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特開2024-91239フィルムの欠点検査装置及び欠点検査方法
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  • 特開-フィルムの欠点検査装置及び欠点検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091239
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】フィルムの欠点検査装置及び欠点検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240627BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/88 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101378
(22)【出願日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2022206399
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊地 優奈
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AB02
2G051AB04
2G051BA05
2G051BA11
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB02
2G051CC07
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】フィルムに発生する欠点が容易に弁別可能となる欠点検査装置、欠点検査方法の提供。
【解決手段】光散乱性を持つフィルムに発生する欠点を検出する欠点検査装置であって、前記フィルムを把持する把持部と、前記フィルムの一方の面を照らすように設置された短波長光源および前記フィルムの他方の面から前記光源より照射された光が前記フィルムを透過した透過光を受光するカメラと、前記光源と前記フィルムとの間に設置された第1の偏光板および前記フィルムと前記カメラとの間に前記第1の偏光板の偏光方向と直交する向きで設置された第2の偏光板を有する撮像部と、前記撮像部で得られた画像に対し演算処理を施すことにより欠点種を弁別する画像処理部と、を有する欠点検査装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光散乱性を持つフィルムに発生する欠点を検出する欠点検査装置であって、前記フィルムを把持する把持部と、前記フィルムの一方の面を照らすように設置された短波長光源および前記フィルムの他方の面から前記光源より照射された光が前記フィルムを透過した透過光を受光するカメラと、前記光源と前記フィルムとの間に設置された第1の偏光板および前記フィルムと前記カメラとの間に前記第1の偏光板の偏光方向と直交する向きで設置された第2の偏光板を有する撮像部と、前記撮像部で得られた画像に対し演算処理を施すことにより欠点種を弁別する画像処理部と、を有する欠点検査装置。
【請求項2】
前記光源から発する光が、波長500nm以下の範囲に最も強いピークを有する請求項1に記載の欠点検査装置。
【請求項3】
前記欠点種の弁別が、ピンホール欠点と明欠点の弁別を含む請求項1または2に記載の欠点検査装置。
【請求項4】
前記フィルムがポリオレフィン微多孔膜である請求項1または2に記載の欠点検査装置。
【請求項5】
前記フィルムが電池のセパレータに用いられるフィルムである請求項1または2に記載の欠点検査装置。
【請求項6】
光散乱性を持つフィルムに発生する欠点を検出する欠点検査方法であって、前記フィルムを把持する把持工程と、前記フィルムの一方の面を照らすように設置された短波長光源および前記フィルムの他方の面から前記光源より照射された光が前記フィルムを透過した透過光を受光するカメラと、前記光源と前記フィルムとの間に設置された第1の偏光板および前記フィルムと前記カメラとの間に前記第1の偏光板の偏光方向と直交する向きで設置された第2の偏光板を有する撮像部により前記フィルムを撮像する撮像工程と、前記撮像工程で得られた画像に対し演算処理を施すことにより欠点種を弁別する画像処理工程と、を有する欠点検査方法。
【請求項7】
前記光源から発する光が波長500nm以下に最も強いピークを有する請求項6に記載の欠点検査方法。
【請求項8】
前記欠点種の弁別が、ピンホール欠点と明欠点の弁別を含む請求項6または7に記載の欠点検査方法。
【請求項9】
前記フィルムがポリオレフィン微多孔膜である請求項6または7に記載の欠点検査方法。
【請求項10】
前記フィルムが電池のセパレータに用いられるフィルムである請求項6または7に記載の欠点検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱性を持つフィルムに発生する欠点を検出することが可能なフィルムの欠点検査装置、フィルムの欠点検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光散乱性を持つフィルム、例えばポリオレフィン微多孔膜は、製造工程において、搬送時の傷や帯電などにより、膜厚異常や穴あきなどによる欠点が発生する場合がある。
【0003】
それら欠点が発生した製品の出荷可否を判定するには、インラインでの全数検査により欠点サイズや形状等をモニタし、合否判定を実施する必要がある。
【0004】
このようなフィルムの欠点を検査する従来技術として、透過光を用いた光学的欠点検査があるが、穴欠点等を分類して検出することは困難である(例えば特許文献1)。
【0005】
また、上記のような欠点検査方法では膜厚異常部とピンホール部(穴あき部)とで画像上の輝度の差異がなく、同様の欠点として検出されてしまう。これを解決する方法として、偏光板2枚をフィルムを介してクロスニコル(垂直)の配置に設置し、採取した画像を2段階の二値化処理を施すことで暗欠点(ピンホール部(穴あき部))と明欠点(膜厚異常部等)とが弁別可能となる方法が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018/164057号
【特許文献2】特開平11-326238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の方法で明暗を弁別する際に暗欠点と明欠点とのコントラストが得られにくく、画像処理が複雑になる課題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解消し、フィルムに発生する膜厚異常部と穴あき部とが容易に弁別可能となる欠点検査装置、欠点検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るフィルム欠点検査装置、フィルム欠点検査方法は下記を特徴としている。
【0010】
本発明は、光散乱性を持つフィルムに発生する欠点を検出する欠点検査装置であって、前記フィルムを把持する把持部と、前記フィルムの一方の面を照らすように設置された短波長光源および前記フィルムの他方の面から前記光源より照射された光が前記フィルムを透過した透過光を受光するカメラと、前記光源と前記フィルムとの間に設置された第1の偏光板および前記フィルムと前記カメラとの間に前記第1の偏光板の偏光方向と直交する向きで設置された第2の偏光板を有する撮像部と、前記撮像部で得られた画像に対し演算処理を施すことにより欠点種を弁別する画像処理部と、を有する欠点検査装置である。本発明は光散乱性を持つフィルムに発生する欠点を検出する欠点検査方法であって、前記フィルムを把持する把持工程と、前記フィルムの一方の面を照らすように設置された短波長光源および前記フィルムの他方の面から前記光源より照射された光が前記フィルムを透過した透過光を受光するカメラと、前記光源と前記フィルムとの間に設置された第1の偏光板および前記フィルムと前記カメラとの間に前記第1の偏光板の偏光方向と直交する向きで設置された第2の偏光板を有する撮像部により前記フィルムを撮像する撮像工程と、前記撮像工程で得られた画像に対し演算処理を施すことにより欠点種を弁別する画像処理工程と、を有する欠点検査方法である。
【0011】
また、前記光源から発する光が、波長500nm以下の範囲に最も強いピークを有する光源を使用してもよい。
【0012】
また、前記欠点種の弁別が、ピンホール欠点と明欠点の弁別を含むものであってもよい。
【0013】
また、前記フィルムがポリオレフィン微多孔膜であってもよく、セパレータ用に用いられるフィルムでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルムを介するように偏光板を垂直に配置し、それらを短波長光源で照射することにより、容易に欠点種ごとの弁別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る装置を説明する構成図である。
図2図2は、本発明の装置において明欠点を撮像した場合の模式図である。
図3図3は、本発明の装置においてピンホール欠点(穴欠点)を撮像した場合の模式図である。
図4図4は、後述する実験例1で得られた画像を表す図である。
図5図5は、長波長光源15を用いた例を説明する構成図である。
図6図6は、後述する実験例2で得られた画像を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。また、各図及び以下の説明は、当事者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0017】
なお、図面は符号を判読可能な向きに紙面を向けてそれぞれ見るものとする。また、本発明のフィルムの用語は、膜、不織布及び紙などを含むものである。本実施形態ではフィルムの一例としてポリオレフィン微多孔膜を挙げて説明するが、これに限定されない。その他種々のフィルムにも適応可能である。
【0018】
まず、図1を参照して本装置の詳細な構成について説明する。フィルムの欠点検査装置30は図1に示すようにフィルム20を把持する把持部21を有し、画像を得る撮像部22および得られた画像に演算処理を施す画像処理部23を有している。
【0019】
撮像部22はフィルム20とフィルム20の一方の面を照らすように設置された短波長光源11とその光を受光するカメラ12を有しており、短波長光源11とフィルム20の間に第1の偏光板13、フィルム20とカメラ12の間に第2の偏光板14がそれぞれの偏光方向が垂直関係になるように設置されている。第1の偏光板13及び第2の偏光板14はカメラ12の撮像範囲を全て網羅できるように設置されている。また、カメラ12には画像処理部23が接続されている。なお、フィルム20の幅とカメラ12の撮像範囲によっては撮像部22を複数設置して、全幅検査可能にしてもよい。
【0020】
フィルム20は前述の通り、ポリオレフィン微多孔膜が好ましいが光散乱性を持つフィルムであればこれに限らない。
【0021】
把持部21はフィルム20のばたつき、歪みおよびしわなどを抑え、より均一な画像を得るために設置される。フィルム20が搬送され連続的に撮像を実施する場合は、フィルム20全体に張力が掛かるロールが好ましいがフィルム20と短波長光源11およびフィルム20とカメラ12の間を遮蔽しなければこれに限らない。また、ロールの配置は撮像範囲を除いて最短距離とすることで、よりフィルム20のばたつき等を抑えることができるため好ましい。
【0022】
短波長光源11は波長が500nm以下に最も強いピークをもつ光源が好ましく、最も強いピークの波長範囲が200~400nmであることがさらに好ましく、この範囲のうちより短い波長であることがより好ましい。また、形状はカメラ12の撮像エリアを網羅できる形状が好ましく、例えばラインスキャンカメラの場合はバー照明、エリアカメラの場合は面照明などである。さらに、フィルム20の材質や厚みに応じて、最適な光量に調整可能な光量調整機能を有することが好ましい。
【0023】
カメラ12はフィルムが搬送され、連続的に撮像を実施する場合はラインスキャンカメラが好ましいが搬送速度に対して十分な分解能、スキャン間隔および露光時間を備えている場合はエリアカメラでもよい。
【0024】
第1の偏光板13および第2の偏光板14はそれぞれの偏光方向垂直関係にあることが好ましいが、垂直角度を0度としたとき±20度の範囲であってもよい。また、図1では偏光板が独立して設置されているがこれに限らず、例えば照明と一体型、カメラと一体型であってもよい。
【0025】
画像処理部23はカメラ12で得られた画像に演算処理を施す工程であり、演算処理は、輝度閾値を設けた二値化処理が好ましく、画像ごとに地合輝度が異なる場合は動的閾値を設けた二値化処理がより好ましい。また、閾値は欠点種ごとに個別に設定されていることが好ましい。さらに、欠点種ごとに分類可能であれば、上述した二値化手法に限らない。なお、画像処理部23はカメラ12がラインスキャンカメラ等であった場合、カメラ12からの信号データを繋ぎ合わせ、画像を生成する役割も持つ。
【0026】
次に検出原理について図2及び図3を用いて説明する。図2及び図3は本検査装置で撮像した際の一部の光線を模式的に表したものである。
【0027】
図2は明欠点40を撮像した例である。短波長光源11から発生した光線Aは第1の偏光板13を通過すると縦成分のみとなり光線Bのみが透過する。光線Bはフィルム20の明欠点40を通過すると再び散乱するため光線Cとなり、さらに第2の偏光板14を通過すると横成分のみの光線Dとなり、光線Dのみがカメラ12に受光される。また、明欠点40ではなくフィルム20の欠点の無い部分においても散乱度合いは異なるが同様の現象となる。また、短波長光源11であることにより、より散乱を大きくすることが可能となり、より明欠点40のコントラストが大きくなり、検出が容易となる。この様な明欠点の具体的な例としては膜厚異常部等が挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
一方、図3はピンホール欠点(穴欠点)41を撮像した例である。短波長光源11から発生した光線Aは第1の偏光板13を通過すると縦成分のみとなり光線Bのみが透過する。光線Bはフィルム20の穴欠点41を通過すると、穴であるため散乱することなくそのまま縦成分のみの光線Bが透過する。光線Bが第2の偏光板14を通過すると縦成分はキャンセルされるため、結果としてカメラ12に受光される光線はない。そのため、ピンホール欠点(穴欠点)が暗欠点として撮像される。
【0029】
以上の説明より、本欠点検査装置30により明欠点40と穴欠点41を容易に弁別することが可能となる。また、本発明の欠点検査方法により、明欠点40と穴欠点41を容易に弁別することが可能となる。
【実施例0030】
本発明の効果を確認するため、確認実験を行った。
(実験例1)
本試験では比較例と実施例(本発明例、図1実施形態相当)とを用意した。第1の偏光板13及び第2の偏光板14をそれぞれ平行の関係(a)とした構成を比較例、垂直の関係(b)とした構成を実施例としてそれぞれ配置し、明欠点40および穴欠点41の撮像を実施した。得られた画像を図4に示す。偏光板を平行で撮像した画像が画像a、垂直で撮像した画像が画像bであり、明欠点40は画像aでは白く写っているのに対し、画像bではグレーがかっている。一方、穴欠点41は画像aでは明欠点40同様白く写っているが、画像bでは黒く写っている。これらより明欠点40および穴欠点41を容易に弁別が可能であることが実証された。
(実験例2)
本試験では上述した図1の好ましい実施形態の実験装置を用意した。実施形態1では図1の構成のうち、短波長光源11のピーク波長を470nmに設定し、明欠点40および穴欠点41の撮像を実施した。実施形態2では図5に示す通り、図1の構成のうち、短波長光源11を長波長光源15に変更し、長波長光源のピーク波長を575nmに設定し、明欠点40および穴欠点41の撮像を実施した。
【0031】
撮像結果を図6に示す。実施形態1の画像が画像A、実施形態2の画像が画像Bであり、明欠点40および穴欠点41のそれぞれの輝度を確認すると、画像Aの明欠点40の輝度は179、穴欠点41の輝度は34であり、画像Bの明欠点40の輝度は94、穴欠点41の輝度は17であった。弁別性は明欠点と穴欠点の輝度の差が大きいほど優位となるため、実施形態1(画像A)では145、実施形態2(画像B)では77と実施形態1が優位であることが確認できた。
【0032】
これらより、短波長光源により、明欠点40および穴欠点41を容易に弁別が可能であることが実証された。
【0033】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【符号の説明】
【0034】
30 欠点検査装置
11 短波長光源
12 カメラ
13 第1の偏光板
14 第2の偏光板
15 長波長光源
20 フィルム
21 把持部
22 撮像部
23 画像処理部
40 明欠点
41 ピンホール欠点(穴欠点)








図1
図2
図3
図4
図5
図6