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  • 特開-時計用等温装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091472
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】時計用等温装置
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/02 20060101AFI20240627BHJP
   G04B 43/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G04B37/02
G04B43/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202913
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】22216514.4
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ウンメル、 アントワーヌ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定の温度環境に耐えることができる、時計の機械部品及び/又は機能部品に用いる等温装置を提供する。
【解決手段】時計10の機械部品及び/又は機能部品に用いる等温装置1であって、筐体4を含み、時計10のケース12を着脱可能に配置することができるケース2と、ケース2の透明カバー6に対向して配置された透明カバー11とを含み、装置1は、ケース2の機能要素15から遠ざけることによって時計10のケース12を筐体4内に固定する着脱可能な固定装置13であって、筐体4を形成する要素15は、ケース2の中央部9a、背部9b及び着脱可能な不透明度透明カバー6を含む着脱可能な固定装置13と、筐体4の温度を動的に制御するシステム3であって、可変不透明度透明カバー6と、ケース2の透明カバー6の不透明度を制御するように構成された制御ユニット8とを含むシステム3とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(10)の機械部品及び/又は機能部品(5)に用いる等温装置(1)であって、筐体(4)を有し、前記時計(10)のケース(12)が着脱可能に配置されたケース(2)と、前記ケース(2)の透明カバー(6)に対向して配置された透明カバー(11)とを含み、前記装置(1)は、
前記時計(10)のケース(12)をこのケース(2)の機能要素(15)から遠ざけることによって前記筐体(4)内に固定する着脱可能な固定装置(13)であって、この筐体(4)を形成する前記要素(15)は、中央部(9a)、背部(9b)及びこのケース(2)の可変不透明度透明カバー(6)を含む着脱可能な固定装置(13)と、
この筐体(4)の温度を動的に制御するシステム(3)であって、前記可変不透明度透明カバー(6)と、前記ケース(2)の前記透明カバー(6)の不透明度を制御するように構成された制御ユニット(8)とを含むシステム(3)と
を含む装置(1)。
【請求項2】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、その不透明度を変化させる要素(7)を含む請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(8)は、前記可変不透明度透明カバー(6)の不透明度を変化させる要素(7)に接続要素(14)を用いて接続された請求項1に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記可変不透明度透明カバー(6)は透明基板を含み、その下面が前記透明カバー(6)の不透明度を変化させる要素(7)を含む請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、その本体に含まれた透過率可変要素(7)を含む透明基板を含む請求項1に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、その本体に含まれた透過率変化要素(7)を含む透明基板を含み、前記該透明基板は2層の透明材料によって形成され、それらの層の間に機能層の積層によって形成された前記透過率変化要素(7)が配置された請求項1に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記制御ユニット(8)は、少なくとも1つのイベントセンサを含み、前記イベントは前記ケース(2)の筐体(4)内の温度変化を引き起こすことが可能であり、そのようなセンサは光度センサ及び/又は温度センサである請求項1記載の装置(1)。
【請求項8】
前記可変不透明度透明カバー(6)はその透過率(7)を変化させる要素を含み、前記可変不透明度透明カバー(6)の透過率(7)を変化させる要素は、エレクトロクロミック要素、特に液晶エレクトロクロミック要素である請求項1に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記筐体(4)は、真空又は準真空にある請求項1に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、時計(10)のケース(12)の透明カバー(11)の表面積よりも実質的に大きい、又は厳密に大きい表面積を有する請求項1に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に配置された時計の機械部品及び/又は機能部品のための等温装置に関し、装置は、このケースの筐体の温度を動的に制御するシステムを含む。
【背景技術】
【0002】
腕時計は、典型的には、手首の周りに巻くバンドと、いくつかの機械部品又は電子部品を含む時計のケースとを含んでいる。これらの部品の中には、特定の温度に耐えることができず、これらの温度で正常に機能しなくなるものがあることが先行技術で知られている。
【0003】
したがって、このような温度が続く可能性のある環境において、時計、特に電子時計を使用できるようにする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この目的のために、本発明は、時計の機械部品及び/又は機能部品の等温装置であって、筐体を有し、時計のケースが着脱可能に配置され得るケースと、ケースの透明カバーに対向して配置された透明カバーとを含み、装置は、
このケースの機能要素から遠ざけることによって時計のケースを筐体内で固定する着脱可能な固定装置であって、この筐体を形成する要素は、このケースの中央部、背部及び可変不透明度透明カバーを含む着脱可能な固定装置と
可変不透明度透明カバーと、ケースの筐体透明カバーの不透明度を制御するように構成された制御ユニットとを含むこの筐体の温度を動的に制御するシステムと
を含む。
【0005】
他の実施形態は、
可変不透明度透明カバーは、透明カバーの透過率を変化させる要素を含み、
制御ユニット(8)は、可変不透明度透明カバーの透過率を変化させる要素に接続要素を用いて接続され、
可変不透明度透明カバーは透明基板を含み、その下面は透過率可変要素を含み、
可変不透明度透明カバーは、その本体に含まれた透過率可変要素を含む透明基板を含み、
透明基板は、2層の透明材料によって形成され、その層の間に機能層の積層によって形成された透過率可変要素が配置され、
制御ユニットは、少なくとも1つのイベントセンサを含み、イベントはケースの筐体内の温度変化を引き起こすことが可能であり、そのようなセンサは光度センサ及び/又は温度センサであり、
可変不透明度透明カバーの透過率を変化させる要素は、エレクトロクロミック要素、特に液晶エレクトロクロミック要素であり、
筐体は真空又は準真空にあり、
可変不透明度透明カバーは、の透明カバーの表面積よりも実質的に大きいか、又は厳密に大きい表面積を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
その他の特徴及び利点は、説明のためであって限定するものではない添付の図を参照することにより、以下の説明から明らかになるであろう。
図1】本発明の実施形態による、透明カバーの透過率を変化させる要素を含む透明カバーを有するケースを含む等温装置の上面の概略図である。
図2】本発明の実施形態による図1の時計の概略図の軸II-IIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1及び図2は、時計10の機械部品及び/又は機能部品5のための等温時計装置1を示している。この等温装置1は、「デュワー時計装置」又はより簡単に「デュワー装置」としても知られ、熱保護ケース2を含んでいる。このようなケース2は、「等温ケース」又は「デュワーケース」としても知られている。時計10の機械部品及び/又は機能部品5のためのこの等温保護装置1は、時計10の機械部品及び/又は機能部品5に良好な熱絶縁を提供することができ、ケース12は、これらの部品5にこのような熱絶縁を提供するために、このケース2の筐体4内に配置する必要がある。言い換えれば、このケース2は、特に、これらの機械部品及び/又は機能部品5のための適切な熱絶縁を作り出すために、その機能要素15と時計10のケース12との組み合わせによって形成される。この筐体4を形成するケース2のこれらの機能要素15は、このケース2の透明カバー6、中間部9a及び背部9bの内周壁17からなる。この構成において、時計10のケース12は、筐体4を形成するケース2の機能要素から遠ざけられるか、又は距離を置かれながら、このような筐体4内に配置される。この中間部9aの内周壁17は、筐体4のものでもあることに留意すべきである。
【0008】
この恒温装置1において、ケース2は、その筐体4の温度を動的に制御するシステム3を含んでいる。このようなシステム3は、筐体4内の温度を調節するのに有用である。そのために、このシステム3は、ケース2の透明カバー6(透明な可変不透明度透明カバー6であり、単に可変不透明度透明カバー6としても知られている)と、この透明カバー6に接続され、この不透明度を制御するように構成された制御ユニット8とを含んでいる。
【0009】
このような構成において、制御ユニット8は、ハードウェアリソース、特に、データ及び制御アドレスバスと同様にメモリ要素と協働する少なくとも1つのプロセッサを有するコントローラと、別称バッテリとして知られるエネルギー蓄積器とを含む電子回路を含んでいる。この制御装置8は、ケース2の筐体4内の温度を管理するアルゴリズムをメモリ要素に含んでいる。このようなアルゴリズムは、ケース2の筐体4内の温度を管理するために、特に制御ユニット8に含まれるイベントセンサからのデータを考慮し、この制御ユニット8のプロセッサによって実行される。このようなデータは、例えば、これらのセンサによって検出されたイベントに関連する情報を提供する可能性があり、当該イベントは、ケース2の筐体4内の温度の変動に寄与/誘発/発生しがちであることに留意すべきである。これらのイベントは、等温装置1の環境における特定のレベルの輝度、特に日射の検出や、設定可能な基準温度に対する筐体4内の温度変化の検出などを含むが、これらに限定されない。
【0010】
このような構成において、イベントセンサは、特に、非限定的かつ非網羅的な態様で、
日射センサ及び/又は赤外線日射センサ及び/又は紫外線日射センサを含む光度センサ、及び/又は
温度センサ
を含む。
【0011】
各イベントセンサは、制御ユニット8の一部を構成し、このユニット8のコントローラに接続されていることに留意すべきである。温度センサはケース2の筐体4に設置されている。光度センサはケース2内、特にケース2の機能要素15の少なくとも1つに配置され、等温装置1の外部環境、ひいてはケース2の外部環境からの光にさらされるようになっている。一例として、この光度センサは、ケース2の透明カバー6の本体及び/又はこの透明カバー6の内部面16に配置することができる。
【0012】
この等温装置1では、制御ユニット8は、その電子回路が配置されたフレキシブルプリント基板のような基板を含むが、光度センサは例外であり、透明カバー6内又はケース2のこの透明カバー6の内面16に含まれてもよい。この文脈では、回路は、三次元印刷プロセス又はポリマー印刷プロセスを使用して、この基板上に構築することができる。この基板は、筐体4内で、背部9bの内面18又は筐体4の内周壁17のような機能要素15の1つに配置されることに留意すべきである。
【0013】
上述のように、制御ユニット8、特にそのコントローラは、接続要素14を介してケース2の透明カバー6にリンク/接続されている。このような透明カバー6は、基板と、この基板の透過率を変化させる要素7と、透明カバー6の延長とによって形成される。このような透過率可変要素7は、例えば、エレクトロクロミック要素、特に液晶エレクトロクロミック要素である。この透過率は、ケース2の透明カバー6が入射日射量の光束に対して透過できるエネルギー(熱放射又は光放射)の量である。このような基板は、ミネラルガラス、光学セラミック、アクリルガラス又はサファイアガラスなどのガラスなどの材料で作られていることに留意すべきである。
【0014】
このような透過率可変要素7は、それがエレクトロクロミック要素である場合、陽イオン及び電子を可逆的に同時に挿入することができるエレクトロクロミック材料の層を含み、その挿入状態及び脱挿入状態に対応する酸化状態は、異なる色調を有し、その状態の一方は、他方よりも高い光透過率を有する。挿入又は脱挿入反応は、制御ユニット8による電圧の印加によって制御される。通常、酸化タングステンをベースとするエレクトロクロミック材料は、透明導電層のような電子源、及びイオン伝導性電解質のような陽イオン源と接触させる必要がある。
【0015】
ケース2の透明カバー6の第1の変形例では、透過率可変要素7が基板の下面に配置/塗布/印刷/蒸着され、その後、この透明カバー6の内面16を形成する。この透過率可変要素7は、機能層の積層から公知の方法で形成される。より具体的には、液晶エレクトロクロミック要素の場合、第1及び第2の導電層間に配置され、液晶、特に正の誘電異方性を有するネマチック液晶の液滴が分散された高分子材料をベースとするフィルムを含む。フィルムが通電されると、液晶は好ましい軸に沿って配向し、この透明カバー6の透過率が最大となる第1の状態で透明カバー6を構成する。フィルムを非通電状態にすると、透明カバーの配向がないため、フィルムは拡散性と吸収性を有し、透明カバー6は、その透過率が最小、あるいはゼロとなる第2の状態に構成される。
【0016】
ケース2の透明カバー6の第2の変形例では、透過率可変要素7は、このケース2の透明カバー6を形成する基板本体に含まれている。この場合、この基板は、ガラスなどの透明材料の2層で形成することができ、その層間に、機能層の積層で形成された透過率可変要素7が配置される。この透過率可変要素7がエレクトロクロミック要素である場合、これらの機能層は、例えば、
第1の導電層と、
水和酸化イリジウムからなるアノードエレクトロクロミック材料の第1の層(水和酸化ニッケルの層に置き換えることもできる)と、
保護機能を持つ水和酸化タンタルの層と、
ポリオキシエチレンとリン酸の固溶体の電解質の層と、
酸化タングステンをベースとするカソードエレクトロクロミック材料の第2の層と
第2の導電層と
を含んでもよい。
【0017】
これら2つの変形例において、透過率可変要素7を形成する機能層の積層は、好ましくは紫外線フィルタリング剤を含む、略称PVBで知られるポリビニルブチラールのような熱可塑性ポリマーの追加層を含んでもよいことに留意すべきである。このような層は、第1の変形例では第1の導電層の直後に配置することができ、第2の変形例ではガラス層と第1の導電層との間に配置することができる。
【0018】
このように、透過率可変要素7の第1及び第2の導電層に印加される電圧の変化を制御することによって、制御ユニット8は、ケース2の透明カバー6の透過率特性を第1及び第2の透過率状態の間で変化させることを可能にする。ここで、第1の状態とは、この透明カバー6の透過率が最大である状態であり、この状態では、ケース2の透明カバー6は透明であり、日射が筐体4を透過する。第2の状態は、透明カバー6の透過率が最小又はゼロの状態に関するもので、この状態では、透明カバー6は完全に又は部分的に不透明となり、この筐体4内への日射の少なくとも99%の透過を阻止/遮断する。言い換えれば、この第2の状態では、日射はもはや透明カバー6によってケース2の筐体4内に透過されない。
【0019】
加えて、前述したように、時計10のケース12は、ケース2の着脱可能な固定装置13のおかげで、筐体4の内周壁17から離間19させられたり、あるいは十分に離間19させられたりしながら、この等温装置1のケース2内に配置される。言い換えれば、このような固定装置13は、ケース12と、筐体4を形成するケース2の機能要素との間の離間19を構成することができる。この構成において、固定装置13は、中間部9a(又は筐体4の)及び/又は背部9b及び/又は透明カバー6の内周壁17と時計10のケース12との間、特にこのケース12の外側の全体的な面との間の熱伝導を減少させるか、又は排除するのに役立つ。この外側全体の面は、この時計10のケース12の透明カバー11からなる上側の面と、ケース12の背部からなる下側の面と、このケース12の中間の外周壁とを含む。
【0020】
このような構成において、ケース2の筐体4の内周壁17に時計10のケース12を着脱可能に固定する固定装置13は、
時計10のケース12及びこのケース2の筐体4の内周壁17にそれぞれ接続可能な第1及び第2の端部を有する各接続部材であって、各部材の本体は、等温装置1のケース2の外部環境への熱損失を確実に減少させ、したがって時計10のケース12内の安定した内部温度を確保するのに役立つ特定の構造を有する、及び/又は
筐体4内での時計10ケース12の磁気懸架を確実にするように構成された接続部材であって、実際、これらの接続部材は、ケース12とケース2の筐体4を形成する機能要素15との間の離間19を確保し維持するように構成される。このような接続部材は、中間部9a及び/又は背部9b及び/又は透明カバー11の内周壁17と時計10のケース12との間、特にこのケース12の外側の全体的な面との間の熱伝導を減少させるか、あるいは排除するのに役立つ。
【0021】
ケース12は、クオーツ時計のような電子時計であっても、機械式時計又は電気機械式時計であってもよい時計10に含まれることに留意すべきである。
【0022】
時計10の上述の機械的及び/又は機能的構成要素5は、非制限的かつ非網羅的な方法で、時計ムーブメント、文字盤、針、リング、ジョイントなどの表示装置、及び/又は電子的及び/又は電気的構成要素からを含む。特に、このような電子部品及び/又は電気部品は、例えば、表示装置、プロセッサ、メモリ、エネルギー貯蔵部品、モータ、集積回路及び電子発振器などを含むことに留意されたい。
【0023】
このような構成において、この装置1は、したがって、この装置1のユーザが着用することを可能にするバンド9cが取り付けられた中央部9aを含むケース2から構成される。このケース2は、前述の透明カバー6と背部9bも含んでいる。この装置1では、透明カバー6が、好ましくは、時計10のケース12の透明カバー11よりも実質的に大きいか又は厳密に大きい表面積からなることに留意すべきである。言い換えれば、透明カバー6の内側面16は、時計10の透明カバー11の上側面の表面積よりも実質的に大きいか又は厳密に大きい表面積を有する。
【0024】
これまで見てきたように、この装置1の透明カバー6、中央部9a及び背部9bのような機能要素15は、時計10のケース12を受け入れることができるこのケース2の筐体4を一緒に規定する。ケース2のこれら3つの要素15、すなわち中央部9a、透明カバー6及び背部9bは、この筐体4を構成するために一緒に接合される別々の要素であってもよい。あるいは、ケース2の中央部9aと背部9bは一緒に一体部品を形成してもよく、当該一体部品は、背部9bに対向する開口部を画定し、この開口部は、透明カバー6によって着脱可能かつ密閉的に閉じられることが可能である。あるいは、時計10のケース2の中間部9aと透明カバー6とが一緒になって一体の部品を形成することもでき、一体の部品は、透明カバー6に対向する開口部を画定し、この開口部は、裏蓋9bによって、やはり着脱可能に、水密的に密閉された状態で閉じることができる。
【0025】
中間部9a及び背部9bは、好ましくは、非制限的かつ非網羅的な方法で、金属材料、ガラス、又は炭素繊維もしくはガラス繊維で強化された熱硬化性もしくは熱可塑性ポリマー樹脂、又はセラミック材料で作られる。中間部9a及び背部9bが透明又は半透明で、例えばガラス製である場合、中間部9aの内側周壁17及び背部9bの内側面18は、例えば銀の層のような金属又は類似の反射コーティングで被覆されていてもよいことに留意すべきである。
【0026】
さらに、この装置では、時計10のケース12がケース2の筐体4内に配置されるとき、このケース12と、中間部9a、背部9b及び透明カバー6の内周壁17との間に画定される空間は、物質がないか、実質的に空である。換言すれば、筐体4は真空又は準真空にある。
【0027】
したがって、この構成では、この等温装置1は、従来技術でよく知られているデュワー管/容器と同じ特性及び特徴を有することが理解される。前述したように、この等温装置1の特性と特徴は、このような装置1が配置されうる外部環境において、特に極端な温度に対して良好な断熱性を与えるのに役立つ。
【0028】
さらに、時計10の機械的及び/又は機能的構成要素5は非磁性であってもよく、及び/又は時計10のケース2は、これらの構成要素を磁場から絶縁することを可能にする材料で作られてもよく、又はコーティングで覆われてもよいことに留意すべきである。
【0029】
さらに、固定装置13は、この腕時計10のケース12の透明カバー11がケース2の透明カバー6に対向して配置されるように、この腕時計10のケース12をこのケース2内に配置するのに役立ち、これにより、この腕時計10の文字盤上の情報及び/又は表示インターフェースが、等温装置1を装着したユーザによって、ケース2の透明な透明カバー6を通して知覚され得る。
【0030】
したがって、このような等温装置1は、長期間にわたって時計10のケース12内に配置された構成要素からの放射による熱損失を低減し、あるいは防止することによって、時計10の機械部品及び/又は機能部品5に外部環境から非常に良好な断熱性を提供する。したがって、装置1の外部の温度が極端な値に達した場合でも、筐体4の内部の温度は、時計10がケース2内に配置されたときのケース12内の温度と実質的に等しく、通常は約20℃に保たれる。等温装置1の環境にどのような温度条件が存在しようとも、時計10のケース12内の温度は時計10の適切な機能を妨げない温度であることに留意すべきである。この温度は、このような時計10のケース12が、このような温度が支配する環境に直接置かれた場合、すなわち等温装置1のケース2の外側に置かれた場合に、その構成部品の動作温度を維持することができるであろう期間よりも、2倍から18倍長い期間維持される。したがって、このような構成により、時計10の機械部品及び/又は機能部品5を保護することが可能となり、極端な外部温度条件下でも最適に動作することを保証するのに役立つことが考えられる。
【0031】
本発明が上述した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な簡単な修正及び変形が想定され得ることはいうまでもない。例えば、制御ユニット8は、特に、等温装置の使用者が、ケース2の透明カバー6を視線の方向に向けることによって、時計10の文字盤に表示された情報をメモすることを望むことが検出されるとすぐに、ケース2の透明カバー6の第2の状態から第1の透過状態への移行の動作をさせることを可能にする、等温装置1の動作センサを構成することが想定され得る。このようなセンサは、ジャイロスコープ及び/又は慣性電気機械マイクロシステム回路タイプの電子部品の形態のジャイロスコープ及び/又は慣性センサであってもよい。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(10)の機械部品及び/又は機能部品(5)に用いる等温装置(1)であって、筐体(4)を有し、前記時計(10)のケース(12)が着脱可能に配置されたケース(2)と、前記ケース(2)の透明カバー(6)に対向して配置された透明カバー(11)とを含み、前記等温装置(1)は、
前記時計(10)のケース(12)をこのケース(2)の機能要素(15)から遠ざけることによって前記筐体(4)内に固定する着脱可能な固定装置(13)であって、この筐体(4)を形成する前記機能要素(15)は、中央部(9a)、背部(9b)及びこのケース(2)の可変不透明度透明カバー(6)を含む着脱可能な固定装置(13)と、
この筐体(4)の温度を動的に制御するシステム(3)であって、前記可変不透明度透明カバー(6)と、前記ケース(2)の前記透明カバー(6)の不透明度を制御するように構成された制御ユニット(8)とを含むシステム(3)と
を含む装置(1)。
【請求項2】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、その不透明度を変化させる要素(7)を含む請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(8)は、前記可変不透明度透明カバー(6)の不透明度を変化させる要素(7)に接続要素(14)を用いて接続された請求項1に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記可変不透明度透明カバー(6)は透明基板を含み、その下面が前記透明カバー(6)の不透明度を変化させる要素(7)を含む請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、その本体に含まれた透過率可変要素(7)を含む透明基板を含む請求項1に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、その本体に含まれた透過率変化要素(7)を含む透明基板を含み、前記該透明基板は2層の透明材料によって形成され、それらの層の間に機能層の積層によって形成された前記透過率変化要素(7)が配置された請求項1に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記制御ユニット(8)は、少なくとも1つのイベントセンサを含み、前記イベントセンサのイベントは前記ケース(2)の筐体(4)内の温度変化を引き起こすことが可能であり、そのようなセンサは光度センサ及び/又は温度センサである請求項1記載の装置(1)。
【請求項8】
前記可変不透明度透明カバー(6)はその透過率(7)を変化させる要素を含み、前記可変不透明度透明カバー(6)の透過率(7)を変化させる要素は、エレクトロクロミック要素、特に液晶エレクトロクロミック要素である請求項1に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記筐体(4)は、真空又は準真空にある請求項1に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記可変不透明度透明カバー(6)は、時計(10)のケース(12)の透明カバー(11)の表面積よりも実質的に大きい、又は厳密に大きい表面積を有する請求項1に記載の装置(1)。
【外国語明細書】