(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091498
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】特に時計学分野の外装部品をコーティングする方法、及びコーティングされた外装部品
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20240627BHJP
A44C 27/00 20060101ALI20240627BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240627BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20240627BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240627BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G04B19/06 M
A44C27/00
B29C45/14
B29C45/16
B29C45/26
B29C33/12
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207630
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】22216156.4
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】マルガリータ・レシク
(72)【発明者】
【氏名】アフマド・オデー
【テーマコード(参考)】
3B114
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3B114AA11
3B114BB08
3B114JA01
4F202AA21
4F202AA31
4F202AA39
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4F206AF03
4F206AF11
4F206AF13
4F206AG03
4F206AH66
4F206AH71
4F206AH81
4F206AJ02
4F206AJ05
4F206AJ06
4F206AR12
4F206AR15
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JF01
4F206JF02
4F206JL02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】時計の外装部品を、製造及び組み立て中に外装部品に対して生じ得る損傷から保護するコーティング方法を提供する。
【解決手段】時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野で使用される外装部品1をコーティングする方法に関し、このコーティング方法は以下のステップ:
‐ポリウレタン系の熱可塑性ポリマー及びエポキシポリマー系の熱硬化性ポリマーからなる群から又は熱可塑性アクリル樹脂からなる群から選択されるプラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層4で、外装部品1を少なくとも部分的にオーバーモールドするステップ
を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野で使用される外装部品(1)をコーティングする方法であって、前記コーティング方法は以下のステップ:
‐ポリウレタン系の熱可塑性ポリマー及びエポキシポリマー系の熱硬化性ポリマーからなる群から又は熱可塑性アクリル樹脂からなる群から選択されるプラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層(4)で、前記外装部品(1)を少なくとも部分的にオーバーモールドするステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は更に、前記外装部品(1)に少なくとも部分的にオーバーモールドされる前記オーバーモールド層(4)内にパターン(6)を複製するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項3】
前記外装部品(1)を少なくとも部分的にオーバーモールドする前記ステップは、前記プラスチックポリマー材料の成形又は射出によって実行されることを特徴とする、請求項2に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項4】
前記外装部品(1)を少なくとも部分的にオーバーモールドする前記ステップは、以下のステップ:
‐前記外装部品(1)を、前記外装部品(1)に少なくとも部分的にオーバーモールドされる前記オーバーモールド層(4)内に複製されることになる前記パターンを含む鋳型内に配置するステップ;
‐前記鋳型を閉じるステップ;
‐前記プラスチックポリマー材料が、前記外装部品(1)を少なくとも部分的にオーバーモールドする前記オーバーモールド層(4)を形成するように、及び同時に前記パターンが前記オーバーモールド層(4)内に複製されるように、前記プラスチックポリマー材料を前記鋳型内に射出するステップ;
‐前記鋳型を開けて、オーバーモールドされた前記外装部品(1)を前記鋳型から取り出すステップ
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項5】
前記鋳型は、シリコーン材料で、又は金属若しくはセラミック材料で作製されることを特徴とする、請求項4に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項6】
鋳型がシリコーン材料で作製される場合、前記オーバーモールド層(4)内に複製されるよう設計された前記パターン(6)を含む前記シリコーン製鋳型(14)は、前記オーバーモールド層(4)内に複製されるよう設計された前記パターン(6)を保持した雄型であるマスター鋳型(16)によって作製されることを特徴とする、請求項5に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項7】
鋳型がシリコーン、金属、又はセラミック材料で作製される場合、前記金属又はセラミック製鋳型(18)に含まれる、前記オーバーモールド層(4)内に複製されるよう設計された前記パターン(6)は、レーザビームデバイスを用いて形成され、前記レーザビームデバイスにより、前記オーバーモールド層(4)内に複製されるよう設計された前記パターン(6)は、前記金属又はセラミック製鋳型(18)に雌型として形成されることを特徴とする、請求項5に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項8】
前記外装部品(1)を少なくとも部分的にオーバーモールドする前記ステップは、前記外装部品(1)に前記プラスチックポリマー材料を噴霧することによって形成されるオーバーモールド層(4)で、前記外装部品(1)をコーティングすること、及びそれに続いて、レーザビームデバイスを用いて作製された、前記オーバーモールド層(4)内に複製されるよう設計された前記パターン(6)の雌型を保持するツールによって、前記パターン(6)を前記オーバーモールド層(4)に高温で複製することからなることを特徴とする、請求項2に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項9】
前記オーバーモールド層(4)は、前記プラスチックポリマー材料を1回以上の連続塗布で堆積させることによって得られることを特徴とする、請求項8に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項10】
前記オーバーモールド層(4)の厚さは、100μm±10%であることを特徴とする、請求項9に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項11】
前記パターン(6)の形成に使用される前記レーザビームデバイスは、ナノ秒範囲の短パルスを有する又はピコ秒~フェムト秒範囲の超短パルスを有するコヒーレント光線を放射する、レーザビームを備えることを特徴とする、請求項7に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項12】
前記レーザビームは、4ns~350nsの調整可能な持続時間を有し、周波数が10kHz~1MHzであり、出力が40W又は40W付近である、パルスを放出することを特徴とする、請求項11に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項13】
前記レーザビームが超短パルスを放出する場合、前記パルス周波数は100kHz~100MHzであることを特徴とする、請求項11に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項14】
前記オーバーモールド層(4)は、機械的保護を提供するという技術的な役割、及び必要に応じて装飾的な役割を果たすことを特徴とする、請求項2に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項15】
前記オーバーモールド層(4)は、78重量%のプラスチックポリマー、15重量%のカーボンブラック着色剤、5重量%のグラフェン、及び前記外装部品(1)に対する前記オーバーモールド層(4)の付着を促進するための2重量%の結合剤を含むことを特徴とする、請求項14に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項16】
前記オーバーモールド層(4)は、30重量%の熱可塑性アクリル樹脂、及び60重量%の溶媒を含み、前記溶媒には、1重量%の分散剤、8重量%の黒色着色剤、及び前記外装部品(1)に対する前記オーバーモールド層(4)の付着を促進するための1重量%の結合剤が添加されることを特徴とする、請求項14に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項17】
前記結合剤はシランであることを特徴とする、請求項15に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項18】
前記黒色着色剤は、比色分析で測定される10以下の明度値を有することを特徴とする、請求項16に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項19】
前記黒色着色剤は、95重量%のカーボンブラック及び5重量%のグラフェンで構成されることを特徴とする、請求項18に記載の外装部品をコーティングする方法。
【請求項20】
時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野の外装部品(1)であって、前記外装部品(1)は、ポリウレタン系の熱可塑性ポリマー及びエポキシポリマー系の熱硬化性ポリマーからなる群から又は熱可塑性アクリル樹脂からなる群から選択されるプラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層(4)で、少なくとも部分的にコーティングされる、外装部品(1)。
【請求項21】
前記オーバーモールド層(4)は、装飾及び/又は技術的パターン(6)の複製を含むことを特徴とする、請求項20に記載の外装部品(1)。
【請求項22】
前記オーバーモールド層(4)は、1つ以上のプラスチックポリマー層によって形成されることを特徴とする、請求項20に記載の外装部品(1)。
【請求項23】
前記オーバーモールド層(4)の厚さは、100μm±10%であることを特徴とする、請求項22に記載の外装部品(1)。
【請求項24】
前記オーバーモールド層(4)は、78重量%のプラスチックポリマー、15重量%のカーボンブラック着色剤、5重量%のグラフェン、及び前記外装部品(1)に対する前記オーバーモールド層(4)の付着を促進するための2重量%の結合剤を含むことを特徴とする、請求項23に記載の外装部品(1)。
【請求項25】
前記オーバーモールド層(4)は、30重量%の熱可塑性アクリル樹脂、及び60重量%の溶媒を含み、前記溶媒には、1重量%の分散剤、8重量%の黒色着色剤、及び前記外装部品(1)に対する前記オーバーモールド層(4)の付着を促進するための1重量%の結合剤が添加されることを特徴とする、請求項23に記載の外装部品(1)。
【請求項26】
前記結合剤はシランであることを特徴とする、請求項24に記載の外装部品(1)。
【請求項27】
前記黒色着色剤は、比色分析で測定される10以下の明度値を有することを特徴とする、請求項24に記載の外装部品(1)。
【請求項28】
前記黒色着色剤は、95重量%のカーボンブラック及び5重量%のグラフェンで構成されることを特徴とする、請求項27に記載の外装部品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野で使用される外装部品をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野で使用される外装部品の分野に関する。
【0003】
以下の記述では、用語「ファッションアイテム」は、ベルト、フットウェア、及び衣類といった衣料品及びアクセサリー、並びにアイウェア、例えば電話機である電子機器、及び他のいずれの装飾品を意味する。
【0004】
更に、用語「外装部品(external part)」は、ユーザにとって視認可能であり、かつ装飾的機能を有する、即ち対象物の視覚的外観に寄与する構成部品を指すために、上述の分野において一般的に使用される。
【0005】
時計学という特定の分野では、よく知られた外装部品の一カテゴリは腕時計の文字盤であり、文字盤の上では特に現在時刻を表示する針が動き、また文字盤は多くの場合、ブリリアントカットの石で形成される場合もあるアワーインデックスといった技術的な部品、又は腕時計ブランドのロゴタイプ等の装飾部品を受承する。
【0006】
これらの文字盤は極めて高価であり、また特に壊れやすい。しかしながらこの種の文字盤には、製造中、及び腕時計ケース内に取り付ける際に、多くの作業が行われる。その結果、これらの文字盤が劣化して廃棄しなければならなくなるリスクは大きく、これは経済的な観点からは受け入れ難いものである。
【0007】
従って、時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野のいずれのタイプの外装部品を、製造及び組み立て中に該外装部品に対して生じ得る損傷から保護することが、従来技術において必要とされてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野の外装部品をコーティングして、これらの外装部品が特に製造中及び腕時計の組み立て中に受ける可能性がある外的な機械的応力に対する、これらの外装部品の効果的な機械的保護を保証する方法を提案することによって、上述の欠点及びその他の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野で使用される外装部品をコーティングする方法に関し、このコーティング方法は以下のステップ:
‐ポリウレタン系の熱可塑性ポリマー及びエポキシポリマー系の熱硬化性ポリマーからなる群から又は熱可塑性アクリル樹脂からなる群から選択されるプラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層で、上記外装部品を少なくとも部分的にオーバーモールドするステップ
を含む。
【0010】
本発明のある特別な実施形態によると、上記方法は更に、上記外装部品に少なくとも部分的にオーバーモールドされる上記オーバーモールド層内にパターンを複製するステップを含む。
【0011】
本発明の別の特別な実施形態によると、上記外装部品を少なくとも部分的にオーバーモールドする上記ステップは、上記プラスチックポリマー材料の成形又は射出によって実行される。
【0012】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記外装部品の少なくとも部分的なオーバーモールドは、以下のステップ:
‐上記外装部品を、上記外装部品に少なくとも部分的にオーバーモールドされる上記オーバーモールド層内に複製されることになる上記パターンを含む鋳型内に配置するステップ;
‐上記鋳型を閉じるステップ;
‐上記プラスチックポリマー材料が、上記外装部品を少なくとも部分的にオーバーモールドする上記オーバーモールド層を形成するように、及び同時に上記パターンがこのオーバーモールド層内に複製されるように、上記プラスチックポリマー材料を上記鋳型内に射出するステップ;
‐上記鋳型を開けて、オーバーモールドされた上記外装部品を上記鋳型から取り出すステップ
を含む。
【0013】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記鋳型は、シリコーン材料又は金属若しくはセラミック材料で作製される。
【0014】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、鋳型がシリコーン材料で作製される場合、上記オーバーモールド層内に複製されるよう設計された上記パターンを含むこのシリコーン製鋳型は、上記オーバーモールド層内に複製されるよう設計された上記パターンを保持した雄型であるマスター鋳型によって作製される。
【0015】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、鋳型がシリコーン、金属、又はセラミック材料で作製される場合、この金属又はセラミック製鋳型に含まれる、上記オーバーモールド層内に複製されるよう設計された上記パターンは、レーザビームデバイスを用いて形成され、上記レーザビームデバイスにより、上記オーバーモールド層内に複製されるよう設計された上記パターンは、上記金属又はセラミック製鋳型に雌型として形成される。
【0016】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記外装部品を少なくとも部分的にオーバーモールドする上記ステップは、この外装部品に上記プラスチックポリマー材料を噴霧することによって形成されるオーバーモールド層で、上記外装部品をコーティングすること、及びそれに続いて、レーザビームデバイスを用いて作製された、上記オーバーモールド層内に複製されるよう設計された上記パターンの雌型を保持するツールによって、上記パターンを上記オーバーモールド層に高温で複製することからなる。
【0017】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記オーバーモールド層は、上記プラスチックポリマー材料を1回以上の連続塗布で堆積させることによって得られる。
【0018】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記オーバーモールド層の厚さは、100μm±10%である。
【0019】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記パターンの形成に使用される上記レーザビームデバイスは、ナノ秒範囲の短パルスを有する又はピコ秒~フェムト秒範囲の超短パルスを有するコヒーレント光線を放射する、レーザビームを備える。
【0020】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記レーザビームは、4ns~350nsの調整可能な持続時間を有し、周波数が10kHz~1MHzであり、出力が40W又は40W付近である、パルスを放出する。
【0021】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記レーザビームが超短パルスを放出する場合、パルス周波数は100kHz~100MHzである。
【0022】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記オーバーモールド層は、機械的保護を提供するという技術的な役割、及び必要に応じて装飾的な役割を果たす。
【0023】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記オーバーモールド層は、78重量%のプラスチックポリマー、15重量%のカーボンブラック着色剤、5重量%のグラフェン、及び上記外装部品に対する上記オーバーモールド層の付着を促進するための2重量%の結合剤を含む。
【0024】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記オーバーモールド層は、30重量%の熱可塑性アクリル樹脂、及び60重量%の溶媒を含み、上記溶媒には、1重量%の分散剤、8重量%の黒色着色剤、及び上記外装部品に対する上記オーバーモールド層の付着を促進するための1重量%の結合剤が添加される。
【0025】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記結合剤はシランである。
【0026】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記黒色着色剤は、比色分析で測定される10以下の明度値を有する。
【0027】
本発明の更に別の特別な実施形態によると、上記黒色着色剤は、95重量%のカーボンブラック及び5重量%のグラフェンで構成される。
【0028】
本発明は更に、時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野の外装部品に関し、この外装部品は、ポリウレタン系の熱可塑性ポリマー及びエポキシポリマー系の熱硬化性ポリマーからなる群から又は熱可塑性アクリル樹脂からなる群から選択されるプラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層で、少なくとも部分的にコーティングされる。
【0029】
本発明のある特定の実施形態によると、上記オーバーモールド層は、装飾及び/又は技術的パターンの複製を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態によると、上記オーバーモールド層は、1つ以上のプラスチックポリマー層によって形成される。
【0031】
本発明の更に別の実施形態によると、上記オーバーモールド層の厚さは、100μm±10%である。
【0032】
本発明の更に別の実施形態によると、上記オーバーモールド層は、78重量%のプラスチックポリマー、15重量%のカーボンブラック着色剤、5重量%のグラフェン、及び上記外装部品に対する上記オーバーモールド層の付着を促進するための2重量%の結合剤を含む。
【0033】
本発明の更に別の実施形態によると、上記オーバーモールド層は、30重量%の熱可塑性アクリル樹脂、及び60重量%の溶媒を含み、上記溶媒には、1重量%の分散剤、8重量%の黒色着色剤、及び上記外装部品に対する上記オーバーモールド層の付着を促進するための1重量%の結合剤が添加される。
【0034】
本発明の更に別の実施形態によると、上記結合剤はシランである。
【0035】
本発明の更に別の実施形態によると、上記黒色着色剤は、比色分析で測定される10以下の明度値を有する。
【0036】
本発明の更に別の実施形態によると、上記黒色着色剤は、95重量%のカーボンブラック及び5重量%のグラフェンで構成される。
【0037】
これらの特徴によって、本発明は、上記時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野の外装部品をコーティングする方法を提供し、上記方法は、プラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層による上記外装部品の少なくとも部分的なオーバーモールドを開示することにより、このような外装部品を、製造及び組み立て中に該外装部品に対して生じ得る損傷から保護することを可能にする。
【0038】
本発明の別の利点によると、プラスチックポリマー材料の層による上記外装部品のオーバーモールドは、上記プラスチックポリマー材料の連続する複数の薄層の噴霧によって、又は射出成形によって上記プラスチックポリマー材料を鋳型内に射出することによって、容易に実装できる。
【0039】
本発明の更に別の利点によると、上記外装部品をコーティングする上記オーバーモールド層は、特にこのオーバーモールド層内のパターンの刻印を複製することによって、また必要に応じてこのオーバーモールド層に特定の外観、例えばマットな外観、又は特定の色、例えば濃い黒色を与えることによって、この外装部品の装飾にも寄与する。従って上記オーバーモールド層は有利なことに、2つの機能、即ち:上記外装部品の上記機械的保護を保証する機能、及び上記オーバーモールド層でオーバーモールドされる上記外装部品を装飾する機能を有する。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明による方法のある例示的な実装形態の、以下に与えられる詳細な説明を読むことにより、より明らかになるだろう。上記例は単に例示的な目的のために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、オーバーモールド層でコーティングされた、時計用の文字盤型外装部品の斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、プラスチックポリマー材料の噴霧によって外装部品をオーバーモールドするステップを示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、レーザビームデバイスを用いて作製された、オーバーモールド層にオーバーモールドされることになるパターンの雌型を保持するツールを用いて、上記パターンをオーバーモールド層に高温で複製するステップを示す概略図である。
【
図3】
図3は、プラスチックポリマー材料を鋳型内へと射出することによってオーバーモールド及びパターンの複製を行うステップを示す概略図である。
【
図4】
図4は、外装部品を少なくとも部分的に取り囲むオーバーモールド層内に複製されるよう設計されたパターンを含む鋳型を製造するための第1の方法を示す概略図である。
【
図5】
図5は、外装部品を少なくとも部分的に取り囲むオーバーモールド層内に複製されるよう設計されたパターンを含む鋳型を製造するための第2の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、時計学、ファッションアイテム、宝飾品、及び宝石加工の分野のいずれのタイプの外装部品を、プラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層でコーティングすることによって、このような外装部品を、製造及び組み立て中に該外装部品に対して生じ得る損傷から保護できるようにすることからなる、一般発明概念から出発した。その別の態様によると、本発明は更に、オーバーモールド層を用いて、このオーバーモールド層でコーティングされた外装部品を装飾することを提案する。特にこの層は、特定の色、例えば濃い黒色又は反射性の白色が与えられるように設計される。従って本発明によるオーバーモールド層は、2つの機能、即ち機械的保護機能、及び外装部品を装飾するための機能を有する。これら2つの機能は同一のオーバーモールド層によって実現され、上記オーバーモールド層は、プラスチックポリマー材料の薄層の噴霧によって、又はプラスチックポリマー材料を鋳型内に射出することによって、極めて容易に堆積させられる。
【0043】
以下の説明では、例示的かつ非限定的な目的のための単なる例として、上記外装部品が、腕時計等の時計の文字盤であるものと想定する。全体を通して一般参照番号1で表されるこの文字盤には、特に現在時刻を表示するために時針及び分針(図示せず)の心棒を通過させることができるようにするための、並びに例えばアワーインデックスの形成のために装飾材を取り付けられるようにするための、複数の孔2が設けられる(
図1を参照)。
【0044】
本発明によると、この文字盤1は、ポリウレタン系の熱可塑性ポリマー及びエポキシポリマー系の熱硬化性ポリマーからなる群から又は熱可塑性アクリル樹脂からなる群から選択されるプラスチックポリマー材料で作製されたオーバーモールド層4で、少なくとも部分的にコーティングされる。
【0045】
オーバーモールド層4は、機械的保護を提供するという技術的役割を果たす。このオーバーモールド層4の存在は、純粋に装飾的な、又は技術的でもある目的のために、パターン6を複製するためにも使用できる(例えば時計のブランドのロゴタイプの複製)。オーバーモールド層4内に複製されたパターン6の外観に加えて、オーバーモールド層4の色も変化させることができる。
【0046】
本発明のある特別な実装形態によると、オーバーモールド層4は、78重量%のプラスチックポリマー、15重量%のカーボンブラック着色剤、5重量%のグラフェン、及び外装部品1に対するオーバーモールド層4の付着を促進するための2重量%の結合剤を含む。
【0047】
本発明の別の特別な実施形態によると、オーバーモールド層4は、30重量%の熱可塑性アクリル樹脂、及び60重量%の溶媒を含み、上記溶媒には、1重量%の分散剤、8重量%の黒色着色剤、及び外装部品1に対するオーバーモールド層4の付着を促進するための1重量%の結合剤が添加される。
【0048】
上記結合剤は例えばシランである。上記黒色着色剤は、95重量%のカーボンブラック及び5重量%のグラフェンで構成される。上記黒色着色剤は好ましくは、比色分析で測定される10以下の明度値を有する。
【0049】
図2Aに示されている本発明の方法の第1の実装形態によると、外装部品1をオーバーモールドするステップは、この外装部品1にプラスチックポリマー材料を噴霧することによって形成されるオーバーモールド層4で、外装部品1をコーティングすることからなる。このオーバーモールド層4は、プラスチックポリマー材料を1回以上の連続塗布で堆積させることによって得られる。オーバーモールド層4の厚さは、100μm±10%である。このようにオーバーモールドすることにより、製造中、及び例えばこの外装部品が文字盤である場合には腕時計ケース内での組み立て中に生じ得る劣化のリスクから、外装部品1が保護される。
【0050】
外装部品1を劣化のリスクから保護することをまず目的とするオーバーモールド層4の存在は、このオーバーモールド層4内に3次元パターンを形成するためにも使用でき、このパターンの機能は、純粋に装飾的なもの、又は技術的なもの(例えば、オーバーモールド層4の厚み内に時計のブランドのロゴタイプを複製する)とすることができる。このため、
図2Bに概略図で示されているように、外装部品1をコーティングした後、スタンプタイプのツール8を用いて、パターン6をオーバーモールド層4内に高温で複製する。上記ツール8は、例えばレーザビームデバイスを用いて製造でき、オーバーモールド層4内に複製されることになるパターン6の雌型を保持する。
【0051】
図3に示されている本発明の方法の第2の実装形態によると、外装部品1を少なくとも部分的にオーバーモールドするステップは、以下のステップ:
‐外装部品1を、外装部品1に少なくとも部分的にオーバーモールドされるオーバーモールド層4内に複製されることになるパターン6を含む鋳型10内に配置するステップ;
‐鋳型10を閉じるステップ;
‐プラスチックポリマー材料が、外装部品1を少なくとも部分的にオーバーモールドするオーバーモールド層4を形成するように、及び同時にパターン6がこのオーバーモールド層4内に複製されるように、プラスチックポリマー材料を、射出チャネル12を介して鋳型10内に射出するステップ;
‐鋳型10を開けて、オーバーモールドされた外装部品1を鋳型10から取り出すステップ
を含む。
【0052】
鋳型10は、シリコーン材料又は金属若しくはセラミック材料で作製される。シリコーン製鋳型は、より具体的には、小型の一連のオーバーモールド済み外装部品1の成形による製造で使用するために確保されるが、金属又はセラミック製鋳型は、大型の一連のオーバーモールド済み外装部品1の射出成形による製造において好まれる。
【0053】
図4に示されているように、鋳型10がシリコーン材料で作製されている場合、1つのマスター鋳型16からこのシリコーン製鋳型14の複数のコピーが作製されることが多い。このマスター鋳型16が含むパターン6は例えば、レーザビームデバイスを用いて形成できる。このパターン6pは、シリコーン製鋳型14内に複製されるように設計されており、オーバーモールド層4内に複製されることになるパターン6の雄型に相当する。外装部品1は、この外装部品1をシリコーン製鋳型内で成形することによってオーバーモールドされる。
【0054】
鋳型10が金属又はセラミック材料で作製されている場合、金属製鋳型18が含む、オーバーモールド層4内に直接複製されるように設計されたパターン6は、例えばレーザビームデバイスを用いて形成され、このレーザビームデバイスによって、オーバーモールド層4内に複製されるように設計されたパターン6nは、金属製鋳型18の内壁内に雌型として形成される(
図5を参照)。
【0055】
金属製鋳型18内のパターン6の形成に使用されるレーザビームデバイスは、ナノ秒範囲の短パルスを有する又はピコ秒~フェムト秒範囲の超短パルスを有するコヒーレント光線を放射する、レーザビームを備える。
【0056】
レーザビームは、4ns~350nsの調整可能な持続時間を有し、周波数が10kHz~1MHzであり、出力が40W付近である、パルスを放出する。
【0057】
レーザビームが超短パルスを放出する場合、上記パルス周波数は100kHz~100MHzである。
【0058】
当然のことながら、本発明は上述の実装形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な単純な代替形態及び修正形態を考えることができる。特に、外装部品が腕時計の文字盤である場合、この腕時計の文字盤を腕時計ケース内により容易に取り付けられるようにするために、この腕時計の文字盤の縁部をオーバーモールド層4でコーティングしないことが好ましいことに留意されたい。より一般的には、所与の外装部品をオーバーモールドする際、この外装部品の特定の表面がオーバーモールド層によってコーティングされないことを保証するためのステップを実施できる。また、本発明の方法を、ユーザの皮膚に接触するように設計された外装部品に適用する場合、オーバーモールド層は装用時に高いレベルの快適性を提供することに留意されたい。
【符号の説明】
【0059】
1 外装部品
2 孔
4 オーバーモールド層
6 パターン
6p 雄型パターン
6n 雌型パターン
8 ツール
10 鋳型
12 射出チャネル
14 シリコーン製鋳型
16 マスター鋳型
18 金属製鋳型
【外国語明細書】