(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091195
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】肌質改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/742 20150101AFI20240627BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20240627BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240627BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240627BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240627BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K35/742
A61K8/99
A61Q19/00
A61P17/16
A61P43/00 107
A23L33/135
A23L2/52
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022212941
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 優一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 涼
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MD85
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF14
4B117LC04
4B117LK21
4B117LP03
4B117LP20
4C083AA031
4C083AA032
4C083AB172
4C083AC242
4C083AD242
4C083AD262
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD14
4C083EE12
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC65
4C087CA09
4C087MA37
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB22
(57)【要約】
【課題】 本発明は、経口摂取によって肌質を改善する天然物由来の新規な肌質改善剤を提供する。
【解決手段】 枯草菌に肌質改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枯草菌死菌体を有効成分とする、経口摂取用肌質改善剤。
【請求項2】
枯草菌が芽胞形成能欠損株である、請求項1記載の肌質改善剤。
【請求項3】
枯草菌死菌体を有効成分とする、経口摂取用の肌の乾燥改善剤、肌の水分量増加剤又はコラーゲン量増加剤。
【請求項4】
枯草菌が芽胞形成能欠損株である、請求項3記載の肌の乾燥改善剤、肌の水分量増加剤又はコラーゲン量増加剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の肌質改善剤を含む、肌質改善用飲食品、化粧品又は医薬品。
【請求項6】
肌質を改善するための候補株である枯草菌を選択する方法であって、
枯草菌死菌体を経口摂取し、肌の乾燥改善効果若しくは肌の水分量増加効果を判断する工程、又はコラーゲン量増加効果を測定する工程、ならびに、
前記肌の乾燥改善効果、肌の水分量増加効果又はコラーゲン量増加効果を有する少なくとも一つの候補株を選択する工程を含む、選択する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枯草菌を有効成分とする肌質改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経口摂取で「肌質改善効果」が期待できる食料品が『食べるコスメ』として注目を集めており、「肌質改善効果」を有する飲食品の需要が高まっている。
【0003】
例えば、ラクトバチルス・ガセリ菌を有効成分とする経口投与可能な皮膚の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤(特許文献1)、乳酸菌(Leuconostoc mesenteroides)を有効成分とする経皮水分蒸発量抑制剤(特許文献2)、又は乳酸菌を有効成分として含む、経口摂取により、細菌の異常増殖を抑制し、又は細菌の異常増殖に起因する皮膚状態の悪化を防止又は改善するための組成物(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-130656号公報
【特許文献2】特開2022-072433号公報
【特許文献3】特許第6652648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、経口摂取によって肌質を改善する天然物由来の肌質改善剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、枯草菌に肌質改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]の態様に関する。
[1]枯草菌死菌体を有効成分とする、経口摂取用肌質改善剤。
[2]枯草菌が芽胞形成能欠損株である、[1]記載の肌質改善剤。
[3]枯草菌死菌体を有効成分とする、経口摂取用の肌の乾燥改善剤、肌の水分量増加剤又はコラーゲン量増加剤。
[4]枯草菌が芽胞形成能欠損株である、[3]記載の肌の乾燥改善剤、肌の水分量増加剤又はコラーゲン量増加剤。
[5][1]又は[2]記載の肌質改善剤を含む、肌質改善用飲食品、化粧品又は医薬品。
[6]肌質を改善するための候補株である枯草菌を選択する方法であって、
枯草菌死菌体を経口摂取し、肌の乾燥改善効果若しくは肌の水分量増加効果を判断する工程、又はコラーゲン量増加効果を測定する工程、ならびに、
前記肌の乾燥改善効果、肌の水分量増加効果又はコラーゲン量増加効果を有する少なくとも一つの候補株を選択する工程を含む、選択する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、天然物由来の経口摂取用肌質改善剤を提供できる。また、殺菌後の死菌において肌質改善効果が認められることから、枯草菌の死菌体を使用することで、製造設備の衛生管理や製品の品質管理が容易になり、肌質改善剤を効率的に製造できる。また、有効成分が化学合成品ではなく、食経験のある菌のため、継続した長期的な摂取が望ましい肌質改善剤として最適である。さらに、芽胞形成能欠損株を使用すれば、一般的な微生物と同様に100℃以下の穏和な条件で殺菌を行うことができ、芽胞菌で問題となる殺菌不足による製造設備の汚染を防ぐことができるため、各種食品への添加や製剤化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】枯草菌摂取前後におけるコラーゲンスコアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の肌質改善剤は、枯草菌を有効成分とするものであり、経口摂取により、肌の乾燥具合の改善、肌の水分量増加又はコラーゲン量増加等の肌質改善効果を発揮できる。
【0011】
本発明に記載の枯草菌は、前記機能性製剤の有効成分となる枯草菌(Bacillus subtilis)であれば、生菌でも死菌でもよく、特に限定されないが、バチルス・サブチリス・サブスピーシーズ・サブチリス(B.subtilis.subsp.subtilis)が好ましく、バチルス・サブチリスNBRC3009、バチルス・サブチリスNBRC3013、バチルス・サブチリスNBRC3335、バチルス・サブチリスNBRC3336、バチルス・サブチリスNBRC3936、バチルス・サブチリスNBRC13169、バチルス・サブチリスNBRC111470等の納豆菌がより好ましく、独立行政法人製品評価技術基盤機構等から入手することができる。死菌でも肌質改善効果があるため、枯草菌の死菌体を使用することで、製造設備の衛生管理や製品の品質管理が容易になり、肌質改善剤を効率的に製造できる。また、芽胞形成能欠損株を使用すれば、100℃以下の穏和な殺菌条件で死菌体を調製することができるため、芽胞菌で問題となる殺菌不足による製造設備の汚染を防ぐことができ、各種食品への添加や製剤化が容易となる。
【0012】
本発明で使用される枯草菌は、特に限定されないが、芽胞形成能欠損株が好ましく、芽胞形成能欠損株の取得方法としては、遺伝子組換えによる方法、突然変異による方法等が例示できるが、自然突然変異による方法が好ましい。自然突然変異による芽胞形成能欠損株の取得方法は、特に限定されず、高温培養法や、野生株と欠損株のコロニーのメラニン色素の着色により識別するランダム法、異化代謝産物抑制(Catabolite repression)様現象を利用した方法(J.F.Michel,B.Cami,P.Schaeffer:Ann.Inst.Pasteur,114,11;21(1968))が例示できるが、異化代謝産物抑制様現象を利用した方法が好ましい。異化代謝産物抑制様現象を利用する方法により得られる芽胞形成能欠損株は、芽胞形成能と供にリゾチーム活性及び形質転換能が欠損しているため、溶菌による問題がなく継代することができ、芽胞形成能欠損という形質を維持することができる。
【0013】
枯草菌の培養には、通常の細菌培養用培地が使用でき、炭素源、窒素源、無機物、その他枯草菌が必要とする微量栄養素等を含有するものであれば、合成培地、天然培地の何れでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、シュクロース、デキストリン、澱粉、グリセリン、糖蜜等が使用できる。窒素源としては、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩類、DL-アラニン、L-グルタミン酸等のアミノ酸類、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー等の窒素含有天然物が使用できる。無機物としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化第二鉄等が使用できる。
【0014】
枯草菌の培養条件は、適宜設定できるが、通気、振盪、攪拌等により好気的に液体培養するのが好ましく、培養温度は例えば20~50℃が例示でき、30~45℃が好ましく、培養時間は例えば2~72時間が例示でき、4~48時間が好ましく、6~36時間がより好ましく、培地のpHは例えば5.0~9.0が例示でき、5.5~8.5が好ましい。
【0015】
枯草菌は培養後に殺菌してもよく、殺菌条件は一般的な方法であれば特に限定されないが、例えば加熱温度は、70~150℃であり、加熱時間は、温度に応じて決定すればよいが、通常1~60分である。また本発明に記載の芽胞形成能欠損株は、芽胞を形成しないため、100℃以下の穏和な条件で殺菌を行うことができ、例えば70~100℃、5~20分間の加熱が例示できる。菌体の回収は、遠心分離機等で培地を除去した後、緩衝液、生理食塩水、滅菌水等で菌体を洗浄し、遠心分離機等により固液分離して集菌できる。さらに、エアードライ、スプレードライ、真空及び/又は凍結乾燥等を行って粉末化してもよい。
【0016】
本発明の肌質改善剤はその有効成分が天然物由来であり、かつ、製造が容易なため、広く利用でき、各種製品に添加が可能で、液状で添加してもよく、冷蔵、冷凍又は乾燥状態で添加してもよく、肌質改善効果を有する飲食品、医薬品、飼料等を調製することができる。各種製品中の枯草菌含有量は、摂取により肌質改善効果が認められる量であれば特に限定されないが、1~2,000億個が好ましく、2~1,000億個がより好ましく、5~500億個がさらに好ましい。
【実施例0017】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
前記枯草菌を、液体培地(酵母エキス:2%、グルコース:5%、水道水:93%)に接種して37℃で24時間通気攪拌培養した後、90℃で10分間加熱殺菌処理した。次いで、遠心分離機を用いて培地を除去し、回収した菌体を水道水で洗浄した後、さらに遠心分離機で固液分離することで、菌体を回収した。賦形剤としてデキストリン(サンデック#100)を使用してスプレードライヤーで乾燥することで、枯草菌の死菌体粉末(枯草菌20%含有)を調製した。該枯草菌粉末をQOL納豆菌(登録商標)(1.0×1011個/g)として、下記の肌質評価試験を行った。
摂取開始日を0日目として、試験前と比較して試験最終日(30日目)における各評価項目(肌の乾燥具合及び肌の水分量増加)について、「良い:+2点」、「やや良い:+1点」、「変わらない:0点」、「やや悪い:-1点」、「悪い:-2点」の5段階で評価した。それぞれの評価項目で、試験期間中の回答率が70%以上だった被験者16名を有効回答者として、試験最終日(30日目)の点数を合計し、人数で除した。結果を表1に示した。