(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091490
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】特に計時器用回転モーターのための、バランスばね式圧電共振器
(51)【国際特許分類】
G04C 3/12 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
G04C3/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206695
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】22216423.8
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】モハマド フセイン・カーロバイヤン
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・フェリ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・パラット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消費電力と体積を小さく維持しつつ高電磁場に耐えることができるような圧電共振器を提供する。
【解決手段】回転式圧電モーターのための、圧電共振器1に関し、共振器は、固定されたベース3と、縦軸のまわりに延在している振動錘2とを備え、振動錘には、慣性ブロック4、好ましくは反対側にある2つの慣性ブロック、があり、圧電共振器は、振動錘をベースに接続するフレキシブルブレードガイドを備え、振り子運動をするように振動錘を回転中心を中心に振動させることができ、フレキシブルブレードガイドは、ベース及び/又は振動錘に接続される第1のフレキシブルブレード6を備え、ベースに対して振動錘が変位することを可能にし、ベース及び/又は振動錘に接続されるらせんばね5を備え、らせんばねには、少なくとも部分的に、電気的にアクチュエート可能な圧電材料があり、これによって、らせんばねを変形させて、振動錘を振動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に回転式圧電モーターのための、圧電共振器(1、10、20)であって、
前記共振器(1、10、20)は、固定されたベース(3、13)と、縦軸のまわりに延在している振動錘(2、12)とを備え、
前記振動錘(2、12)には、少なくとも1つの慣性ブロック(4、14)、好ましくは反対側にある2つの慣性ブロック(4、14)、があり、
前記圧電共振器は、前記振動錘(2、12)を前記ベース(3、13)に接続するフレキシブルブレードガイドを備え、これによって、振り子運動をするように振動錘(2、12)を回転中心を中心に振動させることができ、
前記フレキシブルブレードガイドは、前記ベース(3、13)及び/又は前記振動錘(2、12)に接続される少なくとも1つの第1のフレキシブルブレード(6、16、26)を備え、これによって、前記ベース(3、13)に対して前記振動錘(2、12)が変位することを可能にし、
前記フレキシブルブレードガイドは、前記ベース(3、13)及び/又は前記振動錘(2、12)に接続されるらせんばね(5、15、24)を備え、
前記らせんばね(5、15、24)には、少なくとも部分的に、電気的にアクチュエート可能な圧電材料があり、これによって、前記らせんばね(5)を変形させて、前記振動錘(2、12)を振動させる
ことを特徴とする圧電共振器。
【請求項2】
前記フレキシブルガイドは、前記振動錘(2)を前記ベース(3)に接続する第2のフレキシブルブレード(7)を備え、
前記第1のフレキシブルブレード(6)は、前記ベース(3)を前記振動錘(2)に接続する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項3】
前記第1のフレキシブルブレード(6、16)と前記第2のフレキシブルブレード(7)は、交差しておらず、前記振動錘(2)の中央部分から前記ベース(13)の偏心部分まで移るに従って互いに離れる
ことを特徴とする請求項2に記載の圧電共振器。
【請求項4】
前記第1のフレキシブルブレード(6)と前記第2のフレキシブルブレード(7)は、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度を形成するように構成している
ことを特徴とする請求項2に記載の圧電共振器。
【請求項5】
前記第1のフレキシブルブレード(6)と前記第2のフレキシブルブレード(7)は、互いに軸対称に構成している
ことを特徴とする請求項3に記載の圧電共振器。
【請求項6】
前記らせんばね(5)は、前記振動錘(2)に接続されており、これによって、前記振動をアクチュエートする
ことを特徴とする請求項2に記載の圧電共振器。
【請求項7】
前記フレキシブルガイドには、2つのRCCタイプのフレキシブルピボットがあり、
前記フレキシブルガイドは、中間可動要素(8)と、前記第1のフレキシブルブレード(16)と第2のフレキシブルブレード(17)があり前記ベース(13)を前記中間可動要素(8)に接続す る第1の対のフレキシブルブレード(16、17)と、前記中間可動要素(8)を前記振動錘(12)に接続する第2の対のフレキシブルブレード(16、17)とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項8】
前記第1のフレキシブルブレード(6)と前記第2のフレキシブルブレード(7)は、交差しておらず、前記中間可動要素(8)から前記ベース(13)へと移るに従って互いに離れる
ことを特徴とする請求項7に記載の圧電共振器。
【請求項9】
前記第1のフレキシブルブレード(16)と前記第2のフレキシブルブレード(17)は、30°~100°の範囲内、好ましくは40°~80°の範囲内、の角度を形成する
ことを特徴とする請求項8に記載の圧電共振器。
【請求項10】
前記第1のフレキシブルブレード(16)と前記第2のフレキシブルブレード(17)は、互いに軸対称に構成している
ことを特徴とする請求項6に記載の圧電共振器。
【請求項11】
前記らせんばね(5)は、前記中間要素(8)と前記ベース(13)に接続されており、
前記らせんばね(5)は、アクチュエートされたときに前記中間可動要素(8)を振動させる
ことを特徴とする請求項7に記載の圧電共振器。
【請求項12】
前記らせんばね(5)は、前記第1の対のフレキシブルブレード(16、17)と前記第2の対のフレキシブルブレード(18、19)の間に配置される
ことを特徴とする請求項11に記載の圧電共振器。
【請求項13】
前記らせんばね(5)と前記第1の対のフレキシブルブレード(16、17)は、60°~120°の範囲内、好ましくは80°~100°の範囲内、の角度を形成するように構成している
ことを特徴とする請求項12に記載の圧電共振器。
【請求項14】
前記らせんばね(5)と前記第2の対のフレキシブルブレード(16、17)は、20°~60°の範囲内、好ましくは30°~45°の範囲内、の角度を形成するように構成している
ことを特徴とする請求項12に記載の圧電共振器。
【請求項15】
前記フレキシブルガイドには、2つのRCCタイプのフレキシブルピボットがあり、
前記フレキシブルガイドは、中間可動要素(8)と、前記第1のフレキシブルブレード(26)がある対のフレキシブルブレード(26、27)を備え、
前記対のフレキシブルブレード(26、27)は、前記中間可動要素(8)を前記振動錘(12)に接続し、
前記らせんばね(24)は、前記ベース(23)を前記中間可動要素(8)に接続し、
前記フレキシブルガイドは、前記ベース(23)を前記中間可動要素(8)に接続する第2のらせんばね(25)を備え、
前記第2のらせんばね(25)には、電気的にアクチュエート可能な圧電材料があり、これによって、前記第2のらせんばね(25)を変形させて、前記振動錘(12)を振動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項16】
前記第1のらせんばね(5)と第2のらせんばね(25)は、80°~160°の範囲内、好ましくは100°~140°の範囲内、さらに好ましくは110°~130°の範囲内、の角度を形成するように構成している
ことを特徴とする請求項15に記載の圧電共振器。
【請求項17】
前記第1のらせんばね(5)と前記第2のらせんばね(25)は、互いに軸対称に構成している
ことを特徴とする請求項15に記載の圧電共振器。
【請求項18】
実質的に同一平面内に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項19】
前記振動錘(2、12)を前記共振器(1、10、20)の固有振動数で振動させるように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項20】
好ましくは大部分において、ケイ素、ガラス、セラミックス、金属のような、導電率が低く、MEMSタイプのフォトリソグラフィーマイクロマシニングプロセスなどによって得られ、非磁性である、単結晶又は多結晶の材料構成を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電共振器。
【請求項21】
特に計時器の表示デバイスのための、圧電モーターであって、
請求項1に記載の圧電共振器(1、10、20)を備える
ことを特徴とする圧電モーター。
【請求項22】
好ましくは2つの爪(52、53)である、少なくとも1つの爪(52)と、可動車(51)とを備え、
前記爪(52)は、前記圧電共振器(1)の前記振動錘(32)に取り付けられて、これによって、前記振動錘(32)が振動するときに前記可動車(51)を第1の方向に回転させる
ことを特徴とする請求項21に記載の圧電モーター。
【請求項23】
少なくとも1つの針を回転させるように構成しているギアトランスミッションを備える計時器用ムーブメントを備える計時器であって、
前記計時器は、請求項1に記載の圧電共振器(1、10、20、30、40)、又は前記ギアトランスミッションをアクチュエートするように構成している請求項21に記載の圧電モーター(30)を備える
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に回転式圧電モーターのための、圧電共振器の技術分野に関する。本発明は、さらに、前記のような回転式圧電モーターを備える計時器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の製造において通常用いられる電気モーターは、電磁物理的原理で動作する「Lavet」タイプの回転モーターである。この種のモーターは、一般的には、コイルがある固定子と、コイルの位相シフトアクチュエーションによって回転する、磁化されたローターとを備える。
【0003】
しかし、このようなモーターにおいては、高磁場に対する耐性が限定される。特定の磁場値よりも大きいと、モーターは止まる。一般的には、磁場が2mTよりも大きいとモーターが止まる。
【0004】
したがって、この問題を避けるには、他の物理的原理で動作するモーターを設計する必要がある。
【0005】
例えば、スイス特許CH709512に記載されているような、静電的な櫛部を利用するモーターがある。しかし、櫛部は空間を占め、「Lavet」タイプのモーターよりも大きいエネルギーを消費してしまう。
【0006】
圧電効果に基づくモーターも、例えば欧州特許EP0587031において、開発されている。しかし、これは、日付のアクチュエートに限定される。また、電力消費が大きいことと早期摩耗のリスクがあることによって、通常最も大きいエネルギーを必要とする秒針を駆動させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、消費電力と体積を小さく維持しつつ高電磁場に耐えることができるような、特に回転式圧電モーターのための、圧電共振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、特に回転式圧電モーターのための、圧電共振器に関し、前記共振器は、固定されたベースと、縦軸のまわりに延在している振動錘とを備え、前記振動錘には、少なくとも1つの慣性ブロック、好ましくは反対側にある2つの慣性ブロック、がある。
【0009】
前記圧電共振器は、前記振動錘を前記ベースに接続するフレキシブルブレードガイドを備え、これによって、振り子運動をするように振動錘を回転中心を中心に振動させることができ、前記フレキシブルブレードガイドは、前記ベース及び/又は前記振動錘に接続される少なくとも1つの第1のフレキシブルブレードを備え、これによって、前記ベースに対して前記振動錘が変位することを可能にし、前記フレキシブルブレードガイドは、前記ベース及び/又は前記振動錘に接続されるらせんばねを備え、前記らせんばねには、少なくとも部分的に、電気的にアクチュエート可能な圧電材料があり、これによって、前記らせんばねを変形させて、前記振動錘を振動させる点で、本発明は画期的である。
【0010】
このような構成の共振器は、効率的な運動を提供することができる。実際に、らせんばねの圧電材料をアクチュエートすることによって、らせんばねは収縮したり伸びたりして、フレキシブルガイドのフレキシブルブレードのおかげで、回転中心を中心に回転することによって振動錘が振動する。このように、フレキシブルブレードのアクチュエートにはエネルギーが少ししか必要ではないため、共振器は、ほとんどエネルギーを消費せずに、振動錘に振動運動させる。
【0011】
したがって、圧電共振器の適用分野に従って、他の機械部品に、例えばモーターの歯車に、振動運動を伝達することができる。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、前記フレキシブルガイドは、前記振動錘を前記ベースに接続する第2のフレキシブルブレードを備え、前記第1のフレキシブルブレードは、前記ベースを前記振動錘に接続する。
【0013】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、交差しておらず、前記振動錘の中央部分から前記ベースの偏心部分まで延在している。
【0014】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度を形成するように構成している。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、前記らせんばねは、前記振動錘に接続されており、これによって、前記振動をアクチュエートする。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記フレキシブルガイドには、2つのRCCタイプのフレキシブルピボットがあり、前記フレキシブルガイドは、中間可動要素と、前記第1のフレキシブルブレードと第2のフレキシブルブレードがあり前記ベースを前記中間可動要素に接続する第1の対のフレキシブルブレードと、前記中間可動要素を前記振動錘に接続する第2の対のフレキシブルブレードとを備える。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、交差しておらず、前記中間可動要素から前記ベースへと移るに従って互いに離れる。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、30°~100°の範囲内、好ましくは40°~80°の範囲内、の角度を形成する。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のフレキシブルブレードと前記第2のフレキシブルブレードは、互いに軸対称に構成している。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、前記らせんばねは、前記中間要素と前記ベースに接続されており、前記らせんばねは、アクチュエートされたときに前記中間可動要素を振動させる。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記らせんばねは、前記第1の対のフレキシブルブレードと前記第2の対のフレキシブルブレードの間に配置される。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記らせんばねと前記第1の対のフレキシブルブレードは、60°~120°の範囲内、好ましくは80°~100°の範囲内、の角度を形成するように構成している。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、前記らせんばねと前記第2の対のフレキシブルブレードは、20°~60°の範囲内、好ましくは30°~45°の範囲内、の角度を形成するように構成している。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記フレキシブルガイドには、2つのRCCタイプのフレキシブルピボットがあり、前記フレキシブルガイドは、中間可動要素と、前記第1のフレキシブルブレードがある対のフレキシブルブレードを備え、前記対のフレキシブルブレードは、前記中間可動要素を前記振動錘に接続し、前記らせんばねは、前記ベースを前記中間可動要素に接続し、前記フレキシブルガイドは、前記ベースを前記中間可動要素に接続する第2のらせんばねを備え、前記第2のらせんばねには、電気的にアクチュエート可能な圧電材料があり、これによって、前記第2のらせんばねを変形させて、前記振動錘を振動させる。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のらせんばねと第2のらせんばねは、80°~160°の範囲内、好ましくは100°~140°の範囲内、さらに好ましくは110°~130°の範囲内、の角度を形成するように構成している。
【0026】
本発明の特定の実施形態において、前記第1のらせんばねと前記第2のらせんばねは、互いに軸対称に構成している。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電共振器は、実質的に同一平面内に配置される。
【0028】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電共振器は、前記振動錘を前記共振器の固有振動数で振動させるように構成している。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電共振器は、好ましくは大部分において、ケイ素、ガラス、セラミックス、金属のような、導電率が低く、MEMSタイプのフォトリソグラフィーマイクロマシニングプロセスなどによって得られ、非磁性である、単結晶又は多結晶の材料構成を含む。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、前記フレキシブルガイドは、一体的に作られる。
【0031】
本発明は、さらに、前記のような圧電共振器を備える、特に計時器の表示デバイスのための、圧電モーターに関する。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、前記圧電モーターは、好ましくは2つの爪である、少なくとも1つの爪と、可動車とを備え、前記爪は、前記圧電共振器の前記振動錘に取り付けられて、これによって、前記振動錘が振動するときに前記可動車を第1の方向に回転させる。
【0033】
本発明は、さらに、少なくとも1つの針を回転させるように構成しているギアトランスミッションを備え、このギアトランスミッションをアクチュエートするように構成している前記のような圧電モーターを備える計時器用ムーブメントを備える計時器に関する。
【0034】
添付の図面を参照しながら説明用であって限定するためのものではない以下の説明を読むことによって、他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に係る、特に回転モーターのための、第1の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略斜視図である。
【
図2】本発明に係る、特に回転モーターのための、第2の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略斜視図である。
【
図3】本発明に係る、特に回転モーターのための、第3の実施形態に係る圧電共振器を上方から見た概略図である。
【
図4】前記のような共振器を備える回転式圧電モーターを上方から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1~3は、特に回転モーターにおいて用いられる、異なる実施形態に係る圧電共振器1、10、20を示している。特に、モーターを計時器において用いて、表盤上に配置されるように構成している針を含む表示デバイスをアクチュエートすることができる。圧電共振器1、10、20は、好ましくは、実質的に1つの平面内にて延在している。
【0037】
図1において、第1の実施形態に係る圧電共振器1には、ここでは実質的に三角形の形状である、ベース3がある。
【0038】
また、共振器1は、ここではM字形である、振動錘2を備える。振動錘2には、V字形の主アームがあり、その両端に、ベース13の反対側の方に延在しており、ここでは実質的にまっすぐである、2つの慣性ブロック4が配置されている。
【0039】
ベース3は、M字の上に配置されている。振動錘2とベース3は、好ましくは、同一平面内に配置される。
【0040】
共振器は、振動錘2をベース3に接続するフレキシブルブレードガイドを備え、これによって、振り子運動をするように振動錘2を回転中心を中心に振動させることができる。この回転中心は、実質的に振動錘2の中央、すなわち、アームの中央、好ましくは振動錘2の重心、に位置する。
【0041】
フレキシブルガイドには、2つのフレキシブルブレードがある。第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、ここではM字の内側の頂上にある、振動錘2の同じ中央部分に接続されており、RCC(リモートセンターコンプライアンス)タイプのピボットを形成する。
【0042】
また、第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、ベース3の反対側どうしにある2つの偏心部分、この場合は長方形の角、に接続される。
【0043】
第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、交差しておらず、振動錘2の内側からベース3まで延在している。
【0044】
第1のフレキシブルブレード6と第2のフレキシブルブレード7は、それらの間に、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度である、非ゼロの角度を形成するように構成している。
【0045】
本発明によると、フレキシブルブレードガイドは、さらに、振動錘2に接続されるらせんばね5を備える。このらせんばね5は、M字に対してベース3とは反対側に配置される。
【0046】
らせんばね5には、いくつかの弾性コイルがある。らせんばね5には、固定されたブロムスタッドに接続される内端と、中間可動要素8に接続された実質的にまっすぐな区画が続く外端とがある。
【0047】
らせんばね5には、少なくとも部分的に、電気的にアクチュエート可能な圧電材料があり、これによって、らせんばね5を変形させて、振動錘2を振動させる。この圧電材料は、好ましくは、らせんばね5の全長に沿って配置される。らせんばね5には、例えば、2つの電極層の間に挟まれた圧電材料の層を含む。
【0048】
これらの電極層は、水晶、ガラス、金属のような単結晶又は多結晶のケイ素などである、一体的な構造的支持材料の上に配置される。
【0049】
コイルがあるブレードをアクチュエートするために、固定されたブロムスタッド9には、電極層に接続されて電圧を受けてらせんばね5の圧電層をアクチュエートするための電気接点がある。
【0050】
この圧電層は、好ましくは、結晶性又は多結晶性の材料、例えば、固体セラミックス(ニオブ酸ナトリウムカリウムの場合)又はPZTタイプのセラミックス(ジルコン酸鉛チタンの場合)のもの、を含む。
【0051】
交流電圧によってこの活性化を発生させる。圧電材料の層を電気的に活性化することによって、らせんばね5は、その中心のまわりに交互に収縮したり伸びたりして、中間要素8を介して振動錘2を回転変位させる。この振動は、特定の振動数にて、好ましくは共振器の共振振動数にて、発生する。
【0052】
らせんばね5の全表面にわたって配置される圧電層は、同じ空間を占める単純でフレキシブルでまっすぐなブレードと比べて、アクチュエーターの効率を相当に高める。
【0053】
振動錘2は、RCCタイプのピボットを形成するフレキシブルガイドの2つのフレキシブルブレード6、7によって運動をガイドされて、回転中心を中心とする振り子運動を行う。したがって、振動錘2は、振動し、2つの慣性ブロック4は、特定の振動数、好ましくは共振器1の固有振動数、にて横方向に変位する。振動錘2は、中間可動要素8の中心に位置する回転中心を中心とする振動を行う。
【0054】
図2の第2の実施形態において、圧電共振器10には、ここでは実質的に三角形的な中央部分23の両側に配置されており振動錘12まで延在している2つの曲がった部分21、22がある、ベース13がある。
【0055】
また、共振器10は、振動錘12を備える。振動錘12には、主アームがあり、その両端に、ベース13の両側に延在している2つの慣性ブロック14が配置されている。アームは、三角形の頂点に対して接線方向に配置される。アームは、例えばモーターのローターのための、空間を確保するために、中央領域において実質的に曲がっている。振動錘12とベース13は、好ましくは、同一平面内に配置される。
【0056】
共振器は、振動錘12をベース13に接続するフレキシブルブレードガイドを備え、これによって、振り子運動をするように振動錘12を回転中心を中心に振動させることができる。
【0057】
フレキシブルガイドには、第1のRCCタイプのピボットがある。このようなピボットには、中間可動要素8と、ベースを中間可動要素8に接続する第1の対のフレキシブルブレード16、17と、中間可動要素を振動錘12に接続し第2のRCCタイプのピボットを形成する第2の対のフレキシブルブレードとがある。
【0058】
中間可動要素8は、点要素であり、ベース8や振動錘12と比べると大きさが小さい。この点要素8は、例えば、円筒状の形状である。好ましくは、実質的に中間可動要素8の中心に回転中心が位置する。
【0059】
第1の対のフレキシブルブレードは、ベース13を中間可動要素8に接続する第1のフレキシブルブレード16と第2のフレキシブルブレード17を含む。好ましくは、第1のフレキシブルブレード16と第2のフレキシブルブレード17は、実質的にまっすぐである。
【0060】
第1のフレキシブルブレード16と第2のフレキシブルブレード17は、交差しておらず、中間可動要素8からベース13の同じ第1の曲がった部分21の方へと移るに従って互いに離れる。
【0061】
第1のフレキシブルブレード16と第2のフレキシブルブレード17は、30°~100°の範囲内、好ましくは40°~80°の範囲内、の角度を形成する。
【0062】
第2の対のフレキシブルブレードには、第3のフレキシブルブレード18と、中間可動要素8から振動錘2まで、より具体的にはアームの下の慣性ブロック14の上部まで、延在している第4のフレキシブルブレード19とがある。第2の対のフレキシブルブレードは、第2のRCCタイプのピボットを形成する。
【0063】
したがって、第1の対のフレキシブルブレードのフレキシブルブレード16、17は、第2の対のフレキシブルブレードのフレキシブルブレード18、19とは反対側にて延在している。
【0064】
第3のフレキシブルブレード18と第4のフレキシブルブレード19は、30°~150°の範囲内、好ましくは60°~130°の範囲内、さらに好ましくは90°~120°の範囲内、の角度を形成するように構成している。
【0065】
本発明によると、フレキシブルガイドは、さらに、
図1の第1実施形態に係るらせんばね5と実質的に同一である、圧電材料を含むらせんばね15を備える。
【0066】
らせんばね15は、ベース13と中間可動要素8の間にて、特にベース13の第2の曲がった部分22において、配置されている。らせんばね15は、さらに、中間可動要素8に接続されたまっすぐな区画33によってフレキシブルブレードのそれぞれに接続されており、さらに、内端がベース13に接続されている。
【0067】
らせんばね15と、第1の対のフレキシブルブレード16、17、特に第2のフレキシブルブレード17、は、60°~120°の範囲内、好ましくは80°~100°の範囲内、の角度を形成する。らせんばね5と、第2の対のフレキシブルブレード18、19、特に第4のフレキシブルブレード19、は、20°~60°の範囲内、好ましくは30°~45°の範囲内、の角度を形成する。
【0068】
この実施形態において、らせんばね15は、活性化されると、中間可動要素8に作用して、それを振動させる。中間可動要素8の運動は、第1の対のフレキシブルブレード16、17によってガイドされる。
【0069】
中間可動要素8の振動は、第2の対のフレキシブルブレード18、19のおかげで、振動錘12に伝達される。
【0070】
このように、振動錘12は、ここでは中間要素8の中心に構成している、回転中心を中心とする振動をする。2つの慣性ブロック14は、特定の振動数にて、好ましくは共振器10の固有振動数にて、横方向に動く。
【0071】
RCCタイプのダブルピボットは、第2の対のフレキシブルブレード18、19のおかげで、振動錘12の振動の振幅を大きくすることを可能にする。
【0072】
図3の第3の実施形態に係る圧電共振20には、ここでは実質的に三角形的な中央部分23の両側に配置されており振動錘12まで延在している2つの曲がった部分21、22がある、ベース13がある。
【0073】
圧電共振器20の振動錘12には、主アームがあり、その両端に、ベース13の両側に延在している2つの慣性ブロック14が配置されている。アームは、三角形の頂点における接線方向に配置される。アームは、中央領域において実質的に曲がっており、これによって、三角形の主頂点に近づいている。振動錘12とベース13は、好ましくは、同一平面内に配置される。
【0074】
圧電共振器20は、振動錘12をベース13に接続するフレキシブルブレードガイド16、17を備え、これによって、振り子運動をするように振動錘12を回転中心を中心に振動させるができる。
【0075】
フレキシブルガイドには、2つのRCCタイプのピボットがある。このようなフレキシブルガイドは、一般的には、中間可動要素8と、中間可動要素8を振動錘2に接続する第1の対のフレキシブルブレード26、27と、ベース13を中間可動要素8に接続する第2の対のフレキシブルブレードとを備える。
【0076】
この実施形態において、第2のRCCタイプのピボットの第2の対のフレキシブルブレードは、らせんばねによって置き換えられている。
【0077】
中間可動要素8は、点要素であり、ベース8や振動錘2と比べると大きさが小さい。この点要素8は、例えば、円筒状の形状である。好ましくは、中間可動要素8の中心に回転中心が位置する。
【0078】
第1の対のフレキシブルブレードには、中間可動要素8をベース13に接続する第1のフレキシブルブレード26と、ベース13を中間可動要素8に接続する第2のフレキシブルブレード27がある。
【0079】
フレキシブルガイドは、第1のらせんばね5と第2のらせんばね25を備える。各らせんばね5、25は、ベース3と中間可動要素8の間にて、特にベース3の各曲がった部分21、22において、配置されている。
【0080】
中間可動要素8は、さらに、まっすぐな区画によってフレキシブルブレードのそれぞれに接続されており、各らせんばねの内端がベース3に接続されている。したがって、第1のらせんばね5と第2のらせんばね25は、第1の対のフレキシブルブレードのフレキシブルブレード26、27とは反対側にて延在している。
【0081】
第1のフレキシブルブレード24と第2のフレキシブルブレード25は、80°~160°の範囲内、好ましくは100°~140°の範囲内、さらに好ましくは110°~130°の範囲内、の角度を形成するように構成している。第1のらせんばね24と第2のらせんばね25は、互いに軸対称に構成している。
【0082】
第1のらせんばね24と第2のらせんばね25は、第1及び第2の実施形態に係るらせんばねと実質的に同一である。また、両方のらせんばね24、25も、圧電材料を含む。
【0083】
この実施形態において、2つのらせんばね5、25は、好ましくは交互に、アクチュエートされる。したがって、それらは、中間可動要素8に作用して、それを振動させる。したがって、中間可動要素8の回転運動は、まっすぐなブレードを備えるRCCタイプのピボットと同様に、らせんばね24、25によってガイドされる。
【0084】
中間可動要素8の振動は、第2の対のフレキシブルブレード26、27のおかげで、振動錘12に伝達される。
【0085】
このようにして、振動錘2は、この場合は中間要素8である、各対にある2つのフレキシブルブレードの交点に対応する回転中心を中心に振動する。2つの慣性ブロック14は、特定の振動数において横方向に変位する。
【0086】
RCCタイプのピボットは、第2の対のフレキシブルブレード9、11のおかげで、振動錘2の振動の振幅を大きくする。
【0087】
前に説明した実施形態に係る共振器1、10、20は、好ましくは大部分において、ケイ素、ガラス、セラミックス、金属のような単結晶又は多結晶の材料を含む。
【0088】
共振器1、10、20は、例えば、MEMS(微小電気機械システム)タイプの光リソグラフィーマイクロマシニングプロセスによって得られる。前記のような材料の堅固さ、弾性及び機械加工精度のおかげで、共振器1、10、20に高い共振性能が与えられる。
【0089】
また、このような材料の一部の非磁性及び低導電率の性質のおかげで、大きな直流及び交流の磁場に対する優れた耐性を与える。
【0090】
共振器1、10、20は、その共振器1、10、20の固有振動数で振動錘2、12を振動させるように構成している。このように、特に振動錘の角トラベルを大きくすることによって、共振器のエネルギー消費を抑えることができる。
【0091】
図4は、特に計時器の表示デバイスのための、回転式圧電モーター30の実施形態の1つを示している。圧電モーター30は、計時器において、表盤に配置される針のような表示デバイスをアクチュエートするために、特に用いることができる。圧電モーター30は、表示デバイスの機械式ギアトランスミッションを回転させてアクチュエートすることができるように構成している。
【0092】
圧電モーター30は、本発明に係る圧電共振器、この場合、
図2に示している第2の実施形態に係る圧電共振器10、を備える。他の実施形態に係る圧電共振器も、圧電モーター10の動作を変えることなく用いることができる。圧電共振器10は、例えば、そのベース13によってプレートに組み付けられる。
【0093】
圧電モーター10は、さらに、可動歯車51と、この可動車51を一方向に回転させるように構成している2つの爪52、53とを備える。可動車51には、好ましくは、周歯があり、この周歯は、好ましくは、非対称歯であり、これによって、回転方向を定める。可動車51は、表示デバイスの針が取り付けられる歯車列に接続される。
【0094】
第1の爪52には、可動車51を、第1の方向、例えば、反時計回り、に回転させる機能があり、第2の爪53は、第1の爪52がローター51の次の歯にて再び巻くときに、可動車51を保持する。
【0095】
各爪52、53には、その端に、好ましくは非対称歯である、歯55があるフレキシブルアーム54がある。
【0096】
第1の爪52が変位するおかげで、可動車51が回転する。この第1の爪52は、圧電共振器10の振動錘12に取り付けられる。したがって、共振器が振動するときに、第1の爪52も振動し、これによって、可動車51に対する圧電共振器の位置に従って、第1の爪52が可動歯車51を第1の方向にて押したり引いたりする。
【0097】
第2の爪53は、プレート、プレートブリッジに組み付けられ、又はベース30に直接組み付けられ、これによって、一連の組み付け公差に起因するポジショニングの誤りを抑える。この第2の爪53には、歯車が第1の方向とは反対方向に回転することを防ぐ機能がある。第2の爪53の歯55は、非対称歯と連係して、可動車51を第1の方向に回転させ、また、可動車51がその反対方向に回転することを阻止するように構成している。
【0098】
このために、爪52、53のフレキシブルなアーム54は、歯55が可動51の歯列に入り込んでいるときには、弛緩したまっすぐな位置にあり、また、可動車51が第1の方向に回転しているときに、歯列によって外側に押されるときには、巻きついて曲げられる。
【0099】
携行型時計の場合、モーター1の共振振動数又は固有振動数は、ムーブメントのレートをセットするために用いられる水晶の振動数に適合するようにされる。通常32764Hzである水晶の振動数の約数に対応する励起振動数が選択される。例えば、128Hzや256Hzの振動数を選択する。モーター1の振動数は、好ましくは、その振動振幅が最大振幅の90~95%を下回らないように、励起振動数に調整されチューンされる。
【0100】
随意的に、第2の爪53は、可動車51の回転距離又は回転速度を決めるために、ピッチセンサーとして用いられるように構成していることができる。このために、第2の爪53のフレキシブルなアーム54には、カウントユニットに接続される圧電材料を備える。このように、第2の爪53が曲げられるたびに、カウントユニットは、1つの歯の分、可動車51の回転を登録する。
【0101】
添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、上記の本発明の様々な実施形態に対して、当業者に明らかな様々な変更及び/又は改善及び/又は組み合わせを行うことができることを理解することができるであろう。
【外国語明細書】