(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009128
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】エアロゾル発生システムにおける加熱を制御する方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/57 20200101AFI20240112BHJP
【FI】
A24F40/57
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196594
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2021503557の分割
【原出願日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】18185605.5
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ビラ ステファーヌ
(57)【要約】
【課題】ヒーター(119)を備えるエアロゾル発生システム(100)における加熱を制御する方法を提供する。
【解決手段】方法は、所定の電力がヒーター(119)に供給され、かつヒーター(119)の抵抗が決定される第一の制御工程であって、決定された抵抗がヒーターの温度を示す第一の制御工程と、所定の条件を監視し、所定の条件の検出に伴いヒーター(119)の抵抗を記録することと、記録された抵抗に基づいてヒーター(119)の目標温度に対応して目標抵抗(R
T)を決定することと、ヒーター(119)に供給される電力がヒーター(119)の抵抗を目標抵抗(R
T)に向かって駆動するように制御可能に適合される第二の制御工程であって、これによってヒーター(119)が目標抵抗(R
T)に対応する目標温度に向かって駆動される、第二の制御工程と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターを備えるエアロゾル発生システムにおける加熱を制御する方法であって、
所定の電力が前記ヒーターに供給され、かつ前記ヒーターの前記抵抗が決定される第一の制御工程であって、前記決定された抵抗が前記ヒーターの温度を示す、第一の制御工程と、
所定の条件を監視し、かつ前記所定の条件の検出に伴い、前記ヒーターの前記抵抗を記録することと、
前記記録された抵抗に基づいて、前記ヒーターの目標温度に対応する目標抵抗を決定することと、
前記ヒーターに供給される前記電力が、前記目標抵抗に向かって前記ヒーターの前記抵抗を駆動するように制御可能に適合されていて、これによって前記ヒーターが前記目標抵抗に対応する目標温度に向かって駆動される、第二の制御工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記所定の条件の検出に伴い、前記第一の制御工程から前記第二の制御工程に切り替わる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の条件が、
●ユーザー吸入の開始からの経過時間と、
●所定の閾値未満である、抵抗の導関数と、
●ゼロに等しい、抵抗の導関数と、のうちの一つ以上から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の制御工程および前記第二の制御工程が、ユーザー吸入中に、および随意に各ユーザー吸入中に実施される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第一の制御工程および前記第二の制御工程が、最初のユーザー吸入中に実施され、かつ2回目のユーザー吸入およびその後のユーザー吸入が前記第二の制御工程のみを使用する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記目標抵抗が、複数の当初のユーザー吸入の後に決定される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第一の制御工程と、所定の条件を監視および検出し、かつ前記抵抗を記録する前記工程とのみが、複数の当初のユーザー吸入中に実施される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記目標抵抗が、前記複数の当初のユーザー吸入からの前記記録された抵抗の平均に基づいて決定される、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の当初のユーザー吸入の後のユーザー吸入が、前記第二の制御工程のみを使用し、かつ前記目標抵抗が、前記複数の当初のユーザー吸入からの前記記録された抵抗の平均に基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エアロゾル発生システムであって、
ヒーターと、
電源と、
コントローラと、を備え、前記コントローラが、
所定の電力を前記ヒーターに供給し、かつ第一の制御モードで前記ヒーターの前記抵抗を決定し、前記決定された抵抗が前記ヒーターの温度を示し、
所定の条件を監視し、かつ前記所定の条件の検出に伴い、前記ヒーターの前記抵抗を記録し、
前記記録された抵抗に基づいて、前記ヒーターの目標温度に対応する目標抵抗を決定し、
第二の制御モードで、前記ヒーターに供給された前記電力を制御可能に適合して、前記ヒーターの前記抵抗を前記目標抵抗に向かって駆動し、これによって前記ヒーターが前記目標抵抗に対応する目標温度に向かって駆動されるように構成された、エアロゾル発生システム。
【請求項11】
前記コントローラが、前記所定の条件の検出に伴い、前記第一の制御モードから前記第二の制御モードに切り替わるように構成されている、請求項10に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項12】
前記所定の条件が、
●ユーザー吸入の開始からの経過時間と、
●所定の閾値未満である、抵抗の導関数と、
●ゼロに等しい、抵抗の導関数と、のうちの一つ以上から選択される、請求項10または請求項11に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項13】
前記第一の制御モードおよび前記第二の制御モードが、ユーザーの吸入中に、および随意に各ユーザーの吸入中に使用される、請求項10~12のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項14】
前記第一の制御モードおよび前記第二の制御モードが、最初のユーザー吸入中に使用され、かつ2回目のユーザー吸入およびその後のユーザー吸入が前記第二の制御モードのみを使用する、請求項10~12のいずれに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項15】
前記目標抵抗が、複数の当初のユーザー吸入の後に決定される、請求項10~12のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項16】
前記第一の制御モード、ならびに所定の条件の前記監視および検出、および前記抵抗の記録のみが、複数の当初のユーザー吸入中に使用される、請求項10~12のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項17】
前記目標抵抗が、前記複数の当初のユーザー吸入からの前記記録された抵抗の平均に基づいて決定される、請求項15または請求項16に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項18】
前記複数の当初のユーザー吸入後のユーザー吸入が、前記第二の制御モードのみを使用し、かつ前記目標抵抗が、前記複数の当初のユーザー吸入からの前記記録された抵抗の前記平均に基づく、請求項17に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項19】
エアロゾル発生システムのためのコントローラであって、前記コントローラが、請求項1~9のいずれかに記載の方法を実行するように構成されている、コントローラ。
【請求項20】
エアロゾル発生システムのためのプログラム可能なコントローラで実行される時、前記プログラム可能なコントローラに、請求項1~9のいずれかに記載の方法を実施させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターを備えるエアロゾル発生システムにおける加熱を制御する方法に関し、またこうしたエアロゾル発生システムにも関する。特に本発明は、加熱によってエアロゾル形成基体を気化してエアロゾルを発生する手持ち式の電気的に作動するエアロゾル発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に作動するエアロゾル発生システムは周知である。こうしたシステムは典型的に、電池および制御電子機器を有する装置部分と、エアロゾル形成基体と、エアロゾル形成基体を加熱するように配設された少なくとも一つの抵抗発熱体を備える電気ヒーターと、マウスピースとから成る。一部のシステムにおいて、エアロゾル形成基体は液体を含み、および液体エアロゾル形成基体をヒーターに運ぶために細長い芯が使用される。ヒーターは典型的に、細長い芯の周りに巻かれた抵抗加熱ワイヤのコイルを備える。ヒーター、芯、および液体エアロゾル形成基体は多くの場合、装置部分内に取り付けることができる、または受容されることができるカートリッジ内に包含される。ユーザーが装置を起動すると、ヒーターに電流が通り、抵抗加熱を引き起し、これが芯の中の液体を気化する。マウスピースを通して吸入する、またはマウスピースを吸煙することによって、空気はシステムを通して引き出され、ベイパーを同伴し、これがその後冷めてエアロゾルを形成する。エアロゾルが充満した空気はマウスピースを経由してシステムから離れ、ユーザーの口に入る。
【0003】
本明細書で使用される「エアロゾル発生基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品またはシステムの一部であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアロゾル発生システムは、経時的に一貫したエアロゾルを生成することができることが概して望ましい。これは、エアロゾルの変動がユーザーの経験を損なう可能性があり、また極端な変動は潜在的に危険である可能性があるので、エアロゾルが人々が消費するためのものである場合に特に当てはまる。また、エアロゾルを発生するために必要とされるエネルギーの量に関して、エアロゾル発生システムが可能な限り効率的にエアロゾルを生成することも概して望ましい。しかしながら、これは、システムの製造プロセスの変動と、こうしたシステムで使用されるエアロゾル形成基体の特性の変動と、こうしたシステムが使用される異なる動作条件とに起因して、達成することが困難である可能性がある。
【0005】
液体エアロゾル形成基体を使用するエアロゾル発生システムにおいて、「乾燥加熱」の状況、すなわちヒーターが液体エアロゾル形成基体の存在が不十分な状態で加熱される状況を検出し、回避することができることも望ましい。この状況はまた、「ドライ吸煙」として知られていて、また過熱、および潜在的に液体エアロゾル形成基体の熱分解をもたらす可能性があり、これはホルムアルデヒドなどの望ましくない副産物を生成する可能性がある。
【0006】
一貫したエアロゾルを生成するために、エアロゾル形成基体を加熱するために使用されるヒーターの温度を制御または調節することが望ましい場合がある。
【0007】
エアロゾル形成基体の加熱中にその特性がより一貫しているエアロゾルを提供するエアロゾル発生システムを提供することが、本発明の目的である。エアロゾル形成基体をより効率的に加熱し、かつドライ吸煙の可能性を低減するエアロゾル発生システムを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様によると、ヒーターを備えるエアロゾル発生システムにおける加熱を制御する方法が提供されていて、方法は、所定の電力がヒーターに供給され、かつヒーターの抵抗が決定される第一の制御工程であって、決定された抵抗がヒーターの温度を示す第一の制御工程と、所定の条件を監視し、所定の条件の検出に伴いヒーターの抵抗を記録することと、記録された抵抗に基づいてヒーターの目標温度に対応して目標抵抗を決定することと、ヒーターに供給される電力がヒーターの抵抗を目標抵抗に向かって駆動するように制御可能に適合されていて、これによってヒーターが目標抵抗に対応する目標温度に向かって駆動される第二の制御工程とを含む。
【0009】
ヒーターの温度を制御または調節する一つのやり方は、電力調節である。電力が調節されたシステムにおいて、所定のまたは一定の電力がヒーターに供給され、かつヒーターの抵抗が監視される。ヒーターの電気抵抗とヒーターの温度との間の関係は概して既知であるか、または判定されることができるため、ヒーターの抵抗はヒーターの温度の目安となることができる。例えば、ヒーターの電気抵抗は、ヒーターの温度に比例することが知られている場合があり、この場合、抵抗と温度の間に実質的に線形の関係があることになる。
【0010】
所定のまたは一定の電力の供給に伴い、ヒーターの温度は当初、目標温度に向かって急速に(例えば、およそ0.3秒以内に)上昇する。概して電力は、ヒーターの温度が目標温度の領域の中で安定し始めるように選択される。しかしながら、ヒーターの温度を目標温度に維持するために必要とされる電力は概して、ヒーターを加熱するために必要とされる電力よりも少ない。結果として、一定の電力がヒーターに供給され続ける場合、ヒーターの温度は一定期間にわたり、目標温度を超えて、ただしより低い速度で上昇し続ける。抵抗が高すぎてしまう場合、すなわちヒーターの温度が目標温度を超えて上昇する場合、抵抗を監視することによって、ヒーターへの電力を低減または停止することができる。しかしながら、ヒーターの温度は、電力調節されたシステムにおいて目標温度を「超えて上昇」する傾向がある。これは、エアロゾル発生の増大をもたらし、これ故にユーザーの吸入中にエアロゾル送達のばらつきをもたらす可能性があるため、望ましくない可能性がある。さらに、目標温度を超える温度上昇は、エネルギーが無駄になり、装置の効率に悪影響を及ぼすことを意味する。
【0011】
ヒーターの温度を制御または調節する別のやり方は、抵抗調節である。抵抗調節システムにおいて、目標温度を示す目標抵抗が設定され、またヒーターに供給される電力は、ヒーターの抵抗が目標抵抗の領域に向かって駆動されるか、または目標抵抗の領域にて、もしくは目標抵抗の領域の中に維持されるように適合されている。しかしながら、製造上のばらつき、接触抵抗のばらつき、エアロゾル発生基体の特性の変化、異なる周囲温度、および様々なヒーターの異なる幾何学的形状、材料、抵抗など、ヒーターの抵抗に影響を与える様々な要因に起因する、目標抵抗の計算の難しさを理由として、抵抗調節を使用して温度を調節することは問題をはらむ可能性がある。
【0012】
本発明の第一の態様の方法は、エアロゾル発生システムにおける加熱を制御するために二つの制御工程、すなわち電力調節に基づく第一の制御工程と、および抵抗調節に基づく第二の制御工程とを使用する。これは、調節のハイブリッド方法をもたらし、これは両方のタイプの調節の利点を活用することができ、一方で各タイプの不都合を低減することができることを意味する。こうしたハイブリッド方法は、以下のような数多くの利益を提供する。
【0013】
電力調節にのみ基づく第一の制御工程は、ヒーターに一定の電力を供給することと、ヒーターの抵抗を決定することとを必要とする。この制御工程中に電力を適合させる必要はなく、従って制御することは比較的に単純で、かつ抵抗調節と比べて、より少ない制御リソースしか使用しない。これは加熱サイクルの当初の段階中に、すなわちヒーターが単に加熱している間に、この時間中に温度を調節する必要性がより少ないため、有益である。
【0014】
所定の条件の検出に伴い、抵抗が記録され、記録された抵抗に基づいて目標抵抗を決定するために、記録された抵抗を使用することができる。目標抵抗は単に、所定の条件を検出した時に記録されたヒーターの抵抗に基づいているため、製造のばらつき、接触抵抗のばらつき、エアロゾル発生基体の特性の変化、異なる周囲温度、および様々なヒーターの異なる幾何学的形状、材料、抵抗など、ヒーターの抵抗に別の方法で影響を与える場合がある様々な要因とは無関係に決定することができる。
【0015】
目標抵抗の決定に続いて次に、抵抗調節に基づく第二の制御工程を使用することができ、この工程において、ヒーターに供給される電力はヒーターの抵抗を目標抵抗に向かって駆動するように制御可能に適合されていて、これによってヒーターが、目標抵抗に対応する目標温度に向かって駆動される。これは、ヒーターの温度が目標温度を超えて上昇する可能性を低減する。結果として、発生したエアロゾルの特性の一貫性または均一性は、吸入中に、およびその後の吸入のために改善される。例えば、送達されるエアロゾルの体積は、エアロゾル内に含有された成分と同様に、より一貫性を持たせることができる。これはユーザー体験の全体的な向上をもたらす。さらに、度を超える温度上昇を低減することによって、エネルギーの無駄が少なくなり、システムの効率が向上する。
【0016】
本明細書で使用される「目標抵抗」という用語は、所定の条件の検出の際に記録されたヒーターの抵抗に基づいて決定された、ヒーターの電気抵抗を指す。上述の通り、ヒーターの電気抵抗とヒーターの温度との間の関係は概して既知であるか、または判定されることができるため、ヒーターの抵抗は、ヒーターの温度の目安となることができる。従って、目標抵抗は対応する目標温度を有し、またその逆も可能である。
【0017】
本明細書で使用される「目標温度」という用語は、目標抵抗に対応する温度または温度範囲を指す。目標温度は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生するためには十分であるが、エアロゾル形成基体の熱分解が生じる、または望ましくない副産物が生成される温度を下回る。
【0018】
方法は、所定の条件の検出に伴い、第一の制御工程から第二の制御工程に切り替わってもよい。これは、所定の条件に対する急速な応答を可能にする。
【0019】
本明細書で使用される「所定の条件」という用語は、ヒーターの抵抗が目標抵抗にあるか、またはその近くにあることを示す条件または基準を指す。条件は、本方法を実行する前に知られていてもよく、または決定されてもよい。上述の通り、ヒーターに電力が供給されると、ヒーターの温度、これ故にヒーターの抵抗は当初、急速に上昇し、その後目標温度の周りで安定化し始める。抵抗が安定化し始める時点を監視し、安定化内の様々な時点を所定の条件として設定することができる。
【0020】
所定の条件は以下の通り、一つ以上の異なる条件から選択されてもよい。
【0021】
一例として、所定の条件は、ユーザー吸入の開始からの経過時間であってもよい。目標温度にて、または目標温度の近くで抵抗が安定化するのにかかる時間は既知である場合があり、または決定することができ、またこの時間は所定の条件として使用することができる。
【0022】
別の例として、所定の条件は、所定の閾値未満である抵抗の導関数であってもよい。本明細書で使用される「抵抗の導関数」という用語は、別の変数の変化に関して抵抗の変化に対する感度の尺度を指す。例えば、導関数は、時間による抵抗の変化率(例えば、抵抗対時間曲線の勾配など)であってもよく、または導関数は、サンプリング時間内の抵抗の絶対的な変化であってもよい。抵抗が目標温度の周辺で安定化し始めると、時間による抵抗の変化率が減少し始める。所定の条件は、抵抗の変化率に対する特定の値であってもよく、また方法は、抵抗の変化率がこの値を下回って低下する時を監視してもよい。
【0023】
また別の例として、所定の条件は、ゼロに等しい抵抗の導関数であってもよい。ヒーターの温度が最高温度に到達した時、所与の電力に到達することになり、温度変化の速度はゼロになり、これ故に抵抗変化の速度はゼロになる。このゼロの抵抗の変化率を、所定の条件として使用してもよい。
【0024】
加えて、所定の条件は、抵抗および/または時間に基づく任意の適切な基準とすることができる。
【0025】
第一の制御工程および第二の制御工程は、ユーザー吸入中に、および随意に各ユーザー吸入または吸煙中に実施されてもよい。これは、目標抵抗値を設定し、かつ各吸入のために効果的に最適化することを可能にする。これは、例えばエアロゾル形成基体が枯渇してきている場合、または周囲動作条件が急速に変化している場合、目標抵抗が、吸煙間で変化する可能性がある場合に特に有用である。
【0026】
本明細書で使用される「吸入」および「吸煙」という用語は互換的に使用され、またユーザーがシステムの端を吸ってシステムからエアロゾルを引き出す動作を意味することが意図されている。
【0027】
第一の制御工程および第二の制御工程は、最初のユーザー吸入中に実施されてもよく、また2回目のユーザー吸入およびその後のユーザー吸入は、第二の制御工程のみを使用してもよい。これは、ユーザーによる特定の使用セッションにおいて、その後のすべての吸入にわたって一貫したエアロゾルが生成されるように、最初のユーザー吸入によって目標抵抗を設定し、またその後のすべての吸入において目標抵抗を使用することを可能にする。所望する場合、ヒーターの温度は、一定の電力を供給する必要があることによって第二の制御工程が制限されないので、電力調節に基づく第一の制御工程を用いるよりも素早く目標温度に上昇させることができる。言い換えれば、ヒーターの温度を目標温度に向かってより素早く駆動するために、システムが必要とする場合、第一の制御工程の一定の出力を超えて電力を増大することができる。
【0028】
目標抵抗は、複数の当初のユーザー吸入の後に決定されてもよい。随意に、第一の制御工程と、所定の条件を監視および検出し、かつ抵抗を記録する工程とのみは、複数の当初のユーザー吸入中に実施されてもよい。この選択肢では、第二の制御モードへの切り替えは、吸入中ではなく、吸入と吸入の間に生じることになる。
【0029】
目標抵抗は、複数の当初のユーザー吸入からの記録された抵抗の平均に基づいて決定されてもよい。複数の当初のユーザー吸入からの記録された抵抗の平均に基づく目標抵抗は、例えばシステムが熱的に安定化する前のエアロゾル発生システムの当初の起動中に、または(例えば、ユーザーが屋外から屋内に移動することによって)起動時に周囲動作条件が急に変化した場合に、当初記録された抵抗の変動を考慮に入れる、またはその抵抗の変動をなくして一定にすることを可能にする場合がある。
【0030】
複数の当初のユーザー吸入後のユーザー吸入は、第二の制御工程のみを使用してもよく、目標抵抗は、複数の当初のユーザー吸入からの記録された抵抗の平均に基づいてもよい。これは、ユーザーによる特定の使用セッションにおけるその後の吸入のための一貫したエアロゾル生成を提供してもよい。所望する場合、ヒーターの温度は、一定の電力を供給する必要があることによって第二の制御工程が制限されないので、電力調節に基づく第一の制御工程を用いるよりも素早く目標温度に上昇させることができる。
【0031】
本発明の第二の態様によると、ヒーターと電源とコントローラとを備えるエアロゾル発生システムが提供されていて、コントローラは、所定の電力をヒーターに供給し、かつ第一の制御モードでヒーターの抵抗を決定し、決定された抵抗がヒーターの温度を示すように;所定の条件を監視し、所定の条件の検出に伴い、ヒーターの抵抗を記録するように;記録された抵抗に基づいて、ヒーターの目標温度に対応して目標抵抗を決定するように;および第二の制御モードで目標抵抗に向かってヒーターの抵抗を駆動するようにヒーターに供給される電力を制御可能に適合し、これによってヒーターが目標抵抗に対応する目標温度に向かって駆動されるように構成されている。
【0032】
本発明の第二の態様のシステムは、エアロゾル発生システムにおける加熱を制御するために二つの制御モード、すなわち電力調節に基づいている第一の制御モードと、抵抗調節に基づいている第二の制御モードとを使用する。第一の制御モードおよび第二の制御モードは、本発明の第一の態様の方法の第一の制御工程および第二の制御工程に対応する。結果として、システムはハイブリッド温度調節で構成されていて、これは、両方のタイプの調節の利点を活用することができ、一方で各タイプの不都合を低減することができることを意味する。こうしたハイブリッド調節は数多くの利益を提供し、それら利益は本発明の第一の態様の下で上述されていて、簡潔さのために、ここでは繰り返さない。
【0033】
コントローラは、所定の条件の検出に伴い、第一の制御モードから第二の制御モードに切り替わるように構成されてもよい。これは、所定の条件に対する急速な応答を可能にする。
【0034】
所定の条件は、i)ユーザーの吸入の開始からの経過時間、ii)所定の閾値未満の抵抗の導関数、およびiii)ゼロに等しい抵抗の導関数のうちの一つ以上から選択されてもよい。これらの所定の条件の各々は、本発明の第一の態様での所定の条件と同一であり、上述されている。簡潔さのために、その記述はここでは繰り返さない。加えて、所定の条件は、抵抗および/または時間に基づく任意の適切な基準とすることができる。
【0035】
第一の制御モードおよび第二の制御モードは、ユーザー吸入中に、および随意に各ユーザー吸入中に使用されてもよい。これは、目標抵抗値を設定し、かつ各吸入のために効果的に最適化することを可能にする。これは、例えばエアロゾル形成基体が枯渇してきている場合、または周囲動作条件が急速に変化している場合、目標抵抗が、吸煙間で変化する可能性がある場合に特に有用である。
【0036】
第一の制御モードおよび第二の制御モードは、最初のユーザー吸入中に使用されてもよく、また2回目のユーザー吸入およびその後のユーザー吸入は、第二の制御モードのみを使用してもよい。これは、ユーザーによる特定の使用セッションにおいて、その後のすべての吸入にわたって一貫したエアロゾルが生成されるように、最初のユーザー吸入によって目標抵抗を設定し、またその後のすべての吸入において目標抵抗を使用することを可能にする。所望する場合、ヒーターの温度は、一定の電力を供給する必要があることによって第二の制御モードが制限されないので、電力調節に基づく第一の制御モードを用いるよりも素早く目標温度に上昇させることができる。言い換えれば、ヒーターの温度を目標温度に向かってより素早く駆動するために、システムが必要とする場合、第一の制御モードの一定の出力を超えて電力を増大することができる。
【0037】
目標抵抗は、複数の当初のユーザー吸入の後に決定されてもよい。随意に、第一の制御モードと、所定の条件を監視および検出し、かつ抵抗を記録することのみが、複数の当初のユーザー吸入中に使用されてもよい。この選択肢では、第二の制御モードへの切り替えは、吸入中ではなく、吸入と吸入の間に生じることになる。
【0038】
目標抵抗は、複数の当初のユーザー吸入からの記録された抵抗の平均に基づいて決定されてもよい。複数の当初のユーザー吸入からの記録された抵抗の平均に基づく目標抵抗は、例えばシステムが熱的に安定化する前のエアロゾル発生システムの当初の起動中に、または(例えば、ユーザーが屋外から屋内に移動することによって)起動時に周囲動作条件が急に変化した場合に、決定された目標抵抗の変動を考慮に入れる、またはその抵抗の変動をなくして一定にすることを可能にする場合がある。
【0039】
複数の当初のユーザー吸入後のユーザー吸入は、第二の制御モードのみを使用してもよく、目標抵抗は、複数の当初のユーザー吸入からの記録された抵抗の平均に基づいてもよい。これは、ユーザーによる特定の使用セッションにおけるその後の吸入のための一貫したエアロゾル生成を提供してもよい。所望する場合、ヒーターの温度は、一定の電力を供給する必要があることによって第二の制御モードが制限されないので、電力調節に基づく第一の制御モードを用いるよりも素早く目標温度に上昇させることができる。
【0040】
本発明の第一の態様と第二の態様の両方において、ヒーターは電気抵抗性のある発熱体を含んでもよい。ヒーターは電気抵抗性材料を含んでもよい。適切な電気抵抗性材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、セラミック材料製・金属材料製の複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル白金、金、銀が挙げられる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル含有、コバルト含有、クロム含有、アルミニウム含有、チタン含有、ジルコニウム含有、ハフニウム含有、ニオブ含有、モリブデン含有、タンタル含有、タングステン含有、スズ含有、ガリウム含有、マンガン含有、金含有、および鉄含有合金、ならびにニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、ならびに鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。複合材料において、電気抵抗性材料は、必要とされるエネルギー伝達の動態学および外部の物理化学的特性に応じて随意に、断熱材料中に包埋、断熱材料中に封入、もしくは断熱材料で被覆されてもよく、またはその逆も可である。
【0041】
本発明の第一の態様と第二の態様の両方において、ヒーターは、内部発熱体、または外部発熱体、または内部発熱体と外部発熱体の両方を備えてもよく、ここで「内部」および「外部」は、エアロゾル形成基体に対する位置を指す。内部発熱体は任意の適切な形態を取ってもよい。例えば、内部発熱体は加熱ブレードの形態を取ってもよい。別の方法として、内部ヒーターは、異なる導電性部分または電気抵抗性の金属チューブを有するケーシングまたは基体の形態を取ってもよい。別の方法として、内部発熱体は、エアロゾル形成基体の中心を通り抜ける一つ以上の加熱用の針またはロッドであってもよい。その他の代替としては、加熱ワイヤまたはフィラメント、例えばNi-Cr(ニッケルクロム)、白金、タングステン、もしくは合金ワイヤ、または加熱プレートが挙げられる。随意に、内部発熱体は剛直な担体材料の中またはその上に配置されてもよい。こうした一つの実施形態において、電気抵抗性のある発熱体は、温度と抵抗率の間の明確な関係を有する金属を使用して形成されてもよい。こうした例示的な装置において、金属は、セラミック材料などの適切な断熱材料上にトラックとして形成され、その後ガラスなどの別の断熱材料中に挟まれてもよい。この様態で形成されたヒーターは動作中に、発熱体の加熱と、その温度の監視の両方に使用されてもよい。
【0042】
ヒーターは流体透過性発熱体を備えてもよい。流体透過性発熱体は実質的に平坦であってもよく、また導電性フィラメントを備えてもよい。導電性フィラメントは、単一の平面内に置かれてもよい。他の実施形態において、実質的に平坦な発熱体は一つ以上の寸法に沿って湾曲していてもよく、例えばドーム形状またはブリッジ形状を形成してもよい。
【0043】
導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定してもよく、隙間は10μm~100μmの幅を有してもよい。フィラメントは、隙間に毛細管作用を生じさせる場合があり、これによって使用時に、液体エアロゾル形成基体が隙間の中に引き出され、発熱体と液体の間の接触面積を増大する。
【0044】
導電性フィラメントは160~600メッシュUS(±10%)(すなわち、1インチ当たりのフィラメント数が160~600本(±10%))のサイズのメッシュを形成してもよい。隙間の幅は75μm~25μmであることが好ましい。隙間の面積とメッシュの総面積の比であるメッシュの開口面積の割合は25~56%であることが好ましい。メッシュは、異なるタイプの織り構造または格子構造を使用して形成されてもよい。別の方法として、導電性フィラメントは、互いに平行に配設されたフィラメントのアレイから成る。
【0045】
導電性フィラメントは10μm~100μmの直径を有してもよく、8μm~50μmの直径を有することが好ましく、また8μm~39μmの直径を有することがより好ましい。フィラメントは丸い断面を有してもよく、または扁平な断面を有してもよい。ヒーターフィラメントは、シート材料(箔など)のエッチングによって形成されてもよい。ヒーター組立品がフィラメントのメッシュまたは織物を備える場合、フィラメントは個別に形成され、まとめて編まれてもよい。
【0046】
流体透過性発熱体の面積は、例えば50平方ミリメートル以下であってもよく、25平方ミリメートル以下であることが好ましく、およそ15平方ミリメートルであることがより好ましい。
【0047】
発熱体の導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の電気抵抗は、0.3オーム~4オームであってもよい。電気抵抗は0.5オーム以上であることが好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の電気抵抗は、0.6オーム~0.8オームであることがより好ましい。
【0048】
エアロゾル形成基体は液体エアロゾル形成基体であってもよい。液体エアロゾル形成基体が提供される場合、エアロゾル発生システムは、液体を保持する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基体は、液体貯蔵部分または容器の中に保持されてもよい。別の方法として、または追加的に、液体エアロゾル形成基体は多孔性担体材料の中に吸収されてもよい。多孔性担体材料は、任意の適切な吸収性のプラグまたは本体、例えば発泡性の金属またはプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維、もしくはセラミックで作成されてもよい。
【0049】
液体エアロゾル形成基体が提供される場合、本発明の第一の態様と第二の態様の両方は、例えば記録された抵抗が閾値を上回って増加する時を検出することによって、またはヒーターを目標抵抗に維持するために必要とされる電力が閾値を下回るように減少する時を検出することによって、ドライ吸煙を検出するように構成されてもよい。
【0050】
エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は固体構成要素と液体構成要素の両方を備えてもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体はエアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例はグリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0051】
エアロゾル発生システムは、マウスピース部分および本体部分を有するハウジングを備えてもよい。本体部分は、電源(例えば、再充電可能リチウムイオン電池)、コントローラ(例えば、マイクロコントローラ)を有する制御回路、およびヒーターを起動するためのユーザーインターフェース(例えば、吸煙検出装置または押しボタン)を備えてもよい。マウスピース部分は、液体貯蔵部分、例えば液体エアロゾル発生基体を包含するカートリッジを備えてもよい。カートリッジは、液体エアロゾル形成基体をヒーターに運ぶための毛細管材料を含んでもよい。カートリッジはまた、ヒーターを備えてもよい。
【0052】
制御回路は、一連の電圧パルスとして発熱体に電力を供給するように配設されてもよい。次に、発熱体に供給された電力は、電圧パルスの負荷サイクルを調整することによって調整されてもよい。負荷サイクルは、パルス幅、またはパルスの周波数、またはその両方を変化させることによって調整されてもよい。別の方法として、回路は連続的なDC信号として電力を発熱体に供給するように配設されてもよい。比例積分微分(PID)制御ループは、ヒーターの抵抗を目標抵抗に向かって駆動するために使用されてもよい。
【0053】
本発明の第三の態様によると、エアロゾル発生システム用のコントローラが提供されていて、コントローラは上述の方法のいずれかを実行するように構成されている。
【0054】
本発明の第四の態様によると、コンピュータプログラムが提供されていて、このプログラムはエアロゾル発生システム用のプログラム可能なコントローラで実行される時、上述の方法のいずれかをプログラム可能なコントローラに実行させる。
【0055】
一態様に関して説明された特徴は、本発明の他の態様にも等しく適用されてもよい。
【0056】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による方法によって得られたエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の別の実施形態による方法によって得られたエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態による方法によって得られたエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルの概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態による方法によって得られたエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルの概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の別の実施形態による方法によって得られたエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルの概略図である。
【
図7】
図7は、ドライ吸煙の状況を呈するエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルの概略図である。
【
図8】
図8は、別のドライ吸煙の状況を呈するエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルの概略図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すタイプのエアロゾル発生システムの温度制御回路の概略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1はエアロゾル発生システムの概略図である。システム100は、マウスピース部分103および本体部分105を有するハウジング101を備える。本体部分105において、電源107(例えば、再充電可能リチウムイオン電池など)と、コントローラ110(例えば、マイクロコントローラ)を有する制御回路109と、吸煙検出装置111とが提供されている。マウスピース部分103には、液体貯蔵部分113(例えば、液体エアロゾル発生基体115を包含するカートリッジ)と、毛細管材料で形成された芯117と、少なくとも一つの発熱体を備えるヒーター119とが提供されている。芯117の一方の端はカートリッジ113の中に延び、また芯117のもう一方の端はヒーター119によって包囲されている。ヒーター119は、接続121を介して吸煙検出装置111に接続されていて、これは次に、さらなる接続(図示せず)によって制御回路109に接続されている。ハウジング101はまた、吸煙検出装置111の領域の中の空気吸込み口123、マウスピース部分103から出る空気出口125、およびヒーター119を包囲するエアロゾル形成チャンバー127を含む。
【0059】
液体エアロゾル形成基体115は、芯117によって毛細管作用を介して、カートリッジ113からヒーター119によって包囲された芯の端に移動される、または運ばれる。使用時に、ユーザーは、マウスピース部分103を通して吸い込むか、またはマウスピース部分103を吸煙し、周囲空気が空気吸込み口123を通して引き出される。吸入または吸煙は、吸煙検出装置111によって検出または感知され、これがヒーター119を起動する。電池107はエネルギーをヒーター119に供給して、ヒーターによって包囲された芯117の端を加熱する。芯117のその端にある液体は、ヒーター119によって気化されて、過飽和ベイパーを作り出す。同時に、気化された液体は、毛細管作用によって芯117に沿って移動するさらなる液体で置き換えられる。作り出された過飽和ベイパーは、空気吸込み口123からの気流と混合され、かつ気流中で運ばれ、エアロゾル形成チャンバー127の中で凝縮して吸入可能なエアロゾルを形成し、このエアロゾルは出口125に向かって、かつユーザーの口の中に運ばれる。
【0060】
コントローラ110はプログラム可能であり、ヒーターの温度を調節するために、ヒーター119に供給される電力を制御するための埋め込まれたソフトウェアまたはファームウェアを有する。これは次に、ヒーターの温度プロファイルに影響を与え、これは生成されるエアロゾルの量に影響を与えることになる。コントローラ110は、一連の電圧のパルスを使用して電力を伝達するパルス幅変調(PWM)によって、ヒーター119に電力を供給する。ヒーターに供給される電力は、一定の周波数でのパルスの負荷サイクルを変化させることによって変化させることができる。負荷サイクルは、電力のスイッチンがオンにされる時間と、電力のスイッチがオフにされる時間との比である。言い換えれば、電圧パルスの幅と、電圧パルス間の時間との比である。例えば、5%の低負荷サイクルは、95%の負荷サイクルよりもはるかに少ない電力しか提供しない。
【0061】
図2は、抵抗R対時間tのグラフと、本発明の一実施形態による方法によって加熱される、エアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルとを示す。特に
図2は、3回の吸入すべてがハイブリッド調節、すなわち電力調節と抵抗調節の組み合わせによって制御される、ユーザーによる使用セッションの最初の3回の吸入または吸煙を示す。
【0062】
システムは、時間t0にて、例えばユーザーがシステムの電源をオンにすることによって、有効化される。ユーザーは、時間t1にて最初の吸入または吸煙を行い始め、これがヒーターを起動する。ヒーターは当初、電力調節(図中、PRによって示される)に基づく第一の制御工程またはモードによって制御され、ここで所定の負荷サイクルに対応する一定の所定の電力がヒーターに提供される。所定の電力は、ヒーターの温度を急速に上昇させるために、比較的に高い(例えば、80%~95%の負荷サイクルである)場合がある。所定の電力を提供はヒーターの温度の上昇を引き起こし、かつヒーターの抵抗は規則的な間隔で判定されて、ヒーターの温度の目安となる。所定の電力は、時間tL1にて所定の条件が検出されるまで、ヒーターに供給され、この時間の時点で、抵抗はロックまたは記録され、記録された抵抗に基づいて目標抵抗RT1が決定される。一般に、目標抵抗は、記録された抵抗と同一であるが、システムの要件に応じて目標抵抗が(例えば、記録された抵抗に応じて、または既知の誤差補正を含むために)記録された抵抗と異なることも可能である。この方法を使用して、目標抵抗は、ヒーターの抵抗またはシステムの特性のいかなるばらつきとも無関係に決定される。目標抵抗は、ヒーターが加熱されるべき目標温度に対応する。
【0063】
図2の実施例において、所定の条件は、抵抗の変化率が特定の閾値を下回って低下する点、すなわち温度プロファイルの勾配が所定の値に減少する点である。特に
図2において、所定の条件は、温度プロファイルの勾配がゼロに近づく点である。
【0064】
時間tL1にて、ヒーターの制御は、抵抗調節(図中でRRによって表される)に基づいて第二の制御工程またはモードに切り替わり、この工程またはモードにおいて、ヒーターに供給される電力は、ヒーターが目標抵抗RT1に対応する目標温度に向かって駆動されるように、ヒーターの抵抗を目標抵抗RT1に向かって駆動するように制御可能に適合されている。第二の制御工程またはモードは、PID制御を使用して抵抗を調節する。PID制御は、コントローラの中にプログラムされたソフトウェアの中に組み込まれている。抵抗を調節するために、ヒーターの抵抗が決定され、また決定された抵抗と目標抵抗RT1の間の誤差が計算される。次に、電力の負荷サイクルは、誤差を補正し、かつヒーターを目標抵抗に向かって駆動するために、PID制御を使用して調整される。抵抗は、負荷サイクルが制御される周波数と一致するように選ばれた周波数で決定され、必要に応じて100msごとに、またはより多い頻度で決定されてもよい。
【0065】
時間tL1での抵抗調節に基づく第二の制御工程またはモードへの切り替わりに続いて、抵抗は、ユーザーが時間t2にてユーザーの最初の吸入または吸煙を停止するまで、目標抵抗RT1にて実質的に絶えず維持される。
【0066】
図2の実施例において、上述のものと類似したハイブリッド調節が、その後の各吸入または吸煙において使用される。ユーザーは、時間t
3およびt
5にて、それぞれ2回目の吸入および3回目の吸入を開始し、対応する目標抵抗R
T2およびR
T3は、時間t
L2およびt
L3にて、それぞれ決定される。
図2の3回の吸入の各々は、それぞれ独自の目標抵抗性、すなわちそれぞれR
T1、R
T2、R
T3を有する。目標抵抗は実質的に類似しているが、各吸入におけるわずかに異なる条件を理由にわずかに異なり、これによって目標抵抗R
T1、R
T2、R
T3は各吸入のために最適化される。
【0067】
図3は、抵抗R対時間tのグラフと、本発明の別の実施形態による方法によって加熱される、エアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルとを示す。特に
図3は、ユーザーによる使用セッションの最初の3回の吸入または吸煙を示し、このセッションにおいて、最初の吸入のみがハイブリッド調節によって調節され、2回目の吸入およびその後の吸入は抵抗調節のみを使用して調節される。
【0068】
図3において、システムは、時間t
0にて有効化され、ユーザーは時間t
1にて最初の吸入または吸煙を行い始め、これがヒーターを起動する。
図3の最初の吸入は、
図2の吸入と同じ方法で調節される。最初の吸入中に、ヒーターは当初、電力調節に基づいて第一の制御工程またはモードによって制御される。時間t
L1での所定の条件の検出に伴い、抵抗が記録され、記録された抵抗に基づいて目標抵抗R
Tが決定される。この時点で、ヒーターの制御は、抵抗調節に基づいて第二の制御工程またはモードに切り替わり、これは吸入が時間t
2で終了するまで、残りの吸入のために使用される。
【0069】
図3の2回目の吸入および3回目の吸入は、それぞれ時間t
3およびt
5にて開始され、その時点でヒーターが再度起動されるが、吸入がそれぞれ時間t
4およびt
6で終了するまで、抵抗調節に基づいて第二の制御工程のみによって制御される。従って、2回目およびその後の吸入は、最初の吸入の目標抵抗R
Tに基づいて調節される。これは、すべての吸入にわたって一貫したエアロゾル発生を提供する。加えて、第二の制御工程またはモードは、一定の所定の電力を供給することに限定されず、ヒーターの温度をできるだけ迅速に目標温度にするために必要な場合、100%の負荷サイクルまで電力を供給することができるので、必要とされる場合にヒーターをより迅速に、目標抵抗R
Tに対応する目標温度にすることができる。
図3で分かる通り、2回目および3回目の吸入の温度プロファイルは、最初の吸入と比較して勾配がより急な勾配を有し、これは温度変化の速度がより速いことを示す。2回目および3回目の吸入を調節するために使用される第二の制御工程またはモードは、PID制御を使用して抵抗を調節し、これはコントローラの中にプログラムされたソフトウェアの中に組み込まれる。
【0070】
図4は、抵抗R対時間tのグラフと、本発明の別の実施形態による方法によって加熱される、エアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルとを示す。特に
図4は、ユーザーによる使用セッションの最初の5回の吸入または吸煙を示し、このセッションにおいて、最初の3回の吸入はハイブリッド調節によって調節され、4回目の吸入およびその後の吸入は抵抗調節のみを使用して調節される。
【0071】
図4において、システムは、時間t
0にて有効化され、ユーザーは時間t
1にて最初の吸入または吸煙を行い、その時点でヒーターが起動される。
図4の最初の吸入は、
図2の吸入と同じ方法で調節される。最初の吸入中に、ヒーターは当初、電力調節に基づく第一の制御工程またはモードによって制御され、ここで所定の負荷サイクルに対応する一定の所定の電力がヒーターに提供される。所定の電力は、時間t
L1にて所定の条件が検出されるまで、ヒーターに供給され、この時点で、抵抗R
1はロックまたは記録される。
図4の例における所定の条件は、温度プロファイルの勾配が再度ゼロに近づく点である。この時点にて目標抵抗は決定されない。その代わりに、方法はまず、目標抵抗を決定する前に、一つ以上のさらなる吸入または吸煙を監視する。
【0072】
図4の時間t
L1にて、ヒーターの制御は、抵抗調節に基づいて第二の制御工程またはモードに切り替わり、この工程またはモードにおいて、ヒーターに供給される電力は、記録された抵抗R
1に対応する温度に向かってヒーターが駆動されるように、記録された抵抗R
1に向かってヒーターの抵抗を駆動するように制御可能に適合されている。第二の制御工程またはモードは、抵抗を調節するためにコントローラの中にプログラムされたソフトウェアの中に組み込まれたPID制御を使用する。
【0073】
図4の時間t
L1での抵抗調節に基づく第二の制御工程またはモードへの切り替わりに続いて、抵抗は、ユーザーが時間t
2にてユーザーの最初の吸入または吸煙を停止するまで、記録された抵抗R
1にて実質的に絶えず維持される。
【0074】
図4の2回目および3回目の吸入は、最初の吸入と同じ方法で調節される。2回目および3回目の吸入は、それぞれ時間t
3およびt
5にて開始され、その時点でヒーターが再度起動される。ヒーターは当初、電力調節に基づく第一の制御工程またはモードによって制御され、時間t
L2およびt
L3での所定の条件の検出に伴い、それぞれ抵抗R
2およびR
3が記録される。次いでヒーターの制御は、抵抗調節に基づいて第二の制御工程またはモードに切り替わり、これは、2回目および3回目の吸入がそれぞれ時間t
4およびt
6で終了するまで、残りの吸入のために使用される。
【0075】
最初の3回の吸入からの三つの別個の記録された抵抗R
1、R
2、R
3は、三つの記録された抵抗R
1、R
2、R
3の平均に基づく目標抵抗R
Tを決定するために使用される。4回目および5回目の吸入は、
図3の2回目および3回目の吸入と同じ方法で調節される。
図4の4回目および5回目の吸入は、それぞれ時間t
7およびt
9にて開始され、その時点でヒーターが再度起動されるが、吸入がそれぞれ時間t
8およびt
10で終了するまで、抵抗調節に基づいて第二の制御工程のみによって制御される。4回目およびその後の吸入は、記録された抵抗R
1、R
2、R
3の平均に基づいて、目標抵抗R
Tを使用して調節される。これは、4回目およびその後の吸入のために一貫したエアロゾル発生を提供する。
【0076】
図5は、抵抗R対時間tのグラフと、本発明の別の実施形態による方法によって加熱される、エアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルとを示す。特に
図5は、ユーザーによる使用セッションの最初の7回の吸入または吸煙を示し、このセッションにおいて、最初の5回の吸入はハイブリッド調節によって調節され、6回目の吸入およびその後の吸入は抵抗調節のみを使用して調節される。この方法は、最初の数回の吸入での記録された抵抗が著しく変化する場合、すなわち抵抗の変動が、例えばシステムが熱的に安定化される前に、エアロゾル発生システムの当初の起動で生じる場合がある、所定のまたは許容可能な範囲外である場合に使用されてもよい。
【0077】
図5において、システムは、時間t
0にて有効化され、ユーザーは時間t
1、t
3、t
5にて最初の3回の吸入または吸煙を行い、その時点でヒーターが起動される。
図5の最初の3回の吸入は、
図4での最初の3回の吸入と同じ方法で調節される。最初の3回の吸入中に、ヒーターは当初、電力調節に基づいて第一の制御工程またはモードによって制御される。各吸入について、それぞれ時間t
L1、t
L2、t
L3での各吸入について所定の条件の検出に伴い、別個の抵抗、すなわちR
1、R
2、R
3がそれぞれ記録される。この時点で、ヒーターの制御は、三つのそれぞれの記録された抵抗R
1、R
2、R
3に基づく抵抗調節を使用して第二の制御工程またはモードに切り替わり、この工程またはモードは、それぞれ吸入が時間t
2、t
4、t
6で終了するまで、吸入の各々の残りのために使用される。
【0078】
目標抵抗を決定するための条件は、最後のn回の吸入または吸煙について記録された抵抗が、最大の所定の範囲ΔRmaxの範囲内に収まることであってもよい。その場合、目標抵抗は、最後に記録された抵抗、または最後のn回の吸入の平均のいずれかに基づいてもよい。
【0079】
図5において、nは3に設定されていて、また抵抗R
1、R
2、R
3の値は、最大の所定の範囲ΔR
max外になる。言い換えれば、R
1、R
2、R
3の最大値からR
1、R
2、R
3の最小値を引いた値が、所定の範囲の最大△R
maxよりも大きい、すなわち最大{R
1、R
2、R
3}-最小{R
1、R
2、R
3}>△R
maxである。その結果、方法は、目標抵抗を決定するのではなく、ユーザーによって行われたさらなる吸入を監視する。
【0080】
4回目の吸入は、時間t
7にて行われ、また最初の3回の吸入と同じ方法で、すなわちハイブリッド調節を使用して調節される。第四の抵抗R
4は、時間t
L4にて所定の条件が検出されると記録され、4回目の吸入は時間t
8で終了する。次に、この方法は、最後の3回の吸入(すなわち、R
2、R
3、R
4)について記録された抵抗を調べる。しかしながら、
図5において、これらの三つの抵抗も、最大の所定の範囲△R
max外になる。従って、方法は、目標抵抗を決定するのではなく、ユーザーによって行われたさらなる吸入を監視する。
【0081】
5回目の吸入は、時間t
9にて行われ、また最初の4回の吸入と同じ方法で、すなわちハイブリッド調節を使用して調節される。第五の抵抗R
5は、時間t
L5にて所定の条件が検出されると記録され、4回目の吸入は時間t
10で終了する。次に、この方法は、最後の3回の吸入(すなわち、R
3、R
4、R
5)について記録された抵抗を調べる。
図5において、これらの三つの抵抗は、最大の所定の範囲△R
maxの範囲内に収まり、従って目標抵抗R
Tを決定することができる。目標抵抗R
Tは、最後に記録された抵抗、すなわちR
5に基づくことができるか、または最後の3回の吸入、すなわちR
3、R
4、R
5の記録された抵抗の平均に基づくことができる。
図5において、目標抵抗R
Tは、最後の3回の吸入の記録された抵抗、すなわちR
3、R
4、R
5の平均に基づく。
【0082】
6回目および7回目の吸入は、
図3の2回目および3回目の吸入と同じ方法で調節される。
図5の6回目の吸入および7回目の吸入は、それぞれ時間t
11およびt
13にて開始され、その時点でヒーターが再度起動されるが、吸入がそれぞれ時間t
12およびt
14で終了するまで、抵抗調節に基づいて第二の制御工程のみによって制御される。6回目およびその後の吸入は、記録された抵抗R
3、R
4、R
5の平均に基づいて、目標抵抗R
Tを使用して調節される。これは、6回目およびその後の吸入のために一貫したエアロゾル発生を提供する。
【0083】
図6は、抵抗R対時間tのグラフと、本発明の別の実施形態による方法によって加熱される、エアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルとを示す。特に
図6は、ユーザーによる使用セッションの最初の5回の吸入または吸煙を示し、このセッションにおいて、最初の3回の吸入は電力調節のみによって調節され、6回目の吸入およびその後の吸入は抵抗調節のみを使用して調節される。
【0084】
図6の最初の3回の吸入は、電力調節のみによって調節されるという点で、図に示されるその他の例の当初の吸入と異なる。
図6において、システムは、時間t
0にて有効化され、ユーザーは時間t
1にて最初の吸入または吸煙を行い、その時点でヒーターが起動される。吸入中に、ヒーターは、電力調節のみに基づく第一の制御工程またはモードによって制御され、ここで時間t
2で吸入が終了するまで、所定の負荷サイクルに対応する一定の所定の電力がヒーターに提供される。時間t
L1での所定の条件の検出に伴い、抵抗R
1が記録される。
図6の例における所定の条件は、温度プロファイルの勾配がゼロに近づく点である。
【0085】
上述の通り、電力調節システムは概して、ヒーターの温度を目標温度に向かってできるだけ迅速に上昇させるために、比較的に高い所定の電力(例えば、80%~95%の負荷サイクル)を使用する。目標温度に到達すると、ヒーターを目標温度に維持するためには概して、加熱するためよりも少ない電力しか使わないので、電力を徐々に低減することができる。しかしながら、最初の吸入は吸入中に、すなわち所定の条件の検出に伴い、第二の制御工程またはモードに切り替わらないため、抵抗は記録された抵抗で調節されず、従ってヒーターの温度は、より低い速度ではあるが、記録された抵抗を上回って上昇し続ける。
【0086】
記録された抵抗R
1に基づく目標抵抗は、所定の条件、すなわち時間t
L1での検出に伴い決定される可能性がある。例えば、目標温度は、R
1が所定の範囲内にある場合、決定されることが可能である。しかしながら、
図6に示す方法は代替的なアプローチを取り、最初の数回の吸入における抵抗変動を理由に目標抵抗を決定する前に、電力調節を単独で使用して、さらに2回の吸入または吸煙を最初に監視する。
【0087】
図6の2回目および3回目の吸入は、最初の吸入と同じ方法で調節される。2回目および3回目の吸入は、それぞれ時間t
3およびt
5にて開始され、その時点でヒーターが再度起動される。ヒーターは、吸入がそれぞれ時間t
4およびt
6で終了するまで、電力調節のみに基づいて、第一の制御工程またはモードのみによって制御される。時間t
L2およびt
L3での所定の条件の検出に伴い、抵抗R
2およびR
3がそれぞれ記録される。
【0088】
最初の3回の吸入からの三つの記録された抵抗
1、R
2、R
3は、三つの記録された抵抗R
1、R
2、R
3の平均に基づく目標抵抗R
Tを決定するために使用される。4回目および5回目の吸入は、
図3の2回目および3回目の吸入と同じ方法で、すなわち抵抗調節のみを使用して調節される。
図6の4回目および5回目の吸入は、それぞれ時間t
7およびt
9にて開始され、その時点でヒーターが再度起動されるが、吸入がそれぞれ時間t
8およびt
10で終了するまで、抵抗調節に基づいて第二の制御工程のみによって制御される。4回目およびその後の吸入は、記録された抵抗R
1、R
2、R
3の平均に基づいて、目標抵抗R
Tを使用して調節される。これは、4回目およびその後の吸入のために一貫したエアロゾル発生を提供する。
【0089】
別の方法として、三つの記録された抵抗R
1、R
2、R
3が最大の所定の範囲内ではない場合、システムは、抵抗が安定化し、かつ所定の範囲内になるまで待ち、その後、
図5に記述の方法と同じ方法で記録された抵抗の平均に基づいて目標抵抗を計算することができる。
【0090】
図7は、抵抗R対時間tのグラフと、ヒーターがドライ吸煙の状況を呈する本発明の別の実施形態によるエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルとを示す。特に
図7は、すべての吸入がハイブリッド調節、すなわち電力調節と抵抗調節と組み合わせによって制御される、ユーザーによる使用セッションの最初の3回の吸入または吸煙を示す。上述の通り、「ドライ吸煙」または「乾燥加熱」の状況は、液体エアロゾル形成基体の存在が不十分な状態でヒーターが加熱される時に生じる。これは過熱と、潜在的に液体エアロゾル形成基体の熱分解とをもたらす可能性があり、これはホルムアルデヒドなどの望ましくない副産物を生成する可能性がある。
【0091】
図7において、システムは、時間t
0にて有効化され、ユーザーは時間t
1にて最初の吸入または吸煙を行い始め、これがヒーターを起動する。最初の吸入中に、ヒーターにて液体が存在し、これは当初、電力調節に基づいて第一の制御工程またはモードによって制御される。時間t
L1での所定の条件の検出に伴い、抵抗R
1が記録され、記録された抵抗R
1に基づいて目標抵抗が決定されてもよい。この時点で、ヒーターの制御は、抵抗調節に基づいて第二の制御工程またはモードに切り替わり、これは吸入が時間t
2で終了するまで、残りの吸入のために使用される。
【0092】
図7の2回目および3回目の吸入は、最初の吸入と同じ方法で調節され、時間t
3およびt
5にて、それぞれ開始される。しかしながら、2回目および3回目の吸入のために使用可能な液体エアロゾル発生基体が不十分であり、そのためドライ吸煙が生じる。所定の条件の検出に伴い、抵抗R
2は、2回目の吸入中に時間t
L2にて記録され、抵抗R
3は、3回目の吸入中に時間t
L3にて記録される。抵抗R
2およびR
3は、ドライ吸煙に起因して、抵抗R
1よりも著しく高い。この理由は、電力調節システムにおいて、一定の所定の電力がヒーターに供給され、ヒーターに存在する液体エアロゾル形成基体が不十分である場合、例えば液体エアロゾル形成基体を貯蔵するカートリッジが空である場合、液体の気化において電力がより少ししか消費されない、または電力が消費されないため、達成される最終的な温度の、これ故に記録された抵抗の著しい増加があるからである。さらに、温度は、液体が存在する時と比較して、より速い速度で上昇するが、これは2回目および3回目の吸入での温度上昇のより急激な速度から明らかである。
【0093】
システムは、液体が不十分であることに起因する、記録された抵抗におけるこの著しい増急激な加を検出するように構成されている。特にシステムは、記録された抵抗が閾値を上回って増加する時を検出するように構成されている。検出に伴い、システムは、さらなるドライ吸煙を防止するためにヒーターを分離することができ、これによってユーザーが望ましくない副産物に曝露される可能性を低減する。ドライ吸煙を検出し、ヒーターを分離するための命令を、コントローラの中にプログラムされたソフトウェアに実装することができる。
【0094】
図8は、抵抗R対時間tのグラフと、ヒーターが別のドライ吸煙の状況を呈する本発明の別の実施形態によるエアロゾル発生システムのヒーターの温度プロファイルとを示す。特に
図8は、最初の吸入がハイブリッド調節によって調節され、その後の吸入が抵抗調節によって調節される、ユーザーによる使用セッションの最初の3回の吸入または吸煙を示す。
【0095】
図8において、システムは、時間t
0にて有効化され、ユーザーは時間t
1にて最初の吸入または吸煙を行い始め、これがヒーターを起動する。
図8の最初の吸入は、
図7での最初の吸入と同じ方法で調節される。最初の吸入中に、ヒーターにて液体が存在し、これは当初、電力調節に基づいて第一の制御工程またはモードによって制御される。時間t
L1での所定の条件の検出に伴い、抵抗が記録され、記録された抵抗に基づいて目標抵抗R
Tが決定される。この時点で、ヒーターの制御は、抵抗調節に基づいて第二の制御工程またはモードに切り替わり、これは吸入が時間t
2で終了するまで、残りの吸入のために使用される。
【0096】
2回目および3回目の吸入では、ヒーターにて使用可能な液体エアロゾル発生基体は不十分であり、そのためドライ吸煙が生じる。
図8の2回目の吸入および3回目の吸入は、それぞれ時間t
3およびt
5にて開始され、その時点でヒーターが再度起動されるが、抵抗調節に基づいて第二の制御工程のみによって制御され、ここで吸入がそれぞれ時間t
4およびt
6で終了するまで、抵抗が第一の吸入の目標抵抗R
Tに調節される。システムは、2回目および3回目の吸入における電力を一定の抵抗を維持するように適合するので、抵抗が一定に保持されているため、抵抗の変化を使用してドライ吸煙の状況を検出することはできない。その代わりに、目標温度を維持するために、またこれ故に目標抵抗を維持するために必要とされる電力を監視する必要がある。ヒーターにて液体エアロゾル発生基体が不十分な時、液体の気化において電力が消費されないため、温度を一定に保つために必要とされる電力は、液体が存在する時よりも著しく低くなる。
【0097】
システムは、ヒーターを目標抵抗に維持するために必要とされる電力の著しい低減を検出するように構成されている。特にシステムは、ヒーターを目標抵抗に維持するために必要とされる電力が閾値を下回って減少する時を検出するように構成されている。検出に伴い、システムは、さらなるドライ吸煙を防止するためにヒーターを分離することができ、これによってユーザーが望ましくない副産物に曝露される可能性を低減する。ドライ吸煙を検出し、ヒーターを分離するための命令を、コントローラの中にプログラムされたソフトウェアに実装することができる。
【0098】
図9は、本発明の一実施形態に記載の温度調節を提供するために使用される制御回路200を図示する。
【0099】
回路200は、接続222を介して電源に接続されている、抵抗発熱体を備えるヒーター214を備える。電源は電圧V2を供給する。既知の抵抗rを有する追加的な抵抗器224が、ヒーター214と直列に挿入されている。ヒーター214と追加的な抵抗器224の間の回路中の点にて、すなわちヒーター214の接地側にて、電圧V1がある。電圧V1は接地と電圧V2の間の中間である。温度調節を提供するためのソフトウェアは、マイクロコントローラ218の中にプログラムされたソフトウェアの中に組み込まれていて、これはマイクロコントローラ218の出力230を介して、パルス幅変調電圧信号をトランジスタ226に伝達することができ、このトランジスタはパルス幅変調電圧信号に従ってヒーター214を起動するための単純なスイッチとして働く。
【0100】
ヒーター214の温度の表示(この例において、ヒーター214の電気抵抗)は、ヒーター214の電気抵抗の測定によって決定される。温度の表示は、ヒーターを目標抵抗の近くに維持するために、ヒーター214に供給されるパルス幅変調電圧の負荷サイクルを調整するために使用される。温度の表示は、制御プロセスのために必要とされるタイミングと一致するように選ばれた頻度で決定され、必要に応じて100msごとに、またはより多い頻度で決定されてもよい。
【0101】
マイクロコントローラ218でのアナログ入力221は、ヒーター214の電力供給源側の電圧V2を監視するために使用される。マイクロコントローラでのアナログ入力223は、ヒーター214の接地側の電圧V1を監視するために使用される。
【0102】
特定の温度で測定されるヒーター抵抗は、R
ヒーターである。マイクロプロセッサ218がヒーター214の抵抗R
ヒーターを測定するために、ヒーター214を通る電流と、ヒーター214の両端にかかる電圧との両方を決定することができる。次に、オームの法則を利用して抵抗を決定することができる。
【0103】
図9において、ヒーターの両端にかかる電圧はV2~V1であり、またヒーターを流れる電流はIである。それ故に、
【0104】
抵抗rが既知である追加的な抵抗器224を使用して、再度上記の(1)を使用して、電流Iを決定する。抵抗器224を流れる電流もまたIであり、抵抗器224の両端にかかる電圧はV1である。それ故に、
【0105】
【0106】
それ故に、エアロゾル発生システムが使用されているので、マイクロプロセッサ218は、V2およびV1を測定することができ、またrの値を知っていることから、特定の温度でのヒーターの抵抗Rヒーターを決定することができる。
【0107】
ヒーターの抵抗R
ヒーターは温度と相関する。線形近似を使用して、以下の式に従って、測定した抵抗R
ヒーターに対応する温度Tを決定することができる。
式中、Aはヒーター材料の熱伝導抵抗係数であり、またR
0は周囲温度T
0でのヒーターの抵抗である。
【0108】
制御回路200の利点は、温度センサーを必要としないことである。こうしたセンサーは、かさばり、かつ高価である可能性がある。また、マイクロコントローラは、温度の代わりに抵抗値を直接使用することができる。ヒーター抵抗Rヒーターが望ましい範囲内に保持されている場合、ヒーター214の温度も望ましい範囲内に保持されることになる。その結果、ヒーター214の実際の温度は、制御プロセス中に計算される必要がなく、これは演算の効率を改善する。しかしながら、所望する場合、別個の温度センサーを使用し、かつそれをマイクロコントローラに接続して、必要な温度情報を提供することが可能である。
【0109】
マイクロコントローラ218の中にプログラムされたソフトウェアは、所定の条件を監視し、所定の条件が検出されると、ヒーターの抵抗を記録するように構成されている。所定の条件および抵抗を、マイクロコントローラ218のメモリーに保存することができる。マイクロコントローラ218の中にプログラムされたソフトウェアは、記録された抵抗に基づいて目標抵抗を決定するように構成されている。
【0110】
マイクロコントローラ218はまた、目標抵抗に対応する目標温度に向かってヒーターが駆動されるように、目標抵抗に向かってヒーターの抵抗を駆動するために、ヒーターに供給される電力を制御するためにパルス幅変調電圧信号の負荷サイクルを適合するように構成されている。抵抗を調節するために、ヒーター抵抗Rヒーターが決定され、決定されたヒーター抵抗Rヒーターと目標抵抗との間の誤差が計算される。次に、電力の負荷サイクルは、比例積分微分(PID)制御を使用して調整されて、誤差を補正し、ヒーターを目標抵抗に向かって駆動する。PID制御は、コントローラ218の中にプログラムされたソフトウェアの中に組み込まれる。
【0111】
ヒーター214に供給される電力Pは、以下の式によって決定することができる。
式中、Vはヒーターの両端にかかる電圧、すなわちV2~V1であり、Iは上記の(3)を使用して決定することができるヒーターを通る電流である。決定された電力は、例えば
図8に図示したドライ吸煙の状況を検出するために使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターを備えるエアロゾル発生システムにおける加熱を制御する方法であって、
所定の電力を前記ヒーターに供給し、かつ前記ヒーターの前記抵抗を監視する工程であって、監視された抵抗が前記ヒーターの温度を示す、工程と、
所定の条件を監視し、かつ前記所定の条件の検出に伴い、前記ヒーターの前記抵抗を記録する工程と、
前記記録された抵抗に基づいて、前記ヒーターの目標温度に対応する目標抵抗を決定する工程と、
前記記録された抵抗が閾値を上回って増加するとき、又は、前記目標抵抗に前記ヒーターを維持するのに必要な電力が閾値を下回るように減少するときに、ドライ吸煙を検出する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、さらなるドライ吸煙を防止するためにドライ吸煙を検出したときに前記ヒーターを分離する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドライ吸煙を検出することは、さらに、抵抗の変化率が閾値を超えて増加するときを決定することを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
所定の電力を前記ヒーターに供給し、かつ前記ヒーターの前記抵抗を監視する工程は、第一の制御工程を含み、前記方法は、前記ヒーターに供給される前記電力が、前記目標抵抗に向かって前記ヒーターの前記抵抗を駆動するように制御可能に適合されていて、これによって前記ヒーターが前記目標抵抗に対応する目標温度に向かって駆動される、第二の制御工程を更に含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記所定の条件の検出に伴い、前記第一の制御工程から前記第二の制御工程に切り替わる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の条件が、
●ユーザー吸入の開始からの経過時間と、
●所定の閾値未満である、抵抗の導関数と、
●ゼロに等しい、抵抗の導関数と、のうちの一つ以上から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第一の制御工程および前記第二の制御工程が、ユーザー吸入中に、および随意に各ユーザー吸入中に実施される、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第一の制御工程および前記第二の制御工程が、最初のユーザー吸入中に実施され、かつ2回目のユーザー吸入およびその後のユーザー吸入が前記第二の制御工程のみを使用する、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記目標抵抗が、複数の当初のユーザー吸入の後に決定される、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第一の制御工程と、所定の条件を監視および検出し、かつ前記抵抗を記録する工程とのみが、複数の当初のユーザー吸入中に実施される、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記目標抵抗が、前記複数の当初のユーザー吸入からの前記記録された抵抗の平均に基づいて決定される、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の当初のユーザー吸入の後のユーザー吸入が、前記第二の制御工程のみを使用し、かつ前記目標抵抗が、前記複数の当初のユーザー吸入からの前記記録された抵抗の平均に基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
エアロゾル発生システムであって、
ヒーターと、
電源と、
コントローラと、を備え、前記コントローラが、請求項1から12のいずれかに記載の方法の工程を実行するように構成された、エアロゾル発生システム。
【請求項14】
前記ヒーターが、流体透過性発熱体を含む、請求項13に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項15】
前記流体透過性発熱体が、メッシュを形成する導電性フィラメントを含む、請求項14に記載のエアロゾル発生システム。