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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091248
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】熱交換素子
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/40 20060101AFI20240627BHJP
   B21D 13/04 20060101ALI20240627BHJP
   B21D 53/08 20060101ALI20240627BHJP
   B21F 33/00 20060101ALI20240627BHJP
   F23D 14/82 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F28F1/40 Q
B21D13/04 A
B21D53/08 K
B21F33/00
F28F1/40 M
F28F1/40 N
F23D14/82 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119794
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022207047
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】関 一浩
(72)【発明者】
【氏名】大東 勉
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】荒井 聡司
【テーマコード(参考)】
3K017
4E070
【Fターム(参考)】
3K017DE09
4E070AB03
4E070AC07
4E070AD03
4E070BA02
4E070BA13
4E070BC15
4E070FA01
4E070FA02
(57)【要約】
【課題】流体と接触する素子の表面積を増大させて熱交換効率を向上させた新規な熱交換素子を提供することを目的とする。
【解決手段】波板状の第一形態を有する第一リボン20の一面と、第一形態とは異なる平板状の第二形態を有する第二リボン30の一面とが重ね合わされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子1、2、3である。熱交換素子において第一リボンと第二リボンの少なくとも一方は、金属線材Wを編み上げたニットリボン41から構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一形態を有する第一リボンの一面と、該第一形態とは異なる第二形態を有する第二リボンの一面とが重ね合わされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子であって、
前記第一リボンと前記第二リボンの少なくとも一方は、金属線材を編み上げたニットリボンから構成されていることを特徴とする熱交換素子。
【請求項2】
前記ニットリボンは、前記金属線材が輪編みされた筒状ニットの対向する内径面同士が密着するように押しつぶされた構成を有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換素子。
【請求項3】
巻き始め側の端部には前記ニットリボンのみが巻き回されていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換素子。
【請求項4】
前記金属線材は、第一金属材料からなる芯線の周囲に、前記第一金属材料よりも融点の低い第二金属材料が被覆された構成を備えており、
前記熱交換素子は、溶融固化した前記第二金属材料によって、前記金属線材の一部分と前記熱交換素子中の他の部分とが接合された箇所を有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換素子。
【請求項5】
第一形態を有する第一リボンの一面と、該第一形態とは異なる第二形態を有する第二リボンの一面とが重ね合わされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子であって、
前記第一リボンと前記第二リボンの少なくとも一方は、その短手方向に流体を通過させる流路を肉厚内に有することを特徴とする熱交換素子。
【請求項6】
巻き始め側の端部には、前記第一リボンと前記第二リボンのうち、前記短手方向に流体を通過させる流路を前記肉厚内に有するリボンのみが巻き回されていることを特徴とする請求項5に記載の熱交換素子。
【請求項7】
少なくとも前記第一リボンは、前記長手方向と交差する方向に延びる凹条と凸条とが前記長手方向に沿って繰り返す形状を有し、
隣接する前記第一リボンと前記第二リボンとの間には、流体を前記凹条に沿って前記熱交換素子の軸方向の一方側から他方側に通過させる複数のセルが前記各凹条と前記第二リボンとによって形成されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の熱交換素子。
【請求項8】
前記凹条と前記凸条の延在方向が前記第一リボンの短手方向の中間部において変化することを特徴とする請求項7に記載の熱交換素子。
【請求項9】
第一リボンの一面と第二リボンの一面とが重ねあわされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子であって、
前記第一リボンと前記第二リボンの少なくとも一方は、金属線材を編み上げたニットリボンから構成されており、
前記第一リボンと前記第二リボンは前記長手方向と交差する方向に延びる凹条と凸条とが前記長手方向に沿って繰り返す形状を有し、前記第一リボンと前記第二リボンの一方の凹条に対して前記第一リボンと前記第二リボンの他方の凸条が嵌合しないように、前記両リボンが重ね合わされていることを特徴とする熱交換素子。
【請求項10】
前記ニットリボンは、前記金属線材が輪編みされた筒状ニットの対向する内径面同士が密着するように押しつぶされた構成を有することを特徴とする請求項9に記載の熱交換素子。
【請求項11】
巻き始め側の端部には前記ニットリボンのみが巻き回されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の熱交換素子。
【請求項12】
前記金属線材は、第一金属材料からなる芯線の周囲に、前記第一金属材料よりも融点の低い第二金属材料が被覆された構成を備えており、
前記熱交換素子は、溶融固化した前記第二金属材料によって、前記金属線材の一部分と前記熱交換素子中の他の部分とが接合された箇所を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の熱交換素子。
【請求項13】
第一形態を有する概略リボン状又はシート状の第一部材と、第二形態を有すると共に第一部材の一面が重なる表面を有した第二部材とを備え、前記第一部材の一面と前記第二部材の表面とが対向するように層状に重ね合わされた熱交換素子であって、
少なくとも前記第一部材は金属線材を編み上げたニット部材から構成されており、
該ニット部材は、前記金属線材が輪編みされた筒状ニットの対向する内径面同士が密着するように押しつぶされた構成を有することを特徴とする熱交換素子。
【請求項14】
第一形態を有する概略リボン状又はシート状の第一部材と、第二形態を有すると共に第一部材の一面が重なる表面を有した第二部材とを備え、前記第一部材の一面と前記第二部材の表面とが対向するように層状に重ね合わされた熱交換素子であって、
少なくとも前記第一部材は金属線材を編み上げたニット部材から構成されており、
前記金属線材は、第一金属材料からなる芯線の周囲に、前記第一金属材料よりも融点の低い第二金属材料が被覆された構成を備えており、
前記熱交換素子は、溶融固化した前記第二金属材料によって、前記金属線材の一部分と前記熱交換素子中の他の部分とが接合された箇所を有することを特徴とする熱交換素子。
【請求項15】
第一形態を有する第一リボンの一面と、該第一形態とは異なる第二形態を有する第二リボンの一面とが重ね合わされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子であって、
前記第一リボンと前記第二リボンの少なくとも一方は、金属線材を編み上げたニットリボンから構成されており、
少なくとも前記第一リボンは、前記長手方向と交差する方向に延びる凹条と凸条とが前記長手方向に沿って繰り返す凹凸形状部を有し、
隣接する前記第一リボンと前記第二リボンとの間には、前記各凹条と前記第二リボンとによって複数のセルが形成されており、
前記凹条の延在方向に沿った前記セルの延長上に前記第一リボン又は前記第二リボンから形成されたフィルタ部を備えることを特徴とする熱交換素子。
【請求項16】
前記第一リボンは前記ニットリボンであり、前記フィルタ部は前記第一リボンから形成されることを特徴とする請求項15に記載の熱交換素子。
【請求項17】
前記フィルタ部は、流体を前記第一リボンの一面側から他面側に通過させる箇所を有するように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の熱交換素子。
【請求項18】
前記フィルタ部は、前記各凹条の延在方向の一端部において、前記第一リボンを前記各凹条の凹陥方向とは逆向きに突出させた形状を備えることを特徴とする請求項16に記載の熱交換素子。
【請求項19】
前記第一リボンは、その短手方向の一部位に配置された第一凹凸形状部と、前記短手方向の他部位に配置された第二凹凸形状部と、前記第一及び第二凹凸形状部に隣接して前記両凹凸形状部の間に配置された前記フィルタ部と、を備え、
前記第一及び第二凹凸形状部のうち、一方の前記凹凸形状部の前記凹条は他方の前記凹凸形状部の前記凸条の延長上に配置されており、
前記フィルタ部は、前記第一リボンの一面側における前記凹条の表面と、該凹条の延長上で該凹条と隣接する前記凸条の前記一面側における表面とが連続するように接続する壁部を備えることを特徴とする請求項16に記載の熱交換素子。
【請求項20】
前記金属線材は、第一金属材料からなる芯線の周囲に、前記第一金属材料よりも融点の低い第二金属材料が被覆された構成を備えており、
前記熱交換素子は、溶融固化した前記第二金属材料によって、前記金属線材の一部分と前記熱交換素子中の他の部分とが接合された箇所を有することを特徴とする請求項15乃至19の何れか一項に記載の熱交換素子。
【請求項21】
金属製リボンを所定形状に塑性変形させる成形ローラ対を備えたリボン成形装置であって、
前記成形ローラ対は、軸方向に所定の間隔を空けて隣接して配置された第一成形部及び第二成形部を備え、
前記第一及び第二成形部は周方向に同一数量のギヤ歯を備えた平歯車又ははすば歯車であり、前記第一及び第二成形部の各ギヤ歯は前記第一及び第二成形部が隣接する側の端部において互いに周方向にずれていることを特徴とするリボン成形装置。
【請求項22】
前記第一及び第二成形部の前記各ギヤ歯の軸方向端部のうち、他の前記成形部と隣接する側の角部が面取りされていることを特徴とする請求項21に記載のリボン成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の一例として、配管内の流体(可燃性ガス)等の通過を許容し、且つ、火炎伝達を防止する装置であるフレームアレスタが知られている。フレームアレスタには、火炎が通過不能な多数の微細な間隙を有し、且つ、火炎を熱交換により冷却して消炎可能な構造を有した消炎素子が内蔵されている。
消炎素子としては、例えば多数の金網を流体の通過方向に重ね合わせた金網型や、金属製の平形リボンと、平形リボンに多数のクリンプ(折りひだ、波型)をつけた金属製のクリンプリボンとを重ね合わせて渦巻き状に巻き付けたクリンプリボン型等がある。クリンプリボン型は、流体の通過方向に沿って延びる概略三角柱状の多数のセル状構造を、平形リボンとクリンプリボンとの間に備える。
特許文献1には、クリンプリボン型の消炎素子を内蔵したフレームアレスタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63-006589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリンプリボン式の消炎素子の構成材料は金属リボンであるため、流体と接触する素子の表面積を増大するには限界がある。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、流体と接触する素子の表面積を増大させて熱交換効率を向上させた新規な熱交換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、第一形態を有する第一リボンの一面と、該第一形態とは異なる第二形態を有する第二リボンの一面とが重ね合わされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子であって、前記第一リボンと前記第二リボンの少なくとも一方は、金属線材を編み上げたニットリボンから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、流体と熱交換素子との接触面積を増大させることができるので、効率よく流体と熱交換素子との間で熱交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一の実施形態に係る熱交換素子を実物写真にて示す図である。
図2】(a)~(d)は、熱交換素子の作製過程を写真にて説明する図である。
図3】平帯状のリボンを波板状に成形する工程を説明する模式図である。
図4】第二の実施形態に係る熱交換素子を実物写真にて示す図である。
図5】第三の実施形態に係る熱交換素子を実物写真にて示す図である。
図6】(a)、(b)は、ニットリボンの変形例を実物写真で示す図である。
図7】(a)、(b)は、波板状のリボンの変形例を示す図である。
図8】(a)、(b)は、波形リボンの組合せ例を示す図である。
図9】(a)、(b)は、波形状のリボンの変形例を実物写真にて示す図であり、(a)はリボンを平面視方向から撮影した写真を示す図であり、(b)はリボンを斜視方向から撮影した写真を示す図である。
図10図9に対応するリボンを示す模式的斜視図である。
図11図9に示す波形状のリボンを製造する成形装置を説明する図であり、(a)は成形装置を実物写真にて示す図であり、(b)はギヤローラの平面図であり、(c)はギヤローラのギヤ歯の位置について説明する図である。
図12】(a)、(b)は、波形状のリボンの他の変形例を示す模式的斜視図である。
図13図12に示す波形状のリボンを製造する成形装置を構成する一対のギヤローラの平面図である。
図14】ニットリボンを構成する金属線材の構成例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。また、各実施形態に示した内容は、互いに矛盾しない限り、各実施形態間で相互に入れ替えて実施してもよい。
【0009】
〔第一の実施形態〕
図1は、第一の実施形態に係る熱交換素子を実物写真にて示す図である。
図2(a)~(d)は、熱交換素子の作製過程を写真にて説明する図である。
【0010】
熱交換素子1は、その内部に高温又は低温の流体を通過させることで、流体を冷却又は加熱する手段である。熱交換素子1は、単独で熱交換ユニットに組み込まれるか、又は、必要に応じて複数個が軸方向に重ねあわされた状態にて熱交換ユニットに組み込まれる。熱交換素子1は、その軸線Axの方向に流体を通過させるように使用される。熱交換素子1は、特に気体の熱交換を行う手段として好適に使用される。熱交換素子1は、例えば熱交換ユニットであるフレームアレスタの内部に組み込まれる消炎素子として使用される。
図1に示すように、熱交換素子1は、第一リボン(第一部材)20の一面と第二リボン(第二部材)30の一面とが重ね合わされた状態で、該各リボン20、30の長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状(又は偏平な柱状)である。第一リボン20と第二リボン30は、相互に熱が移動可能に配置(接触或いは接合)されている。第一リボン20と第二リボン30の少なくとも一方は、金属線材W(図2参照)を編み上げたニットリボン41(平ニットリボン42、波ニットリボン43)から構成されている。
熱交換素子1は平面視で概略円形状でもよいし、概略多角形状でもよいし、その他の形状(例:星形等)でもよい。なお、第一リボン20と第二リボン30は、その幅方向長(短手方向長)が実質的に同一である。
【0011】
本例において第一リボン20は、その長手方向と交差する方向(第一の方向)に延びる凹条21と凸条22とが、第一リボン20の長手方向(第二の方向)に沿って繰り返す形状(第一形態)を有する波板状且つ帯形状の波形リボンである。第一リボン20の一方の面において凹条21(又は凸条22)となる部分は、第一リボン20の他方の面においては凸条22(又は凹条21)となる。本例において各凹条21…と各凸条22…は、第一リボン20の長手方向と直交する方向に直線的に延びる。また、各凹条21…と各凸条22…は、第一リボン20をその短手方向に横断する。
本例において第二リボン30は第一形態とは異なる第二形態を有する。第二リボン30は平板状且つ帯形状の平形リボンである。
【0012】
熱交換素子1において、第一リボン20の凹条21、21…が第二リボン30の一面に対して重なることにより、第一リボン20の凹条21、21…と第二リボン30との間には概略柱状の複数のセル11、11…が形成される。各セル11、11…の形状は凹条21と第二リボン30の表面形状によるが、本例では概ね三角柱状である。各セル11、11…は、凹条21、21…の延びる方向に沿って流体を通過させる。即ち、熱交換素子1は、その軸方向(又は厚さ方向)の一方側から他方側に向けて、流体を通過させる複数のセル11、11…を有する。
【0013】
熱交換素子1の製造方法について図2及び図3に基づいて説明する。図3は、平帯状のリボンを波板状に成形する工程を説明する模式図である。
まず、図2(a)に示すように、少なくとも1本の連続する金属線材Wを輪編み(又は丸編み)することにより、円筒状の筒状ニット40を作製する。筒状ニット40は、その周方向をコース(course)方向、軸方向をウェール(wale)方向として、らせん状に連続して編み上げられた編み物である。金属線材Wは、単一の金属線材WAでも、金属線材WAを複数本寄せ集めた金属線材WB(図6)でもよい。
次に、図2(b)に示すように、筒状ニット40の対向する内径面同士が密着するように二枚重ね状に押し潰して平帯状の平ニットリボン42を作製する。筒状ニット40の軸方向が、平ニットリボン42の長手方向となる。第一の実施形態においては、平ニットリボン42を第二リボン30とする(図1)。
更に、図2(c)に示すように、平ニットリボン42に長手方向に沿って繰り返す複数の凹条44、44…と凸条45、45…とを形成することにより、波板状の波ニットリボン43を作製する。第一の実施形態においては、波ニットリボン43を第一リボン20とする(図1)。なお、凹条44は凹条21であり、凸条45は凸条22である。
【0014】
ここで図3に示すように、平帯状のリボンを波板状に成形する成形装置100は、互いに噛合する複数のギヤ歯102、102…を有する一対のギヤローラ101、101を備える。各ギヤ歯102、102…は、リボンに形成される凹条と凸条に応じた形状を有する。
凹条44と凸条45とがリボンの長手方向に対して直交する波ニットリボン43(図2(c))を作製するギヤローラ101、101は平歯車である。ギヤローラ101、101表面の走行方向を平ニットリボン42(図2(a))の長手方向に一致させた状態で、平ニットリボン42を一定方向に回転するギヤローラ101、101間に挿入することで、平ニットリボン42を波板状に塑性変形させて波ニットリボン43とする。
【0015】
図2(d)に示すように、第一リボン20と第二リボン30とを、各リボンの一面同士が対向するように重ね合わせた状態とする。その後、両リボンを渦巻き状に巻き回していくことにより、図1に示す熱交換素子1が作製される。
【0016】
ここで、ニットリボン41に使用される金属材料には、鉄・銅・ステンレススチール等が用いられる。各部のサイズを例示すれば以下の通りである。金属線材W(WA)の太さは直径0.3~0.6mmとされる。ニットリボン41の短手方向長は20~80mmとされ、肉厚tは1~3mmとされる。波ニットリボン43の凹条(又は凸条)の山の高さは5~10mmとされ、波ニットリボン43の厚さは1~3mmとされる。
【0017】
ここで、図1に示すように、熱交換素子1中、リボンの巻き始め側を軸心部13とし、軸心部13の外周側であって第一リボン20と第二リボン30とが径方向に交互に層状に重なる部分を中間部14とし、中間部14の外周側を外周部15と称する。熱交換素子1の最外周に一本のリボンが現れる場合に、外周部15は該リボンから構成される単層又は複数層の部位とされる。熱交換素子1の最外周に複数本のリボンが現れる場合に、外周部15は、熱交換素子1の最外周に現れたリボンの部位とされる。
【0018】
本例に係る熱交換素子1の軸心部13には、ニットリボン41(平ニットリボン42又は波ニットリボン43)のみが巻き回される。本例では、軸心部13に、第一リボン20(波ニットリボン43)のみが巻き回されている。本例において軸心部13に位置するニットリボン41は、中間部14を構成するニットリボン41と連続している。軸心部13にはニットリボン41が1~3周程度(直径10~30mm)巻き回されていることが望ましい。
【0019】
軸心部13を一のニットリボンのみから構成することにより、熱交換素子1の成形性を向上させることができる。軸心部13を波ニットリボン43のみから構成する場合、少ない巻回数で径方向長を増大させることができる。逆に、軸心部13を平ニットリボン42のみから構成する場合、軸心部13を固く巻くことができ、熱交換素子1の型崩れを防止する。
なお、軸心部13を構成するニットリボンと、中間部14を構成するニットリボンとは、図4のように非連続(独立)であってもよい。軸心部13を構成するニットリボンとその外周側を構成するニットリボンとを独立させれば、軸心部13の状態を自由に設定できる。なお、軸心部13を構成するニットリボンと中間部14を構成するニットリボンとを独立させる場合、軸心部13の巻き終わり部は、巻きが緩まないように溶接等の方法により固定されることが望ましい。
【0020】
熱交換素子1の外周部15は、平ニットリボン42のみから構成されている。
外周部15は、熱交換素子1の形態安定性や他部品への組み込み容易性の観点から、平型のリボン(例:平ニットリボン42)から構成されることが望ましいが、この限りではない。例えば、熱交換素子1を他部品に組み込む際に金属の弾性を利用して嵌合させる場合には、外周部15を波形リボンから構成した方が好適である。
【0021】
リボンの巻き終わり側の端部(終端部16)は、リボンの巻き回された形状が維持されるように処理される。例えば、終端部16は、終端部16の内径側に重なるリボンの部位にろう付け、溶接、専用の留め金具を用いたカシメ留め等の方法により固定(接合)される。固定方法は、外周部15を構成するリボンの形態に応じて最適な方法が選択される。例えば、平ニットリボン42、42同士を接合する場合には、爪付き留め金具を用いたカシメ留め等が好適に選択される。或いは、熱交換素子1の外周部15の外側に重ねて、針金17等の金属線材等を巻き付けることで、リボンの巻き回された形状を維持するようにしてもよい。
【0022】
このようにして作製される熱交換素子1の大きさは、例えば直径50~500mm、高さ20~80mmとされる。
【0023】
本実施形態において、第一リボン20と第二リボン30は何れもニットリボン41であり、金属線材Wの隣接する各部分間に空間(又は隙間)が形成される。この空間は、ニットリボン41の肉厚t(図2(b)、(c))の内部で流体を通過させる流路として機能する。即ち、第一リボン20と第二リボン30は、肉厚t内で流体がリボンの短手方向に通過できる流路を有する。また、第一リボン20と第二リボン30は、リボンの一面側から他面側に向けて流体がリボンの肉厚t方向に通過できる流路を有する。従って、第一リボン20と第二リボン30とをニットリボンから構成することにより、流体と熱交換素子1との接触面積が増大するとともに、内部に複雑な流路を形成して、効率よく流体との間で熱交換可能となる。また、熱交換素子1にニットリボンを用いることで、熱膨張に対する変形の影響を受けにくくなる。
なお、各ニットリボンにおける開口部(孔)の大きさや線材密度等は、使用する金属線材の太さや本数、或いは網目(編み目)の大きさ等により調整可能である。
【0024】
ここで、平ニットリボン42は4枚重ね以上とされた構成を備えてもよい。言い換えれば、平ニットリボン42は4以上のニット層が重ね合わせられた構成を備えてもよい。この場合、平ニットリボン42は筒状ニット40の軸方向に沿って延びる折り目のみを有してもよいし、筒状ニット40の軸方向と交差(直交)する折り目を有してもよい。4以上のニットの層を有する平ニットリボン42から波ニットリボン43を形成してもよい。
なお、ニットリボンとして、上記筒状ニットから作製されるリボンの代わりに、リボン状に平編みされたニット自体又は平編みされたニットを折り畳んで作製される多層状のニットを用いてもよい。
更に、熱交換素子は、3本以上のリボンを重ね合わせて巻き回したものでもあってもよい。
熱交換素子1を構成する第一リボン20と第二リボン30は、より幅の広い概略シート状の部材であってもよい。例えば熱交換素子1は、第一リボン20に相当する第一部材と第二リボン30に相当する第二部材の面同士が対向するように交互に層状に重ね合わされた構成とされてもよい。
【0025】
〔第二の実施形態〕
図4は、第二の実施形態に係る熱交換素子を実物写真にて示す図である。第一の実施形態と同様の部材には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
熱交換素子2は、波板状の第一リボン20と、平帯状の第二リボン30とを備える。本例において、第一リボン20は波板リボン51から構成され、第二リボン30は平ニットリボン42(図2(b))から構成される。
波板リボン51は、図3に示す成形装置100を用いて波ニットリボン43と同様の加工方法により作製される。即ち、波板リボン51は、平板・帯状の金属製リボンに凹条21と凸条22とを付して波板状に加工した、いわゆるクリンプリボンである。波板リボン51はその面内に、流体が通過可能な孔を有していない点でニットリボンと異なる。
熱交換素子2は、第一リボン20が波板リボン51である点を除いて、第一の実施形態と同様の方法により作製される。
ここで、波板リボン51にはニットリボンと同様の金属材料が使用される。例えば、平板・帯状の金属製リボンの肉厚は0.3~0.4mmとされ、凹条21と凸条22の高さは5~10mmとされる。
【0026】
熱交換素子2の軸心部13にはニットリボン41(平ニットリボン42)のみが巻き回されている。図4において、軸心部13を構成するニットリボン41と中間部14を構成するニットリボン41とは非連続であるが、両者を連続させてもよい。
熱交換素子2の外周部15にはニットリボン41(平ニットリボン42)のみが巻き回されている。本例においては平ニットリボン42である終端部16と、終端部16と重なる平ニットリボン42の部位とが接合されている。
【0027】
第一リボン20が波板リボン51から構成される熱交換素子2において、流体は第一リボン20を介して熱交換素子2の内外径方向に移動できない。熱交換素子2は隣接する第一リボン20、20間で流体が周方向に移動することを禁止するものではないが、熱交換素子2は流体を凹条21の延在方向に優先的に(又は、ある程度制限的に)誘導する機能を発揮する。
熱交換素子2においては、第二リボン30がニットリボン41から構成されるため、流体と熱交換素子2との接触面積を増大させることができ、効率よく高温の流体を冷却可能となる。
【0028】
〔第三の実施形態〕
図5は、第三の実施形態に係る熱交換素子を実物写真にて示す図である。第一の実施形態と同様の部材には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
熱交換素子3は、波板状の第一リボン20と、平帯状の第二リボン30とを備える。本例において、第一リボン20は波ニットリボン43(図2(c))から構成され、第二リボン30は平板・帯状の金属製リボン(平板リボン52)から構成される。平板リボン52はその面内に、流体が通過可能な孔を有していない点でニットリボンと異なる。
熱交換素子3は、第二リボン30が平板リボン52である点を除いて、第一の実施形態と同様の方法により作製される。
ここで、平板リボン52にはニットリボンと同様の金属材料が使用される。例えば、平板リボン52の肉厚は0.3~0.4mmとされる。
【0029】
熱交換素子3の軸心部13にはニットリボン41(波ニットリボン43)のみが巻き回されている。図5において、軸心部13を構成するニットリボン41と中間部14を構成するニットリボン41とは連続しているが、非連続でもよい。なお、軸心部13を構成するリボンと中間部14を構成するリボンの形態が異なっていてもよい。例えば、軸心部13を図4に示すように平ニットリボン42から構成し、中間部14を波ニットリボン43と平板リボン52とから構成してもよい。
【0030】
熱交換素子3の外周部15には平板リボン52のみが巻き回されている。本例においては、平板リボン52である終端部16と、終端部16と重なる平板リボン52の部位とが接合されている。
【0031】
第二リボン30が平板リボン52から構成される熱交換素子3において、流体は第一リボン20を介して熱交換素子2の内外径方向に移動できない。熱交換素子3は隣接する第二リボン30、30間で流体が周方向に移動することを許容する。
【0032】
熱交換素子3においては、第一リボン20がニットリボン41から構成されるため、流体と熱交換素子3との接触面積を増大させることができ、効率よく高温の流体を冷却可能となる。特に、波板状の第一リボン20のみをニットリボンから構成する本例では、平帯状の第二リボン30のみをニットリボンから構成する場合(第二の実施形態)に比べて、熱交換素子に使用される金属線材の分量が増大するため高温流体の冷却効率が向上する。
【0033】
〔ニットリボンの変形例~線材本数〕
図6(a)、(b)は、ニットリボンの変形例を実物写真で示す図である。
ニットリボン41は、夫々が連続する単一の金属線材WA、WA…を複数本取りして編み上げられた筒状ニットから作製されてもよい。「複数本取りで編む」(Multiple Stranded Knitting)とは、夫々が連続する複数本の金属線材WA、WA…を束状に寄せ集めた金属線材WBを用いてニットを編み上げることである。金属線材WBは、必ずしも撚り合わせられている必要はない。金属線材WBが撚り線ではない場合は、寄せ集められた金属線材WA、WA…間にも流体が流れうる。
図6(a)には、2本の金属線材を一束にした金属線材WBを用いて筒状ニットを編み上げた後、筒状ニットを押し潰すことにより作製された平ニットリボン42が示されている。図6(b)には、平ニットリボン42を更に波板状に加工した波ニットリボン43が示されている。
複数本の金属線材を束状にして編むことにより、ニットリボン中の線材密度を高めることができ、流体の熱交換効率が向上する。
なお、図6(a)に示す平ニットリボン42は、2つのニット層を有している。図6(b)に示す波ニットリボン43は、図6(a)に示す平ニットリボン42を更にその長手方向に直交する折り目で二つ折りにしてから波板状に加工した例であり、4つのニット層を有している。ニットリボンが備えるニット層を増加させることで、ニットリボン内における金属線材の密度を向上させ、更に冷却性能を向上させることができる。
【0034】
〔リボンの変形例~凹条・凸条の角度〕
図7(a)、(b)は、波板状のリボンの変形例を示す図である。
上記各実施形態においては、波板状の第一リボン20の凹条21(凸条22)が、リボンの長手方向に対して直交する例を示したが、リボンの長手方向に対する凹条の角度はこの限りではない。波板状のリボンの凹条は、リボンの長手方向と交差する方向に延びていればよい。
図7(a)に示す第一リボン20は、第一リボン20の長手方向に沿って延びる基準線L1と直交する基準線L2に対して、角度θだけ傾斜した直線状の凹条21(凸条22)を備える。図示する凹条21、21…と凸条22、22…は平行(又は並行)しているが、凹条21…と凸条22…は平行(又は並行)していなくてもよい。
図7(b)には、凹条21(凸条22)の延在方向が第一リボン20の短手方向の中間部において変化する第一リボン20を示している。図示する凹条21(凸条22)は、第一リボン20の短手方向の中間部において屈曲している。凹条21(凸条22)のうち、第一リボン20の短手方向の一端から中間部に向かう凹条21a(凸条22a)の部分は、基準線L2に対して角度φだけ傾斜して直線的に延びる。凹条21(凸条22)のうち、第一リボン20の短手方向の他端から中間部に向かう凹条21b(凸条22b)の部分は、基準線L2に対して角度γだけ傾斜して直線的に延びる。角度φと角度γは、同じでもよいし、異なっていてもよい。角度φ=γの場合に、第一リボン20は、その長手方向に沿って延びる基準線L1を対称軸とする線対称形状であってもよい。
【0035】
第一リボン20が備える凹条21(凸条22)は、第一リボン20の短手方向の一端から他端に向けて湾曲してもよい。第一リボン20が備える凹条21(凸条22)は、波状でもよい。
何れの場合も、凹条21、21…と凸条22、22…とを平行(又は並行)させることができるが、非平行(又は非並行)でもよい。
図7(a)、(b)に示す第一リボン20は、図3に示す成形装置100を用いて作製されうる。成形装置100のギヤローラ101、101には、凹条21と凸条22の形状に応じて、はす歯状のギヤ歯や、山歯状のギヤ歯を有するものが用いられる。
【0036】
〔第四の実施形態〕
熱交換素子において、第一リボンと第二リボンの双方が波形リボンであってもよい。
図8(a)、(b)は、波形リボンの組合せ例を示す図である。第一の実施形態と同様の部材には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0037】
本例に係る熱交換素子において、第一リボン20と第二リボン30の少なくとも一方は、金属線材を編み上げたニットリボンから構成される。
第一リボン20は、その長手方向と交差する方向に延びる凹条21と凸条22とが第一リボン20の長手方向に沿って繰り返す形状を有している。第二リボン30は、その長手方向と交差する方向に延びる凹条31と凸条32とが第二リボン30の長手方向に沿って繰り返す形状を有している。
熱交換素子において、第一リボン20と第二リボン30とは、第一リボン20の凹条21に対して第二リボン30の凸条32が嵌合せず、且つ、第一リボン20の凸条22が第二リボン30の凹条31に対して嵌合しないように重ね合わせられて、巻き回される。
即ち、第一リボン20と第二リボン30とは、基準線L2に対する凹条21、31(凸条22、32)の角度、屈曲態様、又は湾曲態様等が異なる組合せとなればよい。
【0038】
例えば、図8(a)に示すように、基準線L2に対して異なる角度で傾斜した直線状の複数の凹条21…、31…(凸条22…、32…)を夫々有するリボン20、30同士を重ね合わせることができる。図8(a)には、各リボンの凹条21…、31…(凸条22…、32…)が基準線L2に対して夫々角度±θだけ傾斜した例を示す。即ち、図8(a)は同一形状のリボン20、30を表裏反転させて重ね合わせる例である。凹条と凸条の角度が異なる組合せとしては、各リボン20、30の凹条21…、31…(凸条22…、32…)が基準線L2に対して同方向に異なる角度で傾斜する場合や、異なる方向に異なる角度で傾斜する場合が挙げられる。
【0039】
例えば、図8(b)に示すように、平面視で概略V字状の複数の凹条21…、31…(凸条22…、32…)を有するリボン20、30同士を重ね合わせることができる。図8(b)においては、第一リボン20の凹条21a(凸条22a)と第二リボン30の凹条31a(凸条32a)とが基準線L2に対して夫々角度±φだけ傾斜し、第一リボン20の凹条21b(凸条22b)と第二リボン30の凹条31b(凸条32b)とが基準線L2に対して夫々角度±γだけ傾斜している。図8(b)においても図8(a)と同様に、同一形状のリボン20、30を表裏反転させて重ね合わせることができる。もちろん、リボン20、30の組合せはこの限りではない。
【0040】
本実施形態においては、第一リボン20と第二リボン30の少なくとも一方がニットリボン41から構成されるため、流体と熱交換素子との接触面積を増大させることができ、効率よく高温の流体を冷却可能となる。
本実施形態においては、セル11(図1等参照)の形状を複雑にできる。例えば、セルは、熱交換素子の軸線Axに対して平行(並行)しない形状を有することができる。或いは、セルは、横断面形状(熱交換素子の軸線Axと直交する断面における形状)が熱交換素子の軸方向位置によって変化する形状を有することができる。これにより、セルを通過する流体を各リボン内に導入する等、熱交換素子の内部に複雑な流路を形成して、効率よく高温の流体を冷却できる。
第一リボン20と第二リボン30の凹条と凸条とが互いに嵌合しないので、熱交換素子の径方向に占める各リボン20、30の各部分の長さは、凹凸形状を含む各リボンの厚さに一致する。従って、熱交換素子の成形性が向上する。
【0041】
〔第五の実施形態〕
図9(a)、(b)は、波形状のリボンの変形例を実物写真にて示す図であり、(a)はリボンを平面視方向から撮影した写真を示す図であり、(b)はリボンを斜視方向から撮影した写真を示す図である。図10は、図9に対応するリボンを示す模式的斜視図である。
【0042】
図9に示された波ニットリボン43B(ニットリボン41)は、その長手方向と交差する方向(第一の方向、本例では長手方向と直交する短手方向)に延びる凹条44と凸条45とが上記長手方向(第二の方向)に沿って交互に繰り返す少なくとも一つの凹凸形状部60(61~63)を備える。本例に係る波ニットリボン43Bは、短手方向の異なる位置に夫々配置された3つの凹凸形状部60(第一~第三凹凸形状部61~63)を備える。各凹凸形状部60はリボンの長手方向の全域に亘って凹条44と凸条45とが繰り返す形状である。
【0043】
波ニットリボン43Bは、短手方向に隣接する2つの凹凸形状部60、60の間にフィルタ部70(71、72)を備える。言い換えれば、波ニットリボン43Bは、その短手方向の一部位に配置された第一凹凸形状部61と、短手方向の他部位に配置された第二凹凸形状部62と、第一及び第二凹凸形状部61、62に隣接して両凹凸形状部の間に配置されたフィルタ部71と、を備えている。
【0044】
フィルタ部70は、凹条44の延在方向の一端寄りにおいてニットリボン41を凹条44の凹陥方向とは逆向きに突出させることにより形成されており、ニットリボン41の表面から立ち上がった壁部75を備える。壁部75は、凹条44の延長上に配置されている。
波ニットリボン43Bの各凹条44は熱交換素子内でセル11(図1等参照)を形成する。セル11(凹条44)は凹条44の延在方向に流体を通過させる流路として機能する。
【0045】
フィルタ部70は凹条44を流れる流体から異物を除去するろ過機能を発揮する。フィルタ部70の目開きは、ニットリボンの網目(ループ)の大きさ(粗さ)、及び、金属線材Wを構成する金属線の太さや本数等に基づいて、適宜に設定される。
フィルタ部70は、隣接する二つの凹凸形状部60、60の凹条44と凹条44との間を波ニットリボン43Bの短手方向において分離する。フィルタ部70は、凹条44が形成する流路を波ニットリボン43Bの短手方向に不連続にする。凹条44を流れる流体の全体をろ過するために、セル11の延長上に配置された壁部75に対して、セル11の内部空間の全体が投影されることが望ましい。
【0046】
ここで、フィルタ部70を介して隣接する二つの凹凸形状部60、60の凹凸の周期は同一である。更に、二つの凹凸形状部60、60の各凹条44と各凸条45とは、リボンの長手方向にピッチをずらして配置されている。
本例では、各凹条44と各凸条45とは1/2ピッチずらして配置されている。即ち、第一凹凸形状部61の凹条44は、第二凹凸形状部62の凸条45の延長上に配置されており、第一凹凸形状部61の凸条45は、第二凹凸形状部62の凹条44の延長上に配置されている。ここで延長方向とは、凹条(及び凸条)の延在方向である。第二凹凸形状部62と第三凹凸形状部63との関係についても同様である。
【0047】
波ニットリボン43Bの短手方向に隣接する凹条44と凸条45との間に位置する壁部75は、波ニットリボン43Bの一面側に(図10中下向きに)凹陥した凹条44の一面側(図10中上側)における表面と、波ニットリボン43Bの一面側に(図10中上向きに)突出した凸条45の一面側(図10中上側)における表面とが連続するように接続する。他面側においても同様である。例えば壁部75は、波ニットリボン43Bの長手方向と短手方向とによって規定される仮想面に対して傾斜した傾斜面である。
【0048】
フィルタ部70は、二つの凹凸形状部61、62(62、63)の一方の凹条44と他方の凸条45との間に配置される。従って、波ニットリボン43Bの一面側において凹条44内を凹条44の延在方向に沿って流れる流体(図中矢印A1)は、フィルタ部71(壁部75)を通過して波ニットリボン43Bの他面側に流出して、波ニットリボン43Bの他面側において凹条44内を凹条44の延在方向に沿って流れる(図中矢印A2)。更に、本例においては、波ニットリボン43Bの他面側に流出した流体は、フィルタ部72(壁部75)を通過して波ニットリボン43Bの一面側に流出する(図中矢印A3)。異なる凹凸形状部60に属し、波ニットリボン43Bの短手方向に隣接する凹条44と凸条45とによって波ニットリボン43Bの一面側と他面側に夫々形成される流路はフィルタ部70を介して連通する。
【0049】
このようにフィルタ部70は、凹条44を流れる流体をニットリボン41の一方の面側から他方の面側に通過させるように構成される。言い換えれば、フィルタ部70は、凹条44を流れる流体を、ニットリボン41の肉厚tの方向に通過させるように構成される。ここでいう肉厚tは、波状に変形される前のニットリボン41を基準として定義可能な厚さである。波ニットリボン43Bにおいては、ニットリボン41の網目をフィルタとして活用する。
なお、フィルタ部70は流体を一面側から他面側に通過させた直後に、流体を他面側から一面側に通過させるように構成されてもよい。図10の例で言えば、波ニットリボン43B第二凹凸形状部62が省略された構成を備えてもよい。つまり、フィルタ部70は2つの壁部75、75が短手方向に隣接して配置された構成を備えてもよい。
【0050】
<製造装置/成形装置>
図11は、図9に示す波形状のリボンを製造する成形装置を説明する図であり、(a)は成形装置を実物写真にて示す図であり、(b)はギヤローラの平面図であり、(c)はギヤローラのギヤ歯の位置について説明する図である。
図11(a)、(b)に示すように、成形装置100Bは、一対のギヤローラ101B、101B(ギヤローラ対、成形ローラ対)を備える。図9に示す波ニットリボン43Bは、平ニットリボン42(図2(a))をギヤローラ101B、101B間に挿入して塑性変形させることにより作製される。
【0051】
各ギヤローラ101B、101Bは夫々軸方向の一端から順に第一~第三成形部111~113(第一~第三ギヤ部)を備える。各成形部111~113は周方向に複数のギヤ歯102を有するギヤ部であり、第一成形部111、111同士、第二成形部112、112同士、及び第三成形部113、113同士が夫々噛合する。各成形部111~113はニットリボン41に夫々凹凸形状部61~63を作製する。二つのギヤローラ101B、101Bの回転軸Ax2は平行であり、各成形部111~113の構成は概ね図3に示す成形装置100と同様である。なお、ギヤローラ間の距離は、塑性変形させるリボンの肉厚等に応じて適宜に設定される。
【0052】
図示する各成形部111~113は平歯車である。即ち、各成形部111~113のギヤ歯102はギヤローラ101Bの軸方向に沿って延在する。
ギヤローラ101B中の一部の成形部又は全部の成形部は、ギヤ歯が回転軸Ax2に対して傾斜するはすば歯車でもよい。以下、便宜上、本例において各成形部は平歯車であり、全ての成形部はモジュールが同一、基準円(ピッチ円)が同一、周方向における歯数が同一であるものとして説明する。
【0053】
第一成形部111と第二成形部112との間、及び、第二成形部112と第三成形部113との間にはスペーサ120、120が挿入されており、各成形部は軸方向に所定の間隙(スペーサ部)を空けて配置される。平ニットリボン42(図2(a))の短手方向のうち各スペーサ120に対応した部位にはフィルタ部70が作製される。
スペーサ120の軸方向長(スペーサの大きさ)は、平ニットリボン42の肉厚tや作製する壁部75の立ち上がり角度等に応じて適宜に設定される。ギヤローラ101Bは、必要に応じて一部又は全部のスペーサ120を省略した構成を備えてもよい。
【0054】
図11(c)に示すように、成形装置100Bにおいて隣接する成形部(第一成形部111と第二成形部112、又は第二成形部112と第三成形部113)は、互いのギヤ歯102の位置が円周方向にずれるように組み合わせられている。隣接する成形部間のギヤ歯102のずれは、円周方向に1/2ピッチが望ましいが、これに限らない。
例えば、第一成形部111のギヤ歯102と第二成形部112のギヤ歯102とが1/2ピッチずれている場合、波ニットリボンには、一方の成形部によって形成された凹条44の延長上に他方の成形部によって形成される凸条45が配置される。また凹条44と凸条45との間にはフィルタ部70が作製される(図9)。このように隣接する成形部のギヤ歯102を円周方向にずらして配置することにより、フィルタ部70を容易に形成できる。
【0055】
図11(a)に示すように、各成形部111~113の各ギヤ歯102の回転軸Ax2方向の端部(歯幅方向端部)のうち、他の成形部と隣接する側(他の成形部と対向する側)には、ギヤ歯102の外周側角部が面取り(又は切除)された面取部103を備える。面取形状はR形状でも角形状でもよい。面取りされていることにより、ギヤ歯102の歯たけ(歯底から歯先までの距離)が軸方向端部において軸方向端に向かって漸減する。
これにより、波ニットリボン43Bに形成するフィルタ部70の目開きを適宜に調整できる。即ち、波ニットリボン43Bの網目の拡大変形を適宜に抑制して、必要なろ過機能を発揮できる目開きをフィルタ部に確保する。また、波ニットリボン43Bの短手方向に隣接する凹条44と凸条45とを傾斜面で緩やかに(或いは滑らかに)接続するフィルタ部70を作製する。
【0056】
<変形例>
図9、10に示す凹凸形状部60の凹条44と凸条45は、波ニットリボン43Bの長手方向に対して直交しても傾斜してもよい。
凹凸形状部60及びフィルタ部70を有するリボンを平板リボン52(図5参照)から作成してもよい。この場合、平板リボンの面内のうちフィルタ部70を形成しようとする部分に、変形後の形状に応じた複数の切り込みを作製しておき、図11に示す成形装置で変形させる。これにより、エキスパンドメタルの製造と同様の原理を利用してフィルタ部70を作製できる。
【0057】
凹凸形状部60とフィルタ部70は、組み合わせられる(重ね合わせられる)2つのリボンの何れかに形成されていればよい。例えば、凹凸形状部とフィルタ部とを異なるリボンに配置して、両リボンを組み合わせることにより、熱交換素子において流体がフィルタ部を通過するようにできる。
具体的には、図1、4、5等に示す第一リボン20が凹凸形状部60を備え、第二リボン30がフィルタ部70備えるように各リボンを作製し、両リボンを重ね合わせて熱交換素子を構成してもよい。この場合、第一リボンと第二リボンとは、凹条の延在方向であるセルの延長上にフィルタ部が配置されるように組み合わせられる。
【0058】
リボンの短手方向における凹凸形状部60の個数及びフィルタ部70の個数は任意に設定できる。熱交換素子は、リボンの短手方向の一部位に配置された少なくとも一つの凹凸形状部60と、該凹凸形状部に隣接した配置された少なくとも一つのフィルタ部70とを備えればよい。フィルタ部70は、リボンの短手方向の端部に配置されてもよい。フィルタ部70がリボンの短手方向の一端部(熱交換素子の軸方向の一端部)に配置される場合、熱交換素子はセル11(図1等参照)の下流側にフィルタ部70が配置される向きで使用されることが望ましいが、熱交換素子はその逆となる向きで使用されてもよい。なお、熱交換素子の軸線Ax方向の中央位置に軸線Axと直交する仮想面を設定した場合に、凹凸形状部60とフィルタ部70とが仮想面に対して対称に配置されているならば、熱交換素子の軸方向端の何れを流体流れの上流側とするか下流側とするかを考慮する必要がなくなる。
【0059】
図11に示す成形装置100Bの各成形部110にはすば歯車を用いる場合、回転軸Ax2の方向に隣接する2つの成形部が対向する側(隣接する側)の軸方向端部において、2つの成形部のギヤ歯102が円周方向に所定ピッチずれるように配置する。これにより、図10等に示すように、リボンの短手方向に隣接する凹条44と凸条45との間にフィルタ部70(壁部75)を作製できる。
【0060】
<効果>
本実施形態によれば、熱交換素子がフィルタ機能を備えるので、熱交換素子を通過する流体の熱交換をすると同時に異物除去が可能となる。
また、隣接する二つの凹凸形状部60、60の各凹条44と各凸条45とをリボンの長手方向にどの程度ずらすかによって、即ち凹凸形状部60、60間のピッチずれの量をどの程度に設定するかによって、圧力損失の数値を自在に変更することができる。
【0061】
〔第六の実施形態〕
図12(a)、(b)は、波形状のリボンの他の変形例を示す模式的斜視図である。第五の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。
波ニットリボン43C(ニットリボン41)は、短手方向の異なる位置に夫々配置された2つの凹凸形状部60(第一、第二凹凸形状部61、62)と、両凹凸形状部61、62の間に配置されたフィルタ部70とを備える。各凹凸形状部61、62とフィルタ部70とは、波ニットリボン43Cの長手方向の全域に亘って延在している。
【0062】
フィルタ部70は、波ニットリボン43Cの長手方向に対して平行に延びる壁部(壁面)75を備える。壁部75は、ニットリボン41の短手方向の一部をニットリボン41の長手方向に沿ってニットリボン41の表面から突出(又は凹陥)させることにより形成されている。本例に示すフィルタ部70は、波ニットリボン43Cの長手方向と平行して延びると共に壁部75と面する谷部76と、谷部76と対となる山部77を備える。
壁部75は、凹条44の延長上において凹条44と交差する方向に延在するため、壁部75は凹条44内を凹条44に沿って図中矢印B1方向に流れる流体を矢印B2、B3のように通過させてろ過するフィルタとして機能する。
【0063】
<製造装置>
図13は、図12に示す波形状のリボンを製造する成形装置を構成する一対のギヤローラの平面図である。図11と同様の構成に対しては同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
成形装置100Cは、一対のギヤローラ101C、101C(ギヤローラ対)を備える。波ニットリボン43Cは、平ニットリボン42(図2(a))をギヤローラ101C、101C間に挿入して塑性変形させることにより作製される。本図においては便宜上、ギヤローラ101C、101Cを離間させて描いているが、ギヤローラ101C、101Cは実際には図11(a)と同様に互いに噛合するように適宜の距離をもって配置される。
【0064】
ギヤローラ101Cは、軸方向の一端から順に第一~第三成形部111~113を備える。ギヤローラ101C、101Cの第一成形部111、111同士、第二成形部112、112同士、及び第三成形部113、113同士が夫々噛合する。
第一成形部111と第三成形部113は凹凸形状部60を作製する部分であり、図11に示すギヤローラ101Bの対応部分と同様の構成を備える。本例においては第一成形部111のギヤ歯102と第三成形部113のギヤ歯102の周方向位置は同一であるが、第一及び第三成形部111、113のギヤ歯102、102が周方向にピッチをずらして配置されてもよい。
【0065】
ギヤローラ101Cの第二成形部112は、波ニットリボン43Cにフィルタ部70を作製する。第二成形部112には周方向に延びるエンドレス状の環状突起116と環状段部117とが回転軸Ax2方向に隣接して配置されている。一方のギヤローラ101Cの環状突起116に対して他方のギヤローラ101Cの環状段部117が係合する。環状突起116の外径側の端部はギヤ歯102の歯先と同等の位置にあり、環状段部117の内径側の端部はギヤ歯102の歯底と同等の位置にある。
第一及び第三成形部111、113のうち、第二形成部112側の軸方向端部には、必要に応じて面取部103(図11参照)が設けられる。また、ギヤローラ101C中、各成形部111~113間には、必要に応じてスペーサ120が配置される。
【0066】
<変形例>
図12に示す波ニットリボン43Cの壁部75は、凹凸形状部60の凹条44及び凸条45と交差していれば、波ニットリボン43Cの長手方向と交差する方向に延びてもよい。壁部75は、凹凸形状部60が有する少なくとも一つの凹条44と少なくとも一つの凸条45とに跨がるように配置される。
フィルタ部70は、短手方向に複数の谷部76(山部77)を備えてもよい。フィルタ部70は、熱交換素子の製造時に、熱交換素子の軸方向に(つまり、波ニットリボン43Cの短手方向に)圧縮されてもよい。
【0067】
<効果>
本実施形態も第五の実施形態と同様に、熱交換素子がフィルタ機能を備えるので、熱交換素子を通過する流体の熱交換をすると同時に異物除去が可能となる。
また、隣接する二つの凹凸形状部60、60の各凹条44と各凸条45とをリボンの長手方向にどの程度ずらすかによって、即ち凹凸形状部60、60間のピッチずれの量をどの程度に設定するかによって、圧力損失の数値を自在に変更することができる。
【0068】
〔第七の実施形態〕
図14は、ニットリボンを構成する金属線材の構成例を示す横断面図である。
上記各実施形態において各ニットリボンを構成する金属線材W(WA)には、第一金属材料からなる芯線W1の周囲に、第一金属材料よりも融点の低い第二金属材料からなるろう接材W2が被覆された構成を備えた金属線材を用いることができる。一例として金属線材WAは銅メッキ線である。
上記金属線材WAを用いた熱交換素子は、製造過程で所定の熱処理工程を経ることにより、溶融固化した第二金属材料によって、金属線材WAの一部分と熱交換素子中の他の部分とが接合された箇所を備える。熱交換素子中の他の部分とは、金属線材WAの一部分が属するニットリボン中の金属線材WAの他の部分か、又は金属線材WAが属していないリボンの適所、又はその他の部分である。
【0069】
<金属線材>
金属線材WAの芯線W1には鉄を用いることができ、ろう接材W2には銅を用いることができる。金属材料に係るその他の組合せとして、芯線W1には鉄を、ろう接材W2にはニッケルを用いることができ、更に他の組合せとして芯線W1には銅を、ろう接材W2には錫、等を用いることができる。
金属線材WAは、芯線W1に対して第二金属材料をメッキすることにより作製できる。或いは、金属線材WAは、その他の方法を用いて芯線W1の周囲に第二金属材料を被覆してもよい。
【0070】
<熱処理>
本実施形態に示す金属線材WAが使用される場合、熱交換素子は製造過程で熱処理される。即ち、例えば図1、4、5に熱交換素子1、2、3として示される概略円盤形状に成形された成形体は、リボンの終端部16が何らかの方法で仮固定される。その後、この成形体は、所定の条件で熱処理する工程を経て熱交換素子として完成する。
熱処理条件は、芯線を変形(又は変化)させることなく、ろう接材を溶融させることができ、且つ溶融したろう接材が金属線材の一部分と熱交換素子中の他の部分との間に濡れ拡がった後に、冷却固化されて、ろう接材が各部を接合するように設定される。
具体的には、熱処理温度は、ろう接材の融点以上、且つ、芯線の焼結温度未満に設定することができる。また、当該温度を維持する時間としては10分から12分程度とすることができる。
上記熱処理を経ることにより、金属線材の一部分と熱交換素子中の他の部分とがろう接材を介して強固に結合される。
【0071】
<効果>
本実施形態によれば、金属線材と接触した箇所を夫々固着・一体化できる。固着・一体化された部分が熱交換素子の全体に分散して存在するので、熱交換素子を全体的に高強度にできる。熱交換素子の形状保持性が向上するため、熱交換素子のハンドリング性が向上する。熱交換素子の取り扱い時に熱交換素子が破損する等の不具合を防止できる。
【0072】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様は、第一形態を有する第一リボン20の一面と、第一形態とは異なる第二形態を有する第二リボン30の一面とが重ね合わされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子1、2、3である。熱交換素子において第一リボンと第二リボンの少なくとも一方は、金属線材Wを編み上げたニットリボン41から構成されていることを特徴とする。
例えば第一形態はリボンの長手方向に沿って繰り返す複数の凹条21と凸条22とを有する波板状の形態とすることができる。例えば第二形態は平らな帯板状の形態とすることができる。なお第二形態は波板状の形態であってもよい。
本態様においては、流体がニットリボンの内部を通過できるため、熱交換素子の内部に複雑な流路を形成できる。本態様によれば、圧力損失の増大を抑制できる。本態様によれば、流体と熱交換素子との接触面積を増大させることができるので、効率よく流体と熱交換素子との間で熱交換できる。
【0073】
<第二の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、2、3において、ニットリボン41は、金属線材Wが輪編みされた筒状ニット40の対向する内径面同士が密着するように押しつぶされた構成を有することを特徴とする。
本態様によれば、金属線材が螺旋状に編み上げられるため、ニットリボンの生産効率が向上する。ニットリボンは二つ以上の層を有するので、ニットリボンの厚さを確保することができ、流体の通過性が向上する。特に一つの筒状ニットを押し潰して、二つの層を有するニットリボンを形成する場合は、ニットリボンの形状を一定に制御しやすくなる。
【0074】
<第三の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、2、3の巻き始め側の端部(軸心部13)にはニットリボン41(42、43)のみが巻き回されていることを特徴とする。
金属製の平板又は金属製の波板を用いて軸心部を作製する場合に比べて、これらよりも厚さのあるニットリボンを使用した方が、リボンの有する肉厚により、軸心部におけるリボンの巻き回し回数が低減する。また、巻き始め側の端部においても流体の流通性を確保しやすくなる。
【0075】
<第四の実施態様>
本態様は、第一形態を有する第一リボン20の一面と、第一形態とは異なる第二形態を有する第二リボン30の一面とが重ね合わされた状態で、各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子1、2、3である。熱交換素子において第一リボンと第二リボンの少なくとも一方は、リボンの短手方向に流体を通過させる流路(空間)をリボンの肉厚内に有することを特徴とする。
熱交換素子は流体が熱交換素子の軸方向に移動するように使用される。リボンの短手方向は、熱交換素子の軸方向となる。リボンがその肉厚内に流路を有していれば、第一リボンと第二リボンとの間に位置するセル以外の箇所において、流体との熱交換が可能となる。従って、熱交換効率が向上する。
【0076】
<第五の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、2、3の巻き始め側の端部には、第一リボン20と第二リボン30のうち、その短手方向に流体を通過させる流路を肉厚内に有するリボンのみが巻き回されていることを特徴とする。
金属製の平板又は金属製の波板を用いて軸心部を作製する場合に比べて、これらよりも厚さのあるリボンを使用した方が、リボンの有する肉厚により、軸心部におけるリボンの巻き回し回数が低減する。また、巻き始め側の端部においても流体の流通性を確保しやすくなる。
【0077】
<第六の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、2、3において、少なくとも第一リボン20は、その長手方向と交差する方向に延びる凹条21と凸条22とが長手方向に沿って繰り返す形状を有し、隣接する前記第一リボンと第二リボン30との間には、流体を凹条に沿って熱交換素子の軸方向の一方側から他方側に通過させる複数のセル11が各凹条と第二リボンとによって形成されることを特徴とする。
流体はセルを通過する過程で、第一リボンと第二リボンとに接触して熱交換される。更に、リボンがニットリボン等のように面内に開口を有する場合には、リボンを介して隣接するセルとセルとの間で流体が流通する。流体は、リボンの内部を流れる過程で、リボンとの間で熱交換される。
【0078】
<第七の実施態様>
本態様に係る熱交換素子において、凹条21と凸条22の延在方向が第一リボン20の短手方向の中間部において変化することを特徴とする(図7(b))。
本態様によれば、流体をニットリボン内に導入しやすくなり、熱交換効率が向上する。
【0079】
<第八の実施態様>
本態様は、第一リボン20の一面と第二リボン30の一面とが重ねあわされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子である。本態様に係る熱交換素子において第一リボンと第二リボンの少なくとも一方は、金属線材Wを編み上げたニットリボン41から構成されており、第一リボンと第二リボンはその長手方向と交差する方向に延びる凹条(21、31)と凸条(22、32)とが長手方向に沿って繰り返す形状を有し、第一リボンと第二リボンの一方の凹条21(31)に対して第一リボンと第二リボンの他方の凸条32(22)が嵌合しないように、両リボンが重ね合わされていることを特徴とする。
第一リボンと第二リボンの双方が波形のリボンである本態様によれば、一方のリボンの凹条と他方のリボンの表面とによって形成されるセルの形状を複雑化することができ、流体とリボンとの接触効率を高めることができる。
【0080】
<第九の実施態様>
本態様に係る熱交換素子において、ニットリボン41は、金属線材Wが輪編みされた筒状ニット40の対向する内径面同士が密着するように押しつぶされた構成を有することを特徴とする。
本態様によれば、金属線材が螺旋状に編み上げられるため、ニットリボンの生産効率が向上する。ニットリボンは二つ以上の層を有するので、ニットリボンの厚さを確保することができ、流体の通過性が向上する。特に一つの筒状ニットを押し潰して、二つの層を有するニットリボンを形成する場合は、ニットリボンの形状を一定に制御しやすくなる。
【0081】
<第十の実施態様>
本態様に係る熱交換素子の巻き始め側の端部にはニットリボンのみが巻き回されていることを特徴とする。
金属製の平板又は金属製の波板を用いて軸心部を作製する場合に比べて、これらよりも厚さのあるニットリボンを使用した方が、リボンの有する肉厚により成形性が向上し、リボンの巻き回し回数が低減する。また、巻き始め側の端部においても流体の流通性を確保できる。
【0082】
<第十一の実施態様>
本態様は、第一形態を有する概略リボン状又はシート状の第一部材(第一リボン20)と、第二形態を有すると共に第一部材の一面が重なる表面を有した第二部材(第二リボン30)とを備え、第一部材の一面と第二部材の表面とが対向するように層状に重ね合わされた熱交換素子1、2、3である。本態様に係る熱交換素子において、少なくとも第一部材は金属線材Wを編み上げたニット部材(ニットリボン41)から構成されており、ニット部材は、金属線材が輪編みされた筒状ニット40の対向する内径面同士が密着するように押しつぶされた構成を有することを特徴とする。
【0083】
第一部材は、平形のリボン(又は平形のシート)でも波形のリボン(又は波形のシート)でもよい。第二部材は、第一部材との間で熱が移動可能となるように第一部材を重ねて配置できる表面を有していればよい。熱交換素子において第一部材と第二部材は、夫々少なくとも一層以上設けられる。
本態様においては、流体がニット部材の内部を通過できるため、熱交換素子の内部に複雑な流路を形成できる。本態様によれば、圧力損失の増大を抑制できる。本態様によれば、流体と熱交換素子との接触面積を増大させることができるので、効率よく流体と熱交換素子との間で熱交換できる。
本態様によれば、金属線材が螺旋状に編み上げられるため、ニット部材の生産効率が向上する。ニット部材は二つ以上の層を有するので、ニット部材の厚さを確保することができ、流体の通過性が向上する。特に一つの筒状ニットを押し潰して、二つの層を有するニット部材を形成する場合は、ニット部材の形状を一定に制御しやすくなる。
【0084】
<第十二の実施態様>
本態様は、第一形態を有する第一リボン20の一面と、該第一形態とは異なる第二形態を有する第二リボン30の一面とが重ね合わされた状態で、該各リボンの長手方向が周方向に延びるように渦巻き状に巻き回された概略平盤状又は概略柱状の熱交換素子1~3である。
第一リボンと第二リボンの少なくとも一方は、金属線材Wを編み上げたニットリボン41から構成されている。少なくとも第一リボンは、長手方向と交差する方向に延びる凹条44と凸条45とが長手方向に沿って繰り返す凹凸形状部60を有する。熱交換素子において隣接する第一リボンと第二リボンとの間には、各凹条と第二リボンとによって複数のセル11が形成されている。
熱交換素子は、凹条の延在方向に沿ったセルの延長上に第一リボン又は第二リボンから形成されたフィルタ部70を備えることを特徴とする。
【0085】
フィルタ部を備えるリボンは、ニットリボンから作製されてもよいし、平板・帯状の金属製リボンから作製されてもよい。また、凹凸形状部とフィルタ部とは、同一のリボンに属してもよいし、異なるリボンに属してもよい。
フィルタ部は、種々の形状を備えることができる。例えば、フィルタ部は、凹凸形状部の各凹条が形成する各流路を個別に遮るように、凹凸形状部と同一のピッチ(周期)でリボンの各面から交互に立ち上がる壁部75を備えるようにしてもよい(図9図10)。また、フィルタ部は、凹凸形状部の複数の凹条に跨がって、複数の流路を一括して遮るように構成されてもよい(図12)。フィルタ部(壁部)の延在方向は、凹凸形状部の凹条に対して直交してもよいし、傾斜してもよい。
【0086】
従来の熱交換素子は、通過する流体の熱交換機能を備えているが、十分なろ過機能を備えていなかった。セルの横断面形状(セルの延在方向と直交する方向における断面の形状)よりも小さい異物を流体中から除去する方法としては、例えば、熱交換素子に隣接してフィルタを配置することや、各セル内にフィルタを挿入することが考えられる。しかし、前者は熱交換素子とフィルタとを含む熱交換器全体を大型化し、後者は製造工程の複雑化を招きかねない。
本実施形態によれば、熱交換素子がフィルタ機能を備えるので、熱交換素子を通過する流体の熱交換をすると同時に異物除去が可能となる。フィルタ部がリボン自体に形成されるので、熱交換素子は、熱交換機能とフィルタ機能の双方を備えても大型化せず、製造も容易である。
【0087】
<第十三の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、3において、第一リボン20はニットリボン(波ニットリボン43B、43C)であり、フィルタ部70は第一リボンから形成されることを特徴とする。
本態様において凹凸形状部60とフィルタ部は同一のニットリボンに属する。フィルタ部がニットリボンに作成されるため、フィルタ部には必要なろ過機能を有する目開きを容易に確保できる。また、ニットリボンは変形させやすいため、凹凸形状部とフィルタ部の双方を容易に作成できる。
【0088】
<第十四の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、3において、フィルタ部70は、流体を第一リボン20の一面側から他面側に通過させる箇所を有するように構成されていることを特徴とする。
本態様において第一リボンは凹凸形状部60とフィルタ部とを備える。フィルタ部は、流体をリボンの肉厚t方向(図10等)に通過させる。第一リボンを波ニットリボン43B、43Cとすることで、流体のろ過にニットの網目を利用できる。
【0089】
<第十五の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、3において、フィルタ部70は、各凹条44の延在方向の一端部において、第一リボンを各凹条の凹陥方向とは逆向きに突出させた形状を備えることを特徴とする。
フィルタ部は、各凹条の延長上において凹条の凹陥方向とは反対方向に立ち上がった壁部75を備える。壁部は凹凸形状部と同一ピッチで、第一リボンの一面側と他面側から交互に立ち上がる形状とすることができる。第一リボンは、その一面側と他面側に配置された各凹条に一対一で対応する壁部を備える。このようにすれば、凹条(セル11)を流れる流体を確実にろ過できる。
また、第一リボンを波ニットリボンとすれば、凹凸形状部とフィルタ部とが反対方向に交互に立ち上がるような形状であっても容易に作成できる。
【0090】
<第十六の実施態様>
本態様に係る熱交換素子1、3において、第一リボン20(波ニットリボン43B)は、その短手方向の一部位に配置された第一凹凸形状部61と、短手方向の他部位に配置された第二凹凸形状部62と、第一及び第二凹凸形状部に隣接して両凹凸形状部の間に配置されたフィルタ部70(71)と、を備える。
第一及び第二凹凸形状部のうち、一方の凹凸形状部の凹条44は他方の凹凸形状部の凸条45の延長上に配置されており、フィルタ部は、第一リボンの一面側における凹条の表面と、該凹条の延長上に該凹条と隣接する凸条の前記一面側における表面と、が連続するように接続する壁部75を備えることを特徴とする。
壁部は例えば傾斜面である。第一リボンの短手方向に隣接する凹条と凸条とが夫々形成する流路はフィルタ部を介して連通する。ここで言う第一リボンの短手方向に隣接する流路とは、第一リボンの一面側に位置する凹条が該一面側に形成する流路と、この凹条の延長上であって、第一リボンの一面側に位置する凸条の反対側にある凹条が第一リボンの他面側に形成する流路である。この構成により、第一リボンの一面側において凹条内を流れる流体は、フィルタ部を通過して第一リボンの他面側に流出し、他面側に位置する凹条内を流れる。
本態様によれば、流体のろ過と熱交換とを効率的に実施できる。
【0091】
<第十七の実施態様>
熱交換素子1~3においてニットリボン41を構成する金属線材WAは、第一金属材料からなる芯線W1の周囲に、第一金属材料よりも融点の低い第二金属材料からなるろう接材W2が被覆された構成を備えている。
熱交換素子は、溶融固化した第二金属材料によって、金属線材の一部分と熱交換素子中の他の部分とが接合された箇所を有することを特徴とする。
【0092】
例えば、熱交換素子を渦巻き形状とした場合、リボンの終端部のみを固定したり、外周部に針金等を巻き付けることで、熱交換素子の形状を保持することができる。しかし、熱交換素子中で固定されている箇所が部分的(或いはごくわずか)であると、熱交換素子の取り扱いに慎重さが要求される。
本実施態様によれば、金属線材と接触した箇所を夫々固着・一体化できる。固着・一体化された部分が熱交換素子の全体に分散して存在するので、熱交換素子を全体的に高強度化できる。熱交換素子の形状保持性が向上するため、熱交換素子のハンドリング性が向上する。熱交換素子の取り扱い時に熱交換素子が破損する等の不具合を防止できる。
【0093】
<第十八の実施態様>
本態様は、金属製リボンを所定形状に塑性変形させる成形ローラ対(ギヤローラ101B、101B)を備えたリボン成形装置100Bである。
成形ローラ対は、軸方向に所定の間隔(スペーサ120)を空けて隣接して配置された第一成形部及び第二成形部111、112を備える。
第一及び第二成形部は周方向に同一数量のギヤ歯102を備えた平歯車又ははすば歯車であり、第一及び第二成形部の各ギヤ歯は互いに周方向にずれていることを特徴とする。
塑性変形対象となる金属製リボンとしては、好適には金属線材を編み上げたニットリボン41(図2(b))を挙げられるが、平板リボン52(図5)でもよい。
第一及び第二成形部のギヤ歯のずれは1/2ピッチが最良であるが、必ずしもこれに限られない。
本態様によれば、フィルタ部70を備えるリボンを容易に作製できる。
【0094】
<第十九の実施態様>
本態様に係るリボン成形装置100Bは、第一及び第二成形部111、112の各ギヤ歯102の回転軸Ax2方向の端部のうち、他の成形部と隣接する側の角部が面取りされた面取部103を備えることを特徴とする。
ギヤ歯の一部が面取りされていることにより、リボンに形成するフィルタ部の目開きを適宜に調整できる。
【符号の説明】
【0095】
1、2、3…熱交換素子、11…セル、13…軸心部、14…中間部、15…外周部、16…終端部、17…針金、20…第一リボン(第一部材)、21、21a、21b…凹条、22、22a、22b…凸条、30…第二リボン(第二部材)、31、31a、31b…凹条、32、32a、32b…凸条、40…筒状ニット、41…ニットリボン、42…平ニットリボン、43…波ニットリボン、44…凹条、45…凸条、51…波板リボン、52…平板リボン、60~63…凹凸形状部、70~72…フィルタ部、75…壁部、76…谷部、77…山部、Ax…軸線、Ax2…(ギヤローラの)回転軸、L1…(長手方向の)基準線、L2…(短手方向の)基準線、W…金属線材、WA…金属線材(単線)、WB…金属線材(複線)、W1…芯線、W2…ろう接材、100…成形装置、101…ギヤローラ、102…ギヤ歯、103…面取部、111~113…成形部、116…環状突起、117…環状段部、120…スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14