IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東海理化電機製作所の特許一覧 ▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図1
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図2
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図3
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図4
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図5
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図6
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図7
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図8
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図9
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図10
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図11
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図12
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図13
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図14
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図15
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図16
  • 特開-映像表示システム及び表示制御装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091245
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】映像表示システム及び表示制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240627BHJP
   B62J 29/00 20060101ALI20240627BHJP
   B62J 50/22 20200101ALI20240627BHJP
   B60R 1/28 20220101ALN20240627BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B62J29/00 Z
B62J50/22
B60R1/28 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115474
(22)【出願日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2022207661
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 智宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 浦瑠那
(72)【発明者】
【氏名】中居 利成
(72)【発明者】
【氏名】栗山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕一
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FD07
5C054FE14
5C054FE16
5C054FE18
5C054FE26
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】ライダーの真後ろの死角を低減可能な映像を切り出すことができる、映像システム及び表示制御装置を提供する。
【解決手段】映像表示システムは、モータサイクルの後方確認用の光学ミラーと、モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、ライダーの前方に配置され、撮像装置で得られた映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、モータサイクルの走行時に、撮像装置による撮像映像の撮像範囲の第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面から、第1の領域とは異なる第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面に遷移するように、表示装置を制御する制御装置と、を備え、第1の領域及び第2の領域の各々は、自車両の真後ろ方向に延在する自車両の車幅に相当する光学ミラーによるライダーの死角領域を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータサイクルの後方確認用の光学ミラーと、
前記モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、
ライダーの前方に配置され、前記撮像装置で得られた映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、
前記モータサイクルの走行時に、前記撮像装置による撮像映像の撮像範囲の第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面から、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面に遷移するように、前記表示装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、自車両の真後ろ方向に延在する自車両の車幅に相当する前記光学ミラーによるライダーの死角領域を含む、
映像表示システム。
【請求項2】
モータサイクルの後方確認用の光学ミラーと、
前記モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、
ライダーの前方に配置され、前記撮像装置で得られた映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、
前記モータサイクルの走行時に、前記撮像装置による撮像映像の撮像範囲の第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面から、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面に遷移するように、前記表示装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、ライダーにより設定される前記光学ミラーによるライダーの死角領域を含む、
映像表示システム。
【請求項3】
前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、各領域の下辺が前記光学ミラーによるライダーの死角領域の両側端と交差する矩形領域である、
請求項1又は請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項4】
前記第1の映像は、前記撮像映像の倍率より前記光学ミラーの倍率に近い倍率を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記ライダーによる指定方向と同じ側の領域が広い、
請求項1又は請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項5】
前記第2の領域は、前記第1の領域よりもターン側の領域が広く、
前記制御装置は、前記モータサイクルに設置されたターンスイッチの操作に連動して、前記第1の画面から前記第2の画面に遷移するように前記表示装置を制御する、請求項1又は請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項6】
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも他車両が検知された側の領域が広く、
前記制御装置は、前記モータサイクルに設置されたブラインドスポットモニタの検知結果に連動して、前記第1の画面から前記第2の画面に遷移するように前記表示装置を制御する、請求項1又は請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項7】
前記制御装置は、車両が停車したこと又は車両が走行を開始したことに連動して、前記第1の画面から前記第2の画面に遷移するように前記表示装置を制御する、請求項1又は請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1の映像が前記第2の映像に連続的に変化するように、前記第1の映像の倍率と前記第2の映像の倍率の中間の倍率を有する映像を含む少なくとも1つの追加画面を介して前記第1の画面から前記第2の画面に遷移させる、請求項1又は請求
項2に記載の映像表示システム。
【請求項9】
前記第2の映像において、
前記第2の領域のうち前記死角領域の最大幅に対応する第3の領域は、前記第1の映像と同じ倍率で表示され、
前記第2の領域のうち前記第3の領域以外の領域は、車幅方向に圧縮して表示される、
請求項1又は請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第2の映像を含む第2の画面を表示する際に、前記第1の映像に対応する第1の領域を示す枠及び前記第2の映像を表示中であることを示すアイコンの少なくとも一方を前記第2の映像に重畳表示させる、請求項1又は請求項2に記載の映像表示システム。
【請求項11】
モータサイクルのライダーの前方に光学ミラーと共に配置される表示装置を制御する表示制御装置であって、
メモリと前記メモリに接続されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記モータサイクルの走行時に、前記モータサイクルの後方を撮像する撮像装置から映像データを取得し、
取得した前記映像データに基づいて、前記映像データの撮像範囲の第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面を表示した後で、前記第1の画面から前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面に遷移するように、前記表示装置を制御し、
前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、自車両の真後ろ方向に延在する自車両の車幅に相当する前記光学ミラーによるライダーの死角領域を含む、
表示制御装置。
【請求項12】
モータサイクルのライダーの前方に光学ミラーと共に配置される表示装置を制御する表示制御装置であって、
メモリと前記メモリに接続されたプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記モータサイクルの走行時に、前記モータサイクルの後方を撮像する撮像装置から映像データを取得し、
取得した前記映像データに基づいて、前記映像データの撮像範囲の第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面を表示した後で、前記第1の画面から前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面に遷移するように、前記表示装置を制御し、
前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、ライダーにより設定される前記光学ミラーによるライダーの死角領域を含む、
表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示システム及び表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二輪車後方を撮像した映像を表示装置に表示して、ライダーに二輪車後方の視覚的情報を提供する技術が知られている。広角レンズを備える撮像装置によれば、二輪車後方の広範囲な領域を撮像することができるが、広範囲な領域を撮像した後方映像を表示装置に表示させると、映像内の後続車両のサイズが小さくなり、視認性が低下するという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献1に記載の技術では、広範囲な領域を含む後方映像の中から、真後ろ方向を含む画像と、左右の死角方向を含む画像とをそれぞれ切り出して、画像を切り替えて表示することで、各画像をライダーが識別しやすい画像サイズで表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-100596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学ミラーではライダーの身体に隠れる真後ろの領域が死角となる。しかしながら、特許文献1に記載の技術のように画像の切り出し範囲を左右にスライドさせた場合、ライダーの真後ろにある死角領域の一部又は全部が表示されない可能性がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、ライダーの真後ろの死角を低減可能な映像を切り出すことができる、映像システム及び表示制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様の映像表示システムは、モータサイクルの後方確認用の光学ミラーと、前記モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、ライダーの前方に配置され、前記撮像装置で得られた映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、前記モータサイクルの走行時に、前記撮像装置による撮像映像の撮像範囲の第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面から、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面に遷移するように、前記表示装置を制御する制御装置と、を備え、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、自車両の真後ろ方向に延在する自車両の車幅に相当する前記光学ミラーによるライダーの死角領域を含む。
【0008】
本開示の第2態様の映像表示システムは、モータサイクルの後方確認用の光学ミラーと、前記モータサイクルの後方を撮像する撮像装置と、ライダーの前方に配置され、前記撮像装置で得られた映像データに基づいて映像を表示する表示装置と、前記モータサイクルの走行時に、前記撮像装置による撮像映像の撮像範囲の第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面から、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面に遷移するように、前記表示装置を制御する制御装置と、を備え、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、ライダーにより設定される前記光学ミラーによるライダーの死角領域を含む。
【0009】
本開示の第3態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記第1の領域及び前記第2の領域の各々は、各領域の下辺が前記光学ミラーによるライダーの死角領域の両側端と交差する矩形領域である。
【0010】
本開示の第4態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記第1の映像は、前記撮像映像の倍率より前記光学ミラーの倍率に近い倍率を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記ライダーによる指定方向と同じ側の領域が広い。
【0011】
本開示の第5態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記第2の領域は、前記第1の領域よりもターン側の領域が広く、前記制御装置は、前記モータサイクルに設置されたターンスイッチの操作に連動して、前記第1の画面から前記第2の画面に遷移するように前記表示装置を制御する。
【0012】
本開示の第6態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記第2の領域は、前記第1の領域よりも他車両が検知された側の領域が広く、前記制御装置は、前記モータサイクルに設置されたブラインドスポットモニタの検知結果に連動して、前記第1の画面から前記第2の画面に遷移するように前記表示装置を制御する。
【0013】
本開示の第7態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記制御装置は、前記第1の映像が前記第2の映像に連続的に変化するように、前記第1の映像の倍率と前記第2の映像の倍率の中間の倍率を有する映像を含む少なくとも1つの追加画面を介して前記第1の画面から前記第2の画面に遷移させる。
【0014】
本開示の第8態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記第2の映像において、前記第2の領域のうち前記死角領域の最大幅に対応する第3の領域は、前記第1の映像と同じ倍率で表示され、前記第2の領域のうち前記第3の領域以外の領域は、車幅方向に圧縮して表示される。
【0015】
本開示の第9態様の映像表示システムは、本開示の第1態様又は第2態様の映像表示システムにおいて、前記制御装置は、前記第2の映像を含む第2の画面を表示する際に、前記第1の映像に対応する第1の領域を示す枠及び前記第2の映像を表示中であることを示すアイコンの少なくとも一方を、前記第2の映像に重畳表示させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の第1態様の映像表示システムによれば、ライダーの真後ろの死角を低減可能な映像を切り出すことができる。
【0017】
本開示の第2態様の映像表示システムによれば、死角領域をライダーの体格や光学ミラーの設置状況によらず、死角を低減することができる。
【0018】
本開示の第3態様の映像表示システムによれば、死角領域を客観的に定義することができる。
【0019】
本開示の第4態様の映像表示システムによれば、後続車両との距離感や後続車両のサイズ感を維持したまま、ターン側の広範囲な後方映像(第2の映像)を表示することができ、ターン側の広範囲な領域を含む後方映像を表示することができる。
【0020】
本開示の第5態様の映像表示システムによれば、進路変更や右左折といったシーンに応じて自動で画面が切り替わるため、ライダーによるスイッチ操作の回数を減らすことができ、ライダーは、進路変更や右左折の際に、確認したいターン側の後方領域の映像を見ることができる。
【0021】
本開示の第6態様の映像表示システムによれば、ブラインドスポットモニタの検知結果に応じて自動で画面が切り替わるため、ライダーによるスイッチ操作の回数を減らすことができ、ライダーは、自車両の斜め後方からの車両の接近している場合に、他車両が後側方から接近した際に、検知された車両がいる側の映像を見ることができる。
【0022】
本開示の第7態様の映像表示システムによれば、ライダーは映像の変化を認識し易くなり、後続車両との距離感や後続車両のサイズ感を維持することが容易になる。
【0023】
本開示の第8態様の映像表示システムによれば、真後ろの死角領域を通常映像(第1の映像)と同じ倍率で表示したままで、ターン側の広範囲な領域を含む後方映像(第2の映像)を表示することができる。
【0024】
本開示の第9態様の映像表示システムによれば、通常映像(第1の映像)とターン側の広範囲な領域を含む後方映像(第2の映像)の、いずれが表示されているかが認識し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る映像表示システムの構成の一例を示す概略図である。
図2】表示装置の配置と操作装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る映像表示システムの電気的構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る映像表示プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】(A)~(E)は通常映像と広範囲映像とを示す模式図である。
図7】(A)は通常映像表示処理の流れの一例を示すフローチャートであり、(B)は広範囲映像表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】スイッチ操作に応じた画面遷移を示す模式図である
図9】本発明の第2の実施形態に係る映像表示プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】操作装置の他の一例を示す概略図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る映像表示プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】(A)~(C)は通常映像と広範囲映像とを示す模式図である。
図13】(A)及び(B)は映像が段階的に切り替わる様子を示す模式図である。
図14】(A)~(D)は広範囲映像の切り出し範囲のバリエーションを示す模式図である。
図15】(A)及び(B)は死角領域の設定を受け付ける方法の一例を説明する模式図である。
図16】本発明の第8の実施形態に係る映像表示プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図17】第8の実施形態に係る映像表示プログラムの変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0027】
<第1の実施形態>
本開示の映像表示システムは、モータサイクル用の映像表示システムであり、自車両の後方の映像をライダーに表示する。ここで「モータサイクル」とは、ライダーが跨って騎乗する鞍乗型車両のうちの自動二輪車、自動三輪車又は自動四輪車を意味する。モータサイクルには、エンジンを駆動源とするものと、モータを駆動源とするものとが含まれる。モータサイクルとしては、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が挙げられる。以下では、モータサイクルが自動二輪車である場合について説明する。
【0028】
(映像表示システムの構成)
まず、映像表示システムの構成について説明する。
図1は映像表示システムの構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、映像表示システム10は、撮像装置12、表示装置14、制御装置16、操作装置18、及び光学ミラー19を備えている。図1では、各装置を1つずつ図示しているが、撮像装置12、表示装置14、及び操作装置18の各々は、複数設けられていてもよい。光学ミラー19は、後方確認用の光学ミラーであり、車両の装備として左右両側にそれぞれ1個ずつ設けられている。
【0029】
撮像装置12は、車体11の後方を撮像する装置である。撮像装置12は、画角が60度未満のカメラであってもよいし、画角が60度以上の広角レンズを備えたカメラであってもよい。撮像装置12としては、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等のイメージセンサを備えたデジタルビデオカメラを用いることができる。
【0030】
表示装置14は、車両の後方の映像をライダーに表示する装置である。表示装置14の表示部40(図3参照)としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、これらディスプレイ上にタッチパネルが重ねられた構成のタッチパネルディスプレイ等のディスプレイを用いることができる。表示装置14は、ライダー前方のライダーが見易い位置に設置されている。
【0031】
表示装置14としては、車体11のインストルメントパネルに備え付けられたディスプレイを使用してもよく、後付けのディスプレイを使用してもよい。例えば、図2に示すように、備え付けのディスプレイを使用する場合、表示装置14は、インストルメントパネルの中央に配置することができる。また、後付けのディスプレイの場合は、メータディスプレイの近くに表示装置14を配置することができる。この場合、ライダーから計器類(例えば、メータディスプレイ)までの距離と、ライダーから表示装置14までの距離とを略同じにすることで、ライダーは焦点合わせがし易くなる。
【0032】
制御装置16は、表示装置14を制御するために設けられた電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)の制御機能部である。制御装置16は、例えば、シート内
部に埋め込むなど、車体11の内部に設置されている。
【0033】
操作装置18は、ライダーが操作入力を行うための装置である。操作装置18としては、ハンドル近傍に取り付けられるハンドルスイッチ等を用いることができる。ハンドルスイッチによれば、走行中にも操作入力を行うことができる。操作装置18は、例えば、図2に示すように、押しボタン式のスイッチであり、左グリップに取り付けることができる。また、後述する通り、ターンスイッチを操作装置18として使用することもできる。
【0034】
(映像表示システムの電気的構成)
次に、映像表示システム10の電気的な構成について説明する。
図3は映像表示システム10の電気的構成の一例を示すブロック図である。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)30、ROM(Read Only Memory)32、R
AM(Random Access Memory)34、及び不揮発性のメモリ36を備えている。ROM3
2又は不揮発性のメモリ36には、後述する「映像表示プログラム」が予め記憶されている。CPU30は、予め記憶されたプログラムを読み出し、RAM34をワークエリアとしてプログラムを実行する。
【0035】
制御装置16には、撮像装置12、表示装置14、及び操作装置18が、制御装置16との間でデータの授受を行えるように有線又は無線で接続されている。また、各種センサ20、通信部22及び記憶部24も、制御装置16との間でデータの授受を行えるように制御装置16に有線又は無線で接続されている。制御装置16は、各部との間で情報の授受を行って、各部を制御する。
【0036】
センサ20は、車体11の傾きを検知するための傾きセンサ、加速度センサ等である。通信部22は、外部装置28と通信を行うためのインタフェースである。記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)、メモリカード(例えば、SDカード)等の外部記憶装置で
ある。記憶部24には、後述する各種画面の画像データ等が記憶されている。制御装置16は、通信部22及び記憶部24と一緒にケースに収納され、ECUとして車体11の内部に設置されている。
【0037】
表示装置14は、表示部40、操作部42、センサ44、及びスピーカ46などを備えている。表示部40は、映像データに基づいて映像を表示するためのディスプレイである。操作部42は、操作入力を行うためのスイッチやボタンである。センサ44は、表示装置14の向きを検知するための加速度センサである。スピーカ46は、音声データに基づいて音声を出力する装置である。
【0038】
以上説明した構成は一例であり、他の部材を追加することもでき、一部の部材を省略することもできる。例えば、映像表示システム10は、車両周辺の音声を収集するためのマイク26を備えていてもよい。マイク26は、例えば、図示したように撮像装置12に内蔵されているマイクでもよい。
【0039】
ここで、映像表示システム10の動作を簡単に説明する。
撮像装置12で車両の後方の映像が撮像されて、得られた映像データが制御装置16に出力される。制御装置16は、得られた映像データを処理して表示装置14に出力する。表示装置14は、得られた映像データに基づいて映像を表示する。
【0040】
また、ライダーは、表示装置14に表示される画面を切り替える指示など、操作装置18を介して各種の指示を行うことができる。制御装置16は、ライダーからの指示に応じて、例えば、光学ミラーと同じ倍率の通常映像を表示する画面を、ターン側が広い広範囲映像を表示する画面に切り替える。なお、ライダーによる操作入力は、表示装置14の操作部42を介して行うこともでき、表示装置14の表示部40に表示された操作画面を介して行うこともできる。
【0041】
なお、通常映像を表示する画面が、本発明の「第1の領域に対応する第1の映像を表示する第1の画面」に相当し、ターン側が広い広範囲映像を表示する画面が、本発明の「第2の領域に対応する第2の映像を表示する第2の画面」に相当する。
【0042】
(制御装置の機能的構成)
次に、制御装置16の機能的な構成について説明する。
図4は制御装置16の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。制御装置16は、切替判定部50及び表示制御部52を備えている。これらの各機能部は、後述する「映像表示プログラム」が制御装置16のCPU30によって実行されることで実現される。
【0043】
(映像表示プログラム)
次に、映像表示プログラムについて説明する。
図5は「映像表示プログラム」の処理の流れの一例を示すフローチャートである。映像表示プログラムは、制御装置16のCPU30によって実行され、表示装置14がオン状態されると開始される。ここでは、ステップS112を除いて、CPU30の動作を、図4に示す各機能部の動作として説明する。
【0044】
第1の実施形態では、操作装置18は、画面の切替えを指示するため専用スイッチである。操作装置18は、例えば、図2に示す押しボタン式のスイッチとすることができる。ライダーがボタンを押すことで、表示装置14に表示される画面が順次切り替わる。ライダーは、撮像映像の撮像範囲のうちターン側の広い領域を含む広範囲映像を見たい場合がある。本実施形態では、ライダーは、このような広範囲映像を表示する画面への切替えを指示することができる。
【0045】
なお、表示装置14をオン/オフする指示は、例えば、エンジン始動スイッチ等のスイ
ッチ操作により行われてもよい。或いは、表示装置14をオン/オフする指示は、異なる
ボタンを押す、ボタンの押し方を変更する等、操作装置18の別のスイッチ操作により行われてもよい。
【0046】
まず、ステップS100で、表示制御部52は、表示装置14に初期画面を表示させる。表示装置14がオン状態されると、まず初期画面が表示される。初期画面は、映像を表示していない状態の画面であり、例えば、車速、走行距離、エンジンの回転数、水温、燃料残量等の車両情報が表示される車両情報画面とすることができる。また、初期画面は、何も表示していない画面でもよい。
【0047】
次に、ステップS102で、切替判定部50は、初期画面の表示中に画面の切替えが指示されたか否かを判定する。画面の切替えが指示された場合は、ステップS104に進む。画面の切替えが指示されていない場合は、ステップS102に戻り、指示があるまで画面の切替えが指示されたか否かを繰り返し判定する。
【0048】
次に、ステップS104で、表示制御部52は、通常映像を表示する画面に切り替える「通常映像表示処理」を実行する。図6(C)に示す通常映像71は、図6(A)に示すように、撮像映像60の撮像範囲から一部の領域62を切り出して反転させた映像である。通常映像71は、ライダーは後続車両との距離感や後続車両のサイズ感を把握し易いように、表示される像が光学ミラーの鏡像と同様の大きさになる倍率で表示される。また、反転映像を表示するのは、後方確認用の光学ミラーに映る鏡像と同じ向きで表示される方が、ライダーは後方の状況を把握しやすいためである。
【0049】
図6(B)は、車両を上から見た図である。後方確認用の光学ミラーから延びる一点鎖線は光学ミラーの視野範囲を表し、車両の真後ろに延びる一点鎖線は真後ろの死角領域を表している。また、着色領域は、通常映像71の切り出し範囲を表している。
【0050】
撮像装置12は車両の後方の広い範囲を撮像しているが、ライダーが見たいのはライダー自身の真後ろの死角となる領域である。一方、撮像映像は、この真後ろの死角領域が撮像範囲の中央に来るように撮像されている。したがって、撮像範囲の中央部分を含む領域62を切り出して表示範囲とする。一部の領域62を切り出して表示することで、図6(C)に示すように、通常映像71では、ライダーが見たい範囲を大きく表示することができる。
【0051】
図6(A)では、領域68(網掛け部分)は、車両後方の車幅に相当する死角領域を表
している。ここで車幅とは、車両の幅が一番広い部分の幅であり、一般に「全幅」と称される幅である。全幅は、ミラーを除く車両の最外形である。領域68は、消失点を頂点とし、車両中心線66に対して対称な二等辺三角形であり、画面上の上側(すなわち、遠方)に行くほど幅が狭くなる。この領域68は、真後ろの死角領域と略一致する。本実施形態では、真後ろの死角領域をこのように客観的に定義することで、切り出し範囲に真後ろの死角領域が必ず含まれるようにする。これにより真後ろの死角を低減することができる。以下、領域68を死角領域68という。
【0052】
なお、実空間での車幅方向は、表示映像上では左右方向に相当する。このため、映像の説明において、車幅方向を左右方向という場合がある。
【0053】
ここで「通常映像表示処理」の流れを説明する。図7(A)に示すように、表示制御部52は、撮像装置12から映像データを取得する(ステップS200)。ここでは、撮像装置12から得られた未処理の映像データを「撮像映像データ」と称する。次に、表示制御部52は、撮像範囲の一部の領域を表示範囲として切り出すと共に、表示範囲の映像を左右反転させるように撮像映像データを画像処理して、表示装置14に表示させる表示用の映像データを生成する(ステップS202)。ここでは、表示用の映像データを「表示映像データ」と称する。次に、表示制御部52は、表示映像データを表示装置14に出力して、表示映像データに基づく映像を表示装置14に表示させる(ステップS204)。
【0054】
ステップS202の表示範囲の切り出しでは、まず、撮像映像における死角領域68を特定する。画像上での死角領域68の位置は、例えば、透視投影によるカメラモデルにより求めることができる。次に、矩形上の領域62の下辺が死角領域68の両側端と交差し、死角領域68の消失点を含むように切り出し範囲を決定する(図6(A)参照)。このように切り出し範囲を決めることで、死角領域68を領域62に含めることができる。
【0055】
なお、表示映像データの生成時に、回転補正、歪み補正、色補正、ノイズ除去等の画像処理を行ってもよい。
【0056】
図5の説明に戻る。次に、ステップS106で、切替判定部50は、通常映像の表示中に画面の切替えが指示されたか否かを判定する。画面の切替えが指示された場合は、ステップS108に進む。画面の切替えが指示されていない場合は、ステップS106に戻り、指示があるまで画面の切替えが指示されたか否かを繰り返し判定する。
【0057】
次に、ステップS108で、表示制御部52は、ターン側が広い広範囲映像を表示する画面に切り替える「広範囲映像表示処理」を実行する。図6(E)に示すターン側が広い広範囲映像73は、図6(A)に示すように、撮像映像60の撮像範囲のうちターン側が広くなるように領域64を切り出して反転させた映像である。この例は右折する場合であり、領域64は、車両進行方向に対して右側が広く、図6(A)では左側が広い領域である。領域64は、通常映像として切り出される領域62を含む。広範囲映像73を表示する画面に切り替えることで、ライダーは、右左折時に確認したいターン側の後方映像を見ることができる。
【0058】
上述した通り、本実施形態では、領域64に真後ろの死角領域68が必ず含まれるようにする。これにより、ターン側が広い広範囲映像73を表示する場合においても、真後ろの死角を低減することができる。図6(D)は、車両を上から見た図である。着色領域は、広範囲映像73の切り出し範囲を表している。図6(D)から分かるように、広範囲映像73は、真後ろの死角領域68を含み、ターン側の死角領域をも含んでいる。
【0059】
また、広範囲映像73を表示する際にも、撮像映像60の一部の領域を切り出して表示
することで、撮像範囲全体を表示する場合に比べて倍率を大きくすることができる。ターン側が広い広範囲映像73では、後続車等が大きなサイズで表示されるので視認性が向上する。また、撮像範囲全体を表示する場合に比べて通常映像71からの倍率変化が少ないので、ライダーは、後続車両との距離感や後続車両のサイズ感を維持することが容易になる。
【0060】
ここで「広範囲映像表示処理」の流れを説明する。図7(B)に示すように、表示制御部52は、撮像装置12から撮像映像データを取得する(ステップS300)。表示制御部52は、撮像範囲の一部の領域を表示範囲として切り出すように撮像映像データを画像処理する(ステップS302)。次に、表示制御部52は、表示範囲の映像を左右反転させるように撮像映像データを画像処理して、表示装置14に表示させる表示用の映像データを生成する(ステップS304)。次に、表示制御部52は、表示映像データを表示装置14に出力して、表示映像データに基づく映像を表示装置14に表示させる(ステップS306)。
【0061】
ステップS302の表示範囲の切り出しでは、まず、撮像映像における死角領域68を特定する。次に、矩形上の領域64の下辺が死角領域68の両側端と交差し、死角領域68の消失点を含むように切り出し範囲を決定する(図6(A)参照)。このように切り出し範囲を決めることで、死角領域68を領域64に含めることができる。
【0062】
図5の説明に戻る。次に、ステップS110で、切替判定部50は、広範囲映像の表示中に画面の切替えが指示されたか否かを判定する。画面の切替えが指示された場合は、ステップS100に戻って、初期画面を表示させる。画面の切替えが指示されていない場合は、ステップS112に進む。
【0063】
次に、ステップS112で、CPU30は、表示を終了するか否かを判定する。例えば、表示装置14をオフ状態にするように指示されると、ステップS112で肯定判定して、ルーチンを終了する。一方、表示を終了しない場合は、ステップS112で否定判定して、ステップS110に戻り、画面の切替えが指示されたか否かを繰り返し判定する。したがって、表示装置14がオフ状態にされるまで、ステップS100~ステップS112の処理が繰り返し実行される。
【0064】
図8はスイッチ操作に応じた画面遷移を示す模式図である。図8に実線で示すように、表示装置14がオン状態されると、まず、初期画面(すなわち、車両情報画面)70が表示装置14に表示される。初期画面70の表示中にスイッチが押されて画面の切替えが指示されると、表示画面は、初期画面70から通常映像71を表示する画面72に遷移する。
【0065】
画面72の表示中にスイッチが押されて画面の切替えが指示されると、表示画面は、通常映像71を表示する画面72から広範囲映像73を表示する画面74に遷移する。画面74の表示中にスイッチが押されて画面の切替えが指示されると、表示画面は、広範囲映像73を表示する画面74から初期画面70に遷移する。
【0066】
通常映像71を表示する画面72及び広範囲映像73を表示する画面74には、初期画面70に含まれる車両情報を表示する画像75を重畳表示してもよい。車両情報を表示する画像75は、例えば、画面72及び画面74の端部(例えば、上端部、下端部)に表示することができる。また、広範囲映像73を表示する画面74には、通常映像71で表示される領域を示す枠76や広範囲映像73の表示中であることを示すアイコン78を重畳表示してもよい。
【0067】
また、押しボタン式のスイッチは長押しが可能である。上述した例では、初期画面70の表示中にスイッチが押されると通常映像71を表示する画面72に遷移させ、画面72の表示中にスイッチが押されると広範囲映像73を表示する画面74に遷移させるというように、2回のスイッチ操作で3つの画面を切り替えたが、スイッチの長押しにより1回のスイッチ操作で、3つの画面を切り替えてもよい。スイッチ操作の継続を、画面の切替え指示とみなすことができる。
【0068】
また、専用スイッチは、広範囲映像73の表示を指示するためのスイッチであってよい。この場合でも、初期画面70の表示中にスイッチが押されると、初期画面70から広範囲映像73を表示する画面74に直接遷移させるのではなく、通常映像71を表示する画面72に遷移させた後で、画面72から広範囲映像73を表示する画面74に遷移させる。
【0069】
以上説明した通り、第1の実施形態に係る映像表示システムによれば、以下に示すような様々な効果を得ることができる。
【0070】
(1)撮像装置は車両の後方の広い範囲を撮像しているが、撮像範囲のうちライダーが見たい領域を切り出した通常映像を、走行中にライダーの前方に配置された表示装置に表示するので、見たい範囲が大きく表示され視認性が向上する。また、ライダーは真後ろの死角となる領域を確認できるようになり、後方確認が容易になる。さらに、後方確認が容易になることから、ライダーの首振り動作を低減することができ、安全性の向上が見込まれる。
【0071】
(2)一方で、ライダーからの指示に応じて広範囲映像を表示させる。これにより、ライダーは自車両の周囲の状況を把握し易くなる。また、いきなり広範囲映像が表示されるのではなく、光学ミラーと同じ倍率の通常映像が表示された後で、これに続けて広範囲映像が表示されるので、ライダーは、後続車両との距離感や後続車両のサイズ感を維持したまま、広範囲映像を見ることができる。
【0072】
(3)また、ターン側の広範囲な後方映像を表示するので、以下の効果が得られる。
(i)ライダーは、進路変更や右左折の際に、隣りの車線の後方映像など、確認したいタ
ーン側の後方領域の映像を見ることができる。
(ii)撮像範囲全体を表示する場合に比べてターン側の後方映像が大きなサイズで表示されるので、映像の視認性が向上する。
(iii)撮像範囲全体を表示する場合に比べて通常映像から広範囲映像への倍率変化が少
ないので、ライダーは後続車両との距離感や後続車両のサイズ感を維持することが容易になる。
【0073】
(4)また、通常映像及びターン側が広い広範囲映像の各々について、切り出し範囲に真後ろの死角領域が必ず含まれるようにするので、光学ミラーには映らないライダーの真後ろの死角を低減することができる、
【0074】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、スイッチ操作により画面が順次切り替えられるようにしたが、第2の実施形態では、後方映像の表示に時間制限を設けて、所定時間内に次のスイッチ操作が行われない場合は、初期画面に戻ることにする。
【0075】
第2の実施形態では、映像表示プログラムの処理の流れが第1の実施形態とは異なっている。このため、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0076】
(映像表示プログラム)
次に、映像表示プログラムについて説明する。
図9は第2の実施形態に係る「映像表示プログラム」の処理の流れの一例を示すフローチャートである。映像表示プログラムは、制御装置16のCPU30によって実行され、表示装置14がオン状態されると開始される。ここでは、ステップS416を除いて、CPU30の動作を、図4に示す各機能部の動作として説明する。
【0077】
まず、ステップS400で、表示制御部52は、表示装置14に初期画面を表示させる。次に、ステップS402で、切替判定部50は、初期画面の表示中に画面の切替えが指示されたか否かを判定する。画面の切替えが指示された場合は、ステップS404に進む。画面の切替えが指示されていない場合は、ステップS402に戻り、指示があるまで画面の切替えが指示されたか否かを繰り返し判定する。
【0078】
次に、ステップS404で、表示制御部52は、通常映像を表示する画面に切り替える「通常映像表示処理」を実行する。次に、ステップS406で、切替判定部50は、通常映像を表示する画面に切り替えてから所定時間が経過したか判定する。所定時間が経過した場合は、ステップS400に戻って、初期画面を表示させる。所定時間が経過していない場合は、ステップS408に進む。
【0079】
次に、ステップS408で、切替判定部50は、通常映像の表示中に画面の切替えが指示されたか否かを判定する。画面の切替えが指示された場合は、ステップS410に進む。画面の切替えが指示されていない場合は、ステップS406に戻る。
【0080】
次に、ステップS410で、表示制御部52は、ターン側が広い広範囲映像を表示する画面に切り替える「広範囲映像表示処理」を実行する。次に、ステップS412で、切替判定部50は、広範囲映像を表示する画面に切り替えてから所定時間が経過したか判定する。所定時間が経過した場合は、ステップS400に戻って、初期画面を表示させる。所定時間が経過していない場合は、ステップS414に進む。
【0081】
次に、ステップS414で、切替判定部50は、通常映像の表示中に画面の切替えが指示されたか否かを判定する。画面の切替えが指示された場合は、ステップS400に戻って、初期画面を表示させる。画面の切替えが指示されていない場合は、ステップS416に進む。
【0082】
次に、ステップS416で、CPU30は、表示を終了するか否かを判定する。表示を終了する場合は、ステップS416で肯定判定して、ルーチンを終了する。一方、表示を終了しない場合は、ステップS416で否定判定して、ステップS412に戻る。したがって、表示装置14をオフ状態にされるまで、ステップS400~ステップS416の処理が繰り返し実行される。
【0083】
図8に実線で示すように、表示装置14がオン状態されると、まず、初期画面70が表示装置14に表示される。初期画面70の表示中にスイッチが押されて画面の切替えが指示されると、表示画面は、初期画面70から通常映像71を表示する画面72に遷移する。
【0084】
画面72の表示開始から所定時間内にスイッチが押されて画面の切替えが指示されると、図8に実線で示すように、表示画面は、通常映像71を表示する画面72から広範囲映像73を表示する画面74に遷移する。一方、スイッチが押されずに所定時間が経過すると、図8に破線で示すように、表示画面は、通常映像71を表示する画面72から初期画
面70に遷移する。
【0085】
また、画面74の表示開始から処置時間内にスイッチが押されて画面の切替えが指示されると、図8に実線で示すように、表示画面は、広範囲映像73を表示する画面74から初期画面70に遷移する。スイッチが押されずに所定時間が経過した場合にも、図8に破線で示すように、表示画面は、広範囲映像73を表示する画面74から初期画面70に遷移する。
【0086】
以上説明した通り、第2の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、ライダーの前方視認時の煩わしさを低減することができる。すなわち、ライダーは前方に配置される表示装置に後方映像が常時表示されると煩わしさを感じることがあるが、後方映像の表示に時間制限を設けることでこのような煩わしさを低減することができる。
【0087】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、専用スイッチの操作により画面が順次切り替えられるようにしたが、第3の実施形態では、ターンスイッチの操作に連動して画面が切り替えられるようにする。また、第3の実施形態では、広範囲映像に対応する切り出し領域の他の一例を例示する。
【0088】
第3の実施形態では、画面を切り替えるスイッチ、広範囲映像の表示範囲、及び映像表示プログラムの処理(特に、広範囲映像表示処理のサブルーチン)の流れが第1の実施形態とは異なっている。このため、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0089】
第3の実施形態では、ターンスイッチ18Aが操作装置18の一例である。モータサイクルの車体11には、図10に示すようなターンスイッチ18Aが設けられている。ターンスイッチは、例えば、左右に動くスライド式のスイッチであり、スイッチは指を離すと中央位置に戻るように構成されている。進路変更時には、ライダーは、スライドスイッチを左右にスライドさせて、ターン側のウィンカを作動させる。第3の実施形態では、ターンスイッチ18Aが操作されると、その操作に連動して画面を切り替える。
【0090】
(映像表示プログラム)
次に、映像表示プログラムについて説明する。
図11は第3の実施形態に係る「映像表示プログラム」の処理の流れの一例を示すフローチャートである。映像表示プログラムは、制御装置16のCPU30によって実行され、表示装置14がオン状態されると開始される。
【0091】
大まかな処理の流れは、図5に示す映像表示プログラムと同じであり、図11のステップS500~S512は、図5のステップS100~S112に対応している。しかしながら、ステップS508の「広範囲映像表示処理」の内容は、図5のステップS108とは異なるし、ステップS510及びステップS512の処理も、図5のステップS110及びステップS112とは異なっている。
【0092】
まず、ステップS500で、表示制御部52は、表示装置14に初期画面を表示させる。次に、ステップS502で、切替判定部50は、初期画面の表示中にターンスイッチが操作されたか否かを判定する。ターンスイッチが操作された場合は、ステップS504に進む。ターンスイッチが操作されていない場合は、ステップS502に戻り、ターンスイッチが操作されたか否かを繰り返し判定する。
【0093】
次に、ステップS504で、表示制御部52は、通常映像を表示する画面に切り替える「通常映像表示処理」を実行する。次に、ステップS506で、切替判定部50は、通常映像の表示中にターンスイッチが操作されたか否かを判定する。ターンスイッチが操作された場合は、ステップS508に進む。ターンスイッチが操作されていない場合は、ステップS506に戻り、ターンスイッチが操作されたか否かを繰り返し判定する。
【0094】
次に、ステップS508で、表示制御部52は、ターン側が広い広範囲映像を表示する画面に切り替える「広範囲映像表示処理」を実行する。ここでは、切り出し領域の他の一例を例示する。図12(C)に示すターン側が広い広範囲映像73Aは、図12(A)に示すように、撮像映像60の撮像範囲のうちターン側が広くなるように領域64Aを切り出して反転させた映像である。
【0095】
第1の実施形態では、通常映像71に対応する領域62をすべて含むように領域64を切り出して広範囲映像73(図12(B)参照)としたが、第3の実施形態では、領域64Aは、死角領域68を含むが、領域62は部分的にしか含まない。領域62の一部を含まないように切り出すことで、切り出し範囲を小さくでき、図12(C)に示す広範囲映像73Aの倍率を、図12(B)に示す広範囲映像73の倍率よりも大きくすることができる。
【0096】
図11の説明に戻る。次に、ステップS510で、切替判定部50は、広範囲映像を表示する画面に切り替えてから所定時間が経過したか判定する。所定時間が経過した場合は、ステップS512に進む。所定時間が経過していない場合は、ステップS510に戻り、所定時間が経過するまで判定を繰り返し行う。次に、ステップS512で、CPU30は、表示を終了するか否かを判定する。表示を終了する場合は、ステップS512で肯定判定して、ルーチンを終了する。一方、表示を終了しない場合は、ステップS512で否定判定して、ステップS500に戻って、初期画面を表示させる。
【0097】
図8の画面遷移図において、広範囲映像73を広範囲映像73Aに置き換えて、画面遷移について説明する。図8に実線で示すように、表示装置14がオン状態にされると、まず、初期画面70が表示装置14に表示される。初期画面70の表示中にターンスイッチが操作されると、表示画面は、初期画面70から通常映像71を表示する画面72に遷移する。続けて、画面72の表示中にターンスイッチが操作されると、表示画面は、通常映像71を表示する画面72から広範囲映像73Aを表示する画面74に遷移する。
【0098】
第3の実施形態では、ターンスイッチの操作に連動して画面が切り替えられるが、ターンスイッチはウィンカを作動させるものであるため、ターン側が広い広範囲映像73Aを表示する画面74に切り替えた後は、スイッチ操作を求めずに、図8に破線で示すように、所定時間が経過すると初期画面70に戻るようにする。
【0099】
以上説明した通り、第3の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、進路変更や右左折といったシーンに応じて自動で画面が切り替わるため、ライダーによるスイッチ操作の回数を減らすことができるという効果を得ることができる。また、広範囲映像が通常映像に対応する領域をすべて含む場合に比べて、倍率が大きい広範囲映像を表示することができ、視認性が向上する。
【0100】
また、ターンスイッチも、スイッチが中央位置に戻らないように指で押さえる等することにより、長押しが可能である。したがって、スイッチの長押しにより1回のスイッチ操作で、初期画面70から通常映像71を表示する画面72に遷移させ、画面72から広範囲映像73を表示する画面74に遷移させるようにしてもよい。スイッチ操作の継続を、画面の切替え指示とみなすことができる。
【0101】
また、ターンスイッチが操作される場合は、ターン側が広い広範囲映像を見たいという意思が推認されるので、スイッチの長押しがなくても、初期画面70から通常映像71を表示する画面72に遷移させ、画面72から広範囲映像73を表示する画面74に自動で遷移させるようにしてもよい。
【0102】
また、ターンスイッチ18Aは、操作装置18(専用スイッチ)と併用してもよい。例えば、初期画面70から通常映像71を表示する画面72への切り替えを専用スイッチにより行い、通常映像71を表示する画面72から広範囲映像73を表示する画面74への切り替えをターンスイッチ18Aにより行ってもよい。
【0103】
<第4の実施形態>
第1の実施形態では、通常映像とターン側が広い広範囲映像の2種類の映像を表示する例について説明したが、第4の実施形態では、撮像範囲からの切り出し領域を徐々に(すなわち、段階的に又は連続的に)広げるようにする。
【0104】
例えば、図13(A)に示すように、撮像映像80に対して切り出される領域を、領域82、領域84、領域86、領域88の順に段階的に大きくする。これに従い、図13(B)に示すように、表示装置14に表示される映像の倍率は、映像92、映像94、映像96、映像98の順に段階的に小さくなる。これらの映像を順に表示することで、ズームアウトしたときのように、表示装置14に表示される映像の倍率が連続的に変化するように見える。
【0105】
第4の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、ライダーは映像の変化を認識し易くなり、後続車両との距離感や後続車両のサイズ感を維持することが容易になる。
【0106】
<第5の実施形態>
第1~第4の実施形態では、通常映像に対応する領域と広範囲映像に対応する領域とが相似形状に切り出される例について説明したが、第5の実施形態では、両者について撮像範囲からの切り出し領域の形状を変える。
【0107】
例えば、図14(A)に示すように、「広範囲映像表示処理」において、撮像映像60の撮像範囲のうちターン側が広くなるように領域64Bを切り出す際に、通常映像71に対応する領域62と、領域62を左右方向にスライドさせた領域とを含む領域64Bを切り出すようにする。この場合についても、領域62及び領域64Bの各々は死角領域68を含んでいる。しかしながら、図14(B)に示すように、表示装置14の表示部40のサイズは一定であるため、切り出した領域64Bをこのまま広範囲映像として表示すると倍率が小さくなってしまう。
【0108】
第5の実施形態では、図14(C)に示すように、通常映像とターン側が広い広範囲映像とが相似形状になるように、切り出した領域64Bについて、死角領域68の最大幅に相当する領域68Aの倍率は通常映像と同じ倍率で表示し、領域68A以外の領域を左右方向に圧縮して表示する。その結果、広範囲映像73Bが表示される。例えば、図7(B)のステップS304で、切り出した表示範囲の映像を部分的に圧縮すると共に、映像を左右反転するように撮像映像データを画像処理して、表示映像データを生成する。そして、生成した表示映像データに基づいて広範囲映像73Bを表示する。
【0109】
第5の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、真後ろの死角領域を通常映像と同じ倍率で表示したままで、ターン側が広い広
範囲映像を表示することができる。
【0110】
なお、上記の例では、通常映像と同じ倍率で表示する領域を領域68Aに限定しているが、例えば、領域62を含む部分の倍率変化を抑えて、それ以外の部分の圧縮率を上げてもよい。また、上記の例では、左右方向だけ圧縮しているが、上下方向も圧縮してもよい。また、圧縮の境界線を重畳表示して、圧縮領域と圧縮していない領域の切り分けが分かるようにしてもよい。
【0111】
<第6の実施形態>
第1~第5の実施形態では、通常映像を本発明の「第1の領域に対応する第1の映像」に対応付け、ターン側が広い広範囲映像を本発明の「第2の領域に対応する第2の映像」に対応付けたが、第6の実施形態では、第1の領域及び第2の領域の広狭は問わない。
【0112】
例えば、図14(D)に示すように、通常映像に対応する領域62を左右方向にスライドさせて、領域62と同じ大きさの領域65を切り出して、通常映像を表示した後で、領域65に対応するスライド映像を表示する場合にも、本発明は適用できる。また、撮像範囲全体の映像を表示した後で、領域65に対応するスライド映像を表示する場合にも、本発明は適用できる。
【0113】
第2の領域に相当する領域65は、第1の領域に相当する領域62と同じ大きさであるため、スライド映像は広範囲映像とは言えないが、死角領域68を含むように領域65を切り出すことで、死角を低減することができる。
【0114】
<第7の実施形態>
第1~第6の実施形態では、死角領域を車幅に応じて定めたが、第7の実施形態では、死角領域をライダーが設定する。このような設定は、車両停車中に行うことができる。
【0115】
図15(A)に示すように、撮像範囲全体の映像73を表示装置14に表示すると共に、死角領域設定のための画面100を映像73にポップアップ表示して、ライダーからの設定を受け付ける。図6(A)に示した車幅により定まる領域68と同様に、死角領域は、消失点を頂点とし、車両中心線66に対して対称な二等辺三角形とする。この場合、二等辺三角形の底辺である幅Lを設定することにより、死角領域68を設定することができる。
【0116】
例えば、画面100は、幅Lの値を入力する入力部102と確定ボタン104とを含む。ライダーは、入力部102から幅Lの値を入力して確定ボタン104を押すと、例えば、図15(B)に示すように、図15(A)の枠76に示す通常映像71のうちで設定された死角領域68に対応する映像71Bが拡大表示される。ライダーは、後方確認用の光学ミラーに映る範囲と表示装置14に表示された映像71Bとを比較しながら幅Lの値を調整して、光学ミラーでは視認できない範囲を死角領域68として設定する。
【0117】
死角領域はライダーの体格や光学ミラーの設置状況に応じて変化する。ライダー自身が実際に見えない範囲を死角領域68として設定することで、ライダーの体格や光学ミラーの設置状況によらず、死角を確実に低減することができる。
【0118】
なお、設定方法は一例であり、ライダーが身長や体重を入力すると、ライダーの入力値から予測される死角領域68を算出して対応する映像71Bを表示し、修正を受け付けるようにしてもよい。或いは、ライダーが着座すると、目の位置や身幅などを自動計測して死角領域68を算出するようにしてもよい。
【0119】
また、初期設定では死角領域を車幅に応じて定め、後でライダーが設定を変更できるようにしてもよい。
【0120】
<第8の実施形態>
第1の実施形態では、専用スイッチの操作により画面が順次切り替えられるようにしたが、第8の実施形態では、車両情報に基づいて車両が停車状態にあると判定された場合に、画面が切り替えられるようにする。例えば、モータサイクル・ツーリングにおいて、複数の車両で走行している場合、信号待ち等で停車した際に、真後ろに位置する他の車両の状況を確認したい場合がある。第8の実施形態によれば、そのようなニーズに応えることができる。
【0121】
(映像表示プログラム)
第8の実施形態では、映像表示プログラムの処理の流れが第1の実施形態とは異なっている。このため、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。図16は第8の実施形態に係る「映像表示プログラム」の処理の流れの一例を示すフローチャートである。映像表示プログラムは、制御装置16のCPU30によって実行され、表示装置14がオン状態されると開始される。ここでは、ステップS612を除いて、CPU30の動作を、図4に示す各機能部の動作として説明する。
【0122】
まず、ステップS600で、表示制御部52は、表示装置14に初期画面を表示させる。次に、ステップS602で、車両情報に基づいて所定の車両状態にあるか否かを判定する「車両状態判定処理」を実行する。第8の実施形態では、車両が停車状態にあるか否かを判定する。ここでいう「停車状態」とは、車両がエンジンを作動させたままで停車している状態である。例えば、ライダーがクラッチレバーを握ったままの場合もあれば、ライダーがギアをニュートラルにしてクラッチレバーを離している場合もある。
【0123】
車両は、図3のセンサ20として、車両情報を取得するための各種センサを備えているものとする。このようなセンサの例としては、車速を検知する車速センサ、シフトペダルの操作により変化するギア位置を検知するギアポジションセンサ、クラッチレバーの操作によるクラッチのオン/オフを検知するクラッチスイッチ等が挙げられる。
【0124】
「車両状態判定処理」では、各種センサから車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて車両が停車状態にあるか否かを判定する。例えば、これらのセンサの検出結果から、車速が0km/時で且つギアが一定時間ニュートラルにある場合、又は、車速が0km/時で且つクラッチが一定時間オン状態である場合は、車両が停車状態にあると判定することができる。一方、それ以外の場合は、車両が停車状態にはないと判定することができる。なお、この判定基準は一例であり、例えば、車速が0km/時の場合に、車両が停車状態にあると判定してもよい。
【0125】
次に、ステップS604で、切替判定部50は、画面を切り替えるか否かを判定する。車両が停車状態にある場合は画像を切り替えると判定し、ステップS606に進む。車両が停車状態にない場合は画像を切り替えないと判定し、ステップS602に戻る。そして、画像を切り替えると判定されるまで、ステップS602とステップS604を繰り返し実行する。
【0126】
次に、ステップS606で、表示制御部52は、通常映像を表示する画面に切り替える「通常映像表示処理」を実行する。続けて、ステップS608で、表示制御部52は、通常映像を表示する画面に切り替えてから所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過した場合に、ステップS610に進む。
【0127】
次に、ステップS610で、表示制御部52は、広範囲映像を表示する画面に切り替える「広範囲映像表示処理」を実行する。停車時には、後方の広範囲映像を見たいという意思が推認されるので、初期画面から通常映像を表示する画面に遷移させ、その画面から広範囲映像を表示する画面に自動的に遷移させる。ここでの広範囲映像は、ターン側の映像には限定されない。
【0128】
次に、ステップS612で、切替判定部50は、画面を切り替えるトリガーを検知したか否かを判定する。車両が停車状態にある場合、車両が再び走行を開始したことが画面を切り替えるトリガーとなる。例えば、センサの検出結果から、車速が0km/時であり、ギアがニュートラルからロウに切り替えられ、かつ、クラッチがオン状態である場合には、車両が走行を開始したと判断できる。車両の走行開始をトリガーとして検知した場合は、ステップS600に戻る。すなわち、表示制御部52は、広範囲映像を表示する画面から、初期画面に遷移させる。
【0129】
一方、ステップS612でトリガーを検知していない場合は、ステップS614に進む。次に、ステップS614で、切替判定部50は、広範囲映像を表示する画面に切り替えてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合は、ステップS612に戻る。トリガーを検知せずに所定時間が経過した場合は、ステップS616に進む。
【0130】
次に、ステップS616で、CPU30は、表示を終了するか否かを判定する。表示を終了する場合は、ステップS616で肯定判定して、ルーチンを終了する。一方、表示を終了しない場合は、ステップS616で否定判定して、ステップS600に戻る。したがって、表示装置14がオフ状態にされるまで、ステップS600~ステップS616の処理が繰り返し実行される。
【0131】
以上説明した通り、第8の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、信号待ちなどの停車時に自動で画面が切り替わり、広範囲映像が表示されるので、後方映像を確認したいというライダーのニーズに応えることができると共に、ライダーによるスイッチ操作の回数を減らすことができるという効果を得ることができる。
【0132】
<第9の実施形態>
第8の実施形態では、車両が停車状態にあると判定された場合に、画面が切り替えられるようにするが、第9の実施形態では、車両が走行開始状態にあると判定された場合に、画面が切り替えられるようにする。この状態は、車両がエンジンを作動させたままで停車した後、車両が走行を再開するような場合に生じ得る。
【0133】
第9の実施形態に係る「映像表示プログラム」の処理の流れは、ステップS602に示す「車両状態判定処理」において車両が走行開始状態にあるか否かを判定し、ステップS612で検知するトリガーを安定走行状態とする以外は、図16に示す第8の実施形態に係る「映像表示プログラム」の処理の流れと同じである。
【0134】
例えば、上述した通り、センサの検出結果から、車速が0km/時であり、ギアがニュートラルからロウに切り替えられ、かつ、クラッチがオン状態である場合には、車両が走行開始状態にあると判定することができる。一方、それ以外の場合は、車両が走行開始状態にはないと判定することができる。また、例えば、センサの検出結果から、車速が予め定めた速度を超えた場合に、車両が安定走行状態になったと判断することができる。車両の安定走行をトリガーとして検知した場合は、初期画面の表示に戻る。
【0135】
以上説明した通り、第9の実施形態に係る映像表示システムによれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる外に、信号待ちなどで停車した後、走行を再開する際に自動で画面が切り替わり、広範囲映像が表示されるので、ライダーに注意喚起を促して追突などを回避することができると共に、ライダーによるスイッチ操作の回数を減らすことができるという効果を得ることができる。
【0136】
ここで、図17を参照して、第8、第9の実施形態に係る映像表示プログラムの変形例について説明する。変形例に係る映像表示プログラムは、制御装置16のCPU30によって実行され、例えば、表示装置14がオンにされた状態で、ライダーが操作装置18を操作して映像の表示を指示することにより開始される。
【0137】
まず、ステップS700で、表示制御部52は、通常映像を表示する画面に切り替える「通常映像表示処理」を実行する。次に、ステップS702で、車両情報に基づいて所定の車両状態にあるか否かを判定する「車両状態判定処理」を実行する。第8の実施形態では、車両が停車状態にあるか否かを判定し、第9の実施形態では、車両が走行開始状態にあるか否かを判定する。
【0138】
次に、ステップS704で、切替判定部50は、画面を切り替えるか否かを判定する。車両が所定の車両状態にある場合は画像を切り替えると判定し、ステップS706に進む。車両が所定の車両状態にない場合は画像を切り替えないと判定し、ステップS700に戻る。そして、画像を切り替えると判定されるまで、ステップS700とステップS702とを繰り返し実行する。
【0139】
次に、ステップS706で、表示制御部52は、広範囲映像を表示する画面に切り替える「広範囲映像表示処理」を実行する。
【0140】
次に、ステップS708で、切替判定部50は、画面を切り替えるトリガーを検知したか否かを判定する。所定の車両状態に応じて予め定めたトリガーを検知した場合は、ステップS700に戻る。すなわち、表示制御部52は、広範囲映像を表示する画面から、通常映像を表示する画面に遷移させる。
【0141】
一方、ステップS708でトリガーを検知していない場合は、ステップS710に進む。次に、ステップS710で、切替判定部50は、広範囲映像を表示する画面に切り替えてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合は、ステップS708に戻る。トリガーを検知せずに所定時間が経過した場合は、ステップS712に進む。
【0142】
次に、ステップS712で、CPU30は、表示を終了するか否かを判定する。表示を終了する場合は、ステップS712で肯定判定して、ルーチンを終了する。一方、表示を終了しない場合は、ステップS712で否定判定して、ステップS700に戻る。したがって、映像の表示がオフにされるまで、ステップS700~ステップS712の処理が繰り返し実行される。
【0143】
この変形例に示すように、初期画面の表示は省略することができる。また、初期画面を表示せずに通常映像を表示する画面を表示した場合にも、車両状態の判定結果に基づいて広範囲映像を表示する画面に切り替えることができる。なお、他の実施形態においても同様に、初期画面の表示を省略することができる。
【0144】
<変形例>
なお、上記各実施形態で説明した映像表示システムの構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0145】
上記の第3の実施形態では、ターンスイッチの操作に連動して画面を切り替えるようにしたが、各種センサの検知結果に連動して画面を切り替えてもよい。各種センサとしては、自車両の後方からの車両の接近を検知するBSM(ブラインドスポットモニタ)、車両の傾きを検知するセンサ、車速センサ等がある。例えば、BSMからの警報に応じて、画面を切り替えてもよい。
【0146】
上記の実施形態では、図8に示すように、初期画面→通常映像71を表示する画面72→広範囲映像73を表示する画面74→初期画面70の順でループを形成するように画面を遷移させるが、初期画面→通常映像71を表示する画面72→広範囲映像73を表示する画面74→通常映像71を表示する画面72→初期画面70のように往復させてもよい。
【0147】
上記の実施形態では、表示装置をインストルメントパネルのメータディスプレイに設置する例について説明したが、表示装置は、メータディスプレイの有無に拘わらず、ライダー前方のライダーが見易い位置に設置されていればよい。例えば、ハンドルに設置してもよく、ミラーの取り付け部に設置してもよく、燃料タンクの上部に設置してもよく、カウル内に設置してもよく、メータディスプレイの上側に設置してもよい。
【0148】
上記の実施形態では、専用の表示装置を設ける例について説明したが、表示装置として、スマートフォンやタブレット等の携帯型の情報処理装置を使用してもよい。この場合に、携帯型の情報処理装置は、インストールされた専用のアプリケーションプログラムを使用して、制御装置であるECUと協働することで各種の処理を実行する。例えば、スマートフォンは、Bluetooth(登録商標)により、通信部22に無線接続され、記憶部24に記憶されている映像データに基づく映像を、画面に表示できる(図3参照)。
【符号の説明】
【0149】
10・・・映像表示システム、11・・・車体、12・・・撮像装置、14・・・表示装置、16・・・制御装置、18・・・操作装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17