(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091480
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240627BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240627BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20240627BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20240627BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240627BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08L15/00
C08L57/00
B60C1/00 A
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204602
(22)【出願日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2022206503
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】炭野 有吾
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC20
4J002AC03W
4J002AC06X
4J002AC114
4J002AF023
4J002BA003
4J002BA013
4J002DJ016
4J002FD016
(57)【要約】
【課題】ウエットグリップ性能を維持ないしは向上しつつ、氷上制動性能を向上することができる、タイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴム45~55質量部とブタジエンゴム45~55質量部とを含有する固形状ジエン系ゴム100質量部に対して、シリカ50質量部以上と、炭化水素系樹脂7~20質量部と、変性液状ブタジエンゴム5~20質量部とを含有する、タイヤトレッド用ゴム組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム45~55質量部とブタジエンゴム45~55質量部とを含有する固形状ジエン系ゴム100質量部に対して、
シリカ50質量部以上と、
炭化水素系樹脂7~20質量部と、
変性液状ブタジエンゴム5~20質量部とを含有する、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性液状ブタジエンゴムが、シラン変性液状ブタジエンゴムである、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記炭化水素系樹脂が、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、及びロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
-25℃で測定した貯蔵弾性率が、20MPa以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
ピークtanδ時の温度が-45℃以下であり、かつ、0℃でのtanδの値が0.16以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物をトレッドに用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに用いられるゴム組成物においては、湿潤路面におけるグリップ性能(ウエットグリップ性能)と凍結路面におけるグリップ性能(氷上制動性能)を向上させることが求められている。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、氷上性能、ウエットグリップ性能、低発熱性、及び耐摩耗性に優れたゴム組成物として、天然ゴムと末端にポリオルガノシロキサン基を有する変性ブタジエンゴムとを含有するゴム組成物が記載されている。しかしながら、氷上制動性能については改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、ウエットグリップ性能を維持ないしは向上しつつ、氷上制動性能を向上することができる、タイヤトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1]イソプレン系ゴム45~55質量部とブタジエンゴム45~55質量部とを含有する固形状ジエン系ゴム100質量部に対して、シリカ50質量部以上と、炭化水素系樹脂7~20質量部と、変性液状ブタジエンゴム5~20質量部とを含有する、タイヤトレッド用ゴム組成物。
[2]上記変性液状ブタジエンゴムが、シラン変性液状ブタジエンゴムである、[1]に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[3]-25℃で測定した貯蔵弾性率が、20MPa以下である、[1]又は[2]に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[4]ピークtanδ時の温度が-45℃以下であり、かつ、0℃でのtanδの値が0.16以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載のゴム組成物をトレッドに用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物によれば、ウエットグリップ性能を維持ないしは向上しつつ、氷上制動性能を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0009】
本実施形態に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム45~55質量部とブタジエンゴム45~55質量部とを含有する固形状ジエン系ゴム100質量部に対して、シリカ50質量部以上と、炭化水素系樹脂7~20質量部と、変性液状ブタジエンゴム5~20質量部とを含有する。
【0010】
本明細書において、「固形状」とは23℃において流動性を有しないことをいい、「液状」とは23℃において流動性を有することをいう。
【0011】
固形状ジエン系ゴムは、イソプレン系ゴムとブタジエンゴムのみで構成されてもよいが、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等の他のゴム成分を、本来の効果を損なわない範囲においてさらに配合してもよい。
【0012】
イソプレン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などが挙げられる。
【0013】
本実施形態に係るゴム組成物は、補強性充填剤として、シリカを含有するものである。シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
【0014】
シリカの含有量は、固形状ジエン系ゴム100質量部に対して、50質量部以上であり、50~100質量部であることが好ましく、50~90質量部であることがより好ましく、50~80質量部であることがさらに好ましい。シリカの含有量が上記範囲内である場合、優れた氷上制動性能が得られやすい。
【0015】
補強性充填剤としては、シリカに加えて、カーボンブラックを併用するものであってもよい。補強性充填剤の含有量(シリカとカーボンブラックの合計量)は、固形状ジエン系ゴム100質量部に対して50~140質量部であることが好ましく、50~120質量部であることがより好ましく、50~90質量部であることがさらに好ましい。カーボンブラックの含有量は、固形状ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~40質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましく、1~20質量部であることがさらに好ましい。
【0016】
本実施形態に係るゴム組成物はシランカップリング剤を含有することが好ましく、その場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは1~15質量部である。
【0017】
炭化水素系樹脂の含有量は、固形状ジエン系ゴム100質量部に対して、7~20質量部であり、7~15質量部であることが好ましい。炭化水素系樹脂の含有量が上記範囲内である場合、優れた氷上制動性能が得られやすい。
【0018】
炭化水素系樹脂としては、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、ロジン系樹脂などが挙げられ、この中でも、石油系炭化水素樹脂、テルペン系樹脂であることが好ましい。
【0019】
スチレン系樹脂としては、スチレン及び/又はα-メチルスチレンを構成モノマーとして含む樹脂であればよく、スチレン又はα-メチルスチレンを単独で重合した単独重合体や、スチレン及びα-メチルスチレンを共重合した共重合体、スチレン及び/又はα-メチルスチレンとその他の単量体との共重合体が挙げられる。その他の単量体としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール等のテルペン化合物(テルペン系単量体)や、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の非共役オレフィン等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物から選択される少なくとも1種を原料とする樹脂である。テルペン化合物としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、3-カレン(δ-3-カレン)、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール等が挙げられる。これらのテルペン化合物からなるテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂など)などであってもよい。
【0021】
石油系炭化水素樹脂としては、例えば、C5系の脂肪族系炭化水素樹脂、C9系の芳香族系炭化水素樹脂、C5/C9系の脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂は、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。芳香族系炭化水素樹脂は、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂は、上記C5留分とC9留分とをカチオン重合により共重合して得られる樹脂であり、一部水添したものであってもよい。
【0022】
ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの原料ロジン、原料ロジンの不均化物、重合ロジンなどのロジン類や、ロジン類のエステル化物(ロジンエステル樹脂)、フェノール変性ロジン類、不飽和酸(マレイン酸など)変性ロジン類、ロジン類を還元処理したホルミル化ロジン類などが挙げられる。
【0023】
変性液状ブタジエンゴムの含有量は、固形状ジエン系ゴム100質量部に対して、5~20質量部であり、5~15質量部であることがより好ましい。
【0024】
変性液状ブタジエンゴムとしては、特に限定されず、分子鎖中または分子末端がアルコキシシラン基などのシラン変性基により変性されたものであってもよい。すなわち、液状ブタジエンゴムは、シラン変性液状ブタジエンゴムであってもよい。液状ブタジエンゴムは市販されているものも使用することができ、例えば、クレーバレー社製「RICON603」などが挙げられる。
【0025】
変性液状ブタジエンゴムの重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000~100,000であることが好ましく、1,000~50,000であることがより好ましい。ここで、変性液状ブタジエンゴムの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるものであり、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、カラムとして東ソー(株)製「TSKGel SuperHZM-M」、溶媒としてTHF、測定温度を40℃、流量を1.0mL/min、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した値とする。
【0026】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分以外に、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0027】
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は、特に限定するものではないが、固形状ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。また、上記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の含有量は、特に限定するものではないが、固形状ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物の-25℃、周波数10Hz、動歪±0.25%、静歪10%の条件で測定した貯蔵弾性率は、優れた氷上制動性能を得る観点から、20MPa以下であることが好ましい。該貯蔵弾性率は、氷上制動性能の観点からは低いほど好ましいため、下限は特に限定されないが、例えば10MPa以上でもよい。
【0029】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物について、周波数10Hz、動歪±0.25%、静歪10%の条件で動的弾性率を測定した場合、ピークtanδを示す温度が、優れた氷上制動性能を得る観点から-45℃以下であることが好ましく、より好ましくは-50℃以下である。また、該ピークtanδを示す温度は、氷上制動性能とウエットグリップ性能との優れたバランスを得る観点から-55℃~-50℃であることがより好ましい。また、優れたウエットグリップ性能を得る観点から0℃におけるtanδの値が0.16以上であることが好ましく、0.165以上であることがより好ましい。0℃におけるtanδは、ウエットグリップ性能の観点からは高いほど好ましいため、上限は特に限定されないが、例えば0.24以下でもよい。
【0030】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、固形状ジエン系ゴムに対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0031】
このようにして得られたゴム組成物は、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど、各種用途・各種サイズの空気入りタイヤのトレッドに適用することができる。すなわち、該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140~180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例0032】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
ラボミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、固形状ジエン系ゴムに対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0034】
・NR:RSS#3
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:エボニック社製「Si-75」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストKH」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE-1722」
・老化防止剤:大内新興化学(株)製「ノクラック6C」
・オイル:ENEOS(株)製「プロセスP200」
・炭化水素系樹脂1:C5/C9系樹脂、東ソー(株)製「ペトロタック90」、軟化点=100℃
・炭化水素系樹脂2:テルペン系樹脂、クレイトン社製「SYLVATRAXX 4150」、軟化点=115℃
・変性液状BR:クレーバレー製「RICON603」、変性基=アルコキシシラン、重量平均分子量(Mw)=2500、数平均分子量(Mn)=1700、分子量(Mw/Mn)=1.5
・加硫促進剤1:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・加硫促進剤2:大内新興化学(株)製「ノクセラーD」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0035】
得られた各ゴム組成物について、160℃で20分間加硫して所定形状の試験片を作製し、動的粘弾性試験を行った。また、得られた各ゴム組成物を用いて、空気入りタイヤを作製し、氷上制動性能を評価した。測定方法は次の通りである。
【0036】
・氷上制動性能:上記ゴム組成物をトレッドに適用したスタッドレスタイヤを2000ccの4WD車に装着し、-2℃~-6℃の気温にて時速40km/hからABSを作動させて氷上での制動距離を測定し(n=10の平均値)、測定した制動距離の逆数について比較例1を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、制動距離が短く、氷上制動性能が良好であることを示す。
【0037】
・-25℃における貯蔵弾性率(E’(-25)):GABO社製粘弾性測定機を用い、厚み2mm、幅5mmの試験片について、変形モード:引張、つかみ間隔20mm、温度-25℃、周波数10Hz、動歪±0.25%、静歪10%の条件で貯蔵弾性率を測定した。実測値と、実測値の逆数について比較例1を100とした指数を表1に示した。実測値が小さいほど(指数が大きいほど)、氷上制動性能に優れていることを示す。
【0038】
・0℃におけるtanδ:GABO社製粘弾性試験機を使用し、厚み2mm、幅5mmの試験片について、変形モード:引張、つかみ間隔20mm、周波数10Hz、動歪1%、静歪10%、温度0℃の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。指数が大きいほど、ウエットグリップ性能に優れていることを示す。
【0039】
・ピークtanδ時の温度:GABO社製粘弾性試験機を使用し、厚み2mm、幅5mmの試験片について、変形モード:引張、つかみ間隔20mm、周波数10Hz、動歪±0.25%、静歪10%の条件で動的弾性率を測定し、損失係数tanδがピークを示す温度を求めた。
【0040】
【0041】
結果は、表1に示す通りであり、比較例2,3は比較例1から樹脂の含有量を増量した例であり、比較例1と比較して、ウエットグリップ性能が向上したものの、氷上制動性能が悪化した。
【0042】
比較例4は比較例1からシリカ含有量を増量した例であり、比較例1と比較して、貯蔵弾性率E’の値が改善したものの、氷上制動性能の改善効果はなかった。
【0043】
比較例5は比較例4の配合から炭化水素系樹脂に代えて変性液状BRを配合した例であり、比較例4と比較して、ウエットグリップ性能が大幅に悪化した。
【0044】
実施例1は比較例5の配合において炭化水素系樹脂を配合した例であり、実施例2は実施例1から樹脂の種類を変更した例である。実施例2ではウエットグリップ性能を維持しつつ、氷上制動性能が向上した。比較例2,3では樹脂の増量により氷上制動性能が悪化したにも関わらず、実施例2では比較例5との対比より氷上制動性能が向上していることから、シリカと樹脂と液状BRとを併用したことによる相乗効果が得られたことが確認できた。
【0045】
なお、実施例1については氷上制動性能を測定していないが、貯蔵弾性率E’の値が実施例2と同程度改善しているため、実施例2と同様にウエットグリップ性能を維持しつつ、氷上制動性能が向上したものと推測できる。