(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091488
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】特に計時器用回転モーターのための、フレキシブルガイドを備える圧電共振器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/12 20060101AFI20240627BHJP
G04C 3/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H02N2/12
G04C3/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206690
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】22216410.5
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】モハマド フセイン・カーロバイヤン
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・フェリ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・パラット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA06
5H681AA19
5H681BB02
5H681BB14
5H681BC02
5H681DD23
5H681DD40
5H681EE14
(57)【要約】
【課題】消費電力と体積を小さく維持しつつ高電磁場に耐えることができるような圧電共振器を提供する。
【解決手段】本発明は、特に圧電回転モーターのための、圧電共振器(1)に関する。この圧電共振器(1)は、固定されたベース(3)と、縦軸のまわりに延在している振動錘(2)を備え、振動錘(2)には、少なくとも1つのはずみ錘(4)、好ましくは2つの反対側にあるはずみ錘(4)、があり、この圧電共振器(1)は、振動錘(2)をベース(3)に接続するフレキシブルガイドを備え、これによって、振り子運動をするように振動錘(2)を回転中心を中心に振動させることができ、このフレキシブルガイドは、ベース(3)を振動錘(2)に接続する少なくとも1つの第1のフレキシブルブレード(6)を備え、第1のフレキシブルブレード(6)は、第1のフレキシブルブレード(6)を変形させ振動錘(2)を振動させる電気的にアクチュエート可能な圧電材料を少なくとも部分的に含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に圧電回転モーターのための、圧電共振器(1、10、20、30、40)であって、
前記圧電共振器(1、10、20、30、40)は、固定されたベース(3、13、23、33、43)と、縦軸のまわりに延在している振動錘(2、12、22、32、42)とを備え、
前記振動錘(2、12、22、32、42)には、少なくとも1つのはずみ錘(4、14、24、34、44)、好ましくは2つの反対側にあるはずみ錘(4、14、24、34、35、44、45)、があり、
前記圧電共振器(1、10、20、30、40)は、前記振動錘(2、12、22、32、42)を前記ベース(3、13、23、33、43)に接続するフレキシブルブレードガイドを備え、これによって、振り子運動をするように前記振動錘(2、12、22、32、42)を回転中心を中心に振動させることができ、
前記フレキシブルガイドは、前記ベース(3、13、23、33、43)を前記振動錘(2、12、22、32、42)に接続する少なくとも1つの第1のフレキシブルブレード(6、16、26、36、46)を備え、
前記第1のフレキシブルブレード(6、16、26、36、46)は、前記第1のフレキシブルブレード(6、16、26、36、46)を変形させ前記振動錘(2、12、22、32、42)を振動させる電気的にアクチュエート可能な圧電材料を少なくとも部分的に含む
ことを特徴とする圧電共振器。
【請求項2】
前記回転中心は、実質的に、前記振動錘(2、12、22、32、42)の中心、好ましくは前記振動錘の重心、に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項3】
前記フレキシブルガイドは、前記振動錘(2、12、22、32、42)を前記ベース(3、13、23、33、43)又は固定支持体(59)に接続する第2のフレキシブルブレード(7、17、27、37、47)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項4】
前記第2のフレキシブルブレード(7、17、37)は、前記第2のフレキシブルブレード(7、17、37)を変形させ前記振動錘(2、12、22、32、42)を振動させる電気的にアクチュエート可能な圧電材料を少なくとも部分的に含む
ことを特徴とする請求項3に記載の圧電共振器。
【請求項5】
前記第1のフレキシブルブレード(6、16、26、36、46)と前記第2のフレキシブルブレード(7、17、27、37、47)は、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度を形成する
ことを特徴とする請求項4に記載の圧電共振器。
【請求項6】
前記第1のフレキシブルブレード(6、16)と前記第2のフレキシブルブレード(7、17)は、交差しておらず、前記振動錘(2、12)の中央部分から前記ベース(3、13)の偏心部分まで延在している
ことを特徴とする請求項5に記載の圧電共振器。
【請求項7】
第3のフレキシブルブレード(28)を備え、
前記第2のフレキシブルブレード(27)と前記第3のフレキシブルブレード(28)は、交差しておらず、前記振動錘(2、12)の中央部分から前記ベースの偏心部分(3、13)まで延在している
ことを特徴とする請求項3に記載の圧電共振器。
【請求項8】
前記第2のフレキシブルブレード(27)と前記第3のフレキシブルブレード(28)は、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度を形成する
ことを特徴とする請求項7に記載の圧電共振器。
【請求項9】
前記第1のフレキシブルブレード(26)は、前記第2のフレキシブルブレード(27)と前記第3のフレキシブルブレード(28)の間に配置される
ことを特徴とする請求項8に記載の圧電共振器。
【請求項10】
前記第1のフレキシブルブレード(26)は、前記第3のフレキシブルブレード(28)よりも前記第2のフレキシブルブレード(27)の方に近い
ことを特徴とする請求項9に記載の圧電共振器。
【請求項11】
前記第1のフレキシブルブレード(26)には、さらに、堅固な部分(31)がある
ことを特徴とする請求項9に記載の圧電共振器。
【請求項12】
前記振動錘(32)は、肘の形に曲がっているはずみ錘(35)を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の圧電共振器。
【請求項13】
前記第1のフレキシブルブレード(36)は、斜めに向いており、肘の形に曲がっている前記はずみ錘(35)の端に接続される
ことを特徴とする請求項12に記載の圧電共振器。
【請求項14】
前記第2のフレキシブルブレード(37)は、前記振動錘(32)の縦軸に実質的に平行であり、前記はずみ錘(35)の前記肘の内側に接続される
ことを特徴とする請求項12に記載の圧電共振器。
【請求項15】
前記第1のフレキシブルブレード(36)と前記第2のフレキシブルブレード(37)は、10°~90°の範囲内、好ましくは30°~60°の範囲内、の角度を形成する
ことを特徴とする請求項12に記載の圧電共振器。
【請求項16】
前記第1のフレキシブルブレード(46)は、U字形であり、前記振動錘(42)のはずみ錘(45)に接続される
ことを特徴とする請求項3に記載の圧電共振器。
【請求項17】
前記第1のフレキシブルブレード(46)は、前記振動錘(42)の縦軸に平行に配置される
ことを特徴とする請求項16に記載の圧電共振器。
【請求項18】
実質的に同一平面内に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項19】
前記振動錘(2、12、22、32、42)を前記圧電共振器(1、10、20、30、40)の固有振動数で振動させるように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項20】
好ましくは、大部分において、ケイ素、ガラス、セラミックス、金属のような、導電率が低く、MEMSタイプのフォトリソグラフィーマイクロマシニングプロセスなどによって得られ、非磁性である、単結晶又は多結晶の材料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の共振器。
【請求項21】
特に計時器の表示デバイスのための、圧電モーターであって、
請求項1に記載の圧電共振器(1、10、20、30、40)を備える
ことを特徴とする圧電モーター。
【請求項22】
前記圧電モーターは、好ましくは2つの爪(52、53)である、少なくとも1つの爪(52)と、可動車(51)とを備え、
前記爪(52)は、前記圧電共振器(1)の前記振動錘(32)に取り付けられて、これによって、前記振動錘(32)が振動するときに前記可動車(51)を第1の方向に回転させる
ことを特徴とする請求項21に記載の圧電モーター。
【請求項23】
少なくとも1つの針を回転させるように構成しているギアトランスミッションを備える計時器用ムーブメントを備える計時器であって、
前記計時器は、請求項1に記載の圧電共振器(1、10、20、30、40)、又は前記ギアトランスミッションをアクチュエートするように構成している請求項21に記載の圧電モーター(50)を備える
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に回転式圧電モーターのための、圧電共振器の技術分野に関する。本発明は、さらに、このような回転式圧電モーターが取り付けられた計時器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の製造において通常用いられる電気モーターは、電磁物理的原理で動作する「Lavet」タイプの回転モーターである。この種のモーターは、一般的には、コイルが取り付けられた固定子と、コイルの位相をシフトすることによって回転する、磁化されたローターとを備える。
【0003】
しかし、このようなモーターにおいては、高磁場に対する耐性が限定される。特定の磁場値よりも大きいと、モーターは止まる。一般的には、磁場が2mTよりも大きいとモーターの動きがおかしくなる。
【0004】
したがって、この問題を避けるには、他の物理的原理で動作するモーターを設計する必要がある。
【0005】
例えば、スイス特許CH709512に記載されているような、櫛部を備える静電モーターがある。しかし、櫛部は空間を占め、「Lavet」タイプのモーターよりも大きいエネルギーを消費してしまう。
【0006】
圧電効果に基づくモーターも、例えば欧州特許EP0587031において、開発されている。しかし、このモーターは、カレンダーをアクチュエートすることに限定される。また、パワー消費が大きいことと早期摩耗のリスクがあることによって、通常最も大きいエネルギーを必要とする秒針を駆動させることには用いることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、消費電力と体積を小さく維持しつつ高電磁場に耐えることができるような、特に回転式圧電モーターのための、圧電共振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、特に計時器の圧電回転モーターのための、圧電共振器に関し、前記圧電共振器は、固定されたベースと、縦軸のまわりに延在している振動錘を備え、前記振動錘には、少なくとも1つのはずみ錘、好ましくは2つの反対側にあるはずみ錘、がある。
【0009】
前記圧電共振器は、前記振動錘を前記ベースに接続するフレキシブルブレードガイドを備え、これによって、振り子運動をするように前記振動錘を回転中心を中心に振動させることができ、前記フレキシブルガイドは、前記ベースを前記振動錘に接続する少なくとも1つの第1のフレキシブルブレードを備え、前記第1のフレキシブルブレードは、前記第1のフレキシブルブレードを変形させ前記振動錘を振動させる電気的にアクチュエート可能な圧電材料を少なくとも部分的に含むという点で本発明は画期的である。
【0010】
このような構成の共振器は、効率的な運動を提供することができる。フレキシブルブレードの圧電材料をアクチュエートすることによって、フレキシブルブレードが曲がって、振動錘が回転中心を中心に回転することによって振動するようにする。このようにして、フレキシブルブレードのアクチュエートにはエネルギーが少ししか必要ではないため、共振器は、ほとんどエネルギーを消費せずに、振動錘に振動運動させる。
【0011】
また、共振器の固有振動数での共振器の共振条件を選択することによって、圧電共振器、したがってモーターは、ほとんどエネルギーを消費しない。共振におけるアクチュエートによって、少ないエネルギーで振幅を大きくすることができる。
【0012】
したがって、圧電共振器の適用分野に応じて、他の機械部品に、例えばムーブメントの歯車に、振動運動を伝達することができる。
【0013】
本発明の特定の実施形態において、前記回転中心は、前記振動錘の実質的に中央、好ましくは前記振動錘の重心、に配置される。
【0014】
本発明の特定の実施形態において、前記フレキシブルガイドは、前記振動錘を前記ベース又は前記固定支持体に接続する第2のフレキシブルブレードを備える。この結果、弾性回転ガイドであるRCC(リモートセンターコンプライアンス)タイプの弾性ピボットを得られる。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、前記第2のフレキシブルブレードは、前記第2のフレキシブルブレードを変形させ前記振動錘を振動させるように電気的にアクチュエート可能な圧電材料を少なくとも部分的に含む。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度を形成する。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、交差しておらず、前記振動錘の中央部分から前記ベースの偏心部分まで延在している。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、第3のフレキシブルブレードを備え、前記第2のフレキシブルブレードと前記第3のフレキシブルブレードは、交差しておらず、前記振動錘の中央部分から前記ベースの偏心部分まで延在している。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記第2のフレキシブルブレードと前記第3のフレキシブルブレードは、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度を形成する。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードは、前記第2のフレキシブルブレードと前記第3のフレキシブルブレードの間に配置される。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードは、前記第3のフレキシブルブレードよりも前記第2のフレキシブルブレードの方に近い。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードには、堅固な部分がある。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、前記振動錘は、肘の形に折れ曲がっているはずみ錘を備える。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードは、斜めに向いており、肘の形に曲がっている慣性ブロックの端に接続される。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、前記第2のフレキシブルブレードは、前記振動錘の縦軸に実質的に平行であり、慣性ブロックの曲がりの内側に接続される。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、10°~90°の範囲内、好ましくは30°~60°の範囲内、の角度を形成する。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードは、U字形であり、前記振動錘のはずみ錘に接続される。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードは、前記振動錘の縦軸に平行に配置される。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、前記第2のフレキシブルブレードは、前記振動錘に対して前記第1のフレキシブルブレードとは反対側に配置される。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電共振器は、実質的に同一平面内に配置される。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電共振器は、前記振動錘を前記圧電共振器の固有振動数で振動させるように構成している。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電共振器は、好ましくは、大部分において、ケイ素、ガラス、セラミックス、金属のような、導電率が低く、MEMSタイプのフォトリソグラフィーマイクロマシニングプロセスなどによって得られ、非磁性である、単結晶又は多結晶の材料を含む。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、前記フレキシブルガイドは、一体的な単一の部品として作られる。
【0034】
本発明は、さらに、このような圧電共振器を備え、特に計時器の表示デバイスのための、圧電モーターに関する。
【0035】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電モーターは、好ましくは2つの爪である、少なくとも1つの爪と、可動車とを備え、前記爪は、前記圧電共振器の前記振動錘に取り付けられて、これによって、前記振動錘が振動するときに前記可動車を第1の方向に回転させる。
【0036】
本発明は、さらに、少なくとも1つの針を回転させるように構成しているギアトランスミッションを備え、このギアトランスミッションをアクチュエートするように構成している前記のような圧電モーターを備える計時器用ムーブメントを備える計時器に関する。
【0037】
添付の図面を参照しながら説明用であって限定するためのものではない以下の説明を読むことによって、他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る、特に回転モーターのための、第1の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略斜視図である。
【
図2】本発明に係る、特に回転モーターのための、第2の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略斜視図である。
【
図3】本発明に係る、特に回転モーターのための、第3の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略図である。
【
図4】第3のタイプの圧電共振器を上方から見た概略図である。
【
図5】本発明に係る、特に回転モーターのための、第4の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略図である。
【
図6】本発明に係る、特に回転モーターのための、第5の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略斜視図である。
【
図7】前記のような共振器を備える回転式圧電モーターを上方から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1~6は、特に回転モーターにおいて用いられる、圧電共振器の異なるバージョンを示している。特に、モーターを計時器において用いて、表盤上に配置される針を含む表示デバイスを駆動することができる。圧電共振器1、10、20、30、40は、好ましくは、実質的に1つの平面内にて延在している。
【0040】
図1において、第1の実施形態に係る圧電共振器には、ここでは実質的に三角形、好ましくは二等辺三角形、であるベース3がある。ベース3には、2つの穴11があって、特に携行型時計用ムーブメントにおける、プレート又はブリッジに、ベース3を組み付けることができるようにしている。
【0041】
この三角形には、主頂点と、中心から外れた互いに反対側にある2つの頂点がある。この三角形には、2つの等しい辺と、長さが高さよりも、大きい、好ましくは少なくとも2倍大きい、さらに好ましくは4倍ないし5倍も大きい、他の辺がある。2つの互いに反対側にある頂点にはそれぞれ、この三角形の上部の方へと延在している突起5がある。
【0042】
また、共振器1は、振動錘2を備える。振動錘2には、主アームがあり、この主アームの端に、2つの遠心錘4が配置される。アームには、その中央に配置されベース3の方を向いているスタッド8がある。アームは、三角形の主頂点における接線方向に配置される。アームは、三角形の主頂点に対応する三角形オフセットを形成する中央領域を除いて、実質的にまっすぐである。スタッド8は、この三角形オフセットの内側に配置されている。
【0043】
振動錘2とベース3は、好ましくは、同一平面内に配置される。
【0044】
本発明によると、共振器は、振動錘2をベース3に接続するフレキシブルブレードガイドを備え、これによって、振動錘2は、振り子運動をするように回転中心を中心に振動することができる。この回転中心は、実質的に振動錘2の中央、すなわち、アームの中央、好ましくは振動錘2の重心、に位置する。この結果、弾性回転ガイドである、RCC(リモートセンターコンプライアンス)タイプの弾性ピボットが形成される。
【0045】
フレキシブルガイドには、2つのフレキシブルブレードがある。第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、振動錘2の同じ中央部分、この場合はスタッド8、に接続される。また、第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、ベース3の反対側どうしにある2つの偏心部分、この場合は2つの突起5、に接続される。
【0046】
第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、交差しておらず、振動錘2にあるスタッド8からベース3の突起5まで延在している。このようにして、各フレキシブルブレード6、7は、ベース3上の突起5を振動錘にあるスタッド8に接続し、この振動錘は、二等辺三角形の等しい辺の一方に沿って延在している。
【0047】
第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、それらの間に非ゼロである角度を形成し、その角度は、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、である。
【0048】
フレキシブルブレード6、7はそれぞれ、フレキシブルブレードをアクチュエートしてベースに対して振動錘を振動させるように動作可能な圧電材料を含む。好ましくは、圧電材料は、その全体が各フレキシブルブレード6、7上に配置される。
【0049】
例えば、フレキシブルブレードには、2つの電極層の間に挟まれた圧電材料の層がある。
【0050】
フレキシブルブレード6、7をアクチュエートするために、突起5には、電極層に接続されて電圧を受けてフレキシブルブレードの圧電層をアクチュエートする多くの電気接点9がある。
【0051】
圧電層は、好ましくは、結晶性又は多結晶性の材料、例えば、KNNタイプのセラミックス(ニオブ酸ナトリウムカリウムの場合)又はPZTタイプのセラミックス(ジルコン酸鉛チタンの場合)のもの、によって作られており、フレキシブルブレード6、7は、それらの変形を可能にする厚みを有する。
【0052】
したがって、圧電材料の層を電気的に活性化することによって、フレキシブルブレード6、7は、中心の方や外側の方へと交互に横方向に変形する。交流電圧によってこの活性化を発生させる。
【0053】
一方のブレードの極性を他方の逆にすることによって、2つのフレキシブルブレード6、7を逆相でアクチュエートすることを選択することで、振動錘は、2つのフレキシブルブレードが交差する点、この場合はスタッド8、に対応する回転中心を中心とする小さな振動を行う。このようにして、振動錘2は、振動し、2つの遠心錘4は、特定の振動数、好ましくは共振振動数、で横方向に動く。
【0054】
図2に示している第2の実施形態に係る共振器10において、前記ブレードよりも幅が狭いフレキシブルなカラー(collar)が追加される。そして、圧電材料は、フレキシブルブレード16、17の長さの部分18、19上にのみ配置される。共振器10の残りの部分は、前の設計と実質的に同じである。したがって、圧電材料のないブレード16、17の部分は、圧電材料のある部分よりも薄く、好ましくは、厚みが1/5~1/10倍である。
【0055】
ベース13と突起25は、最初の設計と実質的に同じである。
【0056】
図3及び4における第3の実施形態に係る共振器20は、3つのフレキシブルブレード26、27、28があるフレキシブルガイドが取り付けられた共振器を示している。共振器は、ベース23と突起25の形状に関して、最初の2つの実施形態と同様である。
【0057】
ベース23には、主頂点からベース23の内側へと開いたチャネル21がある。チャネル21は、ベース23において曲がっている。
【0058】
第1のフレキシブルブレード26は、振動錘22のスタッドを、第2のフレキシブルブレード27と第3のフレキシブルブレード28の間のベース23に接続する。
【0059】
第2のフレキシブルブレード27と第3のフレキシブルブレード28は、第1及び第2の実施形態に係るフレキシブルブレードのように構成している。第2のフレキシブルブレード27と第3のフレキシブルブレード28は、それらの間に非ゼロである角度を形成し、その角度は、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、である。この実施形態において、これら2つのフレキシブルブレードは、圧電材料を含まない。第2のフレキシブルブレード27と第3のフレキシブルブレード28は、振動錘22の同じ中央部分に、そして、ベース23の2つの反対側にある偏心突起25に、接続される。第2のフレキシブルブレード27と第3のフレキシブルブレード28は、交差しておらず、この場合はスタッドである、振動錘22の中央部分から、ベース23の偏心部分まで延在している。
【0060】
第1のフレキシブルブレード26は、ベース23に取り付けられた電気接点(図示せず)によって活性化される。
【0061】
第1のフレキシブルブレード26は、曲がったチャネル21内にて、チャネル21の底部における固定点まで延在している。第1のフレキシブルブレード26には、曲がった後のチャネル21の底部に圧電材料がある部分29と、チャネル21の入口における堅固な部分31とがある。これらの2つの部分29、31は、曲がった箇所にあるフレキシブルなネックによって分離される。
【0062】
図4は、
図3の拡大図であり、第1のフレキシブルブレード26の中央ゾーンは、第2のフレキシブルブレード27と第3のフレキシブルブレード28の交点に対して非ゼロである距離rだけ偏心しており、これによって、第1のフレキシブルブレード26は、アクチュエートされたときに、交互に振動錘22を一方の側に引き、次にそれを解放して、最初の2つのフレキシブルブレード26、27の交点を通り抜ける回転中心を中心に振動させる。
【0063】
図5に示している第4の実施形態において、振動錘32には、主アームと、第1の端における第1のはずみ錘34と、第2の端における第2のはずみ錘35とがあり、この第2のはずみ錘35は、主アームの下にて折れ曲がっている堅固な曲がりを形成する。
【0064】
共振器は、折れ曲がった肘部の端から、振動錘32をベース33に接続する第1のフレキシブルブレード36を備えるフレキシブルガイドを備え、第1のフレキシブルブレード36は、傾斜チャネル39内にて、傾斜チャネル39の底部にある第2の埋め込み点まで延在している。
【0065】
フレキシブルガイドは、振動錘32のアームに平行に、ベース33の第1の角から、振動錘32の折れ曲がっている曲がった箇所内の埋め込み点まで延在している第2のフレキシブルブレード37を備える。第2のフレキシブルブレード37は、第1のフレキシブルブレード36の上方に配置される。
【0066】
ベース33には、第1のはずみ錘34のレベルにおいて、第2のフレキシブルブレード37に対応する第1の埋め込み点と、第1のフレキシブルブレード36に接続され、ここでは反時計回りに45°の位置(この値に限定されない)に配置される第2の埋め込み点とがある。第2の埋め込み点は、ベース33の第1の角から開いている傾斜チャネル38に位置する。
【0067】
第1のフレキシブルブレード36と第2のフレキシブルブレード37は、さらに、10°~80°の範囲内、好ましくは30°~60°の範囲内、さらに好ましくは40°~50°の範囲内、の非ゼロである角度を形成するように延在している。
【0068】
2つのフレキシブルブレード36、37は、圧電材料を含み、ここでは第2のフレキシブルブレード37全体上に、そして第1のフレキシブルブレード36の一部上に配置される。フレキシブルブレード36、37は、図示していない電気接点を利用して、前の実施形態と同様にアクチュエートされる。
【0069】
この実施形態の構成は他の実施形態とは異なるが、振動錘32は、同様に振動する。すなわち、2つのフレキシブルブレード36、37の中性の繊維どうしの交点に位置する軸のまわりに振動する。
【0070】
図6に示している第5の実施形態に係る圧電共振器40において、振動錘42には、2つの遠心錘44、45を接続するアームがある。ベース43は、長方形の形状である。
【0071】
共振器40は、振動錘42をベース43に接続するU字の形状の第1のフレキシブルブレード46を備える。このU字は、アーム及びベース43と平行に配置される。このU字の第1の端48はベース43に接続され、中心からの距離が第1の端48よりも遠いU字の第2の端49は、振動錘42の錘45に接続される。
【0072】
U字形の第1のフレキシブルブレード46は、好ましくはその全長に沿って、圧電材料を含む。
【0073】
共振器は、さらに、能動ラチェットブレードを形成する第2のフレキシブルブレード47を備える。第2のフレキシブルブレード47は、第1のフレキシブルブレード46からアームの他方側に配置される。好ましくは、第2のフレキシブルブレード47は、いずれの圧電材料も含まない。
【0074】
第1のフレキシブルなU字形のブレード46を電気的にアクチュエートすることによって、振動錘42と遠心錘44、45は、回転中心を中心に振動する。好ましくは、回転中心は、振動錘42の重心に配置される。第1のフレキシブルブレード46は、図示していないベース43に取り付けられた電気接点によってアクチュエートされる。
【0075】
上記の方法によると、共振器1、10、20、30は、好ましくは、ケイ素、ガラス、セラミックス、金属のような単結晶又は多結晶の材料によって主に作られる。
【0076】
共振器1、10、20、30は、例えば、MEMS(微小電気機械システム)タイプの光リソグラフィーマイクロマシニングプロセスによって得られる。このような材料の剛性、弾性及び機械加工精度は、共振器1、10、20、30の共振品質を高くする。
【0077】
また、このような材料の一部の非磁性及び低導電率の性質は、大きなDC及びAC磁場に対する優れた耐性を与える。
【0078】
また、共振器1、10、20、30は、振動錘2、12、22、32、42を共振器1、10、20、30、40の固有振動数で振動させるように構成しており、これによって、特に振動錘の角トラベルを大きくすることによって、共振器のエネルギー消費を抑える。
【0079】
図7は、特に計時器の表示デバイスのための、回転式圧電モーター50の例を示している。
【0080】
特に、モーターは、計時器において、表盤に配置される針のような表示デバイスを駆動するために用いることができる。圧電モーター50は、表示デバイスの機械式ギアトランスミッションを回転させてアクチュエートすることができるように構成している。
【0081】
圧電モーター50は、本発明に係る圧電共振器、この場合、
図5に示している第4の実施形態に係る圧電共振器30、を備える。他の実施形態に係る圧電共振器も、圧電モーター50の動作を変えることなく用いることができる。圧電共振器30は、そのベース33によってプレートに組み付けられる。
【0082】
圧電モーター50は、さらに、歯付き可動車51と、この可動車51を一方向に回転させるように構成している2つの爪52、53とを備える。可動車51には、好ましくは、周歯があり、この周歯は、好ましくは、非対称歯であり、これによって、回転方向を定める。可動車50は、表示デバイスの針が取り付けられる歯車に接続される。
【0083】
第1の爪52は、能動的であり、可動車51を反時計回りに回転させる機能を有し、第2の爪53は、受動的であり、能動的な第1の爪52がローターの次の歯にてリセットされる間に、可動車51が回転したときに、可動車51を保持する。
【0084】
各爪52、53には、その端に、好ましくは非対称歯である、歯55があるフレキシブルブレード54がある。
【0085】
能動的な第1の爪52の運動によって、可動車51が回転する。この第1の爪52は、圧電共振器30の振動錘32に取り付けられる。したがって、共振器が振動するときに、第1の爪52も振動し、これによって、可動車51に対する圧電共振器の位置に応じて、第1の爪52が歯付き可動車51を第1の方向にて押したり引いたりする。
【0086】
第2の爪53は、ベース又はベースブリッジに直接組み付けられ、より有利なことに、ベース30と一体的となっていて、これによって、一連の組み付け公差に起因するポジショニングの誤りを抑える。この第2の爪53の機能は、歯車が第1の方向とは反対方向に回転することを防ぐことである。第2の爪53の歯55は、非対称歯と連係して、可動車51が第1の方向に回転することを可能にし、また、可動車51がその反対方向に回転することを阻止するように構成している。
【0087】
このために、爪52、53のフレキシブルなアーム54は、歯55が歯車51の歯列の凹みに入っているときには、弛緩したまっすぐな位置にあり、また、歯車51が第1の方向に回転するときに、その歯列によって外側に押されるときに、塞いで曲げられる。
【0088】
携行型時計の場合、モーター50の共振振動数又は固有振動数は、ムーブメントのレートを調整するために用いられる水晶の振動数に適合するようにされる。通常32764Hzである水晶の振動数の約数に対応する励起振動数が選択される。例えば、128Hzの振動数を選択する。モーター50の振動数は、好ましくは、その振動振幅が最大振幅の90~95%を下回らないように、励起振動数に調整されチューンされる。
【0089】
随意的に、第2の爪53は、可動車51の回転速度又は回転速度を決めるために、ピッチセンサーとして機能するように構成していることができる。このために、第2の爪53のフレキシブルなアーム54には、カウントユニットに接続される圧電材料が取り付けられる。第2の爪53が曲げられるたびに、カウントユニットは、1つの歯の分、可動車51の回転を登録する。
【0090】
添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、上記の本発明の様々な実施形態に対して、当業者に明らかな様々な変更及び/又は改善及び/又は組み合わせを行うことができることを理解することができるであろう。
【外国語明細書】