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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091252
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】能動型防振装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20240627BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240627BHJP
   F16F 9/53 20060101ALI20240627BHJP
   F16F 15/03 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F16F13/10 B
F16F13/10 L
F16F15/02 A
F16F9/53
F16F15/03 F
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125234
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022206591
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優歩
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏郎
【テーマコード(参考)】
3J047
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047AB01
3J047AB05
3J047CA04
3J047CA16
3J047CB01
3J047CC01
3J047DA01
3J047FA03
3J047FA04
3J047GA01
3J048AA02
3J048AC04
3J048BA19
3J048BD07
3J048BE03
3J048BE05
3J048CB11
3J048CB21
3J048EA17
3J048EA36
3J069AA38
3J069DD25
3J069EE01
3J069EE62
(57)【要約】
【課題】本発明の能動型防振装置は、磁気粘弾性流体を充填する液室の容積を増大させることなく液室における磁気粘弾性流体の磁性粉の沈殿による性能低下を抑制する。
【解決手段】能動型防振装置1Aは、磁場を発生させる電磁コイル12(磁場発生部)と、磁場による磁路を形成する磁性体と、磁気粘弾性流体20bで満たされた第1液室15と、第1液室15に隣接し、液体20aで満たされた第2液室21と、を有し、電磁コイル12と、磁性体と、第1液室15と、第2液室21とは、内筒3と外筒2との径方向の間に設けられ、第1液室15と、第2液室21とは可撓部材14によって仕切られており、第1液室15は、磁路上に位置するオリフィス部15aを有していることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
前記外筒の内周側に配置される内筒と、
磁場を発生させる磁場発生部と、
前記磁場による磁路を形成する磁性体と、
磁気粘弾性流体で満たされた第1液室と、
前記第1液室に隣接し、液体で満たされた第2液室と、
を有する能動型防振装置であって、
前記磁場発生部と、前記磁性体と、前記第1液室と、前記第2液室とは、前記内筒と前記外筒との径方向の間に設けられ、
前記第1液室と、前記第2液室とは可撓部材によって仕切られており、
前記第1液室の一部は、前記磁路上に位置する前記磁気粘弾性流体の流路を形成していることを特徴とする能動型防振装置。
【請求項2】
前記第1液室、前記第2液室、及び前記可撓部材は周方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項1に記載の能動型防振装置。
【請求項3】
前記第1液室を形成する第1液室形成部と、前記第2液室を形成する第2液室形成部と、前記磁場発生部を有する磁場形成部と、は軸方向に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の能動型防振装置。
【請求項4】
前記第1液室形成部と、前記第2液室形成部と、前記磁場形成部と、を有するユニットを、軸方向に複数備えていることを特徴とする請求項3に記載の能動型防振装置。
【請求項5】
互いに隣接する前記ユニット同士は、軸回りに位相が異なるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の能動型防振装置。
【請求項6】
互いに隣接する前記ユニット同士は、一つの前記磁場形成部を共有していることを特徴とする請求項4に記載の能動型防振装置。
【請求項7】
前記磁場発生部は、電磁コイルであり、
前記磁性体は、前記磁場発生部としての永久磁石をさらに有し、前記永久磁石が形成する前記磁路上に前記磁気粘弾性流体の流路が位置することを特徴とする請求項1に記載の能動型防振装置。
【請求項8】
前記永久磁石は、前記磁場発生部に隣接する前記磁性体の前記径方向の側面部、前記磁気粘弾性流体の流路における前記径方向の内側に隣接する内側隣接部、及び前記磁気粘弾性流体の流路における前記径方向の外側に隣接する外側隣接部の少なくとも1箇所に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の能動型防振装置。
【請求項9】
前記第1液室は、前記可撓部材と隣接する隣接液室を備え、
前記磁気粘弾性流体の流路は、前記隣接液室とは仕切壁を介して軸方向で仕切られており、
前記仕切壁は、前記隣接液室と前記磁気粘弾性流体の流路とを接続する接続通路を備えることを特徴とする請求項1に記載の能動型防振装置。
【請求項10】
前記隣接液室は、周方向に一対形成されており、
前記隣接液室同士は、前記磁気粘弾性流体の流路で連通していることを特徴とする請求項9に記載の能動型防振装置。
【請求項11】
能動型防振装置の軸が水平となるように配置された状態で、前記接続通路は、前記磁気粘弾性流体の流路における鉛直方向の最下部よりも鉛直方向上方に配置されるように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の能動型防振装置。
【請求項12】
前記磁気粘弾性流体の流路は、軸方向に凹凸形状を備えることを特徴とする請求項9に記載の能動型防振装置。
【請求項13】
請求項1に記載の能動型防振装置の製造方法であって、
前記第1液室に前記磁気粘弾性流体を封入する封入工程を有し、
前記封入工程は、前記磁場発生部と、前記磁性体と、前記可撓部材とを、前記磁気粘弾性流体からなる液中で組み合わせることによって行うことを特徴とする能動型防振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動型防振装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて車両の居住性に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
従来、車室内での音や振動の抑制による車両の居住性の向上を目的に、サブフレームマウント、サスペンションブッシュなどに使用される能動型防振装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的にはこの能動型防振装置は、磁気粘弾性流体で満たされた2つの液室同士が流路で繋げられているとともに、流路に対して交差する方向に磁路を形成する励磁コイルを備えている。この能動型防振装置は、入力する振動振幅の大きさに対応して一方の液室から他方の液室に向けて磁気粘弾性流体が流路を流れようとする際に、励磁コイルの発生する磁束密度を可変とすることで、磁気粘弾性流体の流れを制御する。これにより能動型防振装置は、入力される振動振幅の大きさに対応して自在な減衰特性を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の能動型防振装置(例えば、特許文献1参照)においては、入力される振動振幅に対する応答性能の向上を目的に液室の容積を増大させることもできるが、磁性粉を含んで比較的重く、かつ高価な磁気粘弾性流体の液室への充填量が増大する。これにより能動型防振装置は、製造コストが増大するとともにこれを搭載する車重が増大するという新たな問題を生じる。また、能動型防振装置は、磁気粘弾性流体の使用量が増大すると、磁気粘弾性流体に含まれる磁性粉の沈殿する絶対量も多くなって能動型防振装置の性能が低下する恐れもある。
【0005】
本発明は、磁気粘弾性流体を充填する液室の容積を増大させることなく入力される振動や荷重といった外力に対する応答性能の向上を図ることができるとともに液室における磁気粘弾性流体の磁性粉の沈殿による性能低下をも抑制することができる能動型防振装置及びその製造方法の提供を目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明の能動型防振装置は、外筒と、前記外筒の内周側に配置される内筒と、磁場を発生させる磁場発生部と、前記磁場による磁路を形成する磁性体と、磁気粘弾性流体で満たされた第1液室と、前記第1液室に隣接し、液体で満たされた第2液室と、を有する能動型防振装置であって、前記磁場発生部と、前記磁性体と、前記第1液室と、前記第2液室とは、前記内筒と前記外筒との径方向の間に設けられ、前記第1液室と、前記第2液室とは可撓部材によって仕切られており、前記第1液室の一部は、前記磁路上に位置する前記磁気粘弾性流体の流路を形成していることを特徴とする。
【0007】
また、前記課題を解決した本発明は、前記の能動型防振装置の製造方法であって、前記第1液室に前記磁気粘弾性流体を封入する封入工程を有し、前記封入工程は、前記磁場発生部と、前記磁性体と、前記可撓部材とを、前記磁気粘弾性流体からなる液中で組み合わせることによって行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の能動型防振装置及びその製造方法によれば、磁気粘弾性流体を充填する液室の容積を増大させることなく入力される振動や荷重といった外力に対する応答性能の向上を図ることができるとともに液室における磁気粘弾性流体の磁性粉の沈殿による性能低下をも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1実施形態に係る能動型防振装置の側面図である。
図1B図1AのIB方向から見た能動型防振装置の平面図である。
図2図1BのII-II断面を含む能動型防振装置の部分切欠き斜視図である。
図3図1Aに示す能動型防振装置の分解斜視図である。
図4図1BのII-IV断面図である。
図5】能動型防振装置における第1液室形成部と磁場形成部との組立体の部分切欠き斜視図である。
図6A】内筒に軸直方向に荷重が入力した際の第2液室内の液体の作用を示す図である。
図6B】可撓部材の底壁が撓んだ際の磁気粘弾性流体の動きを示す図である。
図6C】第1液室のオリフィス部に磁場が印加された際の磁性粉の動作を示す模式図である。
図7A】本発明の第2実施形態に係る能動型防振装置の断面図である。
図7B】本発明の第3実施形態に係る能動型防振装置の断面図である。
図7C】本発明の第4実施形態に係る能動型防振装置の断面図である。
図8A】本発明の第5実施形態に係る能動型防振装置の分解斜視図である。
図8B図8Aに示した第2磁路形成部材の斜視図である。
図9】本発明の第5実施形態に係る能動型防振装置における第1液室形成部と磁場形成部との組立体の部分切欠き斜視図である。
図10】本発明の第5実施形態に係る能動型防振装置において、電流が印加された電磁コイルによって磁路がオリフィス部に形成された様子を示す部分切欠き斜視図である。
図11】本発明の第6実施形態に係る能動型防振装置の断面図である。
図12図11のXII部における部分拡大断面図である。
図13】本発明の第6実施形態に係る能動型防振装置において、電流が印加された電磁コイルによって磁路がオリフィス部に形成された様子を示す部分拡大断面図である。
図14】本発明の第7実施形態に係る能動型防振装置の断面図である。
図15図14のXV部における部分拡大断面図である。
図16】本発明の第7実施形態に係る能動型防振装置において、電流が印加された電磁コイルによって磁路がオリフィス部に形成された様子を示す部分拡大断面図である。
図17】本発明の第8実施形態に係る能動型防振装置の分解斜視図である。
図18】本発明の第9実施形態に係る能動型防振装置の縦断面図である。
図19】第9実施形態に係る能動型防振装置における第1液室形成部・磁場形成部組立体の全体斜視図である。
図20】第9実施形態に係る能動型防振装置における第1液室形成部・磁場形成部組立体の分解斜視図である。
図21A図20に示す可撓部材を裏面側から見た全体斜視図である。
図21B図21AのXXIb-XXIb断面図である。
図22図20に示す第1磁路形成部材を表面側から見た全体斜視図である。
図23図20に示す第2磁路形成部材を裏面側から見た全体斜視図である。
図24図20に示す第1液室形成部の動作説明図である。
図25図18のXXV部における部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の能動型防振装置を実施するための形態(第1実施形態から第9実施形態)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る能動型防振装置1Aの側面図である。図1Bは、図1AのIB方向から見た能動型防振装置1Aの平面図である。
【0011】
本実施形態の能動型防振装置1Aは、図1A及び図1Bに示すように、外筒2と、前記外筒2の内周側で略同軸となるように配置される内筒3と、外筒2と内筒3との間に配置される減衰部本体4と、を備えている。
なお、図1A中、符号Sp1は、能動型防振装置1Aを支持する第1支持部材であり、符号Sp2は、能動型防振装置1Aを支持する第2支持部材である。これら第1支持部材Sp1及び第2支持部材Sp2は、仮想線(二点鎖線)で示している。
<外筒>
外筒2は、内筒3よりも大径の円筒体にて形成されている。本実施形態での外筒2は、非磁性体で形成されている。
非磁性体としては、例えば、アルミニウム合金、非フェライト系SUS、銅、エンジニアリングプラスチックなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
このような外筒2は、図1Aに示すように、外周側が第1支持部材Sp1に支持されることとなる。
【0012】
<内筒>
内筒3は、図1Aに示すように、外筒2よりも軸方向に長く形成されている。そして、内筒3の軸方向の端部は、外筒2の端部から軸方向外側に僅かに突出している。なお、本実施形態での内筒3は、非磁性体で形成されたものを想定している。
【0013】
図1Aに示すように、内筒3の内周側には、両端にねじ部を有する軸部材Sfが挿通されている。図1A中、軸部材Sfは、仮想線(二点鎖線)で示している。
第2支持部材Sp2を貫くように配置された軸部材Sfの一端側には、ナットN1が締結され、内筒3から突出した軸部材Sfの他端側には、ナットN2が締結されている。図1A中、ナットN1,N2は、仮想線(二点鎖線)で示している。
これにより内筒3は、第2支持部材Sp2に支持されることとなる。
また、図示は省略するが、内筒3は、軸部材Sfの両端が一対の第2支持部材Sp2を貫くとともにナットN1,N2にてそれぞれ締結されて一対の第2支持部材Sp2に挟持された構成とすることもできる。
【0014】
このような能動型防振装置1Aにおいては、所定の振動源からの振動や外部からの荷重(以下では、単に「振動等」と称することがある)は、第1支持部材Sp1を介して外筒2に入力され、若しくは第2支持部材Sp2を介して内筒3に入力され、又は第1支持部材Sp1及び第2支持部材Sp2を介して外筒2及び内筒3に入力されることとなる。
【0015】
<減衰部本体>
次に、減衰部本体4(図1B参照)について説明する。減衰部本体4は、外筒2(図1B参照)及び内筒3(図1B参照)のうちの少なくとも一方から入力された振動等を減衰する。
図2は、図1BのII-II断面を含む能動型防振装置1Aの斜視図である。図3は、能動型防振装置1Aの分解斜視図である。
図2に示すように、減衰部本体4は、内筒3と外筒2との径方向の間に配置されている。減衰部本体4は、磁気粘弾性流体20bで満たされた第1液室15と、後記する振動等伝達媒体である液体20aで満たされた第2液室21と、を有している。
【0016】
具体的には、減衰部本体4は、図3に示すように、第1液室形成部6と、第2液室形成部7と、磁場形成部5と、を主に備えて構成されている。ここでは第2液室形成部7について説明した後に、第1液室形成部6と磁場形成部5とが一体になった組立体Asについて説明する。
【0017】
(第2液室形成部)
図3に示すように、第2液室形成部7は、内筒3の外周側で第2液室21を区画形成する液室区画部22と、この液室区画部22を内筒3の外周面に弾性的に支持する弾性支持部23と、を有している。
液室区画部22は、内筒3を内側に配する円筒状の軸部22aと、軸部22aよりも大径の円柱部22bとを有する略コマ状を呈している。
第2液室21は、液室区画部22における円柱部22bが周方向に部分的に取り除かれるように形成されている。
【0018】
このような液室区画部22は、外筒2の内周側に配置された際に、内筒3と外筒2との間を軸方向に部分的に仕切って形成した内部空間をさらに周方向に仕切ることで内筒3の外周側に一対の第2液室21を形成する。
これら一対の第2液室21同士は、図1B中、隠れ線(点線)で示したように、内筒3を挟んで180度の位相で対向するように形成されている。
なお、このような第2液室21の外周側の内壁は、図2に示すように、外筒2の内壁にて形成されている。
【0019】
また、第2液室21は、図3に示すように、第2液室形成部7と第1液室形成部6とが重ね合わせられた際に、第1液室形成部6を構成する後記の可撓部材14の溝状凹部16に臨むように、円弧状のスリットからなる連通溝21aを有している。
具体的には、連通溝21aは、図1BのII-IV断面図である図4に示すように、液室区画部22を構成する円柱部22bにおける径方向の略中央で可撓部材14の溝状凹部16に臨むように形成されている。なお、可撓部材14の溝状凹部16を構成する底壁17は、第2液室21の一部を形成するとともに、後に詳しく説明するように第1液室15の一部をも形成している。
このような本実施形態での液室区画部22は、非磁性体からなるものを想定している。また、第2液室21に充填される液体20aとしては、例えば、シリコーンオイル、エステルオイルなどの公知の作動油を好適に使用することができる。
【0020】
次に、弾性支持部23(図3参照)について説明する。
弾性支持部23は、図4に示すように、内筒3の外周面に配置される円筒状の本体部23aと、液室区画部22の円柱部22bを部分的に覆う被覆部23bと、を備えて構成されている。
ちなみに、被覆部23bは、円柱部22bの外周面と、第2液室21を形成する円柱部22bの内壁面にも形成されている。そして、弾性支持部23の本体部23aと、円柱部22bの外周面に形成される被覆部23bとは、第2液室21の内壁面に形成される被覆部23bを介して連続している。
【0021】
本実施形態での弾性支持部23は、例えばシリコーンゴムなどの合成ゴムからなるものを想定しており、内筒3と円柱部22bとに対して加硫接着されている。
このような弾性支持部23の本体部23aは、内筒3と外筒2との間の軸直交方向への相対的な変位を許容する。また、弾性支持部23の被覆部23bは、第2液室21に充填される液体20aのシール性を担保する。
【0022】
(組立体)
次に、第1液室形成部6(図3参照)と磁場形成部5(図3参照)とが一体になるように組付けられた略円筒形状を呈した組立体As(図3参照)について説明する。
図3に示すように、第1液室形成部6は、可撓部材14と、第1磁路形成部材8と、第2磁路形成部材9と、を主に備えて構成されている。第1磁路形成部材8と第2磁路形成部材9とは、磁場形成部5の構成部材をも兼ねている。
【0023】
可撓部材14は、図3に示すように、リング形状を呈しており、円筒形状の第1磁路形成部材8の内側に配置されている。
可撓部材14には、前記したように、円弧状の一対の溝状凹部16を有している。
図5は、図1BのII-IV断面に対応する断面を有する組立体Asの部分切欠き斜視図である。
【0024】
図5に示すように、可撓部材14の溝状凹部16の形成部分は、底壁17を境にした溝状凹部16の反対側が第2磁路形成部材9と協働して第1液室15を区画する液室凹部19を有している。
このような可撓部材14の液室凹部19は、溝状凹部16と対応するように周方向に円弧状に形成されている。すなわち、図4に示すように、第2液室21と、第1液室15とは、可撓部材14の可撓性を有する底壁17にて仕切られている。
【0025】
また、可撓部材14は、図5に示すように、外周部が第1磁路形成部材8に支持されている。具体的には、液室凹部19が形成される可撓部材14の外周部分は、第1磁路形成部材8の内周側から底壁17の高さで内側に延出したフランジ部10aが可撓部材14の外周部分の肉部に入り込むことで固定されている。また、可撓部材14の底壁17を有していない部分18bは、第1磁路形成部材8の内周側から可撓部材14の内周面近くまで延出したフランジ部10bに固定されている。
ちなみに、図3に示すように、可撓部材14の底壁17を有する部分18aは、一対の第2液室21の連通溝21aに対応するように一対形成されている。
【0026】
そして、図5に示すように、底壁17に対応するように、周方向に延びた第1液室15は、底壁17を有しない部分18bではフランジ部10bと第2磁路形成部材9との間で周方向に延びている。これにより底壁17を有しない部分18bで延びる第1液室15は、底壁17を有する部分18aで延びる第1液室15よりも断面積が小さくなっている。
つまり、図示は省略するが、第2液室21に対応して円弧状に延びる大断面積の一対の第1液室15は、小断面積の一対の第1液室15によって環状の液室を構成している。
【0027】
このような環状に形成された第1液室15は、前記のように、磁気粘弾性流体20bで満たされている。
そして、後に詳しく説明するように、大断面積の一対の第1液室15同士の間で磁気粘弾性流体が移動する際には、小断面積の第1液室15は、オリフィス部15aを構成する。すなわち、第1液室15の一部を形成するオリフィス部15aは、磁路Mc(図6B参照)上に位置する磁気粘弾性流体の流路を形成している。
第1液室15に充填される磁気粘弾性流体としては、磁性粉を鉱油や合成油などに分散させた公知のMRF(Magneto-Rheological Fluid)、MRC(Magneto-Rheological Compound)などが挙げられる。
【0028】
次に、磁場形成部5(図5参照)について説明する。
図5に示すように、磁場形成部5は、前記の第1磁路形成部材8と第2磁路形成部材9とに加えて、電磁コイル12と、第3磁路形成部材11と、を主に備えて構成されている。電磁コイル12は、特許請求の範囲にいう「磁場発生部」に相当する。
図3に示すように、第2磁路形成部材9、電磁コイル12、及び第3磁路形成部材11は、前記の第1磁路形成部材8よりも小径のリング状に形成されている。
【0029】
図5に示すように、第2磁路形成部材9は、平板状のリング部91と、このリング部91の内周側に形成される円筒部92とによって断面L字形状を呈している。
L字断面を有する第2磁路形成部材9は、平板状の第3磁路形成部材11と協働して径方向の外側に開くコ字断面形状を構成している。
そして、第1磁路形成部材8のフランジ部10bとの間にオリフィス部15aを形成するように第1磁路形成部材8の内周側に第2磁路形成部材9が配置されることで、第1磁路形成部材8の内周側には、第2磁路形成部材9と第3磁路形成部材11とで囲まれる電磁コイル12の配置室13が形成される。
この際、第3磁路形成部材11は、第1磁路形成部材8に対して磁気的に接続されるとともに、第2磁路形成部材9は、可撓部材14を介して第1磁路形成部材8に当接する。
【0030】
これにより磁場形成部5は、後記するように、電流を印加した電磁コイル12によってオリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bを経由する磁路Mc(図6B参照)を形成する。
なお、第1磁路形成部材8、第2磁路形成部材9、及び第3磁路形成部材11は、例えば鉄、コバルト、ニッケル、これらの合金などの磁性体からなるものを想定している。
以上のような組立体Asは、図5に示すように、外筒2(図4参照)の内側に収まる外周面Osと、第2液室形成部7(図4参照)の軸部22a(図4参照)が収まる内周面Isと、を有する略円筒体となる。
【0031】
このような能動型防振装置1Aの製造方法としては、例えば、図3に示すように、内筒3と液室区画部22とを弾性支持部23を介して一体に形成する工程と、可撓部材14と一体に形成した第1磁路形成部材8に対して第2磁路形成部材9と電磁コイル12と第3磁路形成部材11とを組み付けた組立体Asを形成する工程と、一体となった内筒3と液室区画部22とを組立体Asに組み付けて外筒2内に収納する工程と、を有する方法が挙げられる。
【0032】
また、このような製造方向においては、組立体Asの第1液室15(図5参照)に磁気粘弾性流体を充填する工程(封入工程)は、第1磁路形成部材8(磁性体)に対して第2磁路形成部材9(磁性体)と電磁コイル12と第3磁路形成部材11(磁性体)とを組み付ける際に、磁気粘弾性流体からなる液中で組み合わせることによって行うことができる。
【0033】
<作用効果>
次に、本実施形態の能動型防振装置1Aの動作を示しつつ能動型防振装置1Aの奏する作用効果について説明する。
図6Aは、内筒3に軸直方向に外力Lが入力した際の第2液室21内の液体20aの作用を示す図である。図6Bは、可撓部材14の底壁17が第1液室15側に撓んだ際の磁気粘弾性流体20bの動きを示す模式図である。図6Cは、第1液室15のオリフィス部15aに磁場が印加された際の磁性粉Mpの動作を示す模式図である。
【0034】
図6Aに示すように、能動型防振装置1Aにおいては、内筒3に対して荷重や振動振幅といった外力Lが軸直方向に入力すると、内筒3と外筒2との相対位置が変位する。
図6Aに示す場面では、内筒3が外筒2側に向けて変位することで、第2液室21における液体20aの液圧が高まる。また、能動型防振装置1Aにおいては、図示は省略するが、内筒3を挟んで反対側の第2液室21は、内筒3が外筒2から遠ざかるように変位することで液体20aの液圧が低くなる。
【0035】
図6Aに戻って、第2液室21の液体20aの液圧が高まると、可撓部材14の底壁17は、第1液室15側に向かう方向Dに押圧される。また、図示は省略するが、内筒3を挟んで反対側の第2液室21においては、液体20aの液圧が低くなると、可撓部材14の底壁17は、図6Aに示す方向Dとは反対の方向に引っ張られる。
すなわち、能動型防振装置1Aにおいては、図6Bに示すように、可撓部材14の底壁17は、第1液室15側に向けて凸となるように撓む。また、図示を省略した内筒3を挟んで反対側の底壁17は、第1液室15側から離れる方向に凸となるように撓む。
これにより第1液室15の磁気粘弾性流体20bは、図6Bに示すように、オリフィス部15aを通過する流れFを生じる。
【0036】
その一方で、通電された電磁コイル12の発生する磁場によって、図6Bに示すように、第1磁路形成部材8と、第2磁路形成部材9と、第3磁路形成部材11とにわたって磁路Mcが形成される。すなわち、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bを経由する磁路Mcが形成される。
【0037】
図6C中、左図に示すように、第1液室15のオリフィス部15aにおける磁気粘弾性流体20bは、磁場が印加されていない状態では磁性粉Mpの分散状態が維持されて所期の流動性を示す。
これに対して、図6C中、右図に示すように、発生した磁場によって磁路Mc(図6B参照)が形成されると、磁束MLに沿って磁性粉Mpが並ぶ。これにより磁気粘弾性流体20bは、見かけの粘度が増すとともに並んだ磁性粉Mpが弁体となってオリフィス部15a内での流動抵抗を生じる。
能動型防振装置1Aは、このオリフィス部15aにおける磁気粘弾性流体20bの流動抵抗によって、入力された振動等の減衰特性を発揮する。
そして、この振動等の減衰特性は、電磁コイル12を流れる電流値を入力された振動等の大きさに応じて制御することによって可変となる。
【0038】
本実施形態の能動型防振装置1Aは、内筒3又は外筒2のうちの少なくとのいずれかに外部から荷重や振動振幅が入力された際に、第2液室21内における液体20aの液圧の変化に応じて第1液室15内における磁気粘弾性流体20bの流動を生じさせる構成となっている。そして、能動型防振装置1Aは、第1液室15のオリフィス部15aに印加する磁場(磁束密度)の大きさで振動等の減衰特性を制御する。
【0039】
このような能動型防振装置1Aによれば、外部からの振動等の入力を直接的に磁気粘弾性流体の流れに変える従来の能動型防振装置(例えば、特許文献1参照)と異なって、第2液室21における液体20aの液圧変化によって第1液室15内における磁気粘弾性流体20bの流動を生じさせる。
本実施形態の能動型防振装置1Aによれば、磁気粘弾性流体20bを充填する第1液室15の容積を増大させることなく液体20aが充填される第2液室21の容積を増大させることで入力される振動等に対する応答性能の向上を図ることができる。
【0040】
また、能動型防振装置1Aによれば、従来の能動型防振装置(例えば、特許文献1参照)と異なって、磁気粘弾性流体20bを充填する液室(第1液室15)の容積を比較的に小さくすることができるので、磁性粉Mpを含んで比較的重く、かつ高価な磁気粘弾性流体20bの使用量を少なくすることができる。
【0041】
また、能動型防振装置1Aによれば、従来の能動型防振装置(例えば、特許文献1参照)と異なって、磁気粘弾性流体20bを充填する液室(第1液室15)の容積を比較的に小さくすることができるので、磁気粘弾性流体20bに含まれる磁性粉Mpの沈殿する絶対量を少なくすることができる。
【0042】
また、能動型防振装置1Aによれば、磁気粘弾性流体20bを充填する液室(第1液室15)の容積を比較的に小さくすることができるので、磁気粘弾性流体20bの流れFによる沈殿した磁性粉Mpの巻き上げ作用によって磁性粉Mpを再分散させることができる。
また、能動型防振装置1Aによれば、経年による磁性粉Mpの沈殿を抑制することができるので、良好の振動等の減衰性能を維持することができる。
【0043】
また、能動型防振装置1Aにおいては、記第1液室15と、第2液室21と、可撓部材14とは周方向に沿って延設されている。
このような能動型防振装置1Aによれば、入力される振動等に対する良好な応答性能を維持しつつ装置のコンパクト化を図ることができる。
【0044】
また、能動型防振装置1Aにおいては、第1液室15を形成する第1液室形成部6と、第2液室21を形成する第2液室形成部7と、電磁コイル12を有する磁場形成部5と、は軸方向に並ぶように配置されている。
このような能動型防振装置1Aによれば、内筒3又は外筒2のうち、いずれかから入力される振動等に対しても、第2液室21の液体20aは第1液室15の磁気粘弾性流体20bの流れFを効率よく発生させることができる。
【0045】
また、このような能動型防振装置1Aの製造方法においては、第1液室15(図5参照)に磁気粘弾性流体を充填する工程(封入工程)は、第1磁路形成部材8(磁性体)に対して第2磁路形成部材9(磁性体)と電磁コイル12と第3磁路形成部材11(磁性体)とを組み付ける際に、磁気粘弾性流体からなる液中で組み合わせることによって行うことができる。
【0046】
従来の能動型防振装置(例えば、特許文献1参照)の製造方法では能動型防振装置を全体として組み立てた後に所定の充填孔から液室に磁気粘弾性流体を充填する。このような従来の製造方法では、液室内に気泡が残留することで振動等の減衰性能が低下する恐れがある。
これに対して、能動型防振装置1Aの製造方法においては、装置を全体として組み立てる前に、予め磁気粘弾性流体20bからなる液中で組立体Asを組み合わせることで第1液室15に磁気粘弾性流体20bを満たす。
このような本実施形態の製造方法によれば、第1液室15の磁気粘弾性流体20b中に気泡が残留することを防止することができる。
【0047】
以上のような能動型防振装置1Aは、安全性能や運動性能、快適性能、乗心地性能などを加味して慎重に決める必要がある従来の各種マウントブッシュやサスペンションブッシュに代えて好適に使用することができる。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図7Aは、本発明の第2実施形態に係る能動型防振装置1Bの断面図であり、図1BのII-IV断面に対応する断面を含む図である。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0049】
図7Aに示すように、第2実施形態に係る能動型防振装置1Bは、前記第1実施形態に係る能動型防振装置1A(図4参照)と異なって、第1液室15を形成する第1液室形成部6と、第2液室21を形成する第2液室形成部7と、電磁コイル12を有する磁場形成部5と、を有するユニットが、軸方向に複数(本実施形態では2つ)備えている。
このような能動型防振装置1Bによれば、軸方向における剛性の変化を多様化することができる。
また、能動型防振装置1Bにおいては、互いに隣接し合うユニット同士が第2液室21を中に挟むように軸方向に並ぶことで、第2液室21を共有することができる。これにより能動型防振装置1Bは、より一層効果的に装置のコンパクト化を図ることができる。
【0050】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図7Bは、本発明の第3実施形態に係る能動型防振装置1Cの断面図であり、図1BのII-IV断面に対応する断面を含む図である。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0051】
図7Bに示すように、第3実施形態に係る能動型防振装置1Cは、第1液室形成部6、第2液室形成部7、及び磁場形成部5からなるユニットが軸方向に互いに隣接し合うとともに、これらのユニット同士は、軸回りに位相が異なるように配置されている。具体的には、能動型防振装置1Cは、ユニット同士は軸回りに180度位相が異なるように配置されている。
このような能動型防振装置1Cによれば、複数の軸直方向の剛性を可変にすることができ、振動等の減衰性能をより向上させることができる。
【0052】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図7Cは、本発明の第4実施形態に係る能動型防振装置1Dの断面図であり、図1BのII-IV断面に対応する断面を含む図である。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0053】
図7Cに示すように、第4実施形態に係る能動型防振装置1Dは、第1液室形成部6、第2液室形成部7、及び磁場形成部5からなるユニットが軸方向に互いに隣接し合うとともに、一つの磁場形成部5を共有している。具体的には、能動型防振装置1Dは、ユニット同士が磁場形成部5を中に挟んで軸方向に第1液室形成部6と第2液室形成部7とが反転するように配置されている。
この際、隣接するユニット同士は、図7Cに示すように、軸回りに位相が異なるように(例えば180度位相にて異なるように)配置される構成とすることもできるし、図示は省略するが、同じ位相にて配置される構成とすることもできる。
このような能動型防振装置1Dによれば、隣接するユニットのうち、一方の磁場形成部5を省略することができ、装置の簡素化を図ることができる。
【0054】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図8Aは、本発明の第5実施形態に係る能動型防振装置1Eの分解斜視図であり、前記第1実施形態に係る図3に対応する。図8Bは、図8A中、符号9で示した第2磁路形成部材(磁性体)をその円筒部側から見た斜視図である。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
図8Aに示すように、第5実施形態に係る能動型防振装置1Eは、第1実施形態に係る能動型防振装置1A(図3参照)と異なって、第2磁路形成部材9(磁性体)に永久磁石9aを有している。
具体的には、永久磁石9aは、図8Bに示すように、第2磁路形成部材9における円筒部92の周方向に等間隔に4つ配置されている。
なお、この永久磁石9aは、円筒部92に埋め込まれたものであってもよいし、円筒部92への直接の着磁により形成されたものであってもよい。
ちなみに、本実施形態での永久磁石9aは、第2磁路形成部材9におけるリング部91側にN極を形成し、その軸方向反対側にS極を形成したものを想定している。
【0056】
図9は、第5実施形態に係る能動型防振装置1Eにおける第1液室形成部6と磁場形成部5との組立体As(図8A参照)の部分切欠き斜視図であり、第1実施形態に係る図6Bに対応する図である。なお、図9は、電磁コイル12に電流を印加していない様子を示している。
図9に示すように、能動型防振装置1Eの組立体Asにおいては、永久磁石9aは、電磁コイル12に隣接する第2磁路形成部材9(磁性体)の径方向内側の円筒部92に配置されることとなる。この円筒部92は、特許請求の範囲にいう「側面部」に相当する。
【0057】
<作用効果>
次に、本実施形態の能動型防振装置1Eの動作を示しつつ能動型防振装置1Eの奏する作用効果について説明する。
図9に示すように、能動型防振装置1Eにおいては、永久磁石9aは、磁力線MFLにて示す磁場を永久磁石9aの周囲の磁性体に形成する。具体的には、磁場は、第2磁路形成部材9の円筒部92と、第3磁路形成部材11の内周側に形成される。
【0058】
そして、永久磁石9aの周囲の磁性体が磁気飽和の状態(飽和磁束密度)に近づくと、オリフィス部15aには永久磁石9aによる磁路Mmが形成される。具体的には、磁路Mmは、第1磁路形成部材8と、第2磁路形成部材9と、第3磁路形成部材11とにわたって形成されることによって、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bを経由する。言い換えれば、能動型防振装置1Eにおいては、永久磁石9aが形成する磁路Mm上にオリフィス部15aが位置するようになっている。
【0059】
図10は、電磁コイル12に電流が印加されたことによって、電磁コイル12による磁路Mcがオリフィス部15aに形成された様子を示す組立体Asの部分切欠き斜視図である。
図10に示すように、能動型防振装置1Eは、通電された電磁コイル12の発生する磁場によって、第1実施形態(図6B参照)と同様に、第1磁路形成部材8と、第2磁路形成部材9と、第3磁路形成部材11とにわたって磁路Mcが形成される。すなわち、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bを経由する磁路Mcが形成される。ちなみに本実施形態では、永久磁石9aによりオリフィス部15aに形成される磁場の向きに対して逆向きの磁場が形成されるように電磁コイル12には電流が印加されている。
【0060】
すなわち、このような能動型防振装置1Eにおいては、永久磁石9aにてオリフィス部15aに形成された磁場は、電磁コイル12にてオリフィス部15aに形成された磁場によって打ち消され、又は弱められる。能動型防振装置1Eは、電磁コイル12への電流印加によって剛性が高まる第1実施形態の能動型防振装置1A(図6B参照)と異なって、電磁コイル12への電流印加によって剛性が低くなる。
【0061】
以上のような能動型防振装置1Eによれば、オリフィス部15aにおける磁気粘弾性流体20bは、永久磁石9aにより形成された磁場によって、粘性が高く維持される。これにより、電磁コイル12に電流が印加されていない無通電状態であっても、所望の減衰特性と剛性を確保することができる。
【0062】
また、能動型防振装置1Eによれば、前記のように、従来と異なって電磁コイル12への電流印加によって剛性を低くすることができ、能動型防振装置1Eにおける減衰特性や剛性を変化させる際の自由度を向上させることができる。
【0063】
また、能動型防振装置1Eによれば、永久磁石9aにて形成されるオリフィス部15aの磁場によって、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bは、磁性粉Mpの密度が高い状態に維持される。これにより例えばエンジンのマウントブッシュなどのストロークが小さく磁気粘弾性流体20bが撹拌されにくい部品に適用する際に、磁性粉Mpの沈殿を抑制することができる。したがって、この能動型防振装置1Eによれば、電磁コイル12に電流を印加して磁気粘弾性流体20bの粘性を変化させる際の応答性能を向上させることができる。
【0064】
また、このような能動型防振装置1Eにおいては、永久磁石9aにてオリフィス部15aに形成された磁場の向きと、電磁コイル12にてオリフィス部15aに形成される磁場の向きとが同じになるように、電磁コイル12に電流を印加することもできる。
このような能動型防振装置1Eによれば、設計上の減衰特性や剛性の変化幅を一段と広げることができる。
【0065】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図11は、本発明の第6実施形態に係る能動型防振装置1Fの断面図であり、前記第1実施形態に係る図4に対応する。図12は、図11のXII部における組立体Asの部分拡大断面図である。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0066】
図11に示すように、第6実施形態に係る能動型防振装置1Fは、第1実施形態に係る能動型防振装置1A(図3参照)と異なって、オリフィス部15aの径方向の内側に位置するように、磁性体に永久磁石9aを有している。
具体的には、永久磁石9aは、第1磁路形成部材8におけるフランジ部10aと、第2磁路形成部材9におけるリング部91との間に配置されている。そして、永久磁石9aは、第1磁路形成部材8と第2磁路形成部材9とを磁気的に接続している。なお、図示は省略するが、永久磁石9aは、周方向に延びるオリフィス部15aの内周側でオリフィス部15aに対応するように配置されている。
ちなみに、本実施形態での永久磁石9aは、図12に示すように、第2磁路形成部材9側にS極を形成し、第1磁路形成部材8側にN極を形成したものを想定している。
【0067】
<作用効果>
次に、本実施形態の能動型防振装置1Fの動作を示しつつ能動型防振装置1Fの奏する作用効果について説明する。
図12に示すように、能動型防振装置1Fにおいては、永久磁石9aは、磁力線MFLにて示す磁場を永久磁石9aの周囲の磁性体に形成する。具体的には、磁場は、第1磁路形成部材8と、第3磁路形成部材11と、第2磁路形成部材9と、にわたって形成される。なお、図12は、電磁コイル12に電流を印加していない様子を示している。
【0068】
そして、永久磁石9aの周囲の磁性体が磁気飽和の状態(飽和磁束密度)に近づくと、オリフィス部15aには永久磁石9aによる磁路Mmが形成される。具体的には、磁路Mmは、永久磁石9aを挟んで第1磁路形成部材8のフランジ部10aと、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bと、第2磁路形成部材9のリング部91と、にわたって形成される。言い換えれば、能動型防振装置1Fにおいては、永久磁石9aが形成する磁路Mm上にオリフィス部15aが位置するようになっている。
【0069】
図13は、電磁コイル12に電流が印加されたことによって、電磁コイル12による磁路Mcがオリフィス部15aに形成された様子を示す組立体Asの部分拡大断面図である。
図13に示すように、能動型防振装置1Fは、通電された電磁コイル12の発生する磁場によって、第1磁路形成部材8と、第2磁路形成部材9と、第3磁路形成部材11とにわたって磁路Mcが形成される。すなわち、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bを経由する磁路Mcが形成される。ちなみに本実施形態では、永久磁石9aによりオリフィス部15aに形成される磁場の向きに対して逆向きの磁場が形成されるように電磁コイル12には電流が印加されている。
【0070】
このような能動型防振装置1Fにおいては、永久磁石9aにてオリフィス部15aに形成された磁場は、電磁コイル12にてオリフィス部15aに形成された磁場によって打ち消され、又は弱められる。能動型防振装置1Fは、電磁コイル12への電流印加によって、第5実施形態の能動型防振装置1E(図10参照)と同様に剛性が低くなる。
【0071】
以上のような能動型防振装置1Fによれば、前記した第5実施形態の能動型防振装置1E(図10参照)と同様の効果を奏することができる。
また、能動型防振装置1Fによれば、第5実施形態の能動型防振装置1E(図10参照)と比べて永久磁石9aをオリフィス部15aに対して近接配置することができる。これにより能動型防振装置1Fは、オリフィス部15aにおける永久磁石9aによる磁場形成をより効果的に行うことができる。
【0072】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図14は、本発明の第7実施形態に係る能動型防振装置1Gの断面図であり、前記第1実施形態に係る図4に対応する。図15は、図14のXV部における組立体Asの部分拡大断面図である。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0073】
図14に示すように、第7実施形態に係る能動型防振装置1Gは、第1実施形態に係る能動型防振装置1A(図3参照)と異なって、オリフィス部15aの径方向の外側に位置するように、磁性体に永久磁石9aを有している。
具体的には、永久磁石9aは、第1磁路形成部材8におけるフランジ部10aと、第2磁路形成部材9におけるリング部91との間に配置されている。そして、永久磁石9aは、第1磁路形成部材8と第2磁路形成部材9とを磁気的に接続している。なお、図示は省略するが、永久磁石9aは、周方向に延びるオリフィス部15aの外周側でオリフィス部15aに対応するように配置されている。
ちなみに、本実施形態での永久磁石9aは、図15に示すように、第2磁路形成部材9側にN極を形成し、第1磁路形成部材8側にS極を形成したものを想定している。
【0074】
<作用効果>
次に、本実施形態の能動型防振装置1Gの動作を示しつつ能動型防振装置1Gの奏する作用効果について説明する。
図15に示すように、能動型防振装置1Gにおいては、永久磁石9aは、磁力線MFLにて示す磁場を永久磁石9aの周囲の磁性体に形成する。具体的には、磁場は、第1磁路形成部材8と、第3磁路形成部材11と、第2磁路形成部材9と、にわたって形成される。なお、図15は、電磁コイル12に電流を印加していない様子を示している。
【0075】
そして、永久磁石9aの周囲の磁性体が磁気飽和の状態(飽和磁束密度)に近づくと、オリフィス部15aには永久磁石9aによる磁路Mmが形成される。具体的には、磁路Mmは、永久磁石9aを挟んで第1磁路形成部材8のフランジ部10aと、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bと、第2磁路形成部材9のリング部91と、にわたって形成される。言い換えれば、能動型防振装置1Gにおいては、永久磁石9aが形成する磁路Mm上にオリフィス部15aが位置するようになっている。
【0076】
図16は、電磁コイル12に電流が印加されたことによって、電磁コイル12による磁路Mcがオリフィス部15aに形成された様子を示す組立体Asの部分拡大断面図である。
図16に示すように、能動型防振装置1Gは、通電された電磁コイル12の発生する磁場によって、第1磁路形成部材8と、第2磁路形成部材9と、第3磁路形成部材11とにわたって磁路Mcが形成される。すなわち、オリフィス部15aの磁気粘弾性流体20bを経由する磁路Mcが形成される。ちなみに本実施形態では、永久磁石9aによりオリフィス部15aに形成される磁場の向きに対して逆向きの磁場が形成されるように電磁コイル12には電流が印加されている。
【0077】
このような能動型防振装置1Gにおいては、永久磁石9aにてオリフィス部15aに形成された磁場は、電磁コイル12にてオリフィス部15aに形成された磁場によって打ち消され、又は弱められる。能動型防振装置1Gは、電磁コイル12への電流印加によって、第5実施形態の能動型防振装置1E(図10参照)と同様に剛性が低くなる。
【0078】
以上のような能動型防振装置1Gによれば、前記した第5実施形態の能動型防振装置1E(図10参照)と同様の効果を奏することができる。
また、能動型防振装置1Gによれば、第5実施形態の能動型防振装置1E(図10参照)と比べて永久磁石9aをオリフィス部15aに対して近接配置することができる。これにより能動型防振装置1Fは、オリフィス部15aにおける永久磁石9aによる磁場形成をより効果的に行うことができる。
【0079】
また、能動型防振装置1Gの永久磁石9aは、オリフィス部15aの外周側に配置されることで、第6実施形態の能動型防振装置1F(図11参照)における内周側に配置される永久磁石9aと比べて周長を大きく確保することができる。
これにより能動型防振装置1Gは、能動型防振装置1F(図11参照)と比べてオリフィス部15aにおける永久磁石9aによる磁場形成をさらに効果的に行うことができる。
【0080】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図17は、本発明の第8実施形態に係る能動型防振装置1Hの断面図であり、前記第1実施形態に係る図3に対応する。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0081】
図17に示すように、第8実施形態に係る能動型防振装置1Hは、第1実施形態に係る能動型防振装置1A(図3参照)と異なって、電磁コイル12に代えて磁場発生部としての永久磁石24を備えている。
【0082】
<作用効果>
能動型防振装置1Hは、例えばこの能動型防振装置1Hの動きが小さく、可撓部材14の底壁17が大きく変形しない場合にはオリフィス部15aを流れる磁気粘弾性流体20bの圧力は低い状態となる。
その一方で、このような能動型防振装置1Hは、永久磁石24によって常にオリフィス部15a(図4参照)に磁場を発生させておくことができる。
【0083】
これにより能動型防振装置1Hは、図6Cの右図に示すように、発生した磁場によって磁束MLに沿うように磁性粉Mpが並ぶ。これにより磁気粘弾性流体20bは、見かけの粘度が増すとともに並んだ磁性粉Mpが弁体となってオリフィス部15a内での流動抵抗を生じる。能動型防振装置1Hは、固い状態となる。
【0084】
また、能動型防振装置1Hは、磁気粘弾性流体20bの圧力がある一定以上になると、磁性粉Mpが並ぶ状態が崩れる。能動型防振装置1Hは、柔らかい状態となる。
このような能動型防振装置1Hによれば、電磁コイル12による磁場の制御ができなくても、能動型防振装置1Hに対する入力荷重の大きさに応じて、能動型防振装置1Hを2段階の固さに切り替えることができる。
【0085】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態に係る能動型防振装置について説明する。
図18は、本発明の第9実施形態に係る能動型防振装置1Jの断面図である。
なお、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図18に示すように、能動型防振装置1Jは、前記第1実施形態に係る能動型防振装置1A(図2参照)と異なって、内筒3の一端にフランジ3aを有している。
また、能動型防振装置1Jは、能動型防振装置1A(図3参照)での第2液室形成部7(図3参照)を構成する非磁性体からなる略コマ状の液室区画部22(図3参照)を省略している。
【0086】
また、能動型防振装置1Jは、図18に示すように、液室区画部22(図3参照)を省略した代わりに、フランジ3aの内筒3側の面部と、内筒3の外周面とに亘って加硫接着された略円柱状の弾性体からなる弾性支持部23を有している。
そして、能動型防振装置1Jの第2液室21は、外筒2の内周側で弾性支持部23が周方向に部分的に取り除かれるように形成されている。
【0087】
このような弾性支持部23を有する第2液室形成部7は、能動型防振装置1A(図3参照)の第2液室21(図3参照)と同様に、外筒2と内筒3との間で周方向に延びる一対の第2液室21を形成する。
【0088】
次に、能動型防振装置1Jにおける第1液室形成部6(図18参照)と磁場形成部5(図18参照)とについて説明する。
図18に示すように、第1液室形成部6は、可撓部材34と、第1磁路形成部材38と、磁場形成部5の一部をも兼ねる第2磁路形成部材39とで構成されている。
第1液室形成部6は、図18に示すように、磁気粘弾性流体20bを封入する第1液室35を形成する。
【0089】
この第1液室35は、可撓部材34に隣接するように設けられる隣接液室35aと、この隣接液室35aよりも第2液室21から離れる方向にシフトして形成される並設液室35bと、を備えて構成されている。
なお、並設液室35bは、第1実施形態の能動型防振装置1A(図6A参照)におけるオリフィス部15a(図6A参照)に対応するように設けられ、磁気粘弾性流体20bの流路となる。
【0090】
磁場形成部5は、図18に示すように、前記の第2磁路形成部材39と、電磁コイル12(磁場発生部)と、第3磁路形成部材41とで構成されている。
磁場形成部5は、後記するように、並設液室35bに磁路Mcを形成する。
【0091】
図19は、第1液室形成部6と磁場形成部5とが一体になるように組付けられた組立体Asの全体斜視図である。
図19に示すように、組立体Asは、外筒1(図18参照)の内周側に収まるように略円筒形状を呈している。図19中、符号34は、第1液室形成部6を構成する可撓部材であり、符号38は、第1液室形成部6を構成する第1磁路形成部材(仕切壁)であり、符号39は、磁場形成部5と第1液室形成部6とで兼用される第2磁路形成部材である。符号41は、磁場形成部5を構成する第3磁路形成部材である。なお、図19中、電磁コイル12(図18参照)の記載は作図の便宜上、省略されている。
【0092】
図20は、組立体Asの分解斜視図である。
図20に示すように、組立体Asを構成する第3磁路形成部材41は、中央孔を有する底板と円筒状の側壁とを有して構成されている。
組立体Asは、この略有底円筒体からなる第3磁路形成部材41の内周側に、リング状の電磁コイル12(磁場発生部)と、第2磁路形成部材39と、第1磁路形成部材38(仕切壁)と、可撓部材34とがこの順番で重ねられて嵌め込まれることで構成されている。
【0093】
可撓部材34は、第1実施形態の能動型防振装置1A(図3参照)の可撓部材14(図3参照)の底壁17(図3参照)と同様の、一対の円弧状の底壁37を可撓部材34の表面に有している。
図21Aは、裏面側から見た可撓部材34の全体斜視図である。図21Bは、図21AのXXIb-XXIb断面図である。
【0094】
図21A及び図21Bに示すように、可撓部材34は、表裏対称構造を有している。可撓部材34の裏面には、表側の底壁37(図21B参照)を有する溝状凹部と対称となるように、溝状の隣接液室35aが形成されている。この隣接液室35aには、第1磁路形成部材38(図20参照)の表面に可撓部材34の裏面が密着することで磁気粘弾性流体20b(図18参照)が封入される。
【0095】
図22は、第1磁路形成部材38を表面側から見た全体斜視図である。なお、図22中、第1磁路形成部材38の裏面に形成される並設液室35bの半分35b1と、並設液室35bに形成される凹凸形状38bとは、隠れ線(点線)で表している。
【0096】
図22に示すように、第1磁路形成部材38は、リング状の板体で形成されている。
第1磁路形成部材38には、第1磁路形成部材38を板厚方向に貫くように一対の接続通路38aが形成されている。
一対の接続通路38aのそれぞれは、第1磁路形成部材38と可撓部材34(図21A参照)との間に形成される一対の隣接液室35a(図21A参照)の端部のそれぞれに連通するようになっている。
接続通路38a(図22参照)は、可撓部材34(図21A参照)の一対の隣接液室35a(図21A参照)同士が向き合う一端部の形状に合わせて平面視で短い円弧状を呈している。
【0097】
図22に示すように、第1磁路形成部材38の裏面には、並設液室35bの半分35b1が形成されている。この半分35b1は、図20に示す第2磁路形成部材39側に開く溝部にて形成されている。
半分35b1は、図22に示すように、一対の接続通路38aのうち、一方の接続通路38aから他方の接続通路38aとは反対方向に第1磁路形成部材38の周方向に延びて、他方の接続通路38aに接続されている。
すなわち、接続通路38a(図22参照)は、隣接液室35a(図21A参照)と、並設液室35b(図22参照)とを接続している。
【0098】
なお、これらの接続通路38a(図22参照)の形成位置としては、後に詳しく説明するように、能動型防振装置1J(図18参照)の軸が水平となっている状態で、並設液室35b(図22参照)の鉛直方向の最下部よりも鉛直方向上方に位置するものが好ましい。
【0099】
また、半分35b1の溝底には、第2磁路形成部材39側に凸となる凸部38b1と、凹となる凹部38b2とが周方向に交互に並ぶ凹凸形状38bが形成されている。
このような第1磁路形成部材38は、図18に示すように、第1液室35を隣接液室35aと並設液室35bとに仕切るように配置される。第1磁路形成部材38は、特許請求の範囲にいう「仕切壁」に相当する。
【0100】
図23は、第2磁路形成部材39を裏面側から見た全体斜視図である。なお、図23中、第2磁路形成部材39の表面に形成される並設液室35bの半分35b2と、並設液室35bに形成される凹凸形状39aとは、隠れ線(点線)で表している。
図23に示すように、第2磁路形成部材39は、円筒部39c1と、円筒部39c1の一端側にフランジ状に接続されたリング部39c2とを有している。
【0101】
並設液室35bの半分35b2は、リング部39c2の表面に形成されている。この半分35b2は、図20に示す第1磁路形成部材38側に開く溝部にて形成されている。半分35b2は、図20に示すように、第1磁路形成部材38の半分35b1に対応するように形成されている。このような半分35b2の溝底には、凹凸形状39aが形成されている。この凹凸形状39aは、図23に示すように、第1磁路形成部材38(図20参照)側に凸となる凸部39a1と、凹となる凹部39a2とが周方向に交互に並ぶことで形成されている。
【0102】
図20に示すように、第1磁路形成部材38の半分35b1と第2磁路形成部材39の半体35b2とが一体となることで、図18に示す並設液室35bが形成される。この際、図22に示す第1磁路形成部材38側の凸部38b1と、図23に示す第2磁路形成部材39側の凸部39a1とは、所定のクリアランスを形成して対向することとなる。また、この凸部38b1と凸部39a1との間に形成されるクリアランス(隙間)は、磁気粘弾性流体20bの流路となる並設液室35bでのオリフィス部を形成する。すなわち、並設液室35bは、その長さ方向(周方向)に沿うように複数のオリフィス部を有することとなる。
【0103】
<作用効果>
次に、第1液室形成部6(図20参照)の動作を示しつつ能動型防振装置1J(図18参照)の奏する作用効果について説明する。
図18に示す内筒3を介して軸に交差する方向に荷重が入力されると、一対の第2液室21のうち、外筒2と内筒3との間で圧縮される第2液室21では、液体20aの液圧が高まる。また、内筒3を挟んで反対側の第2液室21においては、液体20aの液圧が低くなる。
【0104】
すなわち、第1液室形成部6の動作説明図である図24に示すように、一方の第2液室21(図18参照)に隣接する可撓部材34の底壁37には、これを押圧する方向に荷重P1が掛かる。底壁37は、図示は省略するが、隣接液室35a側に凸となるように撓む。
また、図24に示すように、他方の第2液室21(図18参照)に隣接する可撓部材34の底壁37には、これを引っ張る方向に荷重P2が掛かる。底壁37は、図示は省略するが、隣接液室35a側に凹となるように撓む。
【0105】
これにより底壁37(図18参照)が凸に撓んだ側での一方の隣接液室35a(図18参照)における磁気粘弾性流体20b(図18参照)の圧力は高まる。また、底壁37(図18参照)が凹に撓んだ側での他方の隣接液室35a(図18参照)における磁気粘弾性流体20b(図18参照)の圧力は低くなる。
一方の隣接液室35a(図18参照)における磁気粘弾性流体20b(図18参照)は、他方の隣接液室35a(図18参照)へと流れていく。
すなわち、磁気粘弾性流体20b(図18参照)は、図24に示すように、一方の接続通路38aから並設液室35bを迂回して他方の接続通路38aを通過する流れFを形成する。
【0106】
また、図18のXXV部における部分拡大断面図である図25に示すように、通電された電磁コイル12の発生する磁場によって、並設液室35bには磁路Mcが形成される。これにより並設液室35bの磁気粘弾性流体20bは、見かけの粘度が増すとともに並設液室35b内での流動抵抗を生じる。
能動型防振装置1Jは、この並設液室35b内における磁気粘弾性流体20bの流動抵抗によって、入力された振動等の減衰特性を発揮する。
そして、この振動等の減衰特性は、電磁コイル12を流れる電流値を入力された振動等の大きさに応じて制御することによって可変となる。
【0107】
また、能動型防振装置1Jは、図18に示すように、第1液室35を形成する隣接液室35aと並設液室35bとが、第1磁路形成部材38(仕切壁)によって軸方向に仕切られている。また、隣接液室35aと、磁気粘弾性流体20bの流路となる並設液室35bとは、第1磁路形成部材38(仕切壁)に形成された接続通路38aによって接続されている。
このような能動型防振装置1Jによれば、隣接液室35aに対して軸方向にズレた並設液室35bにて磁気粘弾性流体20bを流動させることができる。これにより能動型防振装置1Jは、磁路Mcが形成される並設液室35bにおける磁気粘弾性流体20bの沈殿の影響を少なくすることができる。
【0108】
また、能動型防振装置1Jは、図24に示すように、能動型防振装置1Jの軸Axが水平となるように配置された状態で、接続通路38aが、並設液室35b(磁気粘弾性流体の流路)における鉛直方向(図24中、上下の矢示方向)の最下部Bmよりも鉛直方向上方に配置されるように形成されている。
このような能動型防振装置1Jによれば、磁気粘弾性流体が並設液室35bの最下部Bmを通って接続通路38aに流通することになるので、磁気粘弾性流体の沈殿による影響を少なくすることができる。
【0109】
また、能動型防振装置1Jは、図24に示すように、磁気粘弾性流体の流路となる並設液室35bに、凹凸形状39aを有している。
このような能動型防振装置1Jによれば、凹凸形状39aの凹部39a2(図23参照)で磁気粘弾性流体の流路となる並設液室35bの所定の流路断面を確保しながらも、凹部39a2で第1磁路形成部材38(図22参照)と向き合うことで、並設液室35bにおける磁力を高めることができる。
【0110】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記した第5実施形態から第7実施形態に係る能動型防振装置1E,1F,1Gにおいては、永久磁石9aが、電磁コイル12の径方向の側面部、オリフィス部15aの径方向の内側、又はオリフィス部15aの径方向の外側の3箇所に配置されているものを例示したが本発明の能動型防振装置はこれに限定されるものではない。したがって、本発明の能動型防振装置は、電磁コイル12の径方向の側面部、オリフィス部15aの径方向の内側、及びオリフィス部15aの径方向の外側の3箇所うち、2箇所以上を選択して永久磁石9aを配置する構成とすることもできる。
【0111】
また、能動型防振装置1Jは、電磁コイル12に代えて、能動型防振装置1H(図17参照)と同様の永久磁石24を配置することができる。
このような能動型防振装置1Jによれば、能動型防振装置1H(図17参照)と同様に、能動型防振装置1Jに対する入力荷重の大きさに応じて、能動型防振装置1Jを2段階の固さに切り替えることができる。
【符号の説明】
【0112】
1A 能動型防振装置
1B 能動型防振装置
1C 能動型防振装置
1D 能動型防振装置
1E 能動型防振装置
1F 能動型防振装置
1G 能動型防振装置
1H 能動型防振装置
1J 能動型防振装置
2 外筒
3 内筒
5 磁場形成部
6 第1液室形成部
7 第2液室形成部
8 第1磁路形成部材(磁性体)
9 第2磁路形成部材(磁性体)
9a 永久磁石
11 第3磁路形成部材(磁性体)
12 電磁コイル(磁場発生部)
14 可撓部材
15 第1液室
15a オリフィス部
17 可撓部材の底壁
20a 液体
20b 磁気粘弾性流体
21 第2液室
24 永久磁石(磁場発生部)
34 可撓部材
35 第1液室
35a 隣接液室
35b 並設液室
38 第1磁路形成部材(仕切壁)
38a 接続通路
39 第2磁路形成部材
41 第3磁路形成部材
92 第2磁路形成部材の円筒部(磁性体の径方向の側面部)
Mc 電磁コイルにより形成される磁路
Mm 永久磁石によりオリフィス部に形成される磁路
MFL 磁力線
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25