(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091476
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】時計用保護ケーシング
(51)【国際特許分類】
G04B 43/00 20060101AFI20240627BHJP
G04B 37/12 20060101ALI20240627BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240627BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G04B43/00 Z
G04B37/12 Z
H05K5/02 A
H05K5/06 B
H05K5/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023204007
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】22216516.9
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ウンメル、 アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB03
4E360AB05
4E360AB08
4E360AB09
4E360AB31
4E360AB59
4E360AB64
4E360BA01
4E360BA08
4E360BA15
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360CA08
4E360EA18
4E360EA25
4E360EA29
4E360EA30
4E360EC13
4E360EC16
4E360ED02
4E360ED07
4E360ED14
4E360ED16
4E360ED17
4E360ED23
4E360ED28
4E360EE03
4E360EE13
4E360FA02
4E360FA12
4E360FA20
4E360GA08
4E360GA14
4E360GA21
4E360GA26
4E360GB99
4E360GC02
4E360GC06
4E360GC08
4E360GC12
4E360GC14
4E360GC20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特定の温度に耐えることができる時計ケーシングを提供する。
【解決手段】時計10の機械部品及び/又は機能部品5のためのデュワーケーシング1であって、時計のケース12が着脱可能に配置できる構内4が設けられ、その表示インターフェースがケーシングのクリスタル6に面して配置され、ケーシングは、このケースの構内を形成する機能要素15から離しておきつつ構内に時計のケースを固定する可逆的な固定装置13を備え、ケーシングのクリスタルは、クリスタルの透過率を変化させる要素7aと、時計10の表示インターフェースに向けられた照明を生成する要素7bとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(10)の機械部品及び/又は機能部品(5)のためのデュワーケーシング(1)であって、前記時計(10)のケース(12)を着脱可能に配置できる構内(4)が設けられ、その表示インターフェースが前記ケーシング(1)のクリスタル(6)に面して配置され、前記ケーシング(1)は、このケース(2)の前記構内(4)を形成する機能要素(15)から離しておきつつ前記構内(4)に前記時計(10)のケース(12)を固定する可逆的な固定装置(13)を備え、前記ケーシング(1)のクリスタル(6)は、前記クリスタル(6)の透過率を変化させる要素(7a)と、前記時計(10)の表示インターフェースに向けられた照明を生成する要素(7b)とを備える、ケーシング(1)。
【請求項2】
前記透過率を変化させる要素(7a)及び前記照明を生成する要素(7b)は、前記クリスタル(6)に含まれ、重ね合わされる、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項3】
前記クリスタル(6)は、透明材料の層と、前記透過率を変化させる要素(7a)を形成する機能層の積層体と、前記照明を生成する要素(7b)を形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項4】
前記クリスタル(6)は、透明材料の外層と、前記透過率を変化させる要素(7a)を形成する機能層の積層体と、前記照明を生成する要素(7b)を形成する機能層の積層体と、透明材料の内層とを連続的に備える組立品によって形成される、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項5】
前記クリスタル(6)は、透明材料の第1の外層と、前記透過率を変化させる要素(7a)を形成する機能層の積層体と、透明材料の第2の外内層と、前記照明を生成する要素(7b)を形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項6】
それは、前記クリスタル(6)の前記透過率を変化させる要素(7a)及び前記照明を生成する要素(7b)に接続要素(14a、14b)を介して接続された制御ユニット(8)を備える、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項7】
前記制御ユニット(8)は、光度センサ及び/又は温度センサなどの少なくとも1つのイベントセンサを備える、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項8】
前記透過率を変化させる要素(7a)は、エレクトロクロミック素子、特に液晶エレクトロクロミック素子である、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項9】
前記照明を生成する要素(7b)は、OLED型の透明な照明素子である、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項10】
それは、前記ケーシング(1)の構内(4)の温度を動的に調節するために前記透過率を変化させる要素(7a)を駆動/制御/調整するように構成された制御ユニット(8)を備える、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項11】
それは、前記時計表示インターフェース(10)のコントラストを調整/設定するために前記照明を生成する要素(7b)を駆動/制御/設定するように構成された制御ユニット(8)を備える、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項12】
前記構内(4)は、真空又は真空に近い状態にある、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項13】
前記クリスタル(6)は、前記時計(10)のケース(12)のクリスタル(11)の表面よりも実質的に大きいか又は厳密に大きい表面を有する、請求項1に記載のケーシング(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュワーケーシングタイプの時計用保護ケーシング、特に、前記ケーシング内に配置された時計の機械部品及び/又は機能部品を熱的に保護する時計用保護ケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計は、ブレスレットと、いくつかの機械部品、電気部品又は電子部品を含む時計ケースとを備える。従来技術では、これらの部品のいくつかは、特定の温度に耐えることができず、これらの温度では正しく動作しなくなることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、このような温度が広がり得る環境で、時計、特に電子時計を使用できる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、本発明は、時計の機械部品及び/又は機能部品のためのデュワーケーシングであって、前記時計のケースを着脱可能に配置できる構内が設けられ、前記時計の表示インターフェースが前記ケーシングのクリスタルに面して配置され、前記ケーシングは、このケーシングの前記構内を形成する機能要素から前記時計ケースを離しておきつつ前記構内に前記時計ケースを固定する可逆的な固定装置を備え、前記ケーシングのクリスタルは、前記クリスタルの透過率を変化させる要素と、前記時計の表示インターフェースに向けられた照明を生成する要素とを備える、デュワーケーシングに関する。
【0005】
他の実施形態では、
・透過率を変化させる要素及び照明を生成する要素は、前記クリスタル(6)に含まれ、重ね合わされる。
・クリスタルは、透明材料の層と、前記透過率を変化させる要素を形成する機能層の積層体(スタック)と、前記照明を生成する要素を形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される。
・クリスタルは、透明材料の外層と、前記透過率を変化させる要素を形成する機能層の積層体と、前記照明を生成する要素を形成する機能層の積層体と、透明材料の内層とを連続的に備える組立品によって形成される。
・クリスタルは、透明材料の第1の外層と、前記透過率を変化させる要素を形成する機能層の積層体と、透明材料の第2の外内層と、前記照明を生成する要素を形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される。
・ケーシングは、クリスタルの透過率を変化させる要素及び照明を生成する要素に接続要素を介して接続された制御ユニットを備える。
・制御ユニットは、光度センサ及び/又は温度センサなどの少なくとも1つのイベントセンサを備える。
・透過率を変化させる要素は、エレクトロクロミック素子、特に液晶エレクトロクロミック素子である。
・照明を生成する要素は、OLED型の透明な照明素子である。
・ケーシングは、前記ケーシングの構内の温度を動的に調節するために透過率を変化させる要素を駆動/制御/調整するように構成された制御ユニットを備える。
・ケーシングは、前記時計表示インターフェースのコントラストを調整/設定するために照明を生成する要素を駆動/制御/設定するように構成された制御ユニットを備える。
・前記構内は、真空又は真空に近い状態にある。
・クリスタルは、時計ケースのクリスタルの表面よりも実質的に大きいか又は厳密に大きい表面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
他の特徴及び利点は、
図1を参照して、例示的かつ非限定的に以下に続く説明から明らかになるであろう。
【
図1】本発明の様々な実施形態によるデュワーケーシングの概略図の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、時計10の機械部品及び/又は機能部品5のためのデュワーケーシング1を示す。このようなデュワーケーシング1は、「等温ケーシング」又は「熱保護ケーシング」とも呼ばれる。このようなケーシング1は、ブレスレットを備え、使用者が着用することができる「熱保護装置」又は「時計デュワー装置」とも呼ばれるデュワー装置を形成することができる。
【0008】
このようなケーシング1は、時計10の機械部品及び/又は機能部品5に良好な断熱を提供することができ、時計10のケース12は、これらの部品5にこのような断熱を提供するために、このケーシング1の構内4に着脱可能に配置されなければならない。換言すれば、このケーシング1は、特に、これらの機械部品及び/又は機能部品5に好適な断熱を提供するために、その機能要素15と時計10のケース12との組み合わせによって形成される。この前記構内4を形成するケーシング1のこれらの機能要素15は、クリスタル6、このケーシング1の中間部9aの内周壁17及び背部9bを備える。この構成では、時計10のケース12は、このような構内4に、この前記構内4を形成するケーシング1の機能要素から離れた状態で又は機能要素から距離を置いた状態で配置される。なお、この中間部9aの内周壁17は、前記構内4の内周壁でもある。
【0009】
このケーシング1は、その構内4の温度を制御する動的システム3を備える。このようなシステム3は、この構内4に広がる温度を調節するのに役立つ。この目的のために、このシステム3は、ケーシング1のクリスタル6であって、可変の不透明度を有する透明クリスタル6であり、単に可変不透明度クリスタル6とも呼ばれるクリスタル6と、このクリスタル6に接続され、この不透明度を制御/管理するように構成された制御ユニット8とを備える。
【0010】
ケース1は、ハードウェア資源が設けられたコントローラ、特に、記憶素子、データ及び制御アドレスバス、バッテリとも呼ばれるエネルギー蓄積装置と協働する少なくとも1つのプロセッサを備える電子回路を含む制御ユニット8を備える。この制御ユニット8は、その記憶素子に、構内4及びケーシング1内の温度を管理するアルゴリズムと、時計10の表示装置の動的コントラスト調整を管理するアルゴリズムとを含む、いくつかのアルゴリズムを備える。このようなアルゴリズムは、ケーシング1の構内4の温度の管理及びこの表示装置のコントラストの管理を確実にするために、特に制御ユニット8に含まれるイベントセンサからのデータを考慮して、この制御ユニット8のプロセッサによって実行される。なお、このようなデータは、例えば、ケーシング1の構内4の温度の変化及び/又はケーシング1の周囲に広がる周囲の明るさの変化に寄与し/つながり/これらの変化を引き起こす可能性が高く、表示装置上に/表示装置内に存在する情報の読み取りを妨害/変更する可能性がある、これらのセンサによって検出されるイベントに関する情報を提供し得る。これらのイベントは、非限定的かつ非網羅的に、ケーシング1の周囲における特定のレベルの光度、特に太陽放射の検出及び/又は設定可能な基準温度に対する構内4の温度の変化の検出などを含み得る。
【0011】
これに関連して、イベントセンサは特に、非限定的かつ非網羅的に、
・日射センサ及び/又は赤外線日射センサ及び/又は紫外線日射センサを含む光度センサ、及び/又は
・温度センサ
を備える。
【0012】
なお、各イベントセンサは制御ユニット8の一部を構成し、このユニット8のコントローラに接続される。温度センサは、ケーシング1の構内4に配置される。輝度センサは、ケーシング1の外部の環境から来る光にさらされるように、ケーシング1内に、特にこのケーシング1の機能要素15のうちの少なくとも1つに配置される。例として、この光度センサは、ケーシング1のクリスタル6の本体内及び/又はこのクリスタル6の内面16上に配置することができる。
【0013】
このケーシング1では、制御ユニット8は、ケーシング1のクリスタル6内又はこのクリスタル6の内面16上に備えることができる光度センサを除いて、その電子回路が配置された、フレキシブルPCBなどの基板を備える。これに関連して、回路は、3次元印刷法又はポリマー印刷法を用いて、この基板上に組み立てることができる。なお、この基板は、構内4で、背部9bの内面18又は構内4の内周壁17などの機能要素15の1つに配置される。
【0014】
上述したように、制御ユニット8、特にそのコントローラは、ケーシング1のクリスタル6に接続要素14a、14bを介して連結/接続される。より具体的には、制御ユニット8は、これら接続要素14a、14bを介して、クリスタル6の透過率を変化させる要素7a及び照明を生成する要素7bに連結/接続される。このようなクリスタル6は、重ね合わせて配置された透過率を変化させる要素7aと照明を生成する要素7bとを備える。換言すれば、これらの透過率を変化させる要素7a及び照明を生成する要素7bはクリスタル6内で順に重ねて配置される。これらの要素7a、7bは、このクリスタル6内で接触していてもよいし、互いから離れていてもよい。これらの要素7a、7bは、互いに結合されるか又は分離されてこのクリスタル6内に含まれ得る。この透過率を変化させる要素7aと照明を生成する要素7bとの重ね合わせは、照明を生成する要素7bが透過率を変化させる要素7aよりも時計10に最も近いように構成される。
【0015】
より正確には、第1の変形例では、クリスタル6は、透明材料の層と、前記透過率を変化させる要素7aを形成する機能層の積層体と、前記照明を生成する要素7bを形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される。
【0016】
第2の変形例では、クリスタル6は、透明材料の外層と、前記透過率を変化させる要素7aを形成する機能層の積層体と、前記照明を生成する要素7bを形成する機能層の積層体と、透明材料の内層とを連続的に備える組立品によって形成される。透明材料の外層は、ケーシング1の外側部分を形成するクリスタル6の一部に相当する。透明材料の内層は、時計10のケース12のひいては表示装置のクリスタル11に面するクリスタルの一部に相当する。
【0017】
第3の変形例では、クリスタル6は、透明材料の第1の外層と、前記透過率を変化させる要素7aを形成する機能層の積層体と、透明材料の第2の内層と、前記照明を生成する要素7bを形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される。
【0018】
なお、透明材料の層は、鉱物ガラス、光学セラミックス、アクリルガラス、サファイアガラスなどのガラス状材料で作られる。
【0019】
これに関連して、透過率を変化させる要素7aは、例えば、エレクトロクロミック素子、特に液晶エレクトロクロミック素子である。なお、この透過率は、ケーシング1のクリスタル6が入射する太陽放射の束に対して透過させることができるエネルギー(熱放射又は光放射)の量である。
【0020】
このような透過率を変化させる要素7aは、それがエレクトロクロミック素子である場合、カチオン及び電子を可逆的かつ同時に挿入することができるエレクトロクロミック材料の層を含み、挿入状態及び脱離状態に対応するその酸化状態は、はっきりと異なる着色状態であり、一方の状態は他方の状態よりも光透過率が高い。挿入又は脱離反応は、制御ユニット8による電圧の印加によって制御される。したがって、通常は酸化タングステンをベースとするエレクトロクロミック材料は、透明導電層などの電子源及びイオン伝導性電解質などの陽イオン源と接触させなければならない。
【0021】
この透過率を変化させる要素7aは、それ自体既知の方法で、機能層の積層体から形成される。より具体的には、液晶エレクトロクロミック素子の場合、この機能層の積層体は、第1及び第2の導電層の間に配置され、液晶、特に正の誘電異方性を有するネマチック液晶の液滴が分散されたポリマー材料をベースとするフィルムを備える。フィルムに電力を供給すると、液晶は優先軸に沿って配向し、クリスタル6をこのクリスタル6の透過率が最大となる第1の状態に構成する。フィルムへの電力供給を停止すると、液晶の整列がないので、フィルムは拡散性及び吸収性となり、液晶はその結果、その透過率が最小又はゼロになる第2の状態に構成される。
【0022】
代替的に、透過率を変化させる要素7aの機能層のこの積層体は、例えば、
・第1の導電層と、
・水和酸化イリジウムで作られた陽極エレクトロクロミック材料の第1の層(これは水和酸化ニッケルの層で置き換えることができる)と、
・保護機能を有する水和酸化タンタルの層と、
・ポリオキシエチレンとリン酸の固溶体中の電解質の層と、
・酸化タングステンをベースとする陰極エレクトロクロミック材料の第2の層と、
・第2の導電層と
を備えることができる。
【0023】
なお、透過率を変化させる要素7aを形成する機能層の積層体は、好ましくは紫外線フィルタリング剤を含む、頭字語PVBで知られるポリビニルブチラールなどの熱可塑性ポリマーの追加層を備えることができる。このような層は、第1の導電層の下又は真下に配置することができる。
【0024】
照明を生成する要素7bは、例えば、透明な照明素子、特に、頭字語OLEDで知られる有機発光ダイオード照明素子である。
【0025】
このようなOLED型の照明素子は、有機エレクトロルミネッセンス材料の層を備える透明な機能層の積層体を含み、積層体は、この/これらの材料の層の側面に位置する、一般にこの積層体の第1及び第2の導電層の形態の透明電極によって電気を供給される。このようなOLED型の照明素子7bは、CIE XYZ 1931比色図における座標(x1, y1)によって0°で定義される多色放射を放出するように設計することができ、したがって、座標は通常の放射に対して与えられる。この透明な照明素子7bは、表示装置の方向に又は表示装置に向けられた光放射を放出するように構成される。
【0026】
非限定的かつ非網羅的に、エレクトロルミネッセンス層は、SM-OLED(小分子有機発光ダイオード)として知られる小分子又はPLED(ポリマー発光ダイオード)として知られるポリマーを含むことができる。
【0027】
上述の様々な変形例では、透過率を変化させる要素7a及び照明を生成する要素7bを互いに又は1つ又は複数の透明材料の層と共に配置/貼付/印刷/蒸着することができる。
【0028】
特に、第1の実施形態では、透過率を変化させる要素7a及び照明を生成する要素7bを互いに配置/貼付/印刷/蒸着して組立品を形成することができ、この組立品を透明材料の層の下面に貼付/配置してこのクリスタル6の内面16を形成することができる。
【0029】
この構成では、制御ユニット8は、透過率を変化させる要素7aの第1の導電層及び第2の導電層に印加される電圧の変化を制御/管理することにより、ケーシング1のクリスタル6の透過率特性を第1の透過率状態と第2の透過率状態との間で変化させることができる。なお、ここでの第1の状態は、このクリスタル6の最大透過率に関係し、この状態の間、ケーシング1のこのクリスタル6は透明であり、太陽放射がケーシング1の構内4に侵入することを可能にする。第2の状態は、クリスタル6の最小透過率又はゼロ透過率に関係し、この状態の間、クリスタル6は完全に又は部分的に不透明であり、この構内4への太陽放射の少なくとも99%の侵入を防止又は阻止する。換言すれば、この第2の状態では、太陽放射はもはやクリスタル6によってケーシング1の構内4に透過されない。
【0030】
この制御ユニット8はまた、表示装置に加えられる照度/光強度、特にこの表示装置における照度/光強度の分布を変化させるために、照明を生成する要素7bの第1及び第2の導電層に印加される電圧の変化を制御/管理することができる。このようにして、制御ユニット8は、この表示装置の読み取りを容易にすること及び/又はこのデュワー装置の使用者に読み取り快適性を提供することを目的として、周囲の明るさに適合した表示装置のコントラストを構成することができる。
【0031】
照明を生成する要素7bによって生成される照明のこの変化は、光強度の変化とも呼ばれ、2つの状態の間で行われる。第1の状態は最大の光強度に関係し、第2の状態はゼロ光強度に関係する。
【0032】
また、前述したように、時計10のケース12は、ケーシング1の可逆的な固定装置13のおかげで、構内4の内周壁17から距離19を置いて或いは間隔19を空けてケーシング1内に配置される。換言すれば、このような固定装置13は、前記ケース12と前記構内4を形成するケーシング1の機能要素との間隔19を設定することができる。この構成では、固定装置13は、中間部9a(又は構内4)の内周壁17及び/又は背部9b及び/又はクリスタル6と時計10のケース12との間、特にこのケース12の外側全体面との間の熱伝導を低減もしくは排除するのに役立つ。この外側全体面は、この時計10のケース12のクリスタル11を備える上面と、前記ケース12の背部を備える下面と、このケース12の中間部の外周壁とを含む。
【0033】
この構成では、時計10のケース12をケーシング1の構内4の内周壁17に可逆的に固定する固定装置13は、
・時計10のケース12及びケーシング1の構内4の内周壁17にそれぞれ接続可能な第1端及び第2端をそれぞれ有する接続部材(各部材の本体は、デュワー装置のケーシング1の外部環境への熱損失を低減し、したがって時計10のケース12内の安定した内部温度を確実にするのに役立つ特定の構造を有する。)、及び/又は
・前記構内4での前記時計10のケース12の磁気浮上を確実にするように構成された接続部材(実際、これらの接続部材は、前記ケース12と、ケーシング1の前記構内4を形成する機能要素15との間の間隔19を確実にし、維持するように構成される。このような接続部材は、中間部9aの内周壁17及び/又は背部9b及び/又はクリスタル11と時計10のケース12との間、特にこのケース12の外側全体面との間の熱伝導を低減もしくは排除するのに役立つ。)
を備えることができる。
【0034】
なお、ケース12は時計10に含まれ、時計10はクオーツ時計などの電子時計、又は機械式時計もしくは電気機械式時計であり得る。
【0035】
時計10の上術の機械部品及び/又は機能部品5は、非限定的かつ非網羅的に、時計ムーブメント、文字盤などの表示装置、針、リング、ジョイント、及び/又は電子部品及び/又は電気部品を含む。このような電子部品及び/又は電気部品は、例えば、表示装置、プロセッサ、メモリ、エネルギー貯蔵部品、モータ、集積回路及び電子振動子などを含むことに特に留意されたい。
【0036】
これに関連して、ケーシング1は、デュワー装置の使用者が着用することができるようにブレスレット9cが取り付けられる中間部9aを含む。このケーシング1はまた、上述したクリスタル6及び背部9bを含む。なお、このケーシング1では、クリスタル6は好ましくは、時計10のケース12のクリスタル11よりも実質的に大きいか又は厳密に大きい表面を有する。換言すれば、クリスタル6の内面16は、実質的に時計10のクリスタル11の上面よりも大きいか又は厳密にクリスタル11の上面以上である表面を有する。
【0037】
明らかなように、このケーシング1のクリスタル6、中間部9a及び背部9bなどの機能要素15は共に、時計10のケース12を収容することができるこのケーシング1の構内4を画定する。ケーシング1のこれら3つの要素15、すなわち、中間部9a、クリスタル6及び背部9bは、この構内4を形成するために互いに接合される別個の要素であり得る。代替的に、ケーシング1の中間部9a及び背部9bは、共に一体部品を形成することができ、前記一体部品は、クリスタル6によって可逆的にかつ密封された方法で閉じることができる開口部を背部9bの反対側に画定する。代替的に、時計10のケース12の中間部9a及びクリスタル6は、共に一体部品を形成することができ、前記一体部品は、背部9bによってやはり可逆的にかつ密封された方法で閉じることができる開口部をクリスタル6の反対側に画定する。
【0038】
中間部9a及び背部9bは、好ましくは、非限定的かつ非網羅的に、金属材料、炭素繊維又はガラス繊維で強化されたガラス又は熱硬化性もしくは熱可塑性ポリマー樹脂、又はセラミック材料で作られる。なお、中間部9a及び背部9bが透明又は半透明であり、例えばガラス製である場合、中間部9aの内周壁17及び背部9bの内面18は、例えば銀の層などの金属コーティング又は類似の反射コーティングでコーティングされ得る。
【0039】
また、このケーシング1では、時計10のケース12がケーシング1の構内4に配置されるとき、このケース12と、中間部9aの内周壁17、背部9b及びクリスタル6との間に画定される空間は、材料が存在しないか又はほとんど存在しない。換言すれば、構内4は真空又は真空に近い状態にある。
【0040】
したがって、この構成では、このケーシング1は、従来技術から知られているデュワー管/容器と同じ特性及び特徴を有することが理解される。上述したように、このケーシング1の特性及び特徴は、このようなケーシング1が配置され得る外部環境に広がり得る極端な温度に対して良好な断熱をケーシング1に与えるのに役立つ。
【0041】
また、時計10の機械部品及び/又は機能部品5は、非磁性であることができ、かつ/又は時計10のケース12はこれらの部品を磁場から絶縁できる材料で作られ又はコーティングで覆われ得ることに留意されたい。
【0042】
さらに、固定装置13は、この時計10のケース12のクリスタル11がケーシング1のクリスタル6に面して配置され、この時計10の文字盤及び/又は表示インターフェースに含まれる情報がケーシング1を着用している使用者によってケーシング1の透明なクリスタル6を通して知覚され得るように、このケーシング1内に時計10のケース12を配置するのに役立つ。
【0043】
したがって、このようなケーシング1は、時計10の機械部品及び/又は機能部品5に外部環境からの非常に良好な断熱を提供し、時計10のケース12内に配置された部品からの放射による熱損失を長期間にわたって低減もしくは防止する。したがって、ケーシング1の外部の温度が極端な値に達したとき、構内4の温度は、時計10のケース12がケーシング1内に配置されたときの時計10のケース12内の温度と実質的に等しく、典型的には約20℃のままである。なお、ケーシング1の周囲に広がる温度条件にかかわらず、時計10のケース12内の温度は、時計10の正確な動作を妨げない温度である。この温度は、そのような時計10のケース12が、そのような温度、特に極端な温度が広がる環境に直接置かれた場合、すなわちケーシング1の外部に置かれた場合に、その部品の動作温度を維持することができる期間の2倍から18倍の期間にわたって維持される。したがって、このような構成は、時計10の機械部品及び/又は機能部品5を保護することを可能にするとともに、それらが極端な外部温度条件で最適に動作することを確実にするのに役立つと考えられる。
【0044】
言うまでもなく、本発明は、今説明した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な簡単な修正及び変形が考えられ得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(10)の機械部品及び/又は機能部品(5)のためのデュワーケーシング(1)であって、前記時計(10)のケース(12)を着脱可能に配置できる構内(4)が設けられ、前記時計(10)の表示インターフェースが前記ケーシング(1)のクリスタル(6)に面して配置され、前記ケーシング(1)は、前記ケーシング(1)の前記構内(4)を形成する機能要素(15)から前記時計(10)のケース(12)を離しておきつつ前記構内(4)に前記時計(10)のケース(12)を固定する可逆的な固定装置(13)を備え、前記ケーシング(1)のクリスタル(6)は、前記クリスタル(6)の透過率を変化させる要素(7a)と、前記時計(10)の表示インターフェースに向けられた照明を生成する要素(7b)とを備える、ケーシング(1)。
【請求項2】
前記透過率を変化させる要素(7a)及び前記照明を生成する要素(7b)は、前記クリスタル(6)に含まれ、重ね合わされる、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項3】
前記クリスタル(6)は、透明材料の層と、前記透過率を変化させる要素(7a)を形成する機能層の積層体と、前記照明を生成する要素(7b)を形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項4】
前記クリスタル(6)は、透明材料の外層と、前記透過率を変化させる要素(7a)を形成する機能層の積層体と、前記照明を生成する要素(7b)を形成する機能層の積層体と、透明材料の内層とを連続的に備える組立品によって形成される、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項5】
前記クリスタル(6)は、透明材料の第1の外層と、前記透過率を変化させる要素(7a)を形成する機能層の積層体と、透明材料の第2の内層と、前記照明を生成する要素(7b)を形成する機能層の積層体とを連続的に備える組立品によって形成される、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項6】
前記ケーシング(1)は、前記クリスタル(6)の前記透過率を変化させる要素(7a)及び前記照明を生成する要素(7b)に接続要素(14a、14b)を介して接続された制御ユニット(8)を備える、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項7】
前記制御ユニット(8)は、光度センサ及び/又は温度センサを備える、請求項6に記載のケーシング(1)。
【請求項8】
前記透過率を変化させる要素(7a)は、エレクトロクロミック素子である、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項9】
前記照明を生成する要素(7b)は、OLED型の透明な照明素子である、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項10】
前記ケーシング(1)は、前記ケーシング(1)の構内(4)の温度を動的に調節するために前記透過率を変化させる要素(7a)を駆動/制御/調整するように構成された制御ユニット(8)を備える、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項11】
前記ケーシング(1)は、前記時計(10)の表示インターフェースのコントラストを調整/設定するために前記照明を生成する要素(7b)を駆動/制御/設定するように構成された制御ユニット(8)を備える、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項12】
前記構内(4)は、真空又は真空に近い状態にある、請求項1に記載のケーシング(1)。
【請求項13】
前記クリスタル(6)は、前記時計(10)のケース(12)のクリスタル(11)の表面よりも実質的に大きいか又は厳密に大きい表面を有する、請求項1に記載のケーシング(1)。
【外国語明細書】