(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091151
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207642
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玄行 杏里
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB15
3B202BA08
3B202DB01
3B202EA01
3B202EB07
3B202EB14
3B202ED06
(57)【要約】
【課題】従来のコンパクトなブラシ部よりも大きいブラシ部を有する歯ブラシにおいて、歯茎への柔らかい当たり心地を有すると同時に、プラーク除去効果及びステイン除去性能の両方を実用上満足のいくレベルで実現すること。
【解決手段】複数の毛束が植毛台に植設されたブラシ部を有する歯ブラシであって、ブラシ部の大きさが、前記歯ブラシの長手方向に直交する方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛幅(X)が12mm以上で、前記歯ブラシの長手方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛長さ(Y)と前記植毛幅(X)との比(X/Y)が0.5~1.0であり、前記植毛台の長手方向の中央部に設けられた所定の第1毛束群と、前記植毛台の長手方向の先端側に、前記第1毛束群に隣接して設けられた所定の第2毛束群と、前記植毛台の長手方向の基端側に、前記第1毛束群に隣接して設けられた所定の第3毛束群とを有する歯ブラシ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の毛束が植毛台に植設されたブラシ部を有する歯ブラシであって、
ブラシ部の大きさが、前記歯ブラシの長手方向に直交する方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛幅(X)が12mm以上で、前記歯ブラシの長手方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛長さ(Y)と前記植毛幅(X)との比(X/Y)が0.5~1.0であり、
前記植毛台の長手方向の中央部に設けられた第1毛束群と、
前記植毛台の長手方向の先端側に、前記第1毛束群に隣接して設けられた第2毛束群と、
前記植毛台の長手方向の基端側に、前記第1毛束群に隣接して設けられた第3毛束群とを有し、
前記第1毛束群では、毛束を構成する主なフィラメントとして、エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントを含み、
前記第2及び3毛束群では、毛束を構成するフィラメントして、毛束の自由端となる側の先端部に長手方向に沿って複数に分割された分岐毛部を有するフィラメントである歯ブラシ。
【請求項2】
前記第1毛束群の毛束を構成するフィラメントがエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントであり、前記第2及び3毛束群の毛束を構成するフィラメントが前記分岐毛部を有するフィラメントである請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記第1毛束群が植毛される前記植毛台に設けられた植毛孔の合計面積が、前記第1~3毛束群が植毛される前記植毛台に設けられた植毛孔の合計面積の25~85%である、又は、前記第1毛束群の毛束の数が、前記第1~3毛束群の毛束の合計数の25~85%である、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記第2毛束群の先端側の最も端に位置する毛束の先端位置と、前記第3毛束群の基端側の最も端に位置する毛束の基端位置との間の長手方向の平行距離において、
前記第2毛束群は、前記先端位置から前記平行距離の10~45%の範囲に設けられ、前記第3毛束群は、前記基端位置から前記平行距離の5~40%の範囲に設けられる、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第1毛束群の毛束を構成するフィラメントが、芯部と該芯部を被覆する鞘部とを有する芯鞘構造を有し、前記鞘部が前記エラストマーを含む請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシによるプラークコントロールは、歯面へのプラークの堆積を制御する効果的な方法であると考えられている。プラーク除去効果に影響を与える因子としては、ブラッシング方法、意欲、器用さ、歯ブラシの種類などが考えられる。このうち、ブラッシング方法に関して、プラーク除去効果が高く、歯面や歯肉に対して為害作用が少ないとされるスクラビング法が推奨されている。このスクラビング法に適した歯ブラシとして、毛束配列3~4列程度の平切、植毛部の長さ25mm前後、毛束高さ10mm前後の比較的コンパクトなブラシ部の歯ブラシが、一連の実験の結果に基づき提案され、このような仕様に準じた製品が広く市販されている。
【0003】
しかし、スクラビング法では、プラーク除去効果を得るために歯ブラシを小刻みに動かす必要があるが、そのような動作をすることが苦手な人等は少なくない。また、ブラシ部が小さい歯ブラシでは口腔内全体に対して十分な刷掃効果が得られない人等が存在することも指摘されている。
【0004】
このようにブラシ部がコンパクトな歯ブラシではプラーク除去効果が十分には得られにくい人に対しても、効率的にプラーク除去効果等を得られ易くする観点から、近年、ブラシ部を従来のコンパクトなものよりも大きくした歯ブラシ(以下、このような歯ブラシを便宜的に「幅広植毛歯ブラシ」と称する場合がある。)が市販されるようになっている。このような幅広植毛歯ブラシでは、ブラシ部が大きく、歯茎への当たり心地を柔らかくするためブラシ部に柔らかいフィラメントを採用するのが一般的である。
【0005】
ところで、本出願人は、歯表面のステイン(着色)の除去性能を向上することが可能なフィラメントを用いたブラシ部を有する歯ブラシ(特許文献1)や、プラークの除去作用を改善可能な分岐毛部を有するフィラメントをブラシ部に用いた歯ブラシ(特許文献2)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5857398号公報
【特許文献2】特許第4547891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、近年市販されている幅広植毛歯ブラシは、ブラシ部に柔らかいフィラメントを採用することが多い。この場合、プラーク除去効果は必ずしも十分とはいえない場合がある。また、幅広植毛歯ブラシは、その柔らかい歯茎への当たり心地が支持され、前述の特定の人以外でも使用する人が増加する傾向にあるが、柔らかいフィラメントに起因して、歯表面のステインの除去性能も十分ではない場合があり、その改善が求められるようになっている。そこで、本発明者は、ブラシ部に用いるフィラメントして特許文献1に記載の所定のフィラメント又は特許文献2に記載の分岐毛部を有するフィラメントを用いることを試みた。その結果、各特許文献に記載の発明に基づく効果は十分に得られるものの、何れのフィラメントを用いても、幅広植毛歯ブラシのような歯茎への柔らかい当たり心地を有すると同時に、プラーク除去効果及びステイン除去性能の両方を実用上満足のいくレベルで実現することは必ずしも十分ではないことが判明した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来のコンパクトなブラシ部よりも大きいブラシ部を有する歯ブラシ(幅広植毛歯ブラシ)において、歯茎への柔らかい当たり心地を有すると同時に、プラーク除去効果及びステイン除去性能の両方を実用上満足のいくレベルで実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、複数の毛束が植毛台に植設されたブラシ部を有する歯ブラシにおいて、ブラシ部の大きさを所定の大きさにし、植毛台の長手方向において、中央部、先端側、基端側のそれぞれに設ける第1~3毛束群に、毛束を構成する主なフィラメントとして所定のフィラメントを含むようにすることで、前述の課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
本発明は、 複数の毛束が植毛台に植設されたブラシ部を有する歯ブラシであって、
ブラシ部の大きさが、前記歯ブラシの長手方向に直交する方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛幅(X)が12mm以上で、前記歯ブラシの長手方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛長さ(Y)と前記植毛幅(X)との比(X/Y)が0.5~1.0であり、前記植毛台の長手方向の中央部に設けられた第1毛束群と、前記植毛台の長手方向の先端側に、前記第1毛束群に隣接して設けられた第2毛束群と、前記植毛台の長手方向の基端側に、前記第1毛束群に隣接して設けられた第3毛束群とを有し、前記第1毛束群では、毛束を構成する主なフィラメントとして、エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントを含み、前記第2及び3毛束群では、毛束を構成するフィラメントして、毛束の自由端となる側の先端部に長手方向に沿って複数に分割された分岐毛部を有するフィラメントである歯ブラシに関する。
【0011】
本発明の実施形態では、前記第1毛束群の毛束を構成するフィラメントがエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントであり、前記第2及び3毛束群の毛束を構成するフィラメントが前記分岐毛部を有するフィラメントであってもよい。
【0012】
本発明の実施形態では、前記第1毛束群が植毛される前記植毛台に設けられた植毛孔の合計面積が、前記第1~3毛束群が植毛される前記植毛台に設けられた植毛孔の合計面積の25~85%である、又は、前記第1毛束群の毛束の数が、前記第1~3毛束群の毛束の合計数の25~85%であってもよい。
【0013】
本発明の実施形態では、前記第2毛束群の先端側の最も端に位置する毛束の先端位置と、前記第3毛束群の基端側の最も端に位置する毛束の基端位置との間の長手方向の平行距離において、前記第2毛束群は、前記先端位置から前記平行距離の10~45%の範囲に設けられ、前記第3毛束群は、前記基端位置から前記平行距離の5~40%の範囲に設けられていてもよい。
【0014】
本発明の実施形態では、前記第1毛束群の毛束を構成するフィラメントが、芯部と該芯部を被覆する鞘部とを有する芯鞘構造を有し、前記鞘部が前記エラストマーを含んでもよい。
【0015】
本発明の実施形態では、前述の各実施形態の構成を任意に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のコンパクトなブラシ部よりも大きいブラシ部を有する歯ブラシ(幅広植毛歯ブラシ)において、歯茎への柔らかい当たり心地を有すると同時に、プラーク除去効果及びステイン除去性能の両方を実用上満足のいくレベルで実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態(1)の一例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図2】(a)~(c)は、
図1に示す実施形態の例と植毛孔の配列形態は同じであるが毛束の配列形態が異なる他の例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図3】(a)~(c)は、
図1、2に示す実施形態の例と植毛孔の配列形態は同じであるが毛束の配列形態が異なる他の例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態(2)の一例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図5】本発明の実施形態(3)の一例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図6】(a)~(c)は、
図5に示す実施形態の例と植毛孔の配列形態は同じであるが毛束の配列形態が異なる他の例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図7】(a)、(b)は、
図5、6に示す実施形態の例と植毛孔の配列形態は同じであるが毛束の配列形態が異なるさらに他の例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図8】本発明の実施形態(4)の一例の歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【
図9】(a)は比較例1の歯ブラシの植毛台付近の正面図であり、(b)は比較例2歯ブラシの植毛台付近の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る歯ブラシは、複数の毛束が植毛台に植設されたブラシ部を有する。このブラシ部の大きさについては、歯ブラシの長手方向に直交する方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛幅(X)が12mm以上で、前記歯ブラシの長手方向に植設されている複数の毛束の最大幅である植毛長さ(Y)と前記植毛幅(X)との比(X/Y)が0.5~1.0である。以下では、このような比で毛束が植設されたブラシ部を有する歯ブラシを幅広植毛歯ブラシと称する場合がある。歯ブラシ部の植毛台に植設された複数の毛束群は、植毛台の長手方向の中央部に設けられた第1毛束群と、植毛台の長手方向の先端側に、第1毛束群に隣接して設けられた第2毛束群と、植毛台の長手方向の基端側に、前記第1毛束群に隣接して設けられた第3毛束群とを有する。また、第1毛束群は、毛束を構成する主なフィラメントとして、エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントを含む。第2及び3毛束群では、毛束を構成するフィラメントして、毛束の自由端となる側の先端部に長手方向に沿って複数に分割された分岐毛部を有するフィラメントを含む。尚、毛束を構成する主なフィラメントとは、後述するように毛束が植設される植毛台の植毛孔の正面視の総面積において最も多くの面積(断面積)を占めているフィラメントを意味し、植毛孔ごとにフィラメントの種類が異なる場合は、各植毛孔の面積により代用することができる。
【0019】
このように、ブラシ部を植毛台の長手方向に3つに区分し、各区分の毛束群を構成する主なフィラメントを特定のフィラメントを含むように構成することで、ブラシ部全体として柔らかい使用感を維持し、かつ、中央部の第1毛束群によるステイン除去効果と、第2及び3毛束群によるプラーク除去効果とを実用上満足のいくレベルで両立させることを可能にしている。
【0020】
第1毛束群の毛束を構成する主なフィラメントは、エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントを含む。フィラメントの表面にエラストマーが存在することで、歯磨き剤をフィラメント表面に保持し、特に、歯磨き剤に含まれる微細な研磨粒子が、フィラメントと歯表面間に挟持されたときに、エラストマーにくい込んで保持されながら、歯表面に擦り付けられることによって、ステインを効率良く除去できると考えられる。また、弾性を有し摩擦性を有するエラストマーを歯表面に擦り付けることでも、効率良くステインを除去できるものと考えられる。
【0021】
エラストマーとしては、特に限定はないが、歯ブラシ製造時の植毛性の観点及びステイン除去効果の観点から、JIS K 6253で規定するデュロメータタイプD硬さが、27D~94Dが好ましく、55D~72Dがより好ましく、60D~72Dが更に好ましく、65D~72Dが最も好ましい。
【0022】
エラストマーの種類としては、特に限定はなく、例えば、ポリスチレン系(SBC)、ポリオレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリウレタン系(PU)、ポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPAE)などの熱可塑性エラストマー(TPE)が挙げられる。その中でも、ポリエステル系(TPEE)及びポリアミド系(TPAE)から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが好ましく、取扱性の観点からは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0023】
エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントの構造は、エラストマーを表面に含むものであればよいが、歯ブラシとしての適度の硬さを付与する観点、ステインの除去効果をより向上する観点から、エラストマー以外の合成樹脂の芯部と、この芯部の外表面の少なくとも一部を被覆するエラストマーとを有するものが好ましく、前述の芯部と、この芯部の外表面を被覆するエラストマーの鞘部との芯鞘構造で構成されるフィラメントがより好ましい。
【0024】
芯鞘構造の芯部を構成する材質としては、合成樹脂が好ましく、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどが挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド610、ポリアミド612等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。これらのうち、ポリエステルが好ましく、ポリエステルとしては、PBTが好ましい。
【0025】
芯部及び鞘部の材質の組み合わせは、特に限定はないが、相互に相溶性を有する組み合わせが好ましい。鞘部のエラストマーと芯部の合成樹脂の組み合わせとして、例えば、TPEEとポリエステル、TPAEとポリアミド、TPOとポリオレフィンなどが挙げられる。このような組み合わせのうち、TPEEとポリエステルが好ましい。
【0026】
芯鞘構造を有するフィラメント(以下、芯鞘複合フィラメントと称する。)は、周知の複合溶融紡糸法により製作することがきる。具体的には、芯部を構成する合成樹脂材料と鞘部を構成するエラストマー材料とを、複合押出機から所望の形状にそれぞれ溶融吐出させ、冷却後、延伸、熱セットを加えることで製作することができる。また、この芯鞘複合フィラメントを集束して、所定長さに切断した後、先端形状を球状や半球状や先鋭形状など任意の形状に形成することができる。
【0027】
芯部の長さ方向と直交する横断面は、多角形状や楕円形や円形や星形などの任意の形状に形成できるが、芯鞘複合フィラメントの硬さ、即ち毛腰が全周に亘って一様になるように、断面円形に構成することが好ましい。
【0028】
鞘部(芯鞘複合フィラメント全体)の長手方向と直交する横断面は、三角形、四角形、五角形以上の多角形状や楕円形や円形や星形などの任意の形状に形成できるが、ステイン除去能の観点から四角形以下が好ましく、四角形が特に好ましい。四角形としては、特に限定はなく、長方形状や正方形状や菱形状等が挙げられ、ステイン除去能を考慮して、歯表面との接触面積、角部の大きさを適宜調整し、形状を選択することができる。特に、横断面を正方形状や菱形状に形成した芯鞘複合フィラメントは、長方形状に形成した芯鞘複合フィラメントよりも、毛束の植設方向によってステイン除去能が変動し難いので好ましい。また、鞘部の外面は平坦面で構成することができるが、緩やかに内側(芯鞘複合フィラメントの芯部側)へ窪んだ凹面に形成することが好ましい。このように構成すると、鞘部の凹面に歯磨き剤を保持できるので、歯磨き剤を十分に歯表面に擦りつけながら効率的に歯表面のステインを除去することができる。
【0029】
鞘部及び芯部の横断面の大きさは、各材質、歯間への挿入性、使用感、耐久性などを考慮して適宜決定することができる。芯部及び鞘部の横断面がそれぞれ円形及び四角形である場合を例にすると以下のとおりである。四角形横断面の鞘部の一辺の長さは、歯間への挿入性、使用感等の観点から、0.14~0.30mmが好ましく、0.16~0.28mmがより好ましく、0.18~0.25mmがさらに好ましい。円形横断面の芯部の直径は、歯ブラシの耐久性、歯間への挿入性、使用感等の観点から、0.12~0.27mmが好ましく、0.15~0.22mmがより好ましく、0.16~0.19mmがさらに好ましい。
【0030】
第1毛束群には、毛束を構成するフィラメントとして、前述のエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメント以外の他のフィラメントを含むことができる。このようなフィラメントとしては、例えば、エラストマーではない合成樹脂のモノフィラメントなどが挙げられる。モノフィラメントを構成する合成樹脂としては、歯ブラシとして使用可能な物理的性質を有していれば、周知の素材からなるものを採用することが可能で、例えば、前述の芯部を構成する合成樹脂が挙げられる。モノフィラメントの横断面形状は、例えば円形や楕円形、三角形や四角形などの多角形の断面形状のものを採用できる。また、断面サイズや断面形状の異なる複数種類のモノフィラメントを混合したものを採用することもできる。モノフィラメントの先端形状は、球状や半球状や先鋭形状など任意の形状に形成することができる。また、モノフィラメントの先端部分は、後述するような分岐毛部を有するものであってもよい。尚、先端部に分岐毛部を有するモノフィラメントとしては、後述する第2及び3毛束群の毛束を構成する主なフィラメントを採用することができる。
【0031】
第1毛束群に含まれる、前述のエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントの割合は、ステイン除去等の観点から、55~100%が好ましく、65~100%がより好ましい。尚、この割合は、例えば、後述するように、各毛束が植設される植毛台の各植毛孔の正面視の面積に基づき算出することができる。
【0032】
第2及び3毛束群の毛束を構成するフィラメントは、毛束の自由端となる側の先端部に長手方向に沿って複数に分割された分岐毛部を有するものである。このような先端部に分岐毛部を有するフィラメントは従来公知のものを採用することができる。このようなフィラメントを構成する合成樹脂としては、例えば、歯ブラシとして使用可能な物理的性質を有するものであればよい。例えば、ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンなどが挙げられ、これらの具体例としては、第1毛束群の芯鞘複合フィラメントの芯部を構成する合成樹脂と同じものが挙げられる。また、このような合成樹脂に、この合成樹脂より融点の高い他の合成樹脂の粉末を分散させたものを用いることもできる。この融点の高い他の合成樹脂としては、例えば、特許文献2に記載のように、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0033】
第2及び3毛束群の毛束を構成するフィラメントの構造は、先端部に分岐毛部を有するものであればよいが、良好な分岐毛部を設ける観点から、フィラメントの長手方向に内部を貫通する複数の空隙を有する形態に紡糸されたモノフィラメントであり、この先端部に分岐毛部を形成したものであるのが好ましい。
【0034】
前述の内部を貫通する複数の空隙を有するモノフィラメントについて詳述すると以下のとおりである。このモノフィラメントの外周又は外接円の直径は、例えば、0.12~0.3mmとすることができ、対象年齢に応じて設定することができる。その外周の横断面形状は、円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形、またはその他の異形などいずれでもよく、空隙の数については、分岐毛部の先割れ数を考慮して決定することができ、例えば、4~8個とすることができる。横断面における空隙の配置は、例えば、複数の空隙が放射状とすることができ、好ましくは同心円状で、等間隔で放射状である。空隙の横断面の総断面積については、モノフィラメント外周の横断面の総面積に占める割合で、4~20%の範囲に設定することができ、好ましくは9~15%である。また、空隙の横断面形状については、特に限定はなく、例えば、円形、楕円形、三角形、モノフィラメントの半径方向に長く、その中心側が小径で外側が大径の曲率からなる略イチジク形のような異形空隙、またはその他の適宜の異形断面の形状などが挙げられる。
【0035】
分岐毛部の長さは、植毛台表面から分岐毛部の先端までの長さ(毛丈)等を考慮して設定することができる。この毛丈は、通常5~15mmとすることができ、この場合の分岐毛部の長さは、通常0.5~5mmとすることができる。これらの長さは対象年齢に応じて決定することができ、幼児用と小児用では、通常、毛丈が5~8mmで、分岐毛部の長さが0.5~2.5mmとすることができ、大人用では、通常、毛丈が9~15mmで、分岐毛部の長さが1.0~3.5mmとすることができる。尚、医療用等の用途によっては、分岐毛部の長さの割合をこれらの場合より長くしてもよい。
【0036】
分岐毛部の形態としては、毛束の大多数がほぼ3~8本を中心とする2~10本前後に引き裂かれるように先割れして且つ先割れした各々がほぼ均等の太さになっているのが望ましいが、これに限られない。尚、フィラメントの先端部への分岐毛部の形成方法は、特許文献2に記載の方法を採用することができ、例えば、植毛台に植設されたフィラメントに対するカッターを用いた先割加工のように物理的加工方法を採用することができる。
【0037】
以下では、前述の各フィラメントを用い、植毛台に複数の毛束が植設されたブラシ部の毛束群の構成を中心として、歯ブラシの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0038】
図1に示すように、本発明の実施形態(1)に係る歯ブラシ1は、先端部に植毛台11を設けたハンドル12と、複数の毛束13が植毛台11に植設されているブラシ部14とを有している。尚、本実施形態では、後述する各図の例を含めて、手動タイプの歯ブラシ1~4の場合について説明するが、電動歯ブラシの場合でも同様である。
【0039】
ハンドル12は、手で持ってブラッシング操作するためのグリップ部(図示略)と、グリップ部に連なって延びる首部15と、首部15の先端部に設けた植毛台11とを有し、合成樹脂材料を用いて射出成形などにより一体成形されている。ただし、射出成形により一次成形品を成形し、この一次成形品を別の金型内にセットして、例えばエラストマーからなる滑止部や指当部を二次成形したハンドル12を採用することもできる。ハンドル12を構成する合成樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチルテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、スチレン・アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、セルロースプロピオネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、ポリアセタール等の合成樹脂材料を用いることが可能である。
【0040】
図1に示す歯ブラシ1は、ブラシ部14の大きさが、歯ブラシ1の長手方向に直交する方向に植設されている複数の毛束13の最大幅である植毛幅X1が12.0mm以上で、歯ブラシ1の長手方向に植設されている毛束13の最大幅である植毛長さY1との比(X1/Y1)が0.5~1.0となるように設定される。
図1は、一例として、X1を12.5mm、X1/Y1を0.63とした場合の例である。また、植毛台11の大きさは、このようなブラシ部14を設けることができブラッシング操作に支障がない大きさにすればよい。
【0041】
植毛台11は、口腔内でのブラッシング操作が円滑になされるように角部に丸みを付けた長方形や卵形などの正面形状の平坦な板状に形成され、植毛台11の正面側には複数の植毛孔16が所定の配列で形成されている。植毛孔16の配列形態は任意に設定することができ、例えば歯ブラシ1(植毛台11)の長手方向(以下、列方向という場合がある。)と、それと直交する方向(以下、行方向という場合がある。)に関して、列方向において相隣り合う植毛孔16の中心が、歯ブラシの長手方向と平行な直線上に配置されない千鳥状や、列方向において相隣り合う植毛孔16の中心が、歯ブラシの長手方向と平行な直線上に配置される整列状や、千鳥状と整列状を併用した複合状に配列することができる。例えば、
図1に示す例は複合状の配列である。
【0042】
図1に示す例では、ブラシ部14は、植毛台11(歯ブラシ1)の長手方向の中央部に設けられた第1毛束群13a、植毛台11の長手方向の先端側に、第1毛束群13aに隣接して設けられた第2毛束群13b、植毛台11の長手方向の基端側に、第1毛束群13aに隣接して設けられた第3毛束群13cを有する。第1毛束群13aは、中央の6列4行の整列状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。第2毛束群13bは、先端側から順に1つ、2つ、1つ、4つずつ行方向に沿って配置された植毛孔16(植毛孔16の中心)の各行が植毛台11の列方向に沿って平行に配置され、千鳥状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。第3毛束群13cは、第1毛束群13aから連続する2行の整列状に配置され、基端側から順に4つ、6つの植毛孔16(植毛孔16の中心)の各行が植毛台11の列方向に沿って平行に配置され、整列状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。
【0043】
第1毛束群13aの各毛束13を構成するフィラメントは、前述のとおりであればよいが、
図1に示す例では、全ての毛束13が、エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントである。第2、3毛束群13b、13cの各毛束13を構成するフィラメントも、前述のとおりであればよいが、
図1に示す例では、全ての毛束13が、毛束の自由端となる側の先端部に長手方向に沿って複数に分割された分岐毛部を有するフィラメントである。尚、この点は後述する
図2~8に示す例においても同様である。
【0044】
第1毛束群13aの各毛束13が植毛されている植毛台11に設けられた植毛孔16の合計面積Saは、第1~3毛束群13a~13cの各毛束13が植毛されている植毛孔16の合計面積Stの25~85%であるか、或いは、第1毛束群13aの毛束13の数Kaが、第1~3毛束群13a~13cの毛束13の合計数Ktの25~85%であるのが好ましい。即ち、Sa/St及びKa/Ktの比率のいずれかは25~85%であるのが好ましい。また、これらの比率は、何れかが30~70%であるのがより好ましい。X1/Y1の比が0.5~0.7の場合(例えば、
図1のブラシ部14等)は、これらの比率は、何れかが50~70%であるのがさらに好ましい。また、X1/Y1の比が
0.8~1の場合(例えば、後述する
図5のブラシ部34等)は、これらの比率は、何れかが30~50%であるのがさらに好ましい。また、
図1に示す例では、各毛束群13a~13cの各毛束13が植設されている植毛孔16の大きさは何れも同じになるように設定されている(後述する
図2~9に示す例につき同じ)。この場合、
図1に示す例では、第1毛束群13aの植毛孔16の合計面積Sa及び毛束13の数Kaは、第1~3毛束群13a~13cの各毛束13が植毛されている植毛孔16の合計面積St及び合計数Ktの57%になる。尚、植毛孔16の面積とは、例えば
図1に示すように、植毛台11の正面視における植毛孔16の直径に基づき算出された値である。植毛孔16の面積は、植毛密度(植毛孔の数/植毛台の面積)等を考慮して決定することができる。植毛密度は、プラーク除去能、ステイン除去能、ブラシ部の硬さ(使用感)を考慮して決定することができ、例えば、16~21植毛孔数/cm
2とすることができる。
【0045】
第1毛束群13aのブラシ部14における植毛台11の長手方向(列方向)の存在範囲(
図1中、符号L3)は、毛束の配列にもよるが、第2毛束群13bと第3毛束群13cの列方向における各存在範囲に基づき、概ね規定することができる。この場合、第2毛束群13bの先端側の最も端に位置する毛束13の先端位置と、第3毛束群13cの基端側の最も端に位置する毛束の基端位置との間の長手方向の平行距離(例えば、
図1中、Y1)において、第2毛束群13bは、前記先端位置から前記平行距離の10~45%の範囲に設けられ、第3毛束群13cは、前記基端位置から前記平行距離の5~40%の範囲に設けられるのが好ましい。
図1においては、第2毛束群13bの平行距離Y1における存在範囲は、平行距離Y1、及び、第2毛束群13bの前記先端位置と、第2毛束群13bの基端側の最も端に位置する毛束13の基端位置との間の長手方向の平行距離(例えば
図1中、L1)の比率(L1/Y1×100)から算出することができる。また、第3毛束群13cの平行距離Y1における存在範囲は、平行距離Y1、及び、第3毛束群13cの前記基端位置と、第3毛束群13cの先端側の最も端に位置する毛束13の先端位置との間の長手方向の平行距離(例えば
図1中、L2)の比率(L2/Y1×100)から算出することができる。
図1に示す例では、例えば、L1/Y1×100=23%、L2/Y1=21%とすることができる。尚、前述のように、歯ブラシ1の長手方向に植設されている毛束13の最大幅である植毛長さと、第2毛束群13bの先端側の最も端に位置する毛束13の先端位置と、第3毛束群13cの基端側の最も端に位置する毛束の基端位置との間の長手方向の平行距離は同じであり、図中では同じ符号Y1を用いて示している。
【0046】
毛丈は、ブラシ部の硬さ(使用感)、ステイン除去能、プラーク除去能を考慮して設定することができる。例えば、9~13mmとすることができる。各毛束群13a~13cにおいて複数種のフィラメントを使用する場合、毛丈は同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0047】
図2(a)~(c)、
図3(a)~(c)は、
図1に示す植毛台11において、第1~第3毛束群13a~13cの配置、毛束13の構成を変更したブラシ部14a~14fを有する歯ブラシ1a~1fの例を示したものである。したがって、これらの例におけるX1、Y1は全て同じである。
【0048】
図2(a)に示すブラシ部14aでは、
図1に示すブラシ部14において、第1毛束群13aに含まれる6列の毛束13のうち、両端の2列(各行の両端)が第2及び3毛束群13b、13cを構成するフィラメントと同じく、分岐毛部を有するフィラメントで構成された毛束13としたものである。このように、第1毛束群13aに含まれる毛束13のうち、長手方向(列方向)に沿って第2、3毛束群13b、13cと同じ毛束13を連続して配置することで、歯ブラシを立てて歯の裏側をブラッシングする際に第2、3毛束群13b、13cを構成するフィラメントにより奏される効果をより一層発揮させることができる場合がある。第1毛束群13aに含まれる毛束13のうち、エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントで構成される毛束13は、第1毛束群13aに含まれる植毛孔16の合計面積Saに対して、66.7%(16/24×100)の植毛孔16の合計面積を占めている。尚、
図2(a)に示す第1毛束群13aに設けられる分岐毛部を有するフィラメントの毛束13の毛束群を第4毛束群13d、第5毛束群13eと称する。ブラシ部14aは、
図1に示すブラシ部14と同じ第1~3毛束群13a~13bの配置であるため、
図1に示す歯ブラシ14のL1~L3と同じ大きさである。したがって、L1/Y1、L2/Y1も同じ値である。
【0049】
図2(b)に示すブラシ部14bでは、第1毛束群13aを長手方向の中央部の6列2行の整列状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。第2毛束群13bは、先端側から順に1つ、2つ、1つ、4つ、6つずつ行方向に沿って配置された植毛孔16(植毛孔16の中心)の各行が植毛台11の列方向に沿って平行に配置され、千鳥状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。第3毛束群13cは、第1毛束群13aから連続する3行の整列状に配置され、基端側から順に4つ、6つ、6つの植毛孔16(植毛孔16の中心)の各行が植毛台11の列方向に沿って平行に配置され、整列状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。この構成では、
図1に示す毛束の配列と比較して第1毛束群13aの毛束数が少ないことから、
図1に示すブラシ部14よりも、プラーク除去の効果の方をステイン除去の効果より優先した構成である。尚、
図2(b)に示す例における、Sa/St、L1/Y1、L2/Y1は、表1に示すとおりである。
【0050】
図2(c)に示すブラシ部14cでは、第1毛束群13aは、長手方向の中央部の6列5行の整列状に配置されている植毛孔16に植毛された整列状の毛束13群と、この毛束13群の先端側の最先端の1行分から先端側に隣接し、基端側から順に4つ、1つずつ列方向に沿って配置された植毛孔16(植毛孔16の中心)の各行が植毛台11の行方向に沿って平行に配置され、千鳥状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される千鳥状の毛束13群と、で構成される。第2毛束群13bは、先端側から順に1つ、2つずつ列方向に沿って配置された植毛孔16(植毛孔16の中心)の各行が植毛台11の行方向に沿って平行に配置され、千鳥状に配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。第3毛束群13cは、第1毛束群13aから連続する1行の整列状に配置され、基端側から4つの植毛孔16(植毛孔16の中心)が植毛台11の行方向に沿って配置されている植毛孔16に植毛された毛束13で構成される。この構成では、
図1に示す毛束の配列と比較して第1毛束群13aの毛束数が多いことから、
図1に示すブラシ部14よりも、ステイン除去の効果の方をプラーク除去の効果より優先した構成である。尚、
図2(c)に示す例における、Sa/St、L1/Y1、L2/Y1は、表1に示すとおりである。
【0051】
図3(a)~(c)に示す例は、
図2(c)に示す例の変形例である。
図3(a)に示す例は、
図2(c)に示す例の第1毛束群13aにおいて、第2及び第3毛束群13b、13cに隣接する毛束のうち、第1毛束群13aの行方向の両端に位置する毛束13を、第2、3毛束群13b、13cを構成するフィラメントに変更したものである。
図3(b)に示す例では、
図3(a)に示す例において、フィラメントを変更した4つの毛束13(
図3(a)中、第1毛束群13aのうち黒塗りで示した4つの毛束13)に対して長手方向に隣接する4つの毛束13も同様にフィラメントを変更したものである。
図3(c)に示す例では、、
図2(c)に示す例の第1毛束群13aにおいて、行方向の両端の列の全ての毛束13のフィラメントを同様に変更したものである。
図3(a)~(c)に示す第1毛束群13aに設けられる分岐毛部を有するフィラメントの毛束13の毛束群を第4毛束群13d、第5毛束群13eと称する。尚、
図3(a)~(c)に示す例における、Sa/St、L1/Y1、L2/Y1は、表1に示すとおりである。
【0052】
図4に示すように、本発明の実施形態(2)に係る歯ブラシ2は、先端部に植毛台21を設けたハンドル22と、複数の毛束23が植毛台21に植設されているブラシ部24とを有している。ハンドル22は、手で持ってブラッシング操作するためのグリップ部(図示略)と、グリップ部に連なって延びる首部25と、首部25の先端部に設けた植毛台21とを有し、合成樹脂材料を用いて射出成形などにより一体成形されている。ハンドル22は、
図1に示す例のハンドル12と同様の構成を採用することができる。
図4に示す歯ブラシ2では、ブラシ部24の大きさに関して、植毛幅X2を12.2mm、植毛幅X2と植毛長さY2の比X2/Y2を0.60としたものである。植毛台21は、
図1に示す植毛台11と同様に丸みをつけた平坦な板状に形成され、植毛台21の正面側には複数の植毛孔26が所定の配列で形成されている。
図4に示す例では、
図1に示す例の場合と異なり、概ね千鳥状の配列である。
【0053】
毛束23群が千鳥状の場合、第1毛束群23aと第2、3毛束群23b、23cの区分けは以下のようにして決定するものとする。第1毛束群23aの長手方向(列方向)の最も先端側と、最も基端側に位置する植毛孔26をそれぞれ決定し、その各中心を基準にして行方向に平行な各仮想線を決定し、先端側の仮想線より先端側に植毛孔26の中心が位置する場合は、その植毛孔26は第2毛束群23bであるものとし、基端側の仮想線より基端側に中心が位置する場合は、その植毛孔26は第3毛束群23cであるものとする。
【0054】
図4に示す毛束23の配置は、平行距離L4、L5、L6で示される各領域に存在する毛束23群をそれぞれ第2毛束群23b、第3毛束群23c、第1毛束群23aのブラシ部24(24a)と、平行距離L7、L8、L9で示される各領域に存在する毛束23群をそれぞれ第2毛束群23e、第3毛束群23f、第1毛束群23dのブラシ部24(24b)とを同時に示したものである。即ち、第1毛束群と第2、3毛束群の境界に位置する毛束231、232、233、234を構成するフィラメントのうち、先端側の2つの毛束231、233のうちの少なくとも一方、及び、基端側の2つの毛束232、234のうちの少なくとも一方がエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントを含むように構成されている場合は、第1~3毛束群の領域の平行距離が符号L4~6のブラシ部24aとなり、毛束231、232、233、234を構成するフィラメントが全て分岐毛部を有するフィラメントを含むように構成されている場合は、第1~3毛束群の領域の平行距離が符号L7~9のブラシ部24bとなる。ブラシ部24bでは、
図4に示すように、平行距離L9は、平行距離L7、L8と重複する部分を含むが、各毛束群は、植毛孔23に植毛された毛束を単位として領域を特定するものとする。尚、
図4に示す配置以外に、各毛束群の境界の毛束231、233と毛束232、234のうちの一方の境界の毛束がエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントを含み、他方の境界の毛束が分岐毛部を有するフィラメントで構成されているものであってもよい。具体的には、第2、3毛束群の領域の平行距離の組み合わせが、L4とL8の組み合わせの場合、L7とL5の組み合わせの場合である。また、後述する実施例1のように、毛束231、232、233、234を設けないようにしてもよい。この場合、第1~3毛束群の領域の平行距離の組み合わせは、L9、L4、L5である。さらに、第1毛束群23a、23dには、
図2(a)、
図3(a)~(c)に示したものに準じて毛束23を構成するフィラメントを変更してもよい。また、
図2(b)、(c)に示したものに準じて第1~3毛束群の領域を変更してもよい。
図4に示す例(ブラシ部24a、24b)における、Sa/St、L4/Y2、L5/Y2、L7/Y2、L8/Y2は、表1に示すとおりである。尚、植毛密度、毛丈は、
図1で示す例の場合と同様にして設定することができる。
【0055】
【0056】
図5に示すように、本発明の実施形態(3)に係る歯ブラシ3は、歯ブラシ3の長手方向の長さが、
図1~4に示す歯ブラシ1、2より短くした例であり、先端部に植毛台31を設けたハンドル32と、複数の毛束33が植毛台31に植設されているブラシ部34とを有している。このように植毛台の大きさが小さい場合、
図1~4に示す例の場合と比較して、口の小さい使用者が幅広ブラシを用いて効率的に磨く場合に好適である。ハンドル32は、手で持ってブラッシング操作するためのグリップ部(図示略)と、グリップ部に連なって延びる首部35と、首部35の先端部に設けた植毛台31とを有し、合成樹脂材料を用いて射出成形などにより一体成形されている。ハンドル32は、
図1に示す例のハンドル12と同様の構成を採用することができる。
図5に示す歯ブラシ3では、ブラシ部34の大きさに関して、植毛幅X3を12.5mm、植毛幅X3と植毛長さY3の比X3/Y3を0.85としたものである。植毛台31は、
図1に示す植毛台11と同様に丸みをつけた平坦な板状に形成され、植毛台31の正面側には複数の植毛孔36が所定の配列で形成されている。
図5に示す例のブラシ部34は、
図1に示すブラシ部14における6列5行の整列状に配列された毛束13群の部分を、6列3行の整列状に配列された毛束33群とした以外は、同様の配列を有する。そして、ブラシ部34では、平行距離L10の範囲に
図1に示す例と同様に千鳥状に配列された第2毛束群33b、平行距離L12の範囲に6列2行の整列状に配列された第1毛束群33a、平行距離L11の範囲に6列1行と4列1行の整列状に配列された第3毛束群33cとなるように毛束33が配列されている。
図5に示す例における、Sa/St、L10/Y3、L11/Y3は、表2に示すとおりである。尚、植毛密度、毛丈は、
図1で示す例の場合と同様にして設定することができる。
【0057】
図6(a)~(c)、
図7(a)、(b)は、
図5に示す植毛台31において、第1~3毛束群33a~33cの配置、毛束33の構成を変更したブラシ部34a~34eを有する歯ブラシ3a~3eの例を示したものである。したがって、これらの例におけるX3、Y3は全て同じである。
【0058】
図6(a)に示すブラシ部34aでは、
図5に示すブラシ部34において、第1毛束群33aに含まれる6列の毛束13のうち、両端の2列(各行の両端)が第2及び3毛束群33b、33cを構成するフィラメントと同じく、分岐毛部を有するフィラメントで構成された毛束33としたものである。前述のように、
図5に示す例と比較して、歯ブラシを立てて歯の裏側をブラッシングする際のプラーク除去効果を考慮したものである。第1毛束群33aに含まれる毛束33のうち、エラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントで構成される毛束33は、第1毛束群13aに含まれる植毛孔36の合計面積Saに対して、66.7%(8/12×100)の植毛孔16の合計面積を占めている。尚、
図6(a)に示す第1毛束群33aに設けられる分岐毛部を有するフィラメントの毛束33の毛束群を第4毛束群33d、第5毛束群33eと称する。
図6(a)に示す例における、Sa/St、L10/Y3、L11/Y3は、表2に示すとおりである。
【0059】
図6(b)に示すブラシ部34bでは、
図5に示すブラシ部34において、第1毛束群33aを中央の6列3行の整列状の配置とし、このうち、両端の2列(各行の両端)が第2及び3毛束群33b、33cを構成するフィラメントと同じく、分岐毛部を有するフィラメントで構成された毛束33としたものである。
図6(a)のブラシ部aと比較して、プラーク除去の効果を優先した構成である。第1毛束群33a中のエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントで構成される毛束33の割合は、植毛孔36の面積比において66.7%(12/18×100)である。尚、
図6(b)に示す第1毛束群33aに設けられる分岐毛部を有するフィラメントの毛束33の毛束群を第4毛束群33d、第5毛束群33eと称する。
図6(b)に示す例における、Sa/St、L10/Y3、L11/Y3は、表2に示すとおりである。
【0060】
図6(c)に示すブラシ部34cでは、
図5に示すブラシ部34において、第2、3毛束群33b、33cを
図2(c)の場合と同様の構成とし、第1毛束群33aを6列3行の整列状の毛束33群と、これに先端側に隣接する
図2(c)の場合と同様の2行の千鳥状毛束33群とで構成される毛束33群として構成したものとしている。この構成では、
図5に示す毛束の配列と比較して第1毛束群13aの毛束数が多いことから、
図5に示すブラシ部34よりも、ステイン除去の効果の方をプラーク除去の効果より優先した構成である。尚、
図6(c)に示す例における、Sa/St、L10/Y3、L11/Y3は、表2に示すとおりである。
【0061】
図7(a)、(b)に示す例は、
図6(c)に示す例の変形例である。
図7(a)に示す例は、
図6(c)に示す例において、
図3(a)の場合と同様に、第1毛束群33aにおいて、第2及び第3毛束群33b、33cに隣接する毛束のうち、第1毛束群33aの列方向の両端に位置する毛束33を、第2、3毛束群33b、33cを構成するフィラメントに変更したものである。
図7(b)は、
図6(c)に示す例において、
図3(c)の場合と同様に、列方向の両端の列の全ての毛束13のフィラメントを同様に変更したものである。
図7(a)、(b)に示す第1毛束群33aに設けられる分岐毛部を有するフィラメントの毛束33の毛束群を第4毛束群33d、第5毛束群33eと称する。尚、
図7(a)、(b)に示す例における、Sa/St、L10/Y3、L11/Y3は、表2に示すとおりである。
【0062】
図8に示すように、本発明の実施形態(4)に係る歯ブラシ4は、先端部に植毛台41を設けたハンドル42と、複数の毛束43が植毛台41に植設されているブラシ部44とを有している。ハンドル42は、グリップ部(図示略)と、グリップ部に連なって延びる首部45と、首部45の先端部に設けた植毛台41とを有する。ハンドル42の他の構成は
図1に示す例の場合と同様である。
図8に示す歯ブラシ4は、ブラシ部44の大きさに関して、植毛幅X4を12.2mm、植毛幅X4と植毛長さY4の比X4/Y4を0.81としたものである。植毛台41は丸みをつけた平坦な板状に形成され、植毛台41の正面側には複数の植毛孔46が所定の配列で形成されている。
図8に示す例では、
図5に示す例の場合と異なり、概ね千鳥状の配列である。したがって、第1毛束群43aと第2、3毛束群43b、43cの区分けは、
図4に示す例の場合と同様にして決定する。
【0063】
図8に示す毛束43の配置は、平行距離L13、L14、L15で示される各領域に存在する毛束43群をそれぞれ第2毛束群43b、第3毛束群43c、第1毛束群43aのブラシ部44(44a)と、平行距離L16、L17、L18で示される各領域に存在する毛束43群をそれぞれ第2毛束群43e、第3毛束群43f、第1毛束群43dのブラシ部44(44b)とを同時に示したものである。即ち、第1毛束群と第2、3毛束群の境界に位置する毛束431、432、433、434を構成するフィラメントのうち、先端側の2つの毛束431、433のうちの少なくとも一方、及び、基端側の2つの毛束432、434のうちの少なくとも一方がエラストマーを少なくとも表面の一部に含むフィラメントを含むように構成されている場合は、第1~3毛束群の領域の平行距離が符号L13~15のブラシ部44aとなり、毛束431、432、433、434を構成するフィラメントが全て分岐毛部を有するフィラメントを含むように構成されている場合は、第1~3毛束群の領域の平行距離が符号L16~18のブラシ部44bとなる。尚、
図8に示す配置以外に、第2、3毛束群の領域の平行距離の組み合わせが、L13とL17の組み合わせ、L16とL14の組み合わせであってもよい。また、毛束431、432、433、434を設けないようにしてもよい。この場合、第1~3毛束群の領域の平行距離の組み合わせは、L13、L14、L18である。さらに、第1毛束群43a、43dには、
図6(a)、(b)、
図7(a)、(b)に示したものに準じて毛束23を構成するフィラメントを変更してもよい。また、
図6(b)、(c)に示したものに準じて第1~3毛束群の領域を変更してもよい。尚、
図8に示す例における、Sa/St、L13/Y4、L14/Y4、L16/Y4、L17/Y4は、表2に示すとおりである。尚、植毛密度、毛丈は、
図1で示す例の場合と同様にして設定することができる。
【0064】
【実施例0065】
以下では、実施例に基づき本発明に係る実施形態をより詳細に説明する。
【0066】
(実施例1)
図4に示す配置の植毛孔26が設けられた植毛台21を先端部に有するハンドル22を準備した。第1毛束群を構成するフィラメントAとして、エラストマーの鞘部(材質:ポリエステル系エラストマー、外周の横断面形状:四角形)と、合成樹脂の芯部(材質:ポリブチレンテレフタレート、横断面形状:円形)とで構成される芯鞘構造を有するモノフィラメントを準備した。第2、3毛束群を構成するフィラメントBとして、毛束の自由端となる側の先端部に長手方向に沿って複数に分割された分岐毛部を有するフィラメント(材質:ナイロン(登録商標)、フィラメントの構造:長手方向に内部を貫通する複数の空隙を有する形態に紡糸されたモノフィラメント)を準備した。
【0067】
定法に従って、植毛台21の植毛孔26にフィラメントA、Bの各毛束23を植設し、歯ブラシ2を得た。この際、
図4に示す植毛孔26の配置において、植毛孔231、232、233、234には植毛せず、第1~3毛束群の領域が、それぞれ平行距離L9、L4、L5となるようにした。つまり、
図4において、ブラシ部24の先端側の平行距離L4の領域に配置されている植毛孔26(
図4中、先端側の黒塗り)及び基端側の平行距離L5の領域に配置されている植毛孔26(
図4中、基端側の黒塗り)には、フィラメントBで構成される毛束23が植設され、ブラシ部24の中央部の平行距離L9の領域に配置されている植毛孔23(
図4中、白抜き)には、フィラメントAで構成される毛束23が植設されるようにした。毛丈(毛束23の植毛台21表面からの高さ)は10.5mmとなるようにした。得られた歯ブラシ2を用いて後述する評価を行った。
【0068】
(比較例1)
実施例1と同様に、
図4に示す構造を有するハンドル22、フィラメントA、Bを準備した。次いで、定法にしたがって、
図9(a)に示すように、先端側からの平行距離がL19となる領域の植毛孔26(
図9(a)中、白抜き)にフィラメントBを植設し、基端側からの平行距離がL20となる領域の植毛孔26(
図9(a)中、黒塗り)にフィラメントAを植設し、実施例1と同じ植毛長さの歯ブラシ9aを得た。この際、両領域の境界に位置する植毛孔261、262にはフィラメントは植毛しなかった。尚、ブラシ部24の全毛束のうち、フィラメントAの毛束の比率(植毛孔の面積/数比)は、35.9%(14/39×100)である。毛丈は10.5mmとなるようにした。得られた歯ブラシ9aを用いて後述する評価を行った。
【0069】
(比較例2)
比較例1と同様にして、
図9(b)に示すように、先端側からの平行距離がL21となる領域の植毛孔26(
図9(b)中、白抜き)にフィラメントBを植設し、基端側からの平行距離がL22となる領域の植毛孔26(
図9(b)中、黒塗り)にフィラメントAを植設し、実施例1と同じ植毛長さの歯ブラシ9bを得た。この際、両領域の境界に位置する植毛孔263、264にはフィラメントは植毛しなかった。尚、ブラシ部24の全毛束のうち、フィラメントAの毛束の比率(植毛孔26の面積/数比)は、66.7%(26/39×100)である。毛丈は10.5mmとなるようにした。得られた歯ブラシ9bを用いて後述する評価を行った。
【0070】
(評価)
<製品硬度>
旧JIS B 7733に規定する圧縮試験機に相当する株式会社島津製作所製、製品名オートグラフAGXに、実施例1及び比較例1、2で得られた各歯ブラシ2、9a、9bを固定し、10mm/minの速度でブラシ部に圧縮荷重を加え、その最大値[N]、および最大値となる部分を含み「最大値[N]-5[N]」以上となる連続する部分の変位(変位Z)[mm]を測定した。試験は各歯ブラシについて3本ずつ行い平均値を採用した。測定後、JIS S 3016に記載の植毛面積を算出し、圧縮試験による最大値を植毛面積で除して、単位面積当りの圧縮荷重を製品硬度として求めた。製品硬度が小さいほど柔らかな使用感を有することを示す。また、前述の変位(変位Z)が大きいほど強度が保持される時間が長いことから、毛腰があることを示す。
【0071】
評価基準は、以下のとおりである。
・製品硬度が20N/cm2未満、かつ変位が0.9mm以上:〇
・製品硬度が20N/cm2未満、かつ変位が0.7mm以上0.9mm未満:△
・製品硬度が20N/cm2以上、もしくは変位が0.7mm未満:×
【0072】
<ステイン除去能>
ステイン除去力は、ストゥキーらの論文(Stooky et al., Journal of Dental Research, 61, 1236-39, 1982)に記載されている方法を改良した方法で測定した。以下、その方法について説明すると、先ず牛永久歯(門歯)のエナメル試片を6mm平方切り取り、透明ポリエステルレジンにはめ込み、試片表面を平滑化し、鏡面研磨した。これを測定用試料とし、ベースラインとして、蛍光分光濃度計(Konica Minolta株式会社製)により、JIS Z 8729のL*a*b*表色系で規定されるL*1、a*1、b*1を測定した。試片表面を希塩酸に浸漬し、次に飽和炭酸ナトリウム水溶液に浸漬、つづいて1%フィチン酸水溶液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄した。
【0073】
ステイン培地は1.02gのインスタントコーヒー、1.02gのインスタントティー、0.75gの豚胃ムチン、を蒸留水に添加し調製した。試片をステイン培地に数日間繰返し浸漬させ、試片に十分ステインが付着したのち、ステイン培地に0.3g塩化鉄(III)六水和物を添加し、JIS Z 8729のL*a*b*表色系で規定されるL*が30以下程度になるまで続けた。その後試片を取り出し、イオン交換水で洗浄し、これを測定用試料とし、蛍光分光濃度計(Konica Minolta株式会社製)により、L*2、a*2、b*2を測定した。
【0074】
次に、実施例1及び比較例1、2で得られた各歯ブラシ2、9a、9bを試験歯ブラシとして用い、各試験歯ブラシをサンスター株式会社製のブラッシングマシーンに順次セットするとともに、前述のようにして製作した測定用試料をセットし、市販の歯磨き剤を用い、一定圧力で1500回往復させた後、乾燥させてから、該測定用試料におけるL*3、a*3、b*3を蛍光分光濃度計(Konica Minolta株式会社製)により測定した。ステイン除去(%)は以下の式を用いて算出した。試験は各試験歯ブラシについて6本ずつ行い平均値を採用した。
【0075】
・ΔE0(着色後-初期値)=[(L*2-L*1)2+(L*2-L*1)2+(L*2-L*1)2]1/2
・ΔE1(試験後-着色後)=[(L*3-L*2)2+(L*3-L*2)2+(L*3-L*2)2]1/2
・ΔE(ステイン除去力)=ΔE1/ΔE0×100
【0076】
そして、一般的な構成の対照歯ブラシのステイン除去力を100%とした場合における、試験歯ブラシのステイン除去能(%)を、次式を用いて求めた。
・ステイン除去能(%)=試験歯ブラシのステイン除去力/対照歯ブラシのステイン除去力×100
【0077】
評価基準は、以下のとおりである。
・ステイン除去能が70.0%以上:○
・ステイン除去能が60.0%以上70.0%未満:△
・ステイン除去能が60.0%未満:×
【0078】
<プラーク除去率>
歯ブラシのブラッシング圧及び移動速度を一定に保ちながら、固定した顎模型(株式会社ニッシン社製)の歯をブラッシングできるように設計されたブラッシングシミュレータを用いた。プラークの代替として人工プラークを顎模型に塗布した。実施例1及び比較例1、2で得られた各歯ブラシ2、9a、9bを用い、ブラッシング圧は200gに設定し、長手方向のストロークで、ストローク幅20mmにて1歯1回、♯27~♯24の頬側をブラッシングした。その後、対象歯(♯26)の撮影を行い、画像解析ソフトAdobe Photoshopによりプラーク除去率を算出した。試験は各歯ブラシについて3本ずつ行い平均値を採用した。
【0079】
評価基準は、以下のとおりである。
・人工プラーク除去率が70.0%以上:○
・人工プラーク除去率が50.0%以上70.0%未満:△
・人工プラーク除去率が50.0%未満:×
【0080】
<耐久性試験>
実施例1及び比較例1、2で得られた各歯ブラシ2、9a、9bを37℃の温水に浸漬し、荷重300gをかけて、10000回往復運動させ、(A)初期状態の歯ブラシの行方向(長手方向に直交する方向)のブラシ部の幅(植毛されているブラシ毛の幅)WA、(B)10000回往復運動後の毛の開いた状態の歯ブラシの行方向のブラシ部の幅WBを測定し、下式により算定した耐久性指数(指数が低いほど耐久性に優れる。)を以下の基準で評価した。尚、試験は、各歯ブラシについて6本ずつ行い、1本の歯ブラシについて、幅WAおよびWBは、長手方向の先端側、基端側、これらの間の各部分から1ヶ所ずつ選択して、ブラシ毛の先端側から正面視した時の行方向の幅を測定し、平均値を算出し、かつ、6本の平均値を採用した。
【0081】
耐久性指数(%)=WB/WA×100
【0082】
総合評価は下記のとおりである。
・耐久性指数が100%以上140%未満:○
・耐久性指数が140%以上180%未満:△
・耐久性指数が180%以上:×
【0083】
以上の評価結果を表3に示す。
【0084】
【0085】
表3に示すように、所定のフィラメントで構成される毛束を含むように、ブラシ部の長手方向に3つの領域に区分して複数の毛束を配置することで、例えば実施例1のような幅広植毛歯ブラシにおいて、歯茎への柔らかい当たり心地を有すると同時に、プラーク除去効果及びステイン除去性能の両方を実用上満足のいくレベルで実現することが可能であり、良好な耐久性をも有していることが分かる。