(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091229
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】二次電池用電極、二次電池、二次電池用電極の製造方法、及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240627BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240627BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240627BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20240627BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/133
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078869
(22)【出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2022207283
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏睦
(72)【発明者】
【氏名】柴 貴子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050BA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA03
5H050GA22
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制される二次電池用電極の提供。
【解決手段】集電体と、前記集電体の上に設けられ、微小粒子及びアスペクト比が1.0超えである活物質粒子を含む活物質層と、を有し、前記微小粒子は、複数の前記活物質粒子の間に介在し、かつ、前記集電体と対向する側で偏在しており、前記活物質粒子は、前記活物質粒子の長手方向が前記集電体の面方向に対して略垂直に配向している、二次電池用電極;二次電池;二次電池用電極の製造方法;並びに、二次電池の製造方法。
【選択図】
図2-A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体の上に設けられ、微小粒子及びアスペクト比が1.0超えである活物質粒子を含む活物質層と、
を有し、
前記微小粒子は、複数の前記活物質粒子の間に介在し、かつ、前記集電体と対向する側で偏在しており、
前記活物質粒子は、前記活物質粒子の長手方向が前記集電体の面方向に対して略垂直に配向している、二次電池用電極。
【請求項2】
前記微小粒子は、前記活物質層における前記集電体と対向する側の面から、前記活物質層の厚み方向に、前記活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域に偏在している、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項3】
前記活物質層における前記集電体と対向する側の面から、前記活物質層の厚み方向に、前記活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域に占める、前記領域における前記微小粒子の含有量が、26.0体積%以上34.5体積%以下である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項4】
前記活物質層のうち前記微小粒子の存在している領域の厚みTと、前記活物質粒子の長辺Lと、の比(T/L)が0.375以上0.500以下である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項5】
前記活物質粒子は、黒鉛である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項6】
負極用である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項7】
前記微小粒子は、異方性を有する、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項8】
前記微小粒子は、アスペクト比が1.1以上5.0以下である、請求項7に記載の二次電池用電極。
【請求項9】
前記微小粒子の長手方向の長さ(d)と、前記活物質粒子の長手方向の長さの半径(R)の比(d/R)が0.625以上1.000以下である、請求項1に記載の二次電池用電極。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の二次電池用電極を備える、二次電池。
【請求項11】
集電体上に、アスペクト比が1.0超えの活物質粒子及び溶媒を含む第一スラリーを塗工する工程と、
前記活物質粒子の上に、微小粒子及び溶媒を含み、前記微小粒子の含有量が前記第一スラリーの微小粒子の含有量よりも多い第二スラリーを塗工する工程と、
活物質層内で、前記活物質粒子の長手方向を前記集電体の面方向に対して略垂直に配向させる工程と、
を有する、二次電池用電極の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の二次電池用電極の製造方法によって製造された二次電池用電極を備える二次電池を製造する工程を含む、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池用電極、二次電池、二次電池用電極の製造方法、及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、車載、情報通信技術(例えば、パーソナルコンピューター、スマートフォン等)、及び蓄電等に幅広く用いられている。
二次電池用電極では、活物質層内で層状等に配向する性質を有する活物質(例えば黒鉛等)が用いられている。
例えば特許文献1では、磁場をかけて配向させた黒鉛である活物質を含む負極が開示されている。
例えば特許文献2では、配向性のある黒鉛と微小炭素材料を有する活物質層を含む負極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-197189号公報
【特許文献2】特開2013-004307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の二次電池用電極では、電池の製造過程において活物質層の表面をプレスする等した際に活物質層における活物質等の材料配向性の崩れが生じたり、曲路率の増加が生じたりする傾向にある。材料配向性の崩れや曲路率の増加が生じている電極を二次電池に用いると、抵抗値が上昇する傾向にある。
そこで本開示では、上記事情に鑑み、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制される二次電池用電極、二次電池、二次電池用電極の製造方法、及び二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 集電体と、
前記集電体の上に設けられ、微小粒子及びアスペクト比が1.0超えである活物質粒子を含む活物質層と、
を有し、
前記微小粒子は、複数の前記活物質粒子の間に介在し、かつ、前記集電体と対向する側で偏在しており、
前記活物質粒子は、前記活物質粒子の長手方向が前記集電体の面方向に対して略垂直に配向している、二次電池用電極。
<2> 前記微小粒子は、前記活物質層における前記集電体と対向する側の面から、前記活物質層の厚み方向に、前記活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域に偏在している、前記<1>に記載の二次電池用電極。
<3> 前記活物質層における前記集電体と対向する側の面から、前記活物質層の厚み方向に、前記活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域に占める、前記領域における前記微小粒子の含有量が、26.0体積%以上34.5体積%以下である、前記<1>又は<2>に記載の二次電池用電極。
<4> 前記活物質層のうち前記微小粒子の存在している領域の厚みTと、前記活物質粒子の長辺Lと、の比(T/L)が0.375以上0.500以下である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の二次電池用電極。
<5> 前記活物質粒子は、黒鉛である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の二次電池用電極。
<6> 負極用である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の二次電池用電極。
<7> 前記微小粒子は、異方性を有する、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の二次電池用電極。
<8> 前記微小粒子は、アスペクト比が1.1以上5.0以下である、前記<7>に記載の二次電池用電極。
<9> 前記微小粒子の長手方向の長さ(d)と、前記活物質粒子の長手方向の長さの半径(R)の比(d/R)が0.625以上1.000以下である、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の二次電池用電極。
<10> 前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の二次電池用電極を備える、二次電池。
<11> 集電体上に、アスペクト比が1.0超えの活物質粒子及び溶媒を含む第一スラリーを塗工する工程と、
前記活物質粒子の上に、前記微小粒子及び溶媒を含み、前記微小粒子の含有量が前記第一スラリーの微小粒子の含有量よりも多い第二スラリーを塗工する工程と、
活物質層内で、前記活物質粒子の長手方向を前記集電体の面方向に対して略垂直に配向させる工程と、
を有する、二次電池用電極の製造方法。
<12> 前記<11>に記載の二次電池用電極の製造方法によって製造された二次電池用電極を備える二次電池を製造する工程を含む、二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る一実施形態によれば、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制される二次電池用電極及び二次電池が提供される。
本開示に係る他の一実施形態によれば、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制される二次電池用電極の製造方法及び二次電池の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1-A】
図1-Aは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスする前の、従来の二次電池用電極における、厚み方向の断面模式図である。
【
図1-B】
図1-Bは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスした後の、従来の二次電池用電極における厚み方向の断面模式図である。
【
図2-A】
図2-Aは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスする前の、本開示に係る二次電池用電極における、厚み方向の断面模式図である。
【
図2-B】
図2-Bは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスした後の、本開示に係る二次電池用電極における厚み方向の断面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1、比較例1~2における活物質層モデルの厚み方向断面概略図である。
【
図4】
図4は、各例の活物質層モデルにおける集電体と対向する側の面から圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値に関するグラフである。
【
図5】
図5は、各例の活物質層モデルにおける集電体と対向する側の面から圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値に関するグラフである。
【
図6】
図6は、活物質層モデル内における微小粒子が存在する隣接する活物質粒子同士の間の空隙領域の厚み方向の断面概略図である。
【
図7】
図7は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と微小粒子の平均一次粒子径との相関関係に関するグラフである。
【
図8】
図8は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と微小粒子の平均一次粒子径との相関関係に関するグラフである。
【
図9】
図9は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と微小粒子の充填率との相関関係に関するグラフである。
【
図10】
図10は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と微小粒子の充填率との相関関係に関するグラフである。
【
図11】
図11は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の存在する領域の厚みとの相関関係に関するグラフである。
【
図12】
図12は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の存在する領域の厚みとの相関関係に関するグラフである。
【
図13】
図13は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と微小粒子の長辺との相関関係に関するグラフである。
【
図14】
図14は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と微小粒子の長辺との相関関係に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0009】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
≪二次電池用電極≫
本開示に係る二次電池用電極は、集電体と、前記集電体の上に設けられ、微小粒子及びアスペクト比が1.0超えである活物質粒子を含む活物質層と、を有し、前記微小粒子は複数の前記活物質粒子の間に介在しており、前記活物質層は前記活物質粒子の長手方向が前記集電体の面方向に対して略垂直に配向しており、且つ、前記集電体と対向する側で前記微小粒子が偏在している、二次電池用電極である。
本開示によれば、活物質層における材料配向性の崩れによる抵抗値の上昇を抑制する二次電池用電極が得られる。
【0011】
図面を参照して、従来の二次電池用電極と、本開示に係る二次電池用電極それぞれについて以下に説明する。
図1-Aは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスする前の、従来の二次電池用電極における、厚み方向の断面模式図である。
図1-Bは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスした後の、従来の二次電池用電極における、厚み方向の断面模式図である。
図1-Aに示すように、従来の二次電池用電極100は、集電体10と、前記集電体10の上に設けられ、活物質粒子30を含む活物質層20と、を有する。活物質層20では、活物質粒子30が、活物質粒子30の長手方向が集電体10の面方向に対して略垂直に配向している。
図1-Bに示すように、従来の二次電池用電極100は、集電体10と対向する側の面Sからプレスする等したときに、活物質層20内における活物質粒子30が、圧力に耐えられず、活物質粒子30の配向性が崩れる傾向にある。活物質粒子30の配向性が崩れたままの二次電池用電極100を二次電池に用いると、電気が流れる方向Dにおける曲路率が増加し易く、結果として、二次電池に用いた際に、抵抗値が上昇する傾向にある。
【0012】
一方、本開示に係る二次電池用電極では、活物質層における材料配向性の崩れによる抵抗値の上昇が抑制される。
図2-Aは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスする前の、本開示に係る二次電池用電極における、厚み方向の断面模式図である。
図2-Bは、製造過程で集電体と対向する側の面からプレスした後の、本開示に係る二次電池用電極における厚み方向の断面模式図である。
図2-Aに示すように、本開示に係る二次電池用電極100は、集電体10と、前記集電体10の上に設けられ、活物質粒子30及び微小粒子40を含む活物質層20と、を有する。活物質層20では、活物質粒子30が、活物質粒子30の長手方向が集電体10の面方向に対して略垂直に配向している。そして、微小粒子40は、複数の活物質粒子30の間に介在しており、且つ、集電体10と対向する側(面S側)で偏在している。
図2-Bに示すように、本開示に係る二次電池用電極100は、集電体10と対向する側の面Sからプレスする等したときに、複数の活物質粒子30の間に介在している微小粒子40が、活物質粒子30にかかる圧力を低減する。そのため、活物質粒子30の配向性が崩れることが低減される。
また、
図2-Bに示すように、本開示に係る二次電池用電極100は、微小粒子40が集電体10と対向する側(面S側)で偏在している。そのため、微小粒子40が活物質層20全体に分散して存在する場合に比べて、電気が流れる方向Dにおける曲路率の増加が抑制される。その結果、本開示に係る二次電池用電極は、二次電池に用いた際に、抵抗値の上昇が抑制される。
【0013】
<集電体>
本開示に係る二次電池用電極は、集電体を有する。
集電体は、特に制限されず、公知の二次電池用電極に用いられる集電体が採用できる。
正極用の集電体を構成する材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等が挙げられる。
負極用の集電体を構成する材質としては、例えば、銅、銅合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0014】
<活物質層>
本開示に係る二次電池用電極は、集電体の上に設けられる活物質層を有する。
活物質層は、微小粒子及びアスペクト比が1.0超えである活物質粒子(以下、単に「活物質粒子」とも称す。)を含む。
【0015】
〔微小粒子〕
微小粒子は、微小粒子は複数の活物質粒子の間に介在し、かつ、集電体と対向する側で偏在している。微小粒子が活物質粒子の間に介在し、かつ、活物質層において集電体と対向する側で偏在していると、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制される。
【0016】
微小粒子は、複数の活物質粒子の間に介在することができ、かつ、活物質粒子よりも平均一次粒径が小さい微小粒子であれば、特に制限されず、公知の二次電池用電極に用いられる微小粒子が採用できる。
微小粒子としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラック等の炭素材料;シリコン;などが挙げられるが、導電率を極端に低下させるものでなければ、特に限定しない。上記の中でも、微小粒子としては、より好適に活物質粒子間に介在させる観点から、炭素材料を含むことが好ましく、黒鉛を含むことがより好ましい。
【0017】
微小粒子は、異方性を有することが好ましい。微小粒子が異方性を有すると、複数の微小粒子が凝集して活物質粒子間に介在することが抑制される。その結果、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇がより抑制される。
【0018】
微小粒子は、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、アスペクト比が1.1以上5.0以下であることが好ましく、1.1以上3.0以下であることがより好ましく、1.3以上2.5以下であることがさらに好ましい。
【0019】
微小粒子のアスペクト比とは、微小粒子の短手方向の長さ(以下、短辺ともいう。)に対する、長辺と垂直方向である微小粒子の長手方向の長さ(以下、長辺ともいう。)の比(長辺/短辺)を指す。
微小粒子の長手方向の長さとは、微小粒子の長手方向の一端部から他端部を結んだときに最長となる直線距離を表す。微小粒子の長手方向の長さは、微小粒子の短手方向の長さよりも長いものであれば特に制限されない。微小粒子の長手方向の長さは、例えば、2.0μm以上15.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以上14.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以上8.0μm以下であることがさらに好ましい。
微小粒子の短手方向の長さとは、微小粒子の、短手方向の一端部から他端部を結んだときに最長となる直線距離を表す。微小粒子の短手方向の長さは、微小粒子の長手方向の長さよりも短いものであれば特に制限されない。微小粒子の短手方向の長さは、例えば、1.0μm以上7.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
上記微小粒子のアスペクト比は、活物質層の厚み方向に沿って切断した断面をSEMにより観察し、任意の10点の微小粒子について、画像解析して求めた微小粒子の長辺と短辺とのアスペクト比(長辺/短辺)の算術平均値である。
【0021】
微小粒子の平均一次粒径は、活物質粒子の平均一次粒径よりも小さければよく、例えば、より好適に活物質粒子間に介在させる観点からは、活物質の短手方向の長さ(μm)の0.30倍以上0.76倍以下であることが好ましい。
具体的には、微小粒子の平均一次粒径は、4.58μm以下であることが好ましく、1.84μm以上4.58μm以下であることがより好ましく、2.00μm以上4.00μm以下であることがさらに好ましい。活物質粒子の平均一次粒径(D50)は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定により求めることができる。
【0022】
微小粒子は、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、活物質層における前記集電体と対向する側の面から、活物質層の厚み方向に、活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域に偏在していることが好ましい。
【0023】
微小粒子は、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、活物質層における前記集電体と対向する側の面から、活物質層の厚み方向に、活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域における含有量が、活物質層全体における含有量に対して、85体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。当該微小粒子の含有量は、SEM観察によって求めることができる。
微小粒子は、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、活物質層における前記集電体と対向する側の面から、活物質層の厚み方向に、活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さよりも深い領域に、微小粒子が全く含まないことが好ましい。
【0024】
微小粒子を上記領域に偏在させる手法は特に制限されないが、例えば、後述する本開示の二次電池用電極の製造方法で示す手法が適用できる。
【0025】
微小粒子は、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、活物質層における集電体と対向する側の面から、活物質層の厚み方向に、活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域に占める、前記領域における微小粒子の含有量が、26.0体積%以上34.5体積%以下であることが好ましく、28体積%以上32体積%以下であることがより好ましい。
【0026】
上記領域における微小粒子の含有量は、二次電池用電極の厚み方向の断面を、走査電子顕微鏡(SEM)によって画像解析し、微小粒子の粒子ごとの面積を測定し、体積を算出して求める。
【0027】
上記領域における微小粒子の含有量を調整する手法は特に制限されないが、例えば、後述する本開示の二次電池用電極の製造方法で示す手法が適用できる。
【0028】
〔活物質粒子〕
活物質粒子は、アスペクト比が1.0超えである。
活物質粒子のアスペクト比は1.0超えであり、より配向性を付する観点、及び、活物質層内で活物質粒子の長手方向が集電体の面方向に対して略垂直に配向したときにより抵抗値を下げる観点から、1.5以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上3.5以下であることがより好ましい。
【0029】
活物質粒子のアスペクト比とは、活物質粒子の長手方向の長さ(以下、長辺ともいう。)と、長辺と垂直方向の活物質粒子の短手方向の長さ(以下、短辺ともいう。)との比(長辺/短辺)を指す。
活物質粒子の長手方向の長さとは、活物質粒子の長手方向の一端部から他端部を結んだときに最長となる直線距離を表す。活物質粒子の長手方向の長さは、活物質粒子の短手方向の長さよりも長ければよく、例えば、8.0μm以上30.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以上25.0μm以下であることがより好ましく、12.0μm以上20.0μm以下であることがさらに好ましい。
活物質粒子の短手方向の長さとは、活物質粒子の、短手方向の一端部から他端部を結んだときに最長となる直線距離を表す。活物質粒子の短手方向の長さは、活物質粒子の長手方向の長さよりも短ければよく、例えば、1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以上9.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以上8.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
上記活物質粒子のアスペクト比は、活物質層の厚み方向に沿って切断した断面をSEMにより観察し、任意の10点の活物質粒子について、画像解析して求めた活物質粒子の長辺と短辺とのアスペクト比(長辺/短辺)の算術平均値である。
【0031】
活物質粒子は、活物質粒子の長手方向が集電体の面方向に対して略垂直に配向している。
活物質粒子の長手方向が集電体の面方向に対して略垂直に配向していると、抵抗が小さく抑えられる。
ここで、活物質粒子が前記活物質粒子の長手方向が前記集電体に対して略垂直に配向しているとは、次の通り、定義される。
活物質層の厚み方向に沿って切断した断面をSEMにより観察する。観察画像において、10個の活物質粒子の長手方向と活物質層の厚さ方向との成す角度(鋭角)を各々算出する。そして、得られた角度の算術平均値が5°以下のときを、活物質粒子が前記活物質粒子の長手方向が前記集電体の面方向に対して略垂直に配向していると定義する。
【0032】
活物質粒子は、上記アスペクト比や配向性を満たすものであれば特に制限されず、二次電池の正極及び負極に用いられる公知の活物質粒子が採用できる。活物質粒子は、1種単独の使用であっても2種以上の併用であってもよい。
正極用の活物質粒子としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)等が挙げられる。
【0033】
負極用の活物質粒子としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛;ハードカーボン、ソフトカーボン、活性炭等の炭素材料;シリコンなどが挙げられる。上記の中でも、負極用の活物質粒子としては、活物質層における配向性をより好適にする観点から、炭素材料であることが好ましく、黒鉛(好ましくは鱗片状黒鉛)であることがより好ましい。
【0034】
活物質粒子の平均一次粒径は、微小粒子の平均一次粒径よりも大きければよく、例えば、より好適に活物質粒子間に微小粒子を介在させる観点、及びより好適に活物質粒子を活物質層内で配向させる観点からは、4.5μm超えであることが好ましく、5.0μm以上25.0μm以下であることがより好ましく、10.0μm以上20.0μm以下であることが更に好ましい。活物質粒子の平均一次粒径(D50)は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定により求めることができる。
【0035】
活物質層は、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇をより抑制する観点から、微小粒子の長手方向の長さ(d)と、活物質粒子の長手方向の長さの半径(R)の比(d/R)が、0.400以上1.500以下であることが好ましく、0.450以上1.250以下であることがより好ましく、0.625以上1.000以下であることがさらに好ましい。
比(d/R)は、先述の測定方法によりそれぞれ求めた微小粒子の長手方向の長さ(d)と、活物質粒子の長手方向の長さの半径(R)との比(d/R)とする。
比(d/R)は、活物質粒子のアスペクト比を調整することで制御されていてもよく、微小粒子のアスペクト比を調整することで制御されていてもよく、その両方を調整することで制御されていてもよい。
【0036】
活物質層は、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、活物質層のうち微小粒子の存在している領域の厚みT(μm)と、活物質粒子の長辺L(μm)と、の比(T/L)が0.375以上0.500以下であることが好ましく、0.400以上0.500以下であることがより好ましい。
【0037】
比(T/L)は、以下のようにして求めることができる。
(1)活物質層の厚み方向の断面をSEMによって観察し、活物質粒子の長辺L(μm)を求める。
(2)集電体と対向する側の活物質層の面から、集電体方向(つまり前記面の反対方向)に最も遠い位置に存在する微小粒子を特定する。
(3)当該微小粒子の位置から、集電体と対向する側の面までの最短となる垂直距離を、活物質層のうち微小粒子の存在している領域の厚みT(μm)とする。
(4)比(T/L)を求める。
(5)上記(1)~(4)の工程を、上記(2)で特定した任意の10点の微小粒子について行い、得られた各比(T/L)の算術平均値を求める。
【0038】
上記比(T/L)は、活物質粒子のアスペクト比を調整することで制御されていてもよく、活物質層の厚みを調整することで制御されていてもよい。
【0039】
活物質層の厚みT(μm)は、所望する二次電池用電極の性能等に応じて適宜設計できるが、例えば、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、20.0μm以上50.0μm以下であることが好ましく、25.0μm以上45.0μm以下であることがより好ましく、25.0μm以上40.0μm以下であることが更に好ましい。
【0040】
活物質粒子の含有量は、電池性能の観点、及び、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇を抑制する観点から、活物質層に対して、30体積%以上70体積%以下であることが好ましく、40体積%以上60体積%以下であることがより好ましい。
【0041】
〔その他の材料〕
活物質層は、本開示の効果が奏される範囲内で、二次電池用電極の活物質層に含まれうる、微小粒子及び活物質粒子以外のその他の材料をさらに含んでいてもよい。その他の材料としては、例えば、バインダー樹脂、導電助剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤等が挙げられる。
【0042】
本開示の二次電池用電極は、正極及び負極のいずれであってもよい。
本開示の二次電池用電極は、例えば、負極の活物質層においてアスペクト比が1.0超えの活物質粒子を用いることが多いことから、負極に用いることが好ましい。
【0043】
本開示の二次電池用電極は、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池などの種々の二次電池用電極として用いることができる。
【0044】
≪二次電池≫
本開示に係る二次電池は、本開示に係る二次電池用電極を備える、二次電池である。
本開示に係る二次電池は、例えば、本開示に係る二次電池用電極と、電解質層と、を備える、二次電池である。電解質層は、公知の電解質層が採用でき、固体電解質層及び液体電解質層のいずれであってもよい。
本開示に係る二次電池によれば、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制される。
本開示に係る二次電池には、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池などの種々の二次電池が適用できるが、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0045】
≪二次電池用電極の製造方法≫
本開示に係る二次電池用電極の製造方法は、集電体上に、アスペクト比が1.0超えの活物質粒子及び溶媒を含む第一スラリーを塗工する工程と、前記活物質粒子の上に、前記微小粒子及び溶媒を含み、前記微小粒子の含有量が前記第一スラリーの微小粒子の含有量よりも多い第二スラリーを塗工する工程と、活物質層内で、前記活物質粒子の長手方向を前記集電体の面方向に対して略垂直に配向させる工程と、を有する、二次電池用電極の製造方法である。
本開示に係る二次電池用電極の製造方法によれば、上記工程により集電体の上に設けられた活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制された二次電池用電極が得られる。
【0046】
〔第一塗工工程〕
第一塗工工程では、集電体上に、アスペクト比が1.0超えの活物質粒子及び溶媒を含む第一スラリーを塗工する。
上記活物質粒子は、本開示に係る二次電池用電極にて記載した活物質粒子と同様のものが挙げられる。
溶媒は、活物質粒子が分散する公知の溶媒が採用できる。
【0047】
〔第二塗工工程〕
第二塗工工程では、活物質粒子の上に、微小粒子及び溶媒を含み、前記微小粒子の含有量が前記第一スラリーの微小粒子の含有量よりも多い第二スラリーを塗工する。
第二塗工工程を経ることにより、後述するプレス工程等による、集電体と対向する側の面からの圧力があったとしても、活物質層における材料配向性の崩れが抑制されたり、曲路率の増加が抑制されたりするため、抵抗値の上昇が抑制される。
溶媒は、活物質粒子が分散する公知の溶媒が採用できる。
【0048】
第二塗工工程は、活物質粒子の上に、微小粒子及び溶媒に加えて活物質粒子を更に含み、前記微小粒子の含有量が前記第一スラリーの微小粒子の含有量よりも多い第二スラリーを塗工する工程であってもよい。
第二スラリーにも活物質粒子を含む構成をすることで、より効率的に、微小粒子を複数の活物質粒子の間に介在させ、かつ、集電体と対向する側に微小粒子を偏在させることができる。
【0049】
第一塗工工程と第二塗工工程の序列は、特に制限されず、下記1)~2)のいずれの仕様であってもよい:
1)第一塗工工程と同時に実施する仕様(つまり、集電体上に、アスペクト比が1.0超えの活物質粒子、微小粒子及び溶媒を含む第二スラリーを塗工する仕様);
2)第一塗工工程の後に第二塗工工程を実施する仕様。
【0050】
〔配向工程〕
配向工程では、前記活物質層内で、活物質粒子の長手方向を集電体の面方向に対して略垂直に配向させる。配向工程を経ることにより、曲路率の増加が抑えられる。
【0051】
配向工程の序列は、第一塗工工程の後であれば特に制限されず、下記1)~3)のいずれの仕様であってもよい:
1)第一塗工工程の後に、配向工程を経て、第二塗工工程を実施する仕様(ただし、この場合は第二スラリーは活物質粒子の含有量が、第二スラリーに含まれる材料全体に対して5質量%以下であり、より好ましくは0質量%、つまり、活物質粒子を含有しないことが好ましい);
2)第一塗工工程及び第二塗工工程をこの順で経て、配向工程を実施する仕様;
3)第一塗工工程及び第二塗工工程を同時実施した後、配向工程を実施する仕様。
【0052】
集電体の面方向に対して略垂直に活物質粒子を配向させる手法は、特に制限されず、使用する活物質粒子に応じて適宜設計できる。前記手法としては、例えば、集電体を介して活物質層に磁場を付与する手法などが挙げられる。
【0053】
〔その他の工程〕
本開示に係る二次電池用電極の製造方法では、上述した第一塗工工程、第二塗工工程及び配向工程の他にその他の工程をさらに含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、下記1)~3)が挙げられる:
1)前記配向工程の後に、活物質層を乾燥する乾燥工程;
2)前記乾燥工程で乾燥された活物質層を圧延する圧延工程;
3)二次電池用電極を所望のサイズに切断又はトリミングする工程。
本開示の二次電池用電極の製造方法では、上記2)の圧延工程を経たとしても、活物質層における材料配向性の崩れが抑制され、抵抗値の上昇が抑制される。
【0054】
本開示に係る二次電池用電極の製造方法は、本開示に係る二次電池用電極を製造する工程を含むことが好ましい。
【0055】
≪二次電池の製造方法≫
本開示に係る二次電池の製造方法は、本開示の二次電池用電極の製造方法によって製造された二次電池用電極を備える二次電池を製造する工程を含む、二次電池の製造方法である。
本開示に係る二次電池用電極の製造方法によれば、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制された二次電池が得られる。
【実施例0056】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0057】
<実施例1>
下記の活物質粒子と微小粒子について、ソフトGeoDict(MATH2MARKET社製を用いて、リチウムイオン二次電池用の負極における集電体の上に設けられる活物質層モデルを作製した。活物質層モデルでは、活物質粒子が活物質粒子の長手方向を集電体の面方向に対して略垂直に配向している仕様とした。また、活物質層モデルでは、微小粒子が複数の活物質粒子の間に介在し、かつ、集電体と対向する側で偏在する仕様とした。
図3(C)に、実施例1の活物質層モデルの厚み方向断面概略図を示す。図中、矢印方向先端側が、集電体と接する側の面である。
【0058】
・活物質粒子:鱗片状黒鉛(長辺16.0μm、短辺6.0μm、アスペクト比2.7)・微小粒子 :アセチレンブラック(炭素材料、平均一次粒径3.0μm)
【0059】
微小粒子は、活物質層における集電体と対向する側の面から、活物質層の厚み方向に、活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域に偏在する仕様とした。
微小粒子は、活物質層における集電体と対向する側の面から、活物質層の厚み方向に、活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域を占める、前記領域における微小粒子の含有量が、11.49体積%となる仕様とした。
【0060】
微小粒子の含有量は、活物質層に対して、3.06体積%である。
また、活物質層の厚みTは30.0μmとし、活物質層のうち微小粒子の存在している領域の厚みTと、活物質粒子の長辺Lと、の比(T/L)は1.875(T=30.0μm/L=16.0μm)とした。
【0061】
<比較例1>
下記の活物質粒子について、実施例1と同じソフトを用いて、リチウムイオン二次電池用の負極における集電体の上に設けられる活物質層モデルを作製した。活物質層モデルでは、活物質粒子が活物質粒子の長手方向を集電体の面方向に対して略垂直に配向していない仕様とした。
図3(A)に、比較例1の活物質層モデルの厚み方向断面概略図を示す。図中、矢印方向先端側が、集電体と接する側の面である。
【0062】
・活物質粒子:鱗片状黒鉛(長辺16.0μm、短辺6.0μm、アスペクト比2.7)
【0063】
<比較例2>
下記の活物質粒子及び微小粒子について、実施例1と同じソフトを用いて、リチウムイオン二次電池用の負極における集電体の上に設けられる活物質層モデルを作製した。活物質層モデルでは、磁場を印加し、活物質粒子が活物質粒子の長手方向を集電体の面方向に対して略垂直に配向している仕様とした。また、活物質層モデルでは、微小粒子が複数の活物質粒子の間に介在し、かつ、活物質層全体に分散して存在する仕様とした。
図3(B)に、比較例2の活物質層モデルの厚み方向断面概略図を示す。図中、矢印方向先端側が、集電体と接する側の面である。
【0064】
・活物質粒子:鱗片状黒鉛(長辺16.0μm、短辺6.0μm、アスペクト比2.7)・微小粒子 :アセチレンブラック(炭素材料、平均一次粒径3.0μm)
・微小粒子の含有量は、活物質層に対して、11.19体積%である。
活物質層の厚みTは30.0μmである。
【0065】
<基本モデルにおける液抵抗及び応力の評価>
各例の活物質層モデルについて、集電体と対向する側の面から圧延したときの、活物質粒子である鱗片状黒鉛にかかる最大応力の値と、電極内の電解液の液抵抗率の値を、シミュレーションにより求めた。なお、シミュレーションの条件は、ソフトGeoDict(MATH2MARKET社製)、算出条件:極板5%圧縮時応力、活物質(ヤング率32(MPa)、ポアソン比0.32、線膨張係数8e
-7(1/K))、導電率は、固体を0(S/m)、細孔を1(S/m)とした。結果を
図4及び
図5にそれぞれ示す。
【0066】
前記最大応力の値が高いほど、二次電池用電極の製造にじかかる圧力に弱いことを指す。
前記電解液の液抵抗率の値が高いほど、二次電池としたときに抵抗値が高いことを指す。
【0067】
図4は、各例の活物質層モデルにおける集電体と対向する側の面から圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値に関するグラフである。
図5は、各例の活物質層モデルにおける集電体と対向する側の面から圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値に関するグラフである。
【0068】
図4及び
図5に示すように、比較例1の活物質層モデルは、最大応力の値が小さく、配向が崩れにくいが、その反面、液抵抗率が高いことから、活物質層内の活物質粒子の配向性が崩れて、曲路率も高くなっていることが示唆される。
また、比較例2の活物質層モデルは、最大応力の値がやや高く、かつ、液抵抗率が高い。そのため、活物質層全体に分散して存在する微小粒子のために、活物質粒子の配向性の崩れこそ抑制されているが、曲路率が高くなっており、液体抵抗率が高くなっていることが示唆される。
一方、実施例1の活物質層モデルは、最大応力の値が比較例2よりも小さく、かつ、液抵抗率の値が比較例1~2よりも低いことから、活物質粒子の配向性の崩れが抑制されていることが示唆される。また、微小粒子が集電体と対向する側に偏在していることから、曲路率が小さく抑えられており、配向性の崩れ抑制との相乗効果で液抵抗率が小さく抑えられていると考えられる。
上述の様に、実施例の二次電池用電極は、比較例の二次電池用電極に比べて、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇が抑制されることが予想される。
【0069】
<微小粒子の充填性の評価>
活物質層モデル内における微小粒子が複数の活物質粒子の間に介在して存在するための、隣接する活物質粒子同士の間の空隙領域における、最短径A(つまりボトルネック径)と、最長径Bと、をそれぞれシミュレーションによって求めた。最短径Aと最長径Bはシミュレーション上で作成した電極の3D形状から、極板表面から連通する細孔領域を抜き出し、抜き出した領域に対する細孔径分布を測定することで、その最短径と最長径として各々算出した。
図6は、活物質層モデル内における微小粒子が存在する隣接する活物質粒子同士の間の空隙領域の厚み方向の断面概略図である。
図6に示すように、最短径Aは、微小粒子40が存在し得る隣接する活物質粒子30同士の間の空隙領域におけるボトルネック径を表し、最長径Bは、前記空隙領域における最長径を表している。その結果、今回のモデルでは、最短径A=1.84μm、最長径B=4.58μmであるときに、微小粒子を最も効率よく、複数の前記活物質粒子の間に介在させ、かつ、前記集電体と対向する側で偏在させやすいことがわかった。
【0070】
<微小粒子の平均一次粒径の評価>
集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値、又は、電極内の電解液の液抵抗率の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の平均一次粒径との相関関係を調べるために、微小粒子の粒子径を1.0μm、2.0μm、又は4.0μmとして、それぞれシミュレーションを実施した。なお、シミュレーションの条件は、上記<基本モデルにおける液抵抗及び応力の評価>と同様の仕様とした。結果を
図7及び
図8にそれぞれ示す。
【0071】
図7は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と微小粒子の平均一次粒子径との相関関係に関するグラフである。
図8は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と微小粒子の平均一次粒子径との相関関係に関するグラフである。
図7中、点線表記は、比較例2の活物質層モデルにおける結果を示しており、この比較例2の水準よりも低い最大応力を示すものがより好ましい態様として考えられる。なお、比較例2は微小粒子の平均一次粒子径が本シミュレーション評価とは異なり変動していることから、あくまで参考情報として記載しており、本開示はこれに限定されない。
図7及び
図8に示すように、微小粒子の平均一次粒子径は、1.84μm以上4.58μm以下(より好ましくは4.00μm以下)であるときに、最大応力及び液抵抗率ともに、良好な結果を示すことがわかった。
【0072】
<微小粒子の充填率の評価>
集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値、又は、電極内の電解の液抵抗率の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の充填率との相関関係を調べるために、微小粒子の充填率を、8.6体積%~43.2体積%として、それぞれシミュレーションを実施した。なお、シミュレーションの条件は、上記<基本モデルにおける液抵抗及び応力の評価>と同様の仕様とした。結果を
図9及び
図10にそれぞれ示す。なお、充填率とは、微小粒子は、活物質層における集電体と対向する側の面から、活物質層の厚み方向に、活物質粒子の長辺(μm)の0.500倍以下に相当する深さまでの領域を占める、前記領域における微小粒子の含有量のことを指す。
【0073】
図9は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と微小粒子の充填率との相関関係に関するグラフである。
図10は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と微小粒子の充填率との相関関係に関するグラフである。
図9中、点線表記は、比較例2の活物質層モデルにおける結果を示しており、この比較例1の水準よりも低い最大応力を示すものがより好ましい態様として考えられる。なお、比較例2は微小粒子の充填率が本シミュレーション評価とは異なり変動していることから、あくまで参考情報として記載しており、本開示はこれに限定されない。
図9及び
図10に示すように、微小粒子の充填率が26体積%~34.5体積%であるときに、最大応力及び液抵抗率ともに、より良好な結果を示すことがわかった。
【0074】
<微小粒子が存在する領域の厚みの評価>
集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値、又は、電極内の電解液の液抵抗率の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の充填量との相関関係を調べるために、活物質層モデルにおける微小粒子の存在する領域の厚みを、4.0μm~30.0μmとして、それぞれシミュレーションを実施した。なお、シミュレーションの条件は、上記<基本モデルにおける液抵抗及び応力の評価>と同様の仕様とした。結果を
図11及び
図12にそれぞれ示す。
【0075】
図11は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の存在する領域の厚みとの相関関係に関するグラフである。
図12は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の存在する領域の厚みとの相関関係に関するグラフである。
図11中、点線表記は、比較例2の活物質層モデルにおける結果を示しており、この比較例2の水準よりも低い最大応力を示すものがより好ましい態様として考えられる。なお、比較例2は微小粒子の充填率が本シミュレーション評価とは異なり変動していることから、あくまで参考情報として記載しており、本開示はこれに限定されない。
図11及び
図12に示すように、活物質層モデルにおける微小粒子の存在する領域の厚みが6.0μm~8.0μmであるときに、最大応力及び液抵抗率ともに、より良好な結果を示すことがわかった。なおこのとき、活物質層のうち微小粒子の存在している領域の厚みTと、活物質粒子の長辺Lと、の比(T/L)は、3/8~1/2であった。
【0076】
<微小粒子の異方性の評価>
集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値、又は、電極内の電解液の液抵抗の値と、活物質層モデルにおける微小粒子の異方性との相関関係を調べるために、微小粒子の長辺を4.0μm、5.0μm、6.0μm、8.0μm、10.0μm又は12.0μmとして、それぞれシミュレーションを実施した。なお、微小粒子の短辺はいずれの例も4.0μmとした。シミュレーションの条件は、上記<基本モデルにおける液抵抗及び応力の評価>と同様の仕様とした。結果を
図13及び
図14にそれぞれ示す。
【0077】
図13は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる最大応力の値と微小粒子の長辺との相関関係に関するグラフである。
図14は、集電体と対向する側の面から活物質層モデルを圧延したときの、活物質粒子にかかる液抵抗率の値と微小粒子の長辺との相関関係に関するグラフである。
【0078】
図13及び
図14いずれにおいても、微小粒子の短辺は4.0μmであることから、横軸に示す長辺が長くなるにともない、微小粒子の異方性が大きくなっていることを表している。より具体的に、微小粒子は、アスペクト比(長辺/短辺)が4.0/4.0(=1.0)~12.0/4.0(=3.0)のものを検討している。また、
図13及び
図14いずれにおいても、活物質粒子の短辺は6.0μmであり、活物質粒子の長辺は16.0μmであることから、横軸の長辺が長くなるにともない、微小粒子の長手方向の長さ(d)と、前記活物質粒子の長手方向の長さの半径(R)の比(d/R)が大きくなっていることも表している。
【0079】
図13中、点線表記は、比較例2の活物質層モデルにおける結果を示しており、この比較例2の水準よりも低い最大応力を示すものがより好ましい態様として考えられる。なお、比較例2は微小粒子の充填率が本シミュレーション評価とは異なり変動していることから、あくまで参考情報として記載しており、本開示はこれに限定されない。
図13及び
図14に示すように、微小粒子の長辺が4.0μm以上12.0μm以下(より好ましくは4.0μm以上10.0μm以下)であるとき、つまり、上記比(d/R)に換算して0.500以上1.200以下(より好ましくは0.625以上1.000以下)であるときに、最大応力及び抵抗率ともに、より良好な結果を示すことがわかった。
また、
図14では、アスペクト比が1(つまり長辺4.0μm)である微小粒子を採用した例に比べ、アスペクト比が1を超える微小粒子を採用した例の方が、液抵抗率が低下していることが分かる。これは、微小粒子が異方性を有することで、複数の微小粒子が凝集して活物質粒子間に介在することが抑制され、その結果、活物質層における材料配向性の崩れや曲路率の増加による抵抗値の上昇がより抑制されるためと考えられる。