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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091214
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】生産設備のロス状況可視化システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240627BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240627BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045387
(22)【出願日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022206934
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇久
(72)【発明者】
【氏名】桐山 謹次
(72)【発明者】
【氏名】川上 健人
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA58
3C100BB13
3C100BB27
3C100BB33
3C100CC02
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】生産設備のロス状況を簡単に把握することができるシステムを提供する。
【解決手段】生産設備のロス状況可視化システム(10)は、生産設備(70、71、72)のロス状況を可視化するシステムであって、生産設備の稼働を示す稼働データと当該生産設備のロスを示すロスデータとを取得するデータ取得処理部(101)と、取得した稼働データ及びロスデータを集計し、設定された負荷時間内における生産設備の稼働状況を示す稼働状況情報(30)と、負荷時間内における生産設備のロス状況を示すロス状況情報(40)と、を表示装置(90、91、92、93)に表示させる可視化処理を実行可能な可視化処理部(102)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備のロス状況を可視化するシステムであって、
前記生産設備の稼働を示す稼働データと当該生産設備のロスを示すロスデータとを取得するデータ取得処理を実行可能なデータ取得処理部と、
取得した前記稼働データ及び前記ロスデータを集計し、設定された負荷時間内における前記生産設備の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記負荷時間内における前記生産設備のロス状況を示すロス状況情報と、を表示装置に表示させる可視化処理を実行可能な可視化処理部と、
を備える生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項2】
前記可視化処理は、前記稼働状況情報と前記ロス状況情報とを、前記表示装置の同一画面に表示させる処理を含む、
請求項1に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項3】
前記可視化処理は、前記稼働状況情報と前記ロス状況情報とを、それぞれ異なる前記表示装置に同時に表示させる処理を含む、
請求項1に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項4】
前記可視化処理は、前記稼働状況情報と前記ロス状況情報とを、前記表示装置に自動で又は作業者の操作に基づいて切り替えて表示する処理を含む、
請求項1に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項5】
生産設備のロス状況を可視化するシステムであって、
前記生産設備のロスを示すロスデータを取得するデータ取得処理を実行可能なデータ取得処理部と、
取得した前記ロスデータを集計し、設定された負荷時間内における前記生産設備のロス状況を示すロス状況情報を表示装置に表示させる可視化処理を実行可能な可視化処理部と、
を備える生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項6】
前記ロス状況情報は、前記負荷時間内において前記生産設備が稼働していた稼働時間と前記ロスが発生していたロス時間との割合を示す割合グラフと、前記ロス時間の内訳の割合を示す内訳グラフと、を含んでいる、
請求項1または5に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項7】
前記ロス状況情報は、前記負荷時間内における前記ロス時間の内訳の割合を示す内訳グラフを含んでいる、
請求項6に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項8】
前記ロスは、不良ロス、速度ロス、異常ロス、停止ロス、立ち上げロス、段取りロス、及び刃具・治具ロスを含んでいる、
請求項1または5に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項9】
前記ロス状況情報は、前記負荷時間内において前記生産設備が稼働していた稼働時間と前記ロスが発生していたロス時間との割合を示す割合グラフと、前記ロス時間の内訳の割合を示す内訳グラフと、を含んでいる、
請求項1または5に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項10】
前記ロス状況情報は、前記生産設備で発生した事象に関する直近の履歴を一覧で示す履歴情報を更に含んでいる、
請求項9に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項11】
前記稼働状況情報は、設備総合効率を数値で示す設備総合効率情報と、前記負荷時間を数値で示す負荷時間情報と、前記負荷期間内における前記生産設備の稼働状況の推移をグラフで示す稼働状況グラフと、更に含んでいる、
請求項1に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項12】
前記データ取得処理部は、作業者からの入力に基づいて前記稼働データ及び前記ロスデータを取得可能に構成されている、
請求項1に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項13】
前記可視化処理は、前記ロスの開始を登録するためのロス開始ボタンと前記ロスの終了を登録するためのロス終了ボタンとを前記表示装置に表示させる処理を含み、
前記データ取得処理は、前記ロス開始ボタン及び前記ロス終了ボタンに対する操作入力に基づいて前記ロスデータを取得する処理を含む、
請求項12に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【請求項14】
前記データ取得処理は、前記ロスの開始を示す二次元コードであるロス開始コードと、前記ロスの終了を示す二次元コードであるロス終了コードとを、作業者が読取装置を用いて読み取ることで前記ロスデータを取得する処理を含む、
請求項12に記載の生産設備のロス状況可視化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産設備のロス状況可視化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの生産現場では、予め設定された時間内に目標数の生産を行うことが求められる。しかし、生産現場では、生産設備の異常停止や、品番の切り替えによる段取り又は刃具・治具の交換による停止など、生産性を阻害するような時間的な損失が生じる。この生産現場で生じる時間的な損失を、生産ロス若しくは単にロスと称する。そして、日々の生産においては、このロスにより、生産時間内で目標数を達成できない場合が多々ある。このようなロスを低減して生産性を向上させるためには、どのような要因のロスがどれだけの時間発生していたかなど、発生したロスの状況をできるだけ正確に把握することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-174443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産設備のロス状況を簡単に把握することができる生産設備のロス状況可視化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態による生産設備のロス状況可視化システムは、生産設備のロス状況を表示装置に可視化させるシステムである。生産設備のロス状況可視化システムは、前記生産設備の稼働を示す稼働データと当該生産設備のロスを示すロスデータとを取得するデータ取得処理を実行可能なデータ取得処理部と、取得した前記稼働データ及び前記ロスデータを集計し、設定された負荷時間内における前記生産設備の稼働状況を示す稼働状況情報と、前記負荷時間内における前記生産設備のロス状況を示すロス状況情報と、を前記表示装置に表示させる可視化処理を実行可能な可視化処理部と、を備える。
【0006】
また、他の実施形態による生産設備のロス状況を可視化するシステムは、前記生産設備のロスを示すロスデータを取得するデータ取得処理を実行可能なデータ取得処理部と、取得した前記ロスデータを集計し、設定された負荷時間内における前記生産設備のロス状況を示すロス状況情報を表示装置に表示させる可視化処理を実行可能な可視化処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による生産設備のロス状況可視化システムの構成の一例を概略的に示す図
図2】第1実施形態による生産設備のロス状況可視化システムのハードウェア構成の一例を概念的に示す図
図3】第1実施形態による生産設備のロス状況可視化システムについて表示装置に表示される表示内容の一例を示す図(その1)
図4】第1実施形態による生産設備のロス状況可視化システムについて表示装置に表示される表示内容の一例を示す図(その2)
図5】第1実施形態による生産設備のロス状況可視化システムで実行される処理内容の一例を示すフローチャート
図6】設備総合効率の算出式を示す図
図7】第2実施形態による生産設備のロス状況可視化システムについて表示装置に稼働状況情報が表示された場合の一例を示す図
図8】第2実施形態による生産設備のロス状況可視化システムについて表示装置にロス状況情報が表示された場合の一例を示す図
図9】第3実施形態による生産設備のロス状況可視化システムについて表示装置にロス状況情報が表示された場合の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による生産設備のロス状況可視化システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0009】
本明細書では、生産設備のロス状況可視化システムを略して可視化システムと称する場合がある。また、本明細書において、ロスとは、生産設備の生産性を阻害する時間的な損失すなわち生産効率を低下させる要因を意味する。ロス状態とは、生産設備にロスが発生している状態すなわち生産設備の生産効率が悪化している状態を意味する。ロス状況とは、ある時点またはある期間における生産設備のロスの発生状況を意味する。稼働状態とは、生産設備が製品を生産している状態を意味する。そして、稼働状況とは、ある時点またはある期間における生産設備の稼働の状況を意味する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図1から図6を参照して説明する。図1に示す可視化システム10は、生産ラインを構成する生産設備70についての稼働状況及びロス状況を可視化するシステムである。可視化システム10が対象とする生産設備70は、例えば加工機、組付け機、検査機、搬送装置、及びロボットなどがあるが、これらに限られない。
【0011】
可視化システム10は、例えば単一のコンピュータ装置で構成することもできるし、例えば複数の装置がLAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)などの電気通信回線によって相互に通信可能に接続されたネットワークシステムで構成することもできる。また、可視化システム10は、生産設備70及び表示装置90と同一のネットワーク内に設置されて生産設備70及び表示装置90の管理運営者と同一の者が管理運営するいわゆるオンプレミス型のシステムであっても良いし、例えばインターネット上に設置されて生産設備70及び表示装置90の管理運営者とは異なる者が管理運営するいわゆるクラウド型のシステムであっても良い。
【0012】
可視化システム10は、生産設備70の稼働データ及びロスデータを取得する機能と、その取得した稼働データ及びロスデータを集計及び可視化して表示装置90に表示させる機能と、を有する。可視化システム10は、生産設備70と有線又は無線で通信可能に接続されて生産設備70から直接的に各データを取得することもできるし、作業者などを介在させて間接的に各データを取得することもできる。
【0013】
例えば生産設備71が通信機能を備えており、稼働状態であることを示す信号及びロス状態であることを示す信号を出力可能に構成されている場合、可視化システム10は、生産設備71から出力された信号を受信することで、稼働データ及びロスデータを取得することができる。この場合、生産設備71は、例えば生産設備71に組み込まれたPLC(Programmable Logic Controller)や制御装置等が、直接又はネットワークHUBなどの中継器60を介して可視化システム10に通信可能に接続される。また、例えば生産設備71に上述した信号を出力する機能が備わっていない場合、作業者等が外部の入力装置80、91、92に稼働データ及びロスデータ入力することによって、可視化システム10は、稼働データ及びロスデータを取得することができる。
【0014】
稼働データは、生産設備70の稼働を示すデータ、すなわち生産設備70が運転中であるか否かを示すデータである。ロスデータは、生産設備70がロス状態となっていることを示すデータである。稼働データは、例えば生産設備70が稼働状態となっている期間の情報、すなわち稼働の開始時刻及び稼働の終了時刻の情報を含んでいても良い。ロスデータも、例えば生産設備70がロス状態となっている期間の情報、すなわちロスの開始時刻及びロスの終了時刻の情報を含んでいても良い。
【0015】
本実施形態において、ロスには、設備効率を悪化させる大きな要因となるいわゆる7大ロス、すなわち不良ロス、速度ロス、異常ロス、停止ロス、立上げロス、段取りロス、及び刃具・治具ロスが含まれる。不良ロスは、手直しロスとも称され、不良品の発生や、不良品の手直しなどによって生じるロスである。速度ロスは、性能ロスとも称され、生産設備70で設定されている速度に対して実際の速度が低下することによって生じるロスである。異常ロスは、故障ロスとも称され、生産設備70が突発的又は慢性的な異常や故障によって生じるロスである。
【0016】
停止ロスは、生産設備70が一時的に停止することや空転していることによって生じるロスである。立上げロスは、定期修理後や長時間の停止後、休日後、休憩後などからの開始時に生じるロスであり、例えばウォームアップや予冷、予熱運転に伴うロスである。段取りロスは、生産設備70で生産する製品の種類、品番を切り替える際の設定の変更や調整によって生じるロスである。そして、刃具・治具ロスは、消耗品交換ロスとも称され、刃具や治具などの消耗品の交換や切り替えなどによって生じるロスである。
【0017】
表示装置90は、例えば可視化システム10とは別の外部の装置であって、画像や映像の表示機能を有している。なお、表示装置90は、可視化システム10に組み込まれたものでもよい。図1に示すパソコン91、携帯端末92、及び大型ディスプレイ93は、外部の表示装置90の一例である。パソコン91の例としては、例えば据え置き型のデスクトップパソコンや持ち運び可能なノートパソコン等がある。携帯端末92の例としては、例えばスマートフォンやタブレット端末等がある。また、大型ディスプレイ93は、特定場所に据え置かれることを前提としたものであり、例えば数十インチ程度のディスプレイで構成することができる。この場合、パソコン91や携帯端末92などのように入力インタフェースを備えたものは、外部の入力装置としても機能する。また、可視化システム10には、外部の入力装置として二次元コードの読取装置80を接続することもできる。また、表示装置90は、例えば作業者が頭に装着するヘッドマウントディスプレイや腕に装着するスマートウォッチなどのいわゆるウェアラブルデバイスで構成することもできる。
【0018】
なお、本実施形態において、表示装置90の画面の左右方向は、使用者から見た場合の左右方向を意味する。また、表示装置90の画面の上下方向は、表示装置90の画面を垂直に立てた場合の上下方向を意味し、表示装置90の画面を水平に配置した場合には使用者に近い方が下側で使用者から遠ざかる方が上側となる。また、表示装置90が例えばパソコン91や携帯端末92等のように入力インタフェースを備えたものである場合、作業者は、パソコン91や携帯端末92の入力インタフェースを用いてパソコン91や携帯端末92に表示される表示内容を操作することができる。
【0019】
可視化システム10は、データ取得処理部101と、可視化処理部102と、を含んで構成されている。データ取得処理部101及び可視化処理部102は、例えばCPUにおいてコンピュータプログラムを実行することにより仮想的に実現される機能部で構成することができる。なお、データ取得処理部101及び可視化処理部102は、同一又は共通するハードウェアで構成することもできるし、異なるハードウェアで構成することもできる。
【0020】
可視化システム10のハードウェア構成は、図2に示すように、CPU11、主記憶装置12、補助記憶装置13、及びインタフェース14を含んで構成することができる。補助記憶装置13は、データ取得処理部101及び可視化処理部102をコンピュータ上で仮想的に実現するためのコンピュータプログラムとして、ロス状況可視化プログラム21を記憶している。可視化システム10は、CPU11がロス状況可視化プログラム21を補助記憶装置13から読み出して主記憶装置12に展開し実行することで、データ取得処理部101及び可視化処理部102をそれぞれコンピュータ上で仮想的に実現することができる。
【0021】
補助記憶装置13は、有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体で構成される。補助記憶装置13の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置13は、可視化システム10を構成するコンピュータのバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース14または電気通信回線を介して可視化システム10に接続される外部メディアであってもよい。また、ロス状況可視化プログラム21が電気通信回線によって可視化システム10に配信される場合、配信を受けた可視化システム10が当該ロス状況可視化プログラム21を主記憶装置12に展開し実行することで、上記各処理部101、102が実現される。
【0022】
なお、各処理部101、102の実現は、上記したハードウェアとロス状況可視化プログラム21の組み合わせに限られない。各処理部101、102の実現は、例えばロス状況可視化プログラム21をインプリメントした集積回路のようなハードウェア単体で実現するようにしてもよいし、一部の機能を専用のハードウェアで実現し、残りをハードウェアとロス状況可視化プログラム21の組み合わせで実現するようにしてもよい。
【0023】
データ取得処理部101は、データ取得処理として、自動データ取得処理または手動データ取得処理の少なくとも一方または両方を実行可能である。自動データ取得処理は、例えば生産設備71から受信した信号に基づいて、生産設備71の稼働データ及びロスデータを取得する処理である。手動データ取得処理は、例えば外部の入力装置80、91、92を介して入力された情報に基づいて、生産設備72の稼働データ及びロスデータを取得する処理である。本実施形態の場合、データ取得処理部101は、自動データ取得処理と手動データ取得処理との両方を実行可能である。データ取得処理部101は、例えば生産設備71から取得した信号、及び外部の入力装置80、91、92を介して入力された情報と、その信号又は情報を取得した時刻とを紐づけて、図2に示すように稼働データ22又はロスデータ23として補助記憶装置13等に記憶させる。
【0024】
可視化処理部102は、可視化処理を実行可能である。可視化処理は、データ取得処理部101で取得した稼働データ及びロスデータを集計すると共に可視化して表示装置90に表示させる処理を含む。この場合、可視化処理部102は、表示装置90を直接的に制御する構成であっても良いし、表示を制御するプログラムを出力し、そのプログラムを、表示装置90の表示を制御するコンピュータの例えばブラウザ上で実行することで表示装置90の表示内容を間接的に制御する構成であっても良い。
【0025】
可視化処理は、取得した稼働データ及びロスデータを集計し、稼働状況情報30と、ロス状況情報40と、を表示装置90に表示させる処理を含む。可視化処理は、例えば図3に示すように、取得した稼働データ及びロスデータを集計し、稼働状況情報30と、ロス状況情報40と、を表示装置90に同一画面に同時に表示させる処理を含む。
【0026】
本実施形態の場合、可視化処理は、稼働状況情報30とロス状況情報40とを、例えば同一画面上で上下又は左右に並べて表示させる処理を含む。稼働状況情報30は、設定された負荷時間内における生産設備70の稼働状況を示す情報である。なお、負荷時間とは、生産設備70に対して生産活動のために割り当てられた時間であり、例えば操業時間から、朝礼、休憩時間、清掃、及び計画停止などで生産設備が稼働しない時間を引いたものである。負荷時間は、例えば可視化システム10の利用者が入力インタフェース14などを用いて適宜設定変更することができる。
【0027】
なお、本実施形態において、2つ以上の情報等を同一画面に表示させるとは、その2つ以上の情報又は表示がいずれも同一の期間に同一画面内に表示されていること、すなわち当該2つ以上の情報又は表示が同時に同一画面内に表示されていることを意味する。この場合、同一画面とは、可視化処理部102の制御が及んでいる表示装置の画面を意味し、単一の表示装置の画面だけでなく、物理的に分離した2つ以上の表示装置の画面も含む概念である。例えばいわゆるデュアルディスプレ等のように、表示範囲を拡張して複数の表示装置に分けて表示する構成も、同一画面への表示とみなすことができる。
【0028】
また、2つ以上の情報等を同時に表示させるとは、その情報等を見た者が同時に表示されていると認識できる程度であればよく、厳密に同時である必要はない。例えば、2つ以上の情報等を短い間隔で切り替えて表示させる場合であっても、その情報を見た者が2つ以上の情報を同時に把握できるのであれば、その表示態様は本実施形態における同時に表示させる概念に含まれる。
【0029】
さらには、可視化システム10は、稼働状況情報30とロス状況情報40とを、それぞれ異なる表示装置90に同時に表示させる構成とすることができる。例えばパソコン91にはロス状況情報40のみを表示させ、携帯端末92には稼働状況情報30のみを表示させる構成とすることができる。すなわち、可視化システム10は、稼働状況情報30とロス状況情報40とを、作業者の視野内に表示する構成とすることができる。この場合、稼働状況情報30とロス状況情報40とのうちの一方を見た作業者が、他方を見たいと思った場合に直ぐに見られるように、作業者の同一視野内に表示させる構成とすることもできる。さらに、この場合、稼働状況情報30の表示を制御する可視化処理部102と、ロス状況情報40の表示を制御する可視化処理部102とは、相互に独立した構成つまり物理的又は電気的に分離された構成であっても良い。なお、図3及び図4において示された2点鎖線は、稼働状況情報30とロス状況情報40との領域を仮想的に示すものであり、実際の表示装置90には表示されない。
【0030】
稼働状況情報30は、主に生産設備70の稼働状況に着目した情報である。なお、稼働状況情報30は、稼働状況に関する情報のみで構成されている必要はなく、ロス状況に関する情報が含まれていても良い。図3に示すように、稼働状況情報30は、例えば状態情報31、設備総合効率情報32、負荷時間情報33、及び稼働状況グラフ34を含んでいる。状態情報31は、生産設備70の現在の稼働状態を示す情報である。本実施形態の場合、状態情報31は、生産設備70が現在稼働しているか又は停止しているか、及び停止している場合はその停止の理由を示す情報である。この場合、状態情報31は、生産設備70が現在稼働している場合は「稼働中」の文字が表示され、生産設備70が現在停止している場合は「停止中」の文字が表示される。なお、状態情報31は、例えば上記した文字と共に又は上記した文字に代えて、色などで表示しても良い。
【0031】
設備総合効率情報32は、生産設備70の設備総合効率を数値で示す情報である。設備総合効率は、図6の式で算出することができる。設備総合効率は、上述したいわゆる7大ロスを含めた総合的な効率を表すものであり、生産設備や生産ラインの信頼性を表す指標の1つとして利用される。負荷時間情報33は、例えばその日の操業開始時刻などのようにある基準時点から現在までの期間中における負荷時間を数値で示すものである。設備総合効率情報32の算出にはロス状況も必要になることから、設備総合効率情報32は、実質的にはロス状況に関する情報も含まれているといえる。
【0032】
そして、稼働状況グラフ34は、負荷期間内における生産設備70の稼働状況を経時的に図形で示すグラフである。稼働状況グラフ34は、いわゆる積み上げの棒グラフで構成される。稼働状況グラフ34は、生産設備70の稼働状況及びロス状況の現在まで履歴を示す情報である。本実施形態の場合、稼働状況グラフ34は、横軸に時間を取った横棒グラフとして構成されている。この場合、稼働状況グラフ34の横棒34aの左側端は、操業開始時刻の状態を示す。また、横棒34aの右側端は、現在時刻の状態を示す。この場合、横棒34aは、時間の経過と共に右方向へ延びていく。
【0033】
稼働状況グラフ34の棒34aは、生産設備70が稼働していた時間帯を示す稼働領域341と、生産設備70にロスが発生していた時間帯を示すロス領域342と、を含んで構成されている。本実施形態の場合、稼働状況グラフ34の棒34aは、稼働領域341とロス領域342とで構成されている。稼働状況グラフ34の棒34aは、稼働領域341とロス領域342とで異なる色に着色されている。この場合、稼働領域341は、緑や青などの安全を想起させる色が好ましい。また、ロス領域342は、オレンジや赤などの注意を引く色が好ましい。なお、稼働時間又はロス時間が0である場合には、時間が0となる稼働領域341又はロス領域342は稼働状況グラフ34に表示されない。稼働状況グラフ34を描画するためにはロス状況も必要になることから、稼働状況グラフ34は、実質的にはロス状況に関する情報も含まれているといえる。
【0034】
ロス状況情報40は、主に生産設備70のロス状況に着目した情報である。なお、ロス状況情報40は、ロス状況に関する情報のみで構成されている必要はなく、稼働状況に関する情報が含まれていても良い。ロス状況情報40は、例えば割合グラフ41、内訳グラフ42、及び履歴情報43を含んでいる。本実施形態の場合、可視化処理部102は、割合グラフ41、内訳グラフ42、及び履歴情報43を、画面上において直線上に配置、この場合、画面の長手方向に並べて表示させる。そして、可視化処理部102は、割合グラフ41と内訳グラフ42とを隣接させて、すなわち割合グラフ41と内訳グラフ42との間に他の情報を配置しないようにして表示させる。
【0035】
割合グラフ41は、生産設備70について負荷時間内における稼働とロスとの割合、すなわち負荷時間内において生産設備70が稼働していた稼働時間の合計とロスが生じていたロス時間の合計との割合を示すグラフである。内訳グラフ42は、負荷時間内に生じていたロス時間の内訳、すなわち割合グラフ41に含まれるロス時間の内訳を示すグラフである。割合グラフ41及び内訳グラフ42は、例えば円グラフやドーナツグラフ、棒グラフなどで構成することができる。
【0036】
割合グラフ41は、負荷時間内において生産設備70が稼働していた時間の合計を示す稼働領域411と、負荷時間内において生産設備70にロスが発生していた時間の合計を示すロス領域412と、を含んで構成されている。本実施形態の場合、割合グラフ41は、稼働領域411とロス領域412とで構成されている。この場合、割合グラフ41における稼働領域411とロス領域412との比率は、稼働状況グラフ34の横棒34aにおける稼働領域341とロス領域342との比率に等しくなる。
【0037】
割合グラフ41は、稼働領域411とロス領域412とで異なる色に着色されている。この場合、稼働領域411は、緑や青などの安全を想起させる色が好ましい。また、ロス領域412は、オレンジや赤などの注意を引く色が好ましい。本実施形態の場合、割合グラフ41の稼働領域411及びロス領域412は、稼働状況グラフ34の稼働領域341及びロス領域342と同一色に着色されている。なお、稼働時間又はロス時間が0である場合には、時間が0となる稼働領域411又はロス領域412は割合グラフ41に表示されない。割合グラフ41を描画するためには稼働状況も必要になることから、割合グラフ41は、実質的には稼働状況に関する情報も含まれているといえる。
【0038】
内訳グラフ42は、ロスの詳細を示す詳細領域を含んで構成されている。内訳グラフ42は、各詳細領域で異なる色に着色されている。詳細領域は、例えば不良ロス領域、速度ロス領域、異常ロス領域、停止ロス領域、立ち上げロス領域、段取りロス領域、及び刃具・治具ロス領域を含んでいる。本実施形態の場合、図3に示す内訳グラフ42は、詳細領域として例えば不良ロス領域421、段取りロス領域422、速度ロス領域423、異常ロス領域424、及び立上げロス領域425が表示されている。この場合、停止ロス及び刃具・治具ロスについては、各ロスの時間が0であるか又は設定されていないため、内訳グラフ42には表示されていない。また、可視化処理部102は、例えば図3に示すように各詳細領域にカーソル55が移動されたり各詳細領域がタッチ操作されたりした場合に、その詳細領域の名称とロス時間を表示するようにしても良い。
【0039】
履歴情報43は、生産設備70で発生した事象つまりイベントに関する直近の履歴を一覧で示すものである。生産設備70に生じた事象とは、生産設備70の稼働や停止などであり、例えば生産設備70が稼働していることを示す「稼働中」の他、生産設備70のロスのうち生産設備70の現在の状態から判断可能なもの、すなわち「異常中」、「停止中」、「立上げ中」、「段取り中」、及び「刃具・治具交換中」などがある。また、直近の履歴とは、最新のものから遡って表示装置90で表示可能な数の履歴を意味する。履歴情報43は、「名称」、「イベントNo.」、及び「イベント時刻」の項目を含んでいる。
【0040】
「名称」は、生産設備70に生じた事象すなわちイベントの名称である。「異常中」は生産設備70に異常が発生していたことを示す表示である。「停止中」は生産設備70が停止していたことを示す表示である。「立上げ中」は生産設備70が立上げ中であったことを示す表示である。「段取り中」は、生産設備70が段取り中であったことを示すものである表示である。「刃具・治具交換中」は、生産設備70の刃具又は治具の交換中であったことを示す表示である。「イベントNo.」は、生産設備70に生じる事象を番号で示したもの、すなわち「稼働中」、「異常中」、「停止中」、「立上げ中」、「段取り中」、及び「刃具・治具交換中」をそれぞれ番号で示したものである。なお、イベントの内容つまりイベントの「名称」は、ロスの詳細と一致していても良いが、必ずしも一致していなくても良い。そして、「イベント時刻」は、上記した事象すなわちイベントが発生した時刻を示す。履歴情報43を生成するためには稼働状況も必要になることから、履歴情報43は、実質的には稼働状況に関する情報も含まれているといえる。
【0041】
可視化処理部102は、履歴情報43の表示に関して、予め設定された数の履歴を、最新のものから順に並べて表示させる。図3の例では、可視化処理部102は、履歴情報43に関し、最新のものから順に10個の履歴を並べて表示している。そして、例えば図3の状態で生産設備70に新たなイベントが発生すると、履歴情報43の最下部の行が消えて各行が1行ずつ下がるとともに、最上部に最新の履歴が追加される。
【0042】
また、データ取得処理部101は、通信機能を有する生産設備71については、生産設備71からの出力信号に基づいて生産設備71に関する稼働データ及びロスデータを取得可能に構成されている。すなわち、通信機能を有する生産設備71の場合、生産設備71は、例えば当該生産設備71の現在の状態つまり現在生じているイベントを示す信号を出力する。
【0043】
この信号は、少なくとも運転中信号及び異常信号を含む。運転中信号は、生産設備70が運転中であることつまり稼働中であることを示す信号である。異常信号は、生産設備71に異常が生じていることを示す信号であり、異常ロスを計測することができる。サイクルトリガ信号、計画停止信号、段取り信号、刃具・治具信号などがある。サイクルトリガ信号は、生産設備71のサイクルの開始及び終了を示す信号であり、現在のサイクルタイムを計測しこれにより速度ロスを計測することができる。計画停止信号は、生産設備71が計画停止中であることを示す信号であり、ロス以外の停止を計測することができる。段取り信号は、生産設備71が段取り中であることを示す信号であり、段取りロスを計測することができる。そして、刃具・治具信号は、生産設備71が刃具又は治具の交換中であることを示す信号であり、刃具・治具ロスを計測することができる。
【0044】
また、データ取得処理部101は、通信機能を有さない生産設備72については、作業者からの入力に基づいて生産設備72に関する稼働データ及びロスデータを取得可能に構成されている。この場合、データ取得処理部101は、パソコン91や携帯端末92に対する入力方法と、二次元コードの読取装置80を用いた入力方法と、2種類の方法によって稼働データ及びロスデータを取得することができる。
【0045】
パソコン91や携帯端末92に対する入力方法の場合、可視化処理部102は、図4に示すように、表示装置90の画面上に、開始ボタン511、512、513と、終了ボタン521、522、523と、を表示させる。作業者は、開始ボタン511、512、513及び終了ボタン521、522、523を、例えばカーソルを用いてクリック操作したりタッチ操作したりすることで、各ボタン511~513、521~523に対応したロスや計画停止の開始及び終了を登録することができる。
【0046】
データ取得処理部101は、開始ボタン511、512及び終了ボタン521、522に対する作業者からの操作に基づいて、段取りロス及び治具・刃具ロスに関するロス時間つまりロスデータを取得する。また、データ取得処理部101は、計画停止に対応した開始ボタン513及び終了ボタン523に対する操作に基づいて計画停止の時間を取得する。そして、データ取得処理部101は、取得した計画停止の時間から負荷時間を算出し、その負荷時間とロス時間から稼働時間つまり稼働データを算出し取得する。
【0047】
この場合、「段取り」の文字の近傍に表示された開始ボタン511及び終了ボタン521は、段取りロスの開始及び終了を登録するためのボタンであり、それぞれロス開始ボタン及びロス終了ボタンとして機能する。また、「治具・刃具交換」の文字の近傍に表示された開始ボタン512及び終了ボタン522は、治具・刃具ロスの開始及び終了を登録するためのボタンであり、それぞれロス開始ボタン及びロス終了ボタンとして機能する。そして、「計画停止」の文字の近傍に表示された開始ボタン513及び終了ボタン523は、計画停止の開始及び終了を登録するためのボタンである。
【0048】
二次元コードの読取装置80を用いた入力方法の場合、データ取得処理部101は、図4に示すように、開始コード531、532、533と、終了コード541、542、543と、を例えばパソコン91や携帯端末92に表示させる。また、開始コード531、532、533及び終了コード541、542、543は、紙等に印刷されたものでもよい。作業者は、開始コード531、532、533及び終了コード541、542、543を、二次元コードの読取装置80で読み取ることにより、各コード531~533、541~543に対応したロスや計画停止の開始及び終了を登録することができる。
【0049】
すなわち、データ取得処理部101は、開始コード531、532及び終了コード541、542を読み取ることにより、段取りロス及び治具・刃具ロスに関するロス時間つまりロスデータを取得する。また、データ取得処理部101は、計画停止に対応した開始コード533及び終了コード543を読み取ることにより、計画停止の時間を取得する。そして、データ取得処理部101は、取得した計画停止の時間から負荷時間を算出し、その負荷時間とロス時間から稼働時間つまり稼働データを算出し取得する。
【0050】
可視化処理部102は、図3及び図4に示すように、切り替えボタン56を表示させる。可視化処理部102は、切り替えボタン56が操作されることに基づいて、図3図4との表示内容を切り替える。また、可視化処理部102は、図3に示すように、日付表示57及び時刻表示58を、稼働状況情報30及びロス状況情報40と同一画面上に表示させる処理を行う。日付表示57は、現在の日付を示す表示である。時刻表示58は、現在の時刻若しくは最後に異常状況データを取得した時刻を示す表示である。
【0051】
次に、図5も参照して、可視化システム10で実行される制御フローについて説明する。利用者は、可視化システム10における一連の処理に先立って、上述した操業時間を設定する。可視化システム10は、処理を開始すると、ステップS11に処理を移行させ、予め設定された操業時間を取得する。次に、可視化システム10は、ステップS12において、操業時間が経過したか否かを判断する。操業時間が経過していない場合(ステップS12でYES)、可視化システム10は、一連の処理を終了する。一方、操業時間が経過していない場合(ステップS12でNO)、可視化システム10は、ステップS13へ処理を移行させる。そして、可視化システム10は、データ取得処理部101の機能によりデータ取得処理を実行し、生産設備70の稼働データ及びロスデータを取得する。
【0052】
その後、可視化システム10は、ステップS14へ処理を移行させる。そして、可視化システム10は、可視化処理部102の機能により可視化処理を実行し、図3に示すように、稼働状況情報30とロス状況情報40とを表示装置90の同一画面上に表示させる。その後、可視化システム10は、ステップS12に処理を戻し、ステップS12以降を繰り返す。
【0053】
ここで、例えば作業者が生産設備の停止時間を手動で計測しようとすると、作業者は、生産設備の停止要因ごとにストップウォッチなどで時間を計測し、その計測結果を紙に記入したりデータとして記録したりする、といった作業を要する。この場合、作業者は、対象となる生産設備に張り付いて作業する必要があり、作業効率が良くない。そのため、従来の構成では、生産設備の停止要因ごとに停止時間を把握することが困難であった。
【0054】
これに対し、以上説明した実施形態によれば、可視化システム10は、生産設備70のロス状況を可視化して表示装置90に表示するシステムである。可視化システム10は、データ取得処理部101と、可視化処理部102と、を備える。データ取得処理部101は、データ取得処理を実行可能である。データ取得処理は、生産設備70の稼働を示す稼働データと当該生産設備70のロスを示すロスデータとを取得する処理を含む。
【0055】
可視化処理部102は、可視化処理を実行可能である。可視化処理は、取得した稼働データ及びロスデータを集計し、設定された負荷時間内における生産設備70の稼働状況を示す稼働状況情報30と、負荷時間内における生産設備70のロス状況を示すロス状況情報40と、を表示装置90の同一画面に表示させる処理を含む。
【0056】
これによれば、生産設備70の稼働状況を示す稼働状況情報30とロス状況を示すロス状況情報40とが表示装置90の同一画面に表示されるため、作業者等は、生産設備70の稼働状況とロス状況とを簡単に把握することができる。
【0057】
また、可視化システム10において、ロスは、不良ロス、速度ロス、異常ロス、停止ロス、立ち上げロス、段取りロス、及び刃具・治具ロスを含んでいる。これによれば、作業者は、表示装置90に表示されたロス状況情報40を見ることで、生産効率を低下させる大きな要因となるいわゆる7大ロスの状況を把握することができる。そのため、作業者は、作業効率の改善に役立つ情報を簡単に得ることができる。
【0058】
ロス状況情報40は、負荷時間内において生産設備70が稼働していた稼働時間とロスが発生していたロス時間との割合を示す割合グラフ41と、ロス時間の内訳の割合を示す内訳グラフ42と、を含んでいる。これによれば、作業者は、まず、割合グラフ41を見ることで負荷時間全体に対するロスの割合を簡単に把握することができる。更に、作業者は、内訳グラフ42を見ることで、割合が大きく生産効率の低下の要因となっているロスの内容つまり優先して対処すべきロスの内容を簡単に特定することができる。
【0059】
ロス状況情報40は、履歴情報43を更に含んでいる。履歴情報43は、生産設備70で発生した事象に関する直近の履歴を一覧で示すものである。これによれば、作業者は、例えば割合グラフ41や内訳グラフ42と併せて履歴情報43を見ることで、現在の生産設備70がどのような挙動を示しているのかを把握し易くなり、その結果、ロスに対する対策を立てやすくなる。
【0060】
稼働状況情報30は、設備総合効率情報32と、負荷時間情報33と、稼働状況グラフ34と、を更に含んでいる。設備総合効率情報32は、設備総合効率を示す情報である。負荷時間情報33は、生産設備70に設定された負荷時間を示す情報である。そして、稼働状況グラフ34は、負荷期間内における生産設備70の稼働状況の推移つまり稼働状況の経時的な変化をグラフで示すものである。これによれば、作業者は、稼働状況グラフ34を見ることで、生産設備70の稼働状況の推移を視覚的に把握することができ、更に、設備総合効率情報32及び負荷時間情報33を見ることで、設備効率の評価に重要な設備総合効率や負荷時間を数値で正確に把握することができる。その結果、作業者は、生産設備70の生産効率を素早く正確にかつ簡単に把握することができる。
【0061】
ここで、古い生産設備などにおいては、稼働及び停止などの信号を出力する機能を備えていないものも存在する。この場合、生産設備の改造を行うことで信号出力の機能を追加することも考えられる。しかしながら、生産設備を改造する場合、その改造の間は生産が出来なくなる。そのため、日々の生産活動に追われる中でこのような改造を行う時間の確保が困難な場合も多い。また、生産設備によっては、生産設備が備えるコンピュータのメモリに空きが無く、新たなプログラムを追加できない場合もある。
【0062】
そこで、本実施形態によれば、データ取得処理部101は、生産設備70からの出力信号に基づいて稼働データ及びロスデータを取得可能に構成されているとともに、作業者からの入力に基づいて稼働データ及びロスデータを取得可能に構成されている。
【0063】
これによれば、可視化システム10は、生産設備70から自動で稼働データ及びロスデータを取得するだけでなく、作業者の入力によって稼働データ及びロスデータを取得することができる。その結果、信号の出力機能を備えていないような古い生産設備であっても、改造を伴うことなく、可視化システム10を用いることができる。
【0064】
可視化処理は、ロスの開始を登録するためのロス開始ボタン511、512とロスの終了を登録するためのロス終了ボタン521、522とを表示装置90に表示させる処理を含む。そして、データ取得処理は、ロス開始ボタン511、512及びロス終了ボタン521、522に対する操作入力に基づいてロスデータを取得する処理を含む。これによれば、作業者は、表示装置90に表示された各ボタン511、512、521、522を操作するだけで、ロスデータを登録することができ、ロスデータの登録についての作業性が向上する。その結果、作業者は、本来の生産活動が阻害されることなく、可視化システム10を利用することができる。
【0065】
また、データ取得処理は、ロスの開始を示す二次元コードであるロス開始コード531、532と、ロスの終了を示す二次元コードであるロス終了コード541、542とを、作業者が読取装置80を用いて読み取ることでロスデータを取得する処理を含む。これによっても、作業者は、読取装置80によって各コード531、532、541、542を読み取るだけでロスデータを登録することができ、ロスデータの登録についての作業性が向上する。その結果、作業者は、本来の生産活動が阻害されることなく、可視化システム10を利用することができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。第2実施形態では、可視化処理の具体的内容が上記第1実施形態と異なり、他の構成は上記第1実施形態と共通している。本実施形態の可視化処理は、図7に示すような稼働状況情報30と、図8に示すようなロス状況情報40と、を自動で又は作業者の操作に基づいて切り替えて、表示装置90に表示させる処理を含む。
【0067】
稼働状況情報30とロス状況情報40とを自動で切り替える場合、可視化処理部102は、例えば数秒から数十秒間隔のように見た者が同時に表示されていないと認識できる程度の間隔で、稼働状況情報30とロス状況情報40とを切り替えて表示させる。また、稼働状況情報30とロス状況情報40とを作業者の操作に基づいて切り替える場合、可視化処理部102は、切り替えボタン591、592が操作されることに基づいて、図7に示す稼働状況情報30と図8に示すロス状況情報40との表示を切り替える。
【0068】
これによれば、稼働状況情報30とロス状況情報40とを、例えば単一の表示装置90の画面に同時に表示させる場合に比べて、稼働状況情報30とロス状況情報40とのそれぞれの表示領域を広く確保することができる。つまり、稼働状況情報30とロス状況情報40とをそれぞれ大きく表示させることができる。このため、稼働状況情報30及びロス状況情報40の視認性が向上し、その結果、簡単かつ正確にロス状況を把握することができる。
【0069】
この場合、稼働状況情報30からロス状況情報40に切り替えるための切り替えボタン591と、ロス状況情報40から稼働状況情報30に切り替えるための切り替えボタン592との色や形状、大きさ、若しくは位置を変えても良い。図7及び図8は、切り替えボタン591、592の位置や大きさは変えず、形状を変えた例である。また、稼働状況情報30とロス状況情報40との切り替わりの途中に、稼働状況情報30とロス状況情報40とは異なる他の表示を挟んでも良い。
【0070】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図9を参照して説明する。本実施形態において、データ取得処理部101は、生産設備70のロスを示すロスデータを取得するデータ取得処理を実行する。この場合、本実施形態の場合、データ取得処理部101において、稼働データの取得は必須ではない。また、可視化処理部102が実行する可視化処理は、取得したロスデータを集計し、設定された負荷時間内における生産設備70のロス状況を示すロス状況情報40Aを表示装置90に表示させる処理を含む。この場合、ロス状況情報40Aは、稼働状況に関する情報を含まない情報、すなわちロス状況に関する情報のみで構成されている
【0071】
ロス状況情報40Aは、例えばロス一覧情報44を含んで構成することができる。ロス一覧情報44は、例えばロス種類441、割合表示442、及び時間表示443を含んだ表で構成することができる。ロス種類441は、ロスの種類を例えば文字、数字、記号、若しくは色等のようにグラフ以外の態様で示すものである。割合表示442は、例えば図3の内訳グラフ42を、例えば文字、数字、記号、若しくは色等のようにグラフ以外の態様で示すものである。時間表示443は、割合表示442を時間に換算したものを、例えば文字、数字、記号、若しくは色等のようにグラフ以外の態様で示すものである。
【0072】
本実施形態の場合、割合表示442及び時間表示443は、数字及び色で表示される。図9の例の場合、割合表示442及び時間表示443は、例えば数値の大小に応じて数段階で異なる色が設定されている。例えば割合表示442の数値が0%以上5%未満、5%以上10%未満、10%以上20%未満、20%以上の4段階で異なる色に設定することができる。この場合、割合表示442の数値が大きくなるにつれて、色を濃くしたり、数値が小さいものから大きくなるにつれて青系又は緑系、黄色系、赤系の順に設定したりすることができる。
【0073】
また、可視化処理部102は、ロス種類441、割合表示442、及び時間表示443で構成された各行を、割合表示442又は時間表示443に基づく降順又は昇順に、自動で又は作業者の操作に基づいて並び替えて表示しても良い。
このような本実施形態によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0074】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0075】
10…生産設備のロス状況可視化システム、101…データ取得処理部、102…可視化処理部、22…稼働データ、23…ロスデータ、30…稼働状況情報、32…設備総合効率情報、33…負荷時間情報、34…稼働状況グラフ、40…ロス状況情報、41…割合グラフ、42…内訳グラフ、43…履歴情報、511、512…ロス開始ボタン、521、522…ロス終了ボタン、531、532…ロス開始コード、541、542…ロス終了コード、70、71、72…生産設備、80…読取装置、90、91、92、93…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9