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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000912
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】形状測定装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20231226BHJP
   G01B 11/30 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099898
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直豊
(72)【発明者】
【氏名】日比 厚裕
(72)【発明者】
【氏名】今野 雄介
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA50
2F065AA53
2F065BB13
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF09
2F065HH05
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065SS14
(57)【要約】
【課題】測定対象物の表面形状を高精度に測定することができる、形状測定装置の校正方法を提供する。
【解決手段】形状測定装置100の校正方法は、照明装置10自体を校正し、照明装置10の位置と、線状光15の延在方向から見た照明装置10の角度とを、反射光像RIがスクリーン20に投影されるように調整する。また、表面にマーカを有する校正板を用いて、マーカが検査位置と合うように配置し、測定対象物1の法線方向から見た照明装置10の首振り角度と、測定対象物1の法線方向から見た照明装置10の搬送方向での位置とを調整する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される測定対象物の表面形状を前記搬送方向と直交した幅方向に延在する検査位置において測定する形状測定装置の校正方法であって、
前記検査位置に向けて、前記搬送方向と直交した幅方向に延在する線状光を照射する照明装置と、
前記測定対象物の表面で反射した前記線状光の反射光像が投影されるスクリーンと、
前記反射光像が投影された前記スクリーンを撮像し、撮像画像を生成する撮像装置と、
前記撮像画像に基づいて、前記測定対象物の表面形状を測定する演算処理装置と、
を有する形状測定装置を用い、
前記照明装置の位置と、前記線状光の延在方向から見た前記測定対象物の表面へ前記線状光が照射される角度とを、前記反射光像が前記スクリーンに投影される幾何学的配置に調整する入射側仮調整ステップと、
表面に直線状のマーカを有する校正板を、前記マーカが前記検査位置と合うように配置する校正板配置ステップと、
前記照明装置から前記校正板に前記線状光を照射する照明ステップと、
前記測定対象物の法線方向から見た、前記搬送方向に対する前記照明装置の角度を、前記線状光と前記マーカとに基づいて調整する、角度調整ステップと、
前記測定対象物の法線方向から見た、前記照明装置の前記搬送方向の位置を、前記線状光と前記マーカとに基づいて調整する、位置調整ステップと、
前記校正板を前記検査位置から取り外す、校正板排除ステップと、
を有する、形状測定装置の校正方法。
【請求項2】
前記入射側仮調整ステップの前に、
前記照明装置の設計上の光軸に沿った方向と直交する面内方向での、前記照明装置の設計上の光軸と、前記照明装置の実際の光軸とのずれ量に基づいて、前記照明装置の現実の光軸を校正する照明装置校正ステップを備える、請求項1に記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項3】
前記照明装置校正ステップは、
前記照明装置の設計上の光軸と試験面の法線方向とが同じ方向となるように、前記試験面と前記照明装置とを対向させて配置する配置ステップと、
前記照明装置から前記試験面までの距離を前記試験面の法線方向に沿って変えながら、前記照明装置から照射された光によって前記試験面に現れる光像を測定する光像測定ステップと、
前記照明装置から前記試験面までの距離と、前記試験面に現れる光像の位置とに基づいて、前記照明装置の設計上の光軸に対する前記光像のずれ量を算出するずれ量算出ステップと、
前記ずれ量算出ステップで算出したずれ量に基づいて、前記照明装置の現実の光軸を校正する校正ステップと、
を有する、請求項2に記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項4】
前記ずれ量算出ステップは、前記距離と、前記距離ごとに測定した前記試験面上での光像の位置との関係を、最小二乗法により近似して前記ずれ量を算出する、請求項3に記載の形状測定装置の校正方法。
【請求項5】
前記ずれ量算出ステップは、前記試験面の法線方向と前記照明装置の現実の光軸のなす角度である傾きずれと、前記試験面の面内方向における前記照明装置の設計上の照射開始位置と前記照明装置の現実の照射開始位置との差である変位ずれとを、前記ずれ量として算出する、請求項3又は4に記載の形状測定装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象物の表面の凹凸や粗度といった表面形状を測定する際には、測定対象物の表面に線状光を照射し、当該線状光の基準位置からの変位を検出することで測定対象物の表面形状を検出する、光切断法を利用した測定方法が用いられていた。光切断法は、比較的簡単な装置を用いることで、微小な表面形状を高精度に測定することができるため有用である。
【0003】
一方で、光切断法を用いて更に小さな表面形状を検出しようとすると、原理的に線状光の線幅を小さくする必要があり、分解能の向上には限界があった。
【0004】
そのため、そのような場合には、線状光を測定対象物の表面に照射して、測定対象物の表面で反射させた反射光を遠方のスクリーンに投影し、スクリーン上に投影された反射光像の変位を検出することで測定対象物の表面形状を測定する、光てこ法を利用した測定方法が用いられていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6278171号公報
【特許文献2】特許第4081414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光てこ法を用いることで、測定対象物の表面における線状光の変位を、スクリーン上の反射光像の変位として拡大することができるため、光切断法を用いる場合に比べてより分解能の高い測定が可能となる。
【0007】
しかしながら、光てこ法を用いる場合には、線状光を照射する照明装置や、反射光像が投影されるスクリーン、スクリーンに投影された反射光像を撮像する撮像装置等といった各要素間の関係を規定する種々のパラメータが、予め好適に校正されていなければ、そうした校正の不具合に起因する誤差も、変位と同様に拡大されてしまうことになる。
【0008】
そのため、光てこ法を利用して測定対象物の表面形状を正確に測定するためには、照明装置やスクリーン等の各要素間の関係を規定する種々のパラメータについて、光切断法を利用する場合以上に、精度良く校正する必要があった。
【0009】
また、光てこ法を利用した際に校正すべきパラメータは、光てこ法に必要となる各要素自体が持つ精度の他にも、照明装置から照射される線状光の測定対象物への入射角度や、スクリーン上での反射光像の投影位置、照明装置と測定対象物の検査位置(照明装置から線状光が照射される、測定対象物の表面上の位置)との間の距離といったように数多くあり、また、そうしたパラメータの中には、一つのパラメータを調整すると他のパラメータが影響を受けるといったように、個別独立した調整が難しいものも数多く存在している。
【0010】
光てこ法の校正に係るパラメータの多くは、各要素間の距離や各要素が設けられる角度といったように、幾何学的に決まる値であるため、机上の計算により設計値として求めることができるはずである。
しかしながら、実際には、意図しない各要素の配置上のずれや、各要素が有する機械誤差等に起因して、設計値からの誤差が発生し、期待される精度で表面形状を測定できないことがあった。
【0011】
特許文献1および特許文献2には、光てこ法を利用して測定対象物の表面形状を測定する形状測定装置について開示されているが、光てこ法において、こうした多数のパラメータを好適に校正する手法については開示されてない。そのため、光てこ法を利用した形状測定装置において各種パラメータを校正する際には試行錯誤に頼らざるを得ず、校正時における負担は極めて大きかった。
【0012】
そのため、光てこ法に係る多数のパラメータを、パラメータ毎に個別に決めていくのではなく、現実の測定精度を損なわない範囲で、一定の手順に基づいて決定しておき、測定対象物の表面形状の測定を高精度に行うことが求められていた。
【0013】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、測定対象物の表面形状を高精度に測定することができる、形状測定装置の校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る形状測定装置の校正方法は、搬送方向に搬送される測定対象物の表面形状を前記搬送方向と直交した幅方向に延在する検査位置において測定する形状測定装置の校正方法であって、前記検査位置に向けて、前記搬送方向と直交した幅方向に延在する線状光を照射する照明装置と、前記測定対象物の表面で反射した前記線状光の反射光像が投影されるスクリーンと、前記反射光像が投影された前記スクリーンを撮像し、撮像画像を生成する撮像装置と、前記撮像画像に基づいて、前記測定対象物の表面形状を測定する演算処理装置と、を有する形状測定装置を用い、前記照明装置の位置と、前記線状光の延在方向から見た前記測定対象物の表面へ前記線状光が照射される角度とを、前記反射光像が前記スクリーンに投影される幾何学的配置に調整する入射側仮調整ステップと、表面に直線状のマーカを有する校正板を、前記マーカが前記検査位置と合うように配置する校正板配置ステップと、前記照明装置から前記校正板に前記線状光を照射する照明ステップと、前記測定対象物の法線方向から見た、前記搬送方向に対する前記照明装置の角度を、前記線状光と前記マーカとに基づいて調整する、角度調整ステップと、前記測定対象物の法線方向から見た、前記照明装置の前記搬送方向の位置を、前記線状光と前記マーカとに基づいて調整する、位置調整ステップと、前記校正板を前記検査位置から取り外す、校正板排除ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定対象物の表面形状を高精度に測定するために必要となる多数のパラメータの校正を、現実の測定精度を損なわない範囲で、一定の手順に基づいて行うことができるので、測定対象物の表面形状を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る照明装置の校正方法を実施する際の構成を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る演算処理装置の構造を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る照明装置の校正方法における処理を説明するためのフローチャートである。
図4】本実施形態に係る形状測定装置の構成を示す図である。
図5】本実施形態に係る形状測定装置を、線状光の延在方向から見たときの構成を示す図である。
図6】本実施形態に係る形状測定装置を、測定対象物の法線方向から見たときの構成を示す図である。
図7】本発明に係る撮像装置で生成される撮像画像の一例を示す図である。
図8】本発明に係る校正板の構成を説明するための図である。
図9】本実施形態に係る形状測定装置の校正方法における処理を説明するためのフローチャートである。
図10】本実施形態に係る形状測定装置に校正板を配置する手法を説明するための図である。
図11】本実施形態において測定対象物の法線方向から見たときの照明装置の角度を、線状光の延在方向と校正板に描画されたマーカとが平行となるように調整する処理を説明するための図である。
図12】本実施形態において測定対象物の法線方向から見たときの照明装置の搬送方向での位置を、線状光と校正板に描画されたマーカとが重なるように調整する処理を説明するための図である。
図13】本実施形態において、照明装置から試験面までの第1方向の距離を変えたときの、光像の第2方向の位置の変化を記録したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置の校正方法について詳細に説明する。
【0018】
<照明装置の校正方法>
始めに、本実施形態に係る形状測定装置に設置される照明装置の校正方法の原理について以下説明する。照明装置の光軸や、照明装置での光の出射位置が、設計上の本来あるべき理想的な光軸や出射位置からずれてしまうと、照明装置を単体で形状測定装置として用いる場合には、使い勝手が悪いものとなり、また、光てこ法を利用して測定対象物の表面形状を測定する形状測定装置の一部に照明装置が組み込まれている場合には、本来の測定精度を得ることができないといった問題を生じることになる。そのため、照明装置を用いる前に、予め照明装置の光の出射位置や光軸のずれを校正しておくことは、照明装置を使用する上で極めて重要である。
【0019】
そのため、上記課題に鑑みて、本実施形態に係る形状測定装置の校正方法では、予め照明装置の光軸や出射位置を最適な状態に校正することが望ましい。
【0020】
本実施形態に係る照明装置の校正方法を実施する際に用いられる構成について、図1を用いて説明する。図1に、本実施形態に係る照明装置の校正方法を実施する際に用いられる構成を示す。本実施形態に係る照明装置の校正方法においては、照明装置510と撮像装置520と演算処理装置530と試験面560とが用いられる。
【0021】
なお、本実施形態に係る照明装置510の校正方法では、撮像装置520と演算処理装置530とを用いて、照明装置510の光の出射位置や光軸のずれ量を算出する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。例えば、照明装置510の他の校正方法としては、撮像装置520と演算処理装置530とを用いずに、これら撮像装置520と演算処理装置530で実行される処理を、校正作業者自身が測定、記録する等して実行し、照明装置510の光の出射位置や光軸のずれ量を算出するようにしてもよい。
【0022】
照明装置510は、光てこ法を利用した形状測定装置に組み込まれて用いられる、光を照射する機能を持った照明装置である。照明装置510は、その内部に、光源や、レンズ等の光学系を有しており、照明装置510の前面に設けられたレンズ(図示せず)上の出射位置から、照明装置510をなす筐体の外部に対して光を照射する。照明装置510に設けられた光源や光学系としては、公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。
【0023】
照明装置510は、照明装置510の設計に鑑みて、所定の出射位置から、ある一定の方向に光を照射することが期待されており、この方向が照明装置510の理想的な設計上の光軸の方向であり、この照明装置510に設計されている光軸を、以下では、設計上の光軸ILと称するものとする。また、照明装置510の製造誤差や経年劣化等により、照明装置510から実際に光が出射(照射)されるレンズ上の出射位置が、設計上の出射位置からずれたり、照明装置510から照射される実際の光の光軸の方向が、設計上の光軸ILの方向からずれることが考えられる。この設計上の光軸ILからずれた、誤差のある理想的ではない光軸を、以下では、現実の光軸(或いは、実際の光軸)RILと称するものとする。
【0024】
試験面560は、本実施形態に係る照明装置510の校正方法において用いられる校正用の平面(例えば、平面板)である。試験面560には、後述するように照明装置510から照射された光が当たることになるが、光の当たる面が略平面となっている。なお、試験面560は、照明装置510からの光が照射されている位置が特定できるのであれば、当該光が当たる面以外の面の形状は特に限定されるものではない。試験面560の粗度が低すぎると、鏡面反射の性質が高くなり、照明装置510から試験面560に照射される光によって当該試験面560上に現れる光像が見えなくなってしまう。また、試験面560の粗度が高すぎると、試験面560上に現れる光像の形状がぼやけることで、当該試験面560上での光像の位置が特定しづらくなる。そのため、試験面560は、ある程度の粗度を持った素材で形成されることが好ましいが、素材の種類自体は限定されない。
【0025】
撮像装置520は、照明装置510から試験面560に照射される光によって当該試験面560上に現れた光像を撮像するカメラである。撮像装置520は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のエリアカメラが採用される。撮像装置520は、試験面560の光が当たる面を撮像視野とし、試験面560上の光像を撮像することで撮像画像を生成し、生成された撮像画像を演算処理装置530に出力する。
【0026】
演算処理装置530は、照明装置510の設計上の光軸ILからずれた現実の光軸RILのずれ量を算出するものである。演算処理装置530は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータ装置として構成されている。図2に、本実施形態に係る演算処理装置530の構造を示す。図2に示すように、演算処理装置530は、画像取得部531、距離取得部532、及び、ずれ量算出部533を備える。演算処理装置530は、読み取り可能な照明装置校正プログラムを読み出して展開することにより、画像取得部531、距離取得部532、及び、ずれ量算出部533を備えた校正装置として機能させることができる。
【0027】
画像取得部531は、撮像装置520により生成された撮像画像を取得する。この場合、画像取得部531は、撮像装置520により生成された撮像画像をリアルタイムで取得するが、過去に撮像装置520により生成された撮像画像を取得するようにしてもよい。
【0028】
距離取得部532は、撮像装置520により撮像画像が撮像された際に、照明装置510と試験面560との間の距離の値を距離情報として取得する。照明装置510及び試験面560間の距離とは、例えば、試験面560の光の当たる面の法線方向に沿った、照明装置510の光の出射位置と、試験面560の位置との間の距離である。距離取得部532による距離の値は、例えば、レーザー測定機等を使用して測定してもよく、また、校正作業者が測定可能な定規等を用いて目視で測定してもよい。距離取得部532には、測定結果である距離の値が距離情報として入力される。
【0029】
ずれ量算出部533は、照明装置510と試験面560との間の距離を試験面560の法線方向に沿って変えながら、距離ごとに撮像装置520で試験面560上の光像を撮像した複数の撮像画像に基づいて、照明装置510の設計上の光軸ILと、現実の光軸RILとのずれ量を算出する。詳しくは後述するが、ずれ量算出部533は、距離取得部532により取得された照明装置510と試験面560との間の距離(距離情報)と、距離ごとに撮像した撮像画像との関係に基づいて、設計上の光軸ILと、現実の光軸RILとのずれ量を演算する。
【0030】
次に、本実施形態に係る照明装置の校正方法における処理について、図1から図3を用いて説明する。図3に、本実施形態に係る照明装置の校正方法における処理を説明するためのフローチャートを示す。
【0031】
(ステップS501)
本実施形態に係る照明装置510の校正方法を開始すると、ステップS501の処理を行う。ステップS501では、照明装置510の設計上の光軸ILと、試験面560の法線方向とが同じ方向となるように、照明装置510と試験面560とを対向させて配置する(配置ステップ)。
【0032】
この場合、試験面560は、照明装置510の設計上の光軸ILの方向(第1方向)と直交する方向(第2方向)に平行な面を有する。第1方向は、照明装置510を校正するに当たって、照明装置510の光軸を観察するのに都合が良い方向から選択された任意の方向であり、第2方向は、試験面560の面方向において第1方向と直交する方向である。
【0033】
例えば、図1に示すように、照明装置510が、平坦な底面を有する筐体で構成され、照明装置510の設計上の光軸ILが筐体の底面に平行な方向を向くように設計されているとする。また、照明装置510から光が出射するレンズ上の位置である出射位置を原点Oとし、原点Oを通り第1方向(照明装置510の設計上の光軸ILの方向)に平行な方向にp軸、原点Oを通り第1方向と直交する第2方向(試験面560の面方向)にq軸を取るものとする。
【0034】
ここで、例えば、後述する形状測定装置から取り外した照明装置510を、基準となるp軸に水平な面である基準面561上に載置して試験面560に向けて光を照射すると、照明装置510の設計上、原点Oから第1方向に平行に光が照射され、試験面560上の点Aに到達することになり、設計上の光軸ILは原点Oと点Aとを結ぶ直線となる。また、照明装置510において光の出射位置や照射方向(実際の光軸の方向)が設計からずれている場合には、照明装置510のレンズ上の位置のうち、原点Oではなく、原点Oからずれた点Cから光が出射され、試験面560上の点Bに到達することになり、現実の光軸RILは、点Cと点Bとを結ぶ直線となる。
【0035】
なお、説明を簡単にするために、ここでは、第1方向が水平方向であり、第2方向が高さ方向である場合を例にして説明するが、第1方向と第2方向は、互いに直交する位置関係にあれば、この場合に限定されるものではない。また、設計上の光軸ILは、照明装置510の筐体の形状に依存するものではなく、照明装置510の設計上の光が照射される方向に依存するものである。
【0036】
ステップS501において、照明装置510と試験面560とを上記のように配置すると、ステップS503に進む。
【0037】
(ステップS503)
ステップS503では、照明装置510から試験面560までの距離を試験面560の法線方向に沿って変えながら、照明装置510から照射された光によって距離に応じて試験面560に現れる光像を測定する。即ち、測定のインデックスをiとして、照明装置510から試験面560までの距離dを第1方向(例えば水平方向)に沿って変えながら、照明装置510から照射された光によって試験面560に現れた光像の位置y (例えば第2方向とした高さ方向での位置)を測定する(光像測定ステップ)。
【0038】
照明装置510から照射された光は、試験面560上に光像を生じさせるため、照射された光が試験面560上のどの位置に到達したのかを、容易に観察することができる。
【0039】
もし仮に、照明装置510から設計上の光軸IL(例えば水平方向)で光が照射されているとすると、照明装置510と試験面560との間の距離を変えたとしても、試験面560が光の方向に対して垂直であるため、試験面560上に光が照射されて生じる光像の位置は、第2方向(ここでは高さ方向)には変化しない。一方で、照明装置510の現実の光軸RILが設計上の光軸ILからずれていると、照明装置510と試験面560との間の距離を第1方向に沿って変えるにつれて、試験面560上に光が照射されて生じる光像の位置が第2方向(高さ方向)に沿って変化することになる。そのため、試験面560上の光像の第2方向の変化を測定すれば、照明装置510から照射される現実の光軸RILが、設計上の光軸ILからどの程度、出射位置や照射角度がずれているのかを知ることができる。
【0040】
ここでは、照明装置510と試験面560との間の距離dを複数回(iは測定回に対応するインデックスである)変えながら、距離dの値とともに、試験面560上の光像の第2方向の位置y 図1の場合であれば原点Oからの高さ)を測定する。
【0041】
本実施形態では、距離dの値を距離取得部532が取得し、距離dごとに光像を撮像した撮像画像を画像取得部531が取得し、撮像画像中における光像の位置に基づいて、試験面560上に現れた光像の第2方向の位置y を取得する。そして、ずれ量算出部533は、距離dごとに光像を撮像した撮像画像を解析し、撮像画像内での試験面560上の光像の第2方向の位置y を距離dごとに測定する。なお、上述したように、これらの処理は、演算処理装置530上で行う必要は必ずしもなく、校正作業者自身が人力で測定し、記録を行ってもよい。
適当な測定回数分のデータが得られれば、ステップS505に進む。
【0042】
(ステップS505)
ステップS505では、照明装置510から試験面560までの距離dと、距離dごとの試験面560に現れる光像の位置とに基づいて、照明装置510の設計上の光軸ILに対する光像のずれ量を、照明装置510と試験面560との距離dに応じて算出する。例えば、照明装置510から試験面560までの第1方向の距離dと、光像の第2方向での位置y との関係を、最小二乗法を用いて近似することで、照明装置510の現実の光軸RILと設計上の光軸ILとの角度の差θに対応する照明装置510の傾きずれと、照明装置510の現実の光軸RILの照射開始位置(現実の出射位置)と設計上の光軸ILの照射開始位置(設計上の出射位置)との第2方向の位置の差に対応する照明装置510の変位ずれとを、ずれ量として算出する(ずれ量算出ステップ)。
【0043】
上述した図1の例でいえば、原点Oと点Cとの第2方向への位置のずれが変位ずれに相当し、設計上の光軸ILと現実の光軸RILとの成す角度θが傾きずれに相当する。
【0044】
より具体的には、図1に示すように、照明装置510から試験面560までの第1方向の距離を変化させて行う測定の回数に対応するインデックスをiとし、試験面560が(原点Oに出射位置を有する)照明装置510から距離dだけ離れた位置にあるとする。設計上の光軸ILに沿って照射される光は、原点O(0、0)から試験面560上の点A(d、0)に設計上到達するはずである。しかしながら、現実の光軸RILに沿って照射される光が、原点Oから鉛直方向にyだけずれた出射位置であるq軸上の点C(0、y)から照射されるとともに、設計上の光軸ILから角度θだけずれた角度に照射されることで、試験面560上の点B(d、y )に到達したものとすると、照明装置510と試験面560との幾何学的な位置関係から、下記の式(1)の関係が得られる。
【数1】
【0045】
距離dの値と、試験面560上の光像の第2方向の位置y の値とは、ステップS503において、試験面560の位置や試験面560上の光像の位置を実際に測定することにより知ることができる。
【0046】
そのため、例えば、試験面560の位置を第1方向に沿って変えることで距離dを変化させ、それぞれの距離dと、試験面560上での光像の第2方向の位置y の値とを求めることで、未知の値である変位ずれyと傾きずれθとを算出することができる。更に、より精度を高めるため、変位ずれyと傾きずれθの算出には、最小二乗法を用いることが好適であり、その場合には、変位ずれyと傾きずれθは、実際に測定することによって得られたデータの総数をnとして、下記の式(2)及び式(3)を用いて算出することができる。
【数2】
【数3】
【0047】
なお、変位ずれyは、照明装置510の現実の光軸RILにおける光の出射位置と、設計上の光軸ILにおける光の出射位置との第2方向の距離のずれ(オフセット)である。また、傾きずれθは、照明装置510の現実の光軸RILと設計上の光軸ILとの方向の違いに対応する角度のずれである。
【0048】
こうして、ずれ量として変位ずれyと傾きずれθとを知ることができれば、変位ずれyと傾きずれθとに基づいて照明装置510を校正し(校正ステップ)、本実施形態に係る照明装置510の校正方法を終了する。
【0049】
以上で説明したように、本実施形態によれば、照明装置510の持つ誤差に応じた変位ずれyと傾きずれθとを知ることができるので、照明装置510を用いる際に、照明装置510に変位ずれyや傾きずれθに応じたオフセットを与えたり傾けたりしたうえで、照明装置510を使用することができるので、照明装置510が持つ誤差によらずに、正確な位置から正確な方向に向けて光を照射することができるようになる。そのため、光てこ法を利用した形状測定装置に照明装置510を用いた際、照明装置510の誤差に起因する不都合が生じることを防止することができる。
【0050】
以上で説明したように、本実施形態では、測定対象物の表面形状を高精度に測定するために必要となる変位ずれyや傾きずれθの校正を、現実の測定精度を損なわない範囲で、一定の手順に基づいて行うことができるので、測定対象物の表面形状を高精度に測定することができる。
【0051】
なお、上述したように、本実施形態では、ずれ量の算出に最小二乗法を採用して、変位ずれyと、傾きずれθを算出していたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ずれ量の算出に際し、照明装置510と試験面560との間の距離と、その際に取得されたずれ量とを対応させたLUT(Look Up Table)を作成しておき、設計上の光軸ILに沿った照明装置510と試験面560との間の距離から、対応するずれ量を参照して、照明装置510の校正を行ってもよい。なお、LUT上に照明装置510の配置位置に合致するずれ量がない場合には、配置位置における距離を挟むLUT上の前後の距離におけるずれ量を参照し、比例配分によってずれ量を演算すればよい。
【0052】
<形状測定装置の校正方法>
次に、上述した照明装置の校正方法により校正した照明装置を用いて、光てこ法を利用して測定対象物の表面形状を測定可能な形状測定装置に関する校正方法について以下説明する。以下に添付図面を参照しながら、本実施形態に係る、光てこ法を利用した形状測定装置の校正方法について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、上述した構成要素と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する場合がある。
【0053】
ここで、照明装置から測定対象物の表面に所定の入射角度で線状光を照射し、測定対象物の表面からの反射光をスクリーンで投影して、スクリーン上の反射光像に基づいて測定対象物の表面形状を測定する、光てこ法を利用した測定方法では、形状測定装置を構成する照明装置やスクリーン等といった各要素を、設計通りに配置したとしても、現実には各要素の位置や角度等に意図しない微妙なずれがあったり、各要素自体が誤差を含んでいるおそれがある。
【0054】
また、光てこ法を利用した形状測定装置において校正が不十分である(精度が良くない)場合には、スクリーン上に投影された反射光像(輝線)を通じて、測定対象物の表面形状を測定する際、表面形状に応じた変位ばかりでなく、校正が不十分であることに基づく誤差も拡大されて表示されてしまうため、精度の高い測定を行うことが困難であった。さらに、光てこ法を利用した形状測定装置では校正すべきパラメータが多岐にわたるため、校正が煩雑であり、一つのパラメータを調整すると他のパラメータに影響を与えてしまうことで、他のパラメータが変化してしまうといった問題が起こる場合があることから、校正を行うに当たっての手順を規定しておくことが望まれていた。
【0055】
そのため、上記課題に鑑みて、本実施形態に係る光てこ法を利用した形状測定装置の校正方法では、光てこ法を利用した測定方法に係る多数のパラメータの校正を、現実の測定精度を損なわない範囲で、一定の手順に基づいて行うことができる方法を提供する。
【0056】
本実施形態に係る形状測定装置の校正方法に用いられる構成について、図4図6を用いて説明する。図4に、本実施形態に係る形状測定装置100の構成を示す。図5に、本実施形態に係る形状測定装置100の、線状光の延在方向から見たときの構成を示す。図6に、本実施形態に係る形状測定装置100の、測定対象物1の表面の法線方向から見たときの構成を示す。
【0057】
形状測定装置100は、測定対象物1の表面において搬送方向に直交した幅方向に沿って延在する所定の検査位置LBで、搬送方向に移動する測定対象物1の表面形状を検出する装置であり、以下の説明に反しない限りにおいて、公知の光てこ法を利用した形状測定装置を用いることができる。光てこ法を利用した形状測定装置100は、照明装置10、スクリーン20、撮像装置30、及び演算処理装置40を有している。なお、照明装置10は、上述した照明装置510と同一構成を有するものであり、上述した照明装置510の校正方法に従って、実際の光軸が校正されていることが望ましい。
【0058】
測定対象物1は、形状測定装置100で、その表面に存在する凹凸等の欠陥や粗度ムラ等といった表面形状を測定する際の、測定対象(検査対象)となる物体である。
【0059】
測定対象物1としては、例えば、平板状の厚板や薄板といった各種の鋼板を用いることができるが、これに限定されるものではなく、光てこ法を利用した測定方法を用いて表面形状を測定できる物であれば、種々の物を測定対象物として用いることができる。
【0060】
測定対象物1は、図示しない搬送装置によって、所定の搬送方向に沿って、形状測定装置100に対して相対的に搬送される。即ち、形状測定装置100が固定された状態で測定対象物1側が移動してもよく、測定対象物1が固定された状態で形状測定装置100側が移動してもよく、測定対象物1と形状測定装置100の両方が移動してもよい。測定対象物1が搬送される際には、極力、振動やたわみ等が発生しないように、測定対象物1の両端から張力を印加した状態で搬送してもよい。
【0061】
照明装置10は、測定対象物1や測定対象物1があるべき位置に向けて、より詳細には後述する検査位置LBに向けて、測定対象物1の表面の面内方向において搬送方向に直行した幅方向に延在する線状光15を照射する機能を持った照明装置である。
【0062】
照明装置10は、筐体の内部に、光源や、レンズ等の光学系を有しており、測定対象物1の搬送方向に直交した幅方向に長く延び、かつ搬送方向に細い幅を有する線状の光である線状光15を生成して、測定対象物1の表面に向けて線状光15を照射する。線状光15は測定対象物1の略全幅を覆うように延在している。照明装置10に設けられた光源や光学系としては、公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。
【0063】
照明装置10から照射される光の中心波長は、測定対象物1の検査位置LBでの鏡面反射性と、撮像装置30の波長感度特性を考慮して設計される。光の性質上、波長の長い光であればあるほど測定対象物1の表面上で鏡面反射しやすくなるため、スクリーン20上に結像される反射光像(輝線)RIの明るさが上昇し、S/N比が上昇する。一方で、照明装置10の中心波長が後述する撮像装置30の撮像可能な波長範囲を超えると、撮像画像PH内において反射光像RIの明るさが低下し、S/N比が低下する。したがって照明装置10の中心波長は、測定対象物1の鏡面反射性を考慮した波長を下限値とし、撮像装置30の波長感度特性を考慮した波長を上限値として設計される。
【0064】
照明装置10から照射される光のスペクトル幅は、反射光像RI上で観測されるスペックルノイズを考慮して設計される。レーザー光に代表されるようなスペクトル幅の小さい光を形状測定装置100に使用した場合、撮像画像PH内の反射光像RIにコントラストの高い細かい斑点模様状のスペックルノイズが生じ、S/N比が低下する。そのため、照明装置10のスペクトル幅は広く、干渉性の低い光が採用される。
【0065】
照明装置10から照射された線状光15は、測定対象物1の表面に向けて、図4図6に破線15aで示す範囲に照射され、後述する検査位置LBにおいて、測定対象物1の表面に線状に当たって(線状光15)、反射する。測定対象物1の表面の検査位置LBで反射した線状光15の反射光は、図4図6に破線15bで示す範囲を通り、後述するスクリーン20に照射、投影されて、反射光像RIとして現れる。
【0066】
光切断法を利用した測定方法の原理から明らかなように、測定対象物1の表面の線状光15が照射された位置における表面形状によって、当該線状光15が変位することから、当該線状光15の変位に基づいて、測定対象物1の線状光15が照射された位置の表面形状を測定することができる。即ち、光てこ法を利用した形状測定装置100は、測定対象物1の表面の形状を、測定対象物1の表面の線状光15が照射された位置で測定することになるため、測定対象物1の表面の線状光15が照射された位置(及び、測定対象物1が存在しない場合等には測定対象物1の表面の線状光15が照射される位置に対応する位置)が、表面形状を測定する際に用いられる位置となる。
【0067】
そのため、測定対象物1の表面の線状光15が照射された位置(及び、測定対象物1が存在しない場合等には測定対象物1の表面の線状光15が照射される位置に対応する位置)を、形状測定装置100が欠陥を測定する際に用いられる検査位置LBと称するものとする。検査位置LBは、搬送方向に直交した幅方向に延びる直線状の位置(又は領域)となる。
【0068】
照明装置10は、表面形状の測定精度を向上させるため、筐体内部に有する光学系によって、最も焦点を絞った状態(即ち、線状光15の線幅が最も狭くなった状態)の線状光15が、検査位置LBにおいて、測定対象物1の表面に当たるようにしておくことが好ましい。
【0069】
図4に示すように、ここでは、照明装置10が測定対象物1に照射する線状光15の、測定対象物1の表面における延在方向の中心位置を原点O1とし、原点O1を通り測定対象物1の搬送方向に向かう軸をy軸とし、原点O1を通り測定対象物1の搬送方向に直交した幅方向に向かう軸をx軸とし、原点O1を通り測定対象物1の表面の法線方向に向かう軸をz軸とする。この場合、図5に示すように、照明装置10から照射された線状光15は、x軸方向から見て、測定対象物1の表面に対してz軸となす角で規定される入射角θ1で照射される。そして、線状光15は、測定対象物1の表面の検査位置LBにおいて、x軸方向から見て、z軸となす角で規定される反射角θ1で反射して、反射光がスクリーン20に向かい、反射光像RIとして投影される。
【0070】
なお、照明装置10は、z軸方向から見て、測定対象物1の搬送方向に向けて線状光15を照射するように配置されるが、形状測定装置100を初期的に設置した段階(校正前の段階)では、図6に示すように、意図せず照明装置10の配置(即ち、測定対象物1の法線方向から見た、搬送方向に対する照明装置10から照射される線状光の照射方向)がずれるおそれもある。この場合、照明装置10は、z軸方向から見て、搬送方向に対し角度Φ(以下、首振り角度Φとも称する)を持った二点鎖線10aの方向に向けて、線状光15を照射してしまっている場合があり得る。
【0071】
また、照明装置10は、照明装置10自体の設計に鑑みて、設計上は、所定の出射位置から、ある一定の方向に線状光15を照射することが期待されているが、照明装置10の製造誤差や経年劣化等により、照明装置10から線状光15が出射されるレンズ上の位置が設計上の出射位置からずれたり、照明装置10から照射される線状光15の照射方向が理想的な方向からずれたりすることも考えられる。そのため、照明装置10の使用に当たっては、適宜、照明装置10自体を校正する必要が生じる場合もあり得る。
【0072】
照明装置10は図示しない支持部に保持されており、支持部ごと移動させることで、搬送方向に沿って照明装置10の配置される位置を変えることができる。また、照明装置10は支持部にx軸方向から見たときの保持角度と、z軸方向から見たときの保持角度とを、それぞれ独立に変えられる機構によって保持されるのが好ましい。
【0073】
スクリーン20は、測定対象物1の表面で反射した線状光15の反射光が反射光像RIとして投影される映写膜として機能する物体である。スクリーン20は、検査位置LBから予め決められた一定の距離の位置に、例えば、測定対象物1の表面とスクリーン20の表面が垂直となるように、照明装置10に対向して配置されている。より具体的には、スクリーン20は、図4で示されるxyz座標系において、スクリーン20の投影面の法線ベクトルがx成分を持たない(x成分の値がゼロとなる)ように配置される。
【0074】
スクリーン20は、照明装置10から照射された線状光15が、測定対象物1の表面の検査位置LBで反射することでスクリーン20上に生じた反射光像RIの全て(全長、全幅)が、写り込めるだけの充分な大きさを有しており、反射光像RIがスクリーン20上のどこに当たっているのかを判別できるようになっている。スクリーン20の粗度が低すぎると、鏡面反射の性質が高くなり、スクリーン20上の反射光像RIが見えなくなってしまう。また、粗度が高すぎると反射光像RIの形状がぼやけることで位置が特定しづらくなる。そのため、スクリーン20は、ある程度の粗度を持った素材で形成されることが好ましいが、素材の種類自体は限定されない。
【0075】
スクリーン20は、検査位置LBからの距離が大きいほど、検査位置LBの測定対象物1の表面形状を拡大させて検知することができるようになるが、線状光15の明るさの減衰も大きくなり、S/N比が悪化する。そのため、検査位置LBからスクリーン20までの距離は、予め実際に測定を行い、ある程度の距離の相場を把握しておくことが好ましい。
【0076】
撮像装置30は、線状光15の反射光が反射光像RIとして投影されたスクリーン20を撮像し、撮像画像を生成するカメラとして機能するものである。即ち、撮像装置30は、図4図6に一点鎖線で示すように、少なくともスクリーン20の表面に投影された反射光像RIの全てを含む、スクリーン20上の領域を撮像視野として撮像することで、撮像画像PHを生成する。従って、撮像画像PHには、スクリーン20に投影された反射光像RIが写り込んでいる。
【0077】
なお、本実施形態において、照明装置510の校正方法に従って照明装置10の実際の光軸を校正する場合には、図1に示した撮像装置520として、撮像装置30を適用するようにしてもよく、また、照明装置10を校正する際に用いる撮像装置520を、形状測定装置100の撮像装置30とは別に設けるようにしてもよい。
【0078】
撮像画像PHは、2次元画像からなる2次元撮像画像であることが好ましく、撮像装置30は、2次元撮像画像を生成するエリアカメラであることが好ましい。撮像装置30は白黒カメラであってもカラーカメラであってもよく、撮像画像PHも白黒画像であってもカラー画像であってもよい。
【0079】
演算処理装置40は、撮像装置30で撮像された撮像画像PHに基づいて、測定対象物1の表面形状を測定するためのデータ処理や演算を行う。演算処理装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。演算処理装置40は、図4に示すように(図5及び図6では図示を省略している)、撮像装置30に有線又は無線を用いて接続されており、撮像装置30で生成した撮像画像PHを取得することができる。
【0080】
演算処理装置40は、取得した撮像画像PHに基づいて、公知の光てこ法を利用した測定手法を用いて、撮像画像PH中に写り込んだ線状光15の変位から、測定対象物1の表面の検査位置LBにおける表面形状を測定することができる。
【0081】
なお、本実施形態において、照明装置510の校正方法に従って、照明装置10の実際の光軸を校正する場合には、演算処理装置40に、図2に示した画像取得部531、距離取得部532及びずれ量算出部533を設けた構成としてもよい。また、照明装置10を校正する演算処理装置530を、演算処理装置40とは別に設けるようにしてもよい。
【0082】
図7に、本発明に係る撮像装置30で生成される撮像画像PHの一例を示す。検査位置LB(図6)において、測定対象物1の表面に凹凸が存在した場合には、撮像画像PHに写り込んだ反射光像RIに、検査位置LBの測定対象物1の表面が平坦である場合の反射光像RIを基準線として、反射光像RIに凹形状又は凸形状の変位CDが発生する。
【0083】
この反射光像RIの変位CDは、測定対象物1の表面の凹凸に対応しているため、演算処理装置40で変位CDに基づく演算を行うことで、検査位置LBにおける測定対象物1の表面形状を判定することができる。また、測定対象物1は搬送されており、検査位置LBを測定対象物1が通過することから、検査位置LBにある測定対象物1の表面上の位置が変化し、測定対象物1の表面の搬送方向に沿った各位置において、表面形状を測定することができる。
【0084】
また、後述するように、形状測定装置100はその校正を行う際に、校正板50を用いることになる。
【0085】
校正板50は、図8に示すような、例えば、表面に直線状に延びたマーカCLが描画された平板であり、後述するように、校正板50は照明装置10の首振り角度Φと照明装置10の位置とを調整するために使用される。
【0086】
校正板50に描画されたマーカCLは、校正板50に印刷されたものであってもよく、校正板50にシール等で貼付されたものであってもよく、校正板50の表面に浅い凹部等を形成したものであってもよく、また、マーカCL自体は、実線であっても、点線等であってもよい。
【0087】
形状測定装置100を校正する際には、後述するように、検査位置LBとマーカCLとを比較することになるため、校正板50は、検査位置LBの位置に正確に配置することができ、検査位置LBとマーカCLとを対比できるような、大きさや形状であることが好ましい。
【0088】
校正板50は、任意の位置に配置しても撓まないだけの剛性を有している。校正板50の粗度が低すぎると、鏡面反射の性質が高くなり、検査位置LBにおいて線状光15が見えなくなり、マーカCLと線状光15との比較ができなくなってしまうおそれがある。また、粗度が高すぎると線状光15の形状がぼやけることで位置が特定しづらくなるおそれがある。そのため、校正板50は、ある程度の粗度を持った素材で形成されることが好ましいが、素材の種類自体は限定されない。
【0089】
次に、本実施形態に係る形状測定装置100の校正方法における処理について、図9を用いて説明する。図9に、本実施形態に係る形状測定装置100の校正方法における処理を説明するためのフローチャートを示す。
【0090】
(ステップS101)
本実施形態に係る形状測定装置100の校正方法を開始すると、ステップS101の処理を行う。ステップS101では、照明装置10の設計上の光軸に沿った方向と線状光15の延在方向との両方に直交する方向において、照明装置10の設計上の光軸に対する実際の光軸を校正することで、照明装置10自体を校正する(照明装置校正ステップ)。
【0091】
照明装置10は、上述した通り、照明装置10自体の製造誤差や経年劣化等により、照明装置10から照射される線状光15の出射位置や、現実の光軸の方向が、照明装置10の設計上決められた理想的な出射位置や光軸の方向からずれている可能性がある。そのため、ステップS101では、照明装置10から照射される線状光15の出射位置や、現実の光軸の方向について校正を行う。
【0092】
照明装置10自体の校正方法としては、公知の照明装置の校正方法を適宜用いることができるが、例えば、本実施形態に係る照明装置510の校正方法を用いることが望ましい。この場合、照明装置校正ステップでは、図3に示したフローチャートに従って、照明装置10の校正が行われる。具体的には、例えば、本実施形態に係る照明装置510の校正方法を利用して、照明装置10の設計上の光軸に沿った方向と、線状光15の延在方向との両方に直交する方向(すなわち、試験面560上での第2方向(図1))における、照明装置10の設計上の光軸に対する実際の線状光15のずれ量を校正する。
ステップS101における照明装置10の校正が終わると、ステップS103に進む。
【0093】
(ステップS103)
ステップS103では、ステップS101で校正された照明装置10の位置と、線状光15の延在方向から見た測定対象物1の表面へ線状光15が照射される角度とを、反射光像RIがスクリーン10の所定位置に投影される幾何学的配置に調整する。即ち、線状光15の延在方向から見たときの照明装置10の測定対象物1に対する俯角(線状光15の延在方向から見た照明装置10の光軸の角度)を、線状光15の反射光像RIがスクリーン20の所定位置(例えば、スクリーン20の中央部)に投影されるような幾何学的な配置となる幾何学的配置に調整する(入射側仮調整ステップ)。
【0094】
光てこ法を利用した測定方法では、スクリーン20に投影された反射光像RIの変位に基づいて、測定対象物1の表面の検査位置LBにおける表面形状を測定するため、表面形状の程度によってある程度変位があったとしても、反射光像RIがスクリーン20内(及び撮像装置30の撮像視野)から外れないように、位置的な余裕をもって、スクリーン20上に投影されている必要がある。そのため、極力大きな余裕を確保するために、スクリーン20の略中央に反射光像RIが配置されるように、照明装置10を調整する。
【0095】
スクリーン20と検査位置LBとの距離は一定であるため、照明装置10が配置される高さを任意に決めれば、幾何学的な関係から、線状光15の反射光像RIがスクリーン20の中央部に投影される場合の、照明装置10の位置、及び、検査位置LBに対する照明装置10の角度が一意に求められる。そのため、そうした幾何学的な関係から決まる距離や角度となるように、照明装置10を調整する。
【0096】
但し、こうした幾何学的な調整をしただけでは、照明装置10が最大限正しい位置や角度となるように努めたとしても、現実的には、形状測定装置100の精度からすれば、測定結果に影響を与えるずれが潜在的に存在し、幾何学的な関係通りに反射光像RIがスクリーン20の中央部に投影されない場合が多いが、ステップS103では、反射光像RIの現実の投影位置によらずに、あくまで幾何学的に求まる位置と角度に合わせて照明装置10の調整を行う。そのため、ステップS103では、校正の際に意図せず生じる配置からのずれ等は考慮されない。
ステップS103における照明装置10の調整が終わると、ステップS105に進む。
【0097】
(ステップS105)
ステップS105では、表面に直線状のマーカCLが描画された校正板50を、校正板50に描画されたマーカCLが、検査位置LBに合うように配置する(校正板配置ステップ)。
【0098】
ステップS105では、測定対象物1を除き校正板50を単独で、検査位置LBとマーカCLの位置が重なり合うように、校正板50を配置する。
【0099】
図10に、本実施形態に係る形状測定装置100に校正板50を配置する手法を説明するための図を示す。図10では、説明のために、測定対象物1が配置されていた場所に、測定対象物1を破線で表示してある。図10に示すように、検査位置LBは測定対象物1の搬送方向と直交する幅方向に延びた直線状の領域であるため、校正板50に描画された直線状のマーカCLを、検査位置LBの位置と合致するように(マーカCLの直線と、検査位置LBの延在方向をそろえるように)配置することができる。
ステップS105における校正板50の配置が終わると、ステップS107に進む。
【0100】
(ステップS107)
ステップS107では、照明装置10を用いて、線状光15を照射する(照明ステップ)。ステップS105において、校正板50のマーカCLが検査位置LBと重なり合うように配置されているため、照明装置10から線状光15を照射すると、もし仮に、照明装置10から検査位置LBまでの距離や照明装置10からの線状光15の照射角度に、誤差がないのであれば、照明装置10から照射される線状光15が、校正板50に描画された直線CLに重なるように照射されることが期待される。ステップS107で照明装置10から線状光15の照射が開始されると、ステップS109に進む。
【0101】
(ステップS109)
ステップS109では、測定対象物1の法線方向から見た、搬送方向に対する照明装置10の角度Φ(首振り角度Φ)を、線状光15と校正板50のマーカCLとに基づいて調整する。即ち、測定対象物1の法線方向から見たときの照明装置10の首振り角度Φを、線状光15の延在方向と、校正板50に描画されたマーカCLの延在方向とが平行となるように調整する(角度調整ステップ)。
【0102】
図11(a)及び図11(b)に、測定対象物1の法線方向から見たときの、搬送方向に対する照明装置10の首振り角度Φを、線状光15の延在方向と、校正板50に描画されたマーカCLの延在方向とが平行となるように調整する処理を説明するための図を示す。
【0103】
図6に二点鎖線10aで示したように、照明装置10が、z軸方向から見て(即ち、測定対象物1の法線方向から見て)、搬送方向であるy軸方向に対する、照明装置10の現実の光軸の首振り角度Φを持っているとすると、線状光15の延在方向は首振り角度Φに垂直な方向であるため、図11(a)に示すように、マーカCLと線状光15とは平行にはならない。
【0104】
そのため、ステップS109では、線状光15とマーカCLとを目視等で確認しながら、ステップS101で校正した照明装置10の位置と角度(線状光15の延在方向から見た測定対象物1の表面に線状光15が照射される角度)を変えないように注意しつつ、z軸方向から見たときのy軸方向に対する照明装置10の首振り角度Φを調整し、図11(b)に示すように、線状光15の延在方向とマーカCLの延在方向とが平行となるようにする。
ステップS109で線状光15の延在方向とマーカCLの延在方向とが平行になるように照明装置10の首振り角度Φを調整し終わると、ステップS111に進む。
【0105】
(ステップS111)
ステップS111では、測定対象物1の法線方向から見た、照明装置10の搬送方向の位置を、線状光15と校正板50のマーカCLとに基づいて調整する。即ち、測定対象物1の法線方向から見たときの照明装置10の搬送方向の位置を、線状光15と、校正板50に描画されたマーカCLとが重なるように調整する(位置調整ステップ)。
【0106】
図12(a)及び図12(b)に、測定対象物1の法線方向から見たときの照明装置10の搬送方向での位置を、線状光15と、校正板50に描画されたマーカCLとが重なるように調整する処理を説明するための図を示す。
【0107】
図12(a)に示すように、z軸方向から見た(測定対象物1の法線方向から見た)場合に、ステップS109で線状光15の延在方向と、校正板50に描画されたマーカCLの延在方向とは、平行となるように調整されてはいるものの、線状光15と、校正板50に描画されたマーカCLとの間には、搬送方向(y軸方向)において位置のずれが存在している。
【0108】
そのため、ステップS111では、線状光15とマーカCLとを目視等で確認しながら、ステップS101で校正した照明装置10の位置と角度(線状光15の延在方向から見た測定対象物1の表面に線状光15が照射される角度)とを変えないように注意しつつ、照明装置10の位置を、搬送方向に沿って調整し、図12(b)に示すように、線状光15とマーカCLとが重なるようにする。
ステップS111で線状光15と校正板50に描画されたマーカCLとが重なるように調整し終わると、ステップS113に進む。
【0109】
(ステップS113)
ステップS113では、校正板50を検査位置LBから取り外す(校正板排除ステップ)。
形状測定装置100の検査位置LBから、校正板50を取り除くことで、表面形状の検査対象となる測定対象物1を形状測定装置100に向けて搬送し、形状測定装置100で、測定対象物1の表面形状を測定できるようになる。
【0110】
こうして、形状測定装置100の校正が終わり、表面形状を測定できるようになれば、本実施形態に係る形状測定装置100の校正方法を終了する。
【0111】
以上で説明したように、本実施形態によれば、調整すべきパラメータが多岐にわたり、自由に調整できないパラメータが存在し得る、光てこ法を利用した形状測定装置100について、一定の指針に基づいて校正を行うことができるようになる。
【0112】
こうした校正を行うことで、多数のパラメータを無秩序に試行錯誤することなく、最低限の試行錯誤を行うだけで、形状測定装置100の校正を行うことができる。
【0113】
また、こうした校正を行うことで、校正作業者が、形状測定装置100の照明装置10やスクリーン20等の各要素を幾何学的に正しい配置や角度に合わせこんだと思っているなかで、各要素に関する校正作業者が認識できない誤差があるような場合であっても、実用上問題となるような誤差が出ないように、形状測定装置100を校正することができる。
【0114】
以上、本実施形態に係る形状測定装置100の校正方法では、測定対象物1の表面形状を高精度に測定するために必要となる多数のパラメータの校正を、現実の測定精度を損なわない範囲で、一定の手順に基づいて行うことができるので、測定対象物1の表面形状を高精度に測定することができる。
【0115】
<他の実施形態>
なお、図9におけるステップS101の照明装置校正ステップで照明装置10を校正する際に用いられる試験面560には、後述するように照明装置10から照射された光(線状光15)が当たることになるが、光が当たる面が略平面であり、光が照射されている位置が特定できるのであれば、試験面560で光が当たる面以外の面の形状は特に限定されるものではない。試験面560の素材としては、比較的光の拡散性が小さいものを用いた方が、試験面560上の光のなす外縁形状が特定し易いため好ましい。照明装置10を校正するにあたっては、照明装置10を形状測定装置100から取り外して行ってもよく、照明装置10を形状測定装置100の所定の位置に取り付けた状態のまま行ってもよい。
【0116】
また、上述した実施形態においては、ずれ量として、変位ずれyと傾きずれθとの両方をずれ量として算出した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、変位ずれy又は傾きずれθのいずれか一方のみをずれ量として算出するようにしてもよい。
【0117】
また、上述した実施形態においては、試験面の面内方向における照明装置の設計上の照射開始位置と、照明装置の現実の照射開始位置との差でなる変位ずれとして、例えば、試験面560の面内方向において、試験面560の法線方向(第1方向)と直交する高さ方向(第2方向)での変位ずれyを算出する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、試験面560の面内方向において、試験面560の法線方向と直交する幅方向等、種々の第2方向での変位ずれを算出するようにしてもよい。
【0118】
また、上述した実施形態においては、照明装置の設計上の光軸に沿った方向と直交する面内方向での、照明装置の設計上の光軸と、照明装置の実際の光軸とのずれ量に基づいて、照明装置の現実の光軸を校正する照明装置校正ステップとして、照明装置510から試験面560までの距離を試験面560の法線方向に沿って変えながら、照明装置510から照射された光によって距離ごとに試験面560の面内方向(照明装置510の設計上の光軸に沿った方向と直交する面内方向)に現れる光像の位置を測定して設計上の光軸に対するずれ量を算出し、当該ずれ量に基づいて実際の光軸を校正する照明装置校正ステップを適用したが、本発明はこれに限らない。例えば、試験面560を用いずに測定対象物1との距離を変えるように照明装置10を移動し、照明装置10の設計上の光軸に沿った方向と直交する面内方向において測定対象物1に投影された光像の位置を測定して実際の光軸を校正する等、その他種々の校正方法を適用してもよい。
【0119】
なお、上述した実施形態において、撮像画像には、ディスプレイなどの表示部に表示される具体的な画像としての形態だけでなく、表示部に画像として生成される前のデータも当然に含まれるものである。
【実施例0120】
図13に、本実施形態において、照明装置510から試験面560までの距離dを試験面560の法線方向(第1方向)に沿って変えてゆき、距離ごとに試験面560上の光像の第2方向の位置yを調べて、当該光像の位置yの変化を記録したグラフを示す。
【0121】
図13の横軸は、照明装置510から試験面560までの第1方向(例えば水平方向)の距離dであり、縦軸は試験面560上の光像の第2方向の位置yである。
【0122】
図13に示すように、距離dを10パターン変化させて(iを10通り用いて)、距離dごとに試験面560上での光像の位置を測定し、10点のプロットを得た。
【0123】
取得した10点のデータを用いて、最小二乗法により直線近似した近似曲線を、図13中に黒の破線で示している。
【0124】
上記の式(2)から傾きずれθ、上記の式(3)から変位ずれyを算出したところ、傾きずれθ=2.2°、変位ずれy=12.3mmとなった。
【0125】
最小二乗法を用いて直線近似を実施する場合には、一般に、下記の式(4)で示される決定係数Rを用いて最小二乗法による近似が妥当か評価することができることが知られている。この決定係数Rが1に近い値であれば、距離dと、位置yとは強い線形関係があり、最小二乗法による直線近似が妥当であると判断することができる。
【数4】
【0126】
そのため、測定で得られた傾きずれθと変位ずれyに基づいて、決定係数Rを算出したところ、R=0.996となり、Rが1.0の値に非常に近い値となることが分かった。
【0127】
そのため、本実施形態で導出される傾きずれθと変位ずれyに基づいてなされた最小二乗法による直線近似は、妥当なものであり、傾きずれθ=2.2°、変位ずれy=12.3mmは、照明装置510の校正に用いることができる妥当な値であるということが分かる。
【符号の説明】
【0128】
1 測定対象物
10、510 照明装置
15 線状光
20 スクリーン
30、520 撮像装置
40、530 演算処理装置
50 校正板
560 試験面
100 形状測定装置
図1
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図13