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特開2024-91504拘束型人工膝のための脱臼防止デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091504
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】拘束型人工膝のための脱臼防止デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208330
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】63/434,574
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/450,878
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502427840
【氏名又は名称】ジンマー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ティム ヨーコ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エー.バンディーペンボス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ディー.バード
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア バーカー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ ブレイロック
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ライディ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC13
4C097CC14
4C097CC18
4C097DD01
4C097DD09
4C097DD10
4C097DD14
4C097EE02
4C097SC08
(57)【要約】
【課題】拘束型人工膝のための脱臼防止デバイスを提供する。
【解決手段】本明細書中に記載された技術はプロテーゼ組立体に関する。プロテーゼ組立体は、大腿骨コンポーネントと、前記大腿骨コンポーネントによって係合された脛骨支承コンポーネントと、脛骨ベースプレートとを含んでよい。脛骨ベースプレートは、脛骨ベースプレートの凹部内に受容されたブッシングと、大腿骨コンポーネント及びブッシングに連結されたヒンジポストとを含むことができる。ヒンジポストはブッシングによって少なくとも部分的に受容することができる。プロテーゼ組立体は、脛骨ベースプレートに連結された捕捉エレメントを含んでよい。捕捉エレメントは、脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの大腿骨コンポーネントの離開を制限するために、ブッシング又はヒンジポストの少なくとも一方によって係合させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束型膝のためのプロテーゼ組立体であって、
大腿骨コンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントによって係合された脛骨支承コンポーネントと、
脛骨ベースプレートであって、遠位面と、前記遠位面とは反対側に位置し、前記脛骨支承コンポーネントに面する近位面と、前記近位面と前記遠位面との間に延びる外縁と、前記遠位面から遠位方向へ延びるキールとを有する、脛骨ベースプレートと、
前記脛骨ベースプレートの凹部内に受容されたブッシングと、
大腿骨コンポーネント及び前記ブッシングに連結されたヒンジポストであって、前記ヒンジポストは前記ブッシングによって少なくとも部分的に受容されている、ヒンジポストと、
前記脛骨ベースプレートに連結された捕捉エレメントであって、前記捕捉エレメントは、前記脛骨支承コンポーネント及び前記脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を制限するために、前記ブッシング又は前記ヒンジポストの少なくとも一方によって係合されている、捕捉エレメントと、
を含む、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体。
【請求項2】
前記捕捉エレメントは、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に少なくとも部分的に受容されるように形成されたスナップ嵌めコンポーネント、又は、ねじ山付きナットの一方を含み、前記捕捉エレメントは、前記ヒンジポストの少なくとも一部が前記捕捉エレメントを通過するのを可能にするように形成された貫通孔を有する、請求項1に記載のプロテーゼ組立体。
【請求項3】
前記捕捉エレメントは、前記ブッシングから近位方向に所定の距離だけ離隔されており、前記距離は、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの制限された程度の離開を可能にする、請求項1に記載のプロテーゼ組立体。
【請求項4】
前記捕捉エレメントは、前記ブッシングに対して近位側にあり、かつ前記ブッシングの近位端と隣接しており、これにより、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を完全に制限する、請求項1に記載のプロテーゼ組立体。
【請求項5】
前記ヒンジポストは、第1のねじ山によって前記ブッシングに連結されており、前記第1のねじ山は、前記ブッシングの第2のねじ山と連結する、請求項1に記載のプロテーゼ組立体。
【請求項6】
前記第1のねじ山と前記第2のねじ山との連結は、前記捕捉エレメントに対する所望の位置に前記ブッシングを位置決めする、請求項5に記載のプロテーゼ組立体。
【請求項7】
前記捕捉エレメントは、脆弱な結合によって前記ブッシングに最初は連結され、前記ブッシングから前記捕捉エレメントを分離するために、前記ヒンジポストと前記ブッシングとを螺合させることによって、前記脆弱な結合が解離される、請求項1に記載のプロテーゼ組立体。
【請求項8】
拘束型膝のためのプロテーゼシステムであって、
大腿骨コンポーネントと、
前記大腿骨コンポーネントと関節結合するように構成された脛骨支承コンポーネントと、
脛骨ベースプレートであって、遠位面と、前記遠位面とは反対側に位置し、前記脛骨支承コンポーネントに面する近位面と、前記近位面と前記遠位面との間に延びる外縁と、前記遠位面から遠位方向へ延びるキールとを有する脛骨ベースプレートと、
前記脛骨ベースプレートの凹部内へ挿入するように構成されたブッシングと、
前記大腿骨コンポーネントと連結するように構成され、かつ前記ブッシングと連結するように構成されたヒンジポストと、
前記脛骨ベースプレートと連結するように構成された捕捉エレメントであって、前記ヒンジポストの少なくとも一部が前記捕捉エレメントを通過するのを可能にするように構成された貫通孔を有し、前記脛骨ベースプレートに連結されると、前記捕捉エレメントは、前記脛骨支承コンポーネント及び前記脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を制限するために、前記ブッシング又は前記ヒンジポストの少なくとも一方によって係合されるように構成されている、捕捉エレメントと、
を含む、拘束型膝のためのプロテーゼシステム。
【請求項9】
ヒンジポストは、第1のねじ山によって前記ブッシングと連結されるように構成されており、前記第1のねじ山は前記ブッシングの第2のねじ山と係合する、請求項8に記載のプロテーゼシステム。
【請求項10】
前記第1のねじ山が前記第2のねじ山と連結されると、前記ブッシングは、前記捕捉エレメントに対して所望の位置に位置決めされる、請求項9に記載のプロテーゼシステム。
【請求項11】
前記捕捉エレメントは、前記ブッシングが前記所望の位置に位置決めされると、前記ブッシングに隣接する、又は前記ブッシングから所定の距離だけ離隔するように構成される、請求項10に記載のプロテーゼシステム。
【請求項12】
前記捕捉エレメントは、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に少なくとも部分的に受容されるように構成されたスナップ嵌めコンポーネント又はねじ山付きナットの一方を含む、請求項8に記載のプロテーゼシステム。
【請求項13】
前記捕捉エレメントは、前記ブッシングに組み立てられたときに、前記ブッシングから近位方向に所定の距離だけ離隔され、前記距離は、前記脛骨支承コンポーネント及び前記脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの制限された程度の離開を可能にする、請求項8に記載のプロテーゼシステム。
【請求項14】
前記捕捉エレメントは、前記ブッシングに組み立てられたときに、前記ブッシングに対して近位側に位置し、かつ前記ブッシングの近位端と隣接し、これにより、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を完全に制限する、請求項8に記載のプロテーゼシステム。
【請求項15】
前記捕捉エレメントは、脆弱な結合によって前記ブッシングに最初は連結され、前記ブッシングから前記捕捉エレメントを分離するために、前記ヒンジポストと前記ブッシングとを螺合させることによって、前記脆弱な結合が解離される、請求項8に記載のプロテーゼシステム。
【請求項16】
拘束型膝のためのプロテーゼ組立体を組立てる方法であって、前記方法は、
ヒンジポストを大腿骨コンポーネントと連結し、
脛骨ベースプレートの凹部内へブッシングを挿入し、
前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に捕捉エレメントを位置決めし、
前記大腿骨コンポーネントに連結されると、前記ヒンジポストを前記凹部内へ前記捕捉エレメントを通して挿入し、
前記ヒンジポストを前記凹部内の前記ブッシングと連結し、
脛骨支承コンポーネントを前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨ベースプレートとの間に挿入する、
ことを含む、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体を組立てる方法。
【請求項17】
前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に前記捕捉エレメントを位置決めすることは、前記脛骨ベースプレートの1つ又は複数の保持機構と係合するように前記捕捉エレメントを偏向させること、又は、前記捕捉エレメントを前記脛骨ベースプレート内へ螺合させること、のうちの一方を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に前記捕捉エレメントを位置決めすることは、前記凹部に隣接すると共に前記凹部と連通するレセプタクル内へ捕捉エレメントを挿入し、前記レセプタクルから前記凹部へ前記捕捉エレメントを外側方向に動かすことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒンジポストと前記凹部内の前記ブッシングとの連結は、前記捕捉エレメントに対する所望の位置に前記ブッシングを位置決めし、かつ、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を制限するために、前記捕捉エレメントを前記ブッシング又は前記ヒンジポストの少なくとも一方と係合させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒンジポストと前記凹部内の前記ブッシングとの連結は、前記捕捉エレメントと前記ブッシングとの結合を解離する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2022年12月22日付けで出願された米国仮特許出願第63/434,574号明細書の利益を主張し、また、2023年3月8日付けで出願された米国仮特許出願第63/450,878号明細書の利益を主張する。ここに主張されたこれらの米国仮特許出願のそれぞれの優先権の利益、及びこれらの米国仮特許出願のそれぞれは、参照することによりその全体が本明細書中に援用される。
【0002】
本主題は、整形外科的プロテーゼに関し、より具体的には、拘束型膝関節形成術に使用される整形外科的プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0003】
整形外科的な処置及びプロテーゼは、人体内の損傷した骨及び組織を修復かつ/又は置換するために広く利用されている。一般に、膝は大腿骨の遠位部分に位置する一対の顆によって形成されている。これらの顆の下面は、脛骨の対応する形状を有する近位側の表面平坦域上に支承されている。大腿骨と脛骨とは靭帯、例えば後十字靱帯、外側側副靱帯、内側側副靱帯、及び前十字靱帯によって結合されている。これらの靭帯は、膝関節に安定性を提供する。
【0004】
人工膝関節は、拘束型又は非拘束型のものを考えることができる。このような議論のために、拘束型プロテーゼ膝システムは大腿骨プロテーゼと脛骨プロテーゼとを含む。これらのプロテーゼは、大腿骨プロテーゼと脛骨プロテーゼとの相対運動を制限するために、互いに機械的にリンクされるか又は拘束される。このような機械的リンケージのための一般的なメカニズムは、ヒンジ、バンド、又は他のリンケージ構造によって構成される。非拘束型人工膝システムは、機械的にリンクされていない大腿骨プロテーゼと脛骨プロテーゼとを含む。非拘束型の膝は、患者の現存の靭帯及び他の軟組織を利用して、関節の安定性を提供する。これを念頭に置いて、拘束型人工膝は、患者が靭帯を失っておりかつ/又は現存の靭帯が十分な支持及び安定性を膝に提供しない症例に、特に適用することができる。
【0005】
種々の拘束型膝のデザインが知られている。1つのこのようなデザインはヒンジポストを含む。このヒンジポスト形態は、脛骨ベースプレート内部に位置決めされており(そこから端部が突出している)、大腿骨コンポーネントに結合されている。1つのヒンジポスト形態は、例えば出願人が所有するNexGen(登録商標)回転ヒンジ膝である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は大まかに言えば、改善された拘束型人工膝に関し、具体的にはヒンジポストを利用する拘束人工膝に関する。ヒンジポストを備えたいくつかの拘束型人工膝は、大腿骨コンポーネント(及びヒンジポスト)が、脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントに対して概ね近位方向/遠位方向に自由に運動できるデザインを利用する。このような配置関係は、膝関節の離開(distraction)を許し得る。しかしながら、ヒンジポストを備えた拘束型人工膝を受容する患者のある特定のセグメントが有する膝関節内の軟組織は、脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントからの大腿骨コンポーネントの離開を防止し、次いで脱臼を防止するには不十分であり得ることを、本発明者らは認識した。脱臼は結果として患者に疼痛及び他の合併症をもたらし得る。
【0007】
こうして、不十分な軟組織を有する患者のこの特定のセグメントのために、脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントからの大腿骨コンポーネントの離開は制限されるべきであると、本発明者らは認識した。離開を制限するために、拘束型人工膝のヒンジポスト及びブッシングと相互作用し得る捕捉エレメントのような種々の技術及び装置を、本発明者らは認識している。本明細書中に使用される「離開を制限する(limiting distraction)」、「離開を制限する(limit distraction)」、「離開を制限する(limits distraction)」、「限定された離開(limited distraction)」、又はこれに類する用語は、本発明中にさらに論じるような種々のプロテーゼ形態を含む。例えば、限定された離開の一例によって、大腿骨コンポーネントは、脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントに対してある程度の近位方向/遠位方向運動(例えば数ミリメートルから数センチメートルまでの運動)ができる。しかしながら、このような程度の運動は最終的には限定/停止/停止させられて、大腿骨コンポーネントはさらなる近位方向/遠位方向運動、例えば結果として脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントからの大腿骨コンポーネントの脱臼を招き得る近位方向/遠位方向運動ができなくなる。プロテーゼのためのこのような形態は、「完全離開(full distraction)」し得るプロテーゼの形態と対比されるべきである。「完全離開」し得るプロテーゼの場合、脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの近位方向/遠位方向運動は、プロテーゼのコンポーネントによって最終的に限定/停止/停止させられることはなく、そして不十分な軟組織が存在する場合には、膝関節が結果として脱臼するおそれがある。「離開を制限する(limiting distraction)」、「離開を制限する(limit distraction)」、「離開を制限する(limits distraction)」、「限定された離開(limited distraction)」、又はこれに類する用語は、大腿骨コンポーネントの近位/遠位方向運動が、微動は別として実質的に完全に制限されているプロテーゼ形態を含む。「微動(micromotion)」という用語は、プロテーゼ・コンポーネント間、例えばそれぞれ脛骨ベースプレートと捕捉エレメントとの間に、力が加えられると存在し得る小さな運動を意味する。このような小さな運動は、相互作用するコンポーネントの一方又は両方における材料が変形する結果として発生してよく、あるいは、例えばこれらのコンポーネント間の僅かな空間又はクリアランスから生じてもよい。微動は、コンポーネントのより大きな運動、例えば脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの近位/遠位方向運動とは区別される。
【0008】
本明細書中に提供される種々の実施例の付加的な特徴及び利点が論じられ、かつ/又は当業者に明らかになる。
【0009】
本明細書中に開示された器具、システム、及び方法をさらに例示するために、下記の非限定的な実施例が提供され、これらは以下に技術と称される。これらの実施例/技術はいかなる形でも組み合わせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体であって、大腿骨コンポーネントと、前記大腿骨コンポーネントによって係合された脛骨支承コンポーネントと、脛骨ベースプレートであって、遠位面と、前記遠位面とは反対側に位置して前記脛骨支承コンポーネントに面する近位面と、前記近位面と前記遠位面との間に延びる外縁と、前記遠位面から遠位方向へ延びるキールとを有する、脛骨ベースプレートと、前記脛骨ベースプレートの凹部内に受容されたブッシングと、大腿骨コンポーネント及び前記ブッシングに連結されたヒンジポストであって、前記ヒンジポストが前記ブッシングによって少なくとも部分的に受容されている、ヒンジポストと、前記脛骨ベースプレートに連結された捕捉エレメントであって、前記捕捉エレメントは、前記脛骨支承コンポーネント及び前記脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を制限するために、前記ブッシング又は前記ヒンジポストの少なくとも一方によって係合されている、捕捉エレメントと、を含む、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体に関する。
【0011】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に少なくとも部分的に受容されるように形成されたスナップ嵌めコンポーネント又はねじ山付きナットの一方を含み、前記捕捉エレメントは、前記ヒンジポストの少なくとも一部が前記捕捉エレメントを通過するのを可能にするように形成された貫通孔を有する、プロテーゼ組立体に関する。
【0012】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、前記ブッシングから近位方向に所定の距離だけ離隔されており、前記距離は、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの制限された程度の離開を可能にする、プロテーゼ組立体に関する。
【0013】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、前記ブッシングに対して近位側にあり、かつ前記ブッシングの近位端と隣接しており、これにより、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を完全に制限する、プロテーゼ組立体に関する。
【0014】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、ヒンジポストが第1のねじ山によって前記ブッシングに連結されており、前記第1のねじ山は、前記ブッシングの第2のねじ山と連結する、プロテーゼ組立体に関する。
【0015】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記第1のねじ山と前記第2のねじ山との連結は、前記捕捉エレメントに対する所望の位置に前記ブッシングを位置決めする、プロテーゼ組立体に関する。
【0016】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、拘束型膝のためのプロテーゼシステムであって、大腿骨コンポーネントと、前記大腿骨コンポーネントと関節結合するように構成された脛骨支承コンポーネントと、脛骨ベースプレートであって、遠位面と、前記遠位面とは反対側に位置して前記脛骨支承コンポーネントに面する近位面と、前記近位面と前記遠位面との間に延びる外縁と、前記遠位面から遠位方向へ延びるキールとを有する脛骨ベースプレートと、前記脛骨ベースプレートの凹部内へ挿入するように構成されたブッシングと、前記大腿骨コンポーネントと連結するように構成され、かつ前記ブッシングと連結するように構成されたヒンジポストと、捕捉エレメントであって、前記脛骨ベースプレートと連結するように構成され、前記ヒンジポストの少なくとも一部が前記捕捉エレメントを通過するのを可能にするように構成された貫通孔を有し、前記脛骨ベースプレートに連結されると、前記捕捉エレメントは、前記脛骨支承コンポーネント及び前記脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を制限するために、前記ブッシング又は前記ヒンジポストの少なくとも一方によって係合されるように構成されている、捕捉エレメントと、を含む、拘束型膝のためのプロテーゼシステムに関する。
【0017】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、ヒンジポストが第1のねじ山によって前記ブッシングと連結されるように構成されており、前記第1のねじ山は前記ブッシングの第2のねじ山と係合する、プロテーゼシステムに関する。
【0018】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記第1のねじ山が第2のねじ山と連結されると、前記ブッシングは、前記捕捉エレメントに対して所望の位置に位置決めされる、プロテーゼシステムに関する。
【0019】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、前記ブッシングが所望の位置に位置決めされると、前記ブッシングに隣接するか、又は前記ブッシングから所定の距離だけ離隔されるように形成されている、プロテーゼシステムに関する。
【0020】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に少なくとも部分的に受容されるように形成されたスナップ嵌めコンポーネント又はねじ山付きナットの一方を含む、プロテーゼシステムに関する。
【0021】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、前記ブッシングに組み立てられたときに、前記ブッシングから近位方向に所定の距離だけ離隔されており、前記距離は、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートから前記大腿骨コンポーネントの制限された程度の離開を可能にする、プロテーゼシステムに関する。
【0022】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記ブッシングに組み立てられたときに、前記捕捉エレメントは、前記ブッシングに対して近位側に位置し、かつ前記ブッシングの近位端と隣接し、これにより、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートから前記大腿骨コンポーネントの離開を完全に制限する、プロテーゼシステムに関する。
【0023】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体を組立てる方法であって、前記方法は、ヒンジポストを大腿骨コンポーネントと連結し、脛骨ベースプレートの凹部内へブッシングを挿入し、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に捕捉エレメントを位置決めし、前記大腿骨コンポーネントに連結されると、前記ヒンジポストを前記凹部内へ前記捕捉エレメントを通して挿入し、前記ヒンジポストを前記凹部内の前記ブッシングと連結し、脛骨支承コンポーネントを前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨ベースプレートとの間に挿入する、ことを含む、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体を組立てる方法に関する。
【0024】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に前記捕捉エレメントを位置決めすることが、前記脛骨ベースプレートの1つ又は複数の保持機構と係合するように前記捕捉エレメントを偏向させることを含む、方法に関する。
【0025】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に前記捕捉エレメントを位置決めすることが、前記凹部に隣接すると共に前記凹部と連通するレセプタクル内へ捕捉エレメントを挿入し、前記レセプタクルから前記凹部へ前記捕捉エレメントを外側方向に動かすことを含む、方法に関する。
【0026】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記脛骨ベースプレートの前記凹部内に前記捕捉エレメントを位置決めすることが、前記捕捉エレメントを前記脛骨ベースプレート内へ螺合させることを含む、方法に関する。
【0027】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記ヒンジポストと前記凹部内の前記ブッシングとの連結は、前記捕捉エレメントに対する所望の位置に前記ブッシングを位置決めする、方法に関する。
【0028】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を制限するために、前記捕捉エレメントを前記ブッシング又は前記ヒンジポストの少なくとも一方と係合させることをさらに含む、方法に関する。
【0029】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、脆弱な結合によって前記ブッシングに最初は連結され、前記ブッシングから前記捕捉エレメントを分離するために、前記ヒンジポストと前記ブッシングとを螺合させることによって、前記脆弱な結合が解離される、プロテーゼ組立体に関する。
【0030】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記捕捉エレメントは、脆弱な結合によって前記ブッシングに最初は連結され、前記ブッシングから前記捕捉エレメントを分離するために、前記ヒンジポストと前記ブッシングとを螺合させることによって、前記脆弱な結合が解離される、プロテーゼシステムに関する。
【0031】
いくつかの態様では、本明細書中に記載された技術は、前記ヒンジポストと前記凹部内の前記ブッシングとの連結は、前記捕捉エレメントと前記ブッシングとの結合を解離する、方法に関する。
【0032】
必ずしも原寸に比例しない図面において、同様の符号は異なる図面において類似のコンポーネントを表し得る。異なる添字を有する同様の符号は、類似のコンポーネントの種々異なる事例を表し得る。図面は、一般的には、例えば、決して限定するものではないが、本明細書で論じられる種々の実施例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本出願の一実施例に基づく拘束型プロテーゼ組立体を利用し得る好適な環境を提供する膝関節構造を示す。
図2図2は、本出願の一実施例に基づく拘束型プロテーゼ組立体を利用し得る好適な環境を提供する膝関節構造を示す。
図3図3は、本出願の一実施例に基づく拘束型膝プロテーゼ組立体の斜視図を示す。
図3A図3Aは、脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの近位/遠位方向運動によって離開された、本出願の一実施例に基づく図3の拘束型膝プロテーゼ組立体の斜視図を示す。
図4図4は、図3の拘束型膝プロテーゼ組立体の分解図を示す。
図5図5は、本出願の一実施例に基づく、脛骨ベースプレート及び/又は脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの離開を制限するように構成された捕捉エレメントを有する拘束型膝プロテーゼ組立体の第2の実施例の断面図を示す。
図6図6は、本出願の一実施例に基づく、捕捉エレメントが離開を制限するために脛骨ベースプレートの凹部内の所望の位置へ動かされる図5の脛骨ベースプレート及び捕捉エレメントの平面図を示す。
図7図7は、本出願の一実施例に基づく、捕捉エレメントの実施例を示す種々の斜視図を示す。
図8図8は、本出願の一実施例に基づく、図5の実施例と類似してはいるが、脛骨ベースプレートの凹部の少なくとも一部の内部にスナップ嵌めされる捕捉エレメントの別の実施例を用いた拘束型人工膝組立体の脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントの矢状面に沿った断面図を示す。
図9A図9Aは、本出願の一実施例に基づく、ねじ山によって脛骨ベースプレートに連結された捕捉エレメントのさらに別の実施例を有する拘束型人工膝組立体の第3の拘束型人工膝組立体の脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントの断面図を示す。
図9B図9Bは、本出願の一実施例に基づく、外径に沿ったねじ山、貫通孔及び他の特徴を有する図9Aの捕捉エレメントを分離した状態の斜視図で示す。
図10図10は、先行の実施例と比較して改変された形態を有するヒンジポストとブッシングとを備えた第4の拘束型人工膝組立体の脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントの断面図を示す。
図11図11は、本出願の一実施例に基づく、少なくともブッシングが、図10の実施例と比較して改変された形態を有する第5の拘束型人工膝組立体の脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントの断面図を示す。
図11A図11Aは、図11の捕捉エレメント及びブッシングの近位部分の斜視図を示す。
図11B図11Bは、本出願の一実施例に基づく、制限された離開を可能にするように互いに離隔された図11の捕捉エレメント及びブッシングを分離した状態の斜視図で示す。
図12図12は、少なくともヒンジポストが、係合機構を含むために先行の実施例と比較して改変された形態を有する第6の拘束型人工膝組立体の脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントの断面図を示す。
図13図13は、図14から図19に示すものを含む、本明細書中で論じられる拘束型人工膝組立体と一緒に使用し得るヒンジポストの別の実施例の斜視図を示す。
図14図14は、本出願の一実施例に基づく、限定された離開を可能にするように互いに離隔された捕捉エレメント及びブッシングの別の実施例を分離した状態の斜視図を示す。
図15図15は、本出願の一実施例に基づく、完全離開を可能にするブッシングから、限定された離開を提供する図14のブッシング及び捕捉エレメントへ拘束型人工膝組立体を切り換えるプロセスを示す。
図16図16は、本出願の一実施例に基づく、限定された離開を可能にするように互いに離隔された捕捉エレメント及びブッシングのさらに別の実施例を分離した状態で示す斜視図である。
図17図17は、図13のヒンジポストと、図16のヒンジポスト及び捕捉エレメントの実施例とを有する第7の拘束型人工膝組立体の脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントを示す断面図である。
図18図18は、本出願の一実施例に基づく、限定された離開を可能にするように互いに離隔された捕捉エレメント及びブッシングのさらに別の実施例を分離した状態で示す斜視図である。
図19図19は、本出願の一実施例に基づく、完全離開を可能にするブッシングから、限定された離開を提供する図18のブッシング及び捕捉エレメントへ第7の拘束型人工膝のコンポーネントを切り換えるプロセスを示す。
図20図20は、図21Aから図23のものを含む、本明細書中で論じられる拘束型人工膝組立体と一緒に使用し得るヒンジポストの平面図を示す。
図21A図21Aは、本出願の一実施例に基づく、最初は一緒に組み立てられた近位捕捉エレメントとブッシングとを組み合わせた捕捉エレメントの別の実施例の平面図を示す。
図21B図21Bは、図21Aの捕捉エレメントの斜視図を示す。
図21C図21Cは、図21A及び図21Bの捕捉エレメントの断面図を示す。
図22図22は、本出願の一実施例に基づく、限定された離開を可能にするように、今や互いに分離され、互いに離隔された図21Aから図21Cの捕捉エレメント及びブッシングの斜視図を示す。
図23図23は、脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントからの大腿骨コンポーネントの離開を制限するように構成された図20のヒンジポストと図22のヒンジポスト及び捕捉エレメントの実施例とを有する第8の拘束型人工膝組立体の脛骨ベースプレート及び脛骨支承コンポーネントの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本出願は、数あるコンポーネントの中でも脛骨ベースプレート、捕捉エレメント、ブッシング、及びヒンジポストを含む、拘束型脛骨プロテーゼの組立体及びシステムに関する。本出願は、種々の特徴、技術、及び本明細書中で論じられる捕捉エレメントを含むコンポーネントを介して、脛骨ベースプレート及び/又は脛骨支承コンポーネントに対する大腿骨コンポーネントの離開を制限することに焦点を合わせる。離開の制限により、膝関節の脱臼、及びこれに相応する疼痛、不快さ、及び場合によっては生じる医学的介入の必要性を防止することができる。
【0035】
膝関節置換処置をより良く理解するために、骨と、膝関節内部で種々の暫定的及び永久的なプロテーゼ・コンポーネントを配向するために形成され得る骨切断部との関係を理解することが有用であり得る。図1及び2は、膝関節の構造及び配向のいくつかの特徴を示す。図1には、大腿骨104及び脛骨106を含む下肢102の正面図が、種々の下肢軸を説明するために示されている。大腿骨104は、その髄内管(intramedullary canal)と概ね一致する解剖軸108を有している。大腿骨104はまた、大腿骨頭112の中心から膝関節114の中心へ延びる機能軸110、又は荷重軸を有している。これら2つの軸の間の角度116は、患者集団の中で変動するが、しかし概ね5~7度(これらの値を含む)のオーダーにある。大腿骨104と同様に、脛骨106も、その髄内管と概ね一致する解剖軸を有している。脛骨106の機能軸118は、膝関節114の中心から足関節領域120の中心へ延びており、その解剖軸と概ね一致している。
【0036】
膝関節114が屈曲する際の中心となる接合線(joint line)122は、内側大腿顆及び外側大腿顆124を通る線に対して、かつ、脛骨プラトー126に対してほぼ平行である。図1において、接合線122は、大腿骨104の機能軸110及び脛骨106の機能軸118に対して垂直であるとして示されてはいるが、内反角又は外反角を成して延びることができる。通常、部分的又は全体的な膝置換処置中には、大腿骨104の遠位端又は脛骨106の近位端の部分を、接合線122に対して平行に又はほぼ平行になるように、ひいては機能軸110及び118に対して垂直になるように、それぞれ符号128及び130で示されているように切除する。
【0037】
図2は、膝関節114及びその座標系をより接近して見た図である。この図において、内側/外側軸202は接合線122(図1参照)にほぼ相当し、近位/遠位軸204は機能軸110及び118(図1参照)にほぼ相当し、前部/後部軸206は他の2つの軸に対してほぼ垂直である。これらの軸のそれぞれに沿った位置は矢印によって示すことができる。これらの矢印は、挿入されたプロテーゼ・コンポーネントの内側/外側方向208、前部/後部方向210、及び近位/遠位方向212の位置を表すことができる。これらの軸のそれぞれを中心とした回転も矢印によって示すことができる。近位/遠位軸204を中心とした回転は、大腿骨コンポーネントの外旋に解剖学的に相当し得るのに対して、前部/後部軸206を中心とした回転はコンポーネントの伸展平面傾斜に、内側/外側軸202を中心とした回転はコンポーネントの内反/外反角に相当することができる。形成された近位脛骨切断部130(図1参照)の位置に応じて、内反/外反角214、伸展平面角216、外旋218、又は関節伸展ギャップに影響を与えることができる。同様に、遠位大腿骨切断部128(図1参照)の位置も、接合線122の場所、伸展ギャップ、内反/外反角214、又は伸展平面角216に影響を与え得る。
【0038】
本明細書中に使用する「近位」及び「遠位」という用語には、一般に理解される解剖学的解釈が与えられるべきである。「近位」という用語は、概ね患者の胴へ向かう方向を意味し、「遠位」という用語は、近位とは反対の方向、すなわち患者の胴から離れる方向を意味する。言うまでもなく、「近位」及び「遠位」という用語を使用する場合、これはあたかも患者が膝関節を延ばした状態で立っているかのように解釈されるべきである。その意図は、「近位」及び「遠位」という用語を「前部」及び「後部」という用語から区別化することである。本明細書中に使用される「前部」及び「後部」という用語には、一般に理解される解剖学的解釈が与えられるべきである。したがって「後部」は、患者の後ろ側、例えば膝の後ろ側を意味する。同様に、「前部」は患者の前側、例えば膝の前側を意味する。したがって、「後部」は「前部」の反対方向を意味する。同様に、「外側(lateral)」という用語は「内側(medial)」の反対方向を意味する。「内側/外側方向」という用語は内側から外側への方向、又は外側から内側への方向を意味する。「近位/遠位」という用語は、近位から遠位への方向又は遠位から近位への方向を意味する。「前部/後部」という用語は前部から後部への方向又は後部から前部への方向を意味する。
【0039】
本明細書中に使用される脛骨ベースプレートの「外縁」は、上面図、例えば概ね横方向の解剖学的平面内で見たときの任意の外縁を意味する。あるいは、脛骨ベースプレートの外縁は、底面図、例えば概ね横方向の平面内で見たときの、かつ、脛骨の切除近位面と接触するように構成された遠位面を見たときの任意の外縁であってよい。
【0040】
図3は、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体300を示す。プロテーゼ組立体300は、脛骨ベースプレート302と、脛骨支承コンポーネント304(半月板コンポーネント、ポリ、関節コンポーネント又は支承体と呼ばれることもある)と、大腿骨コンポーネント306と、ヒンジポスト308とを含むことができる。
【0041】
脛骨支承コンポーネント304は、脛骨ベースプレート302の近位面310の上部に連結することができ、位置決めすることができる。脛骨支承コンポーネント304は、ポリマー材料、例えば超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)などから形成することができる。脛骨支承コンポーネント304は、当業者には周知のように、膝関節の屈曲及び伸展を介して、大腿骨コンポーネント306と関節結合するように構成することができる。プロテーゼ組立体300は、互いに機械的にリンクされた大腿骨コンポーネント306と脛骨ベースプレート302とを有している。これは、ヒンジポスト308と、図4においてさらに示され論じられる他のコンポーネントとによって達成される。ヒンジポスト308は大腿骨コンポーネント306に連結され、脛骨支承コンポーネント304の凹部309内部及び脛骨ベースプレート302の凹部322(図4参照)に受容されている。
【0042】
図3Aは、膝関節の離開を示す。具体的には、大腿骨コンポーネント306は、(矢印A1によって示されるように)脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート302から概ね近位/遠位方向に動かされる。図3に示されているような形式で大腿骨コンポーネント306を脛骨支承コンポーネント304上に保持するには不十分な軟組織が膝関節内に残っているのであれば、膝関節の脱臼が生じることがある。大腿骨コンポーネント306と、脛骨支承コンポーネント304と、脛骨ベースプレート302との間の運動は、大腿骨コンポーネント306と脛骨支承コンポーネント304の関節面との間に所定の距離(ギャップ)を形成する。ヒンジポスト308は、図3Aの実施例において、脛骨ベースプレート302及び/又は脛骨支承コンポーネント304の凹部内に少なくとも部分的に保持されたままなので、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート302からの大腿骨コンポーネント306の離開は、概ね近位/遠位軸204に沿って、また図2に示された方向212に沿って生じる。しかしながら、ヒンジポスト308が凹部309及び322(図4参照)から解放されると、膝関節の脱臼が結果として生じるおそれがある。脱臼は痛みを伴うことがあり、また患者に他の合併症をもたらすこともある。
【0043】
図4は、プロテーゼ組立体300、脛骨ベースプレート302、脛骨支承コンポーネント304、大腿骨コンポーネント306、及びヒンジポスト308の分解図を示しており、ヒンジ軸312、ポリボックス314、軸ブッシング316、シャックル318、及びブッシング320をさらに示す。
【0044】
ヒンジポスト308は、シャックル318、軸ブッシング316、及びヒンジ軸312を介して大腿骨コンポーネント306に結合される。シャックル318の遠位部分は脛骨支承コンポーネント304の凹部309内に受容され、この遠位部分はヒンジポスト308に螺合又は他の形式で結合される。ヒンジポスト308は、脛骨支承コンポーネント304の凹部309を通って遠位方向に延び、脛骨ベースプレート302の凹部322内に受容される。ヒンジポスト308を受容する脛骨ベースプレート302の凹部322は、脛骨ベースプレート302のキール324によって少なくとも部分的に形成することができる。ヒンジポスト308は、脛骨支承コンポーネント304及び/又は脛骨ベースプレート302に対して運動可能(例えば回転可能かつ/又は図3Aに示されるように離開可能)であり得る。ヒンジポスト308は、ヒンジ軸312を介して大腿骨コンポーネント306に回転可能に結合することができる。こうして、大腿骨コンポーネント306と脛骨ベースプレート302とが機械的にリンクされるのに伴って、ヒンジポスト308の中心線を画定する長手方向軸線LAは、膝関節のための回転/関節結合軸線ARAを画定することができる。
【0045】
組立時には、シャックル318はポリボックス314の互いに対向する壁の間に配置することができる。ヒンジ軸312上での組立時には、軸ブッシング316はさらに、シャックル318の近位部分に設けられた開口部内部に位置する。シャックル318及びヒンジポスト308は、適宜の材料、例えばチタン合金、コバルト-クロム合金などから形成することができ、これに対して、軸ブッシング316及びポリボックス314は、異なる材料、例えばプラスチック、例えばUHMWPEから形成することができる。軸ブッシング316は、シャックル318とヒンジ軸312との間の支承体として作用する。ポリボックス314は、大腿骨コンポーネント306とシャックル318との間の支承体として作用する。
【0046】
図4のプロテーゼ組立体300は、膝の離開は、プロテーゼ組立体300の捕捉エレメント又は他の機構によって制限されないコンポーネントのシステム326を示す。このように、システム326は、組立時には完全離開するように形成されたコンポーネントを提供する。したがって、前述のように、大腿骨コンポーネント306と脛骨ベースプレート302と脛骨支承コンポーネント304との間の離開を制限するためには、膝の軟組織が頼りとなる。ブッシング320は、少なくとも脛骨ベースプレート302の凹部322内へ挿入されるように形成することができる。ブッシング320はまた、いくつかの実施例では脛骨支承コンポーネント304の凹部309(図3参照)内へ又は凹部309を通して挿入することができる。ブッシング320は、ヒンジポスト308の少なくとも一部を受容するように構成することができる。ブッシング320は、ヒンジポスト308と脛骨ベースプレート302との間の支承体として作用することができる。ヒンジポスト308は、図3Aに描かれた離開中のように、ブッシング320に対して概ね近位/遠位方向に運動可能であり得る。
【0047】
完全関節離開が望ましいかどうかは、患者の解剖学的特徴に応じて判定される。この判定プロセスは、残存する靭帯の数及び状態を含む、膝関節内の軟組織の状態、機能、及び量を突き止めることを含み得る。判定プロセスは、膝関節を医師によって離開すること、膝関節の所定の範囲の運動を行うこと、膝関節内部の骨及び/又は軟組織の間のギャップを測定すること、例えば図1及び図2に関連して論じられた関節伸展ギャップを測定すること、又はこれに類するものをも含み得る。これらの判定のうちのいくつか又は全ては、大腿骨コンポーネント、脛骨支承コンポーネント、脛骨ベースプレート、及び/又は他のコンポーネントの植え込みの前又は後に実施することができる。
【0048】
患者の解剖学的特徴に基づいて、膝関節が完全離開中に大腿骨コンポーネントを脛骨ベースプレートに機械的にリンクした状態を維持するのに十分である(例えば膝関節の脱臼が生じる可能性が低い)と、医師が判定した場合には、医師は、大腿骨コンポーネントが脛骨支承コンポーネント及び/又は脛骨ベースプレートから完全離開するのを可能にするように構成された、第1の拘束型プロテーゼ組立体を実現することができる。あるいは、膝関節が完全離開中に大腿骨コンポーネントを脛骨ベースプレートに機械的にリンクした状態に維持するには不十分である(例えば膝関節の脱臼が場合によっては生じ得る)と、医師が判定した場合には、医師は、大腿骨コンポーネントが脛骨支承コンポーネント及び/又は脛骨ベースプレートから制限付きで離開するのを可能にするように形成された、第2の拘束型プロテーゼ組立体を実現することができる。
【0049】
一実施例によれば、拘束型膝のためのプロテーゼ組立体を組立てる方法が、ここに論じられ示される。この方法は、ヒンジポストを大腿骨コンポーネントと連結し、脛骨ベースプレートの凹部内へブッシングを挿入し、脛骨ベースプレートの凹部内に捕捉エレメントを位置決めし、大腿骨コンポーネントに連結されると、ヒンジポストを凹部内へ捕捉エレメントを通して挿入し、ヒンジポストを凹部内のブッシングと連結し、脛骨支承コンポーネントを大腿骨コンポーネントと脛骨ベースプレートとの間に挿入することを含み得る。
【0050】
この方法の場合任意には、脛骨ベースプレートの凹部内に捕捉エレメントを位置決めすることが、脛骨ベースプレートの1つ又は複数の保持機構と係合するように捕捉エレメントを偏向させることを含み得る。脛骨ベースプレートの凹部内に捕捉エレメントを位置決めすることは、凹部に隣接すると共に凹部と連通するレセプタクル内へ捕捉エレメントを挿入し、レセプタクルから凹部へ捕捉エレメントを外側方向に動かすことを含み得る。脛骨ベースプレートの凹部内に捕捉エレメントを位置決めすることは、捕捉エレメントを脛骨ベースプレート内へ螺合させることを含み得る。ヒンジポストと凹部内の前記ブッシングとを連結することにより、捕捉エレメントに対する所望の位置にブッシングを位置決めすることができる。捕捉エレメントをブッシング又は前記ヒンジポストの少なくとも一方と係合させることにより、脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの前記大腿骨コンポーネントの離開を制限することができる。
【0051】
注目すべきなのは、ヒンジポストを大腿骨コンポーネントと連結し、脛骨ベースプレートの凹部内へブッシングを挿入し、脛骨ベースプレートの凹部内に捕捉エレメントを位置決めし、かつ/又は大腿骨コンポーネントに連結されると、ヒンジポストを凹部内へ捕捉エレメントを通して挿入し、ヒンジポストを凹部内のブッシングと連結するステップの前又は後に、脛骨支承コンポーネントを大腿骨コンポーネントと脛骨ベースプレートとの間に挿入するステップを実施し得ることである。したがって、上述の方法は、記載のステップの順序に限定される必要はない。
【0052】
図5は、前述のプロテーゼ組立体300と同様の構造を有するプロテーゼ組立体400の断面図を示す。しかし、プロテーゼ組立体400は異なっており、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート302からの大腿骨コンポーネント306の離開を制限する捕捉エレメント401を含んでいる。少なくとも脛骨ベースプレート302は、本明細書中でさらに論じるように、捕捉エレメント401を受容し、かつ/又は捕捉エレメント401と連結するように構成することができる。
【0053】
図5の断面図は、脛骨ベースプレート302の遠位面330、並びに近位面310及び外縁332を示す。外縁332は、近位面310と遠位面330との間で脛骨ベースプレート302の周りに延びている。キール324は脛骨ベースプレート302の遠位面330から遠位方向へ延びている。キール324は、ヒンジポスト408とブッシング420とを受容する凹部322を少なくとも部分的に画定している。キール324は、脛骨ベースプレート302の残りと一体的(モノリシック)であることが可能であり、あるいはこれに(例えば、ねじ山又は別の機械的結合メカニズムを介して)取り付けることもできる。キール324は、遠位方向へ延びるように構成することができ、脛骨ベースプレート302に固定をもたらすように、脛骨106(図1参照)の髄内管内に嵌るように成形することができる。
【0054】
遠位面330は、ペグ、増強材、又は当業者に知られた他のコンポーネントの結合のためのねじ山付き開口部のような機構を含むことができる。遠位面330(及び脛骨ベースプレートの他の機構、例えばキール324)は、骨内方成長量を促進する多孔質材料、又は高度に多孔質の材料から形成することができる。高度に多孔質の生体材料は代用骨として、かつ、細胞・組織受容材料として有用である。高度に多孔質の生体材料のポロシティは30%、55%もの低さであってよく、又は70%、80%、85%、又は90%もの高さであってよい。高度に多孔質の材料の平均孔径は、例えば100ミクロンから1000ミクロンであり得る。しかしながら、高度に多孔質の生体材料の使用についてはすべての実施例において検討されない。例えば、高度に多孔質の生体材料の代わりとして、骨セメントのような材料を利用することもできる。
【0055】
このような多孔質又は高度に多孔質の材料の一例は、インディアナ州WarsawのZimmer Biomet Inc.から一般に入手可能なOsseoTi(登録商標)である。材料はチタン又はチタン合金を含むことができ、さらに他の材料を含むこともできる。このような材料(比較的多孔質でない又は無孔質の生体適合性材料を含む)は、積層造形処理、例えばレーザー焼結又はこれに類するものを用いて製造することができる。OsseoTi(登録商標)は高度に生体適合性であり、高い耐食性を有しており、そして、人間の海綿骨の多孔質構造を模倣する、高度に相互接続された多孔質アーキテクチャを含む。これは骨インテグレーション及び内部成長を向上させ得る。多孔質又は高度に多孔質の材料は、比較的多孔質でない又は無孔質の生体適合性材料、例えばチタン、チタン合金、ステンレス鋼、又は当業者に知られた他の材料上に層状に重ねられるように、又はこのような生体適合性材料と一緒に/生体適合性材料上に構造化されるように製造することができる。
【0056】
このような多孔質又は高度に多孔質の材料の別の例は、インディアナ州WarsawのZimmer Biomet Inc.から一般に入手可能なTrabecular Metal Technology (登録商標)を利用して製造される。このような材料は、網状化ガラス状炭素発泡体基体から形成されてよい。Kaplanの米国特許第5,282,861号において詳細に開示された形式で化学蒸着(CVD)法によって、この基体を生体適合性金属、例えばタンタルで浸潤させて被覆する。この開示内容全体は参照することにより本明細書中に明示的に援用される。タンタルに加えて、他の金属、例えばニオブ、又はタンタル及びニオブの相互の、又は他の金属との合金が使用されてもよい。多孔質タンタル構造は、具体的な用途に合わせて構造を選択的に適合させるために、種々の密度で形成されてよい。具体的には、上で援用した米国特許第5,282,861号において論じられているように、多孔質タンタルは、事実上任意の所期ポロシティ及び孔径となるように製作されてよく、ひいては外縁の生来の骨と調和させることにより、骨の内方成長及び石灰化のための改善されたマトリックスを提供することができる。
【0057】
一般に、検討される多孔質材料構造は、間に開放空間を画定する多数の靭帯を含むことができ、各靭帯は概ね、金属薄膜によって覆われたコアを含む。靭帯間の開放空間は、デッドエンドを有しない連続チャネルのマトリックスを構成するので、多孔質タンタル構造を通る海綿骨の成長は阻害されない。多孔質又は高度に多孔質の材料は、最大70%、85%、又はこれを上回るボイド空間を含んでよい。したがって、多孔質又は高度に多孔質の材料は軽量の強い多孔質構造であり、このような構造は、組成がほぼ均一で一貫していて、生来の海綿骨の構造と極めて類似しており、これにより、患者の骨に脛骨ベースプレートを固定可能にするように、海綿骨がその内部へ成長し得るマトリックスを提供する。
【0058】
図5は、プロテーゼ組立体400が、図4の実施例のヒンジポスト308及びブッシング320と比較して改変されたヒンジポスト408及びブッシング420を含み得ることを示す。ブッシング420は、ヒンジポスト408の少なくとも一部をその中に受容するように構成することができる。ヒンジポスト408は、係合機構407、例えば、ねじ山409を含むことができる。これらの係合機構407は、対応する係合機構411、例えばブッシング420のねじ山413と連結するように構成することができる。ヒンジポスト408とブッシング420とは、係合機構407、411を介して一緒に運動するように連結することができる。この形態は、一緒に運動するようには連結されていない図4の実施例のヒンジポスト308及びブッシング320の構成とは異なり得る。このように、ヒンジポスト308及びブッシング320は、ねじ山のような係合機構を含まない。ヒンジポスト308はブッシング320に対して運動可能であり得る。
【0059】
図5は、ヒンジポスト408を、シャックル318とその近位端で連結された状態で示す。この連結は、ヒンジポスト408とシャックル318との間の螺合部415を介して行うことができる。螺合部415は、ヒンジポスト408とシャックル318とが可逆的に連結され、そして互いに分離されるのを可能にして、ヒンジポストの形態の変更(例えば限定された離開を容易にするための、例えばヒンジポスト308からヒンジポスト408への変更)を可能にする。シャックル318とヒンジポスト408とは、脛骨支承コンポーネント304の凹部309内へ延び、この凹部309によって受容することができる。ヒンジポスト408は、ヒンジポスト408の中央部分又は遠位部分に沿って配置された係合機構407(ここではねじ山409)を有することができる。ねじ山409及びねじ山413はロープねじ山(rope threads)、丸ねじ山(knuckle threads)、ACMEねじ山、又は当業者に知られた他のタイプのねじ山であり得る。いくつかの実施例では、ねじ山409は、僅かな干渉を構成するように、ピッチ又は別の幾何学的アスペクトがねじ山413とは僅かに異なり得る。この僅かな干渉は、捕捉エレメント401に対する凹部322内部の所望の位置へ、ブッシング420を引き付けることができる。捕捉エレメント401に対するブッシング420のためのこのような位置は、ブッシング420を捕捉エレメント401と係合させる前に、大腿骨コンポーネント306と脛骨支承コンポーネント304と脛骨ベースプレート302との間の所望の限定された離開量を可能にすることができる。図5の実施例は、ブッシング420と捕捉エレメント401との係合が脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート302に対する大腿骨コンポーネント306の限定された離開(運動)を停止/停止させると考えてはいるが、図12のような他の実施例、及び同日付けで出願された「ANTI-LUXATION DEVICES FOR A CONSTRAINED PROSTHETIC KNEE(拘束型人工膝のための脱臼防止デバイス)」と題する米国仮特許出願(参照することによりその内容全体が本明細書中に援用される)に記載された実施例は、係合機構(例えばバーブ、タブ、リブ、又は他のタイプの突起)が、ヒンジポストの一部であり、これらの係合機構が捕捉エレメント401と係合することにより、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート302に対する大腿骨コンポーネント306の離開を停止/停止させると考える。したがって、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート302からの大腿骨コンポーネント306の離開を制限するために、捕捉エレメント401はブッシング420及び/又はヒンジポスト408のうちの少なくとも一方によって係合される。
【0060】
図5において、捕捉エレメント401は、脛骨ベースプレート302の、例えばブッシング420よりも近位側に位置する凹部322内部に少なくとも部分的に位置決めすることができる。捕捉エレメント401は、ヒンジポスト408の少なくとも一部を受容するように形成された貫通孔(例えば図6及び図7参照)を有することができる。実際に、貫通孔を備えた捕捉エレメント401は、ヒンジポスト408が捕捉エレメントを通過して遠位方向へ延びることにより、図5に示されているようにブッシング420と係合し連結するのを可能にするように構成することができる。捕捉エレメント401は、凹部322内部に少なくとも部分的に位置決めされて脛骨ベースプレート302と連結されると、ヒンジポスト408の運動を停止/限定し得るコンポーネントを含むことができる。
【0061】
図5は、捕捉エレメント401をリング状に成形することができ、脛骨ベースプレート302の溝417内に受容し得ることを示す。捕捉エレメント401が脛骨支承コンポーネント304よりも遠位側に位置するように、溝417及び捕捉エレメント401は、脛骨ベースプレート302の近位面310よりも遠位側に配置することができる。溝417は凹部322と連通することができ、凹部322から外方に向かって延びることができる。捕捉エレメント401の少なくとも一部は凹部322内へ延びることができ、ヒンジポスト408と境界面を構成することができる。凹部322内に位置決めされた捕捉エレメント401のこの部分は、前述のような限定された離開中に、ブッシング420によって係合させることができる。
【0062】
図6は、脛骨ベースプレート302の上面図を示しており、ひいては近位面310及び外縁332を示す。近位面310及び外縁332は、内側/外側中心線に対して特定の非対称性を有することができる。この形状は、大部分の膝置換候補のための脛骨被覆範囲を最大化するように設計されている。非対称形状により、脛骨ベースプレートの内側区画は、脛骨ベースプレート302の外側区画よりも比較的広くなる。皮質骨の被覆範囲が最大化されることにより、脛骨ベースプレート302の優れた支持を容易にする。脛骨の皮質骨と海綿骨とが大面積で接触することによって、脛骨に対する脛骨ベースプレート302の確実な、永続的な固定が容易になる。
【0063】
図6は、捕捉エレメント401を、脛骨ベースプレート302と組立のプロセス中(凹部322内への挿入によるものを含む)の状態で示す。ヒンジポスト408、シャックル、大腿骨コンポーネント、及びブッシング420は、明確にするために、図6には示されていない。組立プロセスは、凹部322及び溝417(図5参照)に隣接すると共に凹部322及び溝417と連通するレセプタクル419内へ捕捉エレメント401を挿入することを含む。このプロセスは、レセプタクル419から凹部322へ(例えば図5の位置へ、溝417内へ完全に)、捕捉エレメント401を概ね内側方向又は外側方向に(矢印A2によって示されるように)動かすことを含む。
【0064】
図6はさらに、捕捉エレメント401の貫通孔421を示す。貫通孔421は、ヒンジポスト408(図5参照)の少なくとも一部が、貫通孔を通って凹部322の残りの中に、そしてブッシング420(図5参照)へ達するのを可能にするように形成されている。
【0065】
図7は、それぞれスナップ嵌めコンポーネント502として形成された捕捉エレメント501A,501B,501C,501D及び501Eの種々の実施例を示す。捕捉エレメント501A,501B,501C,501D及び501Eは、離開を制限するための上述の捕捉エレメント401の形式で、本出願の種々の実施例において利用することができる。捕捉エレメント501A,501B,501C,501D及び501Eは、概ね円筒形の主本体部分504を含む(捕捉エレメント501Aに関してのみ参照)。捕捉エレメント501A,501B,501C,501D及び501Eのうちのいくつか、例えば捕捉エレメント501C及び501Dは、貫通孔421に付加されかつ貫通孔421と連通する外側開口505を含むことができる。主本体部分504に加えて、捕捉エレメント501A,501B,501C,501D及び501Eのほとんどは脚部506(捕捉エレメント501Aに関してのみ参照される)、又は脛骨ベースプレート(図示省略)の嵌め合い機構(溝、突起など)と係合するように形成された他の偏向可能な機構を含むことができる。脚部506は、図5及び図8に示された脛骨ベースプレートとのスナップ嵌め結合を容易にするために突起508及び/又は溝又は他の機構を含むことができる。
【0066】
図8は、脛骨ベースプレート302と、脛骨支承コンポーネント304の部分と、ヒンジポスト408と、ブッシング420とを含むプロテーゼ組立体400Aの断面図を示す。ヒンジポスト408は、図5の実施例の場合にそうであったようには、まだ完全にはブッシング420内へ着座しておらず、まだ完全にはシャックル318とねじ山連結されていない。図8は、図7において前述したものと同様のスナップ嵌めコンポーネント602として形成された捕捉エレメント601を示す。捕捉エレメント601は凹部322内部に少なくとも部分的に位置決めされており、足部又はプロング603及び他の機構が脛骨ベースプレート302の1つ又は複数の保持機構604に係合するように偏向されている。これらの1つ又は複数の保持機構604は、凹部322の縁部に沿って位置決めされた突起605と溝607とを含む。捕捉エレメント601は、脛骨ベースプレート302と係合して脛骨ベースプレート302とのスナップ嵌め結合を構成するように構成されており、これにより捕捉エレメント601を脛骨ベースプレート302に保持する。
【0067】
注目すべきなのは、図8に関して、ヒンジポスト408がシャックル318に螺合されるのに伴って、ブッシング420とヒンジポスト408の中央部分との間のねじ山が係合し得ることである。このねじ山は、図5に関して前述したねじ山の形式で構成することができる。ねじ山の係合は、ブッシング420を凹部322内部に所望のように再位置決めすることができる。例えば、ブッシング420は矢印Pで示された近位方向に動くことにより、ブッシング420と捕捉エレメント601との間に所望のギャップGを構成することができる。ギャップGのサイズは、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート302からの大腿骨コンポーネント(図示省略)の離開量を決定づけることができる。ブッシング420がヒンジポストと一緒に近位方向に動くと、ブッシング420(又はヒンジポスト408)と捕捉エレメント601とが接触することにより、離開を制限(停止)することができる。
【0068】
図9Aは、プロテーゼ組立体700と一緒に使用される捕捉エレメント701の別の実施例を示す断面図である。捕捉エレメント701はねじ山703を含むことができる。ねじ山703は、脛骨ベースプレート702の凹部722に沿った対応するねじ山705と連結するように構成されている。捕捉エレメント701は、図9Aに示された位置へ螺合されると、凹部722内部に少なくとも部分的に捕捉される。図9Aはこれに加えて、ヒンジポスト708及びブッシング720のさらなる実施例を示す。ヒンジポスト708は、ヒンジポスト408のものと同様の構造を有し得るが、図5の実施例におけるような中央部分ではなく、その遠位部分709に沿ってねじ山707を有することができる。ブッシング720とヒンジポスト708とは、図5と同様の形式でねじ山を係合させることにより、互いに連結することができる。
【0069】
図9Bは、前述のものと同様の貫通孔721と一緒に、外径に沿って雄ねじ山703を備えた捕捉エレメント701を示す。貫通孔721は、脛骨ベースプレート702に捕捉エレメント701をねじ嵌めるために使用されるドライバ(ねじ回し)、又は他の工具による嵌め合いのための駆動機構723、例えば溝、ローブ、又はこれに類するものを含むことができ、これによりブッシング720及び/又はヒンジポスト708の遠位機構を捕捉する。
【0070】
図8と同様に、図9Aはブッシング720と捕捉エレメント701との間のギャップGを示す。ギャップGのサイズは、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート702からの大腿骨コンポーネント(図示せず)の離開量を決定づけることができる。ブッシング720がヒンジポスト708と一緒に近位方向に動くと、ブッシング720(又はヒンジポスト708)と捕捉エレメント701とが接触することにより、離開を制限(停止)することができる。凹部722内部のブッシング720の位置は、ブッシング720とヒンジポスト708との間のねじ山係合によって、(例えば、ねじ山のピッチ又は他のジオメトリの小さな差を介して)前述のように調節することができる。
【0071】
図10は、前に図9Aに示された、脛骨ベースプレート702と、脛骨支承コンポーネント304の部分と、捕捉エレメント701とを含むプロテーゼ組立体800の断面図を示す。しかしながら、図10の実施例は、図9Aのものから改変された形状を有するヒンジポスト808とブッシング820とを含む。したがって、図10はさらに、ヒンジポスト808及びブッシング820のさらなる実施例を示す。ヒンジポスト808は、ヒンジポスト408のものと同様の構造を有することができるが、しかし図5及び図8の実施例におけるような中央部分ではなく、より小さな直径のその遠位部分809に沿ってねじ山807を有することができる。ブッシング820は、近位部分と比較して遠位部分に低減された容積を提供するカウンターボア又は形態を有することができる。このように、遠位側の凹部822Aは、凹部822のより近位側の凹部822Bと比較してより小さな直径を有することができる。ヒンジポスト808は、ブッシング820のねじ山811を図5と同様の形式で係合させることにより、一緒に連結することができる。
【0072】
図10では、ブッシング820は脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート702からの大腿骨コンポーネント(図示せず)の離開を完全に制限するように構成することができる。したがって、大腿骨コンポーネントの離開はほとんどあり得ない。これは、ブッシング820が図示のように捕捉エレメント701と隣接し得るように、ブッシング820が凹部822の長さに対して長く形成されている結果である。したがって、ブッシング820と捕捉エレメント701との間にはギャップG(図8及び図9A参照)はない。ブッシング820(又はヒンジポスト808)と捕捉エレメント701との接触により、離開は制限(停止)される。
【0073】
図11は、前に図9A及び図10に示された、脛骨ベースプレート702と、脛骨支承コンポーネント304の部分と、ヒンジポスト808と、捕捉エレメント701とを含むプロテーゼ組立体900の断面図を示す。しかしながら、図11の実施例は、図10のものから改変された形状を有するブッシング920を含む。具体的には、ブッシング920の長手方向長さは、ブッシング920と捕捉エレメント701との間にギャップGを提供するように、凹部822の長手方向長さに対して短くされている。ギャップGのサイズは、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート702からの大腿骨コンポーネント(図示せず)の離開量を決定づける。ブッシング920がヒンジポスト708と一緒に近位方向に動くと、ブッシング920(又はヒンジポスト708)と捕捉エレメント701とが接触することにより、離開を制限(停止)することができる。凹部822内部のブッシング920の位置は、ブッシング820とヒンジポスト708との間のねじ山係合によって、(例えば、ねじ山のピッチ又は他のジオメトリの小さな差を介して)前述のように調節することができる。
【0074】
図11Aは、捕捉エレメント701及びブッシング920の近位部分の斜視図を示す。捕捉エレメント701は、貫通孔721と一緒に、外径に沿って雄ねじ山703を有することができる。貫通孔721は、前述の駆動機構723を含むことができる。ブッシング920の凹部822は、図10において前述したカウンターボア形態と一緒に示されている。
【0075】
図11Bは、(限定された離開の前の)ブッシング920からの捕捉エレメント701の相対的な間隔を示す。ブッシング920は、その外径826に沿って回転防止機構824を含むことができる。回転防止機構824は、例えばローブ828として示されている。回転防止機構824は、ブッシング920の回転運動に対するストップを提供する。しかしながら、他のタイプの回転防止機構、例えばねじ山、突起、タブ、プロング、バーブ、リブなども考えられる。回転防止機構824は、ここに示され論じられるブッシュのデザイン(図4のブッシング320を含む)のいずれかと一緒に使用することができ、したがってブッシング920に限定されない。
【0076】
図12は、前に図9A及び図10に示された、脛骨ベースプレート702と、脛骨支承コンポーネント304の部分と、ブッシング820と、捕捉エレメント701とを含むプロテーゼ組立体1000の断面図を示す。しかしながら、図12の実施例は、図10のものから改変された形状を有するヒンジポスト1008を含む。具体的には、ヒンジポスト1008は、1つ又は複数の係合機構1001を含むことができ、係合機構1001は、大腿骨コンポーネント(図示せず)による限定された離開後に、捕捉エレメント701と係合するように構成することができる。1つ又は複数の係合機構1001は、タブ、リブ、又は他のタイプの突起であり得る。1つ又は複数の係合機構1001は、例えば駆動機構723のうちの1つ又は複数に沿って通過させることにより、貫通孔721(図11A)に通すことができ、次いで図12に示された異なる位置へクロック(clock)(回転)させることができる。ギャップGは、1つ又は複数の係合機構1001と、捕捉エレメント701の遠位端との間に存在することができる。ギャップGのサイズは、脛骨支承コンポーネント304及び脛骨ベースプレート702からの大腿骨コンポーネント(図示せず)の離開量を決定づけることができる。1つ又は複数の係合機構1001(ヒンジポスト1008の部分)と捕捉エレメント701とが接触することにより、離開を制限(停止)することができる。このように、ブッシング820と捕捉エレメント701との接触ではなく、ヒンジポスト1008自体の形態が、離開を制限することができる。
【0077】
図13は、別の実施例に基づくヒンジポスト1108の斜視図を示す。ヒンジポスト1108は後部のねじ山1109Pと、遠位側のねじ山1109Dとを含むことができる。ヒンジポスト1108はこれに加えて近位端の駆動機構1102と、ねじ山のない中間部分1104とを含むことができる。ねじ山1109P及び/又は1109Dは、ロープねじ山、丸ねじ山、ACMEねじ山、又は当業者に知られた他のタイプのねじ山であり得る。中間部分1104は後部のねじ山1109Pと遠位側のねじ山1109Dとの間に位置決めすることができる。中間部分1104及び/又は他の部分は、例えば僅かにテーパすることができる。
【0078】
図14は、膝関節の限定された離開の前の相対的な間隔を有する状態の捕捉エレメント1201とブッシング1220とを斜視図で示す。ブッシング1220は、例えばヒンジポスト1108のねじ山1109D(図13)と係合するように形成されたねじ山1211を含む。ブッシング1220は、さらに2つの回転防止機構1224A及び1224Bを含む。捕捉エレメント1201は、雄ねじ山1203と、貫通孔1221と、駆動機構1223と、2つの回転防止機構1225A及び1225Bとを含むことができる。捕捉エレメント1201は、貫通孔1221と一緒に、外径に沿って雄ねじ山1203を有することができる。貫通孔1221は、前述のように駆動機構1223を含むことができる。
【0079】
2つの回転防止機構1224A及び1224Bは、対応する2つの回転防止機構1225A及び1225Bと係合するように構成することができる。このような係合は、大腿骨コンポーネント、ヒンジポスト1108(図13参照)、及びブッシング1220の離開中及び/又は回転中に発生し得る。回転防止機構1224A及び1224Bは、近位方向へ延びるプロング(prong)又は他の機構であってよい。プロング又は他の機構は、ヒンジポスト1108(図13参照)及びブッシング1220の限定された離開中に、適宜に成形された凹部1202A及び1202B内へ挿入することができる。この限定された離開は、図14に示された間隔よりも、ブッシング1220を捕捉エレメント1201に相対的に接近させることができる。2つの回転防止機構1225A及び1225Bの間に、適宜に成形された凹部1202A及び1202Bを構成することができる。同様に、2つの回転防止機構1225A及び1225Bは、ヒンジポスト1108(図13参照)及びブッシング1220の限定された離開中に、ブッシング1220の適宜に成形された凹部1204A及び1204B内へ挿入することができる。ヒンジポスト1108(図13参照)、ブッシング1220、及び大腿骨コンポーネント(図示せず)の所望の制限付き回転(例えば30度以下)を可能にするように、凹部1202A及び1202Bを回転防止機構1224A及び1224Bに対して成形しサイズ設定することができ、凹部1204A及び1204Bを回転防止機構1225A及び1225Bに対して成形しサイズ設定することができる。このような回転は、回転防止機構1224A,1224B,1225A及び/又は1225Bのうちの2つ以上の間の係合によって停止させることができる。
【0080】
捕捉エレメント1201とブッシング1220との間隔は、前述のギャップGを含むことができる。ギャップGのサイズは、脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの大腿骨コンポーネント(図示せず)の近位方向の離開量を決定づける。さらに、大腿骨コンポーネントの回転を制限するために、回転防止機構1224A,1224B,1225A及び1225Bの間に回転ギャップを提供することができる。ブッシング1220がヒンジポスト1108(図13)と一緒に近位方向に動く、かつ/又は回転運動すると、ブッシング1220と捕捉エレメント1201とが接触することにより、離開を制限(停止)することができる。
【0081】
図15は、完全離開を可能にするブッシング1320(観察者の左側に示されている)から、本出願の実施例に基づく限定された離開を提供するブッシング1220及び捕捉エレメント1201(観察者の右側に示されている)へ、拘束型人工膝を切り換えるプロセスを示す。方法1300は、ステップ1302でヒンジポスト1108をブッシング1320から、脛骨ベースプレート702から取り除くことを含み得る。方法1300は、ステップ1304において、脛骨ベースプレート702からの膝関節の完全離開のために構成されたブッシング1320を取り除く。ブッシング1220及び捕捉エレメント1201は、ステップ1306において脛骨ベースプレート702内へ挿入される。次いでステップ1308において、ヒンジポスト1108をシャックル318に連結し、そしてブッシング1220及び捕捉エレメント1201と連結する脛骨ベースプレート702内へ再挿入して戻すことにより、本明細書中で論じた膝関節の限定された離開を提供する。
【0082】
図16は、膝関節の限定された離開の前の相対的な間隔を有する状態の捕捉エレメント1401とブッシング1420とを斜視図で示す。ブッシング1420は、例えばヒンジポスト1108のねじ山1109D(図13)と係合するように形成されたねじ山1411を含む。ブッシング1420は、前述の図14及び図15のブッシング1220の形式で構成することができる。ブッシング1420は、単一の回転防止機構1424が利用される点で異なり得る。捕捉エレメント1401は単一の回転防止機構1425を含むことができる。
【0083】
回転防止機構1424は、対応する回転防止機構1425と係合するように構成することができる。回転防止機構1424は、近位方向へ延びるプロング又は他の機構であってよい。プロング又は他の機構は、ヒンジポスト1108(図13参照)及びブッシング1420の限定された離開中に、捕捉エレメント1401の適宜に成形された凹部1402内へ挿入することができる。この限定された離開は、図16に示された間隔よりも、ブッシング1420を捕捉エレメント1401に相対的に接近させることができる。適宜に成形された凹部1402は、回転防止機構1424と対向することができ、そして回転防止機構1425の対向する縁部によって部分的に構成することができる。同様に、回転防止機構1425は、ヒンジポスト1108(図13参照)及びブッシング1420の限定された離開中に、ブッシング1420の適宜に成形された凹部1404内へ挿入することができる。ヒンジポスト1108(図13参照)、ブッシング1220、及び大腿骨コンポーネント(図示省略)の所望の制限付き回転(例えば30度以下)を可能にするように、凹部1402を回転防止機構1424に対して成形しサイズ設定することができ、そして凹部1404を回転防止機構1425に対して成形しサイズ設定することができる。回転防止機構1424を回転防止機構1425と係合させることにより、回転を停止させ、ひいては膝関節の限定された離開を提供することができる。
【0084】
図17は、捕捉エレメント1401とブッシング1420との間隔が、前述のギャップGを含み得ることを示す。ギャップGのサイズは、脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの大腿骨コンポーネント(図示せず)の近位方向の離開量を決定づける。さらに、大腿骨コンポーネントの回転を制限するために、回転防止機構1424及び1425の間に回転ギャップ(図16参照)を提供することができる。ブッシング1420がヒンジポスト1108と一緒に近位方向に動く、かつ/又は回転運動すると、ブッシング1420と捕捉エレメント1401とが接触することにより、離開を制限(停止)することができる。
【0085】
図18は、膝関節の限定された離開の前の相対的な間隔を有する状態の捕捉エレメント1501とブッシング1520とを示す。ブッシング1520及び捕捉エレメント1501は、図16の実施例と極めて類似した形式で構成されている。回転防止機構1524のサイズは、図16の実施例よりも小さくなるように改変されているのに対して、回転防止機構1525は拡大されている。回転防止機構1524及び1525は、膝関節の離開及び/又は回転を所望のように制御するために適宜にサイズ設定することができる。
【0086】
図19は、完全離開を可能にするブッシング1320(観察者の左側に示されている)から、本出願の実施例に基づく限定された離開を提供するブッシング1520及び捕捉エレメント1501(観察者の右側に示されている)へ、拘束型人工膝を切り換えるプロセスを示す。方法1600は、ステップ1602でヒンジポスト1108をブッシング1520から、そして脛骨ベースプレート702から取り除くことを含み得る。方法1600は、ステップ1604において、脛骨ベースプレート702からの膝関節の完全離開のために構成されたブッシング1520を取り除く。ブッシング1520及び捕捉エレメント1501は、ステップ1606において脛骨ベースプレート702内へ挿入される。次いでステップ1608において、ヒンジポスト1108をシャックル318に連結し、そしてブッシング1520及び捕捉エレメント1501と連結する脛骨ベースプレート702内へ再挿入して戻すことにより、本明細書中で論じた膝関節の限定された離開を提供する。
【0087】
図20は、別の実施例に基づくヒンジポスト1708の斜視図を示す。ヒンジポスト1708は後部のねじ山1709Pと、遠位側のねじ山1709Dとを含むことができる。ヒンジポスト1708はこれに加えて、第1直径部分1704Aと、より小さな第2直径部分1704Bとを有する、ねじ山のない中間部分1704を含むことができる。ねじ山1709P及び/又は1709Dは、ロープねじ山、丸ねじ山、ACMEねじ山、又は当業者に知られた他のタイプのねじ山であり得る。中間部分1704は後部のねじ山1709Pと遠位側のねじ山1709Dとの間に位置決めすることができる。中間部分1704及び/又は他の部分は、例えば僅かにテーパすることができる。ヒンジポスト1708の遠位端部1701はねじ山を有していなくてよく、この遠位端部1701は、捕捉エレメント(後続の図面参照)を通過し、この捕捉エレメントを、図22に示されるような脛骨ベースプレートの凹部の遠位端から離隔させるように構成することができる。
【0088】
図21Aから図21Cは捕捉エレメント1801の別の実施例を示す。この捕捉エレメントは近位捕捉エレメント1801Pと、ブッシング1820として作用し得る遠位エレメント1801Dとの両方を組み合わせる。捕捉エレメント1801は、近位捕捉エレメント1801Pを遠位エレメント1801Dから区別する(間隔を置く)ためのスコアリング、ギャップ、又は他の機構を含む単一のコンポーネントとして最初は存在するが、近位捕捉エレメント1801Pを遠位エレメント1801Dと連結する中間結合エレメント1825を有することもできる。図21Aから図21Cは、捕捉エレメント1801を、先ずヒンジポスト(例えばヒンジポスト1708)と、そして次いで脛骨ベースプレートとねじ山係合する前の状態で示す。図21A及び図21Bでは、捕捉エレメント1801は、近位捕捉エレメント1801Pと遠位エレメント1801Dとの間に、中間結合エレメント1825によって提供される脆弱な又は分離可能な結合を有する単一コンポーネントである。
【0089】
図21Cの断面図に示されているように、遠位エレメント1801D、ブッシング1820は、例えばヒンジポスト1708のねじ山1709D(図20参照)と係合するように形成された雌ねじ山1811を有している。近位捕捉エレメント1801Pは雄ねじ山1803と、(遠位捕捉エレメント1801Dと共有される)貫通孔1821と、駆動機構1823とを有している。貫通孔1821は、前述の形式で形成された駆動機構1823を含むことができる。
【0090】
図22は、近位捕捉エレメント1801Pが遠位エレメント1801Dから分離された状態の捕捉エレメント1801を示す。この分離プロセスは、捕捉エレメント1801が脛骨ベースプレートの凹部内へ部分的に着座させられ、次いでヒンジポスト1708を遠位エレメント1801D内へねじ嵌めることによって係合される(例えば遠位側のねじ山1709D(図20)が雌ねじ山1811(図21C参照)と係合する)と、発生する。このような螺合は、近位捕捉エレメント1801Pを遠位エレメント1801Dから分離するように作用する(図21A及び図21Bの中間結合エレメント1825を解離/破断/切断する)。ヒンジポスト1708に螺合された遠位エレメント1801Dは、遠位方向へ、脛骨ベースプレートの凹部内へさらに運ばれ、本明細書中に前述したものと同様のブッシング1820として作用する。近位捕捉エレメント1801Pとブッシング1820とは、図22に示された相対的な間隔を置いて終わることができ、膝関節のある程度制限された離開を可能にする。
【0091】
このような限定された離開は、図22に示された間隔よりも、ブッシング1820を近位捕捉エレメント1801Pに相対的に接近させることができる。ヒンジポスト1708(図20参照)、ブッシング1820、及び大腿骨コンポーネント(図示省略)の所望の限定された離開を可能にするように、凹部1802を成形しサイズ設定することができる。
【0092】
図23は、近位捕捉エレメント1801Pとブッシング1820との間隔が、前述のギャップGを含み得ることを示す。ギャップGのサイズは、脛骨支承コンポーネント及び脛骨ベースプレートからの大腿骨コンポーネント(図示省略)の近位方向の離開量を決定づける。ブッシング1820がヒンジポスト1108と一緒に近位方向に動くと、ブッシング1820と近位捕捉エレメント1801Pとが接触することにより、離開を制限(停止)することができる。
【0093】
補注
上記の詳細な説明は、添付の図面の参照を含む。これらの図面は詳細な説明の一部を構成する。図面は、本発明を実施し得る具体的な実施態様を実例として示す。これらの実施態様は本明細書中では「実施例」とも称される。このような実施例は図示又は記述されたものに加えられる要素を含み得る。しかしながら、本発明者はまた、図示又は記述された要素だけが提供される実施例をも考える。さらに、本発明者はまた、図示又は記述された特定の実施例(又はその1つ又は複数のアスペクト)に関して、又は他の実施例(又はこれらの1つ又は複数のアスペクト)に関して、図示され記述された要素(又はこれらの1つ又は複数のアスペクト)の組み合わせ又は置換を用いた実施例をも考える。
【0094】
本文献では、「概ね(generally)」、「ほぼ(substantially)」、「約(about)」という用語は、提供された値の15パーセント(±)以内を意味する。「a」又は「an」という用語は、特許文献において共通するように、「少なくとも1つ(at least one)」又は「1つ又は複数(one or more)」といういかなる他の例又は利用からも独立して、1つ又は1つよりも多い(one or more than one)ことを含むために使用される。本文献では、「又は」という用語は、非排他的orを意味し、これにより特に断りのない限り、「A又はB」が「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、そして「AでありかつBである」を含むように使用される。本文献では「含む(including)」及び「そこには(in which)」という用語は、「含む(comprising)」及び「そこにおいて(wherein)」というそれぞれの用語と同等のプレイン・イングリッシュとして使用される。また、下記請求項において、「含む(including)」及び「含む(comprising)」という用語はオープンエンドであり、すなわち請求項におけるこのような用語の後に挙げられたものに加えられる要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、製剤、又はプロセスが、その請求項の範囲に含まれるとまだ見なされる。さらに、下記請求項において、「第1」、「第2」、及び「第3」などという用語は、単に標識として使用されるにすぎず、これらの対象物に数値的要件を課すものではない。
【0095】
上記記述内容は、例示的なものであって、限定的ではないものと意図される。例えば、上記実施例(又はこれらの1つ又は複数の態様)は、相互の組み合わせにおいて用いることができる。上記記述を概観すれば、例えば当業者によって他の実施例を用いることができる。要約書は、読者が技術開示内容の性質を迅速に確認するのを可能にするために、米国特許法第1.72(b)条を遵守するように提供されている。これは、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するためには使用されないという理解のもとに提出される。また、上記詳細な説明において、種々の特徴をまとめることにより、開示内容を簡素化することができる。このことは、請求項以外で開示された特徴がいずれの請求項にも必須であることを意図するものと解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、開示された特定の実施例のすべての特徴にあるわけではない。したがって、下記請求項はここでは実施例又は実施態様として詳細な説明に組み込まれる。各請求項はそれ自体別個の実施例として存在し、またこのような実施例は種々の組み合わせ又は置換において、互いに組み合わせることができる。本発明の範囲は、添付の請求項を、このような請求項に与えられた同等のものの全範囲と併せて参照することによって見極められるべきである。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図22
図23
【外国語明細書】