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  • 特開-ゴルフクラブヘッドの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091426
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20240627BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240627BHJP
【FI】
A63B53/04 B
A63B102:32
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172576
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】111149773
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501106263
【氏名又は名称】明安國際企業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】蕭▲徳▼福
(72)【発明者】
【氏名】林▲ペイ▼瑤
(72)【発明者】
【氏名】侯淵仁
(72)【発明者】
【氏名】謝硯舟
(72)【発明者】
【氏名】陳宥▲チー▼
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH02
2C002CH03
2C002CH04
2C002MM02
2C002PP01
(57)【要約】
【課題】複雑な外形を有するゴルフクラブヘッドを安定した品質で生産できるゴルフクラブヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】予定厚さが異なる複数の加工部位を決定する設計ステップS11と、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維と金属繊維とから選ばれた少なくとも1種の繊維が複数本で束になった繊維の束を用い、各加工部位の予定厚さにそれぞれ対応して、繊維の束が1本のみ使用される1方向ウィービングと、繊維の束が2本使用される2方向ウィービングと、繊維の束が3本使用される3方向ウィービングと、から選ばれた少なくとも1つの加工法で、予め用意されたプリプレグに厚み増加部を形成して成型ブランクを作成するウィービングステップS12と、作成された成型ブランクを成型モールドの中に配置して加圧成型により異なる複数の加工部位を有するゴルフクラブヘッドを製造する成型ステップS13と、を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作成しようとするゴルフクラブヘッドにおいて、予定厚さが異なる複数の加工部位を決定する設計ステップと、
無機繊維と熱可塑性樹脂繊維と金属繊維とから選ばれた少なくとも1種の繊維が複数本で束になった繊維の束を用い、各前記加工部位の予定厚さにそれぞれ対応して、前記繊維の束が1本のみ使用される1方向ウィービングと、前記繊維の束が2本使用される2方向ウィービングと、前記繊維の束が3本使用される3方向ウィービングと、から選ばれた少なくとも1つの加工法で、予め用意されたプリプレグに厚み増加部を形成して成型ブランクを作成するウィービングステップと、
作成された前記成型ブランクを成型モールドの中に配置して加圧成型により厚さが異なる前記複数の加工部位を有するゴルフクラブヘッドを製造する成型ステップと、
を含むことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記成型ステップにおいて、
作成された前記成型ブランクを前記成型モールドの中に配置した後に前記成型モールドの中から空気を排出して真空状態にしてから、前記成型モールドの中に成型樹脂を注入して前記成型樹脂を硬化させて厚さが異なる前記複数の加工部位を有するゴルフクラブヘッドを製造する、ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記ウィービングステップにおいて、各前記厚み増加部の形成に使用される前記繊維は、前記成型ステップにおいて前記成型モールドの外部から付与されるエネルギーにより軟化し、前記成型モールドの内側の形状に対応して変形した後に硬化されることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記ウィービングステップにおいて使用される繊維の束は、1本の無機繊維もしくは金属繊維の周りが複数本の熱可塑性樹脂繊維に囲まれて束になったものであり、前記成型ステップにおいて前記モールドに対する加熱により、各繊維の束における熱可塑性樹脂繊維が液状化することによって、各繊維の束の間にある隙間が液状化した熱可塑性樹脂により充満されることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ゴルフクラブヘッドの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフクラブヘッドは、長期間の打撃に耐える強度を備えるために、全体が金属で製造される。しかし、金属材料のゴルフクラブヘッドは、コストが高く且つ重量が重いなどの欠点がある。
近年、例えば特許文献1に示されるように、重量が軽くて強度が高い炭素繊維を用いて部材が作成されたゴルフクラブヘッドがよくある。炭素繊維で作成された部材でゴルフクラブヘッドの一部の金属構造に替えることにより、同等の強度を維持しながら重量を軽くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許第I232765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭素繊維複合材料製のゴルフクラブヘッドの製造においては、まず複数のプリプレグを積層した後、不要な部分を切り取ることになっており、そして、不要な部分を切り取った後、更に熱圧成型を経て半製品を得て、最後にコンピュータ数値制御(CNC)などの機材による加工で半製品の外形を加工してゴルフクラブを作成する。このような作成方法において、通常、条状の補強部材を異なる角度で互いに重ね合わせて用いることにより軽量化を図ると共にその強度を維持している。
【0005】
しかしながら、上記の製造方法は、積層や切り取りなどの工程では人的コストが必要となる上、熱圧成型によって得られた半製品にも仕上げの処理が必要である。また、プリプレグの可塑性がよくないため、厚さが不均一など複雑な外形を製造しにくいので、従来の製造方法は、更なる改善を目指す余地がある。
【0006】
従って、本開示の技術の目的は、複雑な外形を有するゴルフクラブヘッドを安定した品質で生産できるゴルフクラブヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本開示の技術は、作成しようとするゴルフクラブヘッドにおいて、予定厚さが異なる複数の加工部位を決定する設計ステップと、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維と金属繊維とから選ばれた少なくとも1種の繊維が複数本で束になった繊維の束を用い、各前記加工部位の予定厚さにそれぞれ対応して、前記繊維の束が1本のみ使用される1方向ウィービングと、前記繊維の束が2本使用される2方向ウィービングと、前記繊維の束が3本使用される3方向ウィービングと、から選ばれた少なくとも1つの加工法で、予め用意されたプリプレグに厚み増加部を形成して成型ブランクを作成するウィービングステップと、作成された前記成型ブランクを成型モールドの中に配置して加圧成型により厚さが異なる前記複数の加工部位を有するゴルフクラブヘッドを製造する成型ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、次のような効果が得られる。
【0009】
本開示のゴルフクラブヘッドの製造方法によれば、ウィービングステップを取り入れることで自動化した連続加工が可能となるので、人的コスト及び製造過程でのミスを減らしながら、厚さが不均一など複雑な外形を有するゴルフクラブヘッドを、繊維の束の数を増減することで対応するようにして、モールドで成型することができるため、複雑な外形を有するゴルフクラブヘッドを安定した品質で生産できる。
【0010】
本開示の技術について他の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の実施形態の詳細な説明において明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示のゴルフクラブヘッドの製造方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
図2】同第1の実施形態において実行される設計ステップを例示する説明図である。
図3】同第1の実施形態において実行されるウィービングステップを例示する説明図である。
図4】同第1の実施形態において実行される成型ステップを例示する説明図である。
図5】同第1の実施形態により製造されたゴルフクラブヘッドが示される説明図である。
図6】本開示のゴルフクラブヘッドの製造方法の第2の実施形態において熱可塑性樹脂繊維を液状化させる効果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施形態〕
以下では各図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。
まず、図1図5に本発明のゴルフクラブヘッドの製造方法の第1の実施形態が示されている。
【0013】
図1に示されるように、本開示のゴルフクラブヘッドの製造方法では、設計ステップS11と、ウィービングステップS12と、成型ステップS13と、が実行される。
設計ステップS11では、作成しようとするゴルフクラブヘッド2において、その形状に応じて、予定厚さが異なる複数の加工部位21を決定する。例えば、図2に示されるように、このゴルフクラブヘッド2には予定厚さが異なる3つの加工部位21、すなわち第1の加工部位21aと、第2の加工部位21bと、第3の加工部位21cとが特定/決定されており、この例においては、両側にある第1の加工部位21aと第3の加工部位21cとが、中央にある第2の加工部位21bより厚くなるように構成される。
【0014】
本開示の技術は、ウィービングステップS12において、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維と金属繊維とから選ばれた少なくとも1種の繊維(フィラメント)が複数本で束になった繊維の束3を使用する。すなわち、複数本の繊維が束になった繊維の束3において、前記複数本の繊維は、無機繊維と熱可塑性樹脂繊維と金属繊維とのいずれか1種であってもいいし、この3種類の繊維をすべて使用して1つの繊維の束3とすることも可能であり、繊維の束3の構成に関しては、作成しようとするゴルフクラブヘッド2の形状や材料特性によって適切に決定することが出来る。
【0015】
ここで、無機繊維としては、例えばグラスファイバー、カーボンファイバー、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、セラミック繊維などが挙げられ、熱可塑性樹脂繊維としては、ポリプロピレン樹脂繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド合成樹脂繊維などが挙げられ、金属繊維としてはチタニウム、銅、スチールなどの金属材料により作成された繊維が挙げられる。
【0016】
そして、ウィービングステップS12では、設計ステップS11において特定/決定された各加工部位21、すなわち第1の加工部位21aと、第2の加工部位21bと、第3の加工部位21cとの予定厚さにそれぞれ対応して、繊維の束3が1本のみ使用される1方向ウィービングと、繊維の束3が2本使用される2方向ウィービングと、繊維の束3が3本使用される3方向ウィービングと、から選ばれた少なくとも1つの加工法で、予めに用意されたプリプレグ40に厚み増加部41を形成して成型ブランク4を作成する。
【0017】
図3にウィービングステップS12にて行われる作業が例示されている。
図示のように、第1の加工部位21aと第2の加工部位21bと第3の加工部位21cとにそれぞれ対応する第1の厚み増加部41aと、第2の厚み増加部41bと、第3の厚み増加部41cとがプリプレグ40に形成される。そして上記のように、両側にある第1の加工部位21aと第3の加工部位21cとは、中央にある第2の加工部位21bより厚くなるよう構成されるので、両側にある第1の厚み増加部41aと第3の厚み増加部41cとを中央にある第2の厚み増加部41bより厚く形成するため、両側にある第1の厚み増加部41aと第3の厚み増加部41cとは繊維の束3が3本使用される3方向ウィービングを使用して形成し、そして中央にある第2の厚み増加部41bは繊維の束3が2本使用される2方向ウィービングを使用して形成する。
【0018】
また、本開示の技術としては、例えば特に厚く形成する必要がある厚み増加部41に対応するために、繊維の束3が3本使用される3方向ウィービングを使用して厚み増加部41を形成した後、更にその上に繊維の束3が2本使用される2方向ウィービングを使用してその厚さを増大させることも可能である。
【0019】
更に、作成する厚み増加部41の厚さを調整するために、1本の繊維の束3に含まれる繊維の本数(フィラメント数)を増減することも可能である。また、厚み増加部41の形成における各繊維の束3のそれぞれの延伸方向や交差方向に関しては、必要に応じて、例えば各加工部位21がゴルフクラブヘッドの使用において力を受ける方向などを考慮して、適切に調整することも可能であり、例えば通常用いられる45度交差や平行配置の他に、23.5度交差などあまり用いられない角度を採用することも可能である。
【0020】
ウィービングステップS12において作成された成型ブランク4は、図4に示されるように成型モールド5の中に配置されて加熱及び加圧成型により、各厚み増加部41はそれぞれが対応する各加工部位21に成型され、全体が各加工部位21を有するゴルフクラブヘッドに作成される。
【0021】
この実施形態において、成型モールド5の中に行われる加圧成型の具体的な実行方法は、成型ブランク4を成型モールド5の中に配置した後に成型モールド5の中から空気を排出して真空状態にしてから、成型モールド5の中に成型樹脂を注入して成型樹脂を硬化させながら圧力をかけて異なる複数の加工部位21を有するゴルフクラブヘッド2を製造する真空注型方法が採用されているが、本発明としてはこれに限らず、金型を用いる他の成型方法も考えられる。
【0022】
<第1の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0023】
本開示のゴルフクラブヘッドの製造方法は、ウィービングステップを取り入れることで自動化した連続加工が可能となるので、人的コスト及び製造作業におけるミスを減らしながら、厚さが不均一など複雑な外形を有するゴルフクラブヘッドを繊維の束の数を増減することで対応するようにして、モールドで成型することができるため、複雑な外形を有するゴルフクラブヘッドを安定した品質で生産できる。
【0024】
〔第2の実施形態〕
図6は本発明のゴルフクラブヘッドの製造方法の第2の実施形態において熱可塑性樹脂繊維を液状化させる効果を示す模式図である。
本開示のゴルフクラブヘッドの製造方法の第2の実施形態では、ウィービングステップS12において使用される繊維の束3は、図6(a)に示されるように、1本の無機繊維3bの周りが複数本の熱可塑性樹脂繊維3aに囲まれて束になったものであり、そして図6(b)に示されるように、成型ステップS13において成型モールド5に対する加熱により、各繊維の束3における熱可塑性樹脂繊維が液状化することによって、各繊維の束3の間の隙間は液状化した熱可塑性樹脂により充満される方法が採用されている。この第2の実施形態に示される構成により、真空注型方法を採用することなく、すなわち、成型モールド5の中から空気を排出することも、成型樹脂を注入することもなく、容易に成型作業を行うことが出来ると共に、コストの節約が可能になる。
【0025】
また、本開示の技術としては、成型ステップS13において成型モールド5に対する加熱の代わりに、成型モールド5に対して外部から光エネルギー、もしくは放射エネルギーなどの熱以外のエネルギーを付与することにより、成型モールド5の内側にある厚み増加部41の形成に使用される繊維を軟化させることで、成型モールド5の内側の形状に対応して変形させた後に圧力を掛けながら硬化させることも考えられる。
【0026】
以上、本開示の技術の実施形態を説明したが、本開示の技術はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
2 ゴルフクラブヘッド
21 加工部位
21a 第1の加工部位
21b 第2の加工部位
21c 第3の加工部位
3 繊維の束
3a 熱可塑性樹脂繊維
3b 無機繊維
4 成型ブランク
40 プリプレグ
41 厚み増加部
41a 第1の厚み増加部
41b 第2の厚み増加部
41c 第3の厚み増加部
5 成型モールド
S11 設計ステップ
S12 ウィービングステップ
S13 成型ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6