IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパスメディカルシステムズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091534
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212086
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】63/476,800
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/487,426
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】本椙 俊介
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕昌
(72)【発明者】
【氏名】松岡 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】小澤 和起
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK06
4C160KK13
4C160KK14
4C160KK36
4C160KK57
(57)【要約】
【課題】切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易である内視鏡用処置具を提供する。
【解決手段】内視鏡用処置具は、先端と基端を有し、該先端と該基端との間に延びるシースと、前記シースの先端部に設けられた電極と、前記電極から径方向に離間した位置で進退自在に設けられたロッドと、を備え、少なくとも前記電極と前記ロッドを前記シースから突出した状態において、前記電極と前記ロッドの少なくとも一部と間の少なくとも一部に、流体が通る流路の一部が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端と基端を有し、該先端と該基端との間に延びるシースと、
前記シースの先端部に設けられた電極と、
前記電極から径方向に離間した位置で進退自在に設けられたロッドと、
を備え、
少なくとも前記電極と前記ロッドを前記シースから突出した状態において、前記電極と前記ロッドと間の少なくとも一部に、流体が通る流路の一部が形成されている、
内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記ロッドは、中実に形成されている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記ロッドの外径は、前記電極のうち前記シースの先端から露出した部分の最小外径よりも小さい、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記電極は、前記シースの先端に形成された第一開口を通り、
前記ロッドは、前記シースの先端であって前記第一開口から前記径方向に離間した位置に形成された第二開口を進退可能に設けられている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記電極およびロッドは、前記シースの先端の第一開口から突没自在に設けられており、
前記ロッドは針であり、
前記電極と前記針の先端部との間に、前記流路の一部が形成される、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記電極の先端部は、前記シースの前記第一開口から突没自在である、
請求項4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記ロッドの先端部は、前記シースの前記第二開口から突没自在である、
請求項4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項8】
前記ロッドの外径は、前記電極のうち前記シースの先端から露出した部分の最小外径よりも小さい、
請求項7に記載の内視鏡用処置具。
【請求項9】
先端と基端を有し、該先端と該基端との間に延びるシースと、
前記シースの先端部に設けられた電極と、
前記電極から径方向に離間した位置で進退自在に設けられたロッドと、
を備え、
前記ロッドの外径は、前記電極のうち前記シースの先端から露出した部分の最小外径よりも小さい、
内視鏡用処置具。
【請求項10】
前記ロッドは、中実に形成されている、
請求項9に記載の内視鏡用処置具。
【請求項11】
前記電極は、前記シースの先端に形成された第一開口を通り、
前記ロッドは、前記シースの先端であって前記第一開口から前記径方向に離間した位置に形成された第二開口を進退可能に設けられている、
請求項9に記載の内視鏡用処置具。
【請求項12】
前記電極の先端部は、前記シースの前記第一開口から突没自在である、
請求項11に記載の内視鏡用処置具。
【請求項13】
前記ロッドの先端部は、前記シースの前記第二開口から突没自在である、
請求項11に記載の内視鏡用処置具。
【請求項14】
前記電極と前記ロッドの間の少なくとも一部に、流体が通る流路の一部が形成されている、
請求項11に記載の内視鏡用処置具。
【請求項15】
前記ロッドと前記第二開口の内周面との間に隙間を有し、
前記流路の一部は、前記隙間の少なくとも一部を含む、
請求項14に記載の内視鏡用処置具。
【請求項16】
前記シースの先端部は、絶縁材で形成された先端部材を有し、
前記第一開口および前記第二開口とは、前記先端部材に形成されており、
前記ロッドは、前記ロッドの先端部が前記第二開口から突出した状態において前記先端部材に突き当たるフランジを有する、
請求項11に記載の内視鏡用処置具。
【請求項17】
前記先端部材に前記フランジが突き当たったときにおける前記ロッドが前記第二開口から突出する突出量は、前記電極が前記第一開口から最大限突出する突出量よりも長い、
請求項16に記載の内視鏡用処置具。
【請求項18】
前記先端部に前記フランジが突き当たったときにおける前記ロッドが前記第二開口から突出する突出量は、前記電極が前記第一開口から最大限突出する突出量よりも短い、
請求項16に記載の内視鏡用処置具。
【請求項19】
先端と基端を有し、該先端と該基端との間に延びるシースと、
前記シースの先端部に設けられた電極と、
前記電極内を進退自在に設けられたロッドと、
を備え、
前記シースの先端部は、流路となる溝を有し、
前記電極は、前記溝と前記ロッドとの間に配置されている、
内視鏡用処置具。
【請求項20】
前記ロッドは、前記電極の先端から突没自在に設けられている、
請求項19に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用処置具に関する。この出願は、2022年12月22日に出願された米国仮出願第63/476,800号および2023年02月28日に出願された米国仮出願第63/487,426号の利益を主張し、その全文が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療において、高周波ナイフなどの切開・剥離用の内視鏡用処置具や局注用の内視鏡用処置具等が使用されている。
【0003】
特許文献1や特許文献2に記載の内視鏡用高周波ナイフは、切開・剥離処置と局注処置とを実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国実用新案第211355353号明細書
【特許文献2】中国実用新案第209032622号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しがしながら、特許文献1や特許文献2に記載の内視鏡用高周波ナイフは、一般的な円筒状の針と棒状のナイフを有する構成であるため、シースの外径が大きくなり、取り扱いが容易ではない。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易な内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係内視鏡用処置具は、先端と基端を有し、該先端と該基端との間に延びるシースと、前記シースの先端部に設けられた電極と、前記電極から径方向に離間した位置で進退自在に設けられたロッドと、を備え、少なくとも前記電極と前記ロッドを前記シースから突出した状態において、前記電極と前記ロッドの少なくとも一部と間の少なくとも一部に、流体が通る流路の一部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内視鏡用処置具は、切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る内視鏡処置システムの全体図である。
図2】同内視鏡処置システムの処置具を示す全体図である。
図3】同処置具の先端部の斜視図である。
図4】ナイフの先端が第一位置にある同処置具の先端部の断面図である。
図5】同ナイフの先端が第二位置にある同処置具の先端部の断面図である。
図6】長手方向に沿った方向から見た同処置具の先端部の正面図である。
図7】鋭利部材が先端位置にある同処置具の先端部の断面図である。
図8図7に示すC0-C0線に沿う断面図である。
図9】同処置具の変形例を示す断面図である。
図10】同変形例を示す断面図である。
図11】同変形例を示す断面図である。
図12】第二実施形態に係る処置具の先端部の斜視図である。
図13】同処置具の同先端部の断面図である。
図14】同処置具の同先端部の断面図である。
図15】同処置具の同先端部の断面図である。
図16図15に示すC1-C1線に沿う断面図である。
図17】同処置具の変形例を示す断面図である。
図18】同変形例を示す断面図である。
図19】同変形例を示す断面図である。
図20】逆流防止部材を示す斜視断面図である。
図21図20に示すC2-C2線に沿う断面図である。
図22】第三実施形態に係る処置具の先端部の斜視図である。
図23】同処置具の同先端部の断面図である。
図24】同処置具の同先端部の断面図である。
図25】同処置具の同先端部の断面図である。
図26図24に示すC3-C3線に沿う断面図である。
図27】同処置具の変形例を示す斜視断面図である。
図28】同変形例を示す斜視断面図である。
図29図28に示すC4-C4線に沿う断面図である。
図30】第四実施形態に係る処置具の先端部の斜視図である。
図31】同処置具の同先端部の斜視図である。
図32】同処置具の同先端部の断面図である。
図33】同処置具の同先端部の断面図である。
図34】同処置具の同先端部の断面図である。
図35図34に示すC5-C5線に沿う断面図である。
図36】同処置具の変形例を示す断面図である。
図37】同変形例を示す断面図である。
図38】同変形例を示す断面図である。
図39】第五実施形態に係る処置具の先端部の斜視図である。
図40】同処置具の同先端部の断面図である。
図41】同処置具の同先端部の断面図である。
図42】同処置具の同先端部の断面図である。
図43】同処置具の変形例を示す斜視図である。
図44】同変形例の先端部の断面図である。
図45】同変形例の同先端部の断面図である。
図46】同変形例の同先端部の断面図である。
図47】同操作部の変形例を示す図である。
図48】同操作部の変形例を示す図である。
図49】同変形例を示す図である。
図50】同操作部の変形例を示す図である。
図51】同変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る内視鏡処置システム300について、図1から図7を参照して説明する。図1は本実施形態に係る内視鏡処置システム300の全体図である。
【0011】
[内視鏡処置システム300]
内視鏡処置システム300は、図1に示すように、内視鏡200と処置具100とを備える。処置具100は、内視鏡200に挿入して使用される。
【0012】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡であり、先端から体内に挿入される挿入部202と、挿入部202の基端に取り付けられた操作部207と、を備える。
【0013】
挿入部202は、撮像部203と、湾曲部204と、軟性部205と、を有する。挿入部202の先端から、撮像部203、湾曲部204および軟性部205の順でそれぞれが配されている。挿入部202の内部には、処置具100を挿入するためのチャンネル206が設けられている。挿入部202の先端には、チャンネル206の先端開口部206aが設けられている。
【0014】
撮像部203は、例えばCCDやCMOSなどの撮像素子を備えており、処置対象となる部位を撮像可能である。撮像部203は、処置具100がチャンネル206の先端開口部206aから突出している状態において、処置具100のナイフ2を撮像することができる。
【0015】
湾曲部204は、操作者による操作部207の操作に従って湾曲する。軟性部205は、可撓性を有する管状の部位である。
【0016】
操作部207は、軟性部205に接続されている。操作部207は、グリップ208と、入力部209と、チャンネル206の基端開口部206bと、ユニバーサルコード210と、を有する。グリップ208は、操作者によって把持される部位である。入力部209は、湾曲部204を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。ユニバーサルコード210は、撮像部203が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード210は、プロセッサなどを備えた画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続される。
【0017】
[処置具100]
図2は、処置具100を示す全体図である。
処置具(内視鏡用処置具)100は、シース1と、ナイフ2と、鋭利部材3と、操作ワイヤ4(図4参照)と、操作部5と、を備える。操作ワイヤ4は、ナイフ2に接続される第一操作ワイヤ41と、鋭利部材3に接続される第二操作ワイヤ42と、を有する。以降の説明において、処置具100の長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側(遠位側)A1」、操作部5側を「基端側(近位側)A2」という。
【0018】
シース1は、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1は、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。図1に示すように、シース1がチャンネル206に挿入された状態において、シース1の先端1aは、チャンネル206の先端開口部206aから突没可能である。
【0019】
図3は、処置具100の先端部の斜視図である。
シース1は、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端部材11と、を有する。なお、シース1は、チューブ10と先端部材11とが一体成形されて形成されていてもよい。
【0020】
図4は、ナイフ2の先端が第一位置P1にある処置具100の先端部の断面図である。
チューブ10は、可撓性および絶縁性を有する長尺な管状部材である。チューブ10は、例えば樹脂で形成されている。チューブ10の先端には、基端側よりも外径が大きい拡径部(先端部)10aが設けられている。なお、拡径部(先端部)10aは、必ずしもチューブ10よりも外径が大きい必要はなく、例えばチューブ10と同一の外径であってもよい。先端部材11は、拡径部10aの内側に嵌合して取り付けられている。なお、先端部材11は、接着剤等により拡径部10aに接着されてもよい。
【0021】
先端部材11は、円筒状に形成されている。なお、「円筒状」には厳密な円筒形状に加えて円筒形状に近い形状も含まれる。先端部材11は、好ましくは樹脂などの絶縁材で形成されている。先端部材11には、第一貫通孔12および第二貫通孔13が形成されている。
【0022】
第一貫通孔12は、先端部材11に設けられ、長手方向Aに先端部材11を貫通する孔である。第一貫通孔12の先端は、先端部材11の先端面14に形成された第一開口12aに連通する。第一貫通孔12の基端は、チューブ10の内部空間19と連通する。ナイフ2は、第一貫通孔12を挿通する。
【0023】
第一貫通孔12は、先端側A1の第一領域121と、基端側A2の第二領域122(図16参照)と、を有する。第一領域121は、長手方向Aに貫通する貫通孔の一部であり、好ましくは長手方向Aに垂直な断面が円状である。第二領域122は、長手方向Aに貫通する貫通孔の一部であり、好ましくは長手方向Aに垂直な断面が円状である。第一領域121と第二領域122とは連通している。第一領域121の内径は、第二領域122の内径より小さい。第一領域121と第二領域122との間には段差12gは形成されている。
【0024】
先端部材11の第一貫通孔12の第一開口12aには、ナイフ2のフランジ21を収容可能なフランジ格納部12fが形成されている。ナイフ2がシース1に収容されてフランジ21がフランジ格納部12fに収容されたとき、すなわち、フランジ21がフランジ格納部12fに当接したとき、ナイフ2の先端は、先端部材11の先端面14よりも先端側A1に突出する。なお、フランジ格納部12fは、第一開口12aに形成されていなくてもよい。
【0025】
第二貫通孔13は、先端部材11に設けられ、長手方向Aに先端部材11を貫通する孔である。第二貫通孔13の先端は、先端部材11の先端面14に形成された第二開口13aに連通する。第二貫通孔13の基端は、チューブ10の内部空間19と連通する。鋭利部材3は、第二貫通孔13を挿通する。
【0026】
第二貫通孔13の第二開口13aは、第一貫通孔12の第一開口12aに対して径方向Rに離間して配置されている。第一貫通孔12と第二貫通孔13とは直接連通していない。
【0027】
図5は、ナイフ2の先端が第二位置P2にある処置具100の先端部の断面図である。
ナイフ(電極)2は、金属製の丸棒状の部材である。なお、「丸棒状」には厳密な丸棒形状に加えて丸棒形状に近い形状も含まれる。ナイフ2は、例えばステンレスなどの素材により形成されている。ナイフ2は、導電性を有し、高周波電流が通電される。ナイフ2は、ナイフ本体20と、フランジ21と、連結部材22と、を有する。
【0028】
ナイフ2は、長手方向Aに沿ってシース1の先端部材11の第一貫通孔12を挿通しており、第一開口12aから先端側A1に突没自在である。なお、ナイフ2は、第一開口12aから先端側A1に突出した状態で、進退不能に固定されていてもよい。
【0029】
ナイフ2の長手方向Aにおける中心軸O2は、好ましくは、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と一致している。なお、「一致」には厳密に一致する態様に加えてほとんど一致している態様も含まれる。
【0030】
ナイフ本体20は、金属製の丸棒状の部材である。ナイフ本体20の外径は、第一領域121の内径よりも小さい。ナイフ本体20は、第一領域121を長手方向Aに進退可能である。
【0031】
図6は、長手方向Aに沿った方向から見た処置具100の先端部の正面図である。
フランジ(先端拡径部)21は、ナイフ本体20の先端に設けられた円板状の導電部材である。長手方向Aに沿った方向から見た正面視において、フランジ21の外周は、ナイフ本体20の外周と同心円状に形成されている。フランジ21の長手方向Aに対して垂直な径方向Rの長さD2は、ナイフ本体20の径方向Rの長さD1よりも長い。フランジ21の基端側A2には、平面状の基端面21bが形成されている。なお、フランジ21は、円板状に限らず、三角形状やフック形状であっても良い。
【0032】
図4に示すように、ナイフ2をシース1に対して後退させると、ナイフ2の基端面21bと先端部材11のフランジ格納部12fとは接触する。ナイフ2の基端面21bと先端部材11のフランジ格納部12fとが接触することにより、ナイフ2の先端は最も基端側A2の位置である第一位置P1に位置決めされる。
【0033】
ナイフ本体20およびフランジ21は、長手方向Aに沿って延びる第一管路23を有する。第一管路23は、フランジ21に形成された先端開口23aに連通している。先端開口23aは、フランジ21の先端側A1に設けられた開口である。
【0034】
連結部材22は、金属製の円筒状の部材である。なお、「円筒状」には厳密な円筒形状に加えて円筒形状に近い形状も含まれる。連結部材22は、ナイフ本体20と第一操作ワイヤ41とを連結する。連結部材22の外径は、第一領域121の内径よりも大きく、第二領域122の内径より小さい。連結部材22は、第一領域121を長手方向Aに挿通不能であり、第二領域122を長手方向Aに進退可能である。
【0035】
図5に示すように、ナイフ2をシース1に対して前進させると、連結部材22の先端と先端部材11の段差12gとが接触する。連結部材22の先端と先端部材11の段差12gとが接触することにより、ナイフ2の先端は最も先端側A1の位置である第二位置P2に位置決めされる。
【0036】
連結部材22は、長手方向Aに沿って延びる第二管路24を有する。第二管路24は、第一管路23と第一操作ワイヤ41に形成された第三管路43とに連通している。
【0037】
連結部材22の基端には第一操作ワイヤ41が取り付けられている。ナイフ2には、操作部5と接続された第一操作ワイヤ41を経由して高周波電流が供給される。第一操作ワイヤ41からナイフ2に高周波電流が供給されると、ナイフ本体20およびフランジ21は、高周波電流を生体組織へ出力するアクティブ電極として機能する。
【0038】
図7は、鋭利部材3が先端位置P4にある処置具100の先端部の断面図である。図8は、図7に示すC0-C0線に沿う断面図である。
鋭利部材(ロッド、中実針)3は、樹脂材や金属材やセラミック材等により形成された棒状部材である。鋭利部材3は、ナイフ2より細い部材であり、鋭利部材3の外径D3はナイフ2のうちシース1の先端部材11から露出可能な部分の最小外径D1よりも小さい。鋭利部材3は、本体部31と、鋭利部32と、フランジ33と、を有する。
【0039】
鋭利部材3は、長手方向Aに沿ってシース1の先端部材11の第二貫通孔13を挿通しており、第二開口13aから先端側A1に突没自在である。鋭利部材3は、ナイフ2から径方向Rに離間した位置で長手方向Aに進退自在に設けられている。なお、鋭利部材3は、第二開口13aから先端側A1に突出した状態で、進退不能に固定されていてもよい。
【0040】
本体部31は、長尺な丸棒状の部材である。なお、「丸棒状」には厳密な丸棒形状に加えて丸棒形状に近い形状も含まれる。本体部31の外径は、第二貫通孔13の内径よりも小さい。本体部31は、第二貫通孔13を長手方向Aに進退可能である。
【0041】
鋭利部32は、本体部31の先端に設けられており、先端側A1が先細り形状に形成されている。鋭利部32は、第二貫通孔13を長手方向Aに進退可能である。
【0042】
フランジ(拡径部)33は、本体部31の基端に設けられている。フランジ33の少なくとも一部の外径は、第二貫通孔13の基端開口13bの内径よりも大きい。フランジ33は、第二貫通孔13を挿通不能である。
【0043】
図7に示すように、鋭利部材3をシース1に対して前進させると、鋭利部材3のフランジ33と先端部材11の第二貫通孔13の基端開口13bとが接触する。鋭利部材3のフランジ33と第二貫通孔13の基端開口13bとが接触することにより、鋭利部材3の先端(鋭利部32の先端)は最も先端側A1の位置である先端位置P4に位置決めされる。
【0044】
鋭利部32の先端が先端位置P4に配置された際の第二開口13aから突出する鋭利部材3の突出量L3(鋭利部材3の最大突出量、図7参照)は、ナイフ2の先端が第二位置P2に配置された際の第一開口12aから突出するナイフ2の突出量L2(ナイフ2の最大突出量、図5参照)よりも長い。
【0045】
なお、鋭利部32の先端が先端位置P4に配置された際の第二開口13aから突出する鋭利部材3の突出量L3は、ナイフ2の先端が第二位置P2に配置された際の第一開口12aから最大限突出するナイフ2の突出量L2よりも短くてもよい。
【0046】
操作ワイヤ4は、シース1の内部空間(管路、ルーメン)19を挿通するワイヤである。操作ワイヤ4は、第一操作ワイヤ41と、第二操作ワイヤ42と、を有する。
【0047】
第一操作ワイヤ41は、ナイフ2を操作するワイヤである。第一操作ワイヤ41は、コイルシャフト44と、チューブ45と、を有する。第一操作ワイヤ41の先端はナイフ2の連結部材22に接続され、第一操作ワイヤ41の基端は操作部5のスライダ52に接続されている。なお、第一操作ワイヤ41は、中空のシャフトであれば他の態様であってもよい。
【0048】
コイルシャフト44は、金属製の中空のコイルワイヤである。コイルシャフト44は、例えばステンレスなどの素材により形成されている。コイルシャフト44の内部には、第三管路43が形成されている。第三管路43は、第二管路24の基端に連結されている。第一管路23と第二管路24と第三管路43とは、送水流路WRを形成する。液体供給口54から供給した流体は、送水流路WR(第三管路43、第二管路24、第一管路23)を通過して先端開口23aから放出される。
【0049】
チューブ45は、コイルシャフト44の外周部分に設けられたチューブであり、例えば熱収縮チューブである。コイルシャフト44の外周部分にチューブ45を被せることにより、第三管路43から液体が漏れない。
【0050】
第二操作ワイヤ42は、鋭利部材3を操作するワイヤである。第二操作ワイヤ42の先端は鋭利部材3のフランジ33に接続され、第二操作ワイヤ42の基端は操作部5のレバー55に接続されている。
【0051】
操作部5は、図1および図2に示すように、操作部本体51と、スライダ52と、給電コネクタ53と、液体供給口54と、レバー55と、を有する。
【0052】
操作部本体51の先端部は、シース1の基端1bと接続されている。操作部本体51は、第一操作ワイヤ41および第二操作ワイヤ42が挿通可能な内部空間を有している。第一操作ワイヤ41は、チューブ10の内部空間19および操作部本体51の内部空間を通過してスライダ52まで延びている。第二操作ワイヤ42は、チューブ10の内部空間19および操作部本体51の内部空間を通過してレバー55まで延びている。
【0053】
スライダ52(第一スライダ)は、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。スライダ52には、第一操作ワイヤ41の基端が取り付けられている。術者がスライダ52を操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、第一操作ワイヤ41およびナイフ2が進退する。
【0054】
給電コネクタ53は、スライダ52に固定されている。給電コネクタ53は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、導電ワイヤを経由して第一操作ワイヤ41の基端部と接続されている。給電コネクタ53は、高周波電源装置から供給された高周波電流を、第一操作ワイヤ41を経由してナイフ2に供給可能である。なお、給電コネクタ53は、スライダ52ではなく、操作部本体51に固定されていてもよい。
【0055】
液体供給口54は、スライダ52に設けられている。液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由して第三管路43の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(第三管路43、第二管路24、第一管路23)を通過して先端開口23aから放出される。なお、液体供給口54は、スライダ52ではなく、操作部本体51に設けられてもよい。
【0056】
レバー55(第二スライダ)は、スライダ52に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。レバー55には第二操作ワイヤ42の基端が取り付けられている。術者がレバー55をスライダ52に対して相対的に進退させることにより、第二操作ワイヤ42および鋭利部材3が進退する。
【0057】
[処置具100の変形例(処置具100B)]
図9から図11は、処置具100の変形例である処置具100Bを示す断面図である。
処置具100Bは、処置具100と比較して送水流路WRが異なる。処置具100Bは、シース1と、ナイフ2Bと、鋭利部材3と、操作ワイヤ4Bと、操作部5と、を備える。ナイフ2Bは、ナイフ本体20と、フランジ21と、連結部材22Bと、を有する。
【0058】
連結部材22Bは、連結部材22と比較して送水口22hをさらに有する。送水口22hは、第二管路24から径方向Rに沿って形成された孔であって、連結部材22Bの外周面において開口している。送水口22hは、ナイフ2Bの長手方向Aにおける中心軸O2を挟んで両側に形成されている。
【0059】
操作ワイヤ4Bは、シース1の内部空間(管路、ルーメン)19を挿通するワイヤである。操作ワイヤ4Bは、第一操作ワイヤ41Bと、第二操作ワイヤ42と、を有する。
【0060】
第一操作ワイヤ41Bは、ナイフ2Bを操作するワイヤである。第一操作ワイヤ41Bは、コイルシャフト44Bと、チューブ45と、を有する。第一操作ワイヤ41Bの先端はナイフ2Bの連結部材22Bに接続され、第一操作ワイヤ41Bの基端は操作部5のスライダ52に接続されている。
【0061】
コイルシャフト44Bは、コイルシャフトでもよいし、コイルシャフトに代えて金属製の単線または撚り線の中実のワイヤでもよい。本実施形態において、コイルシャフト44Bの内部には、第三管路43が形成されていない。そのため、第一操作ワイヤ41Bは、チューブ45を有してなくてもよい。
【0062】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由してシース1の内部空間19の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(シース1の内部空間19、送水口22h、第二管路24、第一管路23)を通過して先端開口23aから放出される。
【0063】
[内視鏡処置システム300の使用方法]
次に、本実施形態の内視鏡処置システム300を用いた手技(内視鏡処置システム300の使用方法)について説明する。具体的には、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療における病変部の局注処置、切開・剥離処置について説明する。
【0064】
準備作業として、術者は、公知の方法により病変部を特定する。具体的には、術者は内視鏡200の挿入部202を消化管(例えば、食道、胃、十二指腸、大腸)内に挿入し、内視鏡の撮像部203で得られる画像を観察しながら病変部を特定する。
【0065】
<挿入ステップ>
術者は、処置具100をチャンネル206に挿入し、挿入部202の先端開口部206aからシース1の先端1aを突出させる。
【0066】
<マーキングステップ>
術者は、図4に示すように、操作部5のスライダ52を操作部本体51に対して相対的に後退させ、ナイフ2の先端を第一位置P1に配置する。先端部材11の先端面14から突出するフランジ21の先端部を用いて、病変部の周辺の生体組織を焼灼してマーキングを施す。
【0067】
<穿刺ステップ>
術者は、図7に示すように、操作部5のレバー55をスライダ52に対して相対的に前進させ、鋭利部材3の先端を先端位置P4に配置する。術者は、病変部において局注用の液体(局注液)を注入する箇所を鋭利部材3で穿刺して貫通させる。
【0068】
<局注ステップ>
術者は、図5に示すように、操作部5のスライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させ、ナイフ2の先端を第二位置P2に配置する。術者は、鋭利部材3で穿刺して形成した孔から、粘膜下層の中にナイフ2の先端の先端開口23aを入れた状態で、液体供給口54から液体(局注液)を送水する。液体(局注液)は先端開口23aから放出される。
【0069】
<切開・剥離ステップ>
次に、術者は、切開・剥離処置を行う。術者は、ナイフ2を前進させ、高周波電流を通電させた状態でフランジ21を移動させて病変部の粘膜を切開する。また、術者は、ナイフ2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で、切開した病変部の粘膜を持ち上げて粘膜下層を露出させながら、切開した病変部の粘膜下層を剥離する。
【0070】
術者は、必要に応じて上述の動作(処置)を継続し、最終的に病変部を切除し、ESDの手技を終了する。
【0071】
本実施形態に係る処置具100および処置具100Bによれば、切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易である。
【0072】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0073】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る処置具100Cについて、図12から図16を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0074】
図12は、処置具100Cの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Cは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200と共に内視鏡処置システムを構成する。処置具100Cは、シース1と、ナイフ2Cと、鋭利部材3と、操作ワイヤ4Bと、操作部5と、を備える。
【0075】
図13から図15は、処置具100Cの先端部の断面図である。
ナイフ(電極)2Cは、金属製の丸棒状の部材である。なお、「丸棒状」には厳密な丸棒形状に加えて丸棒形状に近い形状も含まれる。ナイフ2Cは、例えばステンレスなどの素材により形成されている。ナイフ2Cは、導電性を有し、高周波電流が通電される。ナイフ2Cは、ナイフ本体20Cと、フランジ21Cと、連結部材22Cと、を有する。
【0076】
ナイフ2Cは、長手方向Aに沿ってシース1の先端部材11の第一貫通孔12を挿通しており、第一開口12aから先端側A1に突没自在である。なお、ナイフ2Cは、第一開口12aから先端側A1に突出した状態で、進退不能に固定されていてもよい。
【0077】
ナイフ2Cの長手方向Aにおける中心軸O2は、好ましくは、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と一致している。なお、「一致」には厳密に一致する態様に加えてほとんど一致している態様も含まれる。
【0078】
ナイフ本体20Cは、金属製の丸棒状の部材である。ナイフ本体20Cの外径は、第一領域121の内径よりも小さい。ナイフ本体20Cは、第一領域121を長手方向Aに進退可能である。
【0079】
フランジ(先端拡径部)21Cは、ナイフ本体20Cの先端に設けられた円板状の導電部材である。第一実施形態と同様に、長手方向Aに沿った方向から見た正面視において、フランジ21Cの外周は、ナイフ本体20Cの外周と同心円状に形成されている。フランジ21Cの長手方向Aに対して垂直な径方向Rの長さは、ナイフ本体20Cの径方向Rの長さよりも長い。フランジ21Cの基端側A2には、平面状の基端面21bが形成されている。なお、フランジ21Cは、円板状に限らず、三角形状やフック形状であっても良い。
【0080】
図13に示すように、ナイフ2Cをシース1に対して後退させると、ナイフ2Cの基端面21bと先端部材11のフランジ格納部12fとは接触する。ナイフ2Cの基端面21bと先端部材11のフランジ格納部12fとが接触することにより、ナイフ2Cの先端は最も基端側A2の位置である第一位置P1に位置決めされる。
【0081】
ナイフ本体20Cおよびフランジ21Cは、長手方向Aに沿って延びる第一管路23を有さない。
【0082】
連結部材22Cは、金属製の円柱状の部材である。なお、「円柱状」には厳密な円柱形状に加えて円柱形状に近い形状も含まれる。連結部材22Cは、ナイフ本体20Cと第一操作ワイヤ41Bとを連結する。連結部材22Cの外径は、第一領域121の内径よりも大きく、第二領域122の内径より小さい。連結部材22Cは、第一領域121を長手方向Aに挿通不能であり、第二領域122を長手方向Aに進退可能である。
【0083】
図14に示すように、ナイフ2Cをシース1に対して前進させると、連結部材22Cの先端と先端部材11の段差12gとが接触する。連結部材22Cの先端と先端部材11の段差12gとが接触することにより、ナイフ2Cの先端は最も先端側A1の位置である第二位置P2に位置決めされる。
【0084】
連結部材22Cは、長手方向Aに沿って延びる第二管路24を有さない。
【0085】
連結部材22Cの基端には第一操作ワイヤ41Bが取り付けられている。ナイフ2Cには、操作部5と接続された第一操作ワイヤ41Bから高周波電流が供給される。第一操作ワイヤ41Bを経由してナイフ2Cに高周波電流が供給されると、ナイフ本体20Cおよびフランジ21Cは、高周波電流を生体組織へ出力するアクティブ電極として機能する。
【0086】
図16は、図15に示すC1-C1線に沿う断面図である。
フランジ(拡径部)33は、本体部31の基端に設けられている。フランジ33の少なくとも一部の外径は、第二貫通孔13の内径よりも大きい。フランジ33は、第二貫通孔13を挿通不能である。
【0087】
図15に示すように、鋭利部材3をシース1に対して前進させると、鋭利部材3のフランジ33と先端部材11の第二貫通孔13の基端開口13bとが接触する。鋭利部材3のフランジ33と第二貫通孔13の基端開口13bとが接触することにより、鋭利部材3の先端(鋭利部32の先端)は最も先端側A1の位置である先端位置P4に位置決めされる。
【0088】
図16に示すように、長手方向Aに沿った方向から見て、フランジ33は長方形状に形成されている。フランジ33と第二貫通孔13の基端開口13bとが接触したとき、鋭利部材3のフランジ33と基端開口13bとの間には隙間13gがある。隙間13gは、液体が流れる送水流路WRの一部である。なお、フランジ33は、基端開口13bと接触したときに隙間13gが形成される形状であればよく、長手方向Aに沿った方向から見て例えば長円形状でも楕円形状でもよい。
【0089】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由してシース1の内部空間19の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(シース1の内部空間19、隙間13g、第二貫通孔13)を通過して第二開口13aから放出される。
【0090】
鋭利部32の先端が先端位置P4に配置された際の第二開口13aから突出する鋭利部材3の突出量L3(鋭利部材3の最大突出量、図15参照)は、ナイフ2Cの先端が第二位置P2に配置された際の第一開口12aから突出するナイフ2Cの突出量L2(ナイフ2Cの最大突出量、図14参照)よりも長い。
【0091】
なお、鋭利部32の先端が先端位置P4に配置された際の第二開口13aから突出する鋭利部材3の突出量L3は、ナイフ2Cの先端が第二位置P2に配置された際の第一開口12aから最大限突出するナイフ2Cの突出量L2よりも短くてもよい。
【0092】
[処置具100Cの変形例(処置具100D)]
図17から図19は、処置具100Cの変形例である処置具100Dを示す断面図である。処置具100Dは、処置具100Cと比較して送水流路WRが異なる。処置具100Dは、シース1と、ナイフ2Dと、鋭利部材3と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。ナイフ2Dは、ナイフ本体20Cと、フランジ21Cと、連結部材22Bと、逆流防止部材25と、を有する。
【0093】
図20は、逆流防止部材25を示す斜視断面図である。
逆流防止部材25は、連結部材22Bの送水口22hよりも基端側A2に設けられた円板状の部材である。逆流防止部材25は、送水口22hから連結部材22Bの外側に排出された液体が基端側A2に逆流することを防止する。逆流防止部材25は、連結部材22Bに固定されている部材に限定されず、例えばウレタンゴムなどのOリングのように連結部材22Bに沿って摺動する部材であってもよい。また、逆流防止部材25は、連結部材22Bの外周面に取り付けられた部材に限定されず、チューブ10の内周面に取り付けられた部材であってもよい。
【0094】
図21は、図20に示すC2-C2線に沿う断面図である。
逆流防止部材25は、長手方向Aに沿った方向から見て、内部空間19を覆う部材である。逆流防止部材25は、第二操作ワイヤ42が挿通する貫通孔25aを有する。
【0095】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由してシース1の第三管路43の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(第三管路43、第二管路24、送水口22h、シース1の内部空間19、第二貫通孔13)を通過して第二開口13aから放出される。
【0096】
本実施形態に係る処置具100Cおよび処置具100Dによれば、切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易である。
【0097】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0098】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係る処置具100Eについて、図22から図26を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0099】
図22は、処置具100Eの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Eは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200と共に内視鏡処置システムを構成する。処置具100Eは、シース1Eと、ナイフ2Eと、鋭利部材3と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0100】
シース1Eは、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1Eは、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。シース1Eは、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端部材11Eと、を有する。なお、シース1Eは、チューブ10と先端部材11Eとが一体成形されて形成されていてもよい。
【0101】
図23から図25は、処置具100Eの先端部の断面図である。
先端部材11Eは、円筒状に形成されている。なお、「円筒状」には厳密な円筒形状に加えて円筒形状に近い形状も含まれる。先端部材11Eは、樹脂などの絶縁材で形成されている。先端部材11Eには、第一貫通孔12Eが形成されている。
【0102】
第一貫通孔12Eは、先端部材11Eに設けられ、長手方向Aに先端部材11Eを貫通する孔である。第一貫通孔12Eの先端は、先端部材11Eの先端面14に形成された第一開口12aに連通する。第一貫通孔12Eの基端は、チューブ10の内部空間19と連通する。ナイフ2Eは、第一貫通孔12Eを挿通する。
【0103】
第一貫通孔12Eは、先端側A1の第一領域121と、第二領域122Eと、基端側A2の第三領域123Eと、を有する。第二領域122Eは、長手方向Aに貫通する貫通孔の一部であり、好ましくは長手方向Aに垂直な断面が円状である。第三領域123Eは、長手方向Aに貫通する貫通孔の一部であり、好ましくは長手方向Aに垂直な断面が円状である。第一領域121と第二領域122Eとは連通している。第二領域122Eと第三領域123Eとは連通している。第一領域121の内径は、第二領域122Eの内径より小さい。第二領域122Eの内径は、第三領域123Eの内径より小さい。第二領域122Eと第三領域123Eとの間には段差12Egは形成されている。
【0104】
先端部材11Eの第一貫通孔12Eの第一開口12aには、ナイフ2Eのフランジ21を収容可能なフランジ格納部12fと、送水溝12eと、が形成されている。フランジ21がフランジ格納部12fに格納されたときも、送水溝12eはフランジ21によって塞がれず、第一貫通孔12に供給された液体は送水溝12eから排出される。
【0105】
ナイフ(電極)2Eは、金属製の丸棒状の部材である。なお、「丸棒状」には厳密な丸棒形状に加えて丸棒形状に近い形状も含まれる。ナイフ2Eは、例えばステンレスなどの素材により形成されている。ナイフ2Eは、導電性を有し、高周波電流が通電される。ナイフ2Eは、ナイフ本体20と、フランジ21と、連結部材22Eと、を有する。
【0106】
図23に示すように、ナイフ2Eをシース1Eに対して後退させると、ナイフ2Eの基端面21bと先端部材11Eのフランジ格納部12fとは接触する。ナイフ2Eの基端面21bと先端部材11Eのフランジ格納部12fとが接触することにより、ナイフ2Eの先端は最も基端側A2の位置である第一位置P1に位置決めされる。
【0107】
図26は、図24に示すC3-C3線に沿う断面図である。
連結部材22Eは、金属製の部材であり、円筒形状における径方向Rの両側面を切り落とした形状に形成されている。連結部材22Eは、ナイフ本体20と第一操作ワイヤ41とを連結する。連結部材22Eは、径方向Rにおいて第一領域121の内径よりも大きい最大幅を有する。連結部材22Eは、径方向Rにおいて第二領域122Eの内径よりも大きい最大幅を有する。連結部材22Eの少なくとも一部は、径方向Rにおいて第二領域122Eの内径より小さい幅を有する。具体的には、長手方向Aに沿う方向から見て連結部材22Eは円の一部が切り欠かれた形状に形成されている。連結部材22Eの径方向Rにおける最大幅は、第三領域123Eの内径より小さい。そのため、連結部材22は、第一領域121および第二領域122Eを長手方向Aに挿通不能であり、第三領域123Eを長手方向Aに進退可能である。
【0108】
図24に示すように、ナイフ2Eをシース1Eに対して前進させると、連結部材22Eの先端と先端部材11Eの段差12Egとが接触する。連結部材22Eの先端と先端部材11Eの段差12Egとが接触することにより、ナイフ2Eの先端は最も先端側A1の位置である第二位置P2に位置決めされる。
【0109】
連結部材22Eは、長手方向Aに沿って延びる第二管路24を有する。第二管路24は、第一管路23と第一操作ワイヤ41に形成された第三管路43とに連通している。本実施形態において、第一管路23と第二管路24と第三管路43とは送水流路WRとして使用されず、鋭利部材3が進退する管路として使用される。
【0110】
連結部材22Eの基端には第一操作ワイヤ41が取り付けられている。ナイフ2Eには、操作部5と接続された第一操作ワイヤ41を経由して高周波電流が供給される。第一操作ワイヤ41からナイフ2Eに高周波電流が供給されると、ナイフ本体20およびフランジ21は、高周波電流を生体組織へ出力するアクティブ電極として機能する。
【0111】
鋭利部材3は、長手方向Aに沿って第一管路23と第二管路24と第三管路43を挿通しており、先端開口23aから先端側A1に突没自在である。
【0112】
フランジ(拡径部)33は、本体部31の基端に設けられている。フランジ33の外径は、第二管路24の内径より小さい。フランジ33の少なくとも一部の外径は、第一管路23の基端開口23bの内径および第三管路43の先端開口43aの内径よりも大きい。フランジ33は、第二管路24を進退可能であり、第一管路23および第三管路43を挿通不能である。
【0113】
図24に示すように、鋭利部材3をシース1Eおよびナイフ本体20に対して後退させると、鋭利部材3のフランジ33と第一操作ワイヤ41の第三管路43の先端開口43aとが接触する。鋭利部材3のフランジ33との第三管路43の先端開口43aとが接触することにより、鋭利部材3の先端は最も基端側A2の位置である基端位置P3に位置決めされる。
【0114】
鋭利部材3の先端が基端位置P3に配置されているとき、鋭利部材3の鋭利部32は第二管路24に収納される。
【0115】
図25に示すように、鋭利部材3をシース1Eおよびナイフ本体20に対して前進させると、鋭利部材3のフランジ33とナイフ本体20の第一管路23の基端開口23bとが接触する。鋭利部材3のフランジ33との第一管路23の基端開口23bとが接触することにより、鋭利部材3の先端(鋭利部32の先端)は最も先端側A1の位置である先端位置P4に位置決めされる。
【0116】
図26に示すように、長手方向Aに沿った方向から見て、連結部材22Eは円の一部が切り欠かれた形状に形成されている。連結部材22Eと第二領域122Eとが接触したとき、連結部材22Eと第二領域122Eとの間には隙間122gが形成される。隙間122gは、液体が流れる送水流路WRの一部である。
【0117】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由してシース1Eの内部空間19の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(シース1Eの内部空間19、第一貫通孔12、隙間122g、送水溝12e)を通過して第一開口12aから放出される。
【0118】
鋭利部32の先端が先端位置P4に配置された際の第一開口12aから突出する鋭利部材3の突出量L3(鋭利部材3の最大突出量、図25参照)は、ナイフ2Eの先端が第二位置P2に配置された際の第一開口12aから突出するナイフ2Eの突出量L2(ナイフ2Eの最大突出量、図24参照)よりも長い。
【0119】
鋭利部32の先端が先端位置P4に配置された際の第一開口23aから突出する鋭利部材3の最大突出量は、突出量L2よりも小さい。なお、鋭利部32の先端が先端位置P4に配置された際の第一開口23aから突出する鋭利部材3の最大突出量は、突出量L2よりも大きくてもよい。
【0120】
[処置具100Eの変形例(処置具100F)]
図27から図28は、処置具100Eの変形例である処置具100Fを示す斜視断面図である。処置具100Fは、処置具100Eと比較して送水流路WRが異なる。処置具100Fは、シース1Eと、ナイフ2Fと、鋭利部材3と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。ナイフ2Fは、ナイフ本体20と、フランジ21と、連結部材22Fと、逆流防止部材25と、を有する。
【0121】
連結部材22Fは、連結部材22Eと比較して送水口22hをさらに有する。送水口22hは、第二管路24から径方向Rに沿って形成された孔であって、連結部材22Fの外周面において開口している。送水口22hは、ナイフ2Fの長手方向Aにおける中心軸O2を挟んで両側に形成されている。
【0122】
逆流防止部材25は、連結部材22Fの送水口22hよりも基端側A2に設けられた円板状の部材である。逆流防止部材25は、送水口22hから連結部材22Fの外側に排出された液体が基端側A2に逆流することを防止する。
【0123】
図29は、図28に示すC4-C4線に沿う断面図である。
逆流防止部材25は、長手方向Aに沿った方向から見て、内部空間19を覆う部材である。鋭利部材3のフランジ33との第三管路43の先端開口43aとが接触したとき、フランジ33と先端開口43aとの間には隙間43gが形成される。隙間43gは、液体が流れる送水流路WRの一部である。
【0124】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由してシース1Eの第三管路43の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(第三管路43、隙間43g、第二管路24、送水口22h、シース1Eの内部空間19、第一貫通孔12、隙間122g、送水溝12e)を通過して第一開口12aから放出される。
【0125】
本実施形態に係る処置具100Eおよび処置具100Fによれば、切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易である。
【0126】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0127】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態に係る処置具100Gについて、図30から図34を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0128】
図30および図31は、処置具100Gの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Gは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200と共に内視鏡処置システムを構成する。処置具100Gは、シース1Gと、ナイフ2Gと、鋭利部材(針)3Gと、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0129】
シース1Gは、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1Gは、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。シース1Gは、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端部材11Gと、を有する。なお、シース1Gは、チューブ10と先端部材11Gとが一体成形されて形成されていてもよい。
【0130】
図32から図34は、処置具100Gの先端部の断面図である。
先端部材11Gは、円筒状に形成されている。なお、「円筒状」には厳密な円筒形状に加えて円筒形状に近い形状も含まれる。先端部材11Gは、樹脂などの絶縁材で形成されている。先端部材11Gには、第一貫通孔12Gが形成されている。
【0131】
第一貫通孔12Gは、先端部材11Gに設けられ、長手方向Aに先端部材11Gを貫通する孔である。第一貫通孔12Gの先端は、先端部材11Gの先端面14に形成された第一開口12Gaに連通する。第一貫通孔12Gの基端は、チューブ10の内部空間19と連通する。ナイフ2Gおよび鋭利部材3Gは、第一貫通孔12Gを挿通する。
【0132】
第一貫通孔12Gは、先端側A1の第一領域121Gと、基端側A2の第二領域122と、を有する。第一領域121Gは、長手方向Aに垂直な断面が径寸法の異なる二つの同心円を重ねた形状である貫通孔である。第二領域122は、長手方向Aに貫通する貫通孔の一部であり、好ましくは長手方向Aに垂直な断面が円状である。第一領域121Gと第二領域122とは連通している。第一領域121Gの内径は、第二領域122の内径より小さい。第一領域121Gと第二領域122との間には段差12Ggは形成されている。なお、第二領域122の中心軸は中心軸O2と一致しており、第一領域121Gの中心軸は中心軸O2から偏心している。
【0133】
図35は、図34に示すC5-C5線に沿う断面図である。
図32に示すように、第一領域121Gは、ナイフ2Gの長手方向Aにおける中心軸O2からの長さが長さR1である縮径領域124と、中心軸O2からの長さが長さR2(長さR2>長さR1)である拡径領域125と、に区分される。本実施形態において、縮径領域124と拡径領域125とは、長手方向Aに沿う方向から見て、それぞれ半円状に形成されている。
【0134】
ナイフ2Gは、金属製の丸棒状の部材である。なお、「丸棒状」には厳密な丸棒形状に加えて丸棒形状に近い形状も含まれる。ナイフ2Gは、例えばステンレスなどの素材により形成されている。ナイフ2Gは、導電性を有し、高周波電流が通電される。ナイフ2Gは、ナイフ本体20と、フランジ21と、を有する。ナイフ2Gは、連結部材22を有さない。ナイフ本体20と第一操作ワイヤ41とが直接連結されており、第一管路23と第三管路43とが連通している。
【0135】
ナイフ2Gの長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1Gの長手方向Aにおける中心軸O1と一致している。なお、「一致」には厳密に一致する態様に加えてほとんど一致している態様も含まれる。
【0136】
ナイフ本体20は、第一領域121Gを進退可能である。ナイフ本体20の半径は、長さR1より小さい。そのため、ナイフ本体20は、第一領域121Gにおいて、縮径領域124を進退可能である。
【0137】
図32に示すように、ナイフ2Gをシース1Gに対して後退させると、ナイフ2Gの基端面21bと先端部材11Gのフランジ格納部(第一面)12fとは接触する。ナイフ2Gの基端面21bと先端部材11Gのフランジ格納部12fとが接触することにより、ナイフ2Gの先端は最も基端側A2の位置である第一位置P1に位置決めされる。ナイフ2Gの基端面21bと先端部材11Gのフランジ格納部12fとが接触した状態で、ナイフ2Gに対して鋭利部材3Gは長手方向Aにおいて進退自在である。なお、フランジ格納部12fは、第一開口12Gaに形成されていなくてもよい。その場合は、先端部材11Gの先端面が第一面であり、ナイフ2Gの基端面21bと接触する。
【0138】
図33に示すように、ナイフ2Gをシース1Gに対して前進させると、第一操作ワイヤ41の先端と先端部材11Gの段差(第二面)12Ggとが接触する。第一操作ワイヤ41の先端と先端部材11Gの段差12Ggとが接触することにより、ナイフ2Gの先端は最も先端側A1の位置である第二位置P2に位置決めされる。連結部材22Cと先端チップ11Gの段差12Ggとが接触した状態で、ナイフ2Gに対して鋭利部材3Gは長手方向Aにおいて進退自在である。
【0139】
鋭利部材(ロッド)3Gは、樹脂材や金属材やセラミック材等により形成された部材である。鋭利部材3Gは、本体部31Gと、フランジ33Gと、先端部34Gと、鋭利部35Gと、を有する。
【0140】
鋭利部材3Gは、長手方向Aに沿ってシース1Gの先端部材11Gの第一貫通孔12Gを挿通しており、第一開口12Gaから先端側A1に突没自在である。鋭利部材3Gの先端部34Gは、ナイフ2Gから径方向Rに離間した位置で長手方向Aに進退自在に設けられている。なお、鋭利部材3Gは、第一開口12aから先端側A1に突出した状態で、進退不能に固定されていてもよい。
【0141】
本体部31Gは、長尺な円筒の部材である。なお、「円筒状」には厳密な円筒形状に加えて円筒形状に近い形状も含まれる。本体部31Gの外径は、第一領域121Gの内径よりも大きく、第二領域122の内径より小さい。本体部31Gは、第一領域121Gを長手方向Aに挿通不能であり、第二領域122を長手方向Aに進退可能である。
【0142】
本体部31Gの内部には、第四管路36が形成されている。ナイフ2Gは、第四管路36を挿通している。ナイフ2Gは、第四管路36を長手方向Aに進退可能である。
【0143】
フランジ(拡径部)33Gは、本体部31Gの基端に設けられている。フランジ33Gの少なくとも一部の外径は、第一貫通孔12Gの基端開口12bの内径よりも大きい。フランジ33Gは、第一貫通孔12Gを挿通不能である。第二操作ワイヤ42の先端は、鋭利部材3Gのフランジ33Gに接続されている。
【0144】
先端部34Gは、本体部31Gの先端から延びており、円筒部材を長手方向Aに沿って分割した半円筒形状に形成されている。すなわち、先端部34Gは、半円筒形状に形成されたスリット部34aを有する。フランジ21の一部は、本体部31Gの外周面および/または内周面よりも径方向外方に突出しており、フランジ21は、スリット部34aの基端34bよりも遠位側A1を進退自在である。また、スリット部34aは、半円筒形状である必要はなく、例えば、本体部31の内径よりも小さい幅の溝が長手方向Aに沿って形成されていてもよい。
【0145】
鋭利部35Gは、先端部34Gの先端に設けられた先端側A1が鋭利な部材である。鋭利部35Gは、図30および図31に示すように、半円筒形状の先端側A1の縁35aが長手方向Aに対して傾斜した形状に形成されている。鋭利部35Gの先端35bは、先端側A1に向かって尖っている。
【0146】
図35に示すように、先端部34Gおよび鋭利部35Gは、第一領域121Gにおいて、縮径領域124を挿通不能であり、拡径領域125を進退可能である。また、ナイフの基端面21bの最大外周の位置は、縮径領域124の内周面よりも外側に位置し、フランジ21は縮径領域124を挿通不能である。
【0147】
図34に示すように、鋭利部材3Gをシース1Gに対して前進させると、鋭利部材3Gの本体部31Gの先端31aと先端部材11Gの段差12Ggとが接触する。鋭利部材3Gの本体部31Gの先端31aと先端部材11Gの段差12Ggとが接触することにより、鋭利部材3Gの先端は最も先端側A1の位置である先端位置P4に位置決めされる。なお、鋭利部材3Gのフランジ33Gの先端と第一貫通孔12Gの基端開口12bとが接触することにより、鋭利部材3Gの先端は先端位置P4に位置決めされてもよい。
【0148】
鋭利部35Gの先端が先端位置P4に配置された際の第一開口12Gaから突出する鋭利部材3Gの突出量L3(鋭利部材3Gの最大突出量、図34参照)は、ナイフ2Gの先端が第二位置P2に配置された際の第一開口12Gaから突出するナイフ2Gの突出量L2(ナイフ2Gの最大突出量、図33参照)よりも長い。
【0149】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由して第三管路43の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(第三管路43、第一管路23)を通過して先端開口23aから放出される。
【0150】
[処置具100Gの変形例(処置具100H)]
図36から図38は、処置具100Gの変形例である処置具100Hを示す断面図である。処置具100Hは、処置具100Gと比較して送水流路WRが異なる。処置具100Hは、シース1Gと、ナイフ2Hと、鋭利部材3Gと、操作ワイヤ4Bと、操作部5と、を備える。ナイフ2Hは、ナイフ本体20と、フランジ21と、連結部材22Bと、を有する。
【0151】
ナイフ2Hは、第四管路36を挿通している。ナイフ2Hは、第四管路36を長手方向Aに進退可能である。
【0152】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由してシース1Gの内部空間19の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(シース1Gの内部空間19、送水口22h、第二管路24、第一管路23)を通過して先端開口23aから放出される。
【0153】
本実施形態に係る処置具100Gおよび処置具100Hによれば、切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易である。
【0154】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0155】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態に係る処置具100Iについて、図39から図42を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0156】
図39は、処置具100Iの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Iは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200と共に内視鏡処置システムを構成する。処置具100Iは、シース1Gと、ナイフ2Cと、鋭利部材(針)3Iと、操作ワイヤ4Iと、操作部5と、を備える。
【0157】
図40から図42は、処置具100Iの先端部の断面図である。
図40に示すように、ナイフ2Cをシース1Gに対して後退させると、ナイフ2Cの基端面21bと先端部材11Gのフランジ格納部(第一面)12fとは接触する。ナイフ2Cの基端面21bと先端部材11Gのフランジ格納部12fとが接触することにより、ナイフ2Cの先端は最も基端側A2の位置である第一位置P1に位置決めされる。ナイフ2Cの基端面21bと先端部材11Gのフランジ格納部12fとが接触した状態で、ナイフ2Cに対して鋭利部材3Iは長手方向Aにおいて進退自在である。なお、フランジ格納部12fは、第一開口12Gaに形成されていなくてもよい。その場合は、先端部材11Gの先端面が第一面であり、ナイフ2Cの基端面21bと接触する。
【0158】
連結部材22Cは、ナイフ本体20Cと第一操作ワイヤ41Bとを連結する。連結部材22Cの外径は、第一領域121Gの内径よりも大きく、第二領域122の内径より小さい。連結部材22Cは、第一領域121Gを長手方向Aに挿通不能であり、第二領域122を長手方向Aに進退可能である。
【0159】
図41に示すように、ナイフ2Cをシース1Gに対して前進させると、連結部材22Cの先端と先端部材11Gの段差(第二面)12Ggとが接触する。連結部材22Cの先端と先端部材11Gの段差12Ggとが接触することにより、ナイフ2Cの先端は最も先端側A1の位置である第二位置P2に位置決めされる。連結部材22Cと先端チップ11Gの段差12Ggとが接触した状態で、ナイフ2Cに対して鋭利部材3Iは長手方向Aにおいて進退自在である。
【0160】
鋭利部材3Iは、樹脂材や金属材やセラミック材等により形成された部材である。鋭利部材3Iは、本体部31Gと、先端部34Gと、鋭利部35Gと、を有する。鋭利部材3Iは、フランジ33Gを有さない。
【0161】
ナイフ2Cは、鋭利部材3Iの第四管路36を挿通している。ナイフ2Cは、第四管路36を長手方向Aに進退可能である。
【0162】
図42に示すように、鋭利部材3Iをシース1Gに対して前進させると、鋭利部材3Iの本体部31Gの先端31aと先端部材11Gの段差12Ggとが接触する。鋭利部材3Iの本体部31Gの先端31aと先端部材11Gの段差12Ggとが接触することにより、鋭利部材3Iの先端は最も先端側A1の位置である先端位置P4に位置決めされる。
【0163】
操作ワイヤ4Iは、シース1Gの内部空間(管路、ルーメン)19を挿通するワイヤである。操作ワイヤ4Iは、第一操作ワイヤ41Bと、第二操作ワイヤ42Iと、を有する。
【0164】
第二操作ワイヤ42Iは、鋭利部材3Iを操作するワイヤである。第二操作ワイヤ42Iは、金属製の中空のコイルワイヤである。第二操作ワイヤ42Iは、チューブであってもよい。第二操作ワイヤ42Iの先端は、鋭利部材3Iの本体部31Gに外嵌されている。第二操作ワイヤ42Iの基端は、操作部5のレバー55に接続されている。
【0165】
鋭利部35Gの先端が先端位置P4に配置された際の第一開口12Gaから突出する鋭利部材3Iの突出量L3(鋭利部材3Iの最大突出量、図42参照)は、ナイフ2Cの先端が第二位置P2に配置された際の第一開口12Gaから突出するナイフ2Cの突出量L2(ナイフ2Cの最大突出量、図41参照)よりも長い。
【0166】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由して第二操作ワイヤ42Iの基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、送水流路WR(第二操作ワイヤ42Iの内部空間46、第四管路36、シース1Gの内部空間19、第一貫通孔12G)を通過して第一開口12Gaから放出される。
【0167】
[処置具100Iの変形例(処置具100J)]
図43は、処置具100Iの変形例である処置具100Jを示す斜視図である。図44から図46は、処置具100Jの先端部の断面図である。処置具100Jは、処置具100Iと比較して送水流路WRが異なる。処置具100Jは、シース1Gと、ナイフ2Cと、鋭利部材3Jと、操作ワイヤ4Iと、操作部5と、を備える。
【0168】
鋭利部材3Jは、樹脂材や金属材やセラミック材等により形成された部材である。鋭利部材3Jは、本体部31Jと、先端部34Gと、鋭利部35Gと、を有する。
【0169】
本体部31Jは、本体部31Gと比較して送水口31hをさらに有する。送水口31hは、第四管路36から径方向Rに沿って形成された孔であって、本体部31Jの外周面において開口している。
【0170】
液体供給口54は、スライダ52に形成された管路を経由してシース1Gの内部空間19の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体(流体)は、図43および図46に示すように、送水流路WR(シース1Gの内部空間19、送水口31h、第四管路36)を通過して鋭利部材3Jの鋭利部35Gから放出される。より具体的には、図46に示すように、鋭利部材3Jの鋭利部35Gおよびナイフ2Cを第一開口12Ga(シース1G)から突出した状態において、ナイフ2Cと鋭利部材3Jの鋭利部35Gとの隙間36gは送水流路WRの一部をなし、シース1Gの内部空間19を通過した液体は隙間36gを通過する。なお、図44および図45に示すように、鋭利部材3Jをシース1G内に収容した状態では、シース1Gの内部空間19を通過した液体は、隙間36gを通過せずに拡径領域125から放出される。
【0171】
本実施形態に係る処置具100Iおよび処置具100Jによれば、切開・剥離処置と局注処置とを好適に実施でき、取り扱いが容易である。
【0172】
以上、本発明の第五実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0173】
図47は、操作部5の変形例である操作部5Kを示す図である。
操作部5Kは、操作部本体51と、第一スライダ52と、給電コネクタ53と、液体供給口54と、第二スライダ55Kと、を有する。
【0174】
液体供給口54は、操作部本体51に設けられている。液体供給口54は、操作部本体51に形成された管路を経由して第三管路43の基端に連結されている。
【0175】
第二スライダ55Kは、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。第二スライダ55Kは、第一スライダ52よりも先端側A1に取り付けられている。第二スライダ55Kには第二操作ワイヤ42の基端が取り付けられている。術者が第二スライダ55Kを第一スライダ52に対して相対的に進退させることにより、第二操作ワイヤ42および鋭利部材3が進退する。
【0176】
図48および図49は、操作部5の変形例である操作部5Lを示す図である。
操作部5Lは、操作部本体51と、第一スライダ52Lと、給電コネクト53と、液体供給口54と、第二スライダ55Lと、スイッチ56と、を有する。
【0177】
第一スライダ52Lは、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。第一スライダ52Lには、第一操作ワイヤ41の基端が取り付けられている。術者が第一スライダ52Lを操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、第一操作ワイヤ41およびナイフ2が進退する。術者が第一スライダ52Lから手を離すと、ボールクリックなどのロック機構により操作部本体51に対する第一スライダ52Lの位置が固定される。
【0178】
第二スライダ55Lは、第一スライダ52Lに対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。第二スライダ55Lは、第一スライダ52Lとともに進退可能であり、また、第一スライダ52Lに対して独立して進退可能である。第二スライダ55Lには、第二操作ワイヤ42の基端が取り付けられている。術者が第二スライダ55Lを操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、第二操作ワイヤ42および鋭利部材3が進退する。
【0179】
スイッチ56は、第一スライダ52Lおよび第二スライダ55Lの長手方向Aに沿う進退移動を規制する。スイッチ56が押されているとき、第一スライダ52Lおよび第二スライダ55Lの進退移動は規制されない。スイッチ56が押されていないとき、第一スライダ52Lおよび第二スライダ55Lの進退移動は規制される。
【0180】
図50および図51は、操作部5の変形例である操作部5Mを示す図である。
操作部5Mは、操作部本体51と、第一スライダ52Mと、液体供給口54と、第二スライダ55Mと、を有する。
【0181】
第一スライダ52Mは、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。第一スライダ52Mには、第一操作ワイヤ41の基端が取り付けられている。術者が第一スライダ52Mを操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、第一操作ワイヤ41およびナイフ2が進退する。術者が第一スライダ52Mから手を離すと、ボールクリックなどのロック機構により操作部本体51に対する第一スライダ52Mの位置が固定される。
【0182】
第二スライダ55Mは、第一スライダ52Mとは独立して操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。だだし、図50に示すように第一スライダ52Mを後退させた状態では、第二スライダ55Mは第一スライダ52Mに接触するため前進できない。第二スライダ55Mには、第二操作ワイヤ42の基端が取り付けられている。術者が第二スライダ55Mを操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、第二操作ワイヤ42および鋭利部材3が進退する。
【0183】
なお、操作部5の変形例である操作部5Kと操作部5Lと操作部5Mは、第一実施形態から第五実施形態の操作部5と置き換えて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明は、送水機能を有する内視鏡用処置具などに適用することができる。
【符号の説明】
【0185】
300 内視鏡処置システム
200 内視鏡
100,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H,100I,100J 処置具(内視鏡用処置具)
1,1E,1G シース
10 チューブ
11,11E,11G 先端部材
12,12E,12G 第一貫通孔
12a,12Ga 第一開口
12b 基端開口
12e 送水溝
12f フランジ格納部
12g,12Eg,12Gg 段差
121,121G 第一領域
122,122E 第二領域
122g 隙間
123E 第三領域
124 縮径領域
125 拡径領域
13 第二貫通孔
13a 第二開口
13b 基端開口
13g 隙間
14 先端面
19 内部空間(管路、ルーメン)
2,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I ナイフ(電極)
20,20C ナイフ本体
21,21C フランジ(先端拡径部)
21b 基端面
22,22B,22C,22E 連結部材
22h 送水口
23 第一管路
23a 先端開口
23b 基端開口
24 第二管路
25 逆流防止部材
25a 貫通孔
3,3G,3I,3J 鋭利部材(ロッド、中実針)
31,31G,31I,31J 本体部
31a 先端
32 鋭利部
33 フランジ(拡径部)
33G フランジ(拡径部)
33h 送水口
34a スリット部
34b 基端
34G 先端部
35G 鋭利部
35a 縁
35b 先端
36 第四管路
4,4B,4I 操作ワイヤ
41,41B 第一操作ワイヤ
42,42I 第二操作ワイヤ
43 第三管路
43a 先端開口
43g 隙間
44,44B コイルシャフト
45 チューブ
46 内部空間
5 操作部
51 操作部本体
52 スライダ
53 給電コネクタ
54 液体供給口
55 レバー
P1 第一位置
P2 第二位置
P3 基端位置
P4 先端位置
R 径方向
WR 送水流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51