(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009146
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】医薬活性化合物の苦味抑制剤及び苦味抑制方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/40 20060101AFI20240112BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240112BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240112BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20240112BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20240112BHJP
A61K 31/382 20060101ALI20240112BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240112BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240112BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K47/40
A61K31/381
A61K31/497
A61K31/138
A61K31/445
A61K31/382
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197093
(22)【出願日】2023-11-21
(62)【分割の表示】P 2019165017の分割
【原出願日】2019-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】相沢 萌子
(57)【要約】
【課題】複雑な工程や複数の添加剤を要せず、コストを抑えつつ、医薬活性化合物の苦味を抑制すること。
【解決手段】本発明によれば、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、医薬活性化合物の苦味抑制剤であって、前記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、苦味抑制剤が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、医薬活性化合物の苦味抑制剤であって、前記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、苦味抑制剤。
【請求項2】
前記医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる、請求項1に記載の苦味抑制剤。
【請求項3】
前記医薬活性化合物1モルに対して10モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる、請求項1又は2に記載の苦味抑制剤。
【請求項4】
シクロデキストリン及び/又はその誘導体がβ-シクロデキストリンである、請求項1~3の何れか一項に記載の苦味抑制剤。
【請求項5】
医薬活性化合物とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体は医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上とし、前記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、前記医薬活性化合物の苦味抑制方法。
【請求項6】
シクロデキストリン及び/又はその誘導体がβ-シクロデキストリンである、請求項5に記載の苦味抑制方法。
【請求項7】
医薬活性化合物とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させた医薬活性化合物含有溶液を得る工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体は医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上とし、前記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、前記医薬活性化合物含有組成物の製造方法。
【請求項8】
シクロデキストリン及び/又はその誘導体がβ-シクロデキストリンである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記医薬活性化合物含有組成物は内服用液体製剤である、請求項7又は8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬活性化合物の苦味抑制剤、医薬活性化合物の苦味抑制方法及び医薬活性化合物の苦味抑制剤含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬活性化合物は、経口、経鼻、及び経皮などいろいろな経路により投与される。その中でも経口投与は、投与形態としては容易で、便利な、非侵襲的且つよく知られている薬物送達方法である。しかしながら、医薬活性化合物の中には、苦味など極めて不快な味を持つものがある。従来の固体形態(錠剤又はカプセル剤など)は通常、服用後すぐに嚥下されるため、苦味を感じにくいが、患者によっては苦味による極めて不快な味を寛容できず服薬できないこともある。嚥下機能が低いなどの理由で従来の固体形態により経口投与することが困難な患者(例えば、子供及び高齢の患者など)には、液体形態(例えば、溶液、懸濁液、シロップ、乳濁液若しくはドライシロップを水などに混合した液など)又はチュアブル錠や口腔内崩壊錠等の投与形態の製剤が処方されるが、苦味物質が味蕾に触れることが多くなり、苦味を感じやすいという問題がある。
【0003】
日本でよく使用されており、例えば日本での売上高が50億円以上の医療用医薬品のなかにも、苦味を有する医薬活性化合物を有効成分とするものが多い。例えば、注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬のアトモキセチン塩酸塩、抗うつ剤のデュロキセチン塩酸塩、アルツハイマー治療薬のドネペジル塩酸塩、抗精神病薬のアリピプラゾール、緑内障・高眼圧症治療剤のドルゾラミド塩酸塩は、苦味を有することが知られている。患者が医師の処方した薬を指示通り服用することは重要であるが、患者がこれらの医薬活性化合物の苦味を寛容できず、服薬アドヒランスや服薬コンプライアンスが低下する等の問題が生じる可能性がある。
【0004】
従って、医薬活性化合物の苦味をマスキングすることは重要な課題である。マスキングの手法としては、甘味料(砂糖、人工甘味料など)や香料(フルーツ、チョコレート)を添加して苦味を覆い隠すことや、コーティング物質やマイクロカプセル化により苦味を閉じ込めることが知られているが、苦味を完全に隠すことができない、あるいは口の中で溶解すると苦味を感じるなどの問題がある。
【0005】
特許文献1は、マトリックスを含む固体投薬製剤であって、前記マトリックスは薬学的有効量のアトモキセチンまたはその薬学的許容塩とワックス材料と含むことを特徴とする固体投薬製剤を開示し、アトモキセチンは、ポリマーと懸濁媒体との組み合わせによって味がマスクされてもよいことが記載されている。特許文献2は、不快味を呈する薬剤を含有し、かつ該薬剤を被覆する被覆層を有する主薬粒子と、Wickingタイプの崩壊剤およびSwellingタイプの崩壊剤とを含む口腔内崩壊錠を開示し、不快味を呈する薬剤がドネペジル塩酸塩等であってもよいことが記載されている。特許文献3は、1種以上の水溶性高分子、1種以上の医薬的活性成分、後味改善剤としてのステビオシド系甘味料、および味遮断剤としての1種以上の第1甘味剤を含む、経口用速溶フィルムを開示し、医薬的活性成分がアリピプラゾール、ドネペジル等であってもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-517050号公報
【特許文献2】特開2013-147470号公報
【特許文献3】特表2012-528854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の苦味抑制に関する技術では、医薬活性化合物の苦味を抑えるために複雑な工程や複数の添加剤を要し、コストが高くなっていた。また、チュアブル錠や口腔内崩壊錠等あるいは液剤(ドライシロップを水に混合した液を含む)など苦味を感じやすい剤形では、苦味を十分にマスキングすることができなかった。
【0008】
本発明は、上記の現状に鑑み、複雑な工程や複数の添加剤を要せず、コストを抑えつつ、医薬活性化合物の苦味を抑制することを課題とする。また、本発明は、通常は苦味を感じやすい剤形で服用しても、苦味を感じにくい医薬活性化合物含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、医薬活性化合物の苦味抑制剤としてシクロデキストリンを用いることによって、医薬活性化合物の苦味を低減させ得ることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、医薬活性化合物の苦味抑制剤であって、上記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、苦味抑制剤。
[2]上記医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる、[1]に記載の苦味抑制剤。
[3]上記医薬活性化合物1モルに対して10モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる、[1]又は[2]に記載の苦味抑制剤。
[4]シクロデキストリン及び/又はその誘導体がβ-シクロデキストリンである、[1]~[3]の何れか一に記載の苦味抑制剤。
【0010】
[5]医薬活性化合物とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体は医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上とし、上記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、上記医薬活性化合物の苦味抑制方法。
[6]シクロデキストリン及び/又はその誘導体がβ-シクロデキストリンである、[5]に記載の苦味抑制方法。
[7]医薬活性化合物とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させた医薬活性化合物含有溶液を得る工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体は医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上とし、上記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、上記医薬活性化合物含有組成物の製造方法。
[8]シクロデキストリン及び/又はその誘導体がβ-シクロデキストリンである、[7]に記載の製造方法。
[9]上記医薬活性化合物含有組成物は内服用液体製剤である、[7]又は[8]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることにより、医薬活性化合物の苦味を低減させ得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する本発明の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
本発明は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、医薬活性化合物の苦味抑制剤であって、前記医薬活性化合物が、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される何れかである、苦味抑制剤を提供する。
【0014】
シクロデキストリン(本明細書中で「CD」と表記する場合がある)は、別名環状オリゴ糖といい、環状のα-1,4-グルカンであり、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼが澱粉等のα-1,4-グルカンに作用することにより、その分子内転移反応によって生成される。その重合度は主として6、7、8であり、それぞれα-CD、β-CD、γ-CDと呼ばれる。
【0015】
本発明において、「苦味」とは、口腔内や咽頭部で感じる苦味や渋みを含む不快な違和感を総称するものである。本明細書において「苦味を抑制する」「苦味抑制」とは、苦味物質が口腔内に存在する場合に感じる苦味が、抑制、低減、隠ぺいまたはマスキングされることをいい、苦味と共に渋みを含む不快な違和感が抑制、低減、隠ぺいまたはマスキングされることを含んでもよい。「抑制」は、「苦味抑制剤」を使用しない場合に比較して、使用した場合に口腔内で感じる「苦味」が、いくらか減少することをいい、苦味を全く感じない場合や、ある程度感じるが患者にとって許容可能である場合を含んでもよい。本発明の苦味抑制剤は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含み、デュロキセチン塩酸塩、アリピプラゾール、アトモキセチン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、及びドルゾラミド塩酸塩からなる群から選択される医薬活性化合物の苦味を抑制することができる。
【0016】
本発明のシクロデキストリン誘導体としては、置換基として例えば炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を有するもの、炭素数1~2のアルキル基を有するもの、1~2残基からなる糖類を有するものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシプロピル化CD、ヒドロキシブチル化CD、メチル化CD、マルトシル化CD(分岐CD)などが挙げられる。本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、ヒドロキシプロピル化β-CDであることができる。ヒドロキシプロピル化β-CDは水への溶解性が高いためである。
【0017】
シクロデキストリンは、立体的に見れば、いわば底のないバケツ様またはドーナツ状の構造をしており、空洞外部が親水性であるのに対し、空洞内部が疎水性を示すという特徴を有する。この特徴により、CDは空洞内部に特定の有機分子(ゲスト分子)を包み込むように取込む現象(包接)を示し、包接複合体が形成される。一般にCDによるゲスト分子の包接は、シクロデキストリンの空洞のサイズ及びゲスト分子のサイズ又はゲスト分子の構造の一部のサイズが一致する場合に起こり得る。また、CD空洞内部は疎水性であるため、ゲスト分子が疎水性である場合の方が比較的包接されやすい傾向がある。
【0018】
シクロデキストリンの中でも、β-CDは生産量が多く安価であるため、最もよく利用されている。しかし、β-CDは、α-CD及びγ-CDに比較して、水溶解性が低いため、可溶化には不利であるといわれている。水溶解性を改良するために、例えばヒドロキシプロピル化β-CDやメチル化β-CDなどの誘導体が開発されている。γ-CDは、3種類のCDの中で最も空洞が大きく、水溶解性が高い。α-CDは、β-CDやγ-CDに比較して空洞内径が小さいため、包接するゲスト分子の大きさもβ-CDやγ-CDに比較して小さい分子が包接されると考えられている。
【0019】
ゲスト分子全体がシクロデキストリンより明らかに大きいものでも包接による効果が観察される場合があり、ゲスト分子が部分的にでも、ホストCDの空洞にフィットすればよいと考えられる。CDの包接能は、ホストCDとゲスト分子の化学的な相互作用により影響をうける。ホストCDとゲスト分子間の相互作用には、疎水作用、ファンデルワールス力、イオン-イオン相互作用、双極子相互作用、水素結合があり、これらの相互作用が協同的に機能していると考えられる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、1つの医薬活性化合物分子に対して、複数のCD及び/又はその誘導体が作用していると考えられ、CD及び/又はその誘導体と医薬活性化合物分子の間には、包接以外にも、相互作用が存在すると考えられる。
【0020】
本発明に用いるCD及び/又はその誘導体は、結晶品、非結晶粉末品、シラップなどの形態のものを用いてもよい。また、CD及び/又はその誘導体以外に、それらの生成や調製の過程の副産物として含まれる、例えば、マルトオリゴ糖、その他糖質などを含有しているものを用いてもよい。
【0021】
(デュロキセチン塩酸塩の苦味抑制)
デュロキセチン塩酸塩は、化学名が(+)-(S)-N-メチル-3-(1-ナフチルオキシ)-3-(2-チエニル)プロピルアミン一塩酸塩と記されるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤であり、うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛の治療に有用である。下記の構造式で示される化合物である。
【化1】
【0022】
本発明は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、デュロキセチン塩酸塩の苦味抑制剤を提供する。
【0023】
デュロキセチン塩酸塩の苦味を抑制する場合、本発明の苦味抑制剤では、0.5モル以上、1モルのデュロキセチン塩酸塩に対して、0.1モル以上、0.2モル以上、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、40モル以上あるいは50モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0024】
本発明の苦味抑制剤は、一実施態様において、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して2から50モルのシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのデュロキセチン塩酸塩に対して、2モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、デュロキセチン塩酸塩の苦味が許容可能な程度に抑制されるためである。また、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して、50モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またデュロキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としてもあまり嵩張らないためである。
【0025】
本発明の苦味抑制剤は、好ましい実施態様において、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して5から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのデュロキセチン塩酸塩に対して、5モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、デュロキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0026】
本発明の苦味抑制剤は、別の好ましい実施態様において、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのデュロキセチン塩酸塩に対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、デュロキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。また、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して、40モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またデュロキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としても嵩張らないためである。
【0027】
本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、デュロキセチン塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。好ましい一実施態様では、本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、β-CD及びHP-β-CDである。
【0028】
本発明により提供されるデュロキセチン塩酸塩の苦味抑制剤は、水を含む溶媒中でデュロキセチン塩酸塩と混合することができる。CD又はその誘導体の包接作用は、CD又はその誘導体の水溶液の状態で生じるためである。
【0029】
本発明により、デュロキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はデュロキセチン塩酸塩1モルに対して0.5モル以上とする、デュロキセチン塩酸塩の苦味抑制方法が提供される。
【0030】
デュロキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程は、溶媒に、デュロキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶解することにより実施することができ、デュロキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、いずれを先に溶媒に添加し溶解してもよく、同時に添加し溶解してもよい。あるいは、デュロキセチン塩酸塩を溶媒に溶解したデュロキセチン塩酸塩溶液にCDを粉末状若しくは溶液として添加し、撹拌することで調製することもできる。溶媒は、殺菌水や精製水、エタノールのような一価アルコール、グリセロールのような多価アルコール及びそれらの混合物から選択することができる。デュロキセチン塩酸塩の溶解度を高めるために、デュロキセチン塩酸塩をエタノール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの有機溶媒に先ず溶解し、次に水と混合することができる。CDの溶解度を高めるため、デュロキセチン塩酸塩とCD及び/又はその誘導体を加えた溶媒を、加熱撹拌することができる。加熱撹拌する際、例えば温度60~85℃に溶媒を加熱することができる。
【0031】
本発明の苦味抑制方法では、1モルのデュロキセチン塩酸塩に対して、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、あるいは40モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を混合することができる。本発明の苦味抑制方法では、一実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はデュロキセチン塩酸塩1モルに対して2から50モルとすることができる。また、別の実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はデュロキセチン塩酸塩1モルに対して10から40モルとすることができる。
【0032】
本発明の苦味抑制方法に用いられるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に特に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、デュロキセチン塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。β-CDの誘導体は、HP-β-CDであることが好ましい。
【0033】
本発明の苦味抑制方法では、好ましい一実施態様において、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して、5から50モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのデュロキセチン塩酸塩に対して、5モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、デュロキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0034】
本発明の苦味抑制方法では、別の好ましい一実施態様において、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのデュロキセチン塩酸塩に対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、デュロキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0035】
本発明により苦味が抑制されたデュロキセチン塩酸塩溶液は、凍結乾燥または噴霧乾燥などの乾燥工程を経て粉末化することができる。
【0036】
本発明により提供されるデュロキセチン塩酸塩の苦味抑制方法について、苦味抑制の評価は、パネラーによる官能評価試験及び/又は機器測定(味認識装置、味覚センサー)により実施することができる。苦味マスキングに関し、官能検査の結果と味覚センサー出力は高く相関しており、味覚センサーは苦味マスキングを検知可能であることが示されている(Ono et al. Journal of Pharmaceutical Sciences 100:1935-1943, 2011)。
【0037】
本発明により、デュロキセチン塩酸塩とβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたデュロキセチン塩酸塩含有溶液を得る工程を含み、β-シクロデキストリン及び/又はその誘導体はデュロキセチン塩酸塩1モルに対して0.5モル以上とする、デュロキセチン塩酸塩含有医薬組成物の製造方法が提供される。
【0038】
デュロキセチン塩酸塩とβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたデュロキセチン塩酸塩含有溶液を得る工程は、上記のデュロキセチン塩酸塩の苦味抑制方法と同様の方法で実施することができ、同様の溶媒を用いることができる。
【0039】
本発明により提供される医薬組成物の製造方法では、上記のデュロキセチン塩酸塩の苦味抑制方法と同様のモル比で、デュロキセチン塩酸塩及びシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0040】
本発明の製造方法により製造されたデュロキセチン塩酸塩含有医薬組成物は、CDの他に、必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤を含むことができる。薬学的に許容可能な添加剤として、pH調節剤、安定化剤、賦形剤、分解剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、流動促進剤(glidant)、滑剤、香味料、甘味料又は可溶化剤を挙げることができるが、これらに限定されない。より具体的には、薬学的に許容可能な添加剤、例えば、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖、タルク、ラクトアルブミン、ゼラチン、デンプン、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、並びにポリエチレングリコールである。本発明の製造方法により製造された医薬組成物は、顆粒、粉末、被覆錠剤、マイクロカプセル、シロップ、ドライシロップ、エリキシル、懸濁液、エマルション、またはドロップなどいずれの形態で用いてもよい。
【0041】
本発明の製造方法により製造されたデュロキセチン塩酸塩含有医薬組成物は、デュロキセチン塩酸塩が治療効果及び/又は予防効果を奏する疾患を患っているか若しくは患っていることが疑われる対象の治療剤または予防剤として用いることができる。具体的には、うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛の治療に用いることができる。投与の対象は、ヒトを含む哺乳動物である。
【0042】
一実施態様では、本発明の製造方法により製造された医薬組成物は内服用液体製剤であることができる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法では、CDはデュロキセチン塩酸塩の分子自体に作用し苦味をマスキングすると考えられ、液状でも苦味が抑制されており、内服用液体製剤としても、患者は苦味を感じにくい。内服用液体製剤は、用量調節も容易である。したがって、本発明の一実施態様によれば、嚥下能力が低下している患者に対しても投与でき、また、容易に用量調節ができるため高齢者への慎重投与に適した、デュロキセチン塩酸塩含有内服用液体製剤を提供することができる。デュロキセチン塩酸塩の臨床用量はデュロキセチン換算で1日20mg~60mg(1日1回経口投与)である。高齢者や嚥下障害のある患者にとって服用量が少ない方が服用は容易であることから、内服用液体製剤中のデュロキセチン塩酸塩濃度は、少なくとも1.1mg/mL(デュロキセチン換算で1mg/mL)とすることが好ましい。
【0043】
(アリピプラゾールの苦味抑制)
アリピプラゾールは、化学名が7-[4-[4-(2,3-ジクロロフェニル)-1-ピペラジニル]ブトキシ]-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノンであり、統合失調症の治療に有用である。下記の構造式で示される化合物である。
【化2】
【0044】
本発明は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、アリピプラゾールの苦味抑制剤を提供する。
【0045】
アリピプラゾールの苦味を抑制する場合、本発明の苦味抑制剤では、1モルのアリピプラゾールに対して、0.2モル以上、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、40モル以上あるいは50モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0046】
本発明の苦味抑制剤は、一実施態様において、アリピプラゾール1モルに対して2から50モルのシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのアリピプラゾールに対して、2モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、アリピプラゾールの苦味が許容可能な程度に抑制されるためである。また、アリピプラゾール1モルに対して、50モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またアリピプラゾールとシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としてもあまり嵩張らないためである。
【0047】
本発明の苦味抑制剤は、好ましい実施態様において、アリピプラゾール1モルに対して5から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのアリピプラゾールに対して、5モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アリピプラゾールの苦味が顕著に抑制されるためである。
【0048】
本発明の苦味抑制剤は、別の好ましい実施態様において、アリピプラゾール1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのアリピプラゾールに対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アリピプラゾールの苦味が顕著に抑制されるためである。また、アリピプラゾール1モルに対して、40モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またアリピプラゾールとシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としても嵩張らないためである。
【0049】
本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、アリピプラゾールの苦味を抑制する効果が高いためである。好ましい一実施態様では、本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、β-CDである。
【0050】
本発明により提供されるアリピプラゾールの苦味抑制剤は、水を含む溶媒中でアリピプラゾールと混合することができる。CD又はその誘導体の包接作用は、CD又はその誘導体の水溶液の状態で生じるためである。
【0051】
本発明により、アリピプラゾールとシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアリピプラゾール1モルに対して0.2モル以上とする、アリピプラゾールの苦味抑制方法が提供される。
【0052】
アリピプラゾールとシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程は、溶媒に、アリピプラゾールとシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶解することにより実施することができ、アリピプラゾールとシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、いずれを先に溶媒に添加し溶解してもよく、同時に添加し溶解してもよい。あるいは、アリピプラゾールを溶媒に溶解したアリピプラゾール溶液にCDを粉末状若しくは溶液として添加し、撹拌することで調製することもできる。溶媒は、殺菌水や精製水、エタノールのような一価アルコール、グリセロールのような多価アルコール及びそれらの混合物から選択することができる。アリピプラゾールの溶解度を高めるために、アリピプラゾールをエタノール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの有機溶媒に先ず溶解し、次に水と混合することができる。CDの溶解度を高めるため、アリピプラゾールとCD及び/又はその誘導体を加えた溶媒を、加熱撹拌することができる。加熱撹拌する際、例えば温度60~85℃に溶媒を加熱することができる。
【0053】
本発明の苦味抑制方法では、1モルのアリピプラゾールに対して、0.2モル以上、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、あるいは40モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を混合することができる。本発明の苦味抑制方法では、一実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアリピプラゾール1モルに対して2から50モルとすることができる。また、別の実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアリピプラゾール1モルに対して10から40モルとすることができる。
【0054】
本発明の苦味抑制方法に用いられるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に特に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、アリピプラゾールの苦味を抑制する効果が高いためである。
【0055】
本発明の苦味抑制方法では、好ましい一実施態様において、アリピプラゾール1モルに対して、2から50モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのアリピプラゾールに対して、2モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、2モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アリピプラゾールの苦味が顕著に抑制されるためである。
【0056】
本発明の苦味抑制方法では、別の好ましい一実施態様において、アリピプラゾール1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのアリピプラゾールに対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アリピプラゾールの苦味が顕著に抑制されるためである。
【0057】
本発明により苦味が抑制されたアリピプラゾール溶液は、凍結乾燥または噴霧乾燥などの乾燥工程を経て粉末化することができる。
【0058】
本発明により提供されるアリピプラゾールの苦味抑制方法について、苦味抑制の評価は、パネラーによる官能評価試験及び/又は機器測定(味認識装置、味覚センサー)により実施することができる。苦味マスキングに関し、官能検査の結果と味覚センサー出力は高く相関しており、味覚センサーは苦味マスキングを検知可能であることが示されている(Ono et al. Journal of Pharmaceutical Sciences 100:1935-1943, 2011)。
【0059】
本発明により、アリピプラゾールとβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたアリピプラゾール含有溶液を得る工程を含み、β-シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアリピプラゾール1モルに対して0.2モル以上とする、アリピプラゾール含有医薬組成物の製造方法が提供される。
【0060】
アリピプラゾールとβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたアリピプラゾール含有溶液を得る工程は、上記のアリピプラゾールの苦味抑制方法と同様の方法で実施することができ、同様の溶媒を用いることができる。
【0061】
本発明により提供される医薬組成物の製造方法では、上記のアリピプラゾールの苦味抑制方法と同様のモル比で、アリピプラゾール及びシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0062】
本発明の製造方法により製造されたアリピプラゾール含有医薬組成物は、CDの他に、必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤を含むことができる。薬学的に許容可能な添加剤として、賦形剤、分解剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、流動促進剤(glidant)、滑剤、香味料、甘味料又は可溶化剤を挙げることができるが、これらに限定されない。より具体的には、薬学的に許容可能な添加剤、例えば、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖、タルク、ラクトアルブミン、ゼラチン、デンプン、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、並びにポリエチレングリコールである。本発明の製造方法により製造された医薬組成物は、顆粒、粉末、被覆錠剤、マイクロカプセル、シロップ、ドライシロップ、エリキシル、懸濁液、エマルション、またはドロップなどいずれの形態で用いてもよい。
【0063】
本発明の製造方法により製造されたアリピプラゾール含有医薬組成物は、アリピプラゾールが治療効果及び/又は予防効果を奏する疾患を患っているか若しくは患っていることが疑われる対象の治療剤または予防剤として用いることができる。具体的には、統合失調症の治療に用いることができる。投与の対象は、ヒトを含む哺乳動物である。
【0064】
一実施態様では、本発明の製造方法により製造された医薬組成物は内服用液体製剤であることができる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法では、CDはアリピプラゾールの分子自体に作用し苦味をマスキングすると考えられ、液状でも苦味が抑制されており、内服用液体製剤としても、患者は苦味を感じにくい。内服用液体製剤は、用量調節も容易である。したがって、本発明の一実施態様によれば、嚥下能力が低下している患者に対しても投与でき、また、容易に用量調節ができるため高齢者への慎重投与に適した、アリピプラゾール含有内服用液体製剤を提供することができる。アリピプラゾールの臨床用量は1日6mg~24mg(1日1回又は1日2回に分けて経口投与である。高齢者や嚥下障害のある患者にとって服用量が少ない方が服用は容易であることから、内服用液体製剤中のアリピプラゾール濃度は、少なくとも1.0mg/mLとすることが好ましい。
【0065】
(アトモキセチン塩酸塩の苦味抑制)
アトモキセチン塩酸塩は、化学名が(3R)-N-メチル-3-(2-メチルフェノキシ)-3-フェニルプロパン-1-アミン一塩酸塩であり、注意欠陥/多動性障害の治療に有用である。下記の構造式で示される化合物である。
【化3】
【0066】
本発明は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、アトモキセチン塩酸塩の苦味抑制剤を提供する。
【0067】
アトモキセチン塩酸塩の苦味を抑制する場合、本発明の苦味抑制剤では、1モルのアトモキセチン塩酸塩に対して、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、40モル以上あるいは50モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0068】
本発明の苦味抑制剤は、一実施態様において、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して5から50モルのシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのアトモキセチン塩酸塩に対して、5モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、アトモキセチン塩酸塩の苦味が許容可能な程度に抑制されるためである。また、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して、50モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またアトモキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としてもあまり嵩張らないためである。
【0069】
本発明の苦味抑制剤は、好ましい実施態様において、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して5から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのアトモキセチン塩酸塩に対して、5モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アトモキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0070】
本発明の苦味抑制剤は、別の好ましい実施態様において、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのアトモキセチン塩酸塩に対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アトモキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。また、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して、40モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またアトモキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としても嵩張らないためである。
【0071】
本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、アトモキセチン塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。好ましい一実施態様では、本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、β-CDである。
【0072】
本発明により提供されるアトモキセチン塩酸塩の苦味抑制剤は、水を含む溶媒中でアトモキセチン塩酸塩と混合することができる。CD又はその誘導体の包接作用は、CD又はその誘導体の水溶液の状態で生じるためである。
【0073】
本発明により、アトモキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアトモキセチン塩酸塩1モルに対して1モル以上とする、アトモキセチン塩酸塩の苦味抑制方法が提供される。
【0074】
アトモキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程は、溶媒に、アトモキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶解することにより実施することができ、アトモキセチン塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、いずれを先に溶媒に添加し溶解してもよく、同時に添加し溶解してもよい。あるいは、アトモキセチン塩酸塩を溶媒に溶解したアトモキセチン塩酸塩溶液にCDを粉末状若しくは溶液として添加し、撹拌することで調製することもできる。溶媒は、殺菌水や精製水、エタノールのような一価アルコール、グリセロールのような多価アルコール及びそれらの混合物から選択することができる。アトモキセチン塩酸塩の溶解度を高めるために、アトモキセチン塩酸塩をエタノール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの有機溶媒に先ず溶解し、次に水と混合することができる。CDの溶解度を高めるため、アトモキセチン塩酸塩とCD及び/又はその誘導体を加えた溶媒を、加熱撹拌することができる。加熱撹拌する際、例えば温度60~85℃に溶媒を加熱することができる。
【0075】
本発明の苦味抑制方法では、1モルのアトモキセチン塩酸塩に対して、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、あるいは40モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を混合することができる。本発明の苦味抑制方法では、一実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアトモキセチン塩酸塩1モルに対して5から50モルとすることができる。また、別の実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアトモキセチン塩酸塩1モルに対して10から40モルとすることができる。
【0076】
本発明の苦味抑制方法に用いられるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に特に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、アトモキセチン塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。
【0077】
本発明の苦味抑制方法では、好ましい一実施態様において、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して、5から50モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのアトモキセチン塩酸塩に対して、5モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アトモキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0078】
本発明の苦味抑制方法では、別の好ましい一実施態様において、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのアトモキセチン塩酸塩に対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、アトモキセチン塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0079】
本発明により苦味が抑制されたアトモキセチン塩酸塩溶液は、凍結乾燥または噴霧乾燥などの乾燥工程を経て粉末化することができる。
【0080】
本発明により提供されるアトモキセチン塩酸塩の苦味抑制方法について、苦味抑制の評価は、パネラーによる官能評価試験及び/又は機器測定(味認識装置、味覚センサー)により実施することができる。苦味マスキングに関し、官能検査の結果と味覚センサー出力は高く相関しており、味覚センサーは苦味マスキングを検知可能であることが示されている(Ono et al. Journal of Pharmaceutical Sciences 100:1935-1943, 2011)。
【0081】
本発明により、アトモキセチン塩酸塩とβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたアトモキセチン塩酸塩含有溶液を得る工程を含み、β-シクロデキストリン及び/又はその誘導体はアトモキセチン塩酸塩1モルに対して1モル以上とする、アトモキセチン塩酸塩含有医薬組成物の製造方法が提供される。
【0082】
アトモキセチン塩酸塩とβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたアトモキセチン塩酸塩含有溶液を得る工程は、上記のアトモキセチン塩酸塩の苦味抑制方法と同様の方法で実施することができ、同様の溶媒を用いることができる。
【0083】
本発明により提供される医薬組成物の製造方法では、上記のアトモキセチン塩酸塩の苦味抑制方法と同様のモル比で、アトモキセチン塩酸塩及びシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0084】
本発明の製造方法により製造されたアトモキセチン塩酸塩含有医薬組成物は、CDの他に、必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤を含むことができる。薬学的に許容可能な添加剤として、賦形剤、分解剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、流動促進剤(glidant)、滑剤、香味料、甘味料又は可溶化剤を挙げることができるが、これらに限定されない。より具体的には、薬学的に許容可能な添加剤、例えば、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖、タルク、ラクトアルブミン、ゼラチン、デンプン、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、並びにポリエチレングリコールである。本発明の製造方法により製造された医薬組成物は、顆粒、粉末、被覆錠剤、マイクロカプセル、シロップ、ドライシロップ、エリキシル、懸濁液、エマルション、またはドロップなどいずれの形態で用いてもよい。
【0085】
本発明の製造方法により製造されたアトモキセチン塩酸塩含有医薬組成物は、アトモキセチン塩酸塩が治療効果及び/又は予防効果を奏する疾患を患っているか若しくは患っていることが疑われる対象の治療剤または予防剤として用いることができる。具体的には、注意欠陥/多動性障害の治療に用いることができる。投与の対象は、ヒトを含む哺乳動物である。
【0086】
一実施態様では、本発明の製造方法により製造された医薬組成物は内服用液体製剤であることができる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法では、CDはアトモキセチン塩酸塩の分子自体に作用し苦味をマスキングすると考えられ、液状でも苦味が抑制されており、内服用液体製剤としても、患者は苦味を感じにくい。内服用液体製剤は、用量調節も容易である。したがって、本発明の一実施態様によれば、嚥下能力が低下している患者に対しても投与でき、また、容易に用量調節ができるため高齢者への慎重投与に適した、アトモキセチン塩酸塩含有内服用液体製剤を提供することができる。アトモキセチン塩酸塩の臨床用量はアトモキセチン換算で1日40mg~120mg(1日1回又は1日2回に分けて経口投与)である。高齢者や嚥下障害のある患者にとって服用量が少ない方が服用は容易であることから、内服用液体製剤中のアトモキセチン塩酸塩濃度は、少なくとも4.6mg/mL(アトモキセチン換算で4mg/mL)とすることが好ましい。
【0087】
(ドネペジル塩酸塩の苦味抑制)
ドネペジル塩酸塩は、化学名が(2RS)-2-[(1-ベンジルピペリジン-4-イル)メチル] -5,6-ジメトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン一塩酸塩であり、アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制に有用である。下記の構造式で示される化合物である。
【化4】
【0088】
本発明は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、ドネペジル塩酸塩の苦味抑制剤を提供する。
【0089】
ドネペジル塩酸塩の苦味を抑制する場合、本発明の苦味抑制剤では、1モルのドネペジル塩酸塩に対して、0.1モル以上、0.2モル以上、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、40モル以上あるいは50モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0090】
本発明の苦味抑制剤は、一実施態様において、ドネペジル塩酸塩1モルに対して1から50モルのシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのドネペジル塩酸塩に対して、1モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、ドネペジル塩酸塩の苦味が許容可能な程度に抑制されるためである。また、ドネペジル塩酸塩1モルに対して、50モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またドネペジル塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としてもあまり嵩張らないためである。
【0091】
本発明の苦味抑制剤は、好ましい実施態様において、ドネペジル塩酸塩1モルに対して5から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのドネペジル塩酸塩に対して、5モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドネペジル塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0092】
本発明の苦味抑制剤は、別の好ましい実施態様において、ドネペジル塩酸塩1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのドネペジル塩酸塩に対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドネペジル塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。また、ドネペジル塩酸塩1モルに対して、40モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またドネペジル塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としても嵩張らないためである。
【0093】
本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、ドネペジル塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。好ましい一実施態様では、本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、β-CDである。
【0094】
本発明により提供されるドネペジル塩酸塩の苦味抑制剤は、水を含む溶媒中でドネペジル塩酸塩と混合することができる。CD又はその誘導体の包接作用は、CD又はその誘導体の水溶液の状態で生じるためである。
【0095】
本発明により、ドネペジル塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドネペジル塩酸塩1モルに対して0.1モル以上とする、ドネペジル塩酸塩の苦味抑制方法が提供される。
【0096】
ドネペジル塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程は、溶媒に、ドネペジル塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶解することにより実施することができ、ドネペジル塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、いずれを先に溶媒に添加し溶解してもよく、同時に添加し溶解してもよい。あるいは、ドネペジル塩酸塩を溶媒に溶解したドネペジル塩酸塩溶液にCDを粉末状若しくは溶液として添加し、撹拌することで調製することもできる。溶媒は、殺菌水や精製水、エタノールのような一価アルコール、グリセロールのような多価アルコール及びそれらの混合物から選択することができる。ドネペジル塩酸塩の溶解度を高めるために、ドネペジル塩酸塩をポリエチレングリコール、グリセリンなどの有機溶媒に先ず溶解し、次に水と混合することができる。CDの溶解度を高めるため、ドネペジル塩酸塩とCD及び/又はその誘導体を加えた溶媒を、加熱撹拌することができる。加熱撹拌する際、例えば温度60~85℃に溶媒を加熱することができる。
【0097】
本発明の苦味抑制方法では、1モルのドネペジル塩酸塩に対して、0.1モル以上、0.2モル以上、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、あるいは40モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を混合することができる。本発明の苦味抑制方法では、一実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドネペジル塩酸塩1モルに対して3から50モルとすることができる。また、別の実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドネペジル塩酸塩1モルに対して10から40モルとすることができる。
【0098】
本発明の苦味抑制方法に用いられるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に特に制限ないが、特にβ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。β-CD及び/又はその誘導体は、ドネペジル塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。
【0099】
本発明の苦味抑制方法では、好ましい一実施態様において、ドネペジル塩酸塩1モルに対して、5から50モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのドネペジル塩酸塩に対して、5モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドネペジル塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0100】
本発明の苦味抑制方法では、別の好ましい一実施態様において、ドネペジル塩酸塩1モルに対して、10から40モルのβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのドネペジル塩酸塩に対して、10モル以上のβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドネペジル塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0101】
本発明により苦味が抑制されたドネペジル塩酸塩溶液は、凍結乾燥または噴霧乾燥などの乾燥工程を経て粉末化することができる。
【0102】
本発明により提供されるドネペジル塩酸塩の苦味抑制方法について、苦味抑制の評価は、パネラーによる官能評価試験及び/又は機器測定(味認識装置、味覚センサー)により実施することができる。苦味マスキングに関し、官能検査の結果と味覚センサー出力は高く相関しており、味覚センサーは苦味マスキングを検知可能であることが示されている(Ono et al. Journal of Pharmaceutical Sciences 100:1935-1943, 2011)。
【0103】
本発明により、ドネペジル塩酸塩とβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたドネペジル塩酸塩含有溶液を得る工程を含み、β-シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドネペジル塩酸塩1モルに対して0.1モル以上とする、ドネペジル塩酸塩含有医薬組成物の製造方法が提供される。
【0104】
ドネペジル塩酸塩とβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたドネペジル塩酸塩含有溶液を得る工程は、上記のドネペジル塩酸塩の苦味抑制方法と同様の方法で実施することができ、同様の溶媒を用いることができる。
【0105】
本発明により提供される医薬組成物の製造方法では、上記のドネペジル塩酸塩の苦味抑制方法と同様のモル比で、ドネペジル塩酸塩及びシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0106】
本発明の製造方法により製造されたドネペジル塩酸塩含有医薬組成物は、CDの他に、必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤を含むことができる。薬学的に許容可能な添加剤として、賦形剤、分解剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、流動促進剤(glidant)、滑剤、香味料、甘味料又は可溶化剤を挙げることができるが、これらに限定されない。より具体的には、薬学的に許容可能な添加剤、例えば、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖、タルク、ラクトアルブミン、ゼラチン、デンプン、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、並びにポリエチレングリコールである。本発明の製造方法により製造された医薬組成物は、顆粒、粉末、被覆錠剤、マイクロカプセル、シロップ、ドライシロップ、エリキシル、懸濁液、エマルション、またはドロップなどいずれの形態で用いてもよい。
【0107】
本発明の製造方法により製造されたドネペジル塩酸塩含有医薬組成物は、ドネペジル塩酸塩が治療効果及び/又は予防効果を奏する疾患を患っているか若しくは患っていることが疑われる対象の治療剤または予防剤として用いることができる。具体的には、アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制に用いることができる。投与の対象は、ヒトを含む哺乳動物である。
【0108】
一実施態様では、本発明の製造方法により製造された医薬組成物は内服用液体製剤であることができる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法では、CDはドネペジル塩酸塩の分子自体に作用し苦味をマスキングすると考えられ、液状でも苦味が抑制されており、内服用液体製剤としても、患者は苦味を感じにくい。内服用液体製剤は、用量調節も容易である。したがって、本発明の一実施態様によれば、嚥下能力が低下している患者に対しても投与でき、また、容易に用量調節ができるため高齢者への慎重投与に適した、ドネペジル塩酸塩含有内服用液体製剤を提供することができる。ドネペジル塩酸塩の臨床用量はドネペジル塩酸塩として1日3mg~10mg(1日1回経口投与)である。高齢者や嚥下障害のある患者にとって服用量が少ない方が服用は容易であることから、内服用液体製剤中のドネペジル塩酸塩濃度は、少なくとも0.15mg/mLとすることが好ましい。
【0109】
(ドルゾラミド塩酸塩の苦味抑制)
ドルゾラミド塩酸塩は、化学名が(4S、6S)-4-エチルアミノ-6-メチル-5,6-ジヒドロ-4H-チエノ[2,3-b]チオピラン-2-スルホンアミド7,7-ジオキシド一塩酸塩であり、緑内障、高眼圧症の治療に有効である。下記の構造式で示される化合物である。
【化5】
【0110】
本発明は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体を有効成分として含む、ドルゾラミド塩酸塩の苦味抑制剤を提供する。
【0111】
ドルゾラミド塩酸塩の苦味を抑制する場合、本発明の苦味抑制剤では、1モルのドルゾラミド塩酸塩に対して、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、40モル以上あるいは50モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0112】
本発明の苦味抑制剤は、一実施態様において、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して20から50モルのシクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのドルゾラミド塩酸塩に対して、20モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、ドルゾラミド塩酸塩の苦味が許容可能な程度に抑制されるためである。また、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して、50モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またドルゾラミド塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としてもあまり嵩張らないためである。
【0113】
本発明の苦味抑制剤は、好ましい実施態様において、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して5から40モルのγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのドルゾラミド塩酸塩に対して、5モル以上のγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドルゾラミド塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0114】
本発明の苦味抑制剤は、別の好ましい実施態様において、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して、10から40モルのγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体が用いられる。1モルのドルゾラミド塩酸塩に対して、10モル以上のγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドルゾラミド塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。また、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して、40モル以下のシクロデキストリン及び/又はその誘導体の添加であればコストが抑えられ、またドルゾラミド塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体との混合物を乾燥物としても嵩張らないためである。
【0115】
本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に制限ないが、特にγ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。γ-CD及び/又はその誘導体は、ドルゾラミド塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。好ましい一実施態様では、本発明の苦味抑制剤の有効成分であるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、γ-CDである。
【0116】
本発明により提供されるドルゾラミド塩酸塩の苦味抑制剤は、水を含む溶媒中でドルゾラミド塩酸塩と混合することができる。CD又はその誘導体の包接作用は、CD又はその誘導体の水溶液の状態で生じるためである。
【0117】
本発明により、ドルゾラミド塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドルゾラミド塩酸塩1モルに対して2モル以上とする、ドルゾラミド塩酸塩の苦味抑制方法が提供される。
【0118】
ドルゾラミド塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程は、溶媒に、ドルゾラミド塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶解することにより実施することができ、ドルゾラミド塩酸塩とシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、いずれを先に溶媒に添加し溶解してもよく、同時に添加し溶解してもよい。あるいは、ドルゾラミド塩酸塩を溶媒に溶解したドルゾラミド塩酸塩溶液にCDを粉末状若しくは溶液として添加し、撹拌することで調製することもできる。溶媒は、殺菌水や精製水、エタノールのような一価アルコール、グリセロールのような多価アルコール及びそれらの混合物から選択することができる。ドルゾラミド塩酸塩の溶解度を高めるために、ドルゾラミド塩酸塩をポリエチレングリコール、グリセリンなどの有機溶媒に先ず溶解し、次に水と混合することができる。CDの溶解度を高めるため、ドルゾラミド塩酸塩とCD及び/又はその誘導体を加えた溶媒を、加熱撹拌することができる。加熱撹拌する際、例えば温度60~85℃に溶媒を加熱することができる。
【0119】
本発明の苦味抑制方法では、1モルのドルゾラミド塩酸塩に対して、2モル以上、3モル以上、4モル以上、5モル以上、10モル以上、20モル以上、21モル以上、22モル以上、23モル以上、24モル以上、25モル以上、26モル以上、27モル以上、28モル以上、29モル以上、30モル以上、あるいは40モル以上のシクロデキストリン及び/又はその誘導体を混合することができる。本発明の苦味抑制方法では、一実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドルゾラミド塩酸塩1モルに対して3から50モルとすることができる。また、別の実施態様において、シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドルゾラミド塩酸塩1モルに対して10から40モルとすることができる。
【0120】
本発明の苦味抑制方法に用いられるシクロデキストリン及び/又はその誘導体は、その種類に特に制限ないが、特にγ-CD及び/又はその誘導体が好ましい。γ-CD及び/又はその誘導体は、ドルゾラミド塩酸塩の苦味を抑制する効果が高いためである。
【0121】
本発明の苦味抑制方法では、好ましい一実施態様において、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して、5から50モルのγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのドルゾラミド塩酸塩に対して、5モル以上のγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、5モル以上のα-又はβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドルゾラミド塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0122】
本発明の苦味抑制方法では、別の好ましい一実施態様において、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して、10から40モルのγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。1モルのドルゾラミド塩酸塩に対して、10モル以上のγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることで、10モル以上のα-又はβ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いた場合と比較して、ドルゾラミド塩酸塩の苦味が顕著に抑制されるためである。
【0123】
本発明により提供されるドルゾラミド塩酸塩の苦味抑制方法について、苦味抑制の評価は、パネラーによる官能評価試験及び/又は機器測定(味認識装置、味覚センサー)により実施することができる。苦味マスキングに関し、官能検査の結果と味覚センサー出力は高く相関しており、味覚センサーは苦味マスキングを検知可能であることが示されている(Ono et al. Journal of Pharmaceutical Sciences 100:1935-1943, 2011)。
【0124】
本発明により、ドルゾラミド塩酸塩とγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたドルゾラミド塩酸塩含有溶液を得る工程を含み、γ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体はドルゾラミド塩酸塩1モルに対して2モル以上とする、ドルゾラミド塩酸塩含有医薬組成物の製造方法が提供される。
【0125】
ドルゾラミド塩酸塩とγ-シクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させたドルゾラミド塩酸塩含有溶液を得る工程は、上記のドルゾラミド塩酸塩の苦味抑制方法と同様の方法で実施することができ、同様の溶媒を用いることができる。
【0126】
本発明により提供される医薬組成物の製造方法では、上記のドルゾラミド塩酸塩の苦味抑制方法と同様のモル比で、ドルゾラミド塩酸塩及びシクロデキストリン及び/又はその誘導体を用いることができる。
【0127】
本発明の製造方法により製造されたドルゾラミド塩酸塩含有医薬組成物は、CDの他に、必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤を含むことができる。薬学的に許容可能な添加剤として、pH調節剤、増粘剤、又は可溶化剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0128】
本発明の製造方法により製造されたドルゾラミド塩酸塩含有医薬組成物は、ドルゾラミド塩酸塩が治療効果及び/又は予防効果を奏する疾患を患っているか若しくは患っていることが疑われる対象の治療剤または予防剤として用いることができる。具体的には、緑内障、高眼圧症の治療に用いることができる。投与の対象は、ヒトを含む哺乳動物である。
【0129】
一実施態様では、本発明の製造方法により製造された医薬組成物は点眼剤であることができる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法では、CDはドルゾラミド塩酸塩の分子自体に作用し苦味をマスキングすると考えられ、苦味が抑制されており、点眼剤が鼻から喉に流れたとしても患者は苦味を感じにくい。ドルゾラミド塩酸塩の臨床用量はドルゾラミド0.5%溶液として1回1滴、1日3回点眼である。ドルゾラミド塩酸塩濃度は、少なくとも5.6mg/mL(ドルゾラミド換算で5mg/mL)とすることが好ましい。
【実施例0130】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0131】
〔実施例1:デュロキセチン塩酸塩の不快な苦味の抑制〕
10mM 塩化カリウム溶液に、デュロキセチン塩酸塩を終濃度0.5mMとなるように溶解し、これをデュロキセチン塩酸塩溶液とした。ここに、終濃度が0.5~10mMとなるようにα-CD、β-CD、γ-CD又はヒドロキシプロピル化β-CD(HP-β-CD)を加えて完全に溶解させた。
【0132】
デュロキセチン塩酸塩の苦味を、味認識装置「SA402B」(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)および苦味センサーAC0を用いてCPA(Change of Membrane Potential by Absorption)値(mV)を測定することにより行った。デュロキセチン塩酸塩のCD添加による苦味抑制効果は、CPA値により評価した。CPA値は、3回の測定データの平均値である。CPA値が高いほど苦味が強いことを示すため、CPA値が低いほど、CD添加による苦味抑制効果が高いことを示す。
【0133】
CPA値に加えて、CD濃度が0mMの溶液のCPA値を100%とし、10mM塩化カリウムのみの溶液のCPA値を0%とした場合の、各CD添加濃度におけるCPA相対値を下記表に示す。
【0134】
【0135】
上記表に示すように、各種CDを0.5mM以上で添加した場合に、デュロキセチン塩酸塩溶液のCPA値の減少が観察された。各種CDの添加により、苦味の抑制が認められ、中でもβ-CDによる効果が顕著であった。
【0136】
次に、デュロキセチン塩酸塩溶液に、終濃度が0.25mM又は20mMとなるようにβ-CDを溶解し、上記と同様にCPA値を測定し、CPA相対値を算出した。結果を下記表に示す。
【表2】
【0137】
デュロキセチン塩酸塩溶液のCPA値は、β-CDの添加により低減し、その効果は添加濃度に依存して高くなることが明らかとなった。これらの結果から、デュロキセチン塩酸塩1モルに対して、β-CDが0.5~40モルの範囲において用量依存的に味認識装置で検出される苦味の抑制に効果的であることを確認した。
【0138】
〔実施例2:デュロキセチン塩酸塩含有内服液の製造例〕
製造例:デュロキセチン塩酸塩 1.1mg/mL(デュロキセチンとして1mg)
1.精製水80mLに、デュロキセチン塩酸塩110mgを溶解する。
2.デュロキセチン塩酸塩水溶液に、β-CD 1.9gを溶解する。
3.上記混合液に香料を加え、更に精製水を加えて100mLとする。
本製造例の内服液は、苦味が抑制され、医薬品として許容できる味である。
【0139】
〔実施例3:アリピプラゾールの不快な苦味の抑制〕
超純水に、塩化カリウム、アリピプラゾール、エタノールおよびα-CD、β-CD、γ-CD又はヒドロキシプロピル化β-CD(HP-β-CD)の終濃度がそれぞれ10mM、0.5mM、30v/v %および0.5~10mMとなるように加えて完全に溶解させた。
【0140】
アリピプラゾールの苦味を、味認識装置「SA402B」(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)および苦味センサーAC0を用いてCPA(Change of Membrane Potential by Absorption)値(mV)を測定することにより行った。アリピプラゾールのCD添加による苦味抑制効果は、CPA値により評価した。CPA値は、3回の測定データの平均値である。CPA値が高いほど苦味が強いことを示すため、CPA値が低いほど、CD添加による苦味抑制効果が高いことを示す。
【0141】
CPA値に加えて、CD濃度が0mMの溶液のCPA値を100%とし、10mM塩化カリウムのみの溶液のCPA値を0%とした場合の、各CD添加濃度におけるCPA相対値を下記表に示す。
【0142】
【0143】
上記表に示すように、各種CDを0.5mM以上で添加した場合に、アリピプラゾール溶液のCPA値の減少が観察された。各種CDの添加により、苦味の抑制が認められ、中でもβ-CDによる効果が顕著であった。
【0144】
次に、アリピプラゾール溶液に、終濃度が0.1~20mMとなるようにβ-CDを溶解し、上記と同様にCPA値を測定し、CPA相対値を算出した。結果を下記表に示す。
【表4】
【0145】
アリピプラゾール溶液のCPA値は、β-CDの添加により低減し、その効果は添加濃度に依存して高くなることが明らかになった。これらの結果から、アリピプラゾール1モルに対して、β-CDが0.2~40モルの範囲において用量依存的に味認識増地で検出される苦味の抑制に効果的であることを確認した。
【0146】
〔実施例4:内服液の製造例〕
製造例:アリピプラゾール 1.0mg/mL
1.精製水80mLに、アリピプラゾール100mgを溶解する。
2.アリピプラゾール水溶液に、β-CD 2.5gを溶解する。
3.上記混合液に香料を加え、更に精製水を加えて100mLとする。
本製造例の内服液は、苦味が抑制され、医薬品として許容できる味である。
【0147】
〔実施例5:アトモキセチン塩酸塩の不快な苦味の抑制〕
10mM 塩化カリウム溶液に、アトモキセチン塩酸塩を終濃度0.5mMとなるように溶解し、これをアトモキセチン塩酸塩溶液とした。ここに、終濃度が0.5~5mMとなるようにα-CD、β-CD、γ-CD又はヒドロキシプロピル化β-CD(HP-β-CD)を加えて完全に溶解させた。
【0148】
アトモキセチン塩酸塩溶液の苦味を、味認識装置「SA402B」(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)および苦味センサーAC0を用いてCPA(Change of Membrane Potential by Absorption)値(mV)を測定することにより行った。アトモキセチン塩酸塩溶液のCD添加による苦味抑制効果は、CPA値により評価した。CPA値は、3回の測定データの平均値である。CPA値が高いほど苦味が強いことを示すため、CPA値が低いほど、CD添加による苦味抑制効果が高いことを示す。
【0149】
CPA値に加えて、CD濃度が0mMの溶液のCPA値を100%とし、10mM塩化カリウムのみの溶液のCPA値を0%とした場合の、各CD添加濃度におけるCPA相対値を下記表に示す。
【0150】
【0151】
上記表に示すように、α-CDを2.5mM以上で添加した場合、β-CDを0.5mM以上で添加した場合、γ-CDを2.5mM以上で添加した場合、及びHP-β-CDを2.5mM以上で添加した場合に、アトモキセチン塩酸塩溶液のCPA値の減少が観察された。
【0152】
次に、アトモキセチン塩酸塩溶液に、終濃度が10mM又は20mMとなるようにβ-CDを溶解し、上記と同様にCPA値を測定し、CPA相対値を算出した。結果を下記表に示す。
【表6】
アトモキセチン塩酸塩溶液のCPA値は、β-CDの添加により低減し、その効果は添加濃度に依存して高くなることが明らかとなった。これらの結果から、アトモキセチン塩酸塩1モルに対して、β-CDが1~40モルの範囲において用量依存的に味認識装置で検出される苦味の抑制に効果的であることを確認した。
【0153】
〔実施例6:内服液の製造例〕
製造例:アトモキセチン塩酸塩 4.6mg/mL(アトモキセチンとして4mg)
1.精製水80mLに、アトモキセチン塩酸塩460mgを溶解する。
2.アトモキセチン塩酸塩水溶液に、β-CD 1.8gを溶解する。
3.上記混合液に香料を加え、更に精製水を加えて100mLとする。
本製造例の内服液は、苦味が抑制され、医薬品として許容できる味である。
【0154】
〔実施例7:ドネペジル塩酸塩の不快な苦味の抑制〕
10mM 塩化カリウム溶液に、ドネペジル塩酸塩を終濃度1mMとなるように溶解し、これをドネペジル塩酸塩溶液とした。ここに、終濃度が0.5~10mMとなるようにα-CD、β-CD、γ-CD又はヒドロキシプロピル化β-CD(HP-β-CD)を加えて完全に溶解させた。
【0155】
ドネペジル塩酸塩溶液の苦味を、味認識装置「SA402B」(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)および苦味センサーAC0を用いてCPA(Change of Membrane Potential by Absorption)値(mV)を測定することにより行った。ドネペジル塩酸塩溶液のCD添加による苦味抑制効果は、CPA値により評価した。CPA値は、3回の測定データの平均値である。CPA値が高いほど苦味が強いことを示すため、CPA値が低いほど、CD添加による苦味抑制効果が高いことを示す。
【0156】
CPA値に加えて、CD濃度が0mMの溶液のCPA値を100%とし、10mM塩化カリウムのみの溶液のCPA値を0%とした場合の、各CD添加濃度におけるCPA相対値を下記表に示す。
【0157】
【0158】
上記表に示すように、α-CDを1mM以上で添加した場合、β-CDを0.5mM以上で添加した場合、γ-CDを1mM以上で添加した場合、及びHP-β-CDを0.5mM以上で添加した場合に、ドネペジル塩酸塩溶液のCPA値の減少が観察された。
【0159】
次に、ドネペジル塩酸塩溶液に、終濃度が0.1mM又は20mMとなるようにβ-CDを溶解し、上記と同様にCPA値を測定し、CPA相対値を算出した。結果を下記表に示す。
【表8】
ドネペジル塩酸塩溶液のCPA値は、γ-CDの添加により低減し、その効果は添加濃度に依存して高くなることが明らかとなった。これらの結果から、ドネペジル塩酸塩1モルに対して、β-CDが0.1~20モルの範囲において用量依存的に味認識装置で検出される苦味の抑制に効果的であることを確認した。
【0160】
〔実施例8:内服液の製造例〕
製造例:ドネペジル塩酸塩 0.15mg/mL
1.精製水80mLに、ドネペジル塩酸塩15mgを溶解する。
2.ドネペジル塩酸塩水溶液に、β-CD 817.2mgを溶解する。
3.上記混合液に香料を加え、更に精製水を加えて100mLとする。
本製造例の内服液は、苦味が抑制され、医薬品として許容できる味である。
【0161】
〔実施例9:ドルゾラミド塩酸塩の不快な苦味の抑制〕
10mM 塩化カリウム溶液に、ドルゾラミド塩酸塩を終濃度0.5mMとなるように溶解し、これをドルゾラミド塩酸塩溶液とした。ここに、終濃度が0.5~5mMとなるようにα-CD、β-CD、γ-CD又はヒドロキシプロピル化β-CD(HP-β-CD)を加えて完全に溶解させた。
【0162】
ドルゾラミド塩酸塩の苦味を、味認識装置「SA402B」(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)および苦味センサーAC0を用いてCPA(Change of Membrane Potential by Absorption)値(mV)を測定することにより行った。ドルゾラミド塩酸塩溶液のCD添加による苦味抑制効果は、CPA値により評価した。CPA値は、3回の測定データの平均値である。CPA値が高いほど苦味が強いことを示すため、CPA値が低いほど、CD添加による苦味抑制効果が高いことを示す。
【0163】
CPA値に加えて、CD濃度が0mMの溶液のCPA値を100%とし、10mM塩化カリウムのみの溶液のCPA値を0%とした場合の、各CD添加濃度におけるCPA相対値を下記表に示す。
【0164】
【0165】
上記表では、ドルゾラミド塩酸塩溶液のCPA値は、α-CDを10mM以上で添加した場合、β-CDを5mM以上で添加した場合、γ-CDを2.5mM以上で添加した場合及びHP-β-CDを10mM以上で添加した場合に、ドルゾラミド塩酸塩溶液のCPA値の減少が観察された。
【0166】
次に、ドルゾラミド塩酸塩溶液に、終濃度が1mM又は20mMとなるようにγ-CDを溶解し、上記と同様にCPA値を測定し、CPA相対値を算出した。結果を下記表に示す。
【表10】
ドルゾラミド塩酸塩溶液のCPA値は、γ-CDの添加により低減し、その効果は添加濃度に依存して高くなることが明らかとなった。これらの結果から、ドルゾラミド塩酸塩1モルに対して、γ-CDが2~40モルの範囲において用量依存的に味認識装置で検出される苦味の抑制に効果的であることを確認した。
【0167】
〔実施例10:点眼剤の製造例〕
製造例:ドルゾラミド塩酸塩 5.6mg/mL(ドルゾラミドとして5mg)
1.精製水80mLに、ドルゾラミド塩酸塩560mgを溶解する。
2.ドルゾラミド塩酸塩水溶液に、γ-CD 4.0gを溶解する。
3.上記混合液精製水を加えて100mLとする。
本製造例の点眼剤は、苦味が抑制され、医薬品として許容できる味である。
医薬活性化合物とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合する工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体は医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上とし、前記医薬活性化合物がアトモキセチン塩酸塩である、前記医薬活性化合物の苦味抑制方法。
医薬活性化合物とシクロデキストリン及び/又はその誘導体とを溶媒中で混合して、苦味を低減させた医薬活性化合物含有溶液を得る工程を含み、シクロデキストリン及び/又はその誘導体は医薬活性化合物1モルに対して0.5モル以上とし、前記医薬活性化合物がアトモキセチン塩酸塩である、前記医薬活性化合物含有組成物の製造方法。