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特開2024-91501内燃機関用シリンダーヘッドと、そのシリンダーヘッドを備えた内燃機関
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  • 特開-内燃機関用シリンダーヘッドと、そのシリンダーヘッドを備えた内燃機関 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091501
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】内燃機関用シリンダーヘッドと、そのシリンダーヘッドを備えた内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20240627BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240627BHJP
   F02M 69/00 20060101ALI20240627BHJP
   F02M 69/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F02M61/18 340D
F02M21/02 G
F02M21/02 S
F02M69/00 310Z
F02M69/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208111
(22)【出願日】2023-12-09
(31)【優先権主張番号】10 2022 004 896.5
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】592007771
【氏名又は名称】ドイツ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロス
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB05
3G066BA02
3G066CC17
3G066CC24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吸気ポート内で常に良好な混合を可能にする内燃機関用のシリンダヘッドと、そのシリンダヘッドを備えた内燃機関とを提供する。
【解決手段】吸気ポート(7)を有するシリンダヘッド装置と、このシリンダヘッド装置に接続されたインジェクター(18)と、このインジェクター(18)に流体接続されたチューブコア軸線(L19)に沿って吸気ポート(7)内に延在する管状の噴射管(19)と、噴射管(19)上に配置された取付要素(21)とを有し、この取付要素(21)はチューブコア軸線(L19)に対して半径方向外側に延びる空気案内部を有し、吸気ポート(7)内の流れがこの空気案内部の影響を受ける、内燃機関、特に水素動力内燃機関用のシリンダヘッド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポート(7)を有するシリンダヘッド装置と、
このシリンダヘッド装置に接続されたインジェクター(18)と、
このインジェクター(18)に流体接続された、チューブコア軸線(L19)に沿って吸気ポート(7)内に延在する管状噴の射管(19)と、
を有する内燃機関、特に水素動力内燃機関用のシリンダヘッドであって、
上記噴射管(19)上に取付要素(21)が配置され、この取付要素(21)が、吸気ポート(7)内の流れが空気案内部(23)によって影響を受けるように、チューブコア軸線(L19)に対して半径方向外側に延びる空気案内部(23)を有することを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項2】
チューブコア軸線(L19)に対する空気案内部(23)の半径方向の長さ(広がり)が軸方向の長さ(広がり)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッド。
【請求項3】
取付要素(21)が第1接続部(22)を有し、取付要素(21)は第1接続部(22)によって噴射管(19)上に配置され、特に空気案内部(23)は第1の接続部からチューブコア軸線(L19)に対して径方向外側に延びることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダヘッド。
【請求項4】
第1接続部(22)の最小の円筒包絡線(この円筒包絡線の円筒軸線はチューブコア軸線(L19)と同軸に配置される)がチューブコア軸線(L19)からの空気案内部(23)の最大半径範囲よりも小さい半径を有することを特徴とする請求項3に記載のシリンダヘッド。
【請求項5】
噴射管(19)が吸気ポート(7)内に開口する噴射口(20)を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のシリンダヘッド。
【請求項6】
空気案内部(23)が空気案内ディスクとして形成され、この空気案内ディスクのチューブコア軸線(L19)の周りの円周に沿った長さ(範囲)がチューブコア軸線(L19)に対する最大半径範囲よりも大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のシリンダヘッド。
【請求項7】
上記空気案内ディスクがチューブコア軸線線L19方向において第1接続部22に隣接して配置されることを特徴とする請求項6に記載のシリンダヘッド。
【請求項8】
上記空気案内ディスクが貫通開口部(24)を有し、この貫通開口部(24)の長手方向軸線がチューブコア軸線(L19)と同軸に配置されることを特徴とする請求項7に記載のシリンダヘッド。
【請求項9】
上記空気案内ディスクの貫通開口部(24)が噴射口(20)の直径以上の直径を有することを特徴とする請求項8に記載のシリンダヘッド。
【請求項10】
取付要素(21)が噴射管(19)の雄ネジと係合する雌ネジ(25)を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のシリンダヘッド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のシリンダヘッドを含む内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダーヘッドと、そのシリンダーヘッドを備えた内燃機関とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダーヘッドはピストンの反対側の燃焼室の境界を定め、通常は吸気ポートと排気ポートを有し、内燃機関のガス交換プロセス用のバルブ制御装置も備えている。吸気ポート噴射式のエンジンでは燃料が吸気ポートに噴射され、吸気ポート内に燃料と吸入空気との混合物が形成される。
【0003】
吸気ポート噴射式の内燃機関は[特許文献1](欧州特許第0 694 124 B1号公報)で公知であり、ここでは燃料はチューブを介して吸気ポートに噴射される。
【0004】
吸気ポートに開口するチューブの端にはチューブから流出する燃料を霧化して混合を改善する霧化スクリーンが含まれる。この場合の欠点は連続運転中に霧化スクリーンが詰まり、燃料供給が損なわれる可能性があるという点にある。さらに、噴霧スクリーンによって燃料がチューブ内に保持されるため、特に燃料として水素を使用する場合には、チューブ内で意図しない再点火が発生する危険性がある。
【0005】
[特許文献2](米国特許出願公開第2014/0084085A1号明細書)に記載のインジェクターを備えた内燃機関では、インジェクターがノズル要素と混合セクションとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0 694 124 B1号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0084085A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記の公知技術をベースにして、吸気ポート内で常に良好な混合を可能にする内燃機関用のシリンダヘッドと、そのシリンダヘッドを備えた内燃機関とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、吸気ポートを含むシリンダヘッド装置(cylinder head arrangement)と、このシリンダヘッド装置に接続されたインジェクター(injector)と、このインジェクターに流体接続され、チューブコア軸線(tube core axis)に沿って吸気ポート内に延在する管状の噴射管(tubular injection tube)とを有し、噴射管上に取付要素が配置され、この取付要素は吸気ポート内の流れが空気案内部の影響を受けるようにチューブコア軸線に対して噴射管に対して半径方向外側へ延びる空気案内部を有する内燃機関、特に水素動力内燃機関用のシリンダヘッドを提供する。
【0009】
半径方向外側に延びた空気案内部は空気案内部の下流の吸気内に生じる乱流を増加させ、その乱流は吸入空気気と噴射管を介して吸気ポートに噴射される燃料との混合を改善する。空気案内部は径方向外側に延びているので、噴射管が空気案内部によって閉塞されることがなく、運転の進行に伴う噴射管の詰まりや噴射管内に燃料が滞留することもない。
【0010】
吸気ポートはエンジンの空気導入システムの最終部分を構成し、吸気ポートはインテークマニホールドと燃焼室とを接続し、吸気弁によって開閉される。
【0011】
インジェクターは原則として噴射管がなくても機能するが、噴射管は燃料が吸気ポート内の流れに入る位置を吸気ポートを規定する壁から吸気ポートの中心に向かって移動させる。従って、噴射管は一般的な機能に必要なインジェクターのコンポーネントとは別に考慮する必要がある。
【0012】
可能な一つの実施形態では、チューブコア軸線に対する空気案内部の半径方向の長さ(広がり)は、チューブコア軸線方向の軸方向の長さ(広がり)よりも大きくすることができる。換言すれば、空気案内部はディスク形状にすることができ、空気案内部は空気案内ディスクとして設計することができる。ここで、チューブコア軸線の周りの円周に沿った空気案内部の長さはチューブコア軸線に対する半径方向の長さよりも大きくすることができる。
【0013】
可能なさらに他の一つの実施形態では、噴射管は吸気ポートに開口する噴射口を有することができる。
【0014】
特に、空気案内部または空気案内ディスクは円形状にすることができる。空気案内部または空気案内ディスクは貫通開口部を有することができ、この貫通開口部の長手方向軸線はチューブコア軸線と同軸に配置される。空気誘導ディスクの貫通開口は円形でもよく、噴射口の直径以上の直径を有することができる。換言すれば、空気案内部およびその貫通開口は、噴射口と取付要素が噴射口の所でチューブコア軸線の方向、特にチューブコア軸線方向で重ならないように形状にすることができる。
【0015】
さらに他の一つの実施形態では、取付要素を噴射管上に配置させる第1接続部を取付要素が有することができる。取付要素は噴射管の雄ネジと係合する雌ネジを有することができる。また、取付要素は噴射管にプレスフィット(圧力嵌め)することもでき、あるいは取付要素と噴射管を一体に設計することもできる。
【0016】
空気案内部はチューブコア軸線に対して第1接続部から半径方向外側に延在できる。 あるいは、空気案内部は、チューブコア軸線に沿った軸方向で接続部に隣接して配置することができ、チューブコア軸線に対して半径方向外側に延在させることができる。
【0017】
一つの実施形態では、第1接続部(その円筒軸線はチューブコア軸線と同軸に配置される)の最小円筒形包絡線(cylindrical envelope)がチューブコア軸線からの空気案内部の最大半径方向長さよりも小さい半径を有するようにすることもできる。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために上記の構成を有するシリンダーヘッドを備えた内燃機関も提案する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による第1のシリンダヘッドを備えた内燃機関の概略部分断面図。
図2図1の取付要素の側面図。
図3図2の矢印IIIの方向から見た図1の取付要素の図。
図4図3の切断線IV?IVに沿った取付要素の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の内燃機関のシリンダーヘッドの可能な実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1]~[図4]は内燃機関1を示す。この内燃機関1は特に水素を燃料として作動する。 内燃機関1は本発明によるシリンダヘッド5に接続されたクランクケース2を備える。クランクケース2は公知のように可動ピストン4とシリンダヘッド5とによって画定される可変燃焼室3を備える。シリンダヘッド5は互いに接続されたリンダヘッドベース要素6とシリンダヘッドカバー(図示せず)とを有するシリンダヘッド装置(cylinder head arrangement)を備えている。
【0022】
シリンダヘッドベース要素6には吸気ポート7と排気ポート10が鋳造されている。混合気は吸気ポート7を介して燃焼室3に供給できる。吸気ポート7は壁8を有し、壁8によって境界が定められ、 燃焼室入口開口9は燃焼室3の方向に開口する。燃焼室入口開口9は入口弁12によって公知の方法で可逆的に開閉できる。この目的のために、入口弁12は燃焼室入口開口9が閉じられたとき燃焼室入口開口9の弁座に配置される入口弁ディスク13と、弁軸線L12に沿って実質的に円筒状に延びる入口弁ステム14とを有する。吸気弁12は、シリンダヘッドベース要素6の上方に配置された対応動弁機構によってバルブ軸線L12に沿って移動できる。
【0023】
燃焼室3内での空気と燃料の混合物の燃焼によって生じた排気ガスは排気ポート10を介して燃焼室3から流出できる。排気ポート10は壁によって区切られ、燃焼室を構成する壁を有する。燃焼室排気開口11は、排気弁15によって公知の方法で所望に応じて可逆的に開閉できる。この目的のために、排気弁15は燃焼室排気孔11の閉弁時に燃焼室排気孔11の弁座に配置される排気弁ディスク16と、弁軸線L15に沿って略円筒状に延びる排気弁軸17とを備えている。排気弁15は動弁機構により弁軸線L15に沿って移動可能である。
【0024】
空気と燃料の混合物を形成するために、燃料は、シリンダヘッド装置、特にシリンダヘッドベース要素6に接続された図示していない接続手段を介してインジェクター18から吸気ポート7へ噴射される。この目的のために、インジェクター18の出口はチューブコア軸線L19に沿って吸気ポート7内を延びた噴射管19に流体接続されている。噴射管19は吸気ポート7内に開口する噴射口20を有する。図の場合には噴射管19には角度が付けられており、湾曲部を介して互いに接続されたインジェクター18側の第1直線端部と噴射口20側の第2直線端部とを有している。チューブコア軸線L19は噴射管19の一端から反対端まで完全に延びているが、[図1]では図を明確にするためにチューブコア軸線L19は第2端部分の領域のみを示してある。チューブコア軸線L19は完全直線またはS字形など他の任意の形にすることができる。
【0025】
図2]から{図4}に詳細に示した第1の取付要素21は、噴射管19の第2端部分の領域に位置する。この第1の取付要素21は環状の第1接続部22を有し、その内側輪郭は噴射管19の外側輪郭と相補的である。第1の取付要素21は噴射管19にしっかりと接続される。第1の取付要素21は噴射管19に螺合している(ネジ込まれている)。この目的のために、取付要素21は雌ネジ25が形成された円筒状の接続部22を有する。取付要素21は、噴射管19の相補的な雄ネジ(図示せず)と係合する雌ネジ25が形成された接続部22を介して噴射管19の第2端部に取り付けられる。取付要素21を接続管19にネジ込むために、接続部22には、例えばオープンエンドレンチなどのネジ締め工具を補完するように設計された工具係合面26が設けられている。
【0026】
しかし、他の任意の方法、例えばはんだ付け、接着または圧入によって上記の2つの部品を結合させることもできる。原理的には、取付要素21と噴射管19とを一体に設計することも考えられる。
【0027】
空気案内部30はチューブコア軸線L19に沿って接続部22に結合(adjoins)する。 取付要素21を噴射管19に取り付けた時には空気案内部23が噴射管19と軸方向で接触する。
【0028】
空気案内部23は空気案内ディスクとして設計され、この空気案内ディスクのチューブコア軸線L19方向の長さ(広がり)はチューブコア軸線L19に対する半径方向の長さ(広がり)よりも小さい。 この場合、空気案内部23は外側が円筒状であるが、これに限定されるものではなく、接続部22よりも大きな外径を有する。換言すれば、空気案内部23は接続部22よりもチューブコア軸線L19に対して半径方向に突出して延びている。
【0029】
空気案内部23は貫通開口24を有し、特に、この貫通開口24は円筒形で、開口直径を有する。貫通開口24の長手軸線はチューブコア軸線L19と同軸上に配置される。貫通開口24の直径は噴射口20の直径以上である。従って、燃料は噴射管19から自由に流れることができる。
【0030】
空気案内部23は吸気ポート7の有効断面積を局所的に減少させる。その結果、吸気の流れ方向において空気案内部23の後方で乱流が発生し、吸入空気と噴射燃料との混合気の形成が促進される。
【0031】
この場合、取付要素21は底面が入口弁プレート13に規定され、弁軸線L12に沿って延びる仮想直線円筒(imaginary straight cylinder)の外側に配置される。れによって、燃焼室3に入るときに燃料と空気の混合気の十分な混合が保証される。
【0032】
さらに、ベンチュリ効果の作用により、空気案内部23の直後での作用圧力が低下するため、噴射管19内に残った燃料は噴射管19から吸引され、燃料や混合気が逆流することはない。 これによって噴射管19内での燃料の意図しない再点火が防止される。
【符号の説明】
【0033】
1 内燃機関
2 クランクケース
3 燃焼室
4 ピストン
5 シリンダーヘッド
6 シリンダーヘッドベース要素
7 吸気ポート
8 壁
9 燃焼室入口開口部
10 排気ポート
11 燃焼室排気口
12 吸気弁
13 吸気弁ディスク
14 吸気弁ステム
15 排気弁
16 排気弁体
17 排気弁ステム
18 インジェクター
19 噴射菅
20 噴射口
21 取付要素
22 接続部
23 空気案内部
24 貫通開口部
25 雌ネジ
26 工具係合面
L19 チューブコア軸線
L12 弁軸線
L15 弁軸線
図1
図2
図3
図4