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特開2024-91412アルミニウム電池に適用される負極構造
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  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図1A
  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図1B
  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図2
  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091412
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】アルミニウム電池に適用される負極構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240627BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20240627BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/74 C
H01M4/70 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023139414
(22)【出願日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】111149653
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522466326
【氏名又は名称】亞福儲能股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】APh ePower Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】呉 瑞軒
(72)【発明者】
【氏名】蔡 施柏達
(72)【発明者】
【氏名】楊 竣傑
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB16
5H017CC05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA15
5H050BA20
5H050CA12
5H050CB11
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA08
5H050FA10
5H050FA13
5H050GA24
5H050HA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルミニウム電池の電気量、寿命、および性能を向上させることのできるアルミニウム電池に適用される負極構造を提供する。
【解決手段】負極構造は、金属基板および複数の孔を含む。孔は、金属基板の表面に配置される。各孔の孔径は、0.05マイクロメートル(μm)~500μmの範囲である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム電池に適用される負極構造であって、
金属基板と、
前記金属基板の表面に配置された複数の孔と、
を含み、前記複数の孔のそれぞれの孔径が、0.05マイクロメートル(μm)~500μmの範囲である負極構造。
【請求項2】
前記金属基板の材料が、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、スズ、亜鉛、ステンレス鋼、その合金、またはその組み合わせからなる請求項1に記載の負極構造。
【請求項3】
前記金属基板の材料が、アルミニウムである請求項2に記載の負極構造。
【請求項4】
前記複数の孔が、腐食によって形成された請求項3に記載の負極構造。
【請求項5】
前記複数の孔が、異なるサイズを有し、前記孔径が、平均孔径である請求項4に記載の負極構造。
【請求項6】
前記平均孔径が、0.1μm~0.2μmの範囲である請求項5に記載の負極構造。
【請求項7】
前記金属基板の材料が、ニッケルである請求項1に記載の負極構造。
【請求項8】
前記複数の孔が、電気めっきまたは電気析出成形によって形成された請求項7に記載の負極構造。
【請求項9】
前記負極構造が、メッシュ構造である請求項8に記載の負極構造。
【請求項10】
前記複数の孔が、実質的に同じサイズを有する請求項8に記載の負極構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電池に適用される負極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アルミニウム電池は、正極、負極、セパレータ、および電解液で構成され、負極の材料は、通常、金属アルミニウム箔を使用する。さらに、アルミニウム電池の連続充放電の過程において、電解液は、酸化還元を介して負極に電気化学堆積を生成する。しかしながら、金属アルミニウム箔は、酸素と反応しやすいため、金属アルミニウム箔の表面が酸化層で覆われる結果となる。また、電気化学後の堆積物も金属アルミニウム箔の表面を覆う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した酸化層および堆積物は、負極表面の電気化学堆積を遅らせ、負極の電気化学反応能力を低下させ、さらに、アルミニウム電池の電気量および性能に影響を与える。
【0004】
一方、金属アルミニウム箔が電気化学反応をスムーズに行うことができないとき、電気化学反応は、容易にセパレータに移って実行されるため、セパレータ内で金属堆積が生じ、さらに、正極および負極を導通させて、バッテリーの短絡回路を引き起こすため、バッテリーの寿命および性能に影響を与える。したがって、いかにしてより優れた負極構造を設計し、アルミニウム電池の電気量、寿命、および性能を向上させるかが、現実的な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アルミニウム電池の電気量、寿命、および性能を向上させることのできるアルミニウム電池に適用される負極構造を提供する。
【0006】
本発明のアルミニウム電池に適用される負極構造は、金属基板および複数の孔を含む。孔は、金属基板の表面に配置される。各孔の孔径は、0.05マイクロメートル(μm)~500μmの範囲である。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、前記金属基板の材料は、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、スズ、亜鉛、ステンレス鋼、その合金、またはその組み合わせを含む。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、前記金属基板の材料は、アルミニウムである。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、前記孔は、腐食によって作られる。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、前記孔は、異なるサイズを有し、孔径は、平均孔径である。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、前記平均孔径は、0.1μm~0.2μmの範囲である。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、前記金属基板の材料は、ニッケルである。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、前記孔は、電気めっきまたは電鋳堆積によって作られる。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、前記負極構造は、メッシュ構造である。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、前記孔は、実質的に同じサイズを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアルミニウム電池に適用される負極構造は、孔の設計により、負極表面の反応面積および電解液の補充速度を増やすことができる。したがって、負極の電気化学反応能力を向上させ、同時に、セパレータ内の金属析出の問題を緩和することができるため、アルミニウム電池の電気量、寿命、および性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の1つの実施形態に係る負極構造の概略図である。
図1B】本発明の別の実施形態に係る負極構造の概略図である。
図2】実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の電気量に関する結果を示す概略図である。
図3】実施例3および比較例3の電気量に関する結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、例示的なものであり、本発明を限定するものではなく、本発明は、請求の範囲によって定義される。
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態について完全に説明するが、本発明は、多くの異なる形態で実施することができるため、ここに記載した実施形態に限定されると解釈すべきではない。図面において、明確にするために、領域、部品、および層の大きさおよび厚さは、実際の縮尺に基づいて作成したものではない。理解を容易にするため、以下の説明では、同じ素子を同じ記号で説明する。
【0020】
ここで使用される方向性の用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上部、および下部)は、単に図面を参照して使用されるものであり、絶対的な方向性を意味するものではない。
【0021】
他に定義されない限り、ここで使用される全ての用語(技術および科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0022】
本明細書において、範囲は、「約(about)」1つの特定の値から「約」他の特定の値までとして表現することができ、1つの特定の値から、および/またはその他の特定の値までとして直接表現してもよい。同様に、値が概略値として表現されるとき、「約」という先行詞を用いて表現され、特定の値は、他の実施形態を形成するものと理解される。各範囲の終点は、他方の終点に関連しても、および他方の終点から独立しても重要であることがさらに理解されるであろう。
【0023】
図1Aは、本発明の1つの実施形態に係る負極構造の概略図である。図1Bは、本発明の別の実施形態に係る負極構造の概略図である。
【0024】
図1Aおよび図1Bを参照すると、本発明において、アルミニウム電池に適用される負極構造(図1Aの負極構造100または図1Bの負極構造100Aであってもよい)は、金属基板110および複数の孔120を含み、孔120は、金属基板110の表面に配置される。さらに、各孔120の孔径は、0.05マイクロメートル(μm)~500μmの範囲(例えば、0.05μm、0.1μm、0.2μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、または0.05μm~50μmの範囲内の任意の値)である。したがって、本発明のアルミニウム電池に適用される負極構造は、孔120の設計により、負極表面上の反応面積および電解液の補充速度を増やすことができる。そのため、負極の電気化学反応能力を向上させ、同時に、セパレータ内の金属析出の問題を緩和することができるため、それにより、アルミニウム電池の電気量、寿命、および性能を向上させることができる。さらに、孔120の設計により、本発明のアルミニウム電池に適用される負極構造は、電解液を負極に入れる能力が向上するため、従来のアルミニウム電池が金属アルミニウム箔のみを使用することによって生じる問題を効果的に解決することができる。さらに、アルミニウム電池の電解液が負極反応に加わるため、電解液の濃度が増減する。負極表面上の電解液の濃度が不十分であるとき、反応性能に影響を与える。したがって、負極表面上の電解液の濃度は、バッテリーの性能に直接影響を与える。そのため、本発明の負極構造100の孔120により、電解液を負極に入れるのに役立ち、それにより、反応能力が向上する。したがって、電解液が反応に加わらない他のバッテリー(例えばリチウムバッテリー)と比較して、本発明の負極構造100をアルミニウム電池に適用することによって、相乗効果を有することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0025】
注意すべきこととして、図1Aおよび図1Bに示した孔120は、金属基板110を貫通せずに金属基板110上に形成されるだけでもよく、または金属基板110の一方の表面から他方の表面に延伸して貫通してもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、金属基板110の材料は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ステンレス鋼(stainless steel)、その合金、またはその組み合わせを含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、図1Aに示すように、負極構造100の金属基板110の材料は、アルミニウムであり、孔120は、腐食によって作ることができる。腐食は、反応性に基づくため、孔120は、異なるサイズを有する。したがって、0.05μm~500μmの範囲の孔径は、平均孔径(直径)範囲を指し、平均孔径は、例えば、0.1μm~0.2μmの範囲であるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、図1Bに示すように、負極構造100Aの金属基板110の材料は、ニッケルであり、孔120は、電鋳堆積によって作られてもよく、負極構造100は、ネットワーク構造を形成する。電鋳堆積の制御性により、孔120は、実質的に同じサイズを有する。したがって、0.05μm~500μmの範囲の孔径は、単一の孔径(直径)範囲を指す。いくつかの実施形態において、電鋳堆積によって形成された孔120の孔径は、例えば、5μm~500μmの範囲である。注意すべきこととして、本発明は、孔120の形成方法を限定しない。他の実施形態において、孔120は、電気めっきによって作られてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、孔120の形状は、円、正方形、ひし形、六角形、多角形、またはその組み合わせであってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態において、負極構造100は、多層複合構造ではない。すなわち、負極構造100は、金属基板110に直接穴を開けるものであり、穴が開けられた別のフィルム層と金属フィルム層を組み合わせるものではない。したがって、負極構造100は、製造プロセスが単純であるという利点を有するが、本発明はこれに限定されない。
【0029】
注意すべきこととして、本発明は、上述した金属基板および孔に限定されず、本発明は、アルミニウム電池(正極、セパレータ、電解液など)の他の構成も限定しない。アルミニウム電池(アルミニウム系イオンを使用した電解質)に適用される負極構造は、金属基板および複数の穴を含み、孔径(平均孔径または単一孔径)が0.05μm~500μmの範囲にあるものは、いずれも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0030】
以下、実施例1~3および比較例1~2を参照しながら、本発明の効果についてさらに詳細に説明する。また、以下の実施例1~3を説明するが、使用される材料、手順などの詳細は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で適宜変更されてもよい。したがって、本発明は、下記の実施例1~3によって限定的に解釈されるべきではない。
【0031】
<比較例1>
【0032】
金属アルミニウム箔を使用して切断し、負極(厚さ0.05ミリメートル(mm)、サイズ15mm×25mm)を得た。グラファイトスラリーをニッケル箔(厚さ0.03mm、サイズ15mm×25mm)に塗布し、正極を得た。次に、負極と正極を順番に配置して、電解液(イオン液体:アルミニウム塩化物:1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物のモル比は、1.8:1)が豊富な電解槽に入れ、比較例1のアルミニウム電池を得た。
【0033】
<比較例2>
【0034】
比較例1のアルミニウム電池の調製方法と同様であるが、違いは、負極を孔の(単一)孔径が1,500μmのチタン拡張メッシュに置き換えて、比較例2のアルミニウム電池を得たことである。
【0035】
<比較例3>
【0036】
金属アルミニウム箔を使用して切断し、負極(厚さ0.05mm、サイズ88mm×148mm)を得た。グラファイトスラリーをニッケル箔(厚さ0.03mm、サイズ85mm×145mm)に塗布し、正極を得た。ガラス繊維フィルター紙を切断することにより、セパレータを作製した。次に、負極、セパレータ、および正極を順番に配置し、アルミニウムプラスチックフィルムに入れてから電解液(イオン液体:アルミニウム塩化物:1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物のモル比は、1.8:1)を注入して、包装し、比較例3のアルミニウム電池を得た。
【0037】
<実施例1>
【0038】
比較例1のアルミニウム電池の調製方法と同様であるが、違いは、負極を孔の(平均)孔径が0.1μm~0.2μmであるアノード酸化アルミニウム(Anodic Aluminum Oxide, AAO)(図1Aの構造に対応してもよい)に置き換えて、実施例1のアルミニウム電池を得たことである。
【0039】
<実施例2>
【0040】
比較例1のアルミニウム電池の調製方法と同様であるが、違いは、負極を孔の(単一)孔径が27μmであるニッケルメッシュ(図1Bの構造に対応してもよい)に置き換えて、実施例2のアルミニウム電池を得たことである。
【0041】
<実施例3>
【0042】
比較例3のアルミニウム電池の調製方法と同様であるが、違いは、負極を孔の孔径が0.1μm~0.2μmであるAAOに置き換えて、実施例3のアルミニウム電池を得たことである。
【0043】
ここで、アルミニウム電池の残りの説明していない組成および規格については、当業者であれば、添付した請求項の精神および範囲に含まれる任意の内容に基づいて得ることが可能である。
【0044】
図2は、実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の電気量に関する結果を示す概略図である。図2は、バイオロジック(BioLogic)社の電気化学ワークステーション(バイオロジックBCS-815)を使用して、実施例1および2と比較例1および2のアルミニウム電池に対してそれぞれ充放電試験を行い、4Cの充放電レートで最大放電容量を測定したときの図である。図3は、実施例3および比較例3の電気量に関する結果を示す概略図である。図3は、承徳科技(Chen Tech Electric)社の充放電機(CTE-BT2000-5V50A)を使用して、実施例3と比較例3のアルミニウム電池に対してそれぞれ充放電試験を行い、4Cの充放電レートで最大放電容量を測定したときの図である。
【0045】
図2の結果が示すように、負極の表面に孔を有する実施例1、2、および3により、金属負極の反応能力を効果的に向上させるため、それにより、アルミニウム電池の放電容量を増やすことができる。また、比較例1と比較すると、実施例1および2により、負極自体の反応性能(電気量)を3倍~17倍まで増やすことができる。さらに、実施例1および2と比較例2の比較から分かるように、金属負極の孔の孔径が大きすぎるとき、全体材料の開口面積の割合が大きくなりすぎるため、それにより、反応部位が減少し、電気量が減少する。図3の結果は、孔を有する負極構造とセパレータを組み合わせてバッテリーセルを形成したとき、負極の反応面積および電解液の補充速度が増加した後に、バッテリーセルの電気量を15%増やせることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のアルミニウム電池に適用される負極構造は、孔の設計により、負極表面の反応面積および電解液の補充速度を増やすことができる。したがって、負極の電気化学反応能力を向上させ、同時に、セパレータ内の金属析出の問題を緩和することができるため、それにより、アルミニウム電池の電気量、寿命、および性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
100、100A 負極構造
110 金属基板
120 孔

図1A
図1B
図2
図3
【外国語明細書】