(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091161
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】映像表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207658
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 智宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 浦瑠那
(72)【発明者】
【氏名】中居 利成
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054FA07
5C054FD07
5C054FE01
5C054FE11
5C054FE26
(57)【要約】
【課題】モータサイクルの後方映像を表示する表示装置の横長配置と縦長配置とを許容して、表示装置の搭載性を向上することができる、映像システムを提供する。
【解決手段】モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、ライダーの前方に位置するようにモータサイクルに取り付けられ、向きを変更して取り付け可能であるか又は取り付けた状態で向きが変更可能であり、撮像装置から取得された映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、撮像装置で撮像された撮像映像の撮像範囲から表示装置の取付状態に応じて定まる領域を切り出し、切り出した領域に対応する映像を表示するように、表示装置を制御する制御装置と、を備えた映像表示システムとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、
ライダーの前方に位置するように前記モータサイクルに取り付けられ、向きを変更して取り付け可能であるか又は取り付けた状態で向きが変更可能であり、前記撮像装置から取得された映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、
前記撮像装置で撮像された撮像映像の撮像範囲から前記表示装置の取付状態に応じて定まる領域を切り出し、切り出した前記領域に対応する映像を表示するように、前記表示装置を制御する制御装置と、
を備えた映像表示システム。
【請求項2】
前記領域は、前記表示装置の取付状態が横長配置の場合は、横長の領域であり、前記表示装置の取付状態が縦長配置の場合は、縦長の領域である、請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項3】
前記表示装置は、当該表示装置の向きを検知する検知機構を備え、
前記制御装置は、前記検知機構の検知結果に基づいて前記表示装置の取付状態に応じて定まる前記領域を切り出す、請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記表示装置の取付状態が横長配置か縦長配置かに拘わらず、前記表示装置に表示される映像の倍率が一定となるように、前記表示装置の取付状態に応じて定まる前記領域を切り出す、請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記表示装置の取付状態が横長配置及び縦長配置の一方の場合には、前記撮像映像から切り出した映像と共に追加画面を表示し、前記表示装置の取付状態が横長配置及び縦長配置の他方の場合には、前記追加画面を表示することなく前記撮像映像から切り出した映像を表示するように、前記表示装置を制御する、請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項6】
前記後方の映像と共に追加画面を表示する場合に、
前記制御装置は、前記撮像映像から切り出した映像が前記追加画面より車体の中央側に配置されるように、前記表示装置を制御する、請求項1に記載の映像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二輪車後方を撮像した映像を表示装置に表示して、ライダーに二輪車後方の視覚的情報を提供する技術が知られている。例えば、特許文献1には、二輪車後方を撮像した撮像映像の一部の領域を、ハンドル近傍に配置した表示装置に表示する後方映像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二輪車や三輪車などのモータサイクルの場合、車両に比べて表示装置の配置スペースが限られている。このため、表示装置を縦長にしか配置できない、横長にしか配置できない等の制約が生じ得る。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、モータサイクルの後方映像を表示する表示装置の横長配置と縦長配置とを許容して、表示装置の搭載性を向上させることができる、映像システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様の映像表示システムは、モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、ライダーの前方に位置するように前記モータサイクルに取り付けられ、向きを変更して取り付け可能であるか又は取り付けた状態で向きが変更可能であり、前記撮像装置から取得された映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、前記撮像装置で撮像された撮像映像の撮像範囲から前記表示装置の取付状態に応じて定まる領域を切り出し、切り出した前記領域に対応する映像を表示するように、前記表示装置を制御する制御装置と、を備えている。
【0007】
本開示の第2態様の映像表示システムは、本開示の第1態様の映像表示システムにおいて、前記領域は、前記表示装置の取付状態が横長配置の場合は、横長の領域であり、前記表示装置の取付状態が縦長配置の場合は、縦長の領域である。
【0008】
本開示の第3態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記表示装置は、当該表示装置の向きを検知する検知機構を備え、前記制御装置は、前記検知機構の検知結果に基づいて前記表示装置の取付状態に応じて定まる前記領域を切り出す。
【0009】
本開示の第4態様の映像表示システムは、本開示の第1態様~第3態様のいずれか1つの映像表示システムにおいて、前記制御装置は、前記表示装置の取付状態が横長配置か縦長配置かに拘わらず、前記表示装置に表示される映像の倍率が一定となるように、前記表示装置の取付状態に応じて定まる前記領域を切り出す。
【0010】
本開示の第5態様の映像表示システムは、本開示の第1態様~第4態様のいずれか1つの映像表示システムにおいて、前記制御装置は、前記表示装置の取付状態が横長配置及び縦長配置の一方の場合には、前記撮像映像から切り出した映像と共に追加画面を表示し、前記表示装置の取付状態が横長配置及び縦長配置の他方の場合には、前記追加画面を表示することなく前記撮像映像から切り出した映像を表示するように、前記表示装置を制御する。
【0011】
本開示の第6態様の映像表示システムは、本開示の第1態様~第5態様のいずれか1つの映像表示システムにおいて、前記後方の映像と共に追加画面を表示する場合に、前記制御装置は、前記撮像映像から切り出した映像が前記追加画面より車体の中央側に配置されるように、前記表示装置を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の第1態様の映像表示システムによれば、モータサイクルの後方映像を表示する表示装置を横長配置及び縦長配置のいずれの状態でもモータサイクルに取り付けることができ、表示装置の搭載性を向上させることができる。
【0013】
本開示の第2態様の映像表示システムによれば、表示装置の取付状態に適した映像を表示することができる。
【0014】
本開示の第3態様の映像表示システムによれば、表示装置の向きを自動で決定することができる。
【0015】
本開示の第4態様の映像表示システムによれば、表示装置の取付状態に拘わらず、ライダーが見たい範囲を、距離感を掴みやすい倍率で表示することができる。
【0016】
本開示の第5態様の映像表示システムによれば、表示装置の取付状態に応じて追加画面の表示の有無を決めることができる。
【0017】
本開示の第6態様の映像表示システムによれば、後方の映像の左右方向のオフセット量を低減しつつ、映像と共に追加画面を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る映像表示システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図2】(A)~(D)は表示装置の配置の一例を示す概略図である。
【
図3】表示装置のブラケットの一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による映像表示システムの電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】制御装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る映像表示プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】「表示映像データの生成処理」の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】(A)~(C)は本発明の第1の実施形態に係る映像データの処理を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る映像表示システムで使用される設定画面の一例を示す模式図である。
【
図10】追加画面と後方映像とを表示する表示映像の一例を示す模式図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る「表示映像データの生成処理」の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】表示装置が横長配置である場合の追加画面のレイアウトの一例を示す模式図である。
【
図13】表示装置が縦長配置である場合の追加画面のレイアウトの他の一例を示す模式図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る映像表示システムにおける表示装置及びブラケットの一例を示す概略図である。
【
図15】(A)~(D)は本発明の第3の実施形態に係る表示装置の取付状態の検知方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0020】
<第1の実施の形態>
本開示の映像表示システムは、モータサイクル用の映像表示システムであり、自車両の後方の映像をライダーに表示する。ここで「モータサイクル」とは、ライダーが跨って騎乗する鞍乗型車両のうちの自動二輪車、自動三輪車又は自動四輪車を意味する。モータサイクルには、エンジンを駆動源とするものと、モータを駆動源とするものとが含まれる。モータサイクルとしては、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が挙げられる。以下では、モータサイクルが自動二輪車である場合について説明する。
【0021】
(映像表示システムの構成)
まず、映像表示システムの構成について説明する。
図1は映像表示システムの構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、映像表示システム10は、撮像装置12、表示装置14、制御装置16、及び操作装置18を備えている。
図1では、各装置を1つずつ図示しているが、撮像装置12、表示装置14、及び操作装置18の各々は、複数設けられていてもよい。
【0022】
撮像装置12は、車体11の後方を撮像する装置である。撮像装置12としては、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等のイメージセンサを備えたデジタルビデオカメラを用いることができる。
【0023】
表示装置14は、車両の後方の映像をライダーに表示する装置である。表示装置14の表示部40(
図4参照)としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、これらディスプレイ上にタッチパネルが重ねられた構成のタッチパネルディスプレイ等のディスプレイを用いることができる。表示装置14は、ライダー前方のライダーが見易い位置に設置されている。
【0024】
表示装置14は、車体11のインストルメントパネルに備え付けられたディスプレイとは異なる、後付けの表示装置である。例えば、
図2に示すように、インストルメントパネルの中央に車両情報を表示するためのメータディスプレイが配置されている場合には、メータディスプレイの近くに表示装置14を配置することができる。表示装置14を配置する際に、ライダーから計器類(例えば、メータディスプレイ)までの距離と、ライダーから表示装置14までの距離とを略同じにすることで、ライダーは焦点合わせがし易くなる。
【0025】
図2(A)では、表示装置14がメータディスプレイの左側に横長配置で取り付けられ、
図2(B)では、表示装置14がメータディスプレイの左側に縦長配置で取り付けられている。
図2(C)では、表示装置14がメータディスプレイの右側に横長配置で取り付けられ、
図2(D)では、表示装置14がメータディスプレイの右側に縦長配置で取り付けられている。なお、ここで右側、左側とは、車両進行方向に対して右側、左側であり、ライダーから見た場合の右側、左側に対応する。
【0026】
表示装置14は、車体11に取り付けられている。表示装置14は、例えば、取り付けたときに向きが固定されるように、向きを変更して取り付け可能であってもよい。また、表示装置14は、取り付け後にも向きを変更することができるように、取り付けた状態で向きが変更可能であってもよい。
【0027】
例えば、
図3に示すようなブラケット15を介して取り付けることで、取り付け後にも表示装置14の向きを変更することができる。ブラケット15は、表示装置14を保持する平板状の保持部100、表示装置14を保持部100に固定する固定部102、保持部100を支持する円筒状の支持部104、及び支持部104を固定する取付部106を備えている。取付部106は、例えばハンドル等に取り付けられる。
【0028】
保持部100の中央には円孔が設けられている。支持部104の端部がこの円孔に嵌め込まれている。これにより、保持部100は、支持部104によって支持部104の周りに回転可能に支持されている。支持部104の端面は、保持部100の保持面から露出している。表示装置14は、取付部106によりブラケット15と共に車体11に取り付けられる。このようなブラケット15によれば、表示装置14を車体11に取り付けた後も、保持部100を回転させることで表示装置14の向きを変更することができる。
【0029】
制御装置16は、表示装置14を制御するために設けられた電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)の制御機能部である。制御装置16は、例えば、シート内部に埋め込むなど、車体11の内部に設置されている。
【0030】
操作装置18は、ライダーが操作入力を行うための装置である。操作装置18としては、ハンドル近傍に取り付けられるハンドルスイッチ等を用いることができる。ハンドルスイッチによれば、走行中にも操作入力を行うことができる。操作装置18は、例えば、左グリップに取り付けることができる。
【0031】
(映像表示システムの電気的構成)
次に、映像表示システム10の電気的な構成について説明する。
図4は映像表示システム10の電気的構成の一例を示すブロック図である。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)30、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)34、及び不揮発性のメモリ36を備えている。ROM32又は不揮発性のメモリ36には、後述する「映像表示プログラム」が予め記憶されている。CPU30は、予め記憶されたプログラムを読み出し、RAM34をワークエリアとしてプログラムを実行する。
【0032】
制御装置16には、撮像装置12、表示装置14、及び操作装置18が、制御装置16との間でデータの授受を行えるように有線又は無線で接続されている。また、各種センサ20、通信部22及び記憶部24も、制御装置16との間でデータの授受を行えるように制御装置16に有線又は無線で接続されている。制御装置16は、各部との間で情報の授受を行って、各部を制御する。
【0033】
センサ20は、車体11の傾きを検知するための傾きセンサ、加速度センサ等である。通信部22は、外部装置28と通信を行うためのインタフェースである。記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)、メモリカード(例えば、SDカード)等の外部記憶装置である。記憶部24には、後述する各種画面の画像データ等が記憶されている。制御装置16は、通信部22及び記憶部24と一緒にケースに収納され、ECUとして車体11の内部に設置されている。
【0034】
表示装置14は、表示部40、操作部42、センサ44、及びスピーカ46などを備えている。表示部40は、映像データに基づいて映像を表示するためのディスプレイである。操作部42は、操作入力を行うためのスイッチやボタンである。センサ44は、例えば加速度センサである。加速度センサは、「表示装置の向きを検知する検知機構」の一例である。スピーカ46は、音声データに基づいて音声を出力する装置である。
【0035】
以上説明した構成は一例であり、他の部材を追加することもでき、一部の部材を省略することもできる。例えば、映像表示システム10は、車両周辺の音声を収集するためのマイク26を備えていてもよい。マイク26は、例えば、図示したように撮像装置12に内蔵されているマイクでもよい。
【0036】
ここで、映像表示システム10の動作を簡単に説明する。
撮像装置12で車両の後方の映像が撮像されて、得られた映像データが制御装置16に出力される。制御装置16は、得られた映像データを表示装置14の取付状態(例えば、向きや左右の別)に応じて処理して表示装置14に出力する。表示装置14は、得られた映像データに基づいて映像を表示する。
【0037】
表示装置14の取付状態は、表示装置14の加速度センサの検知データ等に基づいて自動で決定されてもよく、ライダーが手動で設定してもよい。ライダーによる操作入力は、操作装置18を介して行うことができる外、表示装置14の操作部42を介して行うこともでき、表示装置14の表示部40に表示された操作画面を介して行うこともできる。
【0038】
(制御装置の機能的構成)
次に、制御装置16の機能的な構成について説明する。
図5は制御装置16の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。制御装置16は、取付状態取得部60、撮像映像データ取得部62、表示映像データ生成部64、及び表示制御部66を備えている。これらの各機能部は、後述する「映像表示プログラム」が制御装置16のCPU30によって実行されることで実現される。
【0039】
(映像表示プログラム)
次に、映像表示プログラムについて説明する。
図6は「映像表示プログラム」の処理の流れの一例を示すフローチャートである。映像表示プログラムは、制御装置16のCPU30によって実行され、映像の表示が指示されると開始される。映像を表示する指示は、例えば、操作装置18の操作により行われてもよい。ここでは、ステップS108を除いて、CPU30の動作を、
図5に示す各機能部の動作として説明する。
【0040】
まず、ステップS100で、取付状態取得部60は、表示装置14のセンサ20(加速度センサ)の検知データに基づいて取付状態を取得する。センサ20の検知データでは、表示装置14がメータディスプレイの左右のいずれの側に配置されているかは判別できないため、ここでは左右の別については既知であるものとする。したがって、加速度センサの検知データから、表示装置14が縦長に配置されているか、横長に配置されているかが自動で決定される。
【0041】
次に、ステップS102で、撮像映像データ取得部62は、撮像装置12から映像データを取得する。ここでは、撮像装置12から得られた未処理の映像データを「撮像映像データ」と称する。
【0042】
次に、ステップS104で、表示映像データ生成部64は、「表示映像データの生成処理」を実行する。ここでは、表示装置14に表示させる表示用の映像データを「表示映像データ」と称する。
【0043】
図7に示すように、表示映像データの生成処理では、表示映像データ生成部64は、ステップS200で、表示装置の取付状態に応じて、撮像範囲の一部の領域を表示範囲として切り出すように撮像映像データを画像処理し、続くステップS202で、得られた映像データを、表示範囲の映像を左右反転させるように画像処理して、表示映像データを生成する。反転映像を表示するのは、後方確認用の光学ミラーに映る鏡像と同じ向きである方が、ライダーは後方の状況を把握しやすいからである。なお、ステップS200とステップS202の順序を入れ替え、映像を反転させた後で、一部の領域の切り出しを行ってもよい。
【0044】
図8(A)は、撮像映像データに基づく撮像映像70を示す図である。
図8(B)に示すように、表示装置14が横長配置で取り付けられている場合には、撮像映像70の撮像範囲から横長形状の領域72を切り出して表示範囲とする。撮像装置12は、車両の後方の広い範囲を撮像しているが、ライダーが見たいのは、ライダー自身の真後ろの死角となる領域の辺りである。撮像映像は、死角となる領域が撮像範囲の中央に来るように撮像されている。したがって、撮像範囲の中央部分を保持するように領域72を切り出して表示範囲とする。一部の領域72を切り出して表示することで、ライダーが見たい範囲を大きく表示することができる。
【0045】
一方、
図8(C)に示すように、表示装置14が縦長配置で取り付けられている場合には、撮像映像70の撮像範囲から縦長形状の領域74を切り出して表示範囲とする。一部の領域74を切り出して表示することで、ライダーが見たい範囲を大きく表示することができる。領域74は、領域72と形状が異なるが、領域72と同様に撮像範囲の中央部分を保持するように切り出される。また、領域72と領域74とは、表示映像が略同じ倍率となるように切り出されることが好ましい。例えば、この倍率は、ライダーが距離感を掴みやすいように、表示される像が光学ミラーの鏡像と同様の大きさになる倍率とすることができる。
【0046】
なお、上記の例では、撮像範囲の中央を保持するように表示範囲を切り出すこととしたが、死角となる領域にある物体(後続車両など)を検出し、その物体が中央に表示されるように表示範囲を切り出すようにしてもよい。また、表示映像データの生成処理では、回転補正、歪み補正、色補正、ノイズ除去等、さらに他の画像処理を行うこともできる。
【0047】
図6の説明に戻る。次に、ステップS106で、表示制御部56は、表示映像データを表示装置14に出力して、表示装置14に表示映像データに基づく映像を表示させる。
【0048】
次に、ステップS108で、CPU30は、映像表示を終了するか否かを判断する。例えば、操作装置18の操作により映像表示の終了が指示されると、ステップS108で肯定判定して、ルーチンを終了する。例えば、走行中にライダーから映像表示の終了が指示された場合には、映像表示を終了して、ルーチンも終了する。一方、映像表示を終了しない場合は、ステップS108で否定判定して、ステップS100に戻る。したがって、映像表示の終了が指示されるまで、ステップS100~ステップS108の処理が繰り返し実行される。
【0049】
以上説明した通り、第1の実施形態に係る映像表示システムによれば、以下に示すような様々な効果を得ることができる。
【0050】
(1)撮像装置は車両の後方の広い範囲を撮像しているが、撮像範囲のうちライダーが見たい領域を切り出した映像を、走行中にライダーの前方に配置された表示装置に表示するので、見たい範囲が大きく表示され視認性が向上する。また、ライダーは真後ろの死角となる領域を確認できるようになり、後方確認が容易になる。さらに、後方確認が容易になることから、ライダーの首振り動作を低減することができ、安全性の向上が見込まれる。
【0051】
(2)表示装置の取付状態に応じて撮像範囲から表示領域を切り出すが、取付状態に拘わらず、撮像範囲の中央部分を保持するように表示領域が切り出されるので、ライダーが見たいライダー自身の真後ろの死角となる領域が表示されることになり、表示装置を横長配置及び縦長配置のいずれの状態で取り付けても、後方確認に適した映像を表示することができる。
【0052】
<第2の実施の形態>
第1の実施形態では、表示装置に後方の映像のみを表示する例について説明したが、第2の実施形態では、後方の映像と共に追加画面を表示する例について説明する。また、第1の実施形態では、表示装置の取付状態は自動で決定されたが、第2の実施形態では、表示装置の取付状態をライダー自身が手動で設定する。
【0053】
追加画面としては、例えば、ナビゲーション画面等の特定の情報を表示する画面や、メニュー画面等の操作入力を受け付ける画面などが挙げられえる。ここで、メニュー画面とは、操作・設定する項目を選択するために最初に表示される画面のことである。また、映像表示システム10(
図4参照)をスマートフォン等の外部の情報処理装置と連携させることも想定される。このような場合には、地図アプリ、通話アプリ等、各種アプリケーションプログラムの画面を、追加画面として表示してもよい。
【0054】
第2の実施形態では、表示装置14に表示される映像、映像表示プログラムのサブルーチンとして実行される「表示映像データの生成処理」の流れ、及び表示装置の取付状態の設定方法が、第1の実施形態とは異なっている。このため、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0055】
(取付状態の手動設定)
表示装置14の取付状態の設定は、例えば、表示装置14の表示部40に表示された
図9に示す設定画面84の操作により行われてもよい。メニュー画面80で「取付設定」を選択することで設定画面84に遷移する。設定画面84は、取付状態を選択する選択部86、各種の指示ボタン88等を含んでいる。例えば、
図2(C)に示すように、表示装置14をメータディスプレイの右側に横長配置で取り付ける場合は、「右側横長配置」を選択して設定ボタンを押すと、取付状態の設定が完了する。
【0056】
(追加画面の配置レイアウト)
追加画面は、例えば、
図10に示すように、表示装置14の表示領域90を2つに分割し、映像を表示する映像表示画面92とメニュー画面等の追加画面94とを上下又は左右に並べて表示してもよい。本実施の形態では、表示装置の取付状態に応じて追加画面94の配置レイアウトを決定する。
【0057】
(表示映像データの生成処理)
次に、
図11を参照して、第2の実施形態に係る「表示映像データの生成処理」の流れについて説明する。この処理は、
図6に示す映像表示プログラムのステップS104で実行される。
【0058】
まず、ステップS300で、表示映像データ生成部64は、表示装置の取付状態に応じて追加画面の配置レイアウトを決定する。
【0059】
図12に示す例では、表示装置14が横長配置で取り付けられ、ハンドルを握るライダーの手96(右手96Rと左手96L)が併記されている。例えば、表示装置14が中央パネルの左側に取り付けられる場合、追加画面はグリップに近い左側(実線で囲んだ領域A)に配置される。また、表示装置14が中央パネルの右側に取り付けられる場合、追加画面はグリップに近い右側(実線で囲んだ領域B)に配置される。
【0060】
撮像装置12は車体の中央に配置されているので、表示装置14を車体の中央に配置した方が、ライダーに違和感のない映像を提供することができる。しかしながら、実際には、図示したように表示装置14は車体の中央より外側にずらして配置される。追加画面をグリップに近い側に配置し、映像表示領域を車体の中央側に配置することで、撮像装置12と表示映像の左右方向のオフセット量を低減することができる。
【0061】
また、追加画面が操作画面である場合、追加画面をグリップに近い側に配置することで、ライダーの手96の移動量を低減することができ、操作性が向上する。逆に、追加画面をグリップから遠い側に配置した場合には、操作時にライダーの手96により映像が隠れてしまう可能性がある。
【0062】
図13に示す例では、表示装置14が縦長配置で取り付けられている。この場合も、横長配置の場合と同様の理由で、追加画面はグリップに近い下側(実線で囲んだ領域C)に配置される。
【0063】
ここで、
図11の説明に戻る。次に、ステップS302で、表示映像データ生成部64は、表示装置の取付状態及び映像表示領域の形状に応じて、撮像範囲の一部の領域を表示範囲として切り出すように撮像映像データを画像処理し、続くステップS304で、得られた映像データを、表示範囲の映像を左右反転させるように画像処理する。なお、ステップS302とステップS304の順序を入れ替えてもよい。
【0064】
撮像範囲の中央部分を保持するように表示範囲を切り出す点は、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、追加画面を表示する結果、映像表示領域の形状が変更されるので、映像表示領域の形状に応じて、撮像範囲の中央部分を保持するように表示範囲を切り出す。また、第1の実施形態と同様、死角となる領域にある物体(後続車両など)を検出し、その物体が中央に表示されるように表示範囲を切り出してもよい。
【0065】
次に、ステップS306で、反転処理後の映像データと追加画面の画像データとを合成して、表示映像データを生成して、ルーチンを終了する。
図10に示すように、映像表示画面92と追加画面95とが並べて表示されるように、すなわち、表示範囲の映像と追加画面との合成映像が表示されるように、映像データと追加画面の画像データとが合成される。
【0066】
なお、上記では、表示装置14の取付状態が縦長配置及び横長配置のいずれであっても追加画面94を表示する例について説明したが、例えば、表示装置14の取付状態が横長配置の場合に、映像表示画面92と追加画面94とを表示し、表示装置14の取付状態が縦長配置の場合には、追加画面94は表示せずに映像表示画面92のみを表示するようにしてもよい。逆に、表示装置14の取付状態が縦長配置の場合にだけ、映像表示画面92と追加画面94とを表示するようにしてもよい。
【0067】
また、上記では、表示装置14の表示領域90に映像表示画面92と追加画面94とを並べて表示する例について説明したが、表示装置14の表示領域90の全面に映像を表示し、追加画面94を映像に重畳表示してもよい。この場合も、表示装置の取付状態に応じて追加画面94の配置レイアウト、すなわち、追加画面94を映像の上下又は左右のどの位置に重畳するかを決定する。
【0068】
以上説明した通り、第2の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、後方確認に適した映像を表示しながら、映像と共に追加画面を表示させることができる。また、表示装置の取付状態を手動で設定することができる。手動で設定する場合は、左右の別も含めて表示装置の取付状態を詳細に設定することができる。また、表示装置が加速度センサ等を備えていない場合でも、表示装置の取付状態を設定することができる。
【0069】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、表示装置の加速度センサの検知データに基づいて表示装置の取付状態を自動で決定する例について説明したが、第3の実施形態では、表示装置及びブラケットが表示装置の取付状態を検知するための機構を備えている例について説明する。この機構も、「表示装置の向きを検知する検知機構」の一例である。
【0070】
第3の実施形態では、表示装置の取付状態を検知する方法が第1の実施形態とは異なっている。このため、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0071】
図14に示すように、ブラケット15Aは、保持部100の円孔から露出する支持部104の端部に2つの凸部108が設けられており、表示装置14が保持部100に一旦固定されると保持部100の回転が禁止されるように構成されている。したがって、取り付け後に表示装置14を回転させることはできない。ブラケット15Aは、この2点以外は、
図3に示すブラケット15と同じ構成である。同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。また、第3の実施形態では、表示装置14の裏面には、4つのスイッチボタン110A~110Dが設けられている。
【0072】
この検知機構では、表示装置14がブラケット15Aに取り付けられると、表示装置14の裏面に設けられた4つのスイッチボタン110A~110Dのうちの2つのスイッチボタンが、2つの凸部108によって押されることになる。押されるスイッチボタンは、表示装置14の取付状態によって変わるので、どのスイッチボタンが押されたかによって、表示装置14の取付状態を検知することができる。
【0073】
なお、表示装置14の裏面は、ブラケット15Aの保持部100の保持面と接触する必要があるため、表示装置14の配線は、表示装置14の側面から車体の中央方向に引き出されることが好ましい。
【0074】
図15に示すように、2つの凸部108によって押されるスイッチボタンに三角の印をつける。ここでは、スイッチボタン110A、110Bに着目し、スイッチボタンが押された状態を「オン」、スイッチボタンが押されていない状態を「オフ」とする。
【0075】
図15(A)では、表示装置14がメータディスプレイの左側に横長で配置されている(
図2(A)参照)。この場合、スイッチボタン110A、110Bは共に「オン」の状態となる。
図15(B)では、表示装置14がメータディスプレイの左側に縦長で配置されている(
図2(B)参照)。この場合、スイッチボタン110Aは「オフ」の状態となり、スイッチボタン110Bは「オン」の状態となる
【0076】
図15(C)では、表示装置14がメータディスプレイの右側に横長で配置されている(
図2(C)参照)。この場合、スイッチボタン110A、110Bは共に「オフ」の状態となる。
図15(D)では、表示装置14がメータディスプレイの右側に縦長で配置されている(
図2(D)参照)。この場合、スイッチボタン110Aは「オン」の状態となり、スイッチボタン110Bは「オフ」の状態となる
【0077】
換言すれば、制御装置16は、2つのスイッチボタン110A、110Bのオン/オフ状態の情報を取得し、取得した情報から4つの取付状態のいずれであるかを判定することができる。すなわち、表示装置の取り付け方によってその取付状態が一意に決まるのである。
【0078】
なお、凸部108の数とスイッチボタン110の数の組み合わせは、例示したものに限定される訳ではない。例えば、凸部108が1つの場合は、4つのスイッチボタン110A~110D各々のオン/オフ状態から、4つの取付状態を区別することができる。
【0079】
以上説明した通り、第3の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、表示装置を取り付ける際にその取付状態を機械的な仕組みで検知することができる。例えば、表示装置が加速度センサ等を備えていない場合でも、表示装置の取付状態を自動で決定することができる。
【0080】
<変形例>
なお、上記各実施の形態で説明した映像表示システムの構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0081】
上記の実施形態では、表示装置をインストルメントパネルのメータディスプレイの右側や左側に設置する例について説明したが、表示装置は、メータディスプレイの有無に拘わらず、ライダー前方のライダーが見易い位置に設置されていればよい。例えば、ハンドルに設置してもよく、ミラーの取り付け部に設置してもよく、燃料タンクの上部に設置してもよく、カウル内に設置してもよく、メータディスプレイの上側に設置してもよい。
【0082】
上記の実施形態では、専用の表示装置を設ける例について説明したが、表示装置として、スマートフォンやタブレット等の携帯型の情報処理装置を使用してもよい。この場合に、携帯型の情報処理装置は、インストールされた専用のアプリケーションプログラムを使用して、制御装置であるECUと協働することで各種の処理を実行する。例えば、スマートフォンは、Bluetooth(登録商標)により、通信部22に無線接続され、記憶部24に記憶されている映像データに基づく映像を、画面に表示できる(
図4参照)。
【符号の説明】
【0083】
10・・・映像表示システム、11・・・車体、12・・・撮像装置、14・・・表示装置、16・・・制御装置、18・・・操作装置