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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091155
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207649
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】畠中 英文
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
(57)【要約】
【課題】 応力を緩和しつつ、電極全体としての抵抗値を低減できる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】 積層型電子部品1は、誘電体層20と内部電極層21とが積層された積層体2であって、第1端面8aおよび第2端面8bを有し、内部電極層21は、第1端面8aに露出する第1内部電極層21a及び第2端面8bに露出する第2内部電極層21bを有する積層体2と、第1内部電極層21aの露出した第1端部21aaに位置する第1導電性突起3aと、第2内部電極層21bの露出した第2端部21baに位置する第2導電性突起3bと、第1異方性導電膜4aと、第2異方性導電膜4bと、第1異方性導電膜4aを介して第1導電性突起3aと電気的に接続される第1導電膜5aと、第2異方性導電膜4bを介して第2導電性突起3bと電気的に接続される第2導電膜5bと、第1外部電極6aと、第2外部電極6bと、を含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる略直方体状の積層体であって、互いに対向する第1面および第2面、互いに対向する第1端面および第2端面、ならびに、互いに対向する第1側面および第2側面を有し、前記内部電極層は、前記第1端面に露出する少なくとも1つの第1内部電極層、および、前記第2端面に露出する少なくとも1つの第2内部電極層を有する積層体と、
前記少なくとも1つの第1内部電極層における前記第1端面に露出した第1端部に位置する第1導電性突起と、
前記少なくとも1つの第2内部電極層における前記第2端面に露出した第2端部に位置する第2導電性突起と、
前記第1端面および前記第1導電性突起を覆う第1異方性導電膜と、
前記第2端面および前記第2導電性突起を覆う第2異方性導電膜と、
前記第1異方性導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面を覆う第1導電膜であって、前記第1異方性導電膜を介して前記第1導電性突起と電気的に接続される第1導電膜と、
前記第2異方性導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面を覆う第2導電膜であって、前記第2異方性導電膜を介して前記第2導電性突起と電気的に接続される第2導電膜と、
前記第1導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面から、前記第1面、前記第2面、前記第1側面および前記第2側面にかけて位置する第1外部電極と、
前記第2導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面から、前記第1面、前記第2面、前記第1側面および前記第2側面にかけて位置する第2外部電極と、を含む積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1導電性突起および前記第2導電性突起と、前記内部電極層とは、同じ金属を主成分とする、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1導電膜および前記第2導電膜は、蒸着膜である、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1外部電極および前記第2外部電極は、めっき層である、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1外部電極は、前記第1導電膜に接する第1めっき層と、前記第1めっき層に接し、前記第1導電膜に接しない第2めっき層とを含み、
前記第1めっき層と前記第2めっき層とは、互いに異なる金属を主成分とする、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第2外部電極は、前記第2導電膜に接する第3めっき層と、前記第3めっき層に接し、前記第2導電膜に接しない第4めっき層とを含み、
前記第3めっき層と前記第4めっき層とは、互いに異なる金属を主成分とする、請求項4に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一例である積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体、および外部電極を含んでいる。積層セラミックコンデンサを基板に実装する際に生じる応力を緩和したり、積層セラミックコンデンサを基板に実装して使用した際のセラミックコンデンサの電歪による基板の音鳴きを低減したりするために、導電性樹脂層を含む外部電極とすることが知られている。例えば特許文献1は、応力を緩和しつつ、内部電極層および外部電極を含む電極全体の抵抗値を低減するために、外部電極が導電性樹脂層を含むとともに、内部電極層における外部電極に接する端部領域の厚みが増加する構成とすることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-174838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層セラミックコンデンサは、導電性樹脂層を含む外部電極の抵抗値が十分に小さくならない虞があり、また、内部電極層の端部領域の厚みが厚いため、極性の異なる内部電極層同士が短絡する虞があった。このように、従来の積層セラミックコンデンサは、応力を緩和しつつ、内部電極層から外部電極に至る電流経路の電気抵抗値を低減することにおいて、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の積層型電子部品は、誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる略直方体状の積層体であって、互いに対向する第1面および第2面、互いに対向する第1端面および第2端面、ならびに、互いに対向する第1側面および第2側面を有し、前記内部電極層は、前記第1端面に露出する少なくとも1つの第1内部電極層、および、前記第2端面に露出する少なくとも1つの第2内部電極層を有する積層体と、
前記少なくとも1つの第1内部電極層における前記第1端面に露出した第1端部に位置する第1導電性突起と、
前記少なくとも1つの第2内部電極層における前記第2端面に露出した第2端部に位置する第2導電性突起と、
前記第1端面および前記第1導電性突起を覆う第1異方性導電膜と、
前記第2端面および前記第2導電性突起を覆う第2異方性導電膜と、
前記第1異方性導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面を覆う第1導電膜であって、前記第1異方性導電膜を介して前記第1導電性突起と電気的に接続される第1導電膜と、
前記第2異方性導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面を覆う第2導電膜であって、前記第2異方性導電膜を介して前記第2導電性突起と電気的に接続される第2導電膜と、
前記第1導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面から、前記第1面、前記第2面、前記第1側面および前記第2側面にかけて位置する第1外部電極と、
前記第2導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面から、前記第1面、前記第2面、前記第1側面および前記第2側面にかけて位置する第2外部電極と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の積層型電子部品によれば、基板に実装する際に生じる応力を緩和しつつ、内部電極層から外部電極に至る電流経路の電気抵抗値を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
図2図1の積層セラミックコンデンサの積層体を示す斜視図である。
図3図1の切断面線III-IIIで切断した断面図である。
図4図3のIV部を拡大して示す拡大断面図である。
図5】仮積層体の作製工程を示す斜視図である。
図6】母積層体を示す斜視図である。
図7】母積層体を切断して得た複数の積層体を示す斜視図である。
図8】焼成後の積層体を示す斜視図である。
図9A】外部電極の形成工程を説明する断面図である。
図9B】外部電極の形成工程を説明する断面図である。
図9C】外部電極の形成工程を説明する断面図である。
図9D】外部電極の形成工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本開示の積層型電子部品の実施形態について説明する。以下では、積層型電子部品の一例である積層セラミックコンデンサについて説明するが、本開示の積層型電子部品の構成は、積層セラミックコンデンサに限られず、積層型圧電素子、積層サーミスタ素子、積層チップコイル、チップ抵抗、およびセラミック多層基板等の様々な積層型電子部品にも適用することができる。以下で参照する図面は、模式的なものであり、図面に示された寸法比率等は、必ずしも正確に図示されたものではない。また、本明細書においては、便宜的に、直交座標系xyzを定義する。x軸方向は、第1方向または長さ方向とも称される。y軸方向は、第2方向または幅方向とも称される。z軸方向は、第3方向または高さ方向とも称される。
【0009】
図1は、本開示の実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図であり、図2は、図1の積層セラミックコンデンサの積層体を示す斜視図であり、図3は、図1の切断面線III-IIIで切断した断面図であり、図4は、図3のIV部を拡大して示す拡大断面図である。
【0010】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、図1~3に示すように、積層体2と、第1導電性突起3aと、第2導電性突起3bと、第1異方性導電膜4aと、第2異方性導電膜4bと、第1導電膜5aと、第2導電膜5bと、第1外部電極6aと、第2外部電極6bとを含む。以下では、第1導電性突起3aおよび第2導電性突起3bを纏めて導電性突起3a,3bと記載することがある。また、第1異方性導電膜4aおよび第2異方性導電膜4bを纏めて異方性導電膜4a,4bと記載することがある。さらに、第1導電膜5aおよび第2導電膜5bを纏めて導電膜5a,5bと記載することがあり、第1外部電極6aおよび第2外部電極6bを纏めて外部電極6a,6bと記載することがある。
【0011】
積層体2は、図2に示すように、略直方体状の形状を有している。積層体2は、第3方向(y軸方向)に互いに対向する第1面7aおよび第2面7b、第1方向(x軸方向)に互いに対向する第1端面8aおよび第2端面8b、ならびに、第2方向(y軸方向)に互いに対向する第1側面9aおよび第2側面9bを有している。以下では、第1面7aおよび第2面7bを纏めて主面7a,7bと記載することがあり、第1端面8aおよび第2端面8bを纏めて端面8a,8bと記載することがあり、第1側面9aおよび第2側面9bを纏めて側面9a,9bと記載することがある。主面7a,7bは第3方向に垂直であってよい。端面8a,8bは第1方向に垂直であってよい。側面9a,9bは、第2方向に垂直であってよい。
【0012】
積層体2は、誘電体層20と内部電極層21とが交互に積層されて構成される。誘電体層20と内部電極層21とは、第3方向(z軸方向)に積層されている。内部電極層21は、第1端面8aに露出する少なくとも1つの第1内部電極層21aと、第2端面8bに露出する少なくとも1つの第2内部電極層21bとを有している。第1内部電極層21aと第2内部電極層21bとは、誘電体層20を挟んで交互に位置していてよい。第1内部電極層21aは、第1端面8aに露出した第1端部21aaを有している。第2内部電極層21bは、第2端面8bに露出した第2端部21baを有している。第1端部21aaおよび第2端部21baは、積層体2の内側に向かって、誘電体層20よりも僅かに後退していてよい。
【0013】
誘電体層20は、絶縁性を有する材料で構成されている。誘電体層20は、例えばBaTiO(チタン酸バリウム)、CaTiO(チタン酸カルシウム)、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)、BaZrO(ジルコン酸バリウム)等を主成分とするセラミック材料で構成されていてもよい。本明細書において、「主成分」とは、着目する材料または部材等において構成比率が最も高い成分のことを言う。構成比率は、含有濃度(mol%)であってよいし、重量%(wt%)であってよい。
【0014】
内部電極層21は、導電性を有する材料で構成されている。内部電極層21は、例えばNi(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Cu(銅)等を主成分とする金属材料で構成されていてもよい。
【0015】
誘電体層20の厚みが薄ければ薄いほど、積層セラミックコンデンサ1を大容量化することができる。誘電体層20の厚みは、例えば0.5μm程度以上10μm程度以下であってよい。また、コンデンサとしての特性が確保できる限りにおいて、内部電極層21の厚みが薄ければ薄いほど、内部応力による内部欠陥を抑制し、積層セラミックコンデンサ1の信頼性を向上させることができる。内部電極層21の厚みは、例えば1.5μm程度以下であってよい。
【0016】
図3に示すように、第3方向(z軸方向)における積層体2の両端部は、カバー層22で構成されていてよい。カバー層22は、絶縁性を有する材料で構成されていてよい。カバー層22は、例えば1層または複数層の誘電体層20で構成されていてもよい。
【0017】
図2に示すように、第2方向(y軸方向)における積層体2の両端部は、サイドマージン部23で構成されていてよい。サイドマージン部23は、第1サイドマージン部23aと、第2サイドマージン部23bとを含む。第1サイドマージン部23aは、第1側面9aを含み、第2サイドマージン部23bは、第2側面9bを含む。第1サイドマージン部23aは、第1側面9aと、内部電極層21における第1側面9a寄りの端部との間の領域であってよい。第2サイドマージン部23bは、第2側面9bと、内部電極層21における第2側面9b寄りの端部との間の領域であってよい。
【0018】
サイドマージン部23a,23bの厚みが薄いほど、積層セラミックコンデンサ1を小型大容量化することができる。第1サイドマージン部23aおよび第2サイドマージン部23bの厚みは、例えば5μm程度以上30μm程度以下であってよい。
【0019】
第1導電性突起3aは、図3,4に示すように、第1内部電極層21aの第1端部21aaに位置している。第2導電性突起3bは、図3,4に示すように、第2内部電極層21bの第2端部21baに位置している。第1導電性突起3aは、第1端面8aよりも第1方向(x軸方向)に突出し、第2導電性突起3bは、第2端面8bよりも第1方向(x軸方向)に突出している。すなわち、第1導電性突起3aは、第1端面8aよりも外側に突出し、第2導電性突起3bは、第2端面8bよりも外側に突出している。これにより、導電性突起3a,3bと導電膜5a,5bとを、異方性導電膜4a,4bを介して、電気的に接続しやすくなる。導電性突起3a,3bの端面8a,8bからの突出高さは、例えば0.3~10μm程度であってよい。導電性突起3a,3bは、突出高さが第2方向において一定であってよく、変化していてもよい。導電性突起3a,3bは、突出高さが実質的に0である部位を含んでいてもよい。導電性突起3a,3bは、例えばNi、Pd、Ag、Cu等を主成分とする金属材料で構成されていてもよい。導電性突起3a,3bと内部電極層21とは、同じ金属を主成分としてよい。この場合、導電性突起3a,3bと内部電極層21との密着性を高めることができ、積層セラミックコンデンサ1の信頼性を向上させることができる。導電性突起3a,3bは、例えば無電解めっき、電解めっき等のめっき法を用いて形成されてよい。
【0020】
第1異方性導電膜4aは、図3,4に示すように、第1端面8aおよび第1導電性突起3aを覆っている。第1異方性導電膜4aは、第1端面8aに対向する第2面4aaと、第2面4aaとは反対側の第3面4abとを有している。第2異方性導電膜4bは、図3に示すように、第2端面8bおよび第2導電性突起3bを覆っている。第2異方性導電膜4bは、第2端面8bに対向する第4面4baと、第4面4baとは反対側の第5面4bbとを有している。異方性導電膜4a,4bは、異方性導電膜(ACF)で構成されている。すなわち、異方性導電膜4a,4bは、熱硬化性樹脂41中に導電粒子42を均一に分散したものである。熱硬化性樹脂41は、例えばポリエチレン樹脂等であってよい。導電粒子42は、例えばNi、Au(金)、Ag、Cu等の金属材料を含んで構成されてよい。異方性導電膜4a,4bは、例えば10~50μm程度の厚みを有してよい。導電粒子42は、例えば1~10μm程度の平均粒径を有してよい。
【0021】
第1導電膜5aは、図3,4に示すように、第1異方性導電膜4aの第3面4abを覆っている。第1導電膜5aは、第1端面8aに対向する第6面5aaと、第6面5aaとは反対側の第7面5abとを有している。第6面5aaは、第1異方性導電膜4aの第3面4abに接している。第1導電膜5aは、第1異方性導電膜4aの導電粒子42を介して、第1導電性突起3aと電気的に接続されている。言い換えると、第1導電膜5aは、第1異方性導電膜4aの導電粒子42および第1導電性突起3aを介して、第1内部電極層21aと電気的に接続されている。
【0022】
第2導電膜5bは、図3に示すように、第2異方性導電膜4bの第5面4bbを覆っている。第2導電膜5bは、第2端面8bに対向する第8面5baと、第8面5baとは反対側の第9面5bbとを有している。第8面5baは、第2異方性導電膜4bの第5面4bbに接している。第2導電膜5bは、第2異方性導電膜4bの導電粒子42を介して、第2導電性突起3bと電気的に接続されている。言い換えると、第2導電膜5bは、第2異方性導電膜4bの導電粒子42および第2導電性突起3bを介して、第2内部電極層21bと電気的に接続されている。
【0023】
導電膜5a,5bは、例えばNi、Cu、Al(アルミニウム)等の金属材料で構成されていてよい。導電膜5a,5bは、例えば0.2nm~10μm程度の厚みを有してよい。第1導電膜5aは、第1異方性導電膜4aの第3面4abに蒸着された蒸着膜であってよく、第2導電膜5bは、第2異方性導電膜4bの第5面4bbに蒸着された蒸着膜であってよい。この場合、導電膜5a,5bと異方性導電膜4a,4bとの密着性を高めることができ、その結果、導電性突起3a,3bと導電膜5a,5bとを、異方性導電膜4a,4bを介して、電気的に良好に接続することができる。導電膜5a,5bは、例えば真空蒸着法、化学的気相成長法(CVD)等の薄膜形成技術や薄膜金属材料の貼り合わせ技術を用いて形成されていてもよい。
【0024】
第1外部電極6aは、図1,3に示すように、第1導電膜5aの第7面5abから、積層体2の第1面7a、第2面7b、第1側面9aおよび第2側面9bにかけて位置している。第1外部電極6aは、第1導電膜5a、第1異方性導電膜4aの導電粒子42、および第1導電性突起3aを介して、第1内部電極層21aと電気的に接続されている。
【0025】
第2外部電極6bは、図1,3に示すように、第2導電膜5bの第9面5bbから、第1面7a、第2面7b、第1側面9aおよび第2側面9bにかけて位置している。第1外部電極6aは、第1導電膜5a、第1異方性導電膜4aの導電粒子42、および第1導電性突起3aを介して、第1内部電極層21aと電気的に接続されている。第1外部電極6aと第2外部電極6bとは、電気的に絶縁されている。
【0026】
外部電極6a,6bは、めっき層であってよい。外部電極6a,6bは、例えば無電解めっき、電解めっき等のめっき法を用いて形成されていてよい。なお、主面7a,7bおよび側面9a,9bにおける外部電極6a,6bが形成される部位に、外部電極6a,6bの下地となる下地層が形成されていてもよい。下地層を形成することによって、主面7a,7bおよび側面9a,9bと外部電極6a,6bとの密着性を高めることができる。その結果、外部電極6a,6bが積層体2から剥離する虞を低減し、積層セラミックコンデンサ1の信頼性を向上させることができる。
【0027】
第1外部電極6aは、第1めっき層61と、第2めっき層62とを含んで構成されてよい。第1めっき層61は、第1導電膜5aに接している。第2めっき層62は、第1めっき層61に接しており、第1導電膜5aに接していない。第1めっき層61および第2めっき層62は、例えばNi、Sn(スズ)、Cu、Au等の金属材料で構成されてよい。第1めっき層61と第2めっき層62とは、互いに異なる金属材料で構成されてよい。この場合、第1外部電極6aと第1導電膜5aとの密着性を高めつつ、積層セラミックコンデンサ1を基板に実装する際に用いる導電性接合材に対する第1外部電極6aの濡れ性を高めることが可能となる。第1めっき層61は、Niで構成されてよい。第2めっき層62は、Snで構成されてよい。
【0028】
第2外部電極6bは、第3めっき層63と、第4めっき層64とを含んで構成されてよい。第3めっき層63は、第2導電膜5bに接している。第4めっき層64は、第3めっき層63に接しており、第2導電膜5bに接していない。第3めっき層63および第4めっき層64は、例えばNi、Sn、Cu、Au等の金属材料で構成されてよい。第3めっき層63と第4めっき層64とは、互いに異なる金属材料で構成されてよい。この場合、第2外部電極6bと第2導電膜5bとの密着性を高めつつ、積層セラミックコンデンサ1を基板に実装する際に用いる導電性接合材に対する第2外部電極6bの濡れ性を高めることが可能となる。第3めっき層63は、Niで構成されてよい。第4めっき層64は、Snで構成されてよい。
【0029】
積層セラミックコンデンサ1は、積層体2と外部電極6a,6bとの間に樹脂層(すなわち、異方性導電膜4a,4bの熱硬化性樹脂41)が位置している構成であるため、積層セラミックコンデンサ1を基板に実装する際に生じる応力を緩和することができる。その結果、積層セラミックコンデンサ1を含む実装構造体の信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、異方性導電膜4a,4bは、導電粒子42によって電流経路を形成するため、フレーク状金属粉によって電流経路を形成する導電性樹脂と比べて、電気抵抗値を低減することができる。したがって、積層セラミックコンデンサ1は、電極全体の抵抗値(内部電極層21から外部電極6a,6bに至る電流経路の電気抵抗値)を低減することができる。その結果、積層セラミックコンデンサ1の応答性を向上させることができる。
【0031】
また、異方性導電膜4a,4bは、積層体2の端面8a,8bに貼付する際の加圧方向を端面8a,8bに垂直な方向(第1方向)とすることで、導電性突起3a,3bと導電膜5a,5bとを、第1方向(x軸方向)にのみ、導通させることができる。これにより、内部電極層21から外部電極6a,6bに至る電流経路が偏りにくくなる。その結果、電流経路の電気抵抗値が過度に大きくなったり、積層セラミックコンデンサ1に局所的な発熱が生じたりする虞を低減することができる。
【0032】
次に、積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例について説明する。図5は、仮積層体の作製工程を示す斜視図であり、図6は、母積層体を示す斜視図であり、図7は、母積層体を切断して得た複数の積層体を示す斜視図であり、図8は、焼成後の積層体を示す斜視図であり、図9A,9B,9C,9Dは、外部電極の形成工程を説明する断面図である。
【0033】
先ず、誘電体層20の材料として、BaTiO、CaTiO、SrTiO、BaZrO等の誘電体材料またはこれらの混合物を主成分とする粉末を準備し、該粉末に有機ビヒクルを加えて、セラミックスラリーを調製する。次いで、ドクターブレード法、ダイコーター法等のシート成形法を用いて、セラミックグリーンシート(以下、単に、グリーンシートともいう)10を作製する。グリーンシート10の厚みは、例えば0.5~10μm程度であってもよい。
【0034】
次に、内部電極層21の材料として、Ni、Pd、Ag、Cu等の金属材料またはこれらの混合物を主成分とする粉末を用いて、導電性ペーストを調製する。続いて、調整した導電性ペーストを用いて、グリーンシート10の主面上に内部電極層となる電極パターンが印刷されたパターンシート11を形成する。電極パターンの印刷には、例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法を用いることができる。
【0035】
次に、図5に示すように、所定枚数積層したグリーンシート10の上に、パターンシート11を所定枚数積層し、さらに、グリーンシート10を所定枚数積層することによって、仮積層体を作製する。続いて、仮積層体を積層方向にプレスして、図6に示すような母積層体15を作製する。仮積層体のプレスは、例えば静水圧プレス装置を用いて行うことができる。続いて、母積層体15を仮想分割ライン16に沿って切断し、図7に示すように、未焼成の積層体を複数作製する。母積層体15の切断は、例えば押切切断機、ダイシングソウ装置等を用いて行うことができる。未焼成の積層体は、実質的に、焼成後の積層体2と同一構造であるため、未焼成の積層体についても、主面7a,7b、端面8a,8bおよび側面9a,9b等の用語および参照符号を用いる。
【0036】
次に、未焼成の積層体に大気雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元雰囲気で脱脂処理を行った後、還元雰囲気で焼成する。焼成温度は、例えば1100℃~1300℃程度であってよい。続いて、焼成後の積層体に窒素雰囲気で再酸化処理を行う。再酸化処理後の積層体を研磨粉、研磨メディア等が入ったポットの中に入れて回転させて研磨することによって、積層体の角およびバリを取り除き、図2に示すような積層体2を得る。
【0037】
次に、図9Aに示すように、第1端面8aに露出している第1端部21aaに第1導電性突起3aを形成する。同様に、第2端面8bに露出している第2端部21baに第2導電性突起3bを形成する。続いて、図9Bに示すように、一方主面12aに導電膜13が蒸着された異方性導電膜12を準備し、異方性導電膜12の他方主面12bが第1端面8aに対向し、かつ第1端面8aと平行となるように位置付ける。異方性導電膜12は、他方主面12bが開放面となるように、支持台(図示せず)に保持されている。
【0038】
次に、図9Cに示すように、異方性導電膜12を加熱しながら、支持台を積層体2に向かって矢印の方向に移動させ、異方性導電膜12を第1端面8aに対して押圧する。異方性導電膜12は、100~200℃程度の温度まで加熱すればよい。支持体の移動方向は、第1端面8aに垂直な方向であってよい。このようにして、第1端面8aに接着された第1異方性導電膜4aを形成するとともに、第1導電性突起3aと第1導電膜5aとを、第1異方性導電膜4aの導電粒子42を介して、電気的に接続することができる。同様にして、第2端面8bに接着された第2異方性導電膜4bを形成するとともに、第2導電性突起3bと第2導電膜5bとを、第2異方性導電膜4bの導電粒子42を介して、電気的に接続することができる。第2異方性導電膜4bの形成、および第2導電性突起3bと第2導電膜5bとの電気的接続は、第1異方性導電膜4aの形成、および第1導電性突起3aと第1導電膜5aとの電気的接続と同時に行ってよい。
【0039】
次に、無電解めっき、電解めっき等のめっき法を用いて、図9Dに示すように、外部電極6a,6bを形成することで、図1に示すような積層セラミックコンデンサ1を製造することができる。
【0040】
上記では、母積層体15を切断することによって、サイドマージン部23を有する積層体2を作製する例について説明したが、積層体2の作製方法はこれに限られない。例えば、積層体2は、母積層体15を切断してサイドマージン部23を有さない積層体2前駆体を作製し、積層体2前駆体の側面にサイドマージン部を形成することによって作製されてもよい。
【0041】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0042】
本開示の積層型電子部品は、以下の実施の態様(1)~(6)が可能である。
【0043】
(1)誘電体層と内部電極層とが交互に積層されてなる略直方体状の積層体であって、互いに対向する第1面および第2面、互いに対向する第1端面および第2端面、ならびに、互いに対向する第1側面および第2側面を有し、前記内部電極層は、前記第1端面に露出する少なくとも1つの第1内部電極層、および、前記第2端面に露出する少なくとも1つの第2内部電極層を有する積層体と、
前記少なくとも1つの第1内部電極層における前記第1端面に露出した第1端部に位置する第1導電性突起と、
前記少なくとも1つの第2内部電極層における前記第2端面に露出した第2端部に位置する第2導電性突起と、
前記第1端面および前記第1導電性突起を覆う第1異方性導電膜と、
前記第2端面および前記第2導電性突起を覆う第2異方性導電膜と、
前記第1異方性導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面を覆う第1導電膜であって、前記第1異方性導電膜を介して前記第1導電性突起と電気的に接続される第1導電膜と、
前記第2異方性導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面を覆う第2導電膜であって、前記第2異方性導電膜を介して前記第2導電性突起と電気的に接続される第2導電膜と、
前記第1導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面から、前記第1面、前記第2面、前記第1側面および前記第2側面にかけて位置する第1外部電極と、
前記第2導電膜における前記積層体に対向する面とは反対側の面から、前記第1面、前記第2面、前記第1側面および前記第2側面にかけて位置する第2外部電極と、を含む積層型電子部品。
【0044】
(2)前記第1導電性突起および前記第2導電性突起と、前記内部電極層とは、同じ金属を主成分とする、上記(1)に記載の積層型電子部品。
【0045】
(3)前記第1導電膜および前記第2導電膜は、蒸着膜である、上記(1)または(2)に記載の積層型電子部品。
【0046】
(4)前記第1外部電極および前記第2外部電極は、めっき層である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の積層型電子部品。
【0047】
(5)前記第1外部電極は、前記第1導電膜に接する第1めっき層と、前記第1めっき層に接し、前記第1導電膜に接しない第2めっき層とを含み、
前記第1めっき層と前記第2めっき層とは、互いに異なる金属を主成分とする、上記(4)に記載の積層型電子部品。
【0048】
(6)前記第2外部電極は、前記第2導電膜に接する第3めっき層と、前記第3めっき層に接し、前記第2導電膜に接しない第4めっき層とを含み、
前記第3めっき層と前記第4めっき層とは、互いに異なる金属を主成分とする、上記(4)または(5)に記載の積層型電子部品。
【符号の説明】
【0049】
1 積層型電子部品(積層セラミックコンデンサ)
2 積層体
20 誘電体層
21 内部電極層
21a 第1内部電極層
21aa 第1端部
21b 第2内部電極層
21ba 第2端部
22 カバー層
23 サイドマージン部
23a 第1サイドマージン部
23b 第2サイドマージン部
3a 第1導電性突起
3b 第2導電性突起
4a 第1異方性導電膜
4aa 第2面
4ab 第3面
4b 第2異方性導電膜
4ba 第4面
4bb 第5面
41 熱硬化性樹脂
42 導電粒子
5a 第1導電膜
5aa 第6面
5ab 第7面
5b 第2導電膜
5ba 第8面
5bb 第9面
6a 第1外部電極
6b 第2外部電極
61 第1めっき層
62 第2めっき層
63 第3めっき層
64 第4めっき層
7a 第1面
7b 第2面
8a 第1端面
8b 第2端面
9a 第1側面
9b 第2側面
10 セラミックグリーンシート(グリーンシート)
11 パターンシート
12 異方性導電膜
12a 一方主面
12b 他方主面
13 導電膜
15 母積層体
16 仮想分割ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D