、計測履歴情報が蓄積される。そして、検出部122が前兆検出処理を実行することで、計測履歴情報を基に電路(203a~203c)での異常(遮断原因)の前兆が検出される。これによって、電路での異常の前兆の検出の可能化を図ることができる。
【0072】
(3)詳細
次に、実施形態1,2の前兆検出システム1の詳細について説明する。
【0073】
(3-1)ブレーカ
(3-1-1)主幹ブレーカ
実施形態1,2の主幹ブレーカ10は、上記のような計測ユニット15の計測結果のうち電流値及び加速度値を基に、主幹ブレーカ10自身の二次側での過電流、漏電、及び地震の各々の発生を検出し、トリップ状態となる。
【0074】
詳しくは、後述する処理部12が、計測ユニット15の計測結果を基に、過電流等が発生したか否かを判断する。そして、過電流等が発生したと判断した場合に、処理部12は、第1電路203a及び第2電路203bの間の接点を開閉する開閉機構(図示しない)、及び開閉機構を駆動する駆動回路(図示しない)、を介して接点を開放し、主幹ブレーカ10をトリップ状態に移行させてもよい。
【0075】
ただし、主幹ブレーカ10は、上記のような電子式のブレーカに限らず、バイメタルや電磁コイル等を利用してトリップ状態(スイッチ10Aがオフの状態)に移行する熱動式や電磁式のブレーカでもよい。この場合、主幹ブレーカ10には、スイッチ10Aのオン・オフを検知するセンサが設けられ、処理部12は、センサの検知結果を基に、トリップ状態か否かの判断を行う。
【0076】
(3-1-2)分岐ブレーカ
分岐ブレーカ50は、第2電流値を基に、分岐ブレーカ50自身の二次側での過電流の発生を検出し、トリップ状態となる。
【0077】
(3-2)計測ユニット
計測ユニット15は、遮断原因を検知するための1つ以上の計測器を含む。
【0078】
(3-2-1)遮断原因
遮断原因とは、ブレーカ(10,50)が電路(203a~203c)の電流を遮断する遮断動作を行う原因となる現象(例えば、過電流や漏電等の電路で生じる物理現象、及び地震等の広域で発生する自然現象)である。
【0079】
遮断原因は、例えば、過電流、漏電、及び地震のうち1つ以上である。過電流は、例えば、過負荷による過電流、短絡による過電流、及び落雷による過電流(雷サージ)、のうち1種類以上を含むことが好適である。
【0080】
(3-2-2)1つ以上の計測器
1つ以上の計測器は、実施形態1,2では、過電流及び漏電の少なくとも一方を検知するための電流計、並びに地震を検知するための加速度計である。検知とは、例えば、電流計の計測結果(電流値)を基に過電流及び漏電を検知すること、又は、加速度計の計測結果(加速度値)を基に地震を検知すること、などである。
【0081】
ただし、1つ以上の計測器は、各種の遮断原因それ自体を検知する各種のセンサ(例えば、過電流センサ、漏電センサ、及び地震センサのうち1つ以上)でもよい。
【0082】
1つ以上の計測器は、例えば、過電流を検知する過電流センサ、漏電を検知する漏電センサ、及び地震を検知する地震センサであってもよい。過電流センサ及び漏電センサは、それぞれ専用の電流計で実現されるが、一の電流計でも実現され得る。
【0083】
(3-2-2a)実施形態1:電流計及び加速度計
実施形態1における1つ以上の計測器は、電流計及び加速度計を含む。電流計は、主幹ブレーカ10の二次側(第2電路203b及び第2電路203c)での過電流及び漏電を検知するための電流計であり、第2電路203bに設けられる。加速度計は、地震を検知するための加速度計であり、分電盤100に設けられる。
【0084】
(3-2-2b)実施形態2:第1電流計及び第2電流計並びに加速度計
実施形態2における1つ以上の計測器は、第1電流計、1つ以上の第2電流計及び加速度計を含む。第1電流計は、主幹ブレーカ10の二次側(第2電路203b及び第2電路203c)での過電流及び漏電を検知するための電流計であり、第2電路203bに設けられる。1つ以上の第2電流計は、1つ以上の分岐ブレーカ50の各々の二次側(第2電路203c)での過電流及び漏電を検知するための電流計であり、1つ以上の第3電路203cにそれぞれ設けられる。加速度計は、地震を検知するための加速度計であり、分電盤100に設けられる。
【0085】
(3-3)計測結果
計測結果は、1つ以上の計測器に対応する1つ以上の計測値を含む。1つ以上の計測値は、実施形態1では、例えば、電流計に対応する電流値、及び加速度計に対応する加速度値である。
【0086】
1つ以上の計測値は、実施形態2では、例えば、第1電流計に対応する第1電流値、1つ以上の第2電流計に対応する1つ以上の第2電流値、及び加速度計に対応する加速度値である。
【0087】
(3-4)ブレーカ及び遮断動作
ブレーカ(10,50)は、計測ユニット15からの1つ以上の計測値を基に1つ以上の遮断原因のいずれかを検知した場合に、遮断動作を行う。
【0088】
遮断動作とは、電路(203a~203c)の電流を遮断する動作である。遮断原因は、例えば、過電流、漏電、地震及び落雷のうち1つ以上である。
【0089】
前兆検出処理は、例えば、このような遮断動作の原因となり得る遮断原因の前兆、を検出する処理である。
【0090】
このように、異常は、ブレーカによる遮断原因となるような電路の異常(例えば、過電流、漏電、地震等)であり、遮断原因の前兆の検知の可能化を図ることができる。
【0091】
(3-5)履歴記憶処理
履歴記憶処理は、ブレーカ(10,50)が遮断動作を行った時、遮断情報を当該遮断動作の実行時点での時刻情報に対応付けて更に記憶する。これによって、遮断発生時点の時刻情報に対応付けて、遮断情報及び計測結果の組が記憶される結果となる。
【0092】
(3-5-1)遮断情報:実行情報及び遮断原因情報
遮断情報とは、ブレーカによる遮断動作に関する情報である。遮断情報は、実行情報を含む。実行情報は、遮断動作が行われた旨の情報である。遮断情報は、遮断原因情報を更に含んでもよい。遮断原因情報とは、遮断原因を特定する情報である。遮断原因情報は、計測ユニット15からの計測結果を基に取得される。
【0093】
このように、遮断原因の前兆を検知後、遮断に至った場合に、遮断時点の時刻情報に実行情報を対応付けて記憶することで、遮断の時刻、ひいては前兆の検出から遮断の実行までの所要時間が分かるので、異常の前兆か否かの判断の精度向上を図ることができる。
【0094】
(3-5-2)第1電流値、及び1つ以上の第2電流値
1つ以上の計測値は、第1電流値、及び1つ以上の第2電流値を含む。第1電流値は、第1電流計の電流値である。1つ以上の第2電流値は、1つ以上の第2電流計の電流値である。
【0095】
(3-5-3)第1検出処理及び第2検出処理
前兆検出処理は、第1検出処理、及び第2検出処理を含む。第1検出処理は、第1電流値を基に、第2電路203b及び1つ以上の第3電路203cのどこか(つまり、主幹ブレーカ10の二次側の電路)での過電流及び漏電の少なくとも一方を検出する処理である。
【0096】
第2検出処理は、1つ以上の第2電流値を基に、1つ以上の第3電路203cの各々(つまり、1つ以上の分岐ブレーカ50の各々の二次側の電路)での過電流及び漏電の少なくとも一方を検出する処理である。
【0097】
このように、前述したブレーカ(10,50)は、分電盤100の主幹ブレーカ10であり、分電盤100は、1つ以上の分岐ブレーカ50を更に含む。検出部122は、主幹ブレーカ10と各分岐ブレーカ50との間の電路(第2電路203b)での遮断原因に加えて、各分岐ブレーカ50と負荷202との間の電路(第3電路203c)での遮断原因を更に検出する。これにより、予兆の検出箇所(主幹ブレーカ10の二次側の電路のどこで遮断原因の前兆が生じたか)、の特定を図ることができる。
【0098】
(3-6)対処部及び出力部
前兆検出システム1は、対処部123と、出力部13と、を更に備える。
【0099】
対処部123は、対処処理を実行する。対処処理とは、前兆への対処を支援する対処情報を取得する処理である。
【0100】
出力部13は、各種の情報を出力する。各種の情報とは、例えば、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方である。なお、実施形態1及び2では、通常、前兆情報及び対処情報の両方が出力されるが、いずれか一方のみが出力されてもよい。
【0101】
このように、前兆への対処を支援する対処情報を取得することで、検出した前兆への的確な対処の可能化を図ることができる。
【0102】
(3-7)前兆情報及び対処情報の送信
出力部13は、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方を、顧客及び顧客による前兆への対処を支援する支援者、の少なくとも一方の端末40に送信する。
【0103】
なお、前兆情報等は、実施形態1では、顧客の端末40に送信され、実施形態2では、顧客の端末40及び支援者の端末40の各々又はいずれか一方に送信される。
【0104】
このように、前述した出力は、例えば、顧客及び支援者の少なくとも一方の端末40への送信である。こうして、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方を顧客及び支援者の少なくとも一方の端末40に送信することで、検出した前兆への的確な対処を、顧客又は支援者を通じて図ることができる。
【0105】
(3-8)判断の変形例:計測結果及び災害関連情報に基づく判断
前兆検出システム1は、取得部(不図示)を更に備えてもよい。取得部は、外部サーバ(不図示)から、自然災害に関連する災害関連情報を取得する。外部サーバは、例えば、電力会社や気象庁等のサーバである。災害関連情報は、例えば、自然災害の発生に関する災害発生情報、気象に関する気象情報などである。
【0106】
災害関連情報は、系統停電情報も含んでいてもよい。系統停電情報とは、系統停電に関する情報である。系統停電情報は、例えば、系統停電の原因、系統停電の範囲、復電の時刻、等に関する情報を含む。なお、系統停電情報は、外部サーバ(例えば、電力系統201のサーバ:図示しない)から取得される。
【0107】
検出部122は、災害関連情報に更に基づいて(つまり、計測結果及び災害関連情報の組である組情報)に基づいて、異常の前兆か否かの判断を行ってもよい。
【0108】
これによって、判断の精度向上を図ることができる。
【0109】
(3-9)バックアップ電源
前兆検出システム1は、電源部14を更に備える。電源部14は、系統停電中、少なくとも主幹ブレーカ10に電力を供給する。電源部14は、通常、計測ユニット15にも電力を供給する。
【0110】
電源部14は、通常、バッテリである。バッテリは、例えば、使い切りであるが、充電式でもよい。実施形態1,2では、電源部14は、主幹ブレーカ10とは別体であり、分電盤100内に設けられる。ただし、電源部14は、主幹ブレーカ10に内蔵されていてもよいし、主幹ブレーカ10以外の内器に内蔵されていてもよい。
【0111】
または、電源部14は、例えば、少なくとも系統停電時に稼働する自家発電システムでもよい。
【0112】
(3-10)計測ユニット・ブレーカ間の接続
なお、計測ユニット15は、実施形態1,2では、主幹ブレーカ10とは別体の専用ユニットであり、ブレーカ(主幹ブレーカ10)と常時通信可能に接続される。計測ユニット15と主幹ブレーカ10との間の接続は、実施形態1,2では近距離無線通信による接続であるが、有線接続でもよい。
【0113】
ただし、計測ユニット15の一部(第2電流計以外)の構成要素は、主幹ブレーカ10の構成要素であってもよい。例えば、上記第1電流計及び上記加速度計の少なくとも一方が、主幹ブレーカ10に更に内蔵されていてもよい。
【0114】
または、計測ユニット15は、分電盤100内の、主幹ブレーカ10以外の内器(例えば、リミッタ)が備えていてもよいし、分電盤100の外部に設けられてもよい。計測ユニット15の計測結果を、主幹ブレーカ10の処理部12に引き渡すことが可能であれば、計測ユニット15の所在は問わない。
【0115】
(4)実施形態1
次に、本開示の実施形態1に係る前兆検出システム1について説明する。なお、既出事項の説明は省略又は簡略化している。
【0116】
本開示の実施形態1に係る前兆検出システム1は、図1に示すように、単一の分電盤100で構成される。分電盤100は、主幹ブレーカ10,1つ以上の分岐ブレーカ50、計測ユニット15及び電源部14を備える。
【0117】
主幹ブレーカ10は、図2に示すように、受付部11と、処理部12と、出力部13とを備える。処理部12は、記憶部121と、検出部122と、対処部123とを備える。
【0118】
受付部11は、各種の操作及び各種の情報を受け付ける。各種の操作とは、例えば接続操作、詳細出力操作である。接続操作の受け付けは、接続キー15Aを介した受け付けである。詳細出力操作は、接続操作に応じて端末40が主幹ブレーカ10と通信可能に接続された後、端末40を介して受け付けられる。
【0119】
各種の情報とは、例えば、計測ユニット15の計測結果、外部サーバからの災害関連情報などである。計測結果等の情報の受け付けは、通信モジュールを介した受信である。
【0120】
処理部12は、各種の処理を行う。各種の処理とは、例えば、記憶部121の履歴記憶処理、検出部122の前兆検出処理、及び対処部123の対処処理などである。
【0121】
出力部13は、前述したように、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方(図5参照)を出力する。また、出力部13は、例えば、計測結履歴情報、遮断情報など(図5参照)も出力してもよい。前兆情報等の情報の出力は、例えば、通信モジュールを介した端末40への送信であるが、ディスプレイ15Bへの表示、又はスピーカ(不図示)からの音声出力などでもよい。
【0122】
主幹ブレーカ10を構成する各部(11~13及び121~123)は、通常、電力系統201からの電力で動作するが、系統停電中は電源部14からの電力で動作する。
【0123】
計測ユニット15は、主幹ブレーカ10と常時通信可能に接続される。計測ユニット15と主幹ブレーカ10との間の接続は、近距離無線通信による接続である。
【0124】
計測ユニット15は、主幹ブレーカ10の一次側の第1電路203aの電力を電力計で計測する。また、計測ユニット15は、主幹ブレーカ10の二次側の第2電路203bの電流を第1電流計で計測する。さらに、計測ユニット15は、計測ユニット15自身の加速度を加速度計で計測する。そして、計測ユニット15は、当該3つの計測結果(電力値、第1電流値及び加速度値)を主幹ブレーカ10に引き渡す。
【0125】
主幹ブレーカ10は、計測ユニット15の計測結果を基に、主幹ブレーカ10自身の二次側での過電流、漏電、及び地震の各々の発生を検出し、トリップ状態となる。
【0126】
(4-1)動作例
主幹ブレーカ10は、例えば、図3に示すフローチャートに従って動作する。なお、このフローチャートの処理は、電力系統201からの電力の通電に応じて開始される。
【0127】
主幹ブレーカ10を構成する処理部12は、受付部11が計測ユニット15からの計測結果等の情報を受け付けたか否かを判断する(ステップS1)。受付部11が計測結果等の情報を受け付けていないと判断された場合、処理はステップS3に進む。
【0128】
受付部11が計測結果等の情報を受け付けたと判断された場合、記憶部121は、計測結果等の情報を時刻情報に対応付けて記憶する(ステップS2)。その後、処理は、ステップS1に戻る。
【0129】
ステップS1で受付部11が計測結果等の情報を受け付けたと判断された場合、検出部122は、前兆条件が満たされたか否かを判断する(ステップS3)。前兆条件が満たされていないと判断された場合、処理はステップS1に戻る。
【0130】
ステップS3で前兆条件が満たされたと判断された場合、前兆を検出した旨の前兆情報を取得する(ステップS4)。次に、対処部123が、ステップS3で検出された前兆に応じた対処情報を取得する(ステップS5)。その後、処理は、ステップS1に戻る。
【0131】
なお、ステップS5では、取得された前兆情報及び取得された対処情報の少なくとも一方、の出力部13による出力も行われる。出力対象は、例えば、前兆情報及び対処情報(図5参照)であるが、計測履歴情報、遮断情報及び前兆情報(図4参照)でもよい。出力は、例えば、顧客の端末40への送信であるが、ディスプレイ15Bへの表示などでもよい。
【0132】
(4-2)出力例
例えば、前兆の検出に応じて、顧客の端末40(又はディスプレイ15A)に、図5のような画面が表示される。図5の画面には、前兆情報及び対処情報に対応する文字列「停電の前兆を検出しました。停電原因は、宅内のブレーカの動作です。漏電の可能性があります。以下の手順で対処して下さい。主幹ブレーカのスイッチを切ってください。業者に点検を依頼してください。」が含まれる。顧客は、図5の画面を参照して、停電原因である漏電に対する適切な対処を行うことができる。
【0133】
または、例えば、受付部11による詳細出力操作の受け付けに応じて、顧客の端末40等に、図4に示すような画面が表示されてもよい。図4の画面は、計測履歴情報、遮断情報及び前兆情報を含む。計測履歴情報は、時刻情報及び計測結果を含む。計測結果は、電流値及び加速度値を含む。遮断情報は、実行情報及び遮断原因情報を含む。
【0134】
具体的には、例えば、時刻情報“10:16:00”(10時16分00秒)に対応付けて、電流値“iii”及び加速度値“aaa”を含む計測結果“iii,aaa”と、実行情報“不実行”と遮断原因情報“-”とを含む遮断情報“不実行,-”と、前兆情報“前兆なし”と、が配置される。
【0135】
また、時刻情報“10:16:10”に対応付けて、電流値“jjj”及び加速度値“bbb”を含む計測結果“jjj,bbb”と、実行情報“不実行”と遮断原因情報“-”とを含む遮断情報“不実行,-”と、前兆情報“前兆なし”と、が配置される。同様に、時刻情報“10:16:20”に対応付けて、電流値“kkk”及び加速度値“ccc”を含む計測結果“kkk,ccc”と、実行情報“不実行”と遮断原因情報“漏電”とを含む遮断情報“不実行,漏電”と、前兆情報“前兆あり”と、が配置される。
【0136】
更に、時刻情報“11:20:10”に対応付けて、電流値“mmm”及び加速度値“ddd”を含む計測結果“mmm,ddd”と、実行情報“不実行”と遮断原因情報“漏電”とを含む遮断情報“不実行,漏電”と、前兆情報“前兆あり”と、が配置される。同様に、時刻情報“11:20:20”に対応付けて、電流値“nnn”及び加速度値“eee”を含む計測結果“nnn,eee”と、実行情報“実行”と遮断原因情報“漏電”とを含む遮断情報“実行,漏電”と、前兆情報“前兆あり”とが配置される。
【0137】
顧客は、図4の画面を参照して、漏電の前兆の検出から漏電の発生に至る経過について、理解を深めることができる。
【0138】
なお、図4の画面に含まれる計測履歴情報、遮断情報及び前兆情報のうち、前兆情報は、計測履歴情報及び遮断情報を基に取得される。
【0139】
(4-3)実施形態1の利点
以上のように、実施形態1によれば、一の住宅を対象に、電路での異常の前兆の検知、ひいては検知した前兆への的確な対処、の可能化を図ることができる。
【0140】
(5)実施形態2
次に、本開示の実施形態2に係る前兆検出システム1について説明する。以下では、実施形態1との差異についてのみ説明し、既出事項の説明は省略又は簡略化している。
【0141】
実施形態2に係る前兆検出システム1は、図6に示すように、1つ以上の分電盤100と、サーバ30と、を備える。1つ以上の分電盤100の各々は、第1ネットワーク301、GW303及び第2ネットワーク302を介して、サーバ30と常時通信可能に接続される。サーバ30は、第1ネットワーク301を介して、顧客の端末40とも通信可能に接続され得る。
【0142】
(5-1)サーバ
実施形態1において主幹ブレーカ10が備えていた記憶部121及び検出部122(図2参照)は、実施形態2では、図8に示されるように、主幹ブレーカ10から除かれ、図7に示されるように、サーバ30に備えられる。
【0143】
(5-1-1)サーバの記憶部:第1記憶部
サーバ30が備える記憶部121は、第1記憶部121aである。なお、第1記憶部121aは、例えば、サーバ30の機能を実現する第1プロセッサ、及び第1プロセッサがアクセス可能な第1メモリ、によって実現される。
【0144】
第1記憶部121aは、1つ以上の分電盤100の各々の計測ユニット15からの計測結果について、履歴記憶処理を実行する。第1記憶部121aが実行する履歴記憶処理では、通常、分電盤100を識別する分電盤識別子(例えば、顧客番号やIDなど)に対応付けて、計測履歴情報等が記憶される。
【0145】
(5-1-2)サーバの検出部
サーバ30が備える検出部122は、1つ以上の分電盤100の各々の計測ユニット15からの計測結果について、前兆検出処理を実行する。
【0146】
このように、実施形態2では、前兆検出システム1は、1つ以上の分電盤100及びサーバ30を備え、サーバ30が、1つ以上の分電盤100の各々(各分電盤100)について、履歴記憶処理及び前兆検出処理(更には対処処理及び出力処理)を実行する。これにより、各分電盤100において、電路(203a~203c)での遮断原因の発生個所の特定を図ることができる。
【0147】
(5-2)1つ以上の分電盤
実施形態2の前兆検出システム1を構成する1つ以上の分電盤100の各々は、実施形態1の前兆検出システム1を構成する単一の分電盤100と同様、主幹ブレーカ10、1つ以上の分岐ブレーカ50、計測ユニット15、及び電源部14を備える。
【0148】
(5-2-1)計測ユニット
ただし、実施形態2における計測ユニット15は、第3電路203cでの過電流及び漏電の少なくとも一方を更に検知する。
【0149】
(5-2-2)分電盤の記憶部:第2記憶部
1つ以上の分電盤100の各々は、図8に示すように、記憶部121、検出部122及び対処部123に代えて、第2記憶部121bを備える。なお、第2記憶部121bは、分電盤100の機能を実現する第2プロセッサ、及び第2プロセッサがアクセス可能かつ書き換え不能な第2メモリ、によって実現される。
【0150】
1つ以上の分電盤100の各々が備える第2記憶部121bは、分電盤100自身の計測ユニット15からの計測結果について、履歴記憶処理を書き換え不能に実行する。
【0151】
(5-2-2a)第2記憶部の利点
このように、各分電盤100が第2記憶部121bを備え、各分電盤100の第2記憶部121bは、履歴記憶処理を書き換え不能に実行することで、顧客が住み替え行っても、検出履歴の保持を図ることができる。
【0152】
(5-3)支援者の端末
実施形態2では、前述したように、前兆情報等は、顧客の端末40に加えて、又はこれに代えて、支援者の端末40に送信される。サーバ30は、第1ネットワーク301を介して、支援者の端末40とも通信可能に接続される。
【0153】
(5-3-1)支援者の例:業者
支援者は、例えば、電路(203a~203c)に関わる業者であってもよい。業者は、例えば、電路(203a~203c)に関する工事を行う電気工事業者である。または、業者は、電力系統201を管理する電力会社等の電気事業者でもよいし、負荷202(家電等の電気機器)の修理を行う修理業者でもよいし、顧客の住宅を管理する管理業者でもよい。
【0154】
業者の端末40は、第1ネットワーク301を介してサーバ30と通信可能に接続される。なお、業者の端末40とサーバ30との第1ネットワーク301を介した接続は、例えば、常時接続でもよい。
【0155】
(5-3-2)業者向け災害時対処情報、及び顧客向け災害時対処情報
対処部123は、業者向け災害時対処情報を取得すると共に、顧客向け災害時対処情報を取得してもよい。業者向け災害時対処情報は、電路(203a~203c)に関連する点検及び修理の少なくとも一方を依頼する旨の依頼情報を含む。顧客向け災害時対処情報は、業者向け対処依頼情報の送信を行う旨を通知する通知情報を含む。
【0156】
出力部13は、業者向け対処情報を前者の端末40に送信すると共に、顧客向け対処情報を顧客の端末40に送信してもよい。
【0157】
(5-4)動作例
サーバ30は、1つ以上の分電盤100の各々について、図3のフローチャートの処理を実行する。以下では、1つ以上の分電盤100のうち一の分電盤100(以下、単に「分電盤100」と記す)についての処理を説明する。
【0158】
サーバ30構成する処理部32は、受付部31が分電盤100からの計測結果等の情報を受け付けたか否かを判断する(ステップS1)。受付部31が計測結果等の情報を受け付けていないと判断された場合、処理はステップS3に進む。
【0159】
受付部31が計測結果等の情報を受け付けたと判断された場合、記憶部121は、計測結果等の情報を、分電盤100を識別する分電盤識別子と共に、時刻情報に対応付けて記憶する(ステップS2)。その後、処理は、ステップS1に戻る。
【0160】
ステップS1で受付部31が分電盤100からの計測結果等の情報を受け付けたと判断された場合、検出部122は、分電盤100について前兆条件が満たされたか否かを判断する(ステップS3)。前兆条件が満たされていないと判断された場合、処理はステップS1に戻る。
【0161】
ステップS3で前兆条件が満たされたと判断された場合、分電盤100について前兆を検出した旨の前兆情報を取得する(ステップS4)。次に、対処部123が、ステップS3で検出された前兆に応じた対処情報を取得する(ステップS5)。その後、処理は、ステップS1に戻る。
【0162】
なお、ステップS5では、取得された前兆情報及び取得された対処情報の少なくとも一方、の出力部13による出力も行われる。出力対象は、例えば、前兆情報及び対処情報(図5参照)であるが、計測履歴情報、遮断情報及び前兆情報(図4参照)でもよい。出力は、例えば、分電盤100に対応する顧客及び当該顧客の支援者、の各々の端末40への送信であるが、顧客及び支援者のいずれか一方の端末40への送信でもよいし、分電盤100のディスプレイ15Bへの表示でもよい。
【0163】
(5-5)出力例
例えば、分電盤100での前兆の検出に応じて、分電盤100に対応する顧客の端末40に、図9のような画面が表示される。
【0164】
図9の画面には、前兆情報及び対処情報に対応する文字列「停電の前兆を検出しました。停電原因は、宅内のブレーカの動作です。洗面所で漏電の可能性があります。以下の手順で対処して下さい。下段左端の分岐ブレーカのスイッチを切ってください。業者に点検を依頼しましたので、業者の到着までお待ちください。」が含まれる。
【0165】
顧客は、図9の画面を参照して、停電原因である洗面所での漏電に対する適切な対処(復帰操作を控え、業者の到着まで待機)を行うことができる。
【0166】
業者の端末40には、分電盤100に対応する顧客を対象とする修理の依頼とともに、図4に示すような、計測履歴情報、遮断情報及び前兆情報を含む画面が表示されてもよい。業者は、図4の画面を参照して、漏電の前兆の検出から漏電の発生に至る経過について、理解を深め、的確な点検・修理を試みることができる。
【0167】
(5-6)実施形態2の利点
以上のように、実施形態2によれば、1つ以上の住宅の各々を対象に、電路での異常の前兆の検出、ひいては検出した前兆への的確な対処、の可能化を図ることができる。
【0168】
(6)前兆検出方法及びプログラム
前兆検出システム1と同様の機能は、前兆検出方法又はプログラムによって実現さてもよい。前兆検出方法は、上記各種のステップのうち、少なくともステップS2(記憶ステップ)及びステップS4(検出ステップ)を含む。
【0169】
プログラムは、前兆検出方法を1つ以上のコンピュータに実行させる。1つ以上のコンピュータは、例えば、主幹ブレーカ10のプロセッサ単独でもよいし、主幹ブレーカ10のプロセッサ及びサーバ30のプロセッサの2つのプロセッサでもよいし、これら2つのプロセッサに1つ以上の端末40に対応する1つ以上のプロセッサを加えた3つ以上のプロセッサでもよい。
【0170】
(7)まとめ
本開示の第1の態様に係る前兆検出システム(1)は、記憶部(121)と、検出部(122)と、を備える。記憶部(121)は、履歴記憶処理を実行する。履歴記憶処理は、計測ユニット(15)からの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。計測ユニット(15)は、ブレーカ(主幹ブレーカ10,分岐ブレーカ50:以下、(10,50)と記す)に付随して用いられる。ブレーカ(10,50)は、電力系統(201)と顧客の宅内の負荷(202)との間の電路(第1電路203a,第2電路203b,第3電路203c:以下、単に(203a~203c)と記す)に介在する。計測履歴情報は、計測結果と時刻情報との対の集合である。検出部(122)は、前兆検出処理を実行する。前兆検出処理は、計測履歴情報を用いて、電路(203a~203c)での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する処理である。
【0171】
この態様によれば、ブレーカ(10,50)に付随する計測ユニット(15)からの計測結果を時刻情報に対応付けて記憶する履歴記憶処理、及び計測履歴情報を基に電路(203a~203c)での異常(遮断原因)の前兆を検出する前兆検出処理、を実行することによって、電路(203a~203c)での異常の前兆の検出の可能化を図ることができる。
【0172】
第2の態様に係る前兆検出システム(1)では、第1の態様において、計測ユニット(15)は、過電流、漏電、及び地震のうち1つ以上の遮断原因を検知するための1つ以上の計測器(過電流及び漏電の少なくとも一方を検知するための電流計、地震を検知するための加速度計)を含む。計測結果は、1つ以上の計測器に対応する1つ以上の計測値を含む。ブレーカ(10,50)は、1つ以上の計測値を基に1つ以上の遮断原因のいずれかを検知した場合に、遮断動作を行う。遮断動作は、電路(203a~203c)の電流を遮断する動作である。前兆検出処理は、遮断動作の原因となり得る遮断原因の前兆を検出する。
【0173】
この態様によれば、異常は、遮断原因となるような電路(203a~203c)の異常(例えば、過電流、漏電、地震等)であり、遮断原因の前兆の検出の可能化を図ることができる。
【0174】
第3の態様に係る前兆検出システム(1)では、第2の態様において、履歴記憶処理は、ブレーカ(10,50)が遮断動作を行った時、遮断動作が行われた旨の実行情報を含む遮断情報を、当該遮断動作の実行時点での時刻情報に対応付けて更に記憶する。
【0175】
この態様によれば、遮断原因の前兆を検出後、遮断に至った場合に、遮断時点の時刻情報に実行情報を対応付けて記憶することで、遮断の時刻、ひいては前兆の検出から遮断の実行までの所要時間が分かるので、異常の前兆か否かの判断の精度向上を図ることができる。
【0176】
第4の態様に係る前兆検出システム(1)は、第3の態様において、分電盤(100)を更に備える。分電盤(100)は、ブレーカ(10,50)を含む。ブレーカ(10,50)は、主幹ブレーカ(10)であり、分電盤(100)は、1つ以上の分岐ブレーカ(50)を更に含む。電路(203a~203c)は、第1電路(203a)、第2電路(203b)及び第3電路(203c)を含む。第1電路(203a)は、電力系統(201)と主幹ブレーカ(10)との間の電路である。第2電路(203b)は、主幹ブレーカ(10)と1つ以上の分岐ブレーカ(50)との間の電路である。第3電路(203c)は、1つ以上の分岐ブレーカ(50)の各々と負荷(202)との間の電路である。1つ以上の計測器は、第1電流計、及び1つ以上の第2電流計を含む。第1電流計は、第2電路(203b)に設けられる。1つ以上の第2電流計は、1つ以上の第3電路(203c)にそれぞれ設けられる。1つ以上の計測値は、第1電流値、及び1つ以上の第2電流値を含む。第1電流値は、第1電流計の電流値である。1つ以上の第2電流値は、1つ以上の第2電流計の電流値である。前兆検出処理は、第1検出処理、及び第2検出処理を含む。第1検出処理は、第1電流値を基に、第2電路(203b)及び1つ以上の第3電路(203c)のどこかでの過電流及び漏電の少なくとも一方を検出する処理である。第2検出処理は、1つ以上の第2電流値を基に、1つ以上の第3電路(203c)の各々での過電流及び漏電の少なくとも一方を検出する処理である。
【0177】
この態様によれば、ブレーカ(10,50)は分電盤(100)の主幹ブレーカ(10)であり、分電盤(100)は1つ以上の分岐ブレーカ(50)を更に含む。検出部(122)は、主幹ブレーカ(10)と各分岐ブレーカ(50)との間の電路(第2電路203b)での遮断原因に加えて、各分岐ブレーカ(50)と負荷(202)との間の電路(第3電路203c)での遮断原因を更に検出することで、予兆の検出箇所(主幹ブレーカ(10)の二次側の電路のどこで遮断原因の前兆が生じたか)、の特定を図ることができる。
【0178】
第5の態様に係る前兆検出システム(1)は、第1~第4のいずれかの態様において、対処部(123)と、出力部(13)と、を更に備える。対処部(123)は、対処処理を実行する。対処処理は、前兆への対処を支援する対処情報を取得する処理である。出力部(13)は、出力処理を実行する。出力処理は、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方を出力する処理である。
【0179】
この態様によれば、前兆への対処を支援する対処情報を取得することで、検知した前兆への的確な対処の可能化を図ることができる。
【0180】
第6の態様に係る前兆検出システム(1)では、第5の態様において、出力部(13)は、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方を、顧客及び顧客による前兆への対処を支援する支援者、の少なくとも一方の端末(40)に送信する。
【0181】
この態様によれば、前兆情報及び対処情報の少なくとも一方を顧客又は支援者の端末(40)に送信することで、検出した前兆への的確な対処を、顧客又は支援者を通じて図ることができる。
【0182】
なお、第6の態様において、支援者は、電路(203a~203c)に関わる業者であってもよい。対処部(123)は、業者向け災害時対処情報を取得すると共に、顧客向け災害時対処情報を取得してもよい。業者向け災害時対処情報は、電路(203a~203c)に関連する点検及び修理の少なくとも一方を依頼する旨の依頼情報を含む。顧客向け災害時対処情報は、業者向け対処依頼情報の送信を行う旨を通知する通知情報を含む。出力部(13)は、業者向け対処情報を業者の端末(40)に送信すると共に、顧客向け対処情報を顧客の端末(40)に送信してもよい。
【0183】
こうして、災害性停電時に、業者に点検修理を自動で依頼し、顧客には、復帰操作を控えるよう警告するとともに、業者への依頼について通知することで、顧客が業者の支援を受けて的確な対処を行うよう支援できる。
【0184】
また、第1~第5のいずれかの態様において、前兆検出システム(1)は、取得部(不図示)を更に備えてもよい。取得部は、外部サーバ(不図示)から自然災害の発生に関連する災害関連情報を取得してもよい。検出部(122)は、災害関連情報に更に基づいて前兆か否かの判断を行ってもよい。
【0185】
こうして、計測履歴情報及び災害関連情報を利用することで、異常の前兆のより的確な検出の可能化を図ることができる。
【0186】
第7の態様に係る前兆検出システム(1)は、第1~第6のいずれかの態様において、分電盤(100)を更に備える。分電盤(100)は、ブレーカ(10,50)を含む。ブレーカ(10,50)は、主幹ブレーカ(10)であり、分電盤(100)は、1つ以上の分岐ブレーカ(50)を更に含む。前兆検出システム(1)は、1つ以上の分電盤(100)と、サーバ(30)と、を更に備える。サーバ(30)は、1つ以上の分電盤(100)の各々と通信可能である。計測ユニット(15)は、1つ以上の分電盤(100)の各々に内蔵される。記憶部(121)及び検出部(122)は、サーバ(30)に備えられる。サーバ(30)が備える記憶部(121)は、1つ以上の分電盤(100)の各々の計測ユニット(15)からの計測結果について、履歴記憶処理を実行する。サーバ(30)が備える検出部(122)は、1つ以上の分電盤(100)の各々の計測ユニット(15)からの計測結果について、前兆検出処理を実行する。
【0187】
この態様によれば、前兆検出システム(1)は1つ以上の分電盤(100)及びサーバ(30)を備え、サーバ(30)が1つ以上の分電盤(100)の各々について履歴記憶処理及び前兆検出処理(更には対処処理及び出力処理)を実行することで、1つ以上の分電盤(100)の各々(各分電盤100)において、電路(203a~203c)での遮断原因の発生個所の特定を図ることができる。
【0188】
第8の態様に係る前兆検出システム(1)では、第7の態様において、サーバ(30)が備える記憶部(121)は、第1記憶部(121a)である。1つ以上の分電盤(100)の各々は、第2記憶部(121b)を備える。1つ以上の分電盤(100)の各々が備える第2記憶部(121b)は、分電盤(100)自身の計測ユニット(15)からの計測結果について、履歴記憶処理を書き換え不能に実行する。
【0189】
この態様によれば、各分電盤(100)が第2記憶部(121b)を備え、各分電盤(100)の第2記憶部(121b)は記憶処理を書き換え不能に実行することで、顧客が住み替え行っても、検出履歴の保持を図ることができる。
【0190】
第9の態様に係るブレーカ(10,50)は、電力系統(201)と顧客の宅内の負荷(202)との間の電路(203a~203c)に介在する。ブレーカ(10,50)は、記憶部(121)と、検出部(122)と、を備える。記憶部(121)は、履歴記憶処理を実行する。履歴記憶処理は、計測ユニット(15)からの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。計測ユニット(15)は、ブレーカ(10,50)に付随して用いられる。計測履歴情報は、計測結果と時刻情報との対の集合である。検出部(122)は、前兆検出処理を実行する。前兆検出処理は、計測履歴情報を用いて、電路(203a~203c)での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する処理である。
【0191】
この態様によれば、第1の態様と同様、電路(203a~203c)での異常の前兆の検出の可能化を図ることができる。
【0192】
第10の態様に係る分電盤(100)は、第9の態様のブレーカ(50,10)を備える。
【0193】
この態様によれば、第1の態様と同様、電路(203a~203c)での異常の前兆の検出の可能化を図ることができる。
【0194】
第11の態様に係る前兆検出方法は、記憶ステップ(S2)と、検出ステップ(S4)と、を備える。記憶ステップは、履歴記憶処理を実行する。履歴記憶処理は、計測ユニット(15)からの計測結果を、現在時刻を示す時刻情報に対応付けて記憶することで、計測履歴情報を蓄積していく処理である。計測ユニット(15)は、ブレーカ(10,50)に付随して用いられる。計測履歴情報は、計測結果と時刻情報との対の集合である。ブレーカ(10,50)は、電力系統(201)と顧客の宅内の負荷(202)との間の電路(203a~203c)に介在する。検出ステップ(S4)は、前兆検出処理を実行する。前兆検出処理は、計測履歴情報を用いて、電路(203a~203c)での異常の前兆の有無に関連する判断を行い、判断結果に関する前兆情報を取得する処理である。
【0195】
この態様によれば、第1の態様と同様、電路(203a~203c)での異常の前兆の検出の可能化を図ることができる。
【0196】
第12の態様に係るプログラムは、第11の態様の前兆検出方法を1つ以上のコンピュータに実行させる。
【0197】
この態様によれば、第1の態様と同様、電路(203a~203c)での異常の前兆の検出の可能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0198】
1 前兆検出システム
10 主幹ブレーカ(ブレーカ)
100 分電盤
11,31 受付部
12,32 処理部
121(121a) 記憶部(第1記憶部)
121b 第2記憶部
122 検出部
123 対処部
13,33 出力部
14 電源部
15 計測ユニット
30 サーバ
40 端末
201 電力系統
202 負荷
203a 第1電路(電路)
203b 第2電路(電路)
203c 第3電路(電路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10