(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091528
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】グラフェンデバイスおよびグラフェンデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20240627BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240627BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L21/02 B
H01L29/78 619A
H01L29/78 626C
H01L29/78 618A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211770
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】22383282
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523473040
【氏名又は名称】グラフェネア セミコンダクター エス.エル.ユー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーレス アロンソ エリアス
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110BB09
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD03
5F110DD05
5F110DD12
5F110DD13
5F110DD14
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110GG01
5F110GG57
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
5F110HM12
5F110NN03
5F110NN12
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN33
5F110NN34
5F110NN35
5F110QQ14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】グラフェンベースの固体デバイスを製造する方法を提供する。
【解決手段】方法は、基板100上にグラフェン層101’を配置すること、グラフェン層上に非ポリマー誘電体材料から作製される犠牲層102’’を堆積させるステップと、少なくとも1つのチャネル領域を画定することによって、犠牲層によるレジスト層からの汚染から保護されているグラフェン層をパターニングするステップと、グラフェン層上に、堆積される少なくとも1つの金属接点107’の形状をパターニングし、少なくとも1つの金属接点をグラフェン層上に堆積させるステップと、を含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンベースの固体デバイスを製造する方法であって、
基板(100)上にグラフェン層(101)を配置し、
グラフェン層(101)上に犠牲層(102)を堆積させるステップであって、犠牲層(102)は、非ポリマー誘電体材料から作製され、
少なくとも1つのチャネル領域を画定することによってグラフェン層(101)をパターニングすることであって、パターニングは、リソグラフィプロセスを適用し、続いてレジスト層(103)を用いたエッチングプロセスを適用することによって行われ、
パターニングされたグラフェン層(101’)を得て、
グラフェン層(101’)は、犠牲層(102)によってレジスト層(103)からの汚染から保護され、
グラフェン層(101’)上に、堆積される少なくとも1つの金属接点の形状をパターニングし、
少なくとも1つの金属接点(107’)をグラフェン層(101’)上に堆積させる方法である。
【請求項2】
基板(100)は、ガラス、石英、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素、酸化ケイ素、ガリウムヒ素、SiO2/Si、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2OおよびSrOのうちの少なくとも1つを含む材料から作製されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板100は2層で構成されており、
当該層のうちの1つの層は、シリコン、酸化シリコン、ガラス、石英、およびポリマー材料のうちの1つから作製され、
当該層のうち他方の層は、ガラス、石英、Si、SiO2/Si、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2O、SrOのいずれかからなることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
基板(100)上に少なくとも1つのグラフェン層(101)を配置する前に、基板(100)を洗浄して不純物を除去し、親水性を高めることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのグラフェン層(101)は、基板(100)上に堆積、転写または成長されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVP)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、気相エピタキシー、スパッタリングまたは分子線エピタキシー(MBE)の少なくとも1つを使用して犠牲層(102)が堆積されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
犠牲層(102)の厚さは、1Å~100μmであるように選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
犠牲層(102)が作製される非ポリマー誘電体材料は、無機酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
無機酸化物は、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、GaN、TaN、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2OおよびSrOから選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのグラフェン層(101’)のパターニングは、
レジスト層(103)によって覆われていない犠牲層(102)の領域を溶解するためにウェットエッチング技術を適用し、下にあるグラフェン層(101)を露出させ、
ドライエッチング技術を適用して、犠牲層(102)およびレジスト層(103)によって形成された積層体によって覆われていないグラフェン層(101)の領域を除去することによって行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのグラフェンチャネル(101)のパターニングは、
レジスト層(103)によって覆われていない下の犠牲層(102)およびグラフェン層(101)の領域の両方を除去するためにドライエッチング技術を適用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
堆積される少なくとも1つの金属接点の幾何学的形状のグラフェン層(101)上のパターニングは、
グラフェン層(101’)上にマスク層を堆積し、
金属が堆積される選択領域のマスク層を除去し、保護される領域にマスク層を残すことによって、マスク層に反転パターンを作成するように行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの金属接点(107’)は、
金属層(107)を塗布し、
残りのマスク層(104)をリフトオフすることで、残りのマスク層(104’)上に堆積された金属を除去し、
少なくとも1つの金属接点(107’)は、金属がグラフェン層(101)と直接接触する領域のみに残るように堆積されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
堆積される少なくとも1つの金属接点の形状は、グラフェンチャネル内にパターニングされ、グラフェンチャネルの側面(108a、108b)から分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
グラフェンベースの固体デバイスであって、
基板(100)と、
基板(100)上に配置されたグラフェン層(101)であって、少なくとも1つのグラフェンチャネルを画定するグラフェン層(101)と、
グラフェンチャネルと接触する少なくとも1つの金属接点(107’)と、
を含み、
グラフェン層(101)は、非ポリマー誘電体材料で作られた犠牲層(102)によって保護されていることを特徴とする固体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体およびエレクトロニクス産業の分野に関し、特に、グラフェンベースの固体デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀初頭におけるその発見以来、グラフェンは、高い電子移動度、低い状態密度および低い電荷密度などのその特性に起因して、多くの注目を集めている。これらの特性により、グラフェンは、とりわけRFデバイス、磁気センサ、バイオセンサおよび光検出器などの無数の電子用途において理想的な材料となる。
【0003】
特に、グラフェンの単層構造は、グラフェンがその表面における静電摂動に敏感であることを可能にする。この感度の観察は、ダイオード、トランジスタおよびサイリスタなどのグラフェン固体デバイスの開発を可能にし、これらは、例えば化学および生物学的センサとして使用される場合、目的となる化学物質または生物学的薬剤に曝露されるとそれらの電気的特性が変化する。
【0004】
しかしながら、グラフェンデバイスを製造する場合、これらの属性は、通常、グラフェンデバイスを得るためのグラフェン膜の加工中に導入される不純物、残留物および欠陥の形態の汚染に起因して観察されない。これらの欠陥は、グラフェンだけでなく、一般にCNTおよびフラーレンなどの他の炭素系材料を特徴付ける。
【0005】
これらのデバイスにおける汚染の主な原因は、主に処理中に使用されるフォトレジストに起因するポリマー汚染の形態で導入される。これは、後に堆積される金属接点の品質を低下させ、したがって、コンタクト抵抗を増加させ、不良なキャリア注入をもたらし、ポリマー残渣および不純物によって引き起こされる散乱によりチャネル内の電子移動度を低下させる。
【0006】
さらに、金属堆積の前にフォトレジストを介して接触パターンを作成する場合、グラフェンは、一般にフォトレジスト現像およびリソグラフィ処理で使用される強塩基と接触する。これによりグラフェンが脱離し、接触面積が減少し、再びキャリア注入が減少する。
【0007】
例えば、US8878193B2は、グラフェンチャネルベースのデバイスを製造するための方法を開示しており、グラフェンをパターニングするには、PMMAからなるフォトレジストにグラフェンを接触させ、上記の問題を引き起こす。同様に、US8895417B2において、グラフェンをパターン化するために、グラフェンは、グラフェンを汚染するPMMAまたはHSQなどのポリマー誘電体と接触する。
【0008】
ポリマー汚染からグラフェンを保護するための既存のアプローチは、底部接触に基づく。しかしながら、これらの接触は、通常、他の理由の中でもとりわけ、上述の剥離、したがって不良なキャリア注入に起因して不良な歩留まりをもたらす。例えば、US8796096B2は、底部の浮遊接点(bottom, suspended contact)を有するグラフェンベースの半導体デバイスを製造する方法を開示しており、これは、キャリア注入不良および低歩留まりをもたらす。さらに、開示された構造は、複数のメタライゼーションステップを必要とする。
【0009】
グラフェンベースのデバイスに固有の別の問題は、金属接点が従来、グラフェンチャネルの端部に画定されることである。これは、非常に厳しいアライメント公差と、フォトレジスト現像液に対するグラフェンチャネルエッジの大きな露出とを伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第8878193号明細書
【特許文献2】米国特許第8895417号明細書
【特許文献3】米国特許第8796096号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、上述の欠点を克服するグラフェンベースの固体デバイスを製造する新しい方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、新規なグラフェン系固体素子及びグラフェン系固体素子の製造方法を提供する。提案された方法では、グラフェンとフォトポリマーおよび現像液との間の直接的な相互作用または接触が防止される。これにより、グラフェンチャネルの汚染が防止される。グラフェンベースの固体デバイスは、例えば、グラフェンベースの電界効果トランジスタ(GFET)などのグラフェンベースのトランジスタであり得る。
【0013】
提案された製造方法は、グラフェンを含む固体デバイス(SSD)(半導体デバイスとも呼ばれる)を金属化する工程を含む。半導体デバイスは、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素または有機半導体などの半導体材料で構成される。半導体内の電流の流れは、電荷キャリアとも呼ばれる自由電子の移動度によって生じる。グラフェンベースの固体デバイスは、半導体材料がグラフェン、例えばグラフェンチャネルである任意の固体デバイスであり得る。提案された方法に従って製造され、提案されたメタライゼーションプロセスが適用可能なグラフェンベースの半導体デバイスは、電磁シールドなどの単端子デバイス、ダイオードなどの2端子デバイス、トランジスタなどの3端子デバイス、または伝送長法(TLM)測定用に構築されたデバイスなどのN端子デバイスであり得る。グラフェン系半導体装置は、2以上の端子を有する素子であることが好ましい。金属化プロセスが適用可能であるグラフェンベースの固体デバイスの非限定的な例は、ダイオード、トライオード、バイポーラ接合トランジスタ、電界効果トランジスタ、金属酸化物半導体、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、サイリスタ、バリスタ、メモリスタ、バラクタ、pn接合、pin接合、発光ダイオード、光検出器、磁気抵抗デバイス、スピンバルブ、スピントルクデバイス、ボロメータおよびハイブリッド遷移金属ジカルコゲナイド/グラフェン系ヘテロ構造、等が挙げられる。
【0014】
この方法は、グラフェンチャネルおよび/または金属堆積物をパターニングすることを含む。本発明の文脈において、パターニングは、レジスト堆積、マスク露光および現像の工程を含む。グラフェンSSDに適用されるグラフェンチャネルおよび/または金属堆積物のパターン(幾何学的形状またはプロファイル)は、CADソフトウェアなどのコンピュータ支援技術を用いて以前に設計されている。コンピュータ支援設計は、その上にグラフェンチャネルが画定される、および/または、メタライゼーションが堆積されるダイの表面上の面積または領域を画定することを可能にする。従来のパターニングプロセスは、汚染、主に、例えば処理中に使用されるフォトレジストによるポリマー汚染を引き起こす。提案された方法は、製造プロセス全体の間に犠牲層でグラフェン層を不動態化することによってこの汚染を防止する。
【0015】
金属化プロセスは、グラフェンデバイス内に1つまたは複数の電気接点を形成することを目的とする。例えば、ある接点は(例えば、電圧源の)電気負極への後続の接続を可能にし、別の接点は(例えば、電圧源の)電気正極への後続の接続を可能にする。
【0016】
本発明の第1の態様では、グラフェンベースの固体デバイスを製造する方法が提供される。この方法は、基板上にグラフェン層を配置するステップと、グラフェン層上に犠牲層を堆積させるステップであって、犠牲層は、非ポリマー誘電体材料から作製されるステップと、少なくとも1つのチャネル領域を画定することによってグラフェン層をパターニングするステップであって、パターニングは、リソグラフィプロセスを適用し、続いてレジスト層を使用するエッチングプロセスを適用することによって行われ、パターニングされたグラフェン層を得るステップであって、グラフェン層は、犠牲層によるレジスト層からの汚染から保護されているステップと、(犠牲層によって保護される)グラフェン層上に、堆積される少なくとも1つの金属接点の形状をパターニングし、グラフェン層上に少なくとも1つの金属接点を堆積させるステップを含む。
【0017】
本発明の実施形態において、基板は、ガラス、石英、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素、酸化ケイ素、ガリウムヒ素、SiO2/Si、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2OおよびSrOのうちの少なくとも1つを含む材料から作製される。
【0018】
本発明の実施形態において、基板は2層で形成され、層のうちの1つは、シリコン、酸化シリコン、ガラス、石英、およびポリマー材料のうちの1つから作製される。また、他方の層は、ガラス、石英、Si、SiO2/Si、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2O、SrOのいずれかからなる。
【0019】
いくつかの実施形態では、基板は犠牲基板であり、これは、グラフェンデバイスが犠牲基板上に作製され、次いで別の基板に転写され得ることを意味する。任意の適切な基板材料が犠牲基板として使用でき、基板材料が異なる製造ステップに適合することを条件とする。
【0020】
本発明の実施形態では、基板上に少なくとも1つのグラフェン層を配置する前に、基板を洗浄して不純物を除去し、親水性を高める。
【0021】
本発明の実施形態において、少なくとも1つのグラフェン層は、基板上に堆積、転写、または成長される。
【0022】
本発明の実施形態において、犠牲層は、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVP)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、気相エピタキシー、スパッタリング、または分子線エピタキシー(MBE)を使用して堆積される。
【0023】
本発明の実施形態において、犠牲層の厚さは、1Å~100μmの間で選択される。
【0024】
本発明の実施形態において、犠牲層が作製される非ポリマー誘電体材料は、無機酸化物である。本発明の実施形態において、無機酸化物は、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、GaN、TaN、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2OおよびSrOから選択される。
【0025】
本発明の実施形態において、少なくとも1つのグラフェンチャネルのパターニングは、以下のように行われる。レジスト層によって覆われていない犠牲層の領域を溶解するためにウェットエッチング技術を適用し、その下のグラフェン層を露出させるステップと、ドライエッチング技術を適用して、犠牲層およびレジスト層によって形成された積層体によって覆われていないグラフェン層の領域を除去する。
【0026】
本発明の実施形態において、少なくとも1つのグラフェンチャネルのパターニングは、以下のように行われる。レジスト層によって覆われていない犠牲層およびグラフェン層の下の領域の両方を除去するためにドライエッチング技術を適用する。
【0027】
本発明の実施形態において、堆積される少なくとも1つの金属接点の形状のグラフェン層上のパターニングは、以下のように行われる。グラフェン層上にマスク層を堆積させ、金属が堆積されるべき選択された領域内のマスク層を除去し、保護されるべき領域内にマスク層を残すことによってマスク層内に反転パターンを作成する。
【0028】
本発明の実施形態において、少なくとも1つの金属接点は、以下のように堆積される。金属層を塗布し、残りのマスク層をリフトオフし、したがって残りのマスク層上に堆積された金属を除去して、少なくとも1つの金属接点が、金属がグラフェン層と直接接触する領域のみに残るようにする。
【0029】
本発明の実施形態において、堆積される少なくとも1つの金属接点の形状は、グラフェンチャネル内にパターニングされ、グラフェンチャネルの側面から分離される。
【0030】
本発明の第2の態様では、グラフェンベースの固体デバイスが提供される。基板と、基板上に配置され、少なくとも1つのグラフェンチャネルを画定するグラフェン層と、を含み、グラフェン層は、非ポリマー誘電体材料で作られた犠牲層によって保護されており、少なくとも1つの金属接点は、グラフェンチャネルと接触している。
【0031】
提案された方法は、グラフェンベースの固体デバイスへの上部接点メタライゼーションの適用に特に適している。また、上部接点と端部接点の両方を有するグラフェンベースの固体デバイスにも適している。
【0032】
典型的にはポリマー汚染の形態で導入されるグラフェンデバイスにおける汚染の主な原因は、主にパターニングプロセスにおけるレジストに起因し、グラフェン層が常に無機酸化物製の非汚染誘電体によって保護されるので防止される。これにより、金属接点の品質が向上し(例えばコンタクト抵抗が低減し)、キャリア注入や電子移動度が向上する。
【0033】
加えて、金属接点(デバイスがGFETである場合のドレイン接点およびソース接点など)が、標準的なコンタクト方法の場合のように、例えば基板と境界を定めるグラフェンの側面ではなく、基板等のグラフェンチャネル内に画定および構築されるとき、位置合わせ公差は緩和される、なぜなら、グラフェンチャネルの側面は、デバイスの実際の長さまたは幅を変更することなく、必要とされるほど延長され得るからである。これはまた、グラフェン膜の剥離を引き起こし、接触の品質を劣化させ得るフォトレジスト現像剤の大きな側方露出を回避する。要するに、この接触形状は、位置ずれの問題およびグラフェンの脱離を防止する。
【0034】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の詳細な説明から明らかになり、添付の特許請求の範囲において特に指摘される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
説明を行い、本発明のより良い理解を提供するために、図面のセットが提供される。図面は、説明の不可欠な部分を形成し、本発明の実施形態を示すが、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明をどのように実施することができるかの単なる例として解釈されるべきである。
【
図1】本発明の実施形態による基板の断面図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による、基板上に堆積されたグラフェン膜の断面図を示す。
【
図3A】本発明の実施形態による、グラフェン層上に堆積された犠牲層の断面図を示す。
【
図3B】本発明の実施形態による、犠牲層上に堆積されたレジスト層の断面図を示す。
【
図4A】本発明の実施形態による、グラフェンチャネルを画定するために使用されるリソグラフィプロセスの工程の断面図を示す。
【
図4B】本発明の実施形態による、グラフェンチャネルを画定するために使用されるリソグラフィプロセスの工程の断面図を示す。
【
図5】本発明の実施形態による、グラフェンチャネルを画定するために使用される代替のリソグラフィプロセスの断面図を示す。
【
図6】本発明の実施形態による、グラフェンチャネルが画定され、レジスト層が除去された後のグラフェン構造の断面図を示す。
【
図7A】本発明の実施形態による、金属がその後堆積される接点領域を画定するために使用されるリソグラフィプロセスを示す。
【
図7B】本発明の実施形態による、金属がその後堆積される接点領域を画定するために使用されるリソグラフィプロセスを示す。
【
図8】本発明の実施形態による、後に金属堆積によって接触されるグラフェン領域を露出させるエッチングプロセスを示す。
【
図9】本発明の実施形態による、ダイの上に堆積され、マスク層および露出グラフェン領域を覆う金属層の断面図を示す。
【
図10】本発明の実施形態による、マスク層を除去し、マスク層の上部の金属をリフトオフし、グラフェンチャネルと直接接触する領域のみに残りの堆積金属を除去した後のグラフェン構造の断面図を示す。
【
図11】本発明の実施形態によるカプセル化(犠牲層)の除去の断面図を示す。
【
図12A】標準的な接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示すことであって、金属堆積物を受け取るための接点領域は、グラフェンチャネルの側方領域において画定される。
【
図12B】標準的な接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積物を受け取るための接点領域は、グラフェンチャネルの側方領域において画定される。
【
図12C】標準的な接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積物を受け取るための接点領域は、グラフェンチャネルの側方領域において画定される。
【
図12D】標準的な接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積物を受け取るための接点領域は、グラフェンチャネルの側方領域において画定される。
【
図12E】標準的な接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積物を受け取るための接点領域は、グラフェンチャネルの側方領域において画定される。
【
図12F】標準的な接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積物を受け取るための接点領域は、グラフェンチャネルの側方領域において画定される。
【
図13A】提案された接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積を受ける接点領域は、グラフェンチャネル内に画定される。
【
図13B】提案された接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積を受ける接点領域は、グラフェンチャネル内に画定される。
【
図13C】提案された接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積を受ける接点領域は、グラフェンチャネル内に画定される。
【
図13D】提案された接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積を受ける接点領域は、グラフェンチャネル内に画定される。
【
図13E】提案された接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積を受ける接点領域は、グラフェンチャネル内に画定される。
【
図13F】提案された接触アプローチを使用するグラフェンデバイスの製造工程中に得られたグラフェン構造の上面図および断面図を示す。金属堆積を受ける接点領域は、グラフェンチャネル内に画定される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の広い原理を説明する目的でのみ与えられる。本発明の実施形態は、本発明による装置および結果を示す図面を参照した例示として説明される。
【0037】
図1~11は、本発明の実施形態による、電子ダイまたはウェハ(図示せず)に実装されたグラフェンを含む固体デバイスの製造プロセスを概略的に示す。製造プロセスは、グラフェンチャネルと接触するように少なくとも1つの導電性材料を堆積させるために必要な金属化プロセスを含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、グラフェンデバイスが提供される。次に、グラフェンデバイスの製造工程について詳細に説明する。
【0039】
図1に、基板100を示す。基板100は、半導体および/または絶縁材料を含んでもよい。グラフェンデバイスを製造するための異なる工程に適合する任意の基板を使用することができる。基板100は、剛性であっても可撓性であってもよい。基板100は、不純物を除去し、親水性を高めるために、例えばプラズマアッシングによって洗浄される。これは、グラフェン層の堆積または成長の前に行われる。使用され得る半導体および絶縁材料の例は、ガラス、石英、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素、酸化ケイ素、ヒ化ガリウム、SiO
2/Si、SiO2、Al
2O
3、ZrO
2、HfO
2、HfSiO
4、Ta
2O
5、La
2O
3、LaAlO
3、Nb
2O
5、TiO
2、BaTiO
3、SrTiO
3、CaCu
3Ti
4O
12、Si
3N
4、ZrSiO
4、Y
2O
3、CaO、MgO、BaO、WO
3、MoO
3、Sc
2O
3、Li
2OまたはSrOである。本発明の実施形態では、基板は、2つの層(上層および下層)によって構成されてもよい。下部層は、シリコン、酸化シリコン、ガラス、石英、及びポリマー材料のうちの1つから構成することができる。上層は、例えば、ガラス、石英、Si、SiO
2/Si、SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、HfO
2、HfSiO
4、Ta
2O
5、La
2O
3、LaAlO
3、Nb
2O
5、TiO
2、BaTiO
3、SrTiO
3、CaCu
3Ti
4O
12、Si
3N
4、ZrSiO
4、Y
2O
3、CaO、MgO、BaO、WO
3、MoO
3、Sc
2O
3、Li
2OまたはSrOで構成することができる。例えば、基板は、ドープされたシリカ(n++Si)から得られたシリコン基板層上に堆積された二酸化ケイ素層によって構成することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、基板100は犠牲基板であり、これは、グラフェンデバイスが犠牲基板上に作製され、次いで別の基板に転写され得ることを意味する。基板材料が異なる製造ステップに適合することを条件として、任意の適切な基板材料を犠牲基板として使用することができる。
【0041】
図2において、グラフェン層101は、基板100上に堆積、転写または成長される。グラフェン層101は、CVDグラフェン層の転写によるなど、グラフェンの堆積、転写または成長の任意の従来のプロセスによって基板100上に堆積または成長される。堆積/転写/成長プロセスは、本発明の範囲外である。好ましくは、グラフェンがポリマーと接触することを伴わないグラフェン堆積、転写または成長プロセスが使用される。グラフェンは、1つまたは複数のトランジスタなどの1つまたは複数の固体デバイスの1つまたは複数のアクティブチャネルとして働くように構成される。
【0042】
次いで、犠牲層102がグラフェン層101上に堆積される。犠牲層102は、グラフェン層を汚染から、特に、主に必要とされるレジストに起因してグラフェンチャネルをパターニングするプロセスにおいて生じるポリマー汚染から保護することを意図している。言い換えれば、犠牲層102は、デバイスの製造プロセスの後続の工程中にグラフェン層101が汚染されるのを防止し、その結果、最終デバイスにおけるグラフェンの清浄度は、犠牲層102を堆積する前のまま維持される。犠牲層102は、非ポリマー誘電体材料(すなわち、非汚染誘電体材料)から作製される。誘電体材料は、無機酸化物であることが好ましい。犠牲層102の材料は、グラフェンデバイスの製造の異なる工程に適合するように選択される。犠牲層102に使用される無機酸化物誘電体材料の非限定的な例は、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、GaN、TaN、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2OおよびSrOである。犠牲層102は、ポリマー汚染からグラフェン層を保護するために、ポリマー材料とは異なる材料で作られる。
【0043】
犠牲層102は、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、気相エピタキシー、スパッタリング、または分子線エピタキシー(MBE)などの適切な堆積方法を使用して堆積することができる。堆積技術の適合性は、堆積される材料に依存し得る。例えば、ALDは特定の材料を堆積させるのに適している可能性があるが、他の材料を堆積させるのには適していない可能性がある。当業者は、選択された犠牲材料、好ましくは無機酸化物に適した堆積技術を選択するであろう。犠牲層102の厚さは、数オングストローム(10-10m)(例えば、1Å)~数ミクロン(例えば、100μm)であってもよい。厚さは、異なる態様を考慮して選択される。
【0044】
グラフェンは、1つまたは複数の固体デバイスの1つまたは複数のアクティブチャネルとして働くことが意図されているので、製造プロセスにおける次のステップは、チャネルのレイアウトに合わせてグラフェン層をパターン化することである。
図4~11は、本発明の1つの実施形態による、金属接点をパターニングし、その後金属接点を堆積させることに関与する工程の断面図を示す。グラフェン層は、後続の製造工程で形成されるグラフェンデバイス(例えば、トランジスタ)の1つ以上のチャネル領域などの1つ以上の構造を画定するようにパターニングされる。リソグラフィ工程に続いて、グラフェンチャネルを画定するために実行されるエッチングステップが行われる。グラフェンチャネルは、例えば標準的なリソグラフィ技術に従ってパターニングすることができるグラフェン層上の半導体リソグラフィ技術によって画定される。グラフェン層をパターニングするために使用することができる半導体リソグラフィ技術の非限定的な例は、X線リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、集束イオンビームリソグラフィ、光学投影リソグラフィ、電子及びイオン投影リソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、近接プローブリソグラフィ、及び近接場光リソグラフィである。適用されるグラフェンチャネルのパターンは、CADソフトウェアなどのコンピュータ支援技術を用いて予め設計されている。
【0045】
リソグラフィは、例えば、光または電子を使用して、幾何学的パターンをフォトマスク(図示せず)から基板(この場合、グラフェン層101の上にある犠牲層102)上の感光性化学レジスト(フォトレジストとも呼ばれる)103に転写する。
図3Bは、犠牲層102上に堆積されたフォトレジスト103を示す。フォトレジスト103は、PMMAなどのポリマー材料、または任意の他の従来の樹脂から構成することができる。フォトレジスト103は、グラフェンを保護する犠牲層102によってグラフェン層101を損傷させない。すなわち、まず、グラフェン層101上の犠牲層102上に感光性化学レジスト103を配置した後、フォトマスクのパターンを露光してグラフェン層に転写する。
【0046】
グラフェンチャネルを画定するために実施されたエッチング工程を
図4A、
図4Bおよび
図5に示す。エッチング工程は、多層エッチングマスク(例えばフォトレジスト)103の形成、グラフェン層のエッチング、及び多層エッチングマスク103の除去(例えば剥離)を含む。エッチングマスクを形成するための技術は、当業者に公知であり、したがって、本明細書ではより詳細に説明しない。エッチング工程は、例えば、RIE、DRIE又はプラズマアッシングによるドライエッチング工程であってもよく、ウェットエッチング工程であってもよい。要するに、グラフェン層上に形成されたマスク103を使用してグラフェン層の不要な領域をエッチング除去し、次いでエッチングを使用してグラフェンをパターニングし、それによってチャネルを画定する。エッチング後、マスク103は、従来の適切な技術に従って除去される。これにより、グラフェンチャネルのパターンが転写される。
【0047】
リソグラフィおよびエッチングプロセスは、異なる方法で行うことができる。特定の実施形態では、グラフェンを露出させるための犠牲層102の除去は、
図4Aおよび
図4Bに示す工程にしたがって行うことができる。他の実施形態では、
図5に示すように行うことができる。いずれの場合も、結果は
図6に示され、基板100、パターンチャネルを有するグラフェン層101’、およびグラフェン層101’の上部の犠牲層102’によって形成された積層体を示す。
【0048】
ある実施形態では、
図4A-4Bに描写されるようなリソグラフィおよびエッチングプロセスが、グラフェンチャネルを画定するために使用される。
図4Aに示される第1の工程では、レジスト層103によって覆われていない犠牲層102の領域を溶解し、下にあるグラフェン層101を露出させるために、ウェットエッチング技術が使用される。レジスト層103ではなく犠牲層102を攻撃するウェットエッチングが適用される。
図4Bに示す第2の工程では、ドライエッチング技術を使用して、犠牲層102’およびレジスト層103’によって形成された積層体によって覆われていないグラフェン層101の領域を除去する。
【0049】
次に、レジスト層103’(すなわちフォトレジスト)は除去され、
図6に示されるような積層体が残される。フォトレジスト103’の除去は、溶媒を用いるなどの従来の方法で行われる。フォトレジスト103’を除去するのに適した溶媒(PMMAのような樹脂など)を使用するが、犠牲層102’は除去しない。
【0050】
ある実施形態では、
図5に描写されるような代替リソグラフィおよびエッチングプロセスが、グラフェンチャネルを画定するために使用される。この場合、レジスト層103’で覆われていない犠牲層102及びグラフェン層101の双方の領域を除去するためにドライエッチング技術が用いられる。
図3Bのレジスト層103の一部は、リソグラフィ工程によって予め除去されている。このドライエッチングは、乾燥の余分な工程および乾燥後におそらく別の洗浄工程が必要であるウェットエッチングプロセスよりもはるかにクリーンなプロセスであるため、
図4A~
図4Bのウェットエッチングとドライエッチングの組み合わせよりも好ましい。
【0051】
次に、レジスト層103’(すなわちフォトレジスト)は、既に説明したように従来の方法で除去され、
図6に示すような積層体が残される。グラフェンチャネルはこのように画定される。
【0052】
グラフェンを汚染から保護する犠牲層102’によってグラフェンを損傷または汚染することなくグラフェンチャネルがグラフェン層101’上に画定されると、金属がその後堆積される接点領域を画定するためにリソグラフィプロセスが実行される。このリソグラフィプロセスを
図7A~7Bに示す。金属化(金属堆積)は、従来のリフトオフプロセスを用いて行うことができる。リフトオフプロセスは、マスク材料(例えば、フォトレジストなどのレジスト)を使用して表面にターゲット材料(金属)のパターンを作成する付加技術である。リフトオフは、金属堆積を行う前に従来のフォトリソグラフィを実行し、次いで、例えば、化学エッチングを用いて、適用されたフォトレジストを除去することによって行うことができる。このプロセスによって画定される接触面積を
図7Bに示す。
【0053】
接点領域105は、グラフェン層101’と接触する領域(またはいくつかの領域)であり、導電性材料が堆積され、電気的接触が形成される。これらの接点は、グラフェン層101’を保護する犠牲層102’を介して画定される。例として、グラフェンデバイスがGFETなどのトランジスタであるとき、電気接点はドレイン接点およびソース接点であり、ゲート接点は基板100を通るバック接点であり得る(図示しない)。本発明の実施形態では、リソグラフィプロセスによって画定される接点領域は、
図7Bに示すようにグラフェンチャネル内に画定される接点領域であり、グラフェンチャネルの1つまたは複数の端部(側面)108a、108bには画定されない。本開示の文脈において、グラフェンチャネル内に構築される接点は、接点の下面または基部の全周に沿ってグラフェンによって囲まれる接点(端部接点)であるか、またはグラフェンチャネルの上面上に堆積される接点(上部接点)であるが、グラフェンチャネルの側面には堆積されない接点(この側面は、グラフェンチャネルと基板との間の境界を画定する)である。例えば、グラフェンチャネル内に構築される接点は、グラフェン層を越えた領域、例えば、グラフェン層によって占有されない基板の部分を占有する領域には延在しない。言い換えると、グラフェンチャネル内に画定される接点は、グラフェンチャネルの側面と衝突しない、またはそれを越えない接点である。グラフェンチャネル内の接点は、上部接点(それらがグラフェンチャネルの上面上に堆積されるとき)または端部接点(それらがグラフェンチャネルと接触しているとき、それらは、接点の外周においてのみ接触し、その下面において接触しない;言い換えると、端部接点は、グラフェンチャネルの厚さ(高さ)に沿ってのみグラフェンチャネルと接触している)のいずれかであり得ることに留意されたい。言い換えれば、画定された接点領域は、例えば
図12A~
図12Bに示すように、グラフェンチャネルの側面に接点領域の部分を有しない。接点領域は、グラフェン層102’の断面図を考慮すると、接点領域がグラフェン層102’の側面108a、108bに接触しないか、または重ならない場合、グラフェンチャネル内にある。接点領域(単数または複数)は、電気接触として作用する金属堆積を引き続き受けるように構成される。
【0054】
金属パターニングプロセスは以下の通りである。
図7Aに示されるように、マスク層またはレジスト層(例えば、フォトレジスト)104が、基板100の表面上、および犠牲層102’によって覆われたグラフェン層101’によって形成された積層体上に堆積される。このレジスト104は、グラフェンチャネルの電気接点(例えば、デバイスがGFETである場合にはソース接点及びドレイン接点である)を画定する際に使用される。レジスト104を形成するための技術は、当業者に公知であり、したがって、本明細書ではこれ以上説明しない。従来のフォトレジストは、以前のリソグラフィ工程で使用されたもののように使用することができる。マスク層104の厚さは、50nm(ナノメートル、10
-9m)~500μm(ミクロン、10
-6m)とすることができる。マスク層104には、例えばフォトレジストを露光及び現像することによって反転パターンが形成される。このようにして、堆積される金属を表す幾何学的パターンがフォトマスクから感光性マスク材料104に転写される。次いで、フォトレジスト104は、金属が位置する領域(接点領域105)で除去され、
図7Bに示すように反転パターンを形成する。言い換えれば、マスク層104を貫通する開口部を除去する(例えば、現像する)ことによって、後にターゲット材料(金属)は、最終パターンが作成される領域においてグラフェン層101’の表面に到達することができる。グラフェン層101’は、犠牲層102’によって保護されているため、マスク層104の現像による影響を受けない。
図7Bは、反転パターンが作成され、接点領域105上の開口部が現像された後の残りのマスク層104’を示す。マスク材料に応じて、極紫外線リソグラフィ(EUVL)、電子ビームリソグラフィ(EBL)、コンタクトリソグラフィ、投影リソグラフィ、液浸リソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、またはX線リソグラフィ等の種々の方法を使用することができる。
【0055】
最後に、ウェットエッチングプロセスなどのエッチングプロセスが犠牲層102’に対して実行され、接触するグラフェン領域106を露出させる。参照符号106は、内部に金属が堆積されるグラフェン層101’の領域または部分を指す。犠牲層102’’の残りの部分も示されている。これを
図8に示す。1つまたは複数の金属接点は、上部接点または端部接点であり得るが、それらは常にグラフェンチャネル内の接点である。接点は、金属堆積の前にグラフェンチャネルに原子サイズの溝またはスロットを開けるために追加のエッチングプロセス(例えば、プラズマエッチング)が適用されるときの端部接点(図示せず)である。グラフェン領域106は、金属接点形成のために露出される。その後、金属をグラフェン層101’上に堆積させ、露出したグラフェン領域106上に画定された空洞を充填することができる。
図7Bおよび
図8は、2つの接点領域105、106を示しているが、本発明は、任意の数の接点領域に限定されず、したがって、複数の接点領域を画定する。
【0056】
次いで、金属接点が、
図9~11に示される工程に従って堆積される。したがって、グラフェンデバイスは、例えば、熱蒸発または電子ビーム蒸発などの金属の蒸発による、または電着による、または電気めっきによるなど、上部コンタクトアプローチに従って金属化される。あるいは、エッチングプロセスの前工程を必要とするエッジコンタクトアプローチを使用することができる。好ましくは、グラフェンチャネル101’を損傷させないように、グラフェンチャネル101’上(特に、露出したグラフェン領域106上およびマスク層104’上)に金属層107を適用するために非アグレッシブ堆積技術が使用される。特に、プラズマを用いない成膜技術を用いることが好ましい。堆積プロセスにおいて使用される金属または金属化合物の非限定的な例は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、TaN、シリコン(Si)、ドープシリコン(ドープSi)、ポリシリコン(poly-Si)、コバルトモノシリサイド(CoSi)、白金(Pt)、銅(Cu)銀(Ag)、鉛(Pb)、鉄(Fe)、コバルト鉄(CoFe)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、窒化チタン(TiN)およびこれらの材料または化合物の組み合わせ/合金である。
【0057】
この工程で、金属層107、通常は薄い金属層が、マスク層104’および露出したグラフェン領域106を覆うダイの全領域にわたって堆積される。金属層107の厚さは、0.1~1000nm、例えば1~100nmである。言い換えれば、この層107は、露出したグラフェン領域に加えて、残ったマスク層104’を覆う。その後、マスク層104’(例えば、レジストまたはフォトレジスト)が洗い流され(例えば、溶媒中のフォトレジスト)、マスク層104’の上部の金属がリフトオフされ、下のマスク層104’と共に洗浄される。リフトオフの後、堆積された材料(金属)107’は、グラフェンチャネル101’と直接接触する領域(露出したグラフェン領域106)にのみ残る。これを
図10に示す。要するに、下地層(グラフェン接点領域106)と直接接触した穴にあった金属材料のみが残留する。1つ以上の金属接点107’の厚さは、0.1~1000nmの間、例えば1~100ナノメートルの間の範囲内である。この穏やかな金属の堆積は、プラズマの使用を必要としないのでグラフェンを損傷せず、良好な接触抵抗を保証し、これは、電気的接触の品質およびデバイスへのその電子注入を特徴付けるために使用される物理的要因である。
図10に示す実施形態では、2つの金属構造体107’が作製されている。しかしながら、本発明は、2つの金属構造に限定されない。グラフェンデバイスの最終用途に応じて、単一の金属構造が作製され得るか、または2つを超える金属構造が作製され得る。例えば、2つの金属接点が得られるとき、1つの金属構造は、グラフェンデバイスの電気負極(例えば、図示しない電圧源)への接続を可能にし、別の金属構造は、グラフェンデバイスの電気正極(例えば、図示されていない電圧源)への接続を可能にする。本発明のメタライゼーションプロセスは、例えば、グラフェンデバイスがハイブリッドデバイスである場合に、グラフェンデバイスがソケット、PCBなどへの単一の電気的接続を必要とする場合、代替的に単一の金属構造107’を含むことができる。要するに、金属の堆積は、グラフェンチャネル101’と接触する少なくとも1つの金属経路107’をもたらすものである。
【0058】
任意に、封止(犠牲層102’’)を除去することができる。例えば、グラフェンチャネル101’が露出したままとなるように、最終ウェットエッチングプロセスを行って犠牲層102’’を除去することができる。これを
図11に示す。これは、グラフェンデバイスがバイオセンサとして働く場合などの特定の用途において必要とされ得る。
【0059】
提案された方法は、主にパターニングプロセスにおけるレジストに起因する、典型的にはポリマー汚染の形態で導入されるグラフェンデバイスにおける汚染の主な原因を防止する。これは、グラフェン層およびチャネルが、無機酸化物で作られた非汚染誘電体によって常に保護または不動態化されるため達成される。これにより、金属接点の品質が向上し(例えばコンタクト抵抗が低減し)、キャリア注入や電子移動度が向上する。
【0060】
加えて、金属接点107’(例えば、デバイスがGFETである場合のドレイン接点およびソース接点である)は、
図12Aおよび12Bに示されるように、標準的なコンタクト方法の場合のように、その側面108a、108b(断面図が考慮するときグラフェンの側方領域では、例えば、基板で区切られる)ではなく、グラフェンチャネル内に画定および構築されるため、整合公差が緩和される。なぜなら、グラフェンチャネルの端部は、デバイスの実際の長さまたは幅を変更することなく、必要とされるだけ延長することができるからである。これはまた、グラフェン膜の剥離を引き起こし、接触の品質を低下させる可能性があるフォトレジスト現像剤の大きなエッジ露光を回避する。要するに、この接触形状は、位置ずれの問題およびグラフェンの脱離を防止する。
図12Aおよび
図12Bは、
図8に示す積層体と比較するように示されている(グラフェン領域106が接触するように露出している)。
図12A~12Bの積層体は、(金属堆積を受けるための)接点領域の生成に関して、接点領域109a、109bがグラフェンチャネルの側面に画定される標準的なコンタクト方法に従う。
図12C~
図12Dに示すように、小さなミスアライメント110は、不良なグラフェン/接触オーバーラップ、すなわち非接触デバイスを引き起こす。さらに、
図12E~
図12Fに示すように、これは、フォトレジスト現像剤にさらされるより大きな領域を示し、剥離および不良グラフェン/接触重複領域111、すなわち、非接触グラフェンデバイスを引き起こす。
【0061】
対照的に、金属接点がグラフェンチャネル内に画定され、その端部108a、108bには画定されない提案されたコンタクト方法(
図13A~
図13F)は、これらの問題を克服する。チャネル長は、
図13C~13Dに示すように、チャネル長もグラフェン/コンタクトオーバーラップ面積も犠牲にすることなく、アライメントの必要性と同程度に増大させることができる。したがって、接触は常に良好である。さらに、
図13E~13Fに示すように、フォトレジスト現像剤に曝されるエッジおよび表面が最小限に抑えられ、したがって剥離が最小限に抑えられ、良好なグラフェン/接触重複領域が得られる。したがって、接触は常に良好である。
【0062】
本文では、「備える(comprises)」という用語及びその派生語(「備える(comprising)」など)は、排他的な意味で理解されるべきではなく、すなわち、これらの用語は、説明され定義されるものがさらなる要素、ステップなどを含み得る可能性を排除するものとして解釈されるべきではない。
【0063】
本発明の文脈において、用語「ほぼ」およびそのファミリーの用語(例えば、「およそ」など)は、前述の用語に付随する値に非常に近い値を示すものとして理解されるべきである。すなわち、当業者は、示された値からのそのような逸脱が、測定の不正確さ、機械公差などに起因して不可避であることを理解するであろうため、正確な値からの妥当な限界内の逸脱が容認されるべきである。同じことが、「約」および「おおよそ」および「実質的に」という用語にも当てはまる。
【0064】
本発明は、明らかに、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に定義される本発明の一般的な範囲内で、(例えば、材料、寸法、構成要素、構成などの選択に関して)任意の当業者によって考慮され得る任意の変形形態も包含する。
【0065】
[発明の構成]
[構成1]
グラフェンベースの固体デバイスを製造する方法であって、
基板(100)上にグラフェン層(101)を配置し、
グラフェン層(101)上に犠牲層(102)を堆積させるステップであって、犠牲層(102)は、非ポリマー誘電体材料から作製され、
少なくとも1つのチャネル領域を画定することによってグラフェン層(101)をパターニングすることであって、パターニングは、リソグラフィプロセスを適用し、続いてレジスト層(103)を用いたエッチングプロセスを適用することによって行われ、
パターニングされたグラフェン層(101’)を得て、
グラフェン層(101’)は、犠牲層(102)によってレジスト層(103)からの汚染から保護され、
グラフェン層(101’)上に、堆積される少なくとも1つの金属接点の形状をパターニングし、
少なくとも1つの金属接点(107’)をグラフェン層(101’)上に堆積させる方法である。
[構成2]
基板(100)は、ガラス、石英、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素、酸化ケイ素、ガリウムヒ素、SiO2/Si、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2OおよびSrOのうちの少なくとも1つを含む材料から作製されることを特徴とする構成1に記載の方法。
[構成3]
基板100は2層で構成されており、
当該層のうちの1つの層は、シリコン、酸化シリコン、ガラス、石英、およびポリマー材料のうちの1つから作製され、
当該層のうち他方の層は、ガラス、石英、Si、SiO2/Si、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2O、SrOのいずれかからなることを特徴とする構成1または2に記載の方法。
[構成4]
基板(100)上に少なくとも1つのグラフェン層(101)を配置する前に、基板(100)を洗浄して不純物を除去し、親水性を高めることを特徴とする構成1~3のいずれか1項に記載の方法。
[構成5]
少なくとも1つのグラフェン層(101)は、基板(100)上に堆積、転写または成長されることを特徴とする構成1~4のいずれか1項に記載の方法。
[構成6]
原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVP)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、気相エピタキシー、スパッタリングまたは分子線エピタキシー(MBE)の少なくとも1つを使用して犠牲層(102)が堆積されることを特徴とする構成1~5のいずれか1項に記載の方法。
[構成7]
犠牲層(102)の厚さは、1Å~100μmであるように選択されることを特徴とする構成1~6のいずれか1項に記載の方法。
[構成8]
犠牲層(102)が作製される非ポリマー誘電体材料は、無機酸化物であることを特徴とする構成1~7のいずれか1項に記載の方法。
[構成9]
無機酸化物は、SiO2、Al2O3、ZrO2、HfO2、HfSiO4、Ta2O5、La2O3、LaAlO3、Nb2O5、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaCu3Ti4O12、GaN、TaN、Si3N4、ZrSiO4、Y2O3、CaO、MgO、BaO、WO3、MoO3、Sc2O3、Li2OおよびSrOから選択されることを特徴とする構成8に記載の方法。
[構成10]
少なくとも1つのグラフェン層(101’)のパターニングは、
レジスト層(103)によって覆われていない犠牲層(102)の領域を溶解するためにウェットエッチング技術を適用し、下にあるグラフェン層(101)を露出させ、
ドライエッチング技術を適用して、犠牲層(102)およびレジスト層(103)によって形成された積層体によって覆われていないグラフェン層(101)の領域を除去することによって行われることを特徴とする構成1~9のいずれか1項に記載の方法。
。
[構成11]
少なくとも1つのグラフェンチャネル(101)のパターニングは、
レジスト層(103)によって覆われていない下の犠牲層(102)およびグラフェン層(101)の領域の両方を除去するためにドライエッチング技術を適用することを特徴とする構成1~9のいずれか1項に記載の方法。
[構成12]
堆積される少なくとも1つの金属接点の幾何学的形状のグラフェン層(101)上のパターニングは、
グラフェン層(101’)上にマスク層を堆積し、
金属が堆積される選択領域のマスク層を除去し、保護される領域にマスク層を残すことによって、マスク層に反転パターンを作成するように行われることを特徴とする構成1~11のいずれか1項に記載の方法。
[構成13]
少なくとも1つの金属接点(107’)は、
金属層(107)を塗布し、
残りのマスク層(104)をリフトオフすることで、残りのマスク層(104’)上に堆積された金属を除去し、
少なくとも1つの金属接点(107’)は、金属がグラフェン層(101)と直接接触する領域のみに残るように堆積されることを特徴とする構成1~12のいずれか1項に記載の方法。
[構成14]
堆積される少なくとも1つの金属接点の形状は、グラフェンチャネル内にパターニングされ、グラフェンチャネルの側面(108a、108b)から分離されることを特徴とする構成1~13のいずれか1項に記載の方法。
[構成15]
グラフェンベースの固体デバイスであって、
基板(100)と、
基板(100)上に配置されたグラフェン層(101)であって、少なくとも1つのグラフェンチャネルを画定するグラフェン層(101)と、
グラフェンチャネルと接触する少なくとも1つの金属接点(107’)と、
を含み、
グラフェン層(101)は、非ポリマー誘電体材料で作られた犠牲層(102)によって保護されていることを特徴とする固体デバイス。