(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091411
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138941
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】2219567.1
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】インテ カズ サミラ
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA20
5F004BB22
5F004CA02
5F004CA03
5F004CA06
5F004DA04
5F004DA11
5F004DA23
5F004DB12
(57)【要約】
【課題】フッティングの問題を低減する。
【解決手段】スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)から選択された添加元素入りの添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする際に、基板上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜を有しその上に配置されたマスクにより少なくとも1個のトレンチが画定されるワークピースをプラズマチャンバ内の基板支持器上に置き、BCl
3ガスを導入し、Cl
2ガスを導入し、不活性希釈ガスを導入し、チャンバ内にプラズマを確立してトレンチ内露出添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングし、BCl
3及びCl
2合計流量に対する不活性希釈ガス流量の比を0.45:1~0.75:1の範囲内、Cl
2流量に対するBCl
3流量の比を0.75:1~1.25:1の範囲内とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法であり、その添加物含有窒化アルミニウム膜が、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有するものである方法であって、
プラズマチャンバ内の基板支持器上にワークピースを置くステップであり、そのワークピースが、その上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜を有する基板、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるものであるステップと、
BCl3ガスを前記チャンバ内へとsccm単位のあるBCl3流量で以て導入するステップと、
Cl2ガスを前記チャンバ内へとsccm単位のあるCl2流量で以て導入するステップと、
不活性希釈ガスを前記チャンバ内へとsccm単位のある不活性希釈ガス流量で以て導入するステップと、
前記チャンバ内にプラズマを確立し、前記トレンチ内に露出している前記添加物含有窒化アルミニウム膜をそれによりプラズマエッチングするステップと、
を有し、前記BCl3流量及び前記Cl2流量の合計に対する前記不活性希釈ガス流量の比を0.45:1~0.75:1の範囲内とし、前記Cl2流量に対する前記BCl3流量の比を0.75:1~1.25:1の範囲内とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記BCl3流量及び前記Cl2流量の合計に対する前記不活性希釈ガス流量の比を0.48:1~0.6:1の範囲内とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記Cl2流量に対する前記BCl3流量の比を0.9:1~1.1:1の範囲内とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のうち何れか一項に記載の方法であって、前記BCl3流量及び前記Cl2流量それぞれを20~30sccmの範囲内とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れか一項に記載の方法であって、前記不活性希釈ガス流量を20~30sccmの範囲内とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一項に記載の方法であって、前記不活性希釈ガスをアルゴンとする方法。
【請求項7】
請求項1~6のうち何れか一項に記載の方法であって、前記トレンチ内に露出している前記添加物含有窒化アルミニウム膜の大部分をエッチ除去する第1の主たるプラズマエッチング工程として実行され、そのトレンチ内に露出している残りの添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチ除去する第2プラズマエッチング工程がそれに後続する方法。
【請求項8】
添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法であり、その添加物含有窒化アルミニウム膜が、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有するものである方法であって、
プラズマチャンバ内の基板支持器上にワークピースを置くステップであり、そのワークピースが、その上に配置された金属膜を有する基板、その金属膜上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるものであるステップと、
BCl3ガス、Cl2ガス及び不活性希釈ガスを前記チャンバ内に導入してそのチャンバ内にプラズマを確立し、前記トレンチ内に露出している前記添加物含有窒化アルミニウム膜の大部分をそれによりプラズマエッチングする、第1の主たるプラズマエッチング工程を実行するステップと、
BCl3ガス及び不活性希釈ガスを前記チャンバ内に導入するがCl2ガスはそのチャンバ内に導入せずにそのチャンバ内にプラズマを確立し、前記トレンチ内に露出している残りの添加物含有窒化アルミニウム膜をそれによりエッチ除去することで前記金属膜を露わにする、第2プラズマエッチング工程を実行するステップと、
を有する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記第2プラズマエッチング工程実行ステップにて、前記BCl3ガスを、50~100sccmの範囲内のBCl3流量で以て前記チャンバ内に導入する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記第2プラズマエッチング工程実行ステップにて、前記BCl3ガスを、75~95sccmの範囲内のBCl3流量で以て前記チャンバ内に導入する方法。
【請求項11】
請求項8~9のうち何れか一項に記載の方法であって、前記第2プラズマエッチング工程にて、前記不活性希釈ガスを、10~20sccmの範囲内の不活性希釈ガス流量で以て前記チャンバ内に導入する方法。
【請求項12】
請求項8~11のうち何れか一項に記載の方法であって、前記第2プラズマエッチング工程にて、500~700Wの範囲内の電力を有するRFバイアス信号を前記基板支持器に印加する方法。
【請求項13】
請求項8~12のうち何れか一項に記載の方法であって、前記不活性希釈ガスをアルゴンとする方法。
【請求項14】
請求項8~13のうち何れか一項に記載の方法であって、前記金属膜がモリブデン膜である方法。
【請求項15】
請求項1~14のうち何れか一項に記載の方法であって、前記マスクがフォトレジストマスクである方法。
【請求項16】
請求項1~15のうち何れか一項に記載の方法であって、前記プラズマが誘導結合プラズマ(ICP)である方法。
【請求項17】
請求項1~16のうち何れか一項に記載の方法であって、基板が半導体基板、オプション的にはシリコン基板である方法。
【請求項18】
請求項1~17のうち何れか一項に記載の方法であって、前記添加物含有窒化アルミニウム膜が、式AlxScyN、但しx+y=1、により定義される窒化アルミニウムスカンジウム膜であり、そのスカンジウム含有量yが0.35以上、オプション的には約0.4である方法。
【請求項19】
スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有する添加物含有窒化アルミニウム膜を、マスクを通じてプラズマエッチングする装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持器と、
BCl3ガスをsccm単位のあるBCl3流量で、Cl2ガスをsccm単位のあるCl2流量で、且つ不活性希釈ガスをsccm単位のある不活性希釈ガス流量で、前記チャンバ内に導入するガス配給システムと、
その上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜を有する基板、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるワークピースをエッチングするため、前記チャンバ内のプラズマを維持するプラズマ生成装置と、
プラズマエッチングが実行され、前記トレンチに露出している前記添加物含有窒化アルミニウム膜がエッチ除去されるように、本装置を制御するよう、構成されているコントローラと、
を備え、前記コントローラが、前記ガス配給システムを制御することで、前記BCl3流量及び前記Cl2流量の合計に対する前記不活性希釈ガス流量の比を0.45:1~0.75:1の範囲内、前記Cl2流量に対する前記BCl3流量の比を0.75:1~1.25:1の範囲内に、保たせる装置。
【請求項20】
スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有する添加物含有窒化アルミニウム膜を、マスクを通じてプラズマエッチングする装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された基板支持器と、
BCl3ガス、Cl2ガス及び不活性希釈ガスを前記チャンバ内に導入するガス配給システムと、
その上に配置された金属膜を有する基板、その金属膜上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるワークピースをエッチングするため、前記チャンバ内のプラズマを維持するプラズマ生成装置と、
BCl3ガス、Cl2ガス及び不活性希釈ガスを前記チャンバ内に導入してそのチャンバ内にプラズマを確立し、前記トレンチ内に露出している前記添加物含有窒化アルミニウム膜の大部分をそれによりエッチ除去する、第1の主たるプラズマエッチング工程と、BCl3ガス及び不活性希釈ガスを前記チャンバ内に導入するがCl2ガスはそのチャンバ内に導入せずにそのチャンバ内にプラズマを確立し、前記トレンチ内に露出している残りの添加物含有窒化アルミニウム膜をそれによりエッチ除去することで前記金属膜を露わにする、第2プラズマエッチング工程と、が実行されるように、本装置を制御するよう、構成されているコントローラと、
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマエッチング方法に関し、とりわけスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有する添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法に関する。本発明は、その種の添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする関連装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム(AlN)や窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)による圧電デバイスは広範なRFテクノロジ、例えばバルク弾性波(BAW)デバイス、圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)、ラム波輪郭モード共振器(CMR)、マイクロフォン及びセンサにて広く用いられている。携帯電話には、通常はAlNやAlScNのBAWデバイスが多数組み込まれており、より高い動作周波数の生成のため、より薄いBAWデバイスの使用が求められている。薄手のデバイスでの圧電性能改善は、公差がよりタイトになるし回路基板上へのそれらデバイスの集積がより複雑になるため、大変な難題である。Scの添加により、既知の通りBAWデバイスの圧電特性が改善される。しかしながら、AlScNのエッチングに関わる多数の問題があり、それらはスカンジウム含有量が多いとひときわ厄介になる。
【0003】
標準的な塩素(Cl2)/アルゴン(Ar)ベース化学反応を用いているときには、ドープドAlN内のSc百分率が高まるにつれ、通常はエッチング速度が低下する。この低下の結果、マスク(例えばフォトレジスト又はSiO2マスク)に対するAlScNの選択比が低下し、それにより限界寸法(CD)が大きくなる結果、AlScNトレンチ内の側壁角が浅くなる。一般的な側壁プロファイル制御方法には、プリエッチマスクの勾配を調整する、プラテンバイアス、エッチャントガス流又はプロセス圧を変える、といったものがある。これらの方法は、一般に、Sc含有量が少なめなAlScNで効果的であるが、高めなSc百分率では、エッチングがますます物理的になるため、それらの方法の全体的有効性が低下する。AlYN膜やAlErN膜でも類似した現象が観測されている。
【0004】
AlScNエッチング速度の低下により金属下地層に対する選択比も低下し、それが下地層損失の増大につながるので、ある種のデバイス例えばBAWフィルタではその性能が損なわれかねない。BAWデバイスに対する下部電気接触部(コンタクト)は、通常はモリブデン(Mo)、タングステン(W)又はプラチナ(Pt)であるので、AlScNのエッチング速度が低下したせいで過剰量の金属が除去された場合、その接触部の電気抵抗が高まりデバイス性能が低下する結果となる。AlScNエッチング速度を高めるための典型的な変更、例えばプラテンバイアスの上昇やCl2流の増大は、最終的に、側壁角や下地層選択比にはほとんど又は全く影響を及ぼさないであろうし、場合によってはその問題を悪化させることさえありうる。
【0005】
AlScNエッチングプロセスは、通常は2個のエッチング工程を有している。第1の工程が主たるバルクエッチングプロセスであり、エッチング速度が高く、マスク素材に対する選択比が良好で、側壁プロファイルが急峻で、フッティングが最小になるものである。通常は、この種エッチングにより素材のうち80~85%がエッチ除去される。第2の工程は軟着エッチング工程であり、下地電極に対する選択比が良好であることが求められる。これは、一般的に低エッチング速度プロセスである。このプロセスでは、通常は素材のうち15~20%しかエッチ除去されないので、エッチング速度及びエッチングプロファイルを犠牲にすれば良好な選択比を得ることができる。
【0006】
疑義払拭のために言うと、フッティングとは、エッチ作成フィーチャの基部での、理想的な平坦底面からの不要なずれのことである。これは、通常は、エッチ作成フィーチャのSEM断面を用い計測される。フッティングは、そのエッチ作成フィーチャの基部でのマスク付近領域・マスク離隔領域間エッチング速度差により引き起こされる。
図2には、フッティングを伴うエッチ作成フィーチャの作成と、伴わないそれとが示されている。より具体的には、
図2(a)に示されているワークピースはエッチング前のものである。このワークピースは、その上にAlScN層201が堆積されているシリコンウェハ200を備えている。それを通じそのAlScN層をエッチングできる開口203が残るよう、AlScN層201上にマスク202が形成されている。
図2(b)に示されているワークピースはAlScN層201をエッチングした後のものであり、作成されたトレンチ204が、フッティングがない平底な基部を有している。
図2(c)に示されているワークピースはAlScN層201をエッチングした後のものであり、作成されたトレンチ205に、凹状基部プロファイル形態のフッティングが現れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-100104号公報
【特許文献2】特開2021-090047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、その実施形態のうち少なくとも幾つかにて、上述の諸問題のうち少なくとも幾つかに対処することを図っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法であり、その添加物含有窒化アルミニウム膜が、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有するものである方法であって、
プラズマチャンバ内の基板支持器上にワークピースを置くステップであり、そのワークピースが、その上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜を有する基板、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるものであるステップと、
BCl3ガスをそのチャンバ内へとsccm(標準平方センチメートル毎分)単位のあるBCl3流量で以て導入するステップと、
Cl2ガスをそのチャンバ内へとsccm単位のあるCl2流量で以て導入するステップと、
不活性希釈ガスをそのチャンバ内へとsccm単位のある不活性希釈ガス流量で以て導入するステップと、
チャンバ内にプラズマを確立し、そのトレンチ内に露出している添加物含有窒化アルミニウム膜をそれによりプラズマエッチングするステップと、
を有し、BCl3流量及びCl2流量の合計に対する不活性希釈ガス流量の比を0.45:1~0.75:1の範囲内とし、Cl2流量に対するBCl3流量の比を0.75:1~1.25:1の範囲内とするものが、提供される。
こうすることで、フッティングの問題を低減することができる。
【0010】
BCl3流量及びCl2流量の合計に対する不活性希釈ガス流量の比を0.48:1~0.6:1の範囲内とすることもできる。
【0011】
Cl2流量に対するBCl3流量の比を0.9:1~1.1:1の範囲内、オプション的には0.95:1~1.05:1の範囲内、オプション的には約1.0:1とすることもできる。
【0012】
BCl3流量及びCl2流量それぞれを20~30sccmの範囲内、オプション的には約25sccmとすることもできる。
【0013】
不活性希釈ガス流量を20~30sccmの範囲内、オプション的には約25sccmとすることもできる。
【0014】
プラズマエッチングを、5mTorr以下のチャンバ内ガス圧で以て実行することもできる。
【0015】
750~1500Wの範囲内の電力を用い、そのチャンバ内に誘導結合プラズマ(ICP)を確立することもできる。
【0016】
チャンバ内プラズマ確立ステップにて、1000~1500Wの範囲内の電力を有するRFバイアス信号を基板支持器に印加することもできる。
【0017】
本発明の第1態様の方法を、そのトレンチ内に露出している添加物含有窒化アルミニウム膜の大部分をエッチ除去する第1の主たるプラズマエッチング工程として実行し、そのトレンチ内に露出している残りの添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチ除去する第2プラズマエッチング工程をそれに後続させることもできる。本発明の第2態様は、本発明の第1態様と併用しうる第2プラズマエッチング工程を述べたものである。原理的に、本発明の第1態様にてその種の第2プラズマエッチング工程を実行する必要はない。
【0018】
本発明の第2態様によれば、添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法であり、その添加物含有窒化アルミニウム膜が、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有するものである方法であって、
プラズマチャンバ内の基板支持器上にワークピースを置くステップであり、そのワークピースが、その上に配置された金属膜を有する基板、その金属膜上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるものであるステップと、
BCl3ガス、Cl2ガス及び不活性希釈ガスをそのチャンバ内に導入してそのチャンバ内にプラズマを確立し、そのトレンチ内に露出している添加物含有窒化アルミニウム膜の大部分をそれによりプラズマエッチングする、第1の主たるプラズマエッチング工程を実行するステップと、
BCl3ガス及び不活性希釈ガスをそのチャンバ内に導入するがCl2ガスはそのチャンバ内に導入せずにそのチャンバ内にプラズマを確立し、そのトレンチ内に露出している残りの添加物含有窒化アルミニウム膜をそれによりプラズマエッチングすることで金属膜を露わにする、第2プラズマエッチング工程を実行するステップと、
を有するものが提供される。
【0019】
こうすることで、金属下地層に対する選択比の改善を達成することができる。選択比は、添加物含有窒化アルミニウム膜のエッチング速度/金属膜のエッチング速度、として定義することができる。
【0020】
第2プラズマエッチング工程実行ステップにて、BCl3ガスを、50~100sccmの範囲内、オプション的には75~95sccmの範囲内のBCl3流量で以て、そのチャンバ内に導入することもできる。
【0021】
第2プラズマエッチング工程にて、不活性希釈ガスを、10~20sccmの範囲内の不活性希釈ガス流量で以てそのチャンバ内に導入することもできる。
【0022】
第2プラズマエッチング工程にて、400~700Wの範囲内の電力を用い、誘導結合プラズマ(ICP)をそのチャンバ内に確立することもできる。
【0023】
第2プラズマエッチング工程にて、500~700Wの範囲内の電力を有するRFバイアス信号を基板支持器に印加することもできる。
【0024】
金属膜をモリブデン膜とすることもできる。これに代え、金属膜をタングステン、ルテニウム又はプラチナ膜とすることもできる。
【0025】
第1プラズマエッチング工程及び/又は第2プラズマエッチング工程を、5mTorr以下のチャンバ内ガス圧で以て実行することもできる。
【0026】
本発明の第1態様を第1プラズマエッチング工程として用いることもできる。
【0027】
不活性希釈ガスをアルゴンとすることもできる。他の不活性ガス、例えば他の貴ガスも想定することができる。
【0028】
基板を半導体基板、オプション的にはシリコン基板、例えばシリコンウェハとすることもできる。そのシリコンウェハを、何れの好適直径のもの、例えば150mm直径又は200mm直径のものとすることもできる。
【0029】
添加物含有窒化アルミニウム膜を、式AlxScyN、但しx+y=1、により定義される窒化アルミニウムスカンジウム膜とすることもできる。疑義払拭のために言うと、この式中の金属含有量x及びyは原子含有量である。察せられる通り、Alの原子百分率は100xであり、Scの原子百分率は100yである。スカンジウム含有量yを0.30以上とすることもできる。スカンジウム含有量yを0.35以上、オプション的には約0.4とすることもできる。スカンジウム含有量yを0.50以下、オプション的には0.45以下とすることもできる。本発明の何れの態様も、Sc含有量が多いAlScN膜のエッチングに、ひときわ有効である。
【0030】
マスクをフォトレジストマスクとすることもできる。マスクを酸化シリコンマスクとすることもできる。
【0031】
プラズマを誘導結合プラズマ(ICP)とすることもできる。
【0032】
本発明の第3態様によれば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有する添加物含有窒化アルミニウム膜を、マスクを通じてプラズマエッチングする装置であって、
チャンバと、
そのチャンバ内に配置された基板支持器と、
BCl3ガスをsccm単位のあるBCl3流量で、Cl2ガスをsccm単位のあるCl2流量で、且つ不活性希釈ガスをsccm単位のある不活性希釈ガス流量で、そのチャンバ内に導入するガス配給システムと、
その上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜を有する基板、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるワークピースをエッチングするため、そのチャンバ内のプラズマを維持するプラズマ生成装置と、
プラズマエッチングが実行され、そのトレンチに露出している添加物含有窒化アルミニウム膜がエッチ除去させるように、本装置を制御するよう、構成されているコントローラと、
を備え、そのコントローラが、BCl3流量及びCl2流量の合計に対する不活性希釈ガス流量の比が0.45:1~0.75:1の範囲内、Cl2流量に対するBCl3流量の比が0.75:1~1.25:1の範囲内に保たれるよう、ガス配給システムを制御するものが、提供される。
【0033】
本発明の第4態様によれば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びエルビウム(Er)のなかから選択された添加元素を含有する添加物含有窒化アルミニウム膜を、マスクを通じてプラズマエッチングする装置であって、
チャンバと、
そのチャンバ内に配置された基板支持器と、
BCl3ガス、Cl2ガス及び不活性希釈ガスをそのチャンバ内に導入するガス配給システムと、
その上に配置された金属膜を有する基板、その金属膜上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜、並びにその添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されており少なくとも1個のトレンチを画定するマスク、を備えるワークピースをエッチングするため、そのチャンバ内のプラズマを維持するプラズマ生成装置と、
BCl3ガス、Cl2ガス及び不活性希釈ガスをそのチャンバ内に導入してそのチャンバ内にプラズマを確立し、そのトレンチ内に露出している添加物含有窒化アルミニウム膜の大部分をそれによりエッチ除去する、第1の主たるプラズマエッチング工程と、BCl3ガス及び不活性希釈ガスをそのチャンバ内に導入するがCl2ガスはそのチャンバ内に導入せずにそのチャンバ内にプラズマを確立し、そのトレンチ内に露出している残りの添加物含有窒化アルミニウム膜をそれによりエッチ除去することで金属膜を露わにする、第2プラズマエッチング工程と、が実行されるように、本装置を制御するよう構成されているコントローラと、
を備えるものが提供される。
【0034】
プラズマ生成装置を誘導結合プラズマ(ICP)装置とすることもできる。
【0035】
疑義払拭のために言うと、本願にて「備える」又は「有する」及びそれに類する語に言及しているときは常に、その発明が、より限定的な語、例えば「それのみで構成される」及び「本質的にそれのみで構成される」を包含するようにも理解される。
【0036】
本発明について上述したが、これは、上掲の説明にあり或いは後掲の記述、図面又は特許請求の範囲にある諸特徴のあらゆる独創的な組合せに敷衍される。例えば、本発明のある態様との関連で開示されているあらゆる特徴を、本発明の他の何れの態様との関連で開示されている何れの特徴とも組み合わせることができる。
【0037】
本発明の諸実施形態を、以下の添付図面を参照し専ら例示により記述する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチングするプラズマエッチング装置の模式的描写図である。
【
図2】ワークピースの模式的断面図であり、(a)はエッチング前、(b)はエッチング後でフッティングなし、(c)はエッチング後でフッティングありの場合の図である。
【
図3】使用するAr流量を10sccmから35sccmまで変化させつつエッチングした後に取得されたSEM画像を示す図である。
【
図4】様々なBCl
3/Cl
2流量比を用いエッチングした後に取得されたSEM画像を示す図である。
【
図5】AlScN層下に下地モリブデン膜があるワークピースの模式的断面図である。
【
図6】プラテン電力の変化に伴う選択比の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図面のうち
図1には、ワークピース11をプラズマエッチングする装置10の模式的描写が示されており、これには、その内部でワークピース11のプラズマエッチングが実行されるプロセスチャンバ12が備わっている。
【0040】
本装置10は更に基板支持器13を備えている。基板支持器はプラテンアセンブリ13とすること、また金属例えばアルミニウムで形成することができ、チャンバ12内に配置される一方で、在来手段例えばセラミックブレイク14によりチャンバ壁12aから電気的に絶縁されている。基板支持器を、静電チャック(ESC)をも備えるものとし、それをそのプラテンアセンブリの表面に取り付けることもできる。プラテンアセンブリ13は、ワークピース11を受け止める支持面13bを有するボディ13aを備えていて、無線周波数(RF)電圧発生器を用い電気的にバイアスされる。例えば、プラテンアセンブリ13への負のバイアス電圧の供給を、プラズマからワークピース11の表面への正帯電イオン爆射を制御するのに役立てることができる。
【0041】
プロセスチャンバ12は、例えばアルミニウム等の金属で形成されうるチャンバ壁12aを備えており、通常はそれらが電気的に接地される。チャンバ12は更に第1、第2及び第3ガスインレット15a,15b,15cを備えており、それらを介し、BCl3ガス、Cl2ガス及び不活性希釈ガス例えばアルゴンの源泉(図示せず)をそれぞれ、チャンバ12内へとそれらのガスを導入すべく流体的に結合させることができる。チャンバ12は更にアウトレット16を備えており、それを介し、それらのガスやエッチングプロセスのあらゆる副産物をチャンバ12から通出させることができる。
【0042】
一実施形態に係るプラズマは、RF電圧発生器17から1個又は複数個のアンテナ18へとRF電圧を印加することで生成されるICPプラズマであり、そのアンテナ18は、チャンバ12の周囲に配置されると共に、チャンバ壁12aに形成された個々の誘電窓部12bに隣り合って所在している。その1個又は複数個のアンテナ18は、例えば、実質的に平面的なスパイラル状の構成、ヘリカルコイル状の構成、或いはトロイダルな構成とすることができ、一般慣行に倣い、発生器17からのRF信号のインピーダンス整合をアンテナ18相手に実行することで、アンテナ18からの電力反射を最小化することができる。アンテナ18はチャンバ12の周囲に配置されており、その電力が誘電窓部12bを介しチャンバ12内へと誘導結合される。
【0043】
プラズマが、チャンバ12のうちワークピース11上方に位置する領域19内で生じるため、ワークピース11がそのプラズマに露出されるようになる。そのチャンバ12内へのプロセスガスの導入は、個々のインレット15a,15b,15cに結合された個々のフローレギュレータ20a,20b,20cを介し行われ、またそのチャンバ12のインレット15a,15b,15cとアウトレット16とがプラズマ領域19を挟み逆側に配置されているので、エッチングガスが必然的にチャンバ12内に通され、領域19を経てワークピース11の上方に至り、アウトレット16へと通されることとなる。本発明を実行するのに用いうる好適な装置の一例に、本願出願人たるSPTS Technologies Limited(英国ニューポート)により生産されているSynapse(商標)モジュールがある。
【0044】
本発明に係る方法を、AlScN膜との関連で提示するけれども、習熟した読者には認識される通り、それらの方法をAlYN膜及びAlErN膜にも等しく適用することができる。
【0045】
ワークピース11はプラズマチャンバ12内のプラテン13上に載置される。ワークピース11は基板11、例えばシリコンウェハ基板を備えており、その上には、例えばパルス化DCスパッタリング技術を用い圧電AlScN膜11aが堆積されている。一実施形態に係る膜はAl0.6Sc0.4Nで組成された膜、即ちアルミニウム成分比が60%、スカンジウム成分比が40%の膜である。これはスカンジウム含有量が多い膜であり、スカンジウム含有量が多いこうした膜を、従来技術の方法を用い処理するのは難しかった。本発明によれば、スカンジウム含有量が多いAlScN膜の処理における顕著な改善がもたらされる。膜組成決定は、通常、X線エネルギ分散分析(EDAX)の使用を通じ達成される。ワークピース11は、更に、膜11a上に形成されておりフォトレジスト又はSiO2ハードマスクを用い5μm~100μmトレンチ11cがパターニングされているマスク11bを、備えている。
【0046】
ワークピース11がチャンバ12内のプラテン13上に配置されている状態で、BCl3、Cl2及びアルゴンガスが、個々のフローレギュレータ20a~cを用い個々のインレット15a~cを介してチャンバ12内に導入され、そのチャンバ12内の圧力が、圧力レギュレータ(図示せず)により約2~5mTorr、或いは実質的に3mTorrに維持される。そのチャンバ12が、それらガスで以て好適にコンディショニングされたら、RF電位が、発生器17の働きで、電力(以下「電源電力」と称する)がそのエッチングガス内に誘導結合するようアンテナ18に印加され、ひいてはプラズマが生じAl0.6Sc0.4N膜のエッチングが始まる。バイアス電力を運ぶバイアス電圧をも、通常は13.56MHzで動作する電圧発生器17の使用を通じプラテンアセンブリ13に印加することで、AlScN膜11bのエッチングを行うことができる。
【0047】
第1の主たるエッチング工程のプロセスパラメタを制御したところ、フッティングが低減された。第2の軟着エッチング工程のプロセスパラメタを制御したところ、選択比の改善が達成された。
【0048】
[フッティング低減]
希釈ガス、BCl
3ガス及びCl
2ガスの流れを制御したところ、エッチングのフッティングが最小化された。
図2に概示されている種類のワークピースを用い、実験を実行した。より具体的には、ワークピースを準備するため、シリコンウェハ上に350nm厚のAl
0.60Sc
0.40N層を堆積させた。この実験のため、それらウェハを150mm直径のものとしたが、同じ原理を他のサイズのウェハ、例えば200mm直径ウェハにも適用することができる。それらのウェハを、開口エリアが14%未満で厚みが1.7~3.5μmのSiO
2マスクで以てパターニングした。マスクプロファイルは80°未満とした。10μm幅トレンチを作成するプロセスを実行した。
【0049】
この実験では、Arを希釈ガスとして用い、チャンバ内に向かうArの流量を変化させることの効果を調べた。Ar流の初期的な増加により、プラズマのローディングが減るためプラズマがより均一になりフッティングが最小化される。用いたプロセスは物理的な性格で、圧力が低く(2mTorr)、バイアス電力が多く(1300W)且つ電源電力が少ない(1000W)ものであり、Cl2の流量は25sccm、BCl3の流量は25sccmとした。Ar流量は10sccmから35sccmまで変化させた。
【0050】
図3に、(a)10sccm、(b)20sccm、(c)25sccm、(d)35sccm、なるAr流量を用いエッチングした後に得られたSEM画像を示す。Ar流量を10sccmから25sccmへと増やすにつれフッティングが41nmから7nmへと減ることが観測された。
図4(a)~(d)に、そのエッチ作成AlScNトレンチの側壁角も示す。表1にはこれらの結果がまとめられている。Ar流量をさらに増やすと、フッティングが僅かに増える結果となった。
【0051】
あらゆる特定理論又は推測による拘泥の懸念を排して言えば、Ar流量を増やすことでプラズマが希釈されてプラズマがより均一になり、ひいてはマスク付近でのローディング効果が減るものと考えられる。また、ArによりScCl3ベース副産物のスパッタリングを助長できるとも考えられる。
【0052】
【0053】
アルゴン流を反応ガス流との組合せで制御したときに、顕著なフッティング改善を得ることができる。
【0054】
AlScNのエッチングには、二種類の主たる塩素ベース反応ガス(Cl
2及びBCl
3)を用いた。BCl
3及びCl
2双方を用いることで、AlScNのエッチングプロファイルがより急峻になる。硼素は大きめなスパッタマスを有していて、側壁からのScベースエッチング副産物のスパッタリングを助長するので、そのプロファイルがより急峻になる。判明したところによれば、平坦なエッチフロントがもたらされそれによりフッティングが最小になる最適なCl
2:BCl
3比が、存在する。BCl
3の量が少ないときには、側壁からのエッチング副産物のスパッタリングのスパッタリングが均一でない結果、不均一なフッティングがもたらされる。1:1のBCl
3:Cl
2比にて最小のフッティングが現れた。BCl
3の比率を更に高めた場合、フッティングが増大する。プラズマ環境では余剰Clイオンを利用可能であると考えられ、そのことが、物理スパッタリングによる副産物除去が起こりうる物理エッチング方式よりは寧ろ、化学エッチングに、有利に働くものと考えられる。
図4には、様々なBCl
3/Cl
2流量比を用いエッチングした後に得られたSEM画像が示されている。
図4(a)及び(b)に示されているのは、順に、0.47なるBCl
3:Cl
2比を用いエッチ作成されたトレンチの左側壁,右側壁である。
図4(c)及び(d)に示されているのは、順に、1.0,2.13なるBCl
3:Cl
2比を用い得られた結果である。表2にはこれらの結果がまとめられている。
【0055】
【0056】
驚異的なことに、Sc含有量が多めなAlScNをエッチングする際には、BCl3流量を比較的少なめにすることが有益たりうる。BCl3は、自由Clをあまり発生させないもののB、B-Cl、B-Cl2へと分解するので、スパッタリングが助長されるのである。そのため、BCl3流を多めにすることで、エッチングがより物理的なものになることが見込まれるので、Sc含有量が多めなAlScNのエッチングが支援される見込みとなろう。硼素のスパッタマスが大きいことで、エッチング副産物の除去が助長されるため、平坦なエッチフロントを達成するには最適なBCl3:Cl2比が必要になるものと、考えられる。
【0057】
[軟着工程における選択比改善]
図5に概示されている種類のワークピースを用い実験を実行した;図示のワークピースは、その上にモリブデン層51が形成されているシリコンウェハ50を備えている。そのモリブデン層51上にはAlScN層52が堆積されている。そのAlScN層52上には、それを通じAlScN層をエッチングすることができる開口54が残るように、フォトレジストマスク53が形成されている。より具体的には、ワークピースを準備するに当たり、200nm厚のAl
0.60Sc
0.40N層及びモリブデン層を堆積させた。4μm厚のフォトレジストマスクを用いそれらの層をパターニングした。この実験のためウェハを200mm直径のものとしたが、同じ原理を他サイズのウェハ、例えば150mm直径のウェハにも適用することができる。このプロセスは、Al
0.60Sc
0.40Nウェハ専用に開発されたものである。そのプロセス条件は、別のSc含有量のAlScN膜向けに、直ちに適合化させることができる。下地をなすMo層に対する選択比を、5μmCD及び100μmCDのトレンチに関し計算した。
【0058】
下地電極に対する選択比が、BCl3のみを反応ガスとして用いることにより改善された。あらゆる特定理論又は推測による拘泥の懸念を排して言えば、BCl3がAlScNの表面内に吸収されBCl2、BCl、Cl及びBに分離するためBCl3ガスはCl2に比べあまり自由Clを発生させないものと、考えられる。BCl3では、BがあるのでScベース副産物のスパッタリングが増えてAlScNのエッチング速度が上がるけれども、あまり活性的でないClが存在しているためMoのエッチング速度が下がるものと、考えられる。
【0059】
Cl
2+BCl
3ベース軟着エッチングにより達成できる選択比の推定値は0.97:1である。判明したところによれば、反応ガスをBCl
3に変えることで選択比が1.6:1に高まった。更なるプロセス洗練により選択比が更に改善されることが判明した。とりわけ、プラテン電力を増やすにつれ下地Mo電極に対する選択比が高まることが判明した。プラテン電力を450Wから600Wへと増やすことで、5μmCDフィーチャの場合、Moに対する選択比が1.65から2.58へと高まった。100μmフィーチャの場合、プラテン電力が550Wに至るまでは選択比が高まった。プラテン電力を更に増大させると、選択比が下がる結果となった。
図6には、プラテン電力の変化に伴う選択比の変化が示されている。このプロセスでは、非常に低い圧力(5mT)及び少ない電源電力(500W)を用いた。
【0060】
軟着エッチングでは、表3に示されているプロセス条件を用い、2.5:1なるAlScN:Mo選択比が達成された。表3には、主エッチング向けの好適な条件も示されている。
【0061】
【0062】
AlScNベースデバイスの性能は下部電極厚に依存する。スカンジウム含有量が多いと、フッティング及びMo損失を制御するのがより難しい。本発明では低い電極損失をもたらすことができ、ひいては(5Gを含め)通信用のバルク弾性波(BAW)フィルタ、マイクロフォン及びセンサ等、広範な用途にてデバイス性能の改善をもたらすことができる。