(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091183
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】固定体、及び、固定構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
E04B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207691
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】池場 賢次
(57)【要約】
【課題】様々な大きさの天井下地材に取り付け可能な固定体を提供する。
【解決手段】
上部の両側面に突出した係止凸部102,103を備える天井下地材100に取り付けられて用いられる固定体10であって、係止凸部102,103の上面に載置可能な載置部22を有し、天井下地材100の一方の側面側に配置可能な本体20と、天井下地材100の他方の側面側で係止凸部103に下方から当接可能な当接部42を有し、載置部22と当接部42との上下方向の相対位置を変更した複数の位置で本体20に取付可能である可動40体と、を備える。可動体40は、係止凸部102,103の上面よりも上方で固定部材50により本体20に取り付けられており、載置部22により係止凸部102,103の上面に固定部材50が通過可能な空間が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の両側面に突出した係止凸部を備える天井下地材に取り付けられて用いられる固定体であって、
前記係止凸部の上面に載置可能な載置部を有し、前記天井下地材の一方の側面側に配置される本体と、
前記天井下地材の他方の側面側で前記係止凸部に下方から当接可能な当接部を有し、前記載置部と前記当接部との上下方向の相対位置を変更した複数の位置で前記本体に取付可能である可動体と、を備える固定体。
【請求項2】
前記係止凸部の上面よりも上方で、前記可動体が前記本体に取り付けられる、請求項1に記載の固定体。
【請求項3】
前記本体と前記可動体とは、前記本体と前記可動体との少なくとも一方を貫通する固定部材により取り付けられており、
前記載置部により前記係止凸部の上面に前記固定部材が通過可能な空間が形成されている、請求項2に記載の固定体。
【請求項4】
前記本体と前記可動体との少なくとも一方には、前記固定部材が貫通可能である上下方向に延びる孔が設けられている、請求項3に記載の固定体。
【請求項5】
前記本体は、前記載置部の上方に、上下方向に延びる棒状の部材を取付可能な取付部を備え、
前記取付部に取り付けられた前記棒状の部材の軸心は、前記係止凸部の上方に位置し、
前記棒状の部材は、前記本体に対する前記可動体の傾動を阻害しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の固定体。
【請求項6】
一対の請求項3に記載の固定体が、離間して平行に配置された一対の天井下地材にそれぞれ取付られており、
前記本体及び前記可動体を貫通する前記固定部材は、一対の前記固定体の対向方向とは反対の方向へ向けて、それぞれの前記固定体を構成する前記本体及び前記可動体を貫通している、固定体による天井下地材の固定構造。
【請求項7】
前記本体は、前記載置部の上方に、上下方向に延びる棒状の部材を取付可能な取付部を備え、
前記取付部に取り付けられた前記棒状の部材の軸心は、前記天井下地材の中心よりも、前記固定体の対向方向とは反対の方向に偏っている、請求項6に記載の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井下地材に取り付けられて用いられる固定体、及び、その固定体を固定するための固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井下地材を天井から吊下げるうえで、天井下地材に固定用の金具である固定体を取り付け、その固定体を介して天井から吊下げることが行われている。このような固定体として、特許文献1に記載の固定体がある。特許文献1に記載の固定体は、天井下地材に設けられている係止凸部を上下方向から挟持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の固定体では、固定体の大きさと天井下地材の係止凸部の上下幅が異なれば、天井下地材に固定体を取り付けることができない。すなわち、天井下地材の係止凸部の大きさに対応する固定体を使用する必要が生ずるため、天井下地材の施工の際には、様々な形状の固定体を予め用意しておく必要が生ずる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、様々な形状の大きさの天井下地材に対して取り付け可能な固定体、及び、その固定体を用いる固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の構成は、上部の両側面に突出した係止凸部を備える天井下地材に取り付けられて用いられる固定体であって、前記係止凸部の上面に載置可能な載置部を有し、前記天井下地材の一方の側面側に配置される本体と、前記天井下地材の他方の側面側で前記係止凸部に下方から当接可能な当接部を有し、前記載置部と前記当接部との上下方向の相対位置を変更した複数の位置で前記本体に取付可能である可動体と、を備える。
【0007】
第1の構成では、本体の載置部が係止凸部の上面に載置され、本体とは別体として設けられている可動体の当接部が係止凸部に下方から当接するうえ、載置部と当接部との相対位置を変更することが可能であるため、係止凸部の上下幅が異なる天井下地材に対しても同一の固定体により取り付けることができる。
【0008】
第2の構成は、第1の構成に加えて、前記係止凸部の上面よりも上方で、前記可動体が前記本体に取り付けられる。
【0009】
第2の構成では、固定体を本体に取り付けるために必要な構造を天井下地材に設ける必要が無いため、天井下地材に加工することなく固定体を取り付けることができる。
【0010】
第3の構成は、第2の構成に加えて、前記本体と前記可動体とは、前記本体と前記可動体との少なくとも一方を貫通する固定部材により取り付けられており、前記載置部により前記係止凸部の上面に前記固定部材が通過可能な空間が形成されている。
【0011】
第3の構成では、載置部により固定部材が通過可能な空間が形成されているため、固定部材を通過させるための空間を形成するための構造を別途用意する必要が無く、本体の形状を簡素化することができる。
【0012】
第4の構成は、第3の構成に加えて、前記本体と前記可動体との少なくとも一方には、前記固定部材が貫通可能である上下方向に延びる孔が設けられている。
【0013】
第4の構成では、本体と可動体との相対位置を無段階で変更することが可能であり、様々な幅の係止凸部に対して取り付けることができる。
【0014】
第5の構成は、第1~4のいずれかの構成に加えて、前記本体は、前記載置部の上方に、上下方向に延びる棒状の部材を取付可能な前記取付部を備え、前記取付部に取り付けられた前記棒状の部材の軸心は、前記係止凸部の上方に位置し、前記棒状の部材は、前記本体に対する前記可動体の傾動を阻害しない。
【0015】
第5の構成では、棒状の部材の軸心が係止凸部の上方に位置するため、固定体が取り付けられた天井下地材の安定性を向上させることができるうえ、本体を傾動させることなく可動部を傾動させて天井下地材に固定体を取り付けることができる。
【0016】
第6の構成は、固定体のよる天井下地材の固定構造であって、一対の第3の構成の固定体が、離間して平行に配置された一対の天井下地材にそれぞれ取付られており、前記本体及び前記可動体を貫通する前記固定部材は、一対の前記固定体の対向方向とは反対の方向へ向けて、それぞれの前記固定体を構成する前記本体及び前記可動体を貫通している。
【0017】
第6の構成では、一対の固定体の間に固定部材の先端が突出しないため、一対の天井下地材の間に延在するように天井を施工することができる。
【0018】
第7の構成は、第6の構成に加えて、前記本体は、前記載置部の上方に、上下方向に延びる棒状の部材を取付可能な取付部を備え、前記取付部に取り付けられた前記棒状の部材の軸心は、前記天井下地材の中心よりも、前記固定体の対向方向とは反対の方向に偏っている。
【0019】
第7の構成では、一対の天井下地材間に設置する天井板と、棒状の部材及びその棒状の部材に取り付けられる部材等との干渉を回避できる。特に、天井板の一方の端部を一方の天井下地材に乗せた状態で、他方の端部を他方の天井下地材に向けて傾動させた際に、その傾動領域内へ棒状の部材等が突出しないように位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】天井下地材に固定体が固定された状態の正面図である。
【
図2】天井下地材に固定体が固定された状態の背面図である。
【
図3】天井下地材に固定体が固定された状態の側面図である。
【
図16】一対の天井下地材のそれぞれに固定体を固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
本実施形態に係る固定体10は、
図1~3に示すように、吊り天井を構成する天井下地材100に固定されて使用され、その天井下地材100を介して機器等を取り付ける際に用いられるものである。まず、その天井下地材100について図面を参照して説明する。
【0022】
天井下地材100は、天地の方向に立設し、その天地の方向に直交する第1の方向へ向けて延び、天地の方向及び第1の方向に直交する第2の方向へ所定の厚みを有する長尺板状の部材である。以下の説明において、天地の方向を上下方向、第1の方向を左右方向、第2の方向を前後方向と称するものとする。
【0023】
天井下地材100は、上下方向に立設し、左右方向に延び、前後方向の厚みが均一である基部101を備えており、基部101の上端側には、前後方向のそれぞれに突出している係止凸部102,103が設けられている。この係止凸部102,103について、基部101から前方へ突出している側を前側係止凸部102と称し、基部101から後方へ突出している側を後側係止凸部103と称する。この前側係止凸部102と後側係止凸部103の形状は前後対称である。これら前側係止凸部102及び後側係止凸部103の上下幅は等しく、且つ、左右方向において均一となっている。また、前側係止凸部102の基部101からの突出量と後側係止凸部103の基部101からの突出量は等しく、且つ、その突出量は前後左右方向で均一である。また、基部101の下端側には、前後方向のそれぞれに突出している前側下方凸部104及び後側下方凸部105が設けられている。これら前側下方凸部104と後側下方凸部105の間には、左右方向に延びる内部空間106が設けられており、その内部空間106を利用して、天井下地材100から他の部材を吊り下げることが可能である。
【0024】
以上のように構成される天井下地材100に対して、本実施形態に係る固定体10が取り付けられる。固定体10は、本体20と、その本体20に取り付けられる可動体40とにより構成されている。以下の説明において、本体20が天井下地材100の前方から組付けられ、可動体40が天井下地材100の後方から組付けられるものとする。なお、天井下地材100は前後対称の形状であるため、本体20を天井下地材100の後方から組付け、可動体40を天井下地材100の前方から組付けることも可能である。
【0025】
まず、本体20の形状について、
図4~9を参照して説明する。本体20は、厚みが均一である略正方形板状の本体基部21を備えており、この本体基部21の左右の端部のそれぞれには、後方へ向けて垂直に延びるように設けられた載置部22,23が設けられている。この載置部22,23の形状は等しく、側面視にて略正方形であり、載置部22,23の上下方向の位置も互いに等しい。また、載置部22,23の前後幅は、天井下地材100の前側係止凸部102の前端から後側係止凸部103の後端までの幅よりもやや大きい。
【0026】
本体基部21の下端には後方へ向けて垂直に突出するように、係合部24が設けられている。この係合部24は上下方向に均一な厚みを有する平板状であり、上面には前後左右に水平な平面を有しており、左右幅は本体基部21の左右幅と略等しい。また、係合部24の前後幅は略均一であり、本体基部21の後端から係合部24の後端までの幅は、天井下地材100の前側係止凸部102の前端から基部101の前端までの幅よりもやや小さい。
【0027】
係合部24の後端には、下方へ向けて垂直に立設するように、本体下端部25が設けられている。この本体下端部25は前後方向に均一な厚みを有する平板状であり、背面には上下左右方向に水平な平面を有している。また、本体下端部25の左右幅は本体基部21及び係合部24の左右幅と略等しく、本体下端部25の上下幅は略均一である
【0028】
本体基部21の右端近傍には、本体基部21を前後方向に貫通する孔である第1貫通孔26が設けられている。この第1貫通孔26は、正面視にて上下方向に延びる長円形であり、第1貫通孔26の左右端を構成する直線は、本体基部21の左右端と平行な直線である。また、第1貫通孔26の上下方向の中央の位置は、本体基部21の上下方向の中央と略等しく、第1貫通孔26の上端の位置は載置部22,23の上端の位置よりも下方であり、第1貫通孔26の下端の位置は載置部22,23の下端の位置と略等しい。
【0029】
本体基部21の第1貫通孔26の左側には、本体基部21を前後方向に貫通する孔である第2貫通孔27が設けられている。この第2貫通孔27は、正面にて左右方向に延びる長方形であり、上端は本体基部21の上端まで至っており、下端は載置部22,23の上端の位置と略等しい。また、第2貫通孔27の右端は、本体基部21の左右方向の中央よりも右側であり、且つ、第1貫通孔26よりも左側に位置している。
【0030】
本体基部21の上端には、後方へ向けて水平に突出する、取付部31が設けられている。取付部31は、厚みが略均一な板であり、前後方向の幅は、天井下地材100の前側係止凸部102の前端から後側係止凸部103の後端までの幅よりも大きい。この取付部31には、上下方向に貫通する円形の孔である取付孔32が設けられている。取付孔32の中心の位置は、前後方向において取付部31の前後方向の中心線上に位置し、左右方向においては、第2貫通孔27の左右方向における中心の位置と略等しい。また、取付孔32の内周面には、螺旋状の雌ネジ(図示略)が形成されている。
【0031】
取付部31の背面側の端部には、上方へ向けて立設する係止部33が設けられている。この係止部33は、厚みが略均一であり、左右幅は上下方向において略均一であり、係止部33の右端は取付部31の右端と一致しており、係止部33の左端は取付孔32までは至らないように設けられている。この係止部33には、上方から下方へ向けて凹んだ係止凹部34が設けられている。この係止凹部34は、取付部31の上端面の近傍に至るまで設けられており、係止凹部34の左右幅は、上下方向において略均一である。
【0032】
続いて、可動体40の形状について、
図10~15を参照して説明する。可動体40は、厚みが均一であり、上下方向を長軸とする略長方形板状の可動体基部41を備えている。この可動体基部41の上下幅は、本体20の本体基部21の上下幅と略等しく、可動体基部41の左右幅は、本体基部21の左右幅よりも小さく、可動体基部41の前後方向の厚みは本体基部21の前後方向の厚みと略等しい。
【0033】
可動体基部41の下端には前方へ向けて垂直に突出するように、当接部42が設けられている。この当接部42は上下方向に均一な厚みを有する平板状であり、上面には前後左右に水平な平面を有しており、左右幅は可動体基部41の左右幅と略等しい。また、当接部42の前後幅は略均一であり、可動体基部41の後端から当接部42の後端までの幅は、天井下地材100の後側係止凸部103の後端から基部101の後端までの幅よりも大きい。
【0034】
当接部42の前端には、下方へ向けて垂直に立設するように、可動体下端部43が設けられている。この可動体下端部43は前後方向に均一な厚みを有する平板状であり、正面には上下左右方向に水平な平面を有している。また、可動体下端部43の左右幅は可動体基部41及び当接部42の左右幅と略等しく、可動体下端部43の上下幅は略均一である
【0035】
可動体基部41の右端近傍には、可動体基部41を前後方向に貫通する円形の孔である第3貫通孔44が設けられている。第3貫通孔44の上下方向における中心の位置は、可動体基部41の上下方向の中央と略等しく、第3貫通孔44の左右方向における中心の位置の、可動体基部41の右端からの離間量は、本体20における第1貫通孔26の本体基部21の右端からの離間量と略等しい。また、この第3貫通孔44の内周面には、螺旋状の雌ネジ(図示略)が形成されている。
【0036】
可動体基部41の上端には、上方へ向けて立設する板状の立設部45が設けられている。この立設部45の左右幅は可動体基部41の左右幅よりも小さく、立設部45の厚みは可動体基部41の厚みと等しい。立設部45の上端には、前方へ向けて垂直に突出するように、組付部46が設けられている。この組付部46は上下方向の厚みが略均一であり、左右幅は、本体20の係止部33に設けられている係止凹部34の左右幅と略等しい。また、この組付部46の前端には、係止凹部34の左右幅よりも広く拡幅されている拡幅部47が設けられている。
【0037】
以上のように構成されている本体20及び可動体40を有する固定体10の、天井下地材100への取り付け方法について、再び
図1~3を参照して説明する。まず、雄ネジが外周面に形成されている棒状の部材であるボルト60に予めナット61を螺着しておき、そのボルト60を本体20に設けられている取付孔32にねじ込む。そして、ナット61を下方へ向けて回動させて本体20の取付部31へ密接させることで、ボルト60及びナット61を本体に固定する。続いて、本体20に対する可動体40の仮組付けを行う。具体的には、本体20の背面と可動体40の正面とが対向するように、本体20の係止凹部36の上方から可動体40の組付部46を嵌め込んだ状態で、ビス50を本体20の正面側から第1貫通孔26に挿入し、可動体40の第3貫通孔44にねじ込む。このとき、本体下端部25と可動体下端部43との間には隙間を設けておき、ビス50による仮止めがなされた状態としておく。
【0038】
続いて、可動体40を上方へ向けて傾動させ、本体下端部25と可動体下端部43との隙間を広げる。このとき、ビス50は本体20の第1貫通孔26を上下方向で傾いた状態で貫通することとなるが、第1貫通孔26は上下方向に延びる長孔であるため、それが可能である。また、可動体40を傾動させたとしても、ボルト60及びナット61は本体20に取り付けられているため、ボルト60及びナット61は可動体40の傾動に追従しないし、ボルト60及びナット61は可動体40の立設部45よりも左方に位置しているため、可動体40の傾動を阻害しない。この状態で、本体20と可動体40との間に天井下地材100の前側係止凸部102と後側係止凸部103を位置させ、ビス50を第3貫通孔44にさらに螺入することで、固定体10は天井下地材100に取り付けられる。
【0039】
以上のようにして固定体10が天井下地材100に取り付けられれば、本体20の載置部22,23の下端は天井下地材100の上端に載置され、本体20の本体基部21の背面は、前側係止凸部102の正面と対向又は当接し、本体下端部25の背面は、天井下地材100の基部101と対向又は当接する。また、本体20の載置部22,23の下端から係合部24の上端までの間隔が前側係止凸部102の上下幅と略等しければ、係合部24の上面は前側係止凸部102の底面と当接し、本体20の載置部22,23の下端から係合部24の上端までの間隔が前側係止凸部102の上下幅よりも大きければ、係合部24の上面は前側係止凸部102の底面と間隔を空けて対向する。
【0040】
固定体10が天井下地材100に取り付けられた状態において、可動体40の当接部42は、天井下地材100の後側係止凸部103の底面に当接する。また、本体20の係合部24が前側係止凸部102の底面に当接していれば、可動体40の当接部42が後側係止凸部103の底面に当接しつつ、可動体40の組付部46の下面が、本体の係止凹部36の底に当接する。一方、本体20の係合部24が前側係止凸部102の底面と間隔を空けて対向していれば、可動体40の当接部42が後側係止凸部103の底面に当接しつつ、可動体40の組付部46の下面が、本体の係止凹部36の底と間隔を空けて対向する。このとき、本体20の取付孔32に取り付けられているボルト60の中心は、天井下地材100の前後方向における中心よりも前方に偏って位置している。また、本体20と可動体40とを貫通するビス50は、天井下地材100の上面と本体20の取付部31の底面とにより上下方向が規定され、本体20の載置部22,23により左右方向が規定される空間を通過している。
【0041】
以上のように構成される固定体10を、設置された一対の天井下地材100に固定する場合について、
図16を参照して説明する。この場合には、一対の天井下地材100が前後方向で対向するようにして、建築物の基礎天井から吊下げられた状態で設置されており、二重天井を構成している。固定体10を支持する一対のボルト60の上端側には、レール200が予め公知の手段(図示略)により、天井下地材100の間隔と同等の間隔を空けて取り付けられている。
【0042】
上述したとおり、まず、ナット61を用いて、固定体10の本体20に対してボルト60を取り付ける。このとき、本体20の正面どうしが対向するように本体20にボルト60を取り付ける。続いて、本体20に可動体40を組付けたうえで、ビス50により仮止めを行う。このとき、可動体40は本体20どうしが対向している側とは反対の側にそれぞれ取り付けられる。ビス50は、本体20のそれぞれの対向している側から第1貫通孔26へ挿入され、対向している側とは反対の側に配置されている可動体40の第3貫通孔44へ螺入され、ビス50の先端は、対向している側とは反対の側から突出することとなる。そして、上述したように本体20と可動体40との間に天井下地材100を配置したうえでビス50をさらにねじ込むことで、固定体10が天井下地材100に取り付けられる。なお、このようにして一対の固定体10が取り付けられた一対の天井下地材100を纏めて、固定体10による天井下地材100の固定構造と称することができる。
【0043】
なお、図示した例では、一対の天井下地材100を利用してひとつのレール200を設置する例を示しているが、平行に設けられた3以上の天井下地材100を利用して、ひとつのレール200を設置するようにしてもよい。また、一対の天井下地材100を利用して、複数のレール200を設置するようにしてもよい。
【0044】
以上のようにして一対の天井下地材100に固定した固定体10によりレール200を一対の天井下地材100の上方で支持する構造が形成されれば、そのレール200を利用して、各種機器を吊り下げるように施工したりすることができる。
【0045】
上記構成により、本実施形態に係る固定体及びその固定体を用いる固定構造は、以下の効果を奏する。
【0046】
・本体20の載置部22,23が天井下地材100の係止凸部102,103の上面に載置され、本体20とは別体として設けられている可動体40の当接部42が係止凸部102,103に下方から当接するうえ、載置部22,23と当接部42との上下方向の相対位置を変更することが可能であるため、係止凸部102,103の上下幅が異なる天井下地材100に対しても同一の固定体10により取り付けることができる。
【0047】
・本体20の載置部22,23の下端よりも上方に第1貫通孔26が設けられているため、本体20に対して可動体40を取り付けるために用いるビス50は、天井下地材100の上方を通過することになる。したがって、ビスが通過するための構造を天井下地材100に設ける必要が無いため、天井下地材100に加工することなく固定体10を取り付けることができる。
【0048】
・載置部22,23によりビス50が通過可能な空間が形成されているため、ビス50を通過させるための空間を形成するための構造を別途用意する必要が無く、本体の形状を簡素化することができる。
【0049】
・本体20に設けた長孔である第1貫通孔26を用いて載置部22,23の下端と当接部42の上端との間隔を調節するものであるため、本体と可動体との相対位置を無段階で変更することが可能であり、様々な幅の係止凸部に対して取り付けることができる。
【0050】
・ボルト60の軸心が係止凸部102,103の上方に位置するため、固定体10が取り付けられた天井下地材100の安定性を向上させることができる
【0051】
・可動体40を傾動させて本体20と可動体40との間に天井下地材100を位置させるうえで、ボルト60及びナット61は可動体40の傾動を阻害することがないため、天井下地材100を施工するうえでの作業効率を向上させることができる。
【0052】
・一対の固定体10を利用して一対の天井下地材100の上方にレール200を設置するうえで、ビス50を固定体10が対向する側とは反対の側へ向けてねじ込むため、ビス50の先端が天井下地材100の間に突出せず、一対の天井下地材100の間に延在するように天井を施工する際に、その天井とビス50との干渉を防ぐことができる。
【0053】
・一対の天井下地材100を利用して天井下地材100の上方にレール200を設置するうえで、ボルト60の軸心が天井下地材100の中心よりも本体20の側に偏っているため、ボルト60及びナット61は、一対の天井下地材100の対向方向とは反対側に偏って位置することとなる。これにより、一対の天井下地材100間に設置する天井板と、ボルト60及びナット61との干渉を回避できる。特に、天井板の一方の端部を一方の天井下地材100に乗せた状態で、他方の端部を他方の天井下地材100に向けて傾動させた際に、その傾動領域内へボルト60及びナット61が突出しないように位置させることができる。
【0054】
<変形例>
・実施形態において本体20が係合部24を備えるものとしているが、係合部は必ずしも必須の構成ではない。本体20に係合部24が設けられていない場合においても、天井下地材100の係止凸部102,103には可動体の当接部42が下方から当接可能であるため、載置部22,23と当接部42とにより係止凸部102,103を挟持することが可能である。
【0055】
・実施形態では、本体20と固定体40とを別体として設けられているビス50を用いて取り付けるものとしているが、本体20及び固定体40の一方にネジを予め形成しておき、他方にはそのネジが貫通する長孔を形成し、その長孔を貫通したネジをナットにより固定するものとしてもよい。この場合には、本体20及び固定体40の一方が固定部材を備えているということができる。
【0056】
・実施形態では、本体20に上下方向に延びる長孔である第1貫通孔26を設け、可動部材40に第1貫通孔26を貫通したビス50をねじ込み可能な第3貫通孔42を設けるものとしているが、可動部材40に設けられる孔を長孔としてもよい。また、本体20及び可動部材40に設けられる孔を両方とも長孔とし、その長孔を貫通したビス50をナットにより固定するものとしてもよい。
【0057】
・実施形態では、第1貫通孔26を長孔とすることで本体20と可動体40との上下方向の相対位置を可変としているが、第1貫通孔26を上下方向に並ぶように設けられた複数の円形の孔により構成するものとし、その円形の孔のいずれかを選択してビスを挿入することにより、本体20と可動体40との相対位置を変更するものとしてもよい。
【0058】
・実施形態では、本体20の取付部31に設けられた取付孔32にボルト60を挿入してナット61で固定しているが、本体20を上方から吊下げるための手段はこれに限られず、様々な公知の方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0059】
固定体…10、本体…20、本体基部…21、載置部…22,23、係合部…24、第1貫通孔…26、取付部…31、取付孔…32、可動体…40、可動体基部…41、当接部…42、第3貫通孔…44、ビス…50、ボルト…60、ナット…61、天井下地材…100、基部…101、前側係止凸部…102、後側係止凸部…103、レール…200