(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091194
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 2/86 20060101AFI20240627BHJP
C07C 15/52 20060101ALI20240627BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
C07C2/86
C07C15/52
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022212938
(22)【出願日】2022-12-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(72)【発明者】
【氏名】大高 敦
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智哉
(72)【発明者】
【氏名】五丁 龍志
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC23
4H006BA25
4H006BA32
4H039CA41
4H039CD10
(57)【要約】
【課題】1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの既存合成方法は、高温での反応(約120℃以上)が必要とされてきたため、より緩和条件での合成を達成する。また、構造的に均質な1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの組成物を調製する。
【解決手段】ジフェニルアセチレンとアリールボロン酸とを、塩基性条件下で、II価パラジウム触媒とアニオン交換が可能な銀塩の共存下で反応させる製造方法及びかかる製造方法により調製されるヘキサアリール-1,3-ブタジエンの組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェニルアセチレンとアリールボロン酸とを、II価パラジウム触媒存在下で反応させる1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法であって、
反応を塩基性条件下で
かつ、
アニオン交換が可能な銀塩の共存下で行うことを特徴とする1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項2】
該「アニオン交換が可能な銀塩」の反応系における量が、ジフェニルアセチレンに対して3~5当量であることを特徴とする請求項1記載の1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項3】
ジフェニルアセチレンとアリールボロン酸とを、塩基性条件下においてII価パラジウム触媒及びアニオン交換が可能な銀塩の共存下で反応させて得られる1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの新規合成方法及びかかる方法により得られる組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの合成方法としては、非特許文献1、非特許文献3に記載されている方法が知られているが、いずれも反応条件が厳格条件下での合成方法であった。1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンは、蛍光発光特性を有しており(非特許文献1、非特許文献2)、例えば生体マーカーなどの活用用途が期待されている。
非特許文献3には、金属触媒を用いた合成法が記載されているが、金属触媒を用いても反応温度で120℃であり、触媒反応により効率的に合成できている状況ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Org.Chem.2014,79,11787.:Bunz,U.H.F.et.al.
【0004】
【非特許文献2】Organometallics 1995,14,5605.:Amatore,C.;Jutand,C.A et.al.
【0005】
【非特許文献3】Adv.Synth.Catal.2008,350,509.:Satoh,T.;Miura,M.et.al
【0006】
【非特許文献4】Macromolecules 2016,49,5817-5830:Yajing Liu et.al.
【0007】
【非特許文献5】Chem Commun.2014,50.12058-12060
【0008】
【非特許文献6】J.Name,.2013,00,1-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの合成においては、従来ではアルキンの挿入段階が進行しづらいため高温条件が必要とされていた(例えば、非特許文献3:120℃、140℃)。室温のような緩和条件での合成が達成されておらず、合成に際しては過反応が起こりやすい環境での合成しか達成できていなかった。特に1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンのように複雑な構造を有する化合物では、立体構造が異なる異性体が生じ、高純度の均質な立体構造を有する最終生成物を得づらく、高純度の化合物の合成の問題が存在する。
【0010】
また、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの合成は、リチウム試薬を用いてブロモトリアリルエチレンから合成する方法も知られているが(非特許文献4)、かかる方法においては原料のブロモトリアリルエチレンの調製が困難であること、及びリチウム試薬の反応性の高さから副反応が起こり、収率の上限が上がらないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの合成に際し、合成反応を塩基性条件下、硝酸銀を共存させることで、触媒であるII価パラジウム触媒存在の反応効率が上がることを見いだした。また、かかる反応系により合成される1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンは、反応時に緩和な温度条件で合成が可能となったため、立体構造が均質な組成物状態であると考えられる。
【0012】
すなわち、より具体的には、上記課題は下記により解決される。
【0013】
(1)
ジフェニルアセチレンとアリールボロン酸とを、II価パラジウム触媒存在下で反応させる1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法であって、
反応を塩基性条件下で
かつ、
アニオン交換が可能な銀塩の共存下で行うことを特徴とする1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法。
【0014】
(2)
(1)記載の方法において、該「アニオン交換が可能な銀塩」の反応系における量が、ジフェニルアセチレンに対して3~5当量であることを特徴とする1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法。
【0015】
(3)
ジフェニルアセチレンとアリールボロン酸とを、塩基性条件下においてII価パラジウム触媒及びアニオン交換が可能な銀塩の共存下で反応させて得られる1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンを含む組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンを、80℃以下の緩和条件下で合成することが可能となった。その結果、過反応が減り、生産費用の削減にも繋がり、経済的にも温和に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態により、本発明をより具体的に詳説する。
【0018】
(1)本発明製造方法
本発明製造方法は、ジフェニルアセチレンとアリールボロン酸とを、II価パラジウム触媒存在下で反応させる1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法であって、
反応を塩基性条件下で
かつ、
アニオン交換が可能な銀塩の共存下で行うことを特徴とする1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの製造方法である。
【0019】
本発明製造方法は、試験管、スクリュー管、ビーカー、工業生産用の反応槽など、一般的な安定した反応環境において実施することができる。小規模の合成に際しては、反応系の容量を1~5mlで実施することが一般的であるが、この限りではない。反応溶媒は、それ自体は本発明製造方法においては反応基質とはならない。かかる溶媒としては、有機溶媒と水の混合溶媒が好ましい。有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、プロパノールなどがあげられるが、配位性があるDMFが以下に記載するカチオン性II価パラジウム触媒の安定性に優れるため好ましい。
【0020】
かかる有機溶媒と水との混合溶媒の比率は、有機溶媒:水が3:1~14:1程度が好ましく、4:1~12:1程度がより好ましい。
【0021】
ジフェニルアセチレンとは、CAS番号501-65-5、C14H10で表される分子量178.23のアルキンであり、アセチレンの両端にフェニル基を2つ結合した構造を有する。一般に市販の高純度精製品であれば使用することができる。
【0022】
アリールボロン酸とは、下記化学式1で表される構造を有する化合物である。Rは側鎖を表し、例えば、H,4-CH3,4-CH3O,4-Cl,4-CHO,4-CF3,2-CH3,4-NO3,2,6-ジメチルを側鎖に有する化合物であれば、本発明製造方法に使用することが可能であり、その中でもH,4-CH3,4-CH3O,4-Cl,4-CHO,4-CF3,2-CH3が好ましい。芳香環におけるRの位置は、オルト、メタ、パラのいずれの異性体であっても使用することは可能であるが、上述の化合物群の中で、特に4-CH3である4-メチルフェニルボロン酸が好ましい。
【0023】
【0024】
4-メチルフェニルボロン酸とは、CAS番号5720-05-8、C7H9BO2で表される分子量135.96の化合物であり、4-メチルベンゼンボロン酸、p-トリルボロン酸とも呼ばれる物質である。一般に市販の高純度精製品であれば、本発明製造方法に使用することが可能である。
【0025】
アリールボロン酸の添加量は、ジフェニルアセチレンに対して1~3当量であることが好ましく、1.5~2当量であることがより好ましい。
【0026】
本発明製造方法においては、反応系におけるII価パラジウム触媒は炭素-炭素カップリング反応を触媒する機能を有することが必要である。かかる触媒は金属触媒、特にII価パラジウム(白金)触媒が好ましい。本発明製造方法においては、II価パラジウム触媒が反応系において錯体を生ずることが必要となる。かかるII価パラジウム触媒としては、例えば、塩化パラジウム(PdCl2)、臭化パラジウム(PdBr2)、酢酸パラジウム(CAS番号3375-31-3、(CH3COO)2Pd)、分子量224.51)が挙げられるが、特に酢酸パラジウムが好ましい。
【0027】
かかるII価パラジウム触媒の反応系における添加量は、ジフェニルアセチレンに対して1~4mol%であることが好ましく、2~3mol%であることがより好ましい。
【0028】
本発明製造方法においては、かかるII価パラジウム触媒の機能時において生成する中間体をカチオン性とすることが必要であり、II価パラジウム触がアニオン交換によってカチオン性錯体(上述の好ましい触媒であるパラジウム触媒を使用する場合にはカチオン性II価パラジウム種)を生じさせる際にアリールボロン酸と効率的に反応することから塩基性条件での反応が好ましい。
【0029】
本発明製造方法における反応系の塩基性条件としては、反応系に炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、リン酸カリウム(K3PO4)、水酸化カリウム(KOH)などを添加することで、反応系を塩基性条件とすることができる。その中でも特に炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、水酸化カリウム(KOH)を使用することが好ましく、特に炭酸カリウム(K2CO3)が好ましい。炭酸カリウムの濃度としては、ジフェニルアセチレンに対して1~5当量であることが好ましく、2~4当量であることがより好ましい。
【0030】
本発明製造方法における「アニオン交換が可能な銀塩」としては、トリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)、酢酸銀(AgOAc)、トリフルオロ酢酸銀(AgTFA)、テトラフルオロホウ酸銀(AgBF4)、ヘキサフルオロリン酸銀(AgPF6)、硝酸銀(AgNO3)などがあげられ、市販の精製品をいずれも使用することが可能である。その中でも硝酸銀が最も使用しやすさの面から好ましいが、これに限定はされない。かかる銀塩は、また反応後に0価となったパラジウム触媒を再酸化してII価パラジウム触媒に戻す役割を担う。
【0031】
本発明製造方法においては、再酸化剤としては上記銀塩に限られず、酸素なども添加することで再酸化剤として使用することも可能であるが、反応の安定性の面から上記「アニオン交換が可能な銀塩」をそのまま再酸化剤として機能させることが好ましい。
【0032】
「アニオン交換が可能な銀塩」の反応系への添加量は、上記再酸化剤としての役割も担わせる場合には、ジフェニルアセチレンに対して2~5当量であることが好ましく、2.5~4当量であることがより好ましい。
【0033】
本発明製造方法における反応の仕組みは、金属触媒とアリルボロン酸および銀塩との反応によりこちらのカチオン性II価パラジウム種が生成した後、アルキンの挿入が2度起こり、中間体となると考えられる。かかる過程において塩基性条件下では、カチオン性II価パラジウム種の生成が効率的に起こると考えられる。また、アルキンの挿入反応が、カチオン性II価パラジウム種により極めて効率的に進められる結果、緩和な温度条件での反応進行が起こると考えられる。
【0034】
その後、もう一度アリルボロン酸とのトランスメタル化、還元的脱離により生成物が得られ、副生する0価パラジウム種は、銀塩によりII価に再酸化されサイクルが完結すると考えられる。
【0035】
本発明製造方法により調製した1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3ブタジエンは、生体マーカとしての用途が考えられる。高純度の1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3ブタジエンは芳香環が同一平面上に整列している立体項王を有しているため紫外線照射により光環化することで重合してポリマーにすることができる。かかるポリマー化した化合物を、例えば非特許文献5、非特許文献6記載の方法によりマーカとすることで、癌細胞と正常細胞の識別として癌細胞の膜電位に応じて選択的に染色すると蛍光マーカとして利用できることが可能である。
【0036】
(2)本発明組成物
本発明組成物は、ジフェニルアセチレンとアリールボロン酸とを、塩基性条件下においてII価パラジウム触媒及びアニオン交換が可能な銀塩の共存下で反応させて得られる1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンを含む組成物である。
【0037】
本発明組成物における、ジフェニルアセチレン及びアリールボロン酸は、本発明製造方法におけるものと同じであり、アリールボロン酸の反応系への添加量も、ジフェニルアセチレンに対して1~3当量であることが好ましく、1.5~2当量であることがより好ましい。
【0038】
本発明組成物における反応環境は、試験管、スクリュー管、ビーカー、工業生産用の反応槽など、一般的な安定した反応環境において実施することができる。小規模の合成に際しては、反応系の容量を1~5mlで実施することが一般的であるが、この限りではない。反応溶媒は、それ自体は本発明製造方法においては反応基質とはならない。かかる溶媒としては、有機溶媒と水の混合溶媒が好ましい。有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、プロパノールなどがあげられるが、配位性があるDMFが以下に記載するカチオン性II価パラジウム触媒の安定性に優れるため好ましい。
【0039】
かかる有機溶媒と水との混合溶媒の比率は、有機溶媒:水が3:1~14:1程度が好ましく、4:1~12:1程度がより好ましい。
【0040】
本発明組成物においては、反応系におけるII価パラジウム触媒は炭素-炭素カップリング反応を触媒する機能を有することが必要である。かかる触媒は金属触媒、特にII価パラジウム(白金)触媒が好ましい。本発明組成物においては、II価パラジウム触媒が反応系において錯体を生ずることが必要となる。かかるII価パラジウム触媒としては、例えば、塩化パラジウム(PdCl2)、臭化パラジウム(PdBr2)、酢酸パラジウム(CAS番号3375-31-3、(CH3COO)2Pd)、分子量224.51)が挙げられるが、特に酢酸パラジウムが好ましい。
【0041】
かかるII価パラジウム触媒の反応系における添加量は、ジフェニルアセチレンに対して1~4mol%であることが好ましく、2~3mol%であることがより好ましい。
【0042】
本発明組成物においては、かかるII価パラジウム触媒の機能時において生成する中間体をカチオン性とすることが必要であり、II価パラジウム触がアニオン交換によってカチオン性錯体(上述の好ましい触媒であるパラジウム触媒を使用する場合にはカチオン性II価パラジウム種)を生じさせる際にアリールボロン酸と効率的に反応することから塩基性条件での反応が好ましい。
【0043】
本発明組成物における反応系の塩基性条件としては、反応系に炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、リン酸カリウム(K3PO4)、水酸化カリウム(KOH)などを添加することで、反応系を塩基性条件とすることができる。その中でも特に炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、水酸化カリウム(KOH)を使用することが好ましく、特に炭酸カリウム(K2CO3)が好ましい。炭酸カリウムの濃度としては、ジフェニルアセチレンに対して1~5当量であることが好ましく、2~4当量であることがより好ましい。
【0044】
本発明組成物における「アニオン交換が可能な銀塩」としては、トリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)、酢酸銀(AgOAc)、トリフルオロ酢酸銀(AgTFA)、テトラフルオロホウ酸銀(AgBF4)、ヘキサフルオロリン酸銀(AgPF6)、硝酸銀(AgNO3)などがあげられ、市販の精製品をいずれも使用することが可能である。その中でも硝酸銀が最も使用しやすさの面から好ましいが、これに限定はされない。かかる銀塩は、また反応後に0価となったパラジウム触媒を再酸化してII価パラジウム触媒に戻す役割を担う。
【0045】
「アニオン交換が可能な銀塩」の反応系への添加量は、ジフェニルアセチレンに対して2~5当量であることが好ましく、2.5~4当量であることがより好ましい。
【0046】
本発明組成物における反応の仕組みは、金属触媒とアリルボロン酸および銀塩との反応によりこちらのカチオン性II価パラジウム種が生成した後、アルキンの挿入が2度起こり、中間体となると考えられる。かかる過程において塩基性条件下では、カチオン性II価パラジウム種の生成が効率的に起こると考えられる。また、アルキンの挿入反応が、カチオン性II価パラジウム種により極めて効率的に進められる結果、緩和な温度条件での反応進行が起こると考えられる。
【0047】
その後、もう一度アリルボロン酸とのトランスメタル化、還元的脱離により生成物が得られ、副生する0価パラジウム種は、銀塩によりII価に再酸化されサイクルが完結すると考えられる。
【実施例0048】
実施例1
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.1020g,0.75mmol)、K2CO3(1.5mmol,0.2073g)、AgNO3(2.0mmol,0.3398g)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、40℃のオイルバスで3時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出したところ、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの収率は92%だった。
【0049】
実施例2
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.0613g,0.5mmol)、K2CO3(1.5mmol,0.2073g)、AgNO3(2.0mmol,0.3398g)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、30℃のオイルバスで5時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出したところ、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの収率は76%だった。
【0050】
実施例3
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.1020g,0.75mmol)、K2CO3(1.5mmol,0.2073g)、AgNO3(2.0mmol,0.3398g)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、30℃のオイルバスで15時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出したところ、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの収率は88%だった。
【0051】
実施例4
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.1020g,0.75mmol)、K2CO3(1.5mmol,0.2073g)、AgNO3(2.0mmol,0.3398g)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、50℃のオイルバスで2時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出したところ、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの収率は95%だった。
【0052】
実施例5~9
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.1020g,0.75mmol)、下記表中の塩基(それぞれ1.5mmol)、AgNO3(2.0mmol,0.3398g)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、40℃のオイルバスで3時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出した。
【0053】
【0054】
実施例10~12
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.1020g,0.75mmol)、K2CO3(1.5mmol,0.2073g)、下記表中のアニオン交換可能な銀塩(それぞれ2.0mmol)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、40℃のオイルバスで3時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出した。
【0055】
【0056】
比較例1
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.1020g,0.75mmol)、K2CO3(1.5mmol,0.2073g)、Ag2O(2.0mmol,0.2317g)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、30℃のオイルバスで15時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出したところ、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの収率は1%だった。
【0057】
比較例2
02号スクリュー管に,ジフェニルアセチレン(0.0891g,0.5mmol)、p-メチルフェニルボロン酸(0.1020g,0.75mmol)、K2CO3(1.5mmol,0.2073g)、Ag2CO3(2.0mmol,0.2757g)、Pd(OAc)2(2mol%,0.0022g)、DMF(0.8mL)、H2O(0.2mL)および撹拌子を入れ、30℃のオイルバスで15時間加熱撹拌した。攪拌後、反応溶液を7号スクリュー管に移した。次にスクリュー管を水、エーテルで各3回洗浄し、洗浄液も7号スクリュー管に移した。その後、スクリュー管に残った攪拌子をアセトンで洗浄し、別のスクリュー管に移した。7号スクリュー管内の溶液に水(25mL)、エーテル(10mL)を加え分液操作によって抽出し、抽出液を別の7号スクリュー管に入れる操作を4回繰り返した後、抽出液を硫酸マグネシウムで脱水した。次に、抽出液を下から綿、酸マグネシウム、セライトNo.545を詰めたカラムでろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、一晩減圧乾燥後,精密天秤で粗生成物の収量を量り、1H-NMRにより収率を算出したところ、1,1,2,3,4,4-ヘキサアリール-1,3-ブタジエンの収率は4%だった。