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特開2024-91530車両のワンウェイクラッチ、および、車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091530
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】車両のワンウェイクラッチ、および、車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 9/00 20060101AFI20240627BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20240627BHJP
【FI】
B62M9/00 B
B62M9/00 A
B62M6/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211773
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】10 2022 214 307.8
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーマン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ジークムント
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高いロバスト性、低摩耗かつ低騒音で作動するワンウェイクラッチを提供する。
【解決手段】ワンウェイクラッチは、クランクシャフトと、第1の歯列を有する被駆動軸と、第2の歯列を有するフリーホイールエレメントと、摩擦エレメントと、を含有しており、第1の歯列および前記第2の歯列は、互いに入り込んで噛み合う際に被駆動軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめる。フリーホイールエレメントは軸方向でしゅう動可能にクランクシャフトに配置されており、フリーホイールエレメントはクランクシャフトに対して相対的に周方向で回動不能に配置されており、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとは、つる巻線機構によって互いに結合されており、つる巻線機構は、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的な回動時に互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)、特に二輪車のワンウェイクラッチにおいて、
クランクシャフト(2)と、
第1の歯列(11)を有する被駆動軸(3)と、
第2の歯列(12)を有するフリーホイールエレメント(4)と、
摩擦エレメント(5)と、
を含有しており、
前記第1の歯列(11)および前記第2の歯列(12)は、互いに入り込んで噛み合う際に前記被駆動軸(3)と前記フリーホイールエレメント(4)との間でトルク伝達を生ぜしめるように、設計されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は軸方向でしゅう動可能に前記クランクシャフト(2)に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は前記クランクシャフト(2)に対して相対的に周方向で回動不能に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)とは、つる巻線機構(6)によって互いに結合されており、該つる巻線機構(6)は、前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的な回動時に前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめるように設計されている、
ワンウェイクラッチ。
【請求項2】
前記つる巻線機構(6)がねじ山を含有している、
請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項3】
前記被駆動軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間に予め定められた摩擦力結合が周方向で形成されている、
請求項1または2記載のワンウェイクラッチ。
【請求項4】
前記被駆動軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が周方向で摩擦力を含有している、
請求項3記載のワンウェイクラッチ。
【請求項5】
前記摩擦力が少なくとも1つのねじによっておよび/または摩擦リングによって生ぜしめられる、
請求項4記載のワンウェイクラッチ。
【請求項6】
前記被駆動軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が磁力を含有している、
請求項1から5までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項7】
前記摩擦エレメント(5)に対して相対的な前記フリーホイールエレメント(4)の並進的なしゅう動を制限するストッパ(7)をさらに含有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項8】
前記ストッパ(7)が前記摩擦エレメント(5)に形成されている、
請求項7記載のワンウェイクラッチ。
【請求項9】
前記ストッパ(7)は、前記フリーホイールエレメント(4)が前記ストッパ(7)に当接すると前記歯列(11,12)が互いに完全に解除されるように構成されている、
請求項7または8記載のワンウェイクラッチ。
【請求項10】
前記つる巻線機構(6)は、フリーホイール方向での相対的な回動時に相応の相対的な並進的なしゅう動が前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを解除し、ロック方向での相対的な回動時に前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを接続するように、構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項11】
前記摩擦エレメント(5)が、前記被駆動軸(3)に軸方向でしゅう動不能に固定されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項12】
前記フリーホイールエレメント(4)が、半径方向歯列(8)によって軸方向でしゅう動可能、かつ周方向で回動不能に前記クランクシャフト(2)に固定されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項13】
前記フリーホイールエレメント(4)が2つの部分より構成されていて、前記第2の歯列(12)を備えた歯付きディスク(41)と、前記つる巻線機構(6)の一部を備えた固定リング(42)とを有しており、前記歯付きディスク(41)と前記固定リング(42)とが互いに相対回動不能に結合されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項14】
前記被駆動軸(3)が中空軸として構成されていて、前記クランクシャフト(2)が前記被駆動軸(3)内で回動可能に軸受けされている、
請求項1から13までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項15】
車両、特に電動自転車において、請求項1から14までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ(1)を含有する、
車両、特に電動自転車。
【請求項16】
前記被駆動軸(3)に結合された駆動ユニット(102)と、前記クランクシャフト(2)に結合されたクランク機構(104)とを含有する、
請求項15記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のワンウェイクラッチ並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば電動自転車において従来では、前方に向けられた回動方向に関連して駆動された、つまり前方に向けられた走行方向で車両の駆動を生ぜしめる回動方向で駆動された被駆動軸がモータ伝動装置のアウトプットよりも早く回動すると、駆動された被駆動軸と駆動モータに接続されたモータ伝動装置との間の接続を遮断するように設計されたワンウェイクラッチが公知である。この場合、歯列を介してワンウェイクラッチの操作が頻繁に行われる。例えばこのような歯列をばね付勢により接続することが公知であって、この場合、フリーホイール方向でのトルク伝達が、例えば鋸歯形歯列の互いに滑動する複数の歯によって解消される。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
これに対して、請求項1の特徴を有する本発明によるワンウェイクラッチは、高いロバスト性の他に特に低摩耗かつ低騒音で作動する、特に好適な構造によって優れている。これは本発明によれば、クランクシャフト、被駆動軸、フリーホイールエレメントおよび摩擦エレメントを含有する車両、好適には二輪車、特に好適には電動自転車のワンウェイクラッチによって得られる。特に、クランクシャフトおよび被駆動軸は、互いに平行に、特に好適には互いに同軸的に配置されている。この場合、被駆動軸は、第1の歯列、特に端面歯列を有していて、フリーホイールエレメントは第2の歯列、特に端面歯列を有している。第1の歯列および第2の歯列は、互いに入り込んで噛み合う際に被駆動軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめるように設計されている。本発明の枠内で、複数の歯若しくは複数のリングギヤの代わりに、噛み合い時に被駆動軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめる、別の幾何形状の形状締結エレメントを使用してもよい。「歯列」とは、本発明の枠内で、噛み合い時に被駆動軸とフリーホイールエレメントとの間でトルク伝達を生ぜしめる形状締結エレメントであると解釈されてよい。フリーホイールエレメントは、軸方向でしゅう動可能にクランクシャフトに配置されている。さらに、フリーホイールエレメントは、クランクシャフトに対して相対的に周方向で回動不能にクランクシャフトに配置されている。フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとは、つる巻線機構によって互いに連結されている。この場合、つる巻線機構は、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的な回動時に、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめるように設計されている。
【0004】
言い換えれば、ワンウェイクラッチ機能は、摩擦係合によって操作可能なつる巻線機構を介して歯列の接続および解除が行われることによって、提供される。つまり、ワンウェイクラッチの特別な構成によって、クランクシャフトと被駆動軸との相対的な回動が、摩擦エレメントにおける摩擦力結合を介して摩擦エレメントとフリーホイールエレメントとの相対的な回動に変換される。つる巻線機構は、歯の噛み合いを解除または接続するために、フリーホイールエレメントが軸方向でクランクシャフトに向かってしゅう動せしめられ、それによって特に被駆動軸の第1の歯列から離れる方向にまたはこの第1の歯列に向かってしゅう動させられるように、作用する。
【0005】
つる巻線機構は多様に構成されていてよい。例えば、互いに入り込んで噛み合うつる巻線状のエレメントが、フリーホイールエレメントおよび/または摩擦エレメントに設けられていてよい。さらに、相対的な回動を軸に沿った相対的な並進的なしゅう動に変えるために構成された、例えばリンクガイドに類似した、互いに入り込んで噛み合う任意の別のエレメントが摩擦エレメントおよびフリーホイールエレメントに配置されていてよい。
【0006】
この場合、ワンウェイクラッチは、特に簡単かつ安価な構造で、しかも摩耗および騒音発生に関連して有利な特性を有するワンウェイクラッチの特に確実かつロバストな機能を可能にする、という利点を提供する。詳細において、例えば機能に関与するすべてのエレメントは機械的に特にロバストに構成されていて、ワンウェイクラッチのすべての運動方向若しくは操作方向で直接に機械的に連結されていることによって、故障が確実に避けられるように構成されていることができる。しかも、例えばつる巻線機構によって歯列の噛み合いの接続若しくは解除が特に的確にかつ特に強制的に行われるので、例えば長時間に亘っての歯列の不都合な滑動は避けられ、それによって一方では騒音が避けられ、他方では少ない摩耗が保証され得る。しかも、歯の噛み合いは、特にロバストであって、確実に噛み合いガイドされ得る。
【0007】
従属請求項は、本発明の好適な実施態様を内容とする。
【0008】
好適には、つる巻線機構はねじ山を含有している。つまり、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの間に、これらのエレメントの相対回動時に相応の並進的なしゅう動の機能を相互に生ぜしめるねじ山が形成されている。これによって、特に簡単かつ安価な形式でしかも特に確実に、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの間で連結の所望の運動学が実行され得る。ねじ山は、様々な形式で構成され、例えば特にメートル法による標準ねじ山として、または任意のピッチ等を有する任意のねじ山として構成されてよい。
【0009】
1実施例では、被駆動軸と摩擦エレメントとの間に予め定められた摩擦力結合が被駆動軸の周方向で形成されている。これによってワンウェイクラッチのコンパクトで簡単な構造形式が可能となる。
【0010】
特に好適には、被駆動軸と摩擦エレメントとの間の摩擦力結合が、特に被駆動軸に関連して周方向で摩擦力を含有している。つまり、摩擦力は、被駆動軸に関連して接線方向に向けられている。この場合特に、摩擦エレメントは、少なくとも部分的に中空軸として構成されていてよく、この中空軸を貫通して被駆動軸が少なくとも部分的に突き出している。例えば、摩擦力は、摩擦エレメントと被駆動軸との間の半径方向の付着力によって生ぜしめられてよい。これによって、つる巻線機構の操作可能性は、摩擦力を介して簡単な形式で適切に調整され得る。
【0011】
好適な形式で、摩擦力は少なくとも1つのねじによっておよび/または摩擦リングによって生ぜしめられる。例えば、少なくとも1つのねじは、摩擦エレメント内にねじ込まれていてよく、半径方向で被駆動軸を予め定められたねじ力で押し付けることができる。これにより、ねじ力はおよびひいては摩擦力は、特に簡単な形式で生ぜしめられ調整され得る。特に好適には、被駆動軸の周囲に分配配置された複数のねじが設けられている。摩擦リングが、例えば追加的なエレメントとして摩擦エレメントと被駆動軸との間に配置されていてよい。この場合、例えば摩擦力は、摩擦エレメントと摩擦リングとの間および/または被駆動軸と摩擦リングとの間の表面粗さおよび/または嵌め合いに依存して構成されていてよく、これによって同様に簡単かつ安価な形態を可能にする。
【0012】
さらに好適には、被駆動軸と摩擦エレメントとの間の摩擦力結合が磁力を含有している。つまり、摩擦エレメントと被駆動軸との間に、予め定められた摩擦力結合を周方向で生ぜしめるような磁力が設けられている。この場合、例えば、永久磁石が摩擦エレメントおよび/または被駆動軸に配置されていてよい。これによって、摩擦力結合を同様に簡単な形式で、特に適切に形成することができる。
【0013】
特に好適には、ワンウェイクラッチが、摩擦エレメントに対して相対的なフリーホイールエレメントの並進的なしゅう動を制限するストッパをさらに含有する。ストッパは特に、第1の歯列から離反する方向のフリーホイールエレメントのしゅう動を制限するように構成されている。この場合、好適な形式で、フリーホイールエレメントがストッパに当接して被駆動軸とクランクシャフトとがさらに相対回動すると、被駆動軸と摩擦エレメントとの間の摩擦力結合が克服されるので、被駆動軸は摩擦エレメントに対して相対的に回動することができる。ストッパによって、特にコンパクトで構造的に精確に規定されたワンウェイクラッチの形態を得ることができる。
【0014】
好適には、ストッパは摩擦エレメントに形成されている。特に、摩擦エレメントが少なくとも部分的に中空軸として構成されていて、この中空軸内にフリーホイールエレメントが配置されていれば、僅かな構成部分を有する特に簡単かつ安価な構造が可能である。例えばストッパは、摩擦エレメントの内周面に配置された止めリングによって形成されていてよい。
【0015】
好適な形式で、ストッパは、フリーホイールエレメントがストッパに当接すると、2つの歯列が互いに完全に解除されるように構成されている。つまり、ストッパは、このストッパに到達したときに2つの歯列がもはや接触しないように、摩擦エレメントに対するフリーホイールエレメントの、このような形式の相対的な並進的しゅう動を可能にする。これによって、ワンウェイクラッチの特に摩耗の少ない運転形式が保証され得る。
【0016】
さらに好適には、つる巻線機構は、フリーホイールエレメントと摩擦エレメントとのフリーホイール方向での相対的な回動時に相対的な並進的なしゅう動により2つの歯列の歯の噛み合いが解除されるように構成されている。さらにこのつる巻線機構は、ロック方向での相対的な回動時にフリーホイールエレメントと摩擦エレメントとの相対的な並進的なしゅう動によって歯列の歯の噛み合いが接続されるように構成されている。つまり、フリーホイール方向での回動時にクランクシャフトと被駆動軸との間のトルク伝達が解消され、逆のロック方向での回動時にトルク伝達が可能となる。
【0017】
好適には、摩擦エレメントは被駆動軸に軸方向でしゅう動不能に固定されている。この場合、特に被駆動軸の部分領域と摩擦エレメントの部分領域とが軸方向で係合し合っている。この場合、好適には、摩擦エレメントは両側で軸方向にしゅう動不能に被駆動軸に固定されている。
【0018】
好適な形式で、フリーホイールエレメントが、半径方向歯列によって軸方向でしゅう動可能であり、かつ周方向で回動不能にクランクシャフトに固定されている。半径方向歯列として、例えばキー溝結合がフリーホイールエレメントとクランクシャフトとの間に形成されていてよい。これにより、機能が保証され、フリーホイールエレメントとクランクシャフトとの間の確実なトルク伝達が簡単な形式で保証され得る。
【0019】
好適には、フリーホイールエレメントが2つの部分より構成されていて、歯付きディスクと固定リングとを有している。歯付きディスクは第2の歯列を有している。固定リングは、特に摩擦エレメントと噛み合うつる巻線機構の一部を備えている。この場合、歯付きディスクと固定リングとは、互いに相対回動不能に結合されている。特に、歯付きディスクと固定リングとは機械的に堅固に互いに固定されている。2つの部分より成る形態によって、簡単な組み立てが可能となる。さらに、例えば異なる材料によって、フリーホイールエレメントのそれぞれの領域をそれぞれの要求に的確に適合させることができる。
【0020】
選択的に好適には、フリーホイールエレメントは、第2の歯列とつる巻線機構の部分とを有する一体的な構成部分として構成されていてよい。
【0021】
好適な形式で、歯列は鋸歯形歯列またはハース歯列(Hirth-Verzahnungen)として構成されている。鋸歯形歯列として、軸方向に対して相対的に様々な傾斜の歯面を有する歯列が挙げられる。この場合、各歯の2つの歯面は、例えば軸方向に対して平行に配置されていてよい。ハース歯列として、左右対称の歯を有する歯列が挙げられる。
【0022】
特に好適には、被駆動軸が中空軸として構成されている。この場合、クランクシャフトは被駆動軸内に回動可能に軸受けされている。好適な形式で、回動可能に軸受けするために、少なくとも1つの軸受がクランクシャフトと被駆動軸との間に設けられている。例えば、軸受は、半径方向で特にコンパクトな構造形式のためにニードルベアリングとして構成されていてよい。
【0023】
さらに、本発明は、以上説明したワンウェイクラッチを含有する、車両、特に二輪車、好適には電動自転車を提供する。
【0024】
好適には、車両は、被駆動軸に特にトルクを伝達するように結合された駆動ユニットと、特にトルクを伝達するようにクランクシャフトに結合されたクランク機構とを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の好適な実施例によるワンウェイクラッチを備えた車両の簡略化された概略図である。
図2図1に示した車両の駆動部の詳細を示す断面図である。
図3図2に示された駆動部の斜視図である。
図4図1のワンウェイクラッチの解除された状態の断面図である。
図5図1のワンウェイクラッチの接続された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明を、図面に示した実施例を用いて説明する。図面には、機能的に同じ構成部分にはそれぞれ同じ符号が付けられている。
【0027】
図1は、本発明の好適な実施例によるワンウェイクラッチ1を含有する車両100の簡略化された概略図を示す。車両100は、筋力および/またはモータ動力で駆動可能な車両100、具体的には電動自転車である。
【0028】
車両100は駆動ユニット102を含有しており、この駆動ユニット102はモータを含有していて、このモータは特に電動モータである。このモータに、車両100の電気エネルギアキュムレータ109によって電気エネルギが供給され得る。
【0029】
駆動ユニット102は、電動自転車100のボトムブラケットの領域内に配置されている。モータを用いて生ぜしめられたモータトルクによって、筋力によって生ぜしめられた電動自転車100の運転者の踏力は、電動式にアシストされ得る。
【0030】
この場合、運転者の筋力は、クランクを含有するクランク機構104を介してクランクシャフト2に加えられる。クランクシャフト2は、クランク軸線15に沿って延在していて、駆動ユニット102の被駆動軸3に対して同軸的に配置されている(図2参照)。
【0031】
駆動ユニット102は、生ぜしめられたモータトルクによって被駆動軸3を駆動することができる。被駆動軸3は中空軸として構成されていて、この中空軸を貫通してクランクシャフト2が完全に突き出している。クランクシャフト2は被駆動軸3内に回動可能に配置されている。
【0032】
クランクシャフト2と被駆動軸3との間にワンウェイクラッチ1が設けられており、このワンウェイクラッチ1は、クランクシャフト2と被駆動軸3との相対的な回動方向に応じて、クランクシャフト2と被駆動軸3との間でトルク伝達を行うかまたは中断することができる。
【0033】
ワンウェイクラッチ1の精確な機能形式および構成を、以下に図2乃至図5を参照して詳細に説明する。
【0034】
ワンウェイクラッチ1は、フリーホイールエレメント4と摩擦エレメント5とを含有しており、摩擦エレメント5は、クランクシャフト2および被駆動軸3と概ね同軸的に配置されている。
【0035】
フリーホイールエレメント4はディスク状に構成されていて、クランクシャフト2の外周範囲に直接配置されている。例えばキー溝結合の形で形成されていてよい半径方向歯列8によって、フリーホイールエレメント4は軸方向でしゅう動可能、かつ周方向で回動不能にクランクシャフト2上に配置されている。
【0036】
フリーホイールエレメント4は軸方向の端面側に第2の端面歯列12を含有している。被駆動軸3、特に被駆動軸3の半径方向外方に突き出すフランジに、第1の端面歯列11が形成されている。第1の端面歯列11および第2の端面歯列12は、互いに入り込んで噛み合う際にトルク伝達を生ぜしめるように、設計されている。
【0037】
つまり、2つの端面歯列11,12が互いに入り込んで噛み合うまで、フリーホイールエレメント4が矢印Aによって示された方向で第1の端面歯列11に向かって右方向にしゅう動せしめられると、被駆動軸3とフリーホイールエレメント4との間でトルク伝達が可能となる。したがって同様に、フリーホイールエレメント4とクランクシャフト2との間の半径方向歯列8によって、クランクシャフト2と被駆動軸2との間のトルク伝達がフリーホイールエレメント4を介して可能となる。このような2つの端面歯列11,12が互いに入り込んで噛み合った状態は、歯列の接続状態と呼ばれる。この接続状態は、図5に示されている。
【0038】
フリーホイールエレメント4が、2つの端面歯列11,12がもはや互いに入り込んで噛み合わなくなるまで、矢印Bで示された方向で左に第1の端面歯列11から離れる方向にしゅう動せしめられると、被駆動軸3とフリーホイールエレメント4との間のトルク伝達およびひいてはクランクシャフト2と被駆動軸3との間のトルク伝達が中断される。このような2つの端面歯列11,12が互いに噛み合っていない状態は、歯列の解除状態と呼ばれる。解除された状態は図4に示されている。
【0039】
したがって、歯列の接続および解除は、フリーホイールエレメント4が、被駆動軸3に対して相対的に並びに特にクランクシャフト2に対しても相対的に、軸方向に沿って並進的にしゅう動せしめられることによって生ぜしめられる。
【0040】
この場合、このようなフリーホイールエレメント4の並進的なしゅう動は、クランクシャフト2と被駆動軸3との相対的な回動に依存して所定の回動方向で、以下に記載されているように摩擦エレメント5によって生ぜしめられる。
【0041】
摩擦エレメント5は、中空軸としてまたは概ねスリーブ状に構成されていて、被駆動軸3およびフリーホイールエレメント4の半径方向外側に配置されている。この場合、摩擦エレメント5は軸方向でしゅう動不能に被駆動軸3に固定されており、摩擦エレメント5および被駆動軸3の相対的な回動は可能である。しかしながら、摩擦力結合が克服されないときに摩擦エレメント5が被駆動軸3と一緒に回動するように作用する、周方向での予め定められた摩擦係合としての摩擦力結合が、摩擦エレメント5と被駆動軸3との間に形成されている。
【0042】
摩擦エレメント5は、被駆動軸3の周囲を巡って均一に配置された複数のねじ51を有しており、これらのねじ51は、摩擦エレメント5のスリーブ状の基体を貫通して突き出ていて、第1の端面歯列11が存在する被駆動軸3のフランジを半径方向で押圧する。ねじトルクを相応に調整することによって、摩擦力結合の半径方向力およびひいては摩擦力が調整され得る。
【0043】
被駆動軸3における摩擦エレメント5の軸方向でしゅう動不能な固定は、被駆動軸3のフランジに設けられた半径方向で外方に突き出す段部33が、軸方向でねじ51および摩擦エレメント5の半径方向内方へ突き出す段部53と係合することによって、行われる。これによりさらに、ねじ51を用いて、ワンウェイクラッチ1の特に簡単な組み立てが可能となる。
【0044】
ワンウェイクラッチ1はさらに、フリーホイールエレメント4と摩擦エレメント5との間に形成されたつる巻線機構6を含有している。つる巻線機構6は、図示の実施例では、摩擦エレメント5の半径方向内側とフリーホイールエレメント4の半径方向外側との間でねじ山を含有している。この場合、つる巻線機構6のねじ山は、ロック方向Cでのクランクシャフト2の相対回動時に、歯列が接続するように、つまりフリーホイールエレメント4が矢印Aの方向にしゅう動することによって2つの端面歯列11,12が噛み合うように作用するように、構成されている(図2および図3参照)。同様に、クランクシャフト2が逆のフリーホイール方向Dで相対回動すると、歯列の解除、つまりフリーホイールエレメント4が矢印Bの方向でしゅう動することによって2つの端面歯列11,12の歯の噛み合いの解除が生ぜしめられる。
【0045】
さらにワンウェイクラッチ1はストッパ7を含有しており、このストッパ7は、摩擦エレメント5に対して相対的なフリーホイールエレメント4の軸方向のしゅう動を制限する。このために、ストッパ7は止めリングを含有しており、この止めリングは、スリーブ状の摩擦エレメント5の半径方向内側の溝内に配置されている。
【0046】
フリーホイールエレメント4が、ストッパ7に達する(図4に示されているように)程度に大きくしゅう動せしめられて、クランクシャフト2がフリーホイール方向Dでさらに相対回動すると、摩擦エレメント5と被駆動軸3との間の摩擦力結合が克服され、それによって摩擦エレメント5と被駆動軸3とは互いに相対的に回動する。
【0047】
図示の実施例では、フリーホイールエレメント4が2つの部分から構成されていて、第2の端面歯列12が形成されている歯付きディスク41と、つる巻線機構6のねじ山の一部を備えた固定リング42とを含有している。歯付きディスク41と固定リング42とは、堅固な結合によって相対回動不能かつしゅう動不能に互いに固定されている。
【符号の説明】
【0048】
1 ワンウェイクラッチ
2 クランクシャフト
3 被駆動軸
4 フリーホイールエレメント
5 摩擦エレメント
6 つる巻線機構
7 ストッパ
8 半径方向歯列
11 第1の端面歯列、第1の歯列
12 第2の端面歯列、第2の歯列
15 クランク軸線
41 歯付きディスク
42 固定リング
51 ねじ
53 段部
100 車両、電動自転車
102 駆動ユニット
104 クランク機構
109 電気エネルギアキュムレータ
A,B 矢印
C ロック方向
D フリーホイール方向
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
つまり、2つの端面歯列11,12が互いに入り込んで噛み合うまで、フリーホイールエレメント4が矢印Aによって示された方向で第1の端面歯列11に向かって右方向にしゅう動せしめられると、被駆動軸3とフリーホイールエレメント4との間でトルク伝達が可能となる。したがって同様に、フリーホイールエレメント4とクランクシャフト2との間の半径方向歯列8によって、クランクシャフト2と被駆動軸との間のトルク伝達がフリーホイールエレメント4を介して可能となる。このような2つの端面歯列11,12が互いに入り込んで噛み合った状態は、歯列の接続状態と呼ばれる。この接続状態は、図5に示されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)、特に二輪車のワンウェイクラッチにおいて、
クランクシャフト(2)と、
第1の歯列(11)を有する被駆動軸(3)と、
第2の歯列(12)を有するフリーホイールエレメント(4)と、
摩擦エレメント(5)と、
を含有しており、
前記第1の歯列(11)および前記第2の歯列(12)は、互いに入り込んで噛み合う際に前記被駆動軸(3)と前記フリーホイールエレメント(4)との間でトルク伝達を生ぜしめるように、設計されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は軸方向でしゅう動可能に前記クランクシャフト(2)に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)は前記クランクシャフト(2)に対して相対的に周方向で回動不能に配置されており、
前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)とは、つる巻線機構(6)によって互いに結合されており、該つる巻線機構(6)は、前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的な回動時に前記フリーホイールエレメント(4)と前記摩擦エレメント(5)との互いに相対的に並進的なしゅう動を生ぜしめるように設計されている、
ワンウェイクラッチ。
【請求項2】
前記つる巻線機構(6)がねじ山を含有している、
請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項3】
前記被駆動軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間に予め定められた摩擦力結合が周方向で形成されている、
請求項1記載のワンウェイクラッチ。
【請求項4】
前記被駆動軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が周方向で摩擦力を含有している、
請求項3記載のワンウェイクラッチ。
【請求項5】
前記摩擦力が少なくとも1つのねじによっておよび/または摩擦リングによって生ぜしめられる、
請求項4記載のワンウェイクラッチ。
【請求項6】
前記被駆動軸(3)と前記摩擦エレメント(5)との間の摩擦力結合が磁力を含有している、
請求項1から5までのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項7】
前記摩擦エレメント(5)に対して相対的な前記フリーホイールエレメント(4)の並進的なしゅう動を制限するストッパ(7)をさらに含有する、
請求項1からまでのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項8】
前記ストッパ(7)が前記摩擦エレメント(5)に形成されている、
請求項7記載のワンウェイクラッチ。
【請求項9】
前記ストッパ(7)は、前記フリーホイールエレメント(4)が前記ストッパ(7)に当接すると前記歯列(11,12)が互いに完全に解除されるように構成されている、
請求項7記載のワンウェイクラッチ。
【請求項10】
前記つる巻線機構(6)は、フリーホイール方向での相対的な回動時に相応の相対的な並進的なしゅう動が前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを解除し、ロック方向での相対的な回動時に前記歯列(11,12)の歯の噛み合いを接続するように、構成されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項11】
前記摩擦エレメント(5)が、前記被駆動軸(3)に軸方向でしゅう動不能に固定されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項12】
前記フリーホイールエレメント(4)が、半径方向歯列(8)によって軸方向でしゅう動可能、かつ周方向で回動不能に前記クランクシャフト(2)に固定されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項13】
前記フリーホイールエレメント(4)が2つの部分より構成されていて、前記第2の歯列(12)を備えた歯付きディスク(41)と、前記つる巻線機構(6)の一部を備えた固定リング(42)とを有しており、前記歯付きディスク(41)と前記固定リング(42)とが互いに相対回動不能に結合されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項14】
前記被駆動軸(3)が中空軸として構成されていて、前記クランクシャフト(2)が前記被駆動軸(3)内で回動可能に軸受けされている、
請求項1からまでのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ。
【請求項15】
車両、特に電動自転車において、請求項1からまでのいずれか1項記載のワンウェイクラッチ(1)を含有する、
車両、特に電動自転車。
【請求項16】
前記被駆動軸(3)に結合された駆動ユニット(102)と、前記クランクシャフト(2)に結合されたクランク機構(104)とを含有する、
請求項15記載の車両。
【外国語明細書】